(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
H01G4/32 511A
H01G4/32 511G
H01G4/32 511L
H01G4/32 511K
H01G4/32 544
H01G4/32 301A
(21)【出願番号】P 2021537584
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018696
(87)【国際公開番号】W WO2021024565
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019146345
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】城岸 賢
(72)【発明者】
【氏名】阪本 拓也
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/142561(WO,A1)
【文献】特開2017-191823(JP,A)
【文献】特開2010-165775(JP,A)
【文献】特開2004-095604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、
前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に対向する第1の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムの前記第2主面に対向する第2の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムに前記第1の電極層又は前記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、
前記第1の電極層と電気的に接続されて設けられた第1の外部電極と、
前記第2の電極層と電気的に接続されて設けられた第2の外部電極と、を備えたフィルムコンデンサであって、
前記第1の外部電極は、陰極側の外部電極であり、
前記第2の外部電極は、陽極側の外部電極であり、
前記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、
前記第2の電極層は、前記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有し、
前記第2の電極層の厚さが、前記第1の電極層の厚さよりも大きく、
前記第1の電極層は、前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に設けられ、
前記第2の電極層は、前記第2の誘電体フィルムの前記第3主面に設けられており、
前記第1の誘電体フィルムでは、前記第1主面の表面粗さが、前記第2主面の表面粗さよりも小さく、
前記第2の誘電体フィルムでは、前記第4主面の表面粗さが、前記第3主面の表面粗さよりも大きく、
前記第4主面が、前記第1の電極層と対向するように積層されている、
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、
前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に対向する第1の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムの前記第2主面に対向する第2の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムに前記第1の電極層又は前記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、
前記第1の電極層と電気的に接続されて設けられた第1の外部電極と、
前記第2の電極層と電気的に接続されて設けられた第2の外部電極と、を備えたフィルムコンデンサであって、
前記第1の外部電極は、陰極側の外部電極であり、
前記第2の外部電極は、陽極側の外部電極であり、
前記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、
前記第2の電極層は、前記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有し、
前記第2の電極層の厚さが、前記第1の電極層の厚さよりも大きく、
前記第1の電極層は、前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に設けられ、
前記第2の電極層は、前記第1の誘電体フィルムの前記第2主面に設けられており、
前記第1の誘電体フィルムでは、前記第1主面の表面粗さが、前記第2主面の表面粗さよりも小さく、
前記第2の誘電体フィルムでは、前記第4主面の表面粗さが、前記第3主面の表面粗さよりも大きく、
前記第4主面が、前記第1の電極層と対向するように積層されている、ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項3】
第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、
前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に対向する第1の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムの前記第2主面に対向する第2の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムに前記第1の電極層又は前記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、
前記第1の電極層と電気的に接続されて設けられた第1の外部電極と、
前記第2の電極層と電気的に接続されて設けられた第2の外部電極と、を備えたフィルムコンデンサであって、
前記第1の外部電極は、陰極側の外部電極であり、
前記第2の外部電極は、陽極側の外部電極であり、
前記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、
前記第2の電極層は、前記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有し、
前記第2の電極層の厚さが、前記第1の電極層の厚さよりも大きく、
前記第1の電極層は、前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に設けられ、
前記第2の電極層は、前記第2の誘電体フィルムの前記第3主面に設けられており、
前記第1の誘電体フィルムと前記第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、
前記第1の誘電体フィルム及び前記第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きい、
ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項4】
第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、
前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に対向する第1の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムの前記第2主面に対向する第2の電極層と、
前記第1の誘電体フィルムに前記第1の電極層又は前記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、
前記第1の電極層と電気的に接続されて設けられた第1の外部電極と、
前記第2の電極層と電気的に接続されて設けられた第2の外部電極と、を備えたフィルムコンデンサであって、
前記第1の外部電極は、陰極側の外部電極であり、
前記第2の外部電極は、陽極側の外部電極であり、
前記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、
前記第2の電極層は、前記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有し、
前記第2の電極層の厚さが、前記第1の電極層の厚さよりも大きく、
前記第1の電極層は、前記第1の誘電体フィルムの前記第1主面に設けられ、
前記第2の電極層は、前記第1の誘電体フィルムの前記第2主面に設けられており、
前記第1の誘電体フィルムと前記第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、
前記第1の誘電体フィルム及び前記第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きい、ことを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記第1の誘電体フィルムでは、前記第1主面の表面粗さが、前記第2主面の表面粗さよりも小さく、
前記第2の誘電体フィルムでは、前記第4主面の表面粗さが、前記第3主面の表面粗さよりも大きく、
前記第4主面が、前記第1の電極層と対向するように積層されている、請求項
3又は4に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記第1の誘電体フィルム及び前記第2の誘電体フィルムは、同一材料で構成されている、請求項1~
5のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記第1の誘電体フィルムを構成する前記樹脂及び前記第2の誘電体フィルムを構成する前記樹脂が、いずれも熱硬化性樹脂である、請求項1~
6のいずれかに記載のフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサの一種として、可撓性のある樹脂フィルムを誘電体として用いながら、樹脂フィルムを挟んで互いに対向する第1対向電極及び第2対向電極を配置した構造のフィルムコンデンサがある。このようなフィルムコンデンサは、例えば、第1対向電極が形成された樹脂フィルムと第2対向電極が形成された樹脂フィルムとを巻回または積層することによって作製される(例えば、特許文献1~2参照)。
【0003】
特許文献1は、金属化フィルムを重ね合わせ軸方向の両端部に金属電極を形成してなるコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の前記各金属電極に接続された陽極側および陰極側の外部引き出し端子とを備えた金属化フィルムコンデンサにおいて、第1の金属化フィルムが、その金属蒸着電極が分割され相互にヒューズ部を介して繋がれた状態の第1の電極パターンを有し、かつ前記陽極側の外部引き出し端子に接続され、一方、前記第2の金属化フィルムが、その金属蒸着電極が連続したままの非分割状態または前記第1の金属化フィルムの金属蒸着電極より大きな面積で分割された状態の第2の電極パターンを有し、その膜抵抗値が前記第1の金属化フィルムの金属蒸着電極の膜抵抗値よりも大きく、かつ、前記陰極側の外部引き出し端子に接続されているフィルムコンデンサを開示している。
【0004】
特許文献2は、第1蒸着電極、第2蒸着電極、および少なくとも2枚の誘電体フィルムを具備したフィルムコンデンサ素子の両側にメタリコン部を形成したものにあって、前記第1蒸着電極は分割スリットにより分割されて格子状に配列された複数の分割電極と前記分割電極を並列に接続したヒューズとを有し、前記第2電極は分割スリットが無くその容量形成部の膜抵抗値を前記第1蒸着電極より高くしてなる金属化フィルムコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-191823号公報
【文献】特開2004-95604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、ヒューズ部を有する分割電極を陽極側に接続し、かつ、その膜抵抗値を、ヒューズ部を有しない非分割電極の膜抵抗値よりも低くすることによって、耐電圧性能を向上させることを開示している。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のフィルムコンデンサは、陽極側にヒューズ部を有する分割電極が配置されているため、125℃を超えるような高温環境においては陽極酸化反応が進行してしまい、陽極側に配置された分割電極の膜抵抗値が増加してしまう。分割電極の膜抵抗値が増加してしまうと、蒸着パターン内のヒューズを動作させるために必要な電流を供給できず、ショート故障を起こしてしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献2は、分割電極の膜抵抗値よりも非分割電極の膜抵抗値を高くすることによって、非分割電極の自己回復性能を向上させることができることを開示している。ただし、特許文献2は、分割電極及び非分割電極を、陽極及び陰極のどちらに配置するかについては明示していない。
しかしながら、特許文献2において、膜抵抗の高い非分割電極を陽極側に配置すると、元々膜抵抗の高い非分割電極で陽極酸化反応が進行してさらに膜抵抗が増加するという問題が生じる。一方、膜抵抗の高い非分割電極を陰極側に配置すると、特許文献1と同様の問題が生じる。
【0009】
このような事情から、125℃を超える高温環境下においても、ヒューズ動作性が低下しにくいフィルムコンデンサが要望されていた。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、125℃を超える高温環境下においても、ヒューズ動作性が低下しにくいフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のフィルムコンデンサは、第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、上記第1の誘電体フィルムの上記第1主面に対向する第1の電極層と、上記第1の誘電体フィルムの上記第2主面に対向する第2の電極層と、上記第1の誘電体フィルムに上記第1の電極層又は上記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、上記第1の電極層と電気的に接続されて設けられた第1の外部電極と、上記第2の電極層と電気的に接続されて設けられた第2の外部電極と、を備えたフィルムコンデンサであって、上記第1の外部電極は、陰極側の外部電極であり、上記第2の外部電極は、陽極側の外部電極であり、上記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、上記第2の電極層は、上記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有し、上記第2の電極層の厚さが、上記第1の電極層の厚さよりも大きい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、125℃を超える高温環境下においてもヒューズ動作性が低下しにくいフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体を得る方法の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4Aは、第1の電極層の一例を模式的に示す上面図であり、
図4Bは、第2の電極層の一例を模式的に示す上面図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、
図1に示すフィルムコンデンサの使用方法の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明のフィルムコンデンサの別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図6に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフィルムコンデンサについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0015】
[フィルムコンデンサ]
本発明のフィルムコンデンサは、第1主面及び第2主面を有し、樹脂からなる第1の誘電体フィルムと、上記第1の誘電体フィルムの上記第1主面に対向する第1の電極層と、上記第1の誘電体フィルムの上記第2主面に対向する第2の電極層と、上記第1の誘電体フィルムに上記第1の電極層又は上記第2の電極層を介して積層され、第3主面及び第4主面を有し、樹脂からなる第2の誘電体フィルムと、上記第1の電極層と電気的に接続されて設けられた第1の外部電極と、上記第2の電極層と電気的に接続されて設けられた第2の外部電極と、を備えたフィルムコンデンサであって、上記第1の外部電極は、陰極側の外部電極であり、上記第2の外部電極は、陽極側の外部電極であり、上記第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有し、上記第2の電極層は、上記第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有し、上記第2の電極層の厚さが、上記第1の電極層の厚さよりも大きい、ことを特徴とする。
【0016】
本発明のフィルムコンデンサでは、陽極側の外部電極と接続される第2の電極層の厚さを厚くすることで、第2の電極層の膜抵抗値を低下させて、陽極酸化反応の進行を抑制することができる。さらに、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部介して相互に接続された第1の電極パターンを有する第1の電極層は陰極側に配置されているため、陽極酸化反応が進行せず、125℃を超える高温環境下においても、ヒューズ動作性が低下しにくい。
加えて、陽極側の外部電極と接続される第1の電極層の厚さが第2の電極層の厚さよりも小さいため、第1の電極層の膜抵抗値が高く、ヒューズ動作性を高めることができる。
【0017】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムは、積層された状態で巻回されていてもよく、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが繰り返し積層されていてもよい。
以下、本発明のフィルムコンデンサとして、巻回型フィルムコンデンサを例にとって説明する。
【0018】
図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図であり、
図2は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体を得る方法の一例を模式的に示す斜視図であり、
図3は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すフィルムコンデンサ1は、第1の誘電体フィルム10と、第2の誘電体フィルム20と、第1の電極層30と、第2の電極層40とが積層された状態で巻回された巻回体51を備えている。
第1の電極層30は、第1の誘電体フィルム10の第1主面11に設けられている。
第2の電極層40は、第2の誘電体フィルム20の第3主面21に設けられている。
【0019】
第2の電極層40の厚さは、第1の電極層30の厚さよりも大きい。
【0020】
巻回体51の一方の端部には第1の外部電極61が形成されており、第1の外部電極61は第1の電極層30と電気的に接続されている。
第1の外部電極61は、陰極側の外部電極である。
【0021】
巻回体51の他方の端部には第2の外部電極62が形成されており、第2の外部電極62は第2の電極層40と電気的に接続されている。
第2の外部電極62は、陽極側の外部電極である。
【0022】
第1の外部電極61には第1のリード端子71が接続され、第2の外部電極62には第2のリード端子72が接続されている。
第2のリード端子72の長さは、第1のリード端子71の長さよりも長いため、フィルムコンデンサ1を外部からみたときに、第2のリード端子72と第1のリード端子71は区別可能な状態となっている。
【0023】
図2に示すように、巻回体50では、第2の誘電体フィルム20よりも第1の誘電体フィルム10が外側に巻回されている。
第2の誘電体フィルム20の外側の主面(第3主面21)に第2の電極層40が設けられている。また第1の誘電体フィルム10の外側の主面(第1主面11)に第1の電極層30が設けられている。
図2に示す巻回体50を変形させることで、
図1及び
図3に示す巻回体51が得られる。
【0024】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルムでは、第1主面の表面粗さが、第2主面の表面粗さよりも小さいことが好ましい。
誘電体フィルムの表面の凹凸が大きいと、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有する第1の電極層の表面に、酸化劣化の起点となる欠損が形成されやすい。従って、表面粗さがより小さい第1主面に第1の電極層を設けることによって、第1の電極層の酸化劣化を抑制することができる。
図1に示すフィルムコンデンサでは、第1主面11の表面粗さが第2主面12の表面粗さよりも小さくなっている。
なお、
図1では、第1の誘電体フィルム10の2つの主面(第1主面11及び第2主面12)のうち、表面粗さが相対的に大きい方の主面(第2主面12)を波線で、表面粗さが相対的に小さい方の主面(第1主面11)を直線で表している。
【0025】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第2の誘電体フィルムでは、第4主面の表面粗さが第3主面の表面粗さより大きく、第4主面が第1の電極層と対向するように積層されていることが好ましい。
表面粗さがより大きな第4主面が第1の電極層と対向するように積層されていると、第1の電極層と第4主面との間に、ヒューズ部が作動して蒸発するための空間が確保されやすくなり、ヒューズ動作性が向上する。
図1に示すフィルムコンデンサ1では、第4主面22の表面粗さが第3主面21の表面粗さよりも大きく、第4主面22が第1の電極層30と対向するように積層されている。
なお、
図1では、第2の誘電体フィルム20の2つの主面(第3主面21及び第4主面22)のうち、表面粗さが相対的に大きい方の主面(第4主面22)を波線で、表面粗さが相対的に小さい方の主面(第3主面21)を直線で表している。
【0026】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1主面の表面粗さは、1μm以上、10μm以下であることが好ましく、1μm以上、10μm未満であることがより好ましい。
【0027】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第2主面の表面粗さは、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0028】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第3主面の表面粗さは、1μm以上、10μm以下であることが好ましく、1μm以上、10μm未満であることがより好ましい。
【0029】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第4主面の表面粗さは、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0030】
第1主面、第2主面、第3主面及び第4主面の表面粗さは、JIS B 0601:2013において規定される算術平均粗さRaを意味する。表面粗さRaは、非接触式のレーザー表面粗さ計(例えば、キーエンス社製VK-X210)を使用して測定することができる。
【0031】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の電極層は、スリットにより区画された第1の領域がヒューズ部を介して相互に接続された第1の電極パターンを有している。
第1の電極層は、第2の電極層と対向する有効電極部と、第1の誘電体フィルムの一方の側端に沿って帯状に設けられる電極引き出し部とをさらに有することが好ましい。
このとき、有効電極部及び電極引き出し部は、電極引き出し部と平行に配置される電極分離スリットによって分離されるとともに、電極分離スリットを部分的に横切るヒューズ部によって接続されていることが好ましい。
さらに、第1主面には、電極引き出し部が設けられた側端とは反対側の側端に沿って帯状に設けられる、第1の電極層が設けられていない部分(以下、第1マージン部ともいう)を備える。
【0032】
図4Aは、第1の電極層の一例を模式的に示す上面図である。
図4Aに示すように、第1の誘電体フィルム10の第1主面11には、第1の電極層30が設けられている。
第1の電極層30は、第2の電極層40と対向する有効電極部32と、第1の誘電体フィルム10の一方の端部10aに沿って帯状に設けられる電極引き出し部31とを有する。
有効電極部32と電極引き出し部31は、電極引き出し部31と平行に配置される電極分離スリット33によって分離されるとともに、電極分離スリット33を部分的に横切るヒューズ部34によって接続されている。有効電極部32は、電極分離スリット33及び区画スリット36(まとめてスリットともいう)により区画された第1の領域35がヒューズ部34を介して相互に接続された第1の電極パターンを有する。
また、第1主面11において、第1の誘電体フィルム10の他方の端部10bには、第1の電極層30が設けられていない第1マージン部11aが存在する。
【0033】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第2の電極層は、第1の領域よりも大きい面積の第2の領域を有する。
第2の領域は、スリットにより区画された領域であってもよく、スリットにより区画されていない領域であってもよい。
第2の電極層は、第1の電極層と対向する有効電極部と、第1の誘電体フィルムの他方の側端(第1の電極層の電極引き出し部が設けられている側端とは反対側の側端)に沿って帯状に設けられる電極引き出し部とをさらに有することが好ましい。
【0034】
図4Bは、第2の電極層の一例を模式的に示す上面図である。
図4Bに示すように、第2の誘電体フィルム20の第3主面21には、第2の電極層40が設けられている。
第2の電極層40には、第2の誘電体フィルム20の他方の端部20bに沿って帯状に設けられる電極引き出し部41と、第1の電極層30と対向する有効電極部42とが存在する。電極引き出し部41と有効電極部42の間には、スリット等は設けられていない。第2の電極層40にはスリット等が設けられていないので、第2の電極層40は、第1の領域よりも大きな面積の第2の領域を有しているといえる。
また、第3主面21において、第2の誘電体フィルム20の一方の端部20aには、第2の電極層40が設けられてない第2マージン部21aが存在する。
【0035】
図4Bには、スリットにより区画されていない第2の領域を有する第2の電極層の例を説明したが、第2の電極層は、スリットにより区画された第2の領域を有していてもよい。ただし、第2の領域の面積は、第1の領域の面積よりも大きい。スリットにより区画された第2の領域は、ヒューズ部を介して相互に接続されていてもよい。
【0036】
各第1の領域の面積が異なる場合は、第2の領域の面積との比較に、第1の領域の平均面積を用いる。第2の電極層に存在する、第1の領域の平均面積よりも大きい領域が、第2の領域となる。第2の電極層は、第2の領域以外の領域として、第1の領域の面積よりも小さい面積の領域を有していてもよい。
【0037】
第1の領域の面積に対する第2の領域の面積の割合は、150%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましい。
【0038】
第1の電極層の有効電極部において、コンデンサ容量に寄与しない面積の割合は、5%以上、10%以下であることが好ましい。
また、第2の電極層の有効電極部において、コンデンサ容量に寄与しない面積の割合は、0%以上、5%未満であることが好ましい。コンデンサ容量に寄与しない面積の割合が0%の場合は、いわゆるベタパターンである。
【0039】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、巻回体は、断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、よりコンパクトな形状とされることが望ましい。
巻回体の断面形状における扁平率は、0.7未満であることが好ましい。巻回体の断面形状における扁平率が0.7以上であると、フィルムコンデンサの振動及び唸り音が大きくなってしまうことがある。
扁平率fは、巻回体の外形をノギス等で測定した際の長径aと短径bよりf=[(a-b)/b]で求めることができる。
【0040】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、巻回体は、円柱状の巻回軸を備えていてもよい。巻回軸は、巻回状態の第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムの中心軸線上に配置されるものであり、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムを巻回する際の巻軸となるものである。
【0041】
本発明のフィルムコンデンサは、第1の外部電極及び第2の外部電極にそれぞれ、端子導体やリード端子が接続されていてもよい。
図1に示すフィルムコンデンサ1は、第1の外部電極61に接続される第1のリード端子71と、第2の外部電極62に接続される第2のリード端子72を備えている。
【0042】
図1に示すフィルムコンデンサ1から、第1の外部電極61及び第2の外部電極を削除したものや、第1の外部電極61及び第2の外部電極62に代わって第1の端子導体及び第2の端子導体を備えるものも、本発明のフィルムコンデンサである。
【0043】
本発明のフィルムコンデンサは、極性が指定されている。
具体的には、第1の外部電極は陰極側の外部電極であり、第2の外部電極は陽極側の外部電極である。
極性を区別する方法は特に限定されないが、陽極側に接続されるリード端子の長さと陰極側に接続されるリード端子の長さを変える(例えば、陽極側に接続されるリード端子の長さを陰極側に接続されるリード端子の長さよりも長くする)方法や、フィルムコンデンサの表面に、極性を区別できるような意匠を施す方法等が挙げられる。
図1に示すフィルムコンデンサ1では、陽極側の外部電極となる第2の外部電極62に接続される第2のリード端子72の長さが、陰極側の外部電極となる第1の外部電極61に接続される第1のリード端子71の長さよりも長くなっている。
【0044】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態で巻回されており、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムでは、いずれも、巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。
巻芯側に位置する主面の表面粗さが、巻芯と反対側に位置する主面の表面粗さよりも大きいと、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムを積層して巻回する際に、巻回に使用する巻取ロールと積層体の巻芯側の主面との間に空気層が形成されにくくなり、フィルムが蛇行しにくくなる。そのため、巻回時の第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムの密着性が高くなり、耐ヒートショック性や耐電流性の高いフィルムコンデンサとなる。
【0045】
本発明のフィルムコンデンサは、周囲が外装樹脂によって覆われていてもよく、外装ケース内に収容され、外装ケース内に充填樹脂が充填されていてもよい。
【0046】
外装樹脂又は充填樹脂の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。エポキシ樹脂の硬化剤には、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤を使用してもよい。また、外装樹脂又は充填樹脂には、樹脂のみを使用してもよいが、強度の向上を目的として、補強剤を添加してもよい。補強剤には、シリカ、アルミナなどを用いることができる。
【0047】
外装ケースの材料としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)などの樹脂が用いられる。
【0048】
本発明のフィルムコンデンサを、外装ケースに収容した場合の一例について、
図5A及び
図5Bを参照しながら説明する。
図5A及び
図5Bは、
図1に示すフィルムコンデンサの使用方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図5Aに示すように、フィルムコンデンサ1を外装ケース80に収容する。
続いて、
図5Bに示すように、外装ケース80の内部に充填樹脂90を充填することにより、フィルムコンデンサ1の周囲を充填樹脂90で覆うとともに、外装ケース80の開口部を封止する。
このような使用方法であると、フィルムコンデンサの耐湿性が向上する。
【0049】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の電極層及び第2の電極層が設けられる位置は特に限定されないが、第1の電極層と第2の電極層が別々の誘電体フィルムに設けられている場合と、第1の電極層と第2の電極層が同じ誘電体フィルムに設けられている場合の両方が挙げられる。
【0050】
第1の電極層と第2の電極層が別々の誘電体フィルムに設けられている場合、第1の電極層は第1の誘電体フィルムの第1主面に設けられ、第2の電極層は第2の誘電体フィルムの第3主面に設けられていることが好ましい。
図1及び
図2に示す巻回体(
図1では巻回体51、
図2では巻回体50)では、第1の電極層30が第1の誘電体フィルム10の第1主面11に設けられており、第2の電極層40が第2の誘電体フィルム20の第3主面21に設けられている。
【0051】
第1の電極層と第2の電極層が同じ誘電体フィルムに設けられている場合、第1の電極層は第1の誘電体フィルムの第1主面に設けられ、第2の電極層は第1の誘電体フィルムの第2主面に設けられていることが好ましい。この場合、第2の誘電体フィルムには電極層が設けられていない。
【0052】
第1の電極層と第2の電極層が同じ誘電体フィルムに設けられている場合の一例を、
図6、
図7及び
図8を参照しながら説明する。
図6は、本発明のフィルムコンデンサの別の一例を模式的に示す断面図であり、
図7は、
図6に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体の一例を模式的に示す斜視図であり、
図8は、
図6に示すフィルムコンデンサを構成する巻回体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図6に示すように、フィルムコンデンサ2は、第1の誘電体フィルム10と、第2の誘電体フィルム20と、第1の電極層30と、第2の電極層40とが積層され巻回された巻回体53を備えている。
【0053】
第2の誘電体フィルム20の幅W2は、第1の誘電体フィルム10の幅W1よりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルム10の一方の端部10aと他方の端部10bとの間に第2の誘電体フィルム20が配置されている。
【0054】
第1の電極層30は、第1の誘電体フィルム10の第1主面11に設けられている。
第2の電極層40は、第1の誘電体フィルム10の第2主面12に設けられている。
【0055】
第2の電極層40の厚さは、第1の電極層30の厚さよりも大きい。
【0056】
巻回体53の一方の端部には陰極側の外部電極である第1の外部電極61が形成されており、第1の外部電極61は第1の電極層30と電気的に接続されている。
巻回体53の他方の端部には陽極側の外部電極である第2の外部電極62が形成されており、第2の外部電極62は第2の電極層40と電気的に接続されている。
【0057】
第1の外部電極61には第1のリード端子71が接続され、第2の外部電極62には第2のリード端子72が接続されている。
第2のリード端子72の長さは、第1のリード端子71の長さよりも長いため、フィルムコンデンサ2を外部からみたときに、第2のリード端子72と第1のリード端子71は区別可能な状態となっている。
【0058】
図7に示すように、巻回体52では、第1の誘電体フィルムよりも外側に第2の誘電体フィルム20が巻回されている。
第1の誘電体フィルム10の外側の主面(第1主面11)に第1の電極層30が設けられている。また第1の誘電体フィルム10の内側の主面(第2主面12)に第2の電極層40が設けられている。
図7に示す巻回体52を変形させることで、
図6及び
図8に示す巻回体53が得られる。
【0059】
第1の電極層と第2の電極層が同じ誘電体フィルムに設けられている場合、本発明のフィルムコンデンサでは、第2の誘電体フィルムが、第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されており、巻芯の方向に沿った断面において、第2の誘電体フィルムの幅が第1の誘電体フィルムの幅よりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルムの一方の端部と他方の端部との間に第2の誘電体フィルムが配置されていることが好ましい。
第2の誘電体フィルムが、第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されており、巻芯の方向に沿った断面において、第2の誘電体フィルムの幅が第1の誘電体フィルムの幅よりも小さく、かつ、第1の誘電体フィルムの一方の端部と他方の端部との間に第2の誘電体フィルムが配置されていると、第1の誘電体フィルムの一方の端部及び他方の端部の両方が、第2の誘電体フィルムよりも外側(巻回軸の両端側)に突出していることになるため、第1の誘電体フィルムの表面に形成された電極層(第1の電極層及び第2の電極層)が外部電極と接触する面積が増加し、電極層と外部電極との接触性が向上する。
【0060】
第1の電極層と第2の電極層が同じ誘電体フィルムに設けられており、かつ、第2の誘電体フィルムが第1の誘電体フィルムよりも外側に巻回されている場合、本発明のフィルムコンデンサは、第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムとが積層された状態において、第2の誘電体フィルムの一方の端部が、第1の電極層の電極引き出し部と重なる位置に配置されていることが好ましい。
第2の誘電体フィルムは可視領域から赤外領域における光透過性を有するため、その輪郭を画像認識等で認識し難い。しかし、外側に巻回される第2の誘電体フィルムの一方の端部(輪郭の一部)の奥側(内側)に電極引き出し部(第1の電極層の一部)が配置されている場合、可視領域から赤外領域における光透過性の低い電極引き出し部が背景となって、第2の誘電体フィルムの輪郭を画像認識等で認識しやすくなる。そのため、画像認識等によりフィルムのずらし幅を管理することが容易となり、巻回時のフィルムのずれによる耐ヒートショック性や耐電流特性の低下を抑制することができる。
【0061】
[その他の好ましい構成]
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含むことが好ましい。
【0062】
本明細書において、「主成分」とは、存在割合(重量%)が最も大きい成分を意味し、好ましくは、存在割合が50重量%を超える成分を意味する。したがって、誘電体樹脂フィルムは、主成分以外の成分として、例えば、シリコーン樹脂等の添加剤や、後述する第1有機材料及び第2有機材料等の出発材料の未硬化部分を含んでもよい。
【0063】
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、光硬化性樹脂であってもよい。
本明細書において、熱硬化性樹脂とは、熱で硬化し得る樹脂を意味しており、硬化方法を限定するものではない。したがって、熱で硬化し得る樹脂である限り、熱以外の方法(例えば、光、電子ビームなど)で硬化した樹脂も熱硬化性樹脂に含まれる。また、材料によっては材料自体が持つ反応性によって反応が開始する場合があり、必ずしも外部から熱又は光等を与えずに硬化が進むものについても熱硬化性樹脂とする。光硬化性樹脂についても同様であり、硬化方法を限定するものではない。
【0064】
硬化性樹脂は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、有していなくてもよい。
なお、ウレタン結合及び/又はユリア結合の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0065】
誘電体樹脂フィルムは、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなることが好ましい。例えば、第1有機材料が有する水酸基(OH基)と第2有機材料が有するイソシアネート基(NCO基)とが反応して得られる硬化物等が挙げられる。
【0066】
上記の反応によって硬化物を得る場合、出発材料の未硬化部分がフィルム中に残留してもよい。例えば、誘電体樹脂フィルムは、イソシアネート基(NCO基)及び水酸基(OH基)の少なくとも一方を含んでもよい。この場合、誘電体樹脂フィルムは、イソシアネート基及び水酸基のいずれか一方を含んでもよいし、イソシアネート基及び水酸基の両方を含んでもよい。
なお、イソシアネート基及び/又は水酸基の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0067】
第1有機材料は、分子内に複数の水酸基(OH基)を有するポリオールであることが好ましい。ポリオールとしては、例えば、ポリビニルアセトアセタール等のポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。第1有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。
【0068】
第2有機材料は、分子内に複数の官能基を有する、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂であることが好ましい。第2有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。
【0069】
イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネートの変性体、例えば、カルボジイミド又はウレタン等を有する変性体であってもよい。
【0070】
エポキシ樹脂としては、エポキシ環を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格エポキシ樹脂、シクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂、ナフタレン骨格エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0071】
メラミン樹脂としては、構造の中心にトリアジン環、その周辺にアミノ基3個を有する有機窒素化合物であれば特に限定されず、例えば、アルキル化メラミン樹脂等が挙げられる。その他、メラミンの変性体であってもよい。
【0072】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムは、望ましくは、第1有機材料及び第2有機材料を含む樹脂溶液をフィルム状に成形し、次いで、熱処理して硬化させることによって得られる。
【0073】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムは、他の機能を付加するための添加剤を含むこともできる。例えば、レベリング剤を添加することで平滑性を付与することができる。添加剤は、水酸基及び/又はイソシアネート基と反応する官能基を有し、硬化物の架橋構造の一部を形成する材料であることがより好ましい。このような材料としては、例えば、エポキシ基、シラノール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0074】
また、本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムは、蒸着重合膜を主成分として含んでもよい。蒸着重合膜は、蒸着重合法により成膜されたものを指し、基本的には硬化性樹脂に含まれる。
【0075】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルムを構成する樹脂及び第2の誘電体フィルムを構成する樹脂が、いずれも熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0076】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムの厚さは特に限定されないが、それぞれ、0.5μm以上、5μm以下であることが好ましい。
また、第1の誘電体フィルムの厚さと第2の誘電体フィルムの厚さが同じであることが好ましい。
なお、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムの厚さは、光学式膜厚計を用いて測定することができる。
【0077】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムは、同一材料で構成されていることが好ましい。ここで、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムが同一材料で構成されているとは、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムを構成する樹脂の種類が同じであり、その他の成分が含まれている場合には、その他の成分の種類や含有量も同じであることを意味する。
第1の誘電体フィルムと第2の誘電体フィルムが同一材料であると、製造コストを抑制することができる。
【0078】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、第1の電極層及び第2の電極層(以下、まとめて電極層ともいう)に含まれる金属の種類は特に限定されないが、電極層は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれるいずれか1種を含むことが好ましい。
【0079】
本発明のフィルムコンデンサにおいて、電極層の厚さは特に限定されないが、電極層の破損を抑制する観点から、電極層の厚さは、5nm以上、40nm以下であることが好ましい。
なお、電極層の厚さは、第1の誘電体フィルムを厚さ方向に切断した断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の電子顕微鏡を用いて観察することにより特定することができる。
【符号の説明】
【0080】
1、2 フィルムコンデンサ
10 第1の誘電体フィルム
10a 第1の誘電体フィルムの一方の端部
10b 第1の誘電体フィルムの他方の端部
11 第1主面
11a 第1マージン部
12 第2主面
20 第2の誘電体フィルム
20a 第2の誘電体フィルムの一方の端部
20b 第2の誘電体フィルムの他方の端部
21 第3主面
21a 第2マージン部
22 第4主面
30 第1の電極層
31 第1の電極層の電極引き出し部
32 第1の電極層の有効電極部
33 電極分離スリット
34 ヒューズ部
35 第1の領域
36 区画スリット
40 第2の電極層
41 第2の電極層の電極引き出し部
42 第2の電極層の有効電極部(第2の領域)
50、51、52、53 巻回体
61 第1の外部電極
62 第2の外部電極
71 第1のリード端子
72 第2のリード端子
80 外装ケース
90 充填樹脂