(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】昇降路内座標軸設定方法及び昇降路形状計測装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
B66B7/00 M
(21)【出願番号】P 2021203158
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】箱田 将和
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/220346(WO,A1)
【文献】特開2017-171494(JP,A)
【文献】特開2017-100845(JP,A)
【文献】国際公開第2021/220344(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内の所定位置に設置した昇降路形状生成装置で撮影した昇降路内の撮影データに対して間口方向、奥行方向及び高さ方向の各座標軸を決定する昇降路内座標軸設定方法であって、
前記撮影データの座標軸を設定する際に、ガイドレール先端を間口方向及び奥行方向の座標原点として活用
し、
前記撮影データの座標軸を設定する際に、ガイドレール頂部の間口方向と奥行方向の座標情報が、前記座標原点と一致するように修正を行うことで、高さ方向の傾きを補正する昇降路内座標軸設定方法。
【請求項2】
昇降路形状生成装置を用いて、各階のフロアレベル、かごのつき上げ位置、つき下げ位置及びピット位置で昇降路内の3次元画像を撮影して3次元画像データを取得し、
取得した各3次元画像データを前記昇降路内の特徴物を用いて結合して結合データを生成し、
前記結合データの座標軸を設定する際に、既設の昇降路設備の平面をフェッシャープレートで捉えて昇降路の奥行方向座標軸に決定し、
結合データの座標軸を設定する際に、既設の昇降路設備の平面をヘッダーケース上面で捉えて昇降路の高さ方向座標軸に決定し、
結合データの座標軸を設定する際に、ガイドレール先端を間口方向及び奥行方向の座標原点として活用
し、
前記結合データの座標軸を設定する際に、ガイドレール頂部の間口方向と奥行方向の座標情報が、前記座標原点と一致するように修正を行うことで、高さ方向の傾きを補正する昇降路内座標軸設定方法。
【請求項3】
前記請求項
1または2に記載の昇降路内座標軸設定方法によって取得される座標軸情報に基づき、既設の昇降路設備により座標軸を決定し、決定された座標軸に基づき昇降路の形状を計測する昇降路形状計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの昇降路内座標軸設定方法及び昇降路形状計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの付替えや改修の工事の際には、事前準備段階としてエレベータ昇降路内の形状を正確に把握し、昇降路の図面作成に必要な各部の寸法を測定する必要がある。そのため、乗りかごの上部に3次元レーザ計測器を設置し、乗りかごの位置を移動させながら複数の高さ位置で昇降路内のあらゆる方向の壁面までの距離を計測することで、乗りかごの可動域およびその上部の昇降路形状情報を取得することが行われている。
【0003】
しかしながら、昇降路内には高さ位置を特定するための目印となるような構造物が少なく、複数の高さ位置で計測したデータを結合する際に目印がないことから、結合後のデータ間にずれが生じる可能性がある。
【0004】
そこで、従来の撮影手法では、データ結合用、座標軸設定用のマーカーを設置した後に、昇降路形状計測装置での計測を実施し、測定データに写っているマーカーを基準にデータの結合、座標軸設定を実施していた。
【0005】
またマーカーを設置しない座標軸設定手法としてガイドレールの先端部を面として捉えて、間口方向の座標軸として設定する手法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-261794号公報
【文献】特開2017-214224号公報
【文献】特開2017-171494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の撮影手法は、撮影前にマーカー設置のためにかごを昇降させる必要があり、また、かご(躯体)がガイドレールに隣接している場合は設置が困難である。さらに、ガイドレールの先端部を面として捉える手法も、先端部の面幅が狭く、面として捉えることが困難であり、正確な座標軸設定の阻害要因となっている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、現地作業を省力化することができ、昇降路形状に依存せず、正確な座標軸設定を可能にする降路内座標軸設定方法及び昇降路形状計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための実施形態は、昇降路形状生成装置を用いて、各階のフロアレベル、かごのつき上げ位置、つき下げ位置及びピット位置で昇降路内の3次元画像を撮影して3次元画像データを取得し、取得した各3次元画像データを昇降路内の特徴物を用いて結合して結合データを生成し、結合データの座標軸を設定する際に、既設の昇降路設備の平面をフェッシャープレートで捉えて昇降路の奥行方向座標軸に決定し、結合データの座標軸を設定する際に、既設の昇降路設備の平面をヘッダーケース上面で捉えて昇降路の高さ方向座標軸に決定し、結合データの座標軸を設定する際に、ガイドレール先端を間口方向及び奥行方向の座標原点として活用する昇降路内座標軸設定方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の昇降路内座標軸設定方法及び昇降路形状計測装置の構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態の昇降路内座標軸設定方法及び昇降路形状計測装置におけるデータ取得処理を示すフローチャート。
【
図3】実施形態の昇降路内座標軸設定方法及び昇降路形状計測装置における座標軸設定処理を示すフローチャート。
【
図4】実施形態の昇降路内座標軸設定方法及び昇降路形状計測装置におけるデータ取得処理を示す説明図。
【
図5】実施形態の昇降路内座標軸設定方法及び昇降路形状計測装置における乗場敷居の撮影状態を示す説明図。
【
図6】フェッシャープレート周辺の点群データ(撮影データ)に対して間口方向及び奥行方向の座標軸を設定する処理を示す説明図。
【
図7】ヘッダーケース周辺の点群データ(撮影データ)に対して高さ方向の座標軸を設定する処理を示す説明図。
【
図8】昇降路断面の点群データ(撮影データ)に対して高さ方向の傾きを補正する処理を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る昇降路内座標軸設定方法及び昇降路形状計測装置の実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1は昇降路形状計測装置の構成を示している。昇降路形状計測装置は、3Dスキャナ10と、昇降路形状測定処理装置20とを備える。
【0013】
3Dスキャナ10は、
図4に示すように、かご40のかご上41に設置され、かご40を走行させて昇降路内を撮影して撮影データ(点群データ)を生成する。
【0014】
昇降路形状測定処理装置20は、データ取得部21と、データ結合部22と、結合データ表示部23と、座標軸決定部24と、測定処理部25とを備える。
【0015】
データ取得部21は、3Dスキャナ10で撮影された昇降路30の点群データ(撮影データを取得する。データ結合部22は、データ取得部21で取得した各撮影データを結合して結合データを生成する。結合データ表示部23は、結合データである昇降路画像を表示して座標軸決定や測定処理に利用される。座標軸決定部24は、結合データ表示部23に表示された昇降路画像(結合データ)に対して座標軸及び座標原点を決定する。測定処理部25は、座標軸決定部24で決定された座標軸及び座標原点に基づいて昇降路各部の寸法を測定する処理を実行する。
【0016】
図2は、3Dスキャナ10を使用して昇降路30の3次元画像データ(点群データ)を取得する処理を示している。
【0017】
まず、
図4に示すように、3Dスキャナ10をかご40のかご上41に設置する(ステップS1)。次に、かご40を走行させ、3Dスキャナ10により各階のフロアレベル31、かご40のつき上げ位置32及びつき下げ位置33で昇降路30内を撮影する(ステップS2)。
【0018】
ここで、つき上げ位置32は、かご40が昇降可能な最高位置を示し、リミットスイッチで設定される。また、つき下げ位置33は、かご40が下降可能な最低位置を示し、リミットスイッチで設定される。
【0019】
次いで、3Dスキャナ10をピット34に設置して昇降路30内を撮影する(ステップS3)。
【0020】
次いで、
図5に示すように、乗場50に3Dスキャナ10を設置し、乗場ドア51を開扉させて、乗場敷居52を撮影することで乗場敷居52の3次元位置情報を取得する(ステップS4)。この際、位置情報の取得に障害とならないように、乗場ドア51は戸開したまま撮影することを条件としている。乗場敷居52の上面は高さ方向原点55とする。なお、
図5においては最下階での撮影としているが、乗場ドア51が戸開でき、乗場敷居52が撮影可能な他階での適用も可能である。
【0021】
このようにして、3Dスキャナ10により、昇降路30の3次元撮影データが得られると、この撮影データは昇降路形状測定処理装置20に出力される(ステップS5)。
【0022】
【0023】
撮影データを取得して結合データ(3次元昇降路画像データ)を生成する(ステップS11)。この段階では、結合データには座標軸が設定されていない。
【0024】
図6はフェッシャープレート60周辺の点群データ、
図7はヘッダーケース80周辺の点群データ、
図8は昇降路断面の点群データ(昇降路画像データG)をそれぞれ示している。
【0025】
図6に示すように、既設の昇降路設備の平面をフェッシャープレート60で捉えて昇降路30の奥行方向座標軸に決定する(ステップS12)。
【0026】
次いで、
図7に示すように、既設の昇降路設備の平面をヘッダーケース80の上面で捉えて昇降路30の高さ方向座標軸に決定する(ステップS13)。
【0027】
次いで、
図5で説明したように、乗場敷居52の上面を座標軸の高さ方向ZZの座標原点55とする(ステップS14)。
【0028】
また、
図6に示すように、ガイドレール70の先端を間口方向XXと奥行方向YYの座標原点71に設定する(ステップS15)。
【0029】
次いで、高さ方向の傾きを補正する(ステップS16)。この補正処理は、ガイドレール70の頂部で間口方向XXと奥行方向YYの座標72が、最下階フロアレベルで設定された座標原点71と一致するように修正を行うことで高さ方向の傾きを補正する処理である。
【0030】
このように、本実施形態では、撮影時に水平出しを実施せずにデータ結合を実施した点群データに対して、ガイドレール70の長手方向に平行に据え付けられているフェッシャープレート60を奥行方向の座標軸、ガイドレール70に垂直に据え付けられているヘッダーケース80上面を高さ方向の座標軸として活用することができる。なお、実施形態では、フェッシャープレート60を活用しているが、トーガードや乗場ドア51、躯体平面を奥行方向の座標軸として活用しても良い。また、ヘッダーケース80の上部を高さ方向の座標軸として活用しているが、かご天井や敷居、躯体平面を垂直方向の座標軸として活用しても良い。
【0031】
また、乗場ドア51を戸開し乗場50側から撮影を実施することで、乗場敷居52上面が写るように撮影したデータから、乗場敷居52上面を座標軸の高さ方向の座標原点55として活用することができる。
【0032】
また、ガイドレール70の先端を座標軸の間口方向及び奥行方向の座標原点71として活用することができる。なお、ガイドレール70先端を間口方向、奥行方向の座標原点71として活用しているが、乗場敷居52先端を座標原点として活用しても良い。
【0033】
また、ガイドレール70の頂部で間口方向と奥行方向の座標情報であるレール頂部座標72が座標原点71と一致するように修正を行うことで高さ方向の傾きを補正することができる。
【0034】
上述した本実施形態によれば、座標軸設定用のマーカーを設置する作業が不要となり、現地作業を省力化することができ、昇降路形状に依存せず、正確な座標軸設定が可能となる。
【0035】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
10…3Dスキャナ(昇降路形状生成装置)、20…昇降路形状測定処理装置、21…データ取得部、22…データ結合部、23…結合データ表示部、24…座標軸決定部、25…測定処理部、30…昇降路、31…フロアレベル、32…つきあげ位置、33…つき下げ位置、34…ピット、40…かご、41…かご上、50…乗場、51…乗場ドア、52…乗場敷居、55…高さ方向原点、60…フェッシャープレート、70…ガイドレール、71…座標原点、72…レール頂部座標、80…ヘッダーケース、90…緩衝器、FL…最下階フロアレベル、G…昇降路画像(結合データ)、XX…座標軸の間口方向、YY…座標軸の奥行方向、ZZ…座標軸の高さ方向
【要約】
【課題】 現地作業を省力化することができ、昇降路形状に依存せず、正確な座標軸設定を可能にする。
【解決手段】 昇降路形状生成装置を用いて、各階のフロアレベル、かごのつき上げ位置、つき下げ位置及びピット位置で昇降路内の3次元画像を撮影して3次元画像データを取得し、取得した各3次元画像データを昇降路内の特徴物を用いて結合して結合データを生成し、結合データの座標軸を設定する際に、既設の昇降路設備の平面をフェッシャープレートで捉えて昇降路の奥行方向座標軸に決定し、結合データの座標軸を設定する際に、既設の昇降路設備の平面をヘッダーケース上面で捉えて昇降路の高さ方向座標軸に決定し、結合データの座標軸を設定する際に、ガイドレール先端を間口方向及び奥行方向の座標原点として活用する。
【選択図】
図2