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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
H01G4/32 511A
H01G4/32 511G
H01G4/32 511L
H01G4/32 511K
H01G4/32 301A
H01G4/32 544
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021537583
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018695
(87)【国際公開番号】W WO2021024564
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019146344
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】真島 亮
(72)【発明者】
【氏名】阪本 拓也
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-095604(JP,A)
【文献】特開2010-165775(JP,A)
【文献】特開2017-191823(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142561(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、
前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に設けられた第1の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムの前記第2主面に設けられた第2の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムに前記第1の電極層又は前記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、を備えたフィルムコンデンサであって、
前記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、
前記第2の電極層は、前記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有し、
前記第1の誘電体フィルムでは、前記第1主面の表面粗さが、前記第2主面の表面粗さよりも小さく、
前記第2の誘電体フィルムでは、前記第4主面の表面粗さが、前記第3主面の表面粗さよりも大きく、
前記第4主面が、前記第1の電極層と対向するように積層されている、ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、
前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に設けられた第1の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムの前記第2主面に設けられた第2の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムに前記第1の電極層又は前記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、を備えたフィルムコンデンサであって、
前記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、
前記第2の電極層は、前記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有し、
前記第1の誘電体フィルムと前記第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、
前記第1の誘電体フィルム及び前記第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きい、ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記第1の誘電体フィルムでは、前記第1主面の表面粗さが、前記第2主面の表面粗さよりも小さく、
前記第2の誘電体フィルムでは、前記第4主面の表面粗さが、前記第3主面の表面粗さよりも大きく、
前記第4主面が、前記第1の電極層と対向するように積層されている、請求項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、
前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に設けられた第1の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムの前記第2主面に設けられた第2の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムに前記第1の電極層又は前記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、を備えたフィルムコンデンサであって、
前記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、
前記第2の電極層は、前記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有し、
前記第1の電極層と電気的に接続されて設けられた第1の外部電極と、
前記第2の電極層と電気的に接続されて設けられた第2の外部電極と、をさらに備え、
前記第1の外部電極は、陽極側の外部電極であり、
前記第2の外部電極は、陰極側の外部電極であり、
前記第1の電極層の厚さが、前記第2の電極層の厚さよりも大きく、
前記第1の誘電体フィルムでは、前記第1主面の表面粗さが、前記第2主面の表面粗さよりも小さく、
前記第2の誘電体フィルムでは、前記第4主面の表面粗さが、前記第3主面の表面粗さよりも大きく、
前記第4主面が、前記第1の電極層と対向するように積層されている、ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項5】
第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、
前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に設けられた第1の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムの前記第2主面に設けられた第2の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムに前記第1の電極層又は前記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、を備えたフィルムコンデンサであって、
前記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、
前記第2の電極層は、前記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有し、
前記第1の電極層と電気的に接続されて設けられた第1の外部電極と、
前記第2の電極層と電気的に接続されて設けられた第2の外部電極と、をさらに備え、
前記第1の外部電極は、陽極側の外部電極であり、
前記第2の外部電極は、陰極側の外部電極であり、
前記第1の電極層の厚さが、前記第2の電極層の厚さよりも大きく、
前記第1の誘電体フィルムと前記第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、
前記第1の誘電体フィルム及び前記第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きい、ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記第1の誘電体フィルムでは、前記第1主面の表面粗さが、前記第2主面の表面粗さよりも小さく、
前記第2の誘電体フィルムでは、前記第4主面の表面粗さが、前記第3主面の表面粗さよりも大きく、
前記第4主面が、前記第1の電極層と対向するように積層されている、請求項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記第1の誘電体フィルムと前記第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、
前記第2の誘電体フィルムが、前記第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されており、
巻芯の方向に沿った断面において、前記第2の誘電体フィルムの幅が前記第1の誘電体フィルムの幅よりも小さく、かつ、前記第1の誘電体フィルムの一方の端部と他方の端部との間に前記第2の誘電体フィルムが配置されている、請求項4~のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
【請求項8】
前記第1の電極層は、前記第2の電極層と対向する有効電極部と、前記第1の誘電体フィルムの一方の側端に沿って帯状に設けられ、前記第1の外部電極と接続される電極引き出し部とをさらに有し、
前記有効電極部及び前記電極引き出し部は、前記電極引き出し部と平行に配置される電極分離スリットによって分離されるとともに、前記電極分離スリットを部分的に横切る前記ヒューズ部によって接続され、
前記第1の誘電体フィルムと前記第2の誘電体フィルムとが積層された状態において、前記第2の誘電体フィルムの一方の端部が、前記電極引き出し部と重なる位置に配置されている、請求項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項9】
前記第1の誘電体フィルム及び前記第2の誘電体フィルムは、同一材料で構成されている、請求項1~のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
【請求項10】
前記第1の誘電体フィルムを構成する前記樹脂及び前記第2の誘電体フィルムを構成する前記樹脂が、いずれも熱硬化性樹脂である、請求項1~のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサの一種として、可撓性のある樹脂フィルムを誘電体として用いながら、樹脂フィルムを挟んで互いに対向する第1対向電極及び第2対向電極を配置した構造のフィルムコンデンサがある(例えば、特許文献1~4参照)。
このようなフィルムコンデンサは、近年では、例えば電気自動車(EV)や電気式ハイブリッド自動車(HEV)等のインバータに用いられており、長寿命及び高い安全性が要求されている。
【0003】
特許文献1には、ポリプロピレンフィルムの両面に金属蒸着電極を形成した両面金属化ポリプロピレンフィルムとポリプロピレンフィルムに金属蒸着電極を形成していない非金属化ポリプロピレンフィルムの2枚を重ねて1対としたものを巻回して得た巻回物と、前記巻回物の2つの側面に形成されたメタリコン電極とからなり、前記両面金属化ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンフィルムの厚みが、前記非金属化ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンフィルムよりも厚くなっていることを特徴とするフィルムコンデンサが開示されている。
【0004】
特許文献2には、誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを一対とし、上記金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向するように重ね合わせて巻回した素子と、この素子の両端面に金属溶射によって形成された一対のメタリコン電極からなる金属化フィルムコンデンサにおいて、上記金属化フィルムとして、誘電体フィルムの幅方向の一端側に非金属蒸着部からなる絶縁マージンを長手方向に連続して設けると共に、この絶縁マージンから他端側に向かって非金属蒸着部からなる横マージンを設けることにより複数の分割電極が形成され、かつ、誘電体フィルムの長手方向に亘って非金属蒸着部からなる縦マージンを設け、この縦マージンと横マージンの少なくとも一方が、金属化フィルムの長手方向となる直線、あるいはこの長手方向の直線と直交する直線に対して傾斜するようにしたものを用いた金属化フィルムコンデンサが開示されている。
【0005】
特許文献3には、誘電体フィルムの表面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを巻回または積層して扁平率0.7以上の扁平体に構成された金属化フィルム多層体と、この金属化フィルム多層体の軸方向両端面に接続した電極引出し部とを有し、前記金属化フィルムの表面における蒸着部が複数の分割電極とヒューズ部からなる保安機構を有し、前記金属化フィルムの表面は、分離される状態で展開する絶縁スリットによって仕切られた前記分割電極群および隣接する前記絶縁スリット間に形成された前記ヒューズ部群を含む蒸着エリアと、前記絶縁スリット群を含む非蒸着エリアとに分けられており、さらに、前記蒸着エリアの合計面積に対する前記非蒸着エリアの合計面積の割合が0.09以下に設定されているコンデンサ素子が開示されている。
【0006】
特許文献4には、第1の誘電体フィルム、蒸着金属膜からなる第1の蒸着電極、第2の誘電体フィルム、および蒸着金属膜からなる第2の蒸着電極を順次重ねて巻回した金属化フィルムコンデンサであって、前記第1および第2の蒸着電極のうち少なくとも一方を分割電極とし、かつ前記第1および第2の誘電体フィルムのうち少なくとも一方をポリフェニレンサルファイドフィルムとしたことを特徴とする金属化フィルムコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-367853号公報
【文献】特開2009-170685号公報
【文献】特開2015-162560号公報
【文献】特開平09-82562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高い安全性を確保するために、フィルムコンデンサを構成する対向電極には、非蒸着金属部分により分割された金属蒸着電極が、ヒューズ部を介して接続された蒸着パターンが用いられることがある。フィルムコンデンサに絶縁破壊が起こった場合、ヒューズ部が蒸発して、絶縁破壊が起こった箇所を含む微小領域を回路から遮断することで、絶縁破壊を回復することができ、高い安全性を維持することができる。
【0009】
蒸着パターンは、非蒸着金属部となる部位にマスキングオイルを版ロールから転写等により塗布したあと、蒸着を行うことで形成される。
しかしながら、蒸着パターンを形成するために用いられるマスキングオイルをフィルムの表面から完全に除去することは困難である。そのため、残留マスキングオイルによって、巻回時のしわの発生、巻回体の扁平加工性の低下、及び、耐電圧性の劣化といった問題が生じることがあった。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、巻回時のしわの発生、巻回体の扁平加工性の低下、及び、耐電圧性の劣化を抑制することのできるフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のフィルムコンデンサは、第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、上記第1の誘電体フィルムの上記第1主面に設けられた第1の電極層と、上記第1の誘電体フィルムの上記第2主面に設けられた第2の電極層と、上記第1の誘電体フィルムに上記第1の電極層又は上記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、を備えたフィルムコンデンサであって、上記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、上記第2の電極層は、上記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、巻回時のしわの発生、巻回体の扁平加工性の低下、及び、耐電圧性の劣化を予防することのできるフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体を得る方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図1に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体の斜視図である。
図4図4Aは、第1の誘電体フィルムの第1主面の一例を模式的に示す上面図であり、図4Bは、第1の誘電体フィルムの第2主面の一例を模式的に示す上面図である。
図5図5は、本発明のフィルムコンデンサを構成する巻回体を外側からみた状態を模式的に示す上面図である。
図6図6A及び図6Bは、図1に示すフィルムコンデンサの使用方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、本発明のフィルムコンデンサの第一実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図8図8は、本発明のフィルムコンデンサの第二実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図9図9は、本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図10図10は、本発明のフィルムコンデンサの第四実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフィルムコンデンサについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0015】
[フィルムコンデンサ]
本発明のフィルムコンデンサは、第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、上記第1の誘電体フィルムの上記第1主面に設けられた第1の電極層と、上記第1の誘電体フィルムの上記第2主面に設けられた第2の電極層と、上記第1の誘電体フィルムに上記第1の電極層又は上記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、を備えたフィルムコンデンサであって、上記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、上記第2の電極層は、上記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明のフィルムコンデンサでは、第1の誘電体フィルムの一方の主面に、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有する第1の電極層を形成する一方で、他方の主面に、第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有する第2の電極層を形成する。
第2の領域は、スリットにより区画された領域であってもよく、スリットにより区画されていない領域であってもよい。
第2の電極層がスリットにより区画された第2の領域を有する場合、第2の領域の面積は第1の領域よりも大きいため、スリット幅が同じ程度であれば、第2の電極層に占めるスリットの面積割合は、第1の電極パターンに占めるスリットの面積割合よりも小さくなる。また、第2の電極層がスリットにより区画されていない第2の領域を有する場合、第2の電極層には、第2の領域を区画するためのスリットが存在しない。
そのため、第2の電極層が形成される主面に残留するマスキングオイル量は、第1の電極層が形成される主面に残留するマスキング量よりも少なくなる。
従って、第2の電極層が形成される主面における残留マスキングオイル量を低減でき、残留マスキングオイルに起因する巻回時のしわの発生、巻回体の扁平加工性の低下、及び、耐電圧性の劣化を抑制することができる。
【0017】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムは、積層された状態で巻回されていてもよく、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが繰り返し積層されていてもよい。
以下、本発明のフィルムコンデンサとして、巻回型フィルムコンデンサを例にとって説明する。
【0018】
図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図であり、図2は、図1に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体を得る方法の一例を模式的に示す斜視図であり、図3は、図1に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体の斜視図である。
図1に示すフィルムコンデンサ1は、第1の誘電体フィルム10と、第2の誘電体フィルム20と、第1の電極層30と、第2の電極層40とが積層された状態で巻回された巻回体51を備えている。
巻回体51において、第2の誘電体フィルム20が第1の誘電体フィルム10よりも外側に巻回されている。さらに、第2の誘電体フィルム20の幅Wは、第1の誘電体フィルム10の幅Wよりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルムの一方の端部10aと他方の端部10bとの間に第2の誘電体フィルム20が配置されている。
巻回体51の両端部には、第1の外部電極61及び第2の外部電極62が接続されている。
【0019】
第1の電極層30は、第1の誘電体フィルム10の第1主面11に設けられている。
第2の電極層40は、第1の誘電体フィルム20の第2主面12に設けられている。
【0020】
第1の電極層30の厚さは、第2の電極層40の厚さよりも大きい。
【0021】
巻回体51の一方の端部には第1の外部電極61が形成されており、第1の外部電極61は第1の電極層30と電気的に接続されている。
第1の外部電極61は、陽極側の外部電極である。
【0022】
巻回体51の他方の端部には第2の外部電極62が形成されており、第2の外部電極62は第2の電極層40と電気的に接続されている。
第2の外部電極62は、陰極側の外部電極である。
【0023】
第1の外部電極61には第1のリード端子71が接続され、第2の外部電極62には第2のリード端子72が接続されている。
第1のリード端子71の長さは、第2のリード端子72の長さよりも長いため、フィルムコンデンサ1を外部からみたときに、第1のリード端子71と第2のリード端子72は区別可能な状態となっている。
【0024】
図2に示すように、巻回体50では、第1の誘電体フィルム10よりも第2の誘電体フィルム20が外側に巻回されている。図2に示す巻回体50を変形させることで、図1及び図3に示す巻回体51が得られる。
【0025】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルムでは、第1主面の表面粗さが、第2主面の表面粗さよりも小さいことが好ましい。
誘電体フィルムの表面の凹凸が大きいと、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有する第1の電極層の表面に、酸化劣化の起点となる欠損が形成されやすい。従って、表面粗さがより小さい第1主面に第1の電極層を設けることによって、第1の電極層の酸化劣化を抑制することができる。
図1に示すフィルムコンデンサ1では、第1主面11の表面粗さが第2主面12の表面粗さよりも小さくなっている。
なお、図1では、第1の誘電体フィルム10の2つの主面(第1主面11及び第2主面12)のうち、表面粗さが相対的に大きい方の主面(第2主面12)を波線で、表面粗さが相対的に小さい方の主面(第1主面11)を直線で表している。
【0026】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第2の誘電体フィルムでは、第4主面の表面粗さが第3主面の表面粗さより大きく、第4主面が第1の電極層と対向するように積層されていることが好ましい。
表面粗さがより大きな第4主面が第1の電極層と対向するように積層されていると、第1の電極層と第4主面との間に、ヒューズ部が作動して蒸発するための空間が確保されやすくなり、ヒューズ動作性が向上する。
図1に示すフィルムコンデンサ1では、第4主面22の表面粗さが第3主面21の表面粗さよりも大きく、第4主面22が第1の電極層30と対向するように積層されている。
なお、図1では、第2の誘電体フィルム20の2つの主面(第3主面21及び第4主面22)のうち、表面粗さが相対的に大きい方の主面(第4主面22)を波線で、表面粗さが相対的に小さい方の主面(第3主面21)を直線で表している。
【0027】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1主面の表面粗さは、1μm以上、10μm以下であることが好ましく、1μm以上、10μm未満であることがより好ましい。
【0028】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第2主面の表面粗さは、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0029】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第3主面の表面粗さは、1μm以上、10μm以下であることが好ましく、1μm以上、10μm未満であることがより好ましい。
【0030】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第4主面の表面粗さは、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0031】
第1主面、第2主面、第3主面及び第4主面の表面粗さは、JIS B 0601:2013において規定される算術平均粗さRaを意味する。表面粗さRaは、非接触式のレーザー表面粗さ計(例えば、キーエンス社製VK-X210)を使用して測定することができる。
【0032】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有している。
第1の電極層は、第2の電極層と対向する有効電極部と、第1の誘電体フィルムの一方の側端に沿って帯状に設けられる電極引き出し部とをさらに有することが好ましい。
このとき、有効電極部及び電極引き出し部は、電極引き出し部と平行に配置される電極分離スリットによって分離されるとともに、電極分離スリットを部分的に横切るヒューズ部によって接続されていることが好ましい。
さらに、第1主面には、電極引き出し部が設けられた側端とは反対側の側端に沿って帯状に設けられる、第1の電極層が設けられていない部分(以下、第1マージン部ともいう)を備える。
【0033】
図4Aは、第1の誘電体フィルムの第1主面の一例を模式的に示す上面図である。
図4Aに示すように、第1主面11には、第1の電極層30が設けられている。
第1の電極層30は、第2の電極層と対向する有効電極部32と、第1の誘電体フィルム10の一方の端部10aに沿って帯状に設けられる電極引き出し部31とを有する。
有効電極部32と電極引き出し部31は、電極引き出し部31と平行に配置される電極分離スリット33によって分離されるとともに、電極分離スリット33を部分的に横切るヒューズ部34によって接続されている。有効電極部32は、電極分離スリット33及び区画スリット36(まとめてスリットともいう)により区画された第1の領域35がヒューズ部34を介して相互に接続された第1の電極パターンを有する。
また、第1主面11において、第1の誘電体フィルム10の他方の端部10bには、第1の電極層30が設けられていない第1マージン部11aが存在する。
【0034】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第2の電極層は、第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有する。
第2の電極層は、第1の電極層と対向する有効電極部と、第1の誘電体フィルムの他方の側端(第1の電極層の電極引き出し部が設けられている側端とは反対側の側端)に沿って帯状に設けられる電極引き出し部とをさらに有することが好ましい。
【0035】
図4Bは、第1の誘電体フィルムの第2主面の一例を模式的に示す上面図である。
図4Bに示すように、第2主面12には、第2の電極層40が設けられている。
第2の電極層40には、第1の誘電体フィルムの他方の端部10bに沿って帯状に設けられる電極引き出し部41と、第1の電極層30と対向する有効電極部42とが存在する。電極引き出し部41と有効電極部42の間には、スリット等は設けられていない。第2の電極層40にはスリット等が設けられていないので、第2の電極層40は、第1の領域よりも大きな面積の第2の領域を有しているといえる。
また、第2主面12において、第1の誘電体フィルム10の一方の端部10aには、第2の電極層40が設けられてない第2マージン部12aが存在する。
【0036】
図4Bには、スリットにより区画されていない第2の領域を有する第2の電極層の例を説明したが、第2の電極層は、スリットにより区画された第2の領域を有していてもよい。ただし、第2の領域の面積は、第1の領域の面積よりも大きい。スリットにより区画された第2の領域は、ヒューズ部を介して相互に接続されていてもよい。
【0037】
各第1の領域の面積が異なる場合は、第2の領域の面積との比較に、第1の領域の平均面積を用いる。第2の電極層に存在する、第1の領域の平均面積よりも大きい領域が、第2の領域となる。第2の電極層は、第2の領域以外の領域として、第1の領域の面積よりも小さい面積の領域を有していてもよい。
【0038】
第1の領域の面積に対する第2の領域の面積の割合は、150%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましい。
【0039】
第1の電極層の有効電極部において、コンデンサ容量に寄与しない面積の割合は、5%以上、10%以下であることが好ましい。
また、第2の電極層の有効電極部において、コンデンサ容量に寄与しない面積の割合は、0%以上、5%未満であることが好ましい。コンデンサ容量に寄与しない面積の割合が0%の場合は、いわゆるベタパターンである。
【0040】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、巻回体は、断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、よりコンパクトな形状とされることが望ましい。
巻回体の断面形状における扁平率は、0.7未満であることが好ましい。巻回体の断面形状における扁平率が0.7以上であると、フィルムコンデンサの振動及び唸り音が大きくなってしまうことがある。
扁平率fは、巻回体の外形をノギス等で測定した際の長径aと短径bよりf=[(a-b)/b]で求めることができる。
【0041】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、巻回体は、円柱状の巻回軸を備えていてもよい。巻回軸は、巻回状態の第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムの中心軸線上に配置されるものであり、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムを巻回する際の巻軸となるものである。
【0042】
本発明のフィルムコンデンサは、第1の電極層と電気的に接続される第1の外部電極と、第2の電極層と電気的に接続される第2の外部電極とを、をさらに備えることが好ましい。
図1に示すフィルムコンデンサ1は、第1の電極層30と電気的に接続される第1の外部電極61及び第2の電極層40と電気的に接続される第2の外部電極62を備えている。
【0043】
本発明のフィルムコンデンサは、第1の外部電極及び第2の外部電極にそれぞれ、端子導体やリード端子が接続されていてもよい。
図1に示すフィルムコンデンサ1は、第1の外部電極61に接続される第1のリード端子71と、第2の外部電極62に接続される第2のリード端子72を備えている。
【0044】
図1に示すフィルムコンデンサ1から、第1の外部電極61及び第2の外部電極62を削除したものや、第1の外部電極61及び第2の外部電極62に代わって第1の端子導体及び第2の端子導体を備えるものも、本発明のフィルムコンデンサである。
【0045】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。
巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きいと、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムを積層して巻回する際に、巻回に使用する巻取ロールと積層体の巻芯側の主面との間に空気層が形成されにくくなり、フィルムが蛇行しにくくなる。そのため、巻回時の第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムの密着性が高くなり、耐ヒートショック性や耐電流性の高いフィルムコンデンサとなる。
【0046】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、第2の誘電体フィルムが、第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されており、巻芯の方向に沿った断面において、第2の誘電体フィルムの幅が第1の誘電体フィルムの幅よりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルムの一方の端部と他方の端部との間に第2の誘電体フィルムが配置されていることが好ましい。
第2の誘電体フィルムが、第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されており、第2の誘電体フィルムの幅が第1の誘電体フィルムの幅よりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルムの一方の端部と他方の端部との間に第2の誘電体フィルムが配置されていると、第1の誘電体フィルムの一方の端部及び他方の端部の両方が、第2の誘電体フィルムよりも外側(巻回軸の両端側)に突出していることになるため、第1の誘電体フィルムの表面に形成された電極層(第1の電極層及び第2の電極層)が外部電極と接触する面積が増加し、電極層と外部電極との接触性が向上する。
【0047】
本発明のフィルムコンデンサは、第2の誘電体フィルムが第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されている場合には、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態において、第2の誘電体フィルムの一方の端部が、第1の電極層の電極引き出し部と重なる位置に配置されていることが好ましい。
第2の誘電体フィルムは可視領域から赤外領域における光透過性を有するため、その輪郭を画像認識等で認識し難い。しかし、外側に巻回される第2の誘電体フィルムの一方の端部(輪郭の一部)の奥側(内側)に電極引き出し部(第1の電極層の一部)が配置されている場合、可視領域から赤外領域における光透過性の低い電極引き出し部が背景となって、第2の誘電体フィルムの輪郭を画像認識等で認識しやすくなる。そのため、画像認識等によりフィルムのずらし幅を管理することが容易となり、巻回時のフィルムのずれによる耐ヒートショック性や耐電流性の低下を抑制することができる。
【0048】
第2の誘電体フィルムを第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回した場合の、第2の誘電体フィルムと第1の誘電体フィルムの位置調整について、図5を参照しながら説明する。
図5は、本発明のフィルムコンデンサを構成する巻回体を外側からみた状態を模式的に示す上面図である。
図5では、第2の誘電体フィルム20が紙面手前側、第1の誘電体フィルム10が紙面奥側に配置されており、第2の誘電体フィルム20の一方の端部20aが、第1の誘電体フィルム10の第1主面11における第1の電極層の一部である電極引き出し部31と重なっている。
【0049】
本発明のフィルムコンデンサは、極性が指定されていることが好ましい。
具体的には、第1の外部電極が陽極側の外部電極であり、第2の外部電極が陰極側の外部電極であることが好ましい。
極性を区別する方法は特に限定されないが、陽極側に接続されるリード端子の長さと陰極側に接続されるリード端子の長さを変える(例えば、陽極側に接続されるリード端子の長さを陰極側に接続されるリード端子の長さよりも長くする)方法や、フィルムコンデンサの表面に、極性を区別できるような意匠を施す方法等が挙げられる。
図1に示すフィルムコンデンサ1では、陽極側の外部電極となる第1の外部電極61に接続される第1のリード端子71の長さが、陰極側の外部電極となる第2の外部電極62に接続される第2のリード端子72の長さよりも長くなっている。
【0050】
本発明のフィルムコンデンサでは、第1の外部電極が陽極側の外部電極であり、第2の電極層が陰極側の外部電極であり、第1の電極層の厚さが、第2の電極層の厚さよりも大きいことが好ましい。
陽極側の外部電極と電気的に接続される第1の電極層の厚さが、陰極側の外部電極と接続される第2の電極層の厚さよりも大きいと、第1の電極層の陽極酸化が進行しにくい。そのため、ショート故障を起こしにくく、ショート故障に由来する静電容量の低下を抑制することができる。また、第2の電極層の厚さが第1の電極層の厚さよりも小さいため、第2の電極層の膜抵抗が高くなり、セルフヒーリング性を高めることができる。
図1に示すフィルムコンデンサ1では、第1の電極層30の厚さが第2の電極層40の厚さよりも大きい。従って、第1の外部電極61を陽極側の外部電極、第2の外部電極62を陰極側の外部電極とした場合、ショート故障に由来する静電容量の低下を抑え、セルフヒーリング性が高くなる。
ここで、第1の外部電極61に接続される第1のリード端子71と第2の外部端子62に接続される第2のリード端子72は長さが異なるため、フィルムコンデンサ1の外部から、陽極及び陰極を区別することができる。
【0051】
本発明のフィルムコンデンサは、周囲が外装樹脂によって覆われていてもよく、外装ケース内に収容され、外装ケース内に充填樹脂が充填されていてもよい。
【0052】
外装樹脂又は充填樹脂の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。エポキシ樹脂の硬化剤には、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤を使用してもよい。また、外装樹脂又は充填樹脂には、樹脂のみを使用してもよいが、強度の向上を目的として、補強剤を添加してもよい。補強剤には、シリカ、アルミナなどを用いることができる。
【0053】
外装ケースの材料としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)などの樹脂が用いられる。
【0054】
本発明のフィルムコンデンサを、外装ケースに収容した場合の一例について、図6A及び図6Bを参照しながら説明する。
図6A及び図6Bは、図1に示すフィルムコンデンサの使用方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図6Aに示すように、フィルムコンデンサ1を外装ケース80に収容する。
続いて、図6Bに示すように、外装ケース80の内部に充填樹脂90を充填することにより、フィルムコンデンサ1の周囲を充填樹脂90で覆うとともに、外装ケース80の開口部を封止する。
このような使用方法であると、フィルムコンデンサの耐湿性が向上する。
【0055】
[その他の好ましい構成]
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含むことが好ましい。
【0056】
本明細書において、「主成分」とは、存在割合(重量%)が最も大きい成分を意味し、好ましくは、存在割合が50重量%を超える成分を意味する。したがって、誘電体樹脂フィルムは、主成分以外の成分として、例えば、シリコーン樹脂等の添加剤や、後述する第1有機材料及び第2有機材料等の出発材料の未硬化部分を含んでもよい。
【0057】
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、光硬化性樹脂であってもよい。
本明細書において、熱硬化性樹脂とは、熱で硬化し得る樹脂を意味しており、硬化方法を限定するものではない。したがって、熱で硬化し得る樹脂である限り、熱以外の方法(例えば、光、電子ビームなど)で硬化した樹脂も熱硬化性樹脂に含まれる。また、材料によっては材料自体が持つ反応性によって反応が開始する場合があり、必ずしも外部から熱又は光等を与えずに硬化が進むものについても熱硬化性樹脂とする。光硬化性樹脂についても同様であり、硬化方法を限定するものではない。
【0058】
硬化性樹脂は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、有していなくてもよい。
なお、ウレタン結合及び/又はユリア結合の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0059】
誘電体樹脂フィルムは、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなることが好ましい。例えば、第1有機材料が有する水酸基(OH基)と第2有機材料が有するイソシアネート基(NCO基)とが反応して得られる硬化物等が挙げられる。
【0060】
上記の反応によって硬化物を得る場合、出発材料の未硬化部分がフィルム中に残留してもよい。例えば、誘電体樹脂フィルムは、イソシアネート基(NCO基)及び水酸基(OH基)の少なくとも一方を含んでもよい。この場合、誘電体樹脂フィルムは、イソシアネート基及び水酸基のいずれか一方を含んでもよいし、イソシアネート基及び水酸基の両方を含んでもよい。
なお、イソシアネート基及び/又は水酸基の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0061】
第1有機材料は、分子内に複数の水酸基(OH基)を有するポリオールであることが好ましい。ポリオールとしては、例えば、ポリビニルアセトアセタール等のポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。第1有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。
【0062】
第2有機材料は、分子内に複数の官能基を有する、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂であることが好ましい。第2有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。
【0063】
イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネートの変性体、例えば、カルボジイミド又はウレタン等を有する変性体であってもよい。
【0064】
エポキシ樹脂としては、エポキシ環を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格エポキシ樹脂、シクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂、ナフタレン骨格エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0065】
メラミン樹脂としては、構造の中心にトリアジン環、その周辺にアミノ基3個を有する有機窒素化合物であれば特に限定されず、例えば、アルキル化メラミン樹脂等が挙げられる。その他、メラミンの変性体であってもよい。
【0066】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムは、望ましくは、第1有機材料及び第2有機材料を含む樹脂溶液をフィルム状に成形し、次いで、熱処理して硬化させることによって得られる。
【0067】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムは、他の機能を付加するための添加剤を含むこともできる。例えば、レベリング剤を添加することで平滑性を付与することができる。添加剤は、水酸基及び/又はイソシアネート基と反応する官能基を有し、硬化物の架橋構造の一部を形成する材料であることがより好ましい。このような材料としては、例えば、エポキシ基、シラノール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0068】
また、本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムは、蒸着重合膜を主成分として含んでもよい。蒸着重合膜は、蒸着重合法により成膜されたものを指し、基本的には硬化性樹脂に含まれる。
【0069】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルムを構成する樹脂及び第2の誘電体フィルムを構成する樹脂が、いずれも熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0070】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムの厚さは特に限定されないが、それぞれ、0.5μm以上、5μm以下であることが好ましい。
また、第1の誘電体フィルムの厚さと第2の誘電体フィルムの厚さが同じであることが好ましい。
なお、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムの厚さは、光学式膜厚計を用いて測定することができる。
【0071】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムは、同一材料で構成されていることが好ましい。ここで、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムが同一材料で構成されているとは、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムを構成する樹脂の種類が同じであり、その他の成分が含まれている場合には、その他の成分の種類や含有量も同じであることを意味する。
第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムが同一材料であると、製造コストを抑制することができる。
【0072】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の電極層及び第2の電極層(以下、まとめて電極層ともいう)に含まれる金属の種類は特に限定されないが、電極層は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれるいずれか1種を含むことが好ましい。
【0073】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、電極層の厚さは特に限定されないが、電極層の破損を抑制する観点から、電極層の厚さは、5nm以上、40nm以下であることが好ましい。
なお、電極層の厚さは、第1の誘電体フィルムを厚さ方向に切断した断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の電子顕微鏡を用いて観察することにより特定することができる。
【0074】
以下、本発明のフィルムコンデンサの好ましい実施形態である第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態及び第四実施形態について説明する。
第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態及び第四実施形態はいずれも、本発明のフィルムコンデンサの好ましい実施形態の1つであり、各実施形態に対して上述した本発明のフィルムコンデンサの好ましい実施形態を適宜組み合わせたものも、本発明のフィルムコンデンサの好ましい実施形態の1つである。
【0075】
(第一実施形態)
本発明のフィルムコンデンサの第一実施形態では、第1の誘電体フィルムは、第1主面の表面粗さが、第2主面の表面粗さよりも小さい。
【0076】
本発明のフィルムコンデンサの第一実施形態では、表面粗さがより小さい第1主面に、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンが設けられているため、第1の電極層の酸化劣化を抑制することができる。
【0077】
図7は、本発明のフィルムコンデンサの第一実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図7に示すフィルムコンデンサ2は、第1の誘電体フィルム10と、第2の誘電体フィルム20と、第1の電極層30と、第2の電極層40とが積層された状態で巻回された巻回体52を有している。
第1の電極層30は、第1の誘電体フィルム10の第1主面11に設けられている。
第2の電極層40は、第1の誘電体フィルム10の第2主面12に設けられている。
【0078】
図7に示すフィルムコンデンサ2では、第1主面11の表面粗さが第2主面12の表面粗さよりも小さくなっている。
なお、図7では、第1の誘電体フィルム10の2つの主面(第1主面11及び第2主面12)のうち、表面粗さが相対的に大きい方の主面(第2主面12)を波線で、表面粗さが相対的に小さい方の主面(第1主面11)を直線で表している。
【0079】
本発明のフィルムコンデンサの第一実施形態において、第2の誘電体フィルムでは、第4主面の表面粗さが第3主面の表面粗さより大きく、第4主面が第1の電極層と対向するように積層されていることが好ましい。
表面粗さがより大きな第4主面が第1の電極層と対向するように積層されていると、第1の電極層と第4主面との間に、ヒューズ部が作動して蒸発するための空間が確保されやすくなり、ヒューズ動作性が向上する。
図7に示すフィルムコンデンサ2では、第4主面22の表面粗さが第3主面21の表面粗さよりも大きく、第4主面22が第1の電極層30と対向するように積層されている。なお、図7では、第2の誘電体フィルム20の2つの主面(第3主面21及び第4主面22)のうち、表面粗さが相対的に大きい方の主面(第4主面22)を波線で、表面粗さが相対的に小さい方の主面(第3主面21)を直線で表している。
【0080】
本発明のフィルムコンデンサの第一実施形態では、第2の誘電体フィルムが、第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されており、巻芯の方向に沿った断面において、第2の誘電体フィルムの幅が第1の誘電体フィルムの幅よりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルムの一方の端部と他方の端部との間に第2の誘電体フィルムが配置されていることが好ましい。
【0081】
本発明のフィルムコンデンサの第一実施形態では、第2の誘電体フィルムが第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されている場合には、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態において、第2の誘電体フィルムの一方の端部が、第1の電極層の電極引き出し部と重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0082】
本発明のフィルムコンデンサの第一実施形態においては、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【0083】
本発明のフィルムコンデンサの第一実施形態においては、第1の外部電極が陽極側の外部電極であり、第2の外部電極が陰極側の外部電極であり、第1の電極層の厚さが、第2の電極層の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0084】
(第二実施形態)
本発明のフィルムコンデンサの第二実施形態は、上記第1の誘電体フィルムと上記第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、上記第1の誘電体フィルム及び上記第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きい。
【0085】
本発明のフィルムコンデンサの第二実施形態では、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きくなっているため、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムを積層して巻回する際に、巻回に使用する巻取ロールと積層体の巻芯側の主面との間に空気層が形成されにくくなり、フィルムが蛇行しにくくなる。その結果、巻回時の第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムの密着性が高くなり、耐ヒートショック性や耐電流性の高いフィルムコンデンサとなる。
【0086】
本発明のフィルムコンデンサの第二実施形態の一例について、図8を用いて説明する。
図8は、本発明のフィルムコンデンサの第二実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図8に示すように、フィルムコンデンサ3は、第1の誘電体フィルム10と第2の誘電体フィルム20とが積層された状態で巻回された巻回体53を備えている。第1の誘電体フィルム10及び第2の誘電体フィルム20では、いずれも、巻芯側に位置する主面(第1の誘電体フィルム10の第2主面12及び第2の誘電体フィルム20の第4主面22)の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面(第1の誘電体フィルム10の第1主面11及び第2の誘電体フィルムの第3主面21)の表面粗さよりも大きい。
なお、図8では、第1の誘電体フィルム10の2つの主面(第1主面11及び第2主面12)のうち、表面粗さが相対的に大きい方の主面(第2主面12)を波線で、表面粗さが相対的に小さい方の主面(第1主面11)を直線で表している。また、第2の誘電体フィルム20の2つの主面(第3主面21及び第4主面22)のうち、表面粗さが相対的に大きい方の主面(第4主面22)を波線で、表面粗さが相対的に小さい方の主面(第3主面21)を直線で表している。
【0087】
本発明のフィルムコンデンサの第二実施形態において、第1の誘電体フィルムでは、第1主面の表面粗さが、第2主面の表面粗さよりも小さく、第2の誘電体フィルムでは、第4主面の表面粗さが、第3主面の表面粗さよりも大きく、第4主面が、第1の電極層と対向するように積層されていることが好ましい。
【0088】
本発明のフィルムコンデンサの第二実施形態では、第2の誘電体フィルムが、第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されており、巻芯の方向に沿った断面において、第2の誘電体フィルムの幅が第1の誘電体フィルムの幅よりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルムの一方の端部と他方の端部との間に第2の誘電体フィルムが配置されていることが好ましい。
【0089】
本発明のフィルムコンデンサの第二実施形態では、第2の誘電体フィルムが第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されている場合には、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態において、第2の誘電体フィルムの一方の端部が、第1の電極層の電極引き出し部と重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0090】
本発明のフィルムコンデンサの第二実施形態においては、第1の外部電極が陽極側の外部電極であり、第2の外部電極が陰極側の外部電極であり、第1の電極層の厚さが、第2の電極層の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0091】
(第三実施形態)
本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態は、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムは、積層された状態で巻回されていてもよく、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが繰り返し積層されていてもよい。
以下、本発明の第三実施形態として、巻回型フィルムコンデンサを例にとって説明する。
【0092】
本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態は、上記第1の電極層と電気的に接続されて設けられた第1の外部電極と、上記第2の電極層と電気的に接続されて設けられた第2の外部電極と、をさらに備え、上記第1の外部電極は、陽極側の外部電極であり、上記第2の外部電極は、陰極側の外部電極であり、上記第1の電極層の厚さが、上記第2の電極層の厚さよりも大きい。
【0093】
本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態では、陽極側の外部電極と電気的に接続される第1の電極層の厚さが、陰極側の外部電極と接続される第2の電極層の厚さよりも大きいため、第1の電極層の陽極酸化が進行しにくい。そのため、ショート故障を起こしにくく、ショート故障に由来する静電容量の低下を抑制することができる。また、第2の電極層の厚さが第1の電極層の厚さよりも小さいため、第2の電極層の膜抵抗が高くなり、セルフヒーリング性を高めることができる。
【0094】
本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態では、フィルムコンデンサの極性が指定されている。具体的には、第1の外部電極を陽極側の外部電極とし、第2の外部電極を陰極側の外部電極としている。極性を指定する際には、第1の外部電極及び第2の外部電極にそれぞれ、第1のリード端子及び第2のリード端子を接続しておき、フィルムコンデンサの外側から、リード端子の極性を区別できるような工夫を施しておくことが好ましい。
上記工夫としては、例えば、陽極側のリード端子を陰極側のリード端子よりも長くする方法や、外装ケースの表面に極性を示す意匠を施す方法等が挙げられる。
【0095】
本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態の一例を、図9を参照しながら説明する。
図9は、本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図9に示すフィルムコンデンサ4は、第1の誘電体フィルム10と、第2の誘電体フィルム20と、第1の電極層30と、第2の電極層40とが積層された状態で巻回された巻回体54を備えている。
第1の電極層30は陽極側の外部電極である第1の外部電極61に電気的に接続されて設けられており、第2の電極層40は陰極側の外部電極である第2の外部電極61に電気的に接続されて設けられている。陽極側の外部電極である第1の外部電極61には相対的に長いリード端子71が接続されており、陰極側の外部電極である第2の外部電極62には相対的に短いリード端子72が接続されており、リード端子の長い第1のリード端子71が陽極側、リード端子の短い第2のリード端子72が陰極側と区別されている。
第1の電極層30の厚さは、第2の電極層40の厚さよりも大きい。
【0096】
本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態においては、第1の誘電体フィルムは、第1主面の表面粗さが、第2主面の表面粗さよりも小さいことが好ましい。
【0097】
本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態において、第2の誘電体フィルムでは、第4主面の表面粗さが第3主面の表面粗さより大きく、第4主面が第1の電極層と対向するように積層されていることが好ましい。
【0098】
本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態では、第2の誘電体フィルムが、第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されており、巻芯の方向に沿った断面において、第2の誘電体フィルムの幅が第1の誘電体フィルムの幅よりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルムの一方の端部と他方の端部との間に第2の誘電体フィルムが配置されていることが好ましい。
【0099】
本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態では、第2の誘電体フィルムが第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されている場合には、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態において、第2の誘電体フィルムの一方の端部が、第1の電極層の電極引き出し部と重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0100】
本発明のフィルムコンデンサの第三実施形態においては、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【0101】
(第四実施形態)
本発明のフィルムコンデンサの第四実施形態は、上記第1の誘電体フィルムと上記第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、上記第2の誘電体フィルムが、上記第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されており、巻芯の方向に沿った断面において、上記第2の誘電体フィルムの幅が上記第1の誘電体フィルムの幅よりも小さく、かつ、上記第1の誘電体フィルムの一方の端部と他方の端部との間に上記第2の誘電体フィルムが配置されている。
【0102】
本発明のフィルムコンデンサの第四実施形態では、第2の誘電体フィルムが、第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されており、巻芯の方向に沿った断面において、第2の誘電体フィルムの幅が第1の誘電体フィルムの幅よりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルムの一方の端部と他方の端部との間に上記第2の誘電体フィルムが配置されている。そのため、第1の電極層及び第2の電極層が設けられた第1の誘電体フィルムの両端部が、第2の誘電体フィルムよりも外側に突出し、電極層と外部電極との接触性を向上させることができる。
【0103】
図10は、本発明のフィルムコンデンサの第四実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
図10に示すフィルムコンデンサ5は、第1の誘電体フィルム10と、第2の誘電体フィルム20と、第1の電極層30と、第2の電極層40とが積層された状態で巻回された巻回体55を備えている。
巻回体55において、第2の誘電体フィルム20が第1の誘電体フィルム10よりも外側に巻回されている。
さらに、第2の誘電体フィルム20の幅Wは、第1の誘電体フィルム10の幅Wよりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルムの一方の端部10aと他方の端部10bとの間に第2の誘電体フィルム20が配置されている。
巻回体55の両端部には、第1の外部電極61及び第2の外部電極62が接続されている。
【0104】
本発明のフィルムコンデンサの第四実施形態では、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態において、第2の誘電体フィルムの一方の端部が、第1の電極層の電極引き出し部と重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0105】
本発明のフィルムコンデンサの第四実施形態においては、第1の誘電体フィルムは、第1主面の表面粗さが第2主面の表面粗さよりも小さいことが好ましい。
【0106】
本発明のフィルムコンデンサの第四実施形態においては、第2の誘電体フィルムでは、第4主面の表面粗さが第3主面の表面粗さより大きく、第4主面が第1の電極層と対向するように積層されていることが好ましい。
【0107】
本発明のフィルムコンデンサの第四実施形態においては、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【0108】
本発明のフィルムコンデンサの第四実施形態においては、第1の外部電極が陽極側の外部電極であり、第2の外部電極が陰極側の外部電極であり、第1の電極層の厚さが、第2の電極層の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0109】
[フィルムコンデンサの製造方法]
続いて、本発明のフィルムコンデンサを製造する方法について説明する。
本発明のフィルムコンデンサは、例えば、第1主面に第1の電極層を形成し、第2主面に第2の電極層を形成した第1の誘電体フィルムと、第3主面及び第4主面に電極層を形成していない第2の誘電体フィルムを積層した後、巻回して巻回体を得て、この巻回体の両端部にそれぞれ第1の外部電極及び第2の外部電極を形成し、第1の外部電極及び第2の外部電極にそれぞれ第1のリード端子及び第2のリード端子を接続し、外装ケース内に収容して充填樹脂によって封止する方法によって得ることができる。
【0110】
第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムの各主面に粗化処理を施して、表面粗さを調整してもよい。
【0111】
必要に応じて、巻回体を幅方向とは垂直な方向から挟んで楕円円筒形状にプレスしてもよい。
続いて、巻回体の端面に外部電極を形成し、リード端子を接続することにより、図1に示すようなフィルムコンデンサが得られる。巻回体の端面に外部電極を形成する方法としては、溶射が挙げられる。
【符号の説明】
【0112】
1、2、3、4、5 フィルムコンデンサ
10 第1の誘電体フィルム
10a 第1の誘電体フィルムの一方の端部
10b 第1の誘電体フィルムの他方の端部
11 第1主面
11a 第1主面のマージン部
12 第2主面
12a 第2主面のマージン部
20 第2の誘電体フィルム
21 第3主面
22 第4主面
30 第1の電極層
31 電極引き出し部
32 有効電極部
33 電極分離スリット
34 ヒューズ部
35 第1の領域
36 区画スリット
40 第2の電極層
41 第2の電極層の電極引き出し部
42 第2の電極層の有効電極部(第2の領域)
50、51、52、53、54、55 巻回体
61 第1の外部電極
62 第2の外部電極
71 第1のリード端子
72 第2のリード端子
80 外装ケース
90 充填樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10