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特許7301980銅ナノクラスター、それを含む組成物、及び神経変性疾患の治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】銅ナノクラスター、それを含む組成物、及び神経変性疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/34 20060101AFI20230626BHJP
   A61K 31/30 20060101ALI20230626BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20230626BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20230626BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230626BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230626BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
A61K33/34
A61K31/30
A61K47/62
A61K47/61
A61K47/54
A61K9/14
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P21/00
A61P27/06
A61P39/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021541300
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 CN2019093451
(87)【国際公開番号】W WO2020147267
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/071901
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521313935
【氏名又は名称】武漢広行科学研究有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN VAST CONDUCT SCIENCE FOUNDATION CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 506, Building 1, Optics Valley International Biomedical Enterprise Accelerator, No. 388 Gaoxin 2nd Road, Donghu New Technology Development Zone Wuhan, Hubei 430070 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】スゥン、タオレイ
(72)【発明者】
【氏名】チァン、バイソォン
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104458050(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105834444(CN,A)
【文献】J.Am.Chem.Soc,2018年12月,Vol.141,pp.1091-1099
【文献】Biomacromolecules,2009年,Vol.10,pp.2632-2639
【文献】J Fluoresc,2017年,Vol.27,pp.529-536
【文献】J.Exp.Med.,2012年,Vol.209,pp.837-854
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、銅ナノクラスターを含み、前記銅ナノクラスターがリガンドを含
前記リガンドは、チミン、チミンで修飾したヒアルロン酸、L-システイン、N-イソブタノイル-L-システイン、N-アセチル-L-システイン、D-システイン、N-イソブタノイル-D-システイン、N-アセチル-D-システイン、L-システイン-L-アルギニンジペプチド、L-アルギニン-L-システインジペプチド、L-ヒスチジン-L-システインジペプチド、L-システイン-L-ヒスチジンジペプチド、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド、L-リジン-L-システイン-L-プロリントリペプチド、L-グルタチオン、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド、グリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、及びドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる、医薬組成物。
【請求項2】
前記リガンドで修飾した銅ナノクラスターは、直径の範囲が0.5~3nmである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記リガンドで修飾した銅ナノクラスターは、直径の範囲が0.5~2.5nmである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳症、及び緑内障からなる群より選ばれる、請求項1に記載の医薬組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患の技術分野に関し、特に銅ナノクラスター(CuNCs)、CuNCsを含む組成物、及びそれらの神経変性疾患の治療における応用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患は、ヒトの健康への主要な脅威の1つであり、その特徴は、神経細胞の進行的損傷及び神経損失であり、これにより、運動や認知機能の低下をもたらす。一般的な神経変性疾患には、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳失調症(SCA)、及び緑内障(Kim 2015;Liu 2017;SingH2019)が含まれる
【0003】
神経変性疾患の発症機序は、活性酸素種(ROS)により引き起こされる酸化ストレス(OS)により開始又は加速されると考えられる。ROSは、酸素由来の反応性分子の群として定義され、これは一般に、未成対価電子により短寿命で反応性が高い。ROSは、遊離ラジカル(スーパーオキシド、O )、ヒドロキシルラジカル(・OH)、又は非ラジカル(過酸化水素、H)を含むが、これらに限定されない。それらは、生物学的系内で自然に生成され、炎症、細胞生存、及びストレッサ応答のような細胞応答、並びに心臓血管障害、筋肉機能不全、アレルギー、癌、及び神経変性疾患を含む多くの疾患に関与する面で重要な役割を果たす。それらの反応性のために、高濃度のROSは、細胞死又は酸化ストレス(OS)につながる可能性がある。OSは、酸化促進剤レベルと酸化防止剤レベルとの間の不均衡により生成される条件である。神経変性疾患の複雑な発症機序は、未だ未知のことが多いが、増大したOSが様々な神経変性疾患における潜在的な共通病因の1つとして示唆される(Kim 2015;Liu 2017;SingH2019)。
【0004】
アルツハイマー病(AD)は、最も一般的な神経変性障害であり、挙動、認知及び機能が徐々に低下することを特徴とする。ADの病態生理学は、主としてアミロイドβ(Aβ)プラークの細胞外沈着及び細胞内タウ神経原線維変化(NFT)の蓄積に関連する。ADの初期段階においても、Aβの蓄積は、OSを増加させ、ミトコンドリア機能不全及びエネルギー障害につながるようである。また、OSは、Aβの産生及び凝集を悪化させ、タウタンパク質のリン酸化を促進することができ、これはADの発症機序の悪質なサイクルを引き起こす可能性がある。ROS誘導OSは、ROS過剰産生がADの開始及び進行において重要な役割を果たすと考えられているので、ADの発症機序において重要な因子として出現する(Kim 2015;Liu 2017;Cheignon(2018)。
【0005】
PDは、主に高齢者で発症し、そして年齢とともに発症率が高くなる。保守的な見積もりによれば、世界中のPD患者の数は1千万を超える。しかしながら、PDの病因は未だに不明である。臨床治療に関しては、軽度及び中等度のPDを治療するためにいくつかの薬物が米国FDAにより承認されているが、これらの薬物は、PD患者の認知機能又は運動機能を一時的に改善することしかできない。患者が薬物をやめると、直ぐに症状がリバウンドしてしまう。現在まで、PDの病理学的プロセスを停止させ又は逆転させることができる薬物が存在しない。
【0006】
PDの主な病理学的特徴は、脳幹、脊髄、及び皮質におけるドーパミン作動性ニューロンの喪失と、レビー小体と呼ばれる細胞内タンパク質性封入体の存在である。レビー小体は、主にα-シヌクレイン(α-syn)の凝集体により形成されたアミロイド線維を含む。α-synは、ニューロンのシナプス前膜の末端に位置する。細胞内の天然α-synは、高度に可溶で天然的に折り畳まれない。α-synのミスフォールディングは、病的条件下で起こり、かつレビー小体病変を形成するように凝集及びフィブリル化するβシート構造を生成する。ドーパミン作動性ニューロンの変性に関連する病理学的メカニズムは、ROS又は他の遊離ラジカルの過剰蓄積と相関している。PDを治癒させるための有効な手段が現在存在していないとしても、疾患の進行におけるROS関連メカニズムに対する理解は、PD症状を軽減する可能な治療に対する重要な洞察を提供する。コエンザイムQ10、ビタミンC、ビタミンE、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イチョウ(Ginko biloba)及びポリフェノールのような抗酸化特性を有する物質が試験されているが、神経保護性におけるいずれの効力の正当な証拠も示されていない(Liu 2017;Al Shahrani 2018)。
【0007】
ハンチントン病(HD)は、HTT遺伝子におけるシトシン、アデニン、グアニン(CAG)の反復配列の不安定な伸長に関連する進行性神経変性疾患である。多くの研究は、酸化マーカーの上昇と非可逆的なニューロン損傷との間の関連性を示している。興味深いことに、HDにおけるOSの役割が確立されたことにもかかわらず、従来の酸化防止剤を使用して疾患を治療しようとする試行は、ほとんど無効であった(Liu 2017)。
【0008】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脊髄の前方ホーンにおける運動ニューロンの進行性喪失を特徴とする。それは、明確に定義された遺伝要素があるかどうかに応じて、家族性又は散発性のいずれかとして分類される(Liu 2017)。
【0009】
脊髄小脳運動失調症(SCA)は、進行性神経変性を特徴とする常染色体優性疾患である。SCAに関連する一般的な症状は、運動失調性歩行、骨運動障害、構音障害及び認知障害である(Liu 2017)。
【0010】
緑内障は、視神経損傷、視野欠陥、及び視覚機能の進行性喪失を特徴とする非可逆性視神経変性疾患である。これは、白内障の次に世界での二番目多い非可逆的な、失明につながる眼疾患である。2020年の臨床分析データによれば、世界の緑内障患者の数は、特にアジアとアフリカにおいて76万に達し、一方、中国の緑内障患者の数は、次いで2100万レベルに達する。緑内障の発症機序は未知のままである。長時間の間、病理学的眼圧の上昇は、神経損傷及び緑内障を引き起こす主要な要因の1つと考えられる。緑内障の臨床治療は、主に、患者の眼圧を低下させることに基づく。しかしながら、多くの臨床的データによると、眼圧のみを制御することは、緑内障の治療の目標を達成することができない。これは、眼圧に対する制御が理想的である場合であっても、進行性視神経損傷及び網膜神経節細胞(RGC)アポトーシスはさらに悪化する可能性があるからである。従って、高い眼圧は、緑内障関連光学神経損傷の初期の素因にすぎず、眼圧を低下させるだけで光学神経機能のさらなる喪失を防止することは困難である。上記の理由から、緑内障の治癒に対して、視神経機能の増強、視神経細胞のアポトーシス及び視神経損傷の阻止や緩和は重要である。しかしながら、臨床的には、現在、緑内障関連の視神経損傷を効果的に防止する医薬が見出されていない。研究によれば、酸化ストレス、機械的ストレス、自己免疫系異常、血糖値、炎症性分子及び異常タンパク質沈殿などのような種々の要因は、視神経損傷をもたらす可能性があることを発見した。これらの要因の中で、より注目されるのがアミロイド-β(Aβ)のミスフォールディング、異常凝集及びフィブリル化であり、そして、細胞の内と外でのタウタンパク質は、視神経変性疾患及びRGCの死の過程において重要な役割を果たしている。
【0011】
Aβは、39~43個のアミノ酸残基を含むタンパク質であり、β-セクレターゼ及びγ-セクレターゼによるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の加水分解から生成されるものである。それは、神経損傷及び神経細胞アポトーシスに関与する重要な因子である。研究により、Aβの神経毒性は、アルツハイマー病(AD)のような種々の神経変性疾患の形成及び発病の共通のメカニズムであることが明らかとなっており、そして関連する薬物の研究開発のための重要な標的として使用されてきた。最近の研究では、Aβの神経毒性は、眼の神経変性疾患である緑内障においても重要な役割を果たすことがわかっている。臨床緑内障患者のRGC及び房水におけるAβの発現は、対照群よりも有意に高い。緑内障動物モデルでは、長期高眼圧により誘導されるRGCアポトーシスは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の増加、Aβ発現及びタウタンパク質の過剰な高リン酸化に密接に関連する。一方、臨床データから、AD患者が緑内障及び視力損失を有することがより容易であることがわかっている。そして、大量のAPPが合成され、ADトランスジェニック動物の網膜にAβプラーク凝集が現れる。したがって、緑内障及びADは、類似のAβメカニズムを有する可能性がある。より重要なことは、緑内障動物モデルにおいて、アポトーシスフェーズ中のRGCは、Aβと共発現され、Aβの過剰産生を阻害することができる。Aβ抗体又は薬物は、RGCアポトーシスを効果的に阻害し、視神経損傷を減少させることができる。これらの研究結果から、Aβが緑内障の発病メカニズムにおいて重要な役割を果たし、視神経保護メカニズムに基づく緑内障の治療のための重要な標的であることがわかっている。
【0012】
視神経破砕損傷ラットモデルは、広く使用されている高眼圧を伴わない緑内障の動物モデルである。このモデルは、視神経上神経の完全性を維持し、視神経軸索輸送障害及び緑内障のRGC死を模擬し、臨床的緑内障損傷特性に近い。同時に、モデルは標準的な方法で準備され、操作が容易であり、明確かつ定量的な視神経損傷を引き起こすことができ、誤差が少なく、再現性の良い。このモデルは、緑内障の視神経損傷の正確なモデルであり、中国国内外においてよく承認され、緑内障の視神経損傷及びRGC損傷の病理学的メカニズムの研究及び視神経保護のための薬物のスクリーニングに広く使用されている。例えば、このモデルによれば、ジンセノサイドRg1、デキサメタゾン、イチョウ、及びα-リポ酸は、いくらかの視神経保護効果を有するが、保護効果は十分なものではないことが見出された。Aβメカニズムは、視神経損傷過程において重要な役割を果たすため、動物モデルにおいて、光学神経を保護し、視覚機能を改善しながら、Aβ凝集及びフィブリル化を抑制することができる薬物の開発は、緑内障の予防及び治療にとって非常に重要である。
【0013】
累積的なOSは、いずれも老化プロセスの加速及び神経変性疾患の進行における重要な因子として知られている細胞損傷、DNA修復システムの損傷、及びミトコンドリア機能障害を引き起こす可能性がある(Kim 2015)。神経変性疾患におけるOSの重要な役割を考慮すると、ROSレベルの制御は、神経変性を遅くし、関連する症状を緩和する有望な治療選択肢である。この点に関して、グルタチオン(GSH)、ビタミンC、ビタミンE、及びコエンザイムQ10を含む、抗酸化特性を有する多くの化合物が、神経変性症状を減衰させる可能性について検討されているが、入り交じった結果が得られた(Liu 2017)。
【0014】
銅は、人に多くの生物学的機能に必要な希少元素である。α-synは、Cu2+などのような金属イオンに対して高い親和性を示す。Cu2+-α-syn相互作用は、酸化ストレスの増加と毒性オリゴマーの発生に関与する。毒性オリゴマーは、インビトロで、コンダクタンス活性を変化させる膜二重層に細孔様構造を形成し、インビボで、膜を破壊し細胞死を引き起こす可能性がある。また、銅イオンは、ドーパミン(DA)と共にα-synに協調的に結合されることができ、α-synのフィブリル化をさらに高く増強する。銅のホメオスタシスの異常調節は、すでにPD患者において見出された。最近の研究では、黒質(SN)における総組織銅の低下がわかっているが、高レベルの非結合銅がCSFで発見され、運動障害の原因となる恐れがある。Cu2+の上昇は、PDに関連する。上記知見に基づいて、PDでの銅のホメオスタシス不全の調節を焦点とするPD治療が広く評価される。PD動物モデルでの前臨床試験では、前記の銅キレート剤であるクリオキノールのPD療法での使用の可能性について検討した。クリオキノールはSNでのニューロンの生存を増加させることがわかった。さらに、4つの異なるPD動物モデルにおける銅イオン複合体であるCu2+ -ジアセチルビス(4-メチルチオセミカルバゾン)(Cu2+(atsm))のインビボ評価によれば、神経保護、認知能力の改善、及び運動機能の回復がわかった(Giampietro.Rら、2018;Kozlowski.Hら、2012;Tristan-Lopez.Lら、2014)。インビトロ研究は、Cu2+-α-syn複合体(Dudzik、2011)及びCu依存性α-syn細胞内凝集体(McLeary、2018)の形成も発見した。
【0015】
銅ナノクラスタ(CuNCs)は、銅原子と銅ナノ結晶との間にある物質であり、表面上の安定化配位子を有する数~数十の銅原子から構成される(Yao2018)。CuNCsは、それらの固有のサイズ依存的光学特性及び電子特性のためにかなりの注目を集めており、従って、ナノ粒子触媒、バイオセンサー、細胞標識、及び光電子ナノデバイスのような幅広い用途に大きな見込みを示す(Jin、2016;Liu、2018)。出願人が知っている限り、神経変性疾患の治療にCuNCsを適用することに関する報告がない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】Al Shahrani M, et al. Oxidative Stress: Mechanistic Insights into Inherited Mitochondrial Disorders and Parkinson's Disease, J. Clin. Med. 2017, 6,100; doi:10.3390/jcm6110100
【文献】Cheignon C, et al. Oxidative stress and the amyloid beta peptide in Alzheimer's disease, Redox Biology, 2018, 14: 450-464
【文献】Dudzik CG, et al. Coordination features and affinity of the Cu2+ site in the α-synuclein protein of Parkinson's disease. Biochemistry.2011; 50: 1771-7
【文献】Giampietro R, et al. The Pivotal Role of Copper in Neurodegeneration: A New Strategy for the Therapy of Neurodegenerative Disorders. Mol. Pharmaceutics 2018; 15: 808-820 Jin R, et al. Atomically Precise Colloidal Metal Nanoclusters and Nanoparticles: Fundamentals and Opportunities, Chem. Rev., 2016, 116, 10346-10413
【文献】Kim GH, et al. The Role of Oxidative Stress in Neurodegenerative Diseases, Exp Neurobiol. 2015, 24(4): 325-340
【文献】Kozlowski H, et al., Copper, zinc and iron in neurodegenerative diseases (Alzheimer's, Parkinson's and prion diseases). Coordination Chemistry Reviews 2012; 256: 2129- 2141
【文献】Liu Z, et al. Oxidative Stress in Neurodegenerative Diseases: From Molecular Mechanisms to Clinical Applications, Oxidative Medicine and Cellular Longevity, 2017, Article ID 2525967
【文献】Liu X, et al. Atomically Precise Copper Nanoclusters and Their Applications, Coord. Chem. Rev., 2018, 359, 112-126
【文献】Manna U, et al. Layer-by-layer self-assembly of modified hyaluronic acid/chitosan based on hydrogen bonding. Biomacromolecules.2009; 10: 2632-9
【文献】McLeary FA, et al. Dexamethasone Inhibits Copper-Induced Alpha-Synuclein Aggregation by a Metallothionein-Dependent Mechanism. Neurotox Res.2018; 33:229-238
【文献】Singh A, et al. Oxidative Stress: A Key Modulator in Neurodegenerative Diseases, Molecules, 2019, 24: 1583
【文献】Tristan-Lopez L, et al. Copper and Copper Proteins in Parkinson's Disease. Oxidative Medicine and Cellular Longevity. 2014; Article ID 147251
【文献】Yang D, et al. Poly(thymine)-Templated Selective Formation of Copper Nanoparticles for Alkaline Phosphatase Analysis Aided by Alkyne-Azide Cycloaddition "Click" Reaction. ACS Appl. Nano Mater. 2018; 1: 168-174
【文献】Yao Q, et al. Toward Total Synthesis of Thiolate-Protected Metal Nanoclusters, Acc. Chem. Res.; 2018; 51; 1338-1348
【発明の概要】
【0017】
本発明は、対象の神経変性疾患を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、銅ナノクラスター(CuNCs)を含み、前記CuNCsがリガンドを含む、医薬組成物を提供する。
【0018】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記リガンドで修飾したCuNCsは、直径の範囲が0.5~3nmである。
【0019】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記リガンドで修飾したCuNCsは、直径の範囲が0.5~2.5nmである。
【0020】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記リガンドは、チミン、チミンで修飾したヒアルロン酸(TMHA)、L-システイン及びその誘導体、D-システイン及びその誘導体、システイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体、及びその他のチオール含有化合物からなる群より選ばれる一つである。
【0021】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記L-システイン及びその誘導体が、L-システイン、N-イソブタノイル-L-システイン(L-NIBC)、及びN-アセチル-L-システイン(L-NAC)からなる群より選ばれ、前記D-システイン及びその誘導体が、D-システイン、N-イソブタノイル-D-システイン(D-NIBC)、及びN-アセチル-D-システイン(D-NAC)からなる群より選ばれる。
【0022】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記システイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体は、システイン含有ジペプチド、システイン含有トリペプチド又はシステイン含有テトラペプチドである。
【0023】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記システイン含有ジペプチドが、L-システイン-L-アルギニンジペプチド(CR)、L-アルギニン-L-システインジペプチド(RC)、L-ヒスチジン-L-システインジペプチド(HC)、及びL-システイン-L-ヒスチジンジペプチド(CH)からなる群より選ばれる。
【0024】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記システイン含有トリペプチドが、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(GCR)、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(PCR)、L-リジン-L-システイン-L-プロリントリペプチド(KCP)、及びL-グルタチオン(GSH)からなる群より選ばれる。
【0025】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記システイン含有テトラペプチドが、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド(GSCR)、及びグリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド(GCSR)からなる群より選ばれる。
【0026】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記その他のチオール含有化合物が、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、及びドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる。
【0027】
前記医薬組成物の特定の実施形態では、前記神経変性疾患が、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳症(SCA)、及び緑内障からなる群より選ばれる
【0028】
本発明の目的及び利点は、添付の図面と関連して、以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を説明するが、同様の符号は同様の要素を示す。
【0030】
図1図1(a)(i)は、式1で示されるTMHAの構造を示す。図1(a)(ii)は、TMHAの合成を説明する。そして、図1(a)(iii)及び(iv)は、それぞれ、HA及びTMHAの典型的な外見を示す。図1(b)は、それぞれ、TMHA(赤線)及び純粋なHA(青線)のUV-visスペクトルを示す。図1(c)は、HA及びTMHAのFT-IRを示す。そして、図1(d)は、HA及びTMHAのH NMRスペクトルを示す。
【0031】
図2図2は、得られたTMHA配位CuNCsの蛍光強度に対する(a)Cu2+とTMHAとのモル比、(b)反応pH値、(c)反応温度、及び(d)反応時間の影響を示すグラフを提供する。
【0032】
図3図3は、得られたTMHA配位CuNCsの蛍光強度に対する(a)NaCl濃度(0~1M)、(b)共有カチオン及びアニオン、(c)pH値(4~10)、及び(d)重合時間(0~5週間)の影響を示すグラフを提供する。
【0033】
図4図4は、チミンの置換度(DS)が異なるTMHAにより製造されたTMHA配位CuNCsを示す写真及びグラフを提供する。図4(a)及び(d)は、それぞれ、チミンのDSが3.2%であるTMHAで製造されたTMHA配位CuNCsのTEM又はAFM画像を示す。図4(b)及び(e)は、チミンのDSが10.5%であるTMHAで製造されたTMHA配位CuNCsのTEM又はAFM画像を示す。図4(c)及び(f)は、チミンのDSが20.1%であるTMHAで製造されたTMHA配位CuNCsのTEM又はAFM画像を示す。図4(g)及び(h)は、それぞれ、TMHA又はTMHA配位CuNCsのMSスペクトルを示す。そして、図4(i)及び(j)は、(i)CuNCsの全領域及び(j)Cu 2p領域のXPSスペクトルを示す。図4では、挿入図(b、g、h)は、それぞれ、TMHA配位CuNCs ナノワイヤー、イオン化断片及びTMHA配位CuNCsの模式図であり、(e、f)は、単離されたナノワイヤーからなるCuNCsである。
【0034】
図5図5は、GSHリガンドを有するCuNCsの熱重量分析を示すグラフである。
【0035】
図6図6は、それぞれ、チミンのDSが3.2%、10.5%、及び20.1%であるものを使用して得られたCuNCsの励起(λem=613nmで測定される。)スペクトルを示すグラフである。
【0036】
図7図7は、(a)異なるチミンのDSでのPLスペクトル(左)及び減衰プロファイル(右)、挿入図:365nm励起での画像;(b)Cu2+含有量に対するTMHAプローブのPL応答;(c)様々な金属に対するCu2+についてのTMHAプローブのPL及び色改変(挿入図)、を示すグラフを提供する。
【0037】
図8図8は、(a)CuNCsと反応するHのUV吸収、(b)CuNCs及び様々な対照物のGPx様活性の初期速度、(c)CuNCs SOD様活性、挿入図:O生成速度、(d)CuNCsとその他の金属との触媒活性の比較、を示すグラフを提供する。
【0038】
図9図9は、PDの早期診断のための尿液Cu2+の検出を示すグラフを提供する。
【0039】
図10図10(a)は、細胞生存率のデータを示す直方図を提供する(***p<0.001)。図10(b)は、PI色素により染色された、4mM MPP、2μM Cu2+及び10μg・ml-1 TMHAで処理された死亡(赤)細胞を示す。そして、図10(c)は、カルセイン-AMにより染色された、4mM MPP、10μM Cu2+及び10μg・ml-1 TMHAで処理された生存(緑)細胞を示す。
【0040】
図11図11(a)は、細胞内ROSレベルのデータを示す直方図を提供する、***p<0.001;図11(b)は、4mMのMPP、10μg・mL-1 TMHAで処理され、及び特定の蛍光プローブDCFH-DAを使用して染色された細胞における細胞内ROS CLSM画像を示す。そして、図11(c)は、4mMのMPP、10μg・mL-1 TMHA、10μMのCu2+で処理され、及びDCFH-DAで染色された細胞における細胞内ROSのCLSM画像を示す。
【0041】
図12図12(a)は、記憶障害のマウスの移動距離及び落下待ち時間を示す、***p<0.001。図12(b)は、高用量のMPTP(30mg・kg-1)で治療された動物からのミトコンドリアを示し、赤線により示すように、ミトコンドリアは、膨潤、液胞形状及び重度なクリステ破壊を示す。そして、図12(c)は、MPTP(30mg・kg-1)+TMHA(30mg・kg-1)で治療された動物からのミトコンドリアを示し、赤線により示すように、ミトコンドリアは、正常な形態を示す。
【0042】
図13図13は、α-synフィブリル化動態に対するL-グルタチオン(GSH)で修飾したCuNCs(GSH-CuNCs)の影響を示すグラフを提供する。
【0043】
図14図14は、MPP病変PD細胞(SH-sy5y)モデルの細胞生存率に対するCuNCsの影響を示す直方図を提供する。
【0044】
図15図15は、CuNCsの同定データを示す。(A)は、一般的なCuNCsの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。(B)TEM画像から計算されたCuNCsのサイズ分布である。(C)CuNCs中のCu(0)の2p3/2及び2p1/2電子のX線光電子分光法(XPS)スペクトルである。(D)GSH(上)とGSH(下)で修飾したCuNCsのフーリエ変換赤外(FT-IR)分光法の比較である。(E)CuNCsの蛍光励起(左)及び発光スペクトル(右)である。
【0045】
図16図16は、CuNCsのCAT活性を示す。
【0046】
図17図17は、CuNCsのGPx活性を示す。
【0047】
図18図18は、CuNCsのSOD活性を示す。
【0048】
図19図19は、H誘発緑内障細胞(RGC-5)モデルにおける細胞生存率に対するCuNCsの効果を示す直方図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、本発明の特定の実施形態の以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。
【0050】
この出願において、本発明が関連する技術の状態をより完全に説明するために、刊行物が参照される場合、これらの刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、高反応性O から反応性がより少ないH及び酸素への分解を触媒する際に重要な役割を果たす。サイトゾル銅/亜鉛-SOD (SOD1)、ミトコンドリアマンガンSOD(SOD2)、及び細胞外SOD(SOD3)は、同定されたSODの3つの異なるアイソフォームである。SOD1とSOD2は、それぞれ、主にサイトゾルとミトコンドリアにおけるO の除去に関与する(Kim 2015)。
【0052】
グルタチオン過酸化酵素(GPX)は、電子供与体としてグルタチオン(GSH)を利用してH及び脂質過酸化物の還元を触媒する複数のイソ酵素のファミリーを含む。GPXは、サイトゾルとミトコンドリアの両方にある。哺乳動物では、セレン依存性グルタチオン過酸化酵素の5つの異なるアイソフォーム(GPX1~4と6)、及びセレノシステインの代わりにシステインを有する3つの非セレン同族体(GPX5、7と8)が存在する。GPXの抗酸化機能は、細胞内の各アイソフォーム及び位置に依存し、GPX1は脳内の主要な抗酸化酵素の1つとみなされる。研究によると、GPX1のアップレギュレーションがニューロン損傷に対する保護応答の1つであることを示唆している(Kim 2015)。
【0053】
カタラーゼは、補因子として鉄又はマンガンのいずれかを用いて、Hを水及び酸素へ変換させるものである。カタラーゼは、ペルオキシソームにありし、細胞質及びミトコンドリアにも見出される。カタラーゼの役割は、低レベルのHの場合では重要でないが、より高いレベルのHの場合ではより重要になる(Kim 2015)。
【0054】
正常な生物では、活性酸素種(ROS)は、種々の酵素の調節を通してホメオスタシスを維持する。カタラーゼ(CAT)は、ほとんど全ての生物中に存在する。CATは酵素捕捉剤であり、鉄ポルフィリンに基づく接触酵素である。これは、Hから分子状酸素及び水への分解を促進し、生物学的防御システムにおける重要な酵素の1つである。グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は、体内に広く存在する重要な過酸化物分解酵素である。GPxの活性中心はセレノシステインである。セレンは、GSHからGSSGへの変換を触媒し、毒性の過酸化物を非毒性のヒドロキシ化合物に還元することにより過酸化物による干渉及び損傷から細胞膜の構造及び機能を保護するGSH酵素系の成分である。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、有害なスーパーオキシドラジカルを過酸化水素に変換する体中の天然に存在するスーパーオキシドラジカル捕捉剤である。過酸化水素は体に有害な酸素であるが、体内のペルオキシダーゼにより直ちに完全に無害な水に分解する。CATは、酸化ストレス中の過剰なHの除去を行うことが知られているが、GPxは、細胞信号におけるHの濃度を微調整することができる。CAT-GPx相乗作用は、病態生理学的条件下でのHレベルの正確な制御のために重要であることが報告されている。このようにして、3つの酵素は完全な抗酸化剤鎖を形成する。
【0055】
本発明は、活性酸素種(ROS)による酸化ストレス(OS)により開始又は加速される神経変性疾患を治療するための組成物及び方法を提供する。前記神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳症(SCA)、及び緑内障を含むが、これらに限定されない。
【0056】
本発明は、一つ又は複数のリガンドで修飾した銅ナノクラスター(CuNCs)を提供する。特定の実施形態では、前記リガンドで修飾したCuNCsは、直径が0.5~5nmの範囲にあり、好ましくは0.5~3nmの範囲にあり、より好ましくは0.5~2.5nmの範囲にある。特定の実施形態では、前記リガンドは、チミン、チミンで修飾したヒアルロン酸(TMHA)、L(D)-システイン及びN-イソブタノイル-L-システイン(L-NIBC)、N-イソブタノイル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-L-システイン及びN-アセチル-D-システイン等のその他のシステイン誘導体、システイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体(例えば、L-システイン-L-アルギニンジペプチド(CR)、L-アルギニン-L-システインジペプチド(RC)、L-システイン L-ヒスチジン(CH)、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(GCR)、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(PCR)、L-グルタチオン(GSH)、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド(GSCR)及びグリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド(GCSR)等のジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、及びその他のシステイン含有ペプチドを含むが、これらに限定されない。)、及び1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン及びドデシルメルカプタンのうち一つ又は複数等のその他のチオール含有化合物を含むが、これらに限定されない。
【0057】
本発明は、神経変性疾患を有する対象を治療するための組成物を提供する。特定の実施形態では、前記組成物は、銅ナノクラスター(CuNCs)と、薬理学的に許容される賦形剤とを含む。
【0058】
特定の実施形態では、前記組成物は、チミンで修飾したヒアルロン酸(TMHA)と、薬理学的に許容される賦形剤とを含む。
【0059】
特定の実施形態では、前記組成物は、TMHA配位CuNCsと、薬理学的に許容される賦形剤とを含む。
【0060】
本発明は、神経変性疾患を治療するための医薬の製造における銅ナノクラスター(CuNCs)の使用を提供する。
【0061】
本発明は、神経変性疾患を治療するための医薬の製造におけるチミンで修飾したヒアルロン酸(TMHA)の使用を提供する。
【0062】
本発明は、神経変性疾患を治療するための医薬の製造におけるTMHA配位CuNCsの使用を提供する。
【0063】
本発明は、神経変性疾患を有する対象を治療する方法を提供する。
【0064】
特定の実施形態では、前記方法は、前記対象に有効用量の銅ナノクラスター(CuNCs)を含む組成物を投与することを含む。
【0065】
特定の実施形態では、前記方法は、前記対象に有効用量のチミンで修飾したヒアルロン酸(TMHA)を含む組成物を投与することを含む。
【0066】
特定の実施形態では、前記方法は、前記対象に有効用量のTMHA配位CuNCsを含む組成物を投与することを含む。
【0067】
特定の実施形態では、前記神経変性疾患を有する対象には、腹腔内注射により有効量のCuNCsが投与される。特定の実施形態では、前記神経変性疾患を有する対象には、腹腔内注射により有効量のTMHAが投与される。特定の実施形態では、前記神経変性疾患を有する対象には、腹腔内注射により有効量のTMHA配位CuNCsが投与される。特定の実施形態では、前記有効量は、2~100 mg kg-1の範囲にある。
【0068】
本発明は、チミンで修飾したヒアルロン酸(TMHA)及びTMHAを合成する方法を提供する。
【0069】
TMHAの構造は、図1(a)(i)に示すように、式1で示され、HAがグルクロン酸(GlcA)-N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の繰り返し単位からなり、GlcNAcがチミンで修飾され、及びnが整数であり、10~10,000であり、好ましくは10~1,000であり、より好ましくは10~100である。なお、HAにおけるすべてのGlcNAcが必ずしもチミンで修飾したものではない。TMHAにおけるチミンの置換度(DS)とは、TMHAの100つの糖残基当たりのチミン分子の数と定義される。TMHAにおけるチミンの置換度(DS)は、1~50%の範囲にあり、好ましくは4~30%の範囲にあり、より好ましくは5~20%の範囲にあり、さらに好ましくは7~16%の範囲にあり、よりさらに好ましくは8~15%の範囲にある。
【0070】
TMHAを合成する方法は、
【0071】
0.05~0.02w/v%の濃度でチミンの酸性水溶液を提供することと、(特定の実施形態では、前記酸性水溶液が水とHClから構成される。)
【0072】
1~5wt%の濃度でHA溶液を提供することと
【0073】
HA溶液に触媒を添加することと(特定の実施形態では、前記触媒がポリリン酸エステルである。)
【0074】
HA-チミン混合物を形成するようにチミンの酸性水溶液を触媒含有HA溶液に添加することと(特定の実施形態では、チミンの酸性水溶液を滴下注入により添加する。)
【0075】
HA-チミン混合物を所定の時間加熱することと(特定の実施形態では、前記加熱は、オイルバスにおいて45~50℃で12~20時間行う。)、
【0076】
加熱されたHA-チミン混合物を所定の温度まで冷却することと(特定の実施形態では、未反応のチミンを沈殿させるために、前記所定の温度は、約0℃である。)、
【0077】
冷却されたHA-チミン混合物から上清液を透析することと(特定の実施形態では、未反応の試薬及び不純物を除去するために、前記透析は、分子量カットオフ8000で、48~96時間行う。)、
【0078】
透析された溶液を凍結乾燥して、TMHAを得ることと、
を含む。
【0079】
本発明は、さらに、TMHA配位CuNCs及びTMHA配位CuNCsの合成方法を提供する。
【0080】
特定の実施形態では、TMHA配位CuNCsの合成方法は、
【0081】
TMHA溶液を提供することと(特定の実施形態では、前記TMHA溶液が0.1mMであり、pH7.0。)、
【0082】
TMHA溶液にCuSO溶液を添加することと(特定の実施形態では、前記CuSO溶液が20mMであり、pH7.0、かつ、滴下により添加される。)、を含み
【0083】
それにより、前記混合物を反応させる。特定の実施形態では、前記反応は、遮光で37℃で20分間行って、TMHA配位CuNCs溶液を得て、前記TMHA配位CuNCs溶液が、使用まで、遮光で4℃で保存される。
【0084】
UV光(365nm)照射で、明るいオレンジ色の発光が綺麗に見られ、発光CuNCsの形成が成功することがわかっている。
【0085】
特定の実施形態では、CuとTMHAとのモル比が、10:1~500:1の範囲にあり、好ましくは15:1~300:1の範囲にあり、より好ましくは20:1~200:1の範囲にあり、さらに好ましくは25:1~100:1の範囲にあり、よりさらに好ましくは30:1~80:1の範囲にある。
【0086】
前記TMHA配位CuNCsは、良好に分散された直径0.5~3nmの球状ナノクラスターを含有する。
【0087】
以下の実施例は、本発明の原理を説明する目的のみで提供され、それらは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0088】
実施例
【0089】
(1)チミンで修飾したヒアルロン酸(TMHA)の合成
【0090】
まず、ポリリン酸エステルが触媒として製造された。ジエチルエーテル(14.5mL)及びCHCl(5.6mL)を撹拌しながら五酸化リン(10g)に添加し、混合物を還流で50℃で12時間加熱し、透明な溶液を得た。室温までに冷却した後、溶媒を真空下で留去した。得られた無色の粘性残留物は、ポリリン酸エステルであり、さらに精製することなく、触媒として使用された。
【0091】
次に、TMHAを以下のように合成した。チミン(23.6mg)の透明な溶液は、0.25mLの濃縮HCl溶液(25%)を添加した25mLのHOに溶解することにより得られた。ポリリン酸エステル(1.5g)を、HA溶液(50mL、2.2wt%;MW120KD)に添加し、次にチミンを滴下注入し、混合物をオイルバスで50℃まで16時間加熱し、そして0℃まで冷却し、未反応のチミンを沈殿させた。続いて、上清液を透析バッグ(分子量カットオフ8000)を介して72時間透析して、いずれの未反応の試薬及び不純物を除去した。得られた溶液を凍結乾燥して、TMHAを得た。その収率が86%であり、置換度(DS)が10.5%であった。最終生成物の品質は、H NMR及びFT-IRにより同定された。
【0092】
図1を参照すると、図1(a)(ii)は、TMHAの合成を示す。そして、図1(a)(iii)及び(iv)は、それぞれ、HA及びTMHAの典型的な外見を示す。図1(b)は、それぞれ、TMHA(赤線)及び純粋なHA(青線)のUV-visスペクトルを示す。図1(c)は、HA及びTMHAのFT-IRを示す。そして、図1(d)は、HA及びTMHAのH NMRスペクトルを示す。H NMRスペクトル分析は、80℃、400MHzでDOにおいて、10mg・mL-1の試料濃度で行われた。FTIR解析に関して、試料準備においてKBr結晶がマトリックスとして使用された。
【0093】
TMHA複合体の化学的構造は、天然HAとその誘導体のスペクトルとの比較を介して、FTIRにより定性的に検討された。これらのスペクトルは、天然HAと比較して、特にDSがより高いTMHA誘導体と比較して、3000~3200cm-1及び1300~1800cm-1の範囲において顕著な相違を示した。前記天然HAの特徴的ピークの割り当ては、3360cm-1(二次O-Hストレッチ)、2873cm-1(C-Hストレッチ)、1622cm-1(アミドIIバンド、アセチル基のC-Oストレッチ)、1554cm-1(アミドIIバンド、N-Hストレッチ)、1380cm-1(CH基の非対称C-Hストレッチ曲げ)、1314cm-1(第一級アルコール性基のO-Hストレッチ)、及び1026cm-1(架橋C-Oストレッチに関する骨格振動)であった。TMHA誘導体のスペクトルは、3つの特徴的ピークを示し、即ち、3195と3079cm-1(N-Hストレッチ)、1730cm-1(C=Oストレッチ)、及び1340cm-1(C-Nストレッチ振動)であり、チミンによるHAの官能化を示唆している。より重要的には、HAに属する第一級アルコール性基のO-Hストレッチに当たる1314cm-1でのバンドの消失は、HAのGlcNAcの第一級-OH基のみがチミンと反応する、反応メカニズムを示唆している。H NMR解析により、修飾の成功がさらに確認された。
【0094】
(2)TMHAを用いたTMHA配位CuNCsの合成
【0095】
10mLのTMHA(DSが10.5%)溶液(0.1mM、pH7.0)を徐々に37℃まで加熱し、TMHAを溶解した。2mLのCuSO(20mM、pH7.0)溶液を滴下し、遮光、37℃でさらなる20分間反応させた。UV光照射(365nm)で、明るいオレンジ色の発光が綺麗に見られ、発光CuNCsの形成が成功したことがわかった。最後に、使用まで、遮光で4℃で保存された。
【0096】
最適な合成条件、例えば、Cu2+/TMHAのモル比、pH値、反応温度、及び時間のそれぞれについて詳細に検討した。反応系に対するCu2+含有量の影響を研究するために、異なる濃度の2mLのCuSOを、10mLのTMHA溶液に添加し、当該反応系におけるCu2+とTMHAとのモル比が、5:1、10:1、15:1、20:1、30:1、40:1、60:1、80:1、100未満:1であった。軽く撹拌しながら遮光、37℃で、pH7.0で20分間反応した後、コロイド試料が得られ、発光分光計により検測された。TMHA配位CuNCsの形成に対するpH値の影響をよく理解するために、1.0M NaOH又は1.0M HClにより調整した異なるpH値以外、同じ環境で一連の試験を実施した。また、反応温度(20~70℃)、及び反応時間(1~25分間)の影響についても、それぞれ、検討した。発光分光計により、得られた試料を検測した。
【0097】
図2を参照すると、得られたTMHA配位CuNCsの蛍光強度に対する(a)Cu2+とTMHAとのモル比、(b)反応pH値、(c)反応温度、及び(d)反応時間の影響を示すグラフを提供する。図2(a)に示すように、TMHA配位CuNCsの蛍光強度は、Cu2+とTMHAとのモル比が5から40まで増加するとともに向上し、Cu2+とTMHAとの比をさらに40から100まで増加すると、徐々に低下した。図2(b)に示すように、反応pH値は、高品質のTMHA配位CuNCsの形成に重要な役割を果たした。TMHA配位CuNCsの蛍光強度は、反応pH値が4から7まで増加するとともに大幅に増強し、そして速やかに低下し始めた。例えば、反応pH10で、TMHA配位CuNCsの発光は、蛍光分光法を介して観察することが困難となった。図2(c)に示すように、20~50℃の反応温度は、高度な蛍光TMHA配位CuNCsの形成に理想的なパラメータであった。図2(d)に示すように、製造されたTMHA配位CuNCsの蛍光強度は、合成時間が1分間から8分間まで延長すると、大幅に増強した。時間がさらに25分間まで増加すると、TMHA配位CuNCsの蛍光強度が一定に維持された。全ての観測に基づいて、TMHA配位CuNCsの最高の蛍光強度は、以下の最適化された合成条件で得られることを確認した:Cu2+とTMHAとのモル比が約40、pH7.0溶液、そして37℃で4時間反応した。
【0098】
(3)TMHA配位CuNCsの安定性の研究
【0099】
TMHA配位CuNCsの発光安定性の評価は、以下の手順に従って行われた。まず、様々な濃度のNaCl溶液(100μL)をTMHA配位CuNCs溶液(900μL)と混合し、25℃で30分間インキュベートした。次に、500μLのTMHA配位CuNCs溶液と様々な陽イオン又は陰イオン溶液(500μL、2mM)とを十分に混合して、25℃で30分間インキュベートした。そして、NaOH(1.0M)又はHCl(1.0M)を5mLのTMHA配位CuNCs溶液に入れて、体系pHを調整し、25℃で30分間インキュベートした。最後に、TMHA配位CuNCsの蛍光スペクトルを励起波長385nm及び発光波長610nmで測定した。
【0100】
図3を参照すると、得られたTMHA配位CuNCsの蛍光強度に対する(a)NaCl濃度(0~1M)、(b)共有カチオン及びアニオン、(c)pH値(4~10)、及び(d)重合時間(0~5週間)の影響を示すグラフを提供する。図3(a)に示すように、異なる濃度(0、0.2、0.4、0.6、0.8及び1.0M)のNaCl溶液において、TMHA配位CuNCsの蛍光強度は変化せず、強イオン強度の環境でのTMHA配位CuNCsの高い安定性を示した。より重要的には、2mMのNa、Ba2+、Fe3+、Gd3+、Sn4+のようなその他の遷移金属イオン、及びCl、CO 2-、PO 3-、C 2-、C 3-のようなアニオンをTMHA配位CuNCsの溶液に添加すると、これらの選ばれたイオンは、いずれも蛍光強度に無視できるぐらいの影響を与えた(図3(b))。同じような安定的な蛍光性能も、図3(c)に示されている。pH値を4.0から10.0まで調整しても、対応するTMHA配位CuNCsの蛍光スペクトルに明らかな影響を与えることがない。これから明らかなように、当該緩衝系において、TMHA配位CuNCsは、pH値に敏感ではないとわかった。また、空気中、室温(25℃)で5週間重合した後、TMHA配位CuNCsに沈殿、凝集や蛍光強度の低下が見られなかった(図3(d))。これらの全ての結果から、TMHA配位CuNCsが優れた安定性を有し、実際の応用が見込まれていることがわかった。
【0101】
(4)TMHA配位CuNCsの合成に対するTMHA中のチミンの置換度(DS)の影響
【0102】
ヒアルロン酸(HA)及びチミンは、天然生物的分子であり、チミンは、Cu2+を十分にキレート化させる役割を果たし、HAのヒドロキシル基は、金属ナノクラスターの成核と成長のための還元剤として作用する。本発明の発明者らは、チミンの置換度(DS)がTMHA配位CuNCsの合成に重要な調整因子であると見出した。pH7.0溶液において、Cu2+とTMHAとのモル比が約50であり、そして37℃で4時間反応させた。
【0103】
図4を参照すると、チミンの置換度(DS)が異なるTMHAにより製造されたTMHA配位CuNCsを示す写真及びグラフを提供する。図4(a)及び(d)は、それぞれ、チミンのDSが3.2%であるTMHAで製造されたTMHA配位CuNCsのTEM又はAFM画像を示す。図4(b)及び(e)は、チミンのDSが10.5%であるTMHAで製造されたTMHA配位CuNCsのTEM又はAFM画像を示す。図4(c)及び(f)は、チミンのDSが20.1%であるTMHAで製造されたTMHA配位CuNCsのTEM又はAFM画像を示す。図4(g)及び(h)は、それぞれ、TMHA又はTMHA配位CuNCsのMSスペクトルを示す。そして、図4(i)及び(j)は、(i)CuNCsの全領域及び(j)Cu2p領域のXPSスペクトルを示す。図4では、挿入図(b、g、h)は、それぞれ、TMHA配位CuNCsナノワイヤー、イオン化断片及びTMHA配位CuNCsの模式図であり、(e、f)は、ナノワイヤーで構成される単離されたCuNCsである。
【0104】
チミンのDSレベルが10.5%である場合、よく分散された、直径が0.5~3nmの範囲にある、平均直径が1.64±0.48nmである球状CuNCsを生成した。それに対して、より低い(3.2%)又は高い(20.1%)レベルでは、大量のワタ状のCuNCsは、それぞれ、直径が1.08±0.72nm及び1.96±0.83nmであるものとして現れた。次に、TMHAを未処理HAに変更した以外に、同じ試験要素で試験を行う場合、酷く縮合された大分子のネットワークしか確認されなかった(図4(i)及び(j))。さらに予想外のは、10.5%のDSにより、直径8.05±0.43nmであるTMHA配位CuNCsナノワイヤーの一次元組立体を生成した(図4(b)及び(e))。チミンのDSが20.1%まで増加すると、ナノワイヤーは、長さ/直径比が大きく低下したため、一部が区別できなくなった(図4(c)及び(f))。微調整されたCuNCsと線形TMHA鋳型との共有結合により、CuNCsが高次アレイ、即ちTMHA配位CuNCsに自己組織化することを保証した。なお、凝集誘起発光(AIE)に基づいて、このようなナノワイヤーは、効果的にTMHA配位CuNCsの蛍光安定性及び強度を向上した(詳細は後述する)。
【0105】
(5)チミンからその他のリガンドへの置き換え
【0106】
金属のコアサイズを変更せずにナノワイヤーを形成する単独のCuNCsをより明確的に検出するため、チミンリガンドを、より強いCu-S結合を生成することにより、チオレートに置き換えた。GSHをリガンドとして予想通りCuNCsを形成したが、その使用により、母体ナノワイヤーが容易にその構築単位、即ちCuNCsに分解される。図5に示すように、GSHリガンドを有するCuNCsの熱重量解析を示すグラフを提供した。ここで、リガンド交換の策略を利用して、母体ナノワイヤーをその構築単位、例えばCuNCsに分解する。製造直後のTMHA鋳型のCuNCs(1mL)を、GSH水溶液(0.05M、5mL)に添加し、室温で8時間撹拌した。白色沈殿は、反応が進行するともに生成した。8000rpmで約10分間遠心することにより、生成した上清液が回収された。エタノールの添加により、上清液からGSH安定化CuNCsを沈殿させ、エタノールで3回洗浄を繰り返した。最後に、生成物は、凍結乾燥され、冷蔵庫で長期間保存のために保存された。
【0107】
(6)TMHA配位CuNCsの同定
【0108】
なお、中間DSが10.5%である場合、断面プロフィール解析及び多分散指数により実証されるように、完全、球状、及び均一のCuNCsが形成される。HR-TEM画像から細かく計算すると、0.207nmの模様間隔距離が示され、面心格子金属Cuの(111)結晶面と一致した。図6は、チミンのDSが3.2%(青)、10.5%(赤)、及び20.1%(緑)であるものをそれぞれ使用して得られたCuNCsの励起(λem=613nmで測定される。)スペクトルを示すグラフである。
【0109】
以下では、特に断らない限り、10.5%のDSでTMHAにより製造されたTMHA配位CuNCsを使用した。
【0110】
電子顕微鏡の補足として、質量分析(MS)も、クラスターサイズ解析において信頼性のあるツールであることが証明された。ここで、高解像度エレクトロスプレーイオン化MS(ESI-MS)を利用して、サブナノメートルサイズのCuNCsの正確な分子式を同定することを試みた。注目すべきことに、純粋なHAは、主として、陽イオンモードにおいてそのイオン化効率が低いため、いかなる可視イオン信号も示されなかった。対照的にTMHAの陽イオン化は、m/z=106.1936で単一のピークを生成した(図(4(g))。チミンからのHNCOの損失のため、[CNO+Na]の式に帰することができる。いくつかの測定パラメータをスクリーニングした後、THMAの代わりに、CNOがCuNCsのイオン化においてリガンドとして作用する場合、豊富なイオン信号を放出することが容易になる。これらのパラメータは、チミンの分解を促進するために適切なエネルギーを供給するので、最適なものとして選択され、キャピラリー電圧ca.4500V、乾燥温度150℃であった。元素解析とm/z=1043.2545での最高のイオンピーク(図(4(h))とを組み合わせることにより、CuNCsの定義式は、Cuとして決定された。低質量範囲の他のイオンピークも、Cu関連化学種のフラグメントと正確に対応した。その結果から、Cuクラスターは支配的な種であり、DSが3.2%及び20.1%である二つの対照群に対して、チミンのDSが10.5%であるTMHAにより合成されたCuNCが優れた単分散性を有する。
【0111】
X線光電子分光法(XPS)解析により、CuNCが、C、O、N、及びCuを含む全ての予想される元素から構成されたことが明らかになった。CuNC中の無機含有量を計算すると、29.8重量%であった。さらに、932.3及び952.1eVでの2つの強いシグナルが、Cuの2p及び2p電子の結合エネルギーによるものである、また、サテライトシグナルがないことから、Cu2+の欠如がわかった。なお、Cuの2p結合エネルギーは、Cuの2p結合エネルギーに非常に近い。従って、製造されたCuNCsの原子価状態は、0と+1の間にある可能性が最も高いとなった。
【0112】
図7を参照すると、(a)チミンの異なるDSでのPLスペクトル(左)及び減衰プロファイル(右)、挿入図:365nm励起での画像;(b)Cu2+含有量に対するTMHAプローブのPL応答;(c)様々な金属に対する、Cu2+のためのTMHAプローブのPL及び色改変(挿入図)、を示すグラフを提供する。
【0113】
(7)Cu2+イオンの検出のためのプローブとしてのTMHA
【0114】
3つを健康な成人ボランティアから採取し、残りをPDを有する成人ボランティアから採取した5つの尿試料を、それぞれ尿中のタンパク質及び他の生物種の干渉を除去するようにアセトニトリルで希釈した。10℃で12,000rpmの速度で10分間遠心分離した後、上清液を回収し次の実験に利用した。最初に、上清液を脱イオン水で希釈して、上清中に残存するCu2+濃度を減少させた。次いで、100μLの尿試料を200μLのTMHA(0~40μg・mL-1)と混合し、25℃で10分間インキュベートした後、蛍光分光法により検査された。
【0115】
なお、560nmでの大きなCuナノ粒子の表面プラズモン共鳴とは光学的特徴が明らかに異なる。XRDピークのベースラインへの広がりは、CuNCsの小さなサイズと一致した。興味深いことに、サブナノ規模のCuNCsは、DS依存性フォトルミネセンス(PL)特徴を有した。385nmの励起下で、10.5%のDS誘導ナノワイヤーは、613nmにピークを有し、57μsの長い寿命と、14.8%の大きな量子収率を有する明らかな安定的な発光を示した(図(7(a))。より低次のCuNCs組立体では、これらの特性が急速に低下し、自己組織化駆動のAIEを示唆している。より多くのCuNCsが密にかつ規則的に充填されると、より安定で強いPL応答が得られる。反応因子を調整することにより、本発明の清浄な合成経路は、TMHA(キレート化、Cu2+を還元し、かつ自己組立体をCuNCsナノワイヤーへの鋳型とするする。)に依存し、従来の経路で導入された不純物を消去し、顕著なPL特性を得ることができた。例えば、TMHAセンサのPL強度は、直線的で、Cu2+濃度に応じて明らかに改善されたものであり、2.2ppbの極めて低い検出限界に対応する(図(7(b))。現在報告されている方法と比較して、その解析性能は、従来技術のプローブ及び米国EPAにより設定された飲料水の最大レベルに比べて、約1.5倍及び480倍小さいことを示した。また、図(7(c)において、外来イオンに対して、光学特性はCu2+に対して選択的であった。従って、TMHAは、高感度及び選択性を有する比色及び蛍光Cu2+プローブとして使用することができる。
【0116】
(8)CuNCsの酸化防止機能
【0117】
細胞酸化防止酵素を機能的に模倣するCuNCsの能力を研究した。予想外に、CuNCsは、1次反応速度論に基づいてHを激しく分解することができた(図(8(a))。次に、本発明者らは、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)アッセイを介してCuNCsのGPx様活性を研究した。種々のアッセイ条件で記録された初期速度は、図(8(b)に示され、CuNCsのGPx様機能を直接支持した。さらに、CuNCsは、顕著なSOD様活性を有し、そして、スーパーオキシド源としてのKOからの大量Oが生成することから、スーパーオキシドのH及びO(図(8(c))への不均化の作用原理が推定された。さらに、CuNCsは、細胞酸化防止剤として使用される既存の金属よりも明らかな多酵素的利点を有した(図(8(d))。
【0118】
図8を参照すると、(a)CuNCsと反応するHのUV吸収、(b)CuNCs及び様々な対照群のGPx様活性の初期速度、(c)CuNCs SOD様活性、挿入図:O生成速度、(d)CuNCsとその他の金属との触媒活性の比較、を示すグラフを提供する。
【0119】
(9)TMHAによるPDの非侵襲的診断
【0120】
プローブとしてTMHAを用いてヒト尿液試料中のCu2+含有量を測定した。注目すべきことに、赤色蛍光がPD患者からの尿液試料中のみに現れた。その高い特異性及び簡単な操作を考慮すると、TMHAは、PDについての早期診断及びリスク評価において新しい機会を開くことができた。
【0121】
図9を参照すると、PDの早期診断のための尿液Cu2+の検出を示すグラフを提供する。
【0122】
(10)インビトロ細胞試験
【0123】
PC12(ラット副腎髄質褐色細胞腫細胞株)、SHSY-5Y(ヒト神経芽細胞腫細胞株)、及びHEK293(ヒト胎児腎臓細胞株)細胞は、10%(v/v)ウシ胎児血清、2mM・L-グルタミン、100UmL-1ペニシリン、100μg・mL-1ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で37℃、5%COで培養した。
【0124】
メチルチアゾリルテトラゾリウム(MTT)アッセイを実施して、細胞生存率を測定することによりTMHAのインビトロ細胞毒性を測定した。MTTアッセイでは、SHSY-5Y細胞をウェル当たり5000個の生存細胞の密度で96ウェルプレートに播種し、37℃、5%COで24時間インキュベートして細胞付着を可能にした。次いで、この細胞を、特定の濃度で、ブランクTMHA溶液(Cu2+添加なし)と共にインキュベートした。その後、細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートした。培地を5mg・mL-1MTTを含有する新鮮なDMEMで置き換えた後、細胞をさらに4時間インキュベートした。MTT溶液を除去した後、DMSOで紫色のホルマザン結晶を溶解し、吸光度をマイクロプレートリーダー(FL 600、Bio-Tek)上で570nmでモニターした。結果を、3つの測定値の平均値として表した。同じ方法で、HEK293細胞及びPC12細胞に対する純粋なTHMAのインビトロ細胞毒性を測定した。TMHAは、500μg・mL-1ほど高い用量で非毒性であった。
【0125】
次に、本発明者らは、PD表現型の実験的細胞モデルにおけるTMHAの細胞保護特性を調べた。このモデルは、MPTP(1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)の活性代謝物であるMPP(1-メチル-4-フェニルピリジニウム)を用いて、ラット副腎髄質褐色細胞腫細胞(PC12)を処理することにより生成された。
【0126】
1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)は神経毒である。それ自体は毒性ではないが、脳に入ると、この神経毒は化合物1-メチル-4-フェニルピリジン(MPP)に代謝される。MPPは、黒質中のDA作動性ニューロンを破壊する可能性がある。同時に、MPPは、ミトコンドリア代謝の呼吸鎖中の重要な物質であるNADHデヒドロゲナーゼと干渉することができ、細胞死及びフリーラジカルの蓄積を引き起こす。このプロセスにより引き起こされるDA作動性ニューロンの大量死は、大脳皮質による運動制御に重大な影響を及ぼし、その結果、PDの類似の症状をもたらす。そのため、MPTP及びMPPは、PD関連動物及び細胞モデルの確立並びにPD薬物の研究及び開発において広く使用されている。
【0127】
PC12細胞を、Cu2+及びTHMAの非存在下又は存在下で6ウェルプレートで培養した。次いで、種々の濃度のMPP(0.5~4mM)を添加した。細胞の相対的生存率もMTTアッセイにより決定した。4mMのMPPは、PC12細胞の重篤な細胞傷害性(即ち、20%未満の細胞生存率未満)を誘発した。驚きなのは、4mM MPP誘発細胞毒性は、8μM Cu2+及び10μg・ml-1 TMHA(即ち、80%以上の細胞生存率)により完全に逆転された。細胞生存率のデータは、図(10(a)(***p<0.001)に示された。
【0128】
共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)を用いて細胞形態変化を取得した。CLSM上の生存細胞及び死細胞の観察のために、3',6'-ジ(O-アセチル)-4',5'-ビス[N,N-ビス(カルボキシメチル)アミノメチル]フルオレセイン(即ち、テトラアセトキシメチルエステル(カルセイン-AM))を用いて、生細胞を緑色蛍光(λex=490nm、λem=515nm)として染色し、そしてヨウ化プロピジウム(PI)を用いて死細胞を赤色蛍光(λex=535nm、λem=617nm)として染色した。具体的には、培地を除去した後、0.1mlのカルセイン-AM溶液(20mM)及び0.1mlのPI溶液(20mM)を、両方とも、培地の除去の後に添加した。10分間インキュベートした後、2つの染色溶液を迅速に除去し、細胞をPBSで2回リンスした。次いで、得られた細胞をCLSMにより可視化することができた。図10(b)は、PI色素により染色され、4mM MPP、2μM Cu2+、10μg・ml-1 TMHAという条件で処理された死亡(赤)細胞を示し、図10(c)は、カルセイン-AMにより染色され、4mM MPP、10μM Cu2+、10μg・ml-1 TMHAという条件で処理された生存(緑)細胞を示す。
【0129】
CLSMを用いて活性酸素種(ROS)を直接観察するために、最初にCLSM専用培養ディスクにPC12細胞を播種し、5%COガスで37℃で一晩付着させた。1mLの2',7'-ジクロロフルオレセイン二酢酸塩(DCFH-DA)と約20分間インキュベートした後、培養液を、それぞれ、以下の物質を含有する新鮮な培地(pH=7.4)に置き換えた:(a)対照群としての4mMのMPP、(b)4mMのMPP、10 of μg・mL-1 TMHA、(c)4mMのMPP、10μMのCu2+、(d)4mMのMPP、10 μg・mL-1のTMHA、2μMのCu2+、(e)4mMのMPP、10 μg・mL-1のTMHA、4μMのCu2+;(f)4mMのMPP、10 μg・mL-1のTMHA、6μMのCu2+、(g)4mMのMPP、10 μg・mL-1のTMHA、8μMのCu2+、及び(h)4mMのMPP、10 μg・mL-1のTMHA、10μMのCu2+。細胞は、さらに37℃で5%COで30分間インキュベートした後、新鮮なPBSで2回洗浄された。細胞内ROSレベルは、新たに形成されたDCF(λex=488nm、λem=525nm)の蛍光を検出することにより評価した。細胞内ROSレベルのデータは、図(11(a)に示され、***p<0.001であった。
【0130】
図11(b)は、4mMのMPP、10μg・mL-1 TMHAで処理され、かつ特定の蛍光プローブDCFH-DAで染色された細胞における細胞内ROS CLSM画像を示す。そして、図11(c)は、4mMのMPP、10μg・mL-1 TMHA、10μMのCu2+で処理され、かつDCFH-DAで染色された細胞における細胞内ROSのCLSM画像を示す。ROS特異的蛍光強度の明らかな低下からわかるように、TMHAが細胞内上昇ROSを効率的に捕捉することができることを示した。特徴的1:2:2:1ヒドロキシルラジカルスピンにより、TMHA処理による細胞内ROS誘導の減少が実証された。
【0131】
(11)インビボ保護試験
【0132】
一般的に、1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)の投与は、ヒトにおける散発性PDと著しく類似した動物の臨床症状をもたらすことが広く受け入れられている。従って、当該の実験では、本発明者らは、MPTPを利用して、PDの動物モデルにおいてパーキンソン症状を生じさせた。簡単にまとめると、C57BL/6マウスは、7群(n=5マウス/群)にランダムに分けて、即ち、空白対照群(正常生理食塩水)、高用量のTMHA(100mg・kg-1)、低用量のTMHA(50mg・kg-1)、高用量のMPTP(30mg・kg-1)、低用量のMPTP(10mg・kg-1)、MPTP+TMHA(30mg・kg-1+10mg・kg-1)及びMPTP+TMHA(30mg・kg-1+20mg・kg-1)。具体的には、モデル群は、MPTPを、少なくとも4日間連続腹腔内注射により投与して、PDのマウスモデルを生成した。空白対照群及びTHMA群は、それぞれ腹腔内注射により生理食塩水及びTHMAで治療した。MPTP+TMHA群は、TMHA(用量:10又は20mg・kg-1)を予め腹腔内0.5時間(1日1回)注射し、次いで30mg・kg-1のMPTPを7日間腹腔内注射した。
【0133】
水泳試験により運動機能を評価した。各動物を直径120cm及び高さ80cmのサイズを有する円形プールに入れた。水(25℃)の深さは60cmであった。追跡システム(Shanghai Jiliang Software Technology Co.,Ltd.)を使用して10分間隔で移動距離(cm・10min-1)及び持続時間(秒間)を記録した。回転ロッド(Ugo Basile)を用いて運動の姿勢及びバランスを測定した。マウスに、10rpmから始まり、そして30秒間をかけて22rpmまで加速した回転ロッド上で15分間の3回の試験を行った。この試験間の間隔は3分間であった。各群について、ロッドからの落下時間を測定し、平均化した。図12(a)は、記憶障害のマウスの移動距離及び落下待ち時間を示し、***p<0.001であった。これらのデータは、TMHA治療がMPTP処置動物の認知活動を回復することができることを示した。
【0134】
ミトコンドリアの形態の変化は、ROSにより誘発されるミトコンドリア機能不全の早期かつ重要な徴候である。ここで、本発明者らは、ミトコンドリアの形態変化を可視化するためにTEMを使用した。一般に、C75BL/6マウス由来の脳組織を、順次に冷2.5%グルタルアルデヒドを含有する0.1M PBS(pH7.2)と2%パラホルムアルデヒドを含有する0.1mリン酸緩衝液(pH7.2)との混合物中で一晩固定し、その後、エポキシ樹脂に入れた。埋め込まれた試料をカプセルに装填し、38℃で9時間重合させ、次いで60℃で48時間重合させた。ウルトラミクロトーム(RMC、USA)を用いて薄切片を作製し、銅グリッド上に収集した。切片の適当な領域を100nmの厚さで切断し、飽和4%ウラニル酢酸/4%クエン酸鉛で切片を染色した後、透過型電子顕微鏡(JEM-2100F)を用いて80kVで検査した。図12(b)は、高用量のMPTP(30mg・kg-1)で治療された動物からのミトコンドリアを示し、赤線により示すように、ミトコンドリアは、膨潤、液胞形状及び重度なクリステ破壊を示す。それに対して、図12(c)は、MPTP(30mg・kg-1)+TMHA(30mg・kg-1)で治療された動物からのミトコンドリアを示し、赤線により示すように、ミトコンドリアは、正常な形態を示す。
【0135】
(12)異なるリガンドを有する単体CuNCsによるα-syn凝集動態試験
【0136】
異なるリガンドで修飾したCuNCsを、文献に従って製造した。チオフラビンT(略語:ThT)は、アミロイドの存在を同定するために使用される高感度の蛍光マーカーである。ThTをポリペプチド又はタンパク質のモノマーと共にインキュベートすると、その蛍光は実質的に変化しない。ThTが繊維構造を有するアミロイドポリペプチド又はタンパク質に遭遇すると、それは、アミロイドポリペプチド又はタンパク質に直ちに接着し、その蛍光強度は指数関数的に増加する。従って、ThTは、ペプチド又はタンパク質のアミロイドーシスをモニターするためのメーカーとして広く使用されている。本実施形態は、CuNCsの存在下でα-synの線維化凝集の動態過程をモニターするために、ThT蛍光標識法を採用した。具体的な実験方法は以下の通りである。
【0137】
α-synモノマーの前処理:凍結乾燥したα-syn粉末(Bachem Corp.)をHFIP中に溶解して、1g/Lのα-syn溶液を得た。シーリングの後、室温で2~4時間インキュベートし、次いで、高純度窒素を使用して、ヒュームボードにおいてHFIPを除去するように、適切な流速でブローし、乾燥したα-synを200μLのDMSO中に溶解させ、溶液をシールし、将来の使用のために、それを最大一週間まで-20℃の冷蔵庫に保存した。使用前に、α-syn DMSO溶液を、リン酸緩衝液(PBS、10mM、pH=7.4)を用いて20μMに希釈して、α-syn PBS溶液を得た。実験における全てのα-syn PBS溶液は、使用直前に製造された。
【0138】
試料の製造及び検出:リガンドで修飾したCuNCsをα-syn PBS溶液に添加して、CuNCs及びα-synをそれぞれ5ppm及び35μmの最終濃度に到達させた。溶液を96ウェルプレート中で37℃で連続的にインキュベートし、10分毎にマイクロプレートリーダーにより蛍光強度をモニターし、ThTの蛍光強度の変化を通してα-syn凝集の動態的プロセスを同定した。実験群は、リガンドで修飾したCuNCsを使用した。リガンド対象群は、CuNCsと結合しないリガンド分子を使用した。空白対照群は、α-synのみを使用した。
【0139】
図13を参照すると、α-synフィブリル化動態に対するL-グルタチオン(GSH)で修飾したCuNCs(GSH-CuNCs)の影響を示すグラフを提供する。結果によれば、37℃で35μMのα-synのインキュベーション工程において、ThT標識された蛍光強度が25時間目から急速に増加し、α-syn凝集及びフィブリル化が起こったことを示した。リガンド対照群の結果は、リガンドGSHを単独使用することがα-synの凝集動態に明らかな影響をあたえることがないことを示した。CuNCsを添加した実験群については、ThT標識された蛍光強度は、70時間の実験にわたって増加することなく、ベースラインの近くに保持され、GSHで修飾したCuNCsがα-syn凝集及びフィブリル化を完全に阻害することができ、その効果はGSHリガンドではなくCuNCsによることを示唆している。
【0140】
特定の実施形態では、CuNCsは、例えば、L(D)-システイン、N-イソブタノイル-L(D)-システイン(L(D)-NIBC)及びN-アセチル-L(D)-システイン(L(D)-NAC)を含むその他のリガンドで修飾され、そして修飾されたCuNCsも、同じプロトコルで研究された。異なるリガンドで修飾したCuNCsについても同様の現象が観察され、これらのリガンド自体は、α-syn凝集及びフィブリル化に影響を与えず、一方、リガンドで修飾したCuNCsは、α-syn凝集及びフィブリル化を完全に阻害することができるという同じ結論に至った。
【0141】
(13)MPP誘導のPD細胞(SH-sy5y)モデル試験
【0142】
実験は、CCK-8法の試験結果から得られた細胞生存率を指標として使用して、PDのSH-sy5y細胞モデルにおけるMPP(一般的に使用された神経毒)の毒性効果に対するリガンドで修飾したCuNCsの耐性効果を反映して、PD特異的方法に対するそれらの神経保護効果を実証した。具体的な方法は以下のとおりである。
【0143】
1)対数増殖期におけるSH-sy5y細胞を摂取した。完全培地で希釈して、5×10/mLの細胞密度を有する細胞懸濁液を形成した。200μLの細胞懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに入れ、インキュベータ中で37℃、5%COの環境で培養した。細胞を付着させた後に試料を添加した。
【0144】
2)最終濃度を0.1ppm、1ppm、5ppm、10ppm及び20ppmとするように、維持培地で製造された、異なる粒径を有するリガンドで修飾したCuNCs試料又はリガンドで修飾した銅ナノ粒子試料100μLを添加した。リガンドで修飾したCuNCsで2時間前処理した後、異なる細胞群にMPP(最終濃度1mM)を添加した。これにより、SH-sy5y細胞を含有しない空白対照群、SH-sy5y細胞を含有するがCuNCs及びMPPを含まない陰性対照群、SH-sy5y細胞及び1mM MPPのみを含有する細胞対照群、SH-sy5y細胞及び100ppmのCuNCsを含有するがMPPを含まない試料対照群、及びSH-sy5y細胞と1mM MPPと対応するリガンド分子(最終濃度20ppm)とを含有するリガンド対照群を設置した。次いで、細胞を37℃で24時間培養した。培養培地を除去するために遠心分離した後、10%CCK-8を含む100μLの維持培地を各ウェルに添加し、次いで4時間インキュベートした後、各ウェルの吸光度を450nmで測定した。吸光度は、MPP病変に対するリガンドで修飾したCuNCsの事前保護及び治療効果を反映することができる。
【0145】
図14を参照すると、MPP病変PD細胞(SH-sy5y)モデルの細胞生存率に対するCuNCsの影響を示す直方図を提供した。結果によれば、24時間の培養後、100ppmのCuNCsを添加したが、MPPで処理されなかった試料対照群の細胞生存率は、空白対照群(100%として設定)に対して110.0±6.2%に増加し(P<0.01)、CuNCsが非毒性であることを示唆している。1mM MPPを添加したが、CuNCsがないモデル対照群の細胞生存率は、58.9±5.4%まで低下し(P<0.01、空白対照群に対して)、リガンド対照群の細胞生存率は56.9±3.4%であり(P<0.01、空白対照群に対して)、リガンド自体がMPP病変細胞の生存率を上昇させないことを示唆している。0.1ppm、1ppm、5ppm、10ppm及び20ppmのCuNCsを添加した投与群の細胞生存率は70.9±7.1%(P<0.001、モデル対照群に対して)、89.3±4.1%(P<0.001、モデル対照群に対して)、90.5±6.1%(P<0.001、モデル対照群に対して)、92.8±4.8%(P<0.001、モデル対照群に対して)、88.5±1.4%(P<0.001、モデル対照群に対して)に上昇した。この結果は、本発明により提供されるリガンドで修飾したCuNCsが、PDの神経細胞に対して著しい保護効果を有し、この効果は、リガンドでなくCuNCsによるものであることを示唆している。
【0146】
L(D)-システイン、N-イソブタノイル-L(D)-システイン(L(D)-NIBC)及びN-アセチル-L(D)-システイン(L(D)-NAC)等のその他のリガンドで修飾したCuNCsについても、同じ工程を採用して実験を実施した。これらの効果は同様であり、詳細な説明を省略する。
【0147】
(14)CuNCsの同定
【0148】
一つ又は複数のリガンドで修飾したCuNCsを合成した。前記リガンドは、チミン、L(D)-システイン、及びN-イソブタノイル-L-システイン(L-NIBC)、N-イソブタノイル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-L-システイン及びN-アセチル-D-システイン等のその他のシステイン誘導体、システイン含有オリゴペプチド及びそれらの誘導体(L-システイン-L-アルギニンジペプチド(CR)、L-アルギニン-L-システインジペプチド(RC)、L-システインL-ヒスチジン(CH)、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(GCR)、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(PCR)、L-グルタチオン(GSH)、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド(GSCR)及びグリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド(GCSR)等のジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、及びその他のシステイン含有ペプチドを含むが、これらに限定されない。)、及び1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン及びドデシルメルカプタンのうち一つ又は複数等のその他のチオール含有化合物を含む。
【0149】
以下に、GSHで修飾したCuNCsの特徴データを例として示す。
【0150】
1)透過型電子顕微鏡(TEM)による形態の観察
【0151】
試験粉末(GSHで修飾したCuNCs試料)を試料として、超純水に2mg/Lになるように溶解し、次いで、懸濁液滴法により試験試料を製造した。具体的な方法は、以下のとおりである。即ち、5μLの試料を銅メッシュ上に滴下し、水が消失するまで自然に揮発させ、次いでJEM-2100F STEM/EDS電界放出高分解能TEMにより試料の形態を観察した。
【0152】
図(15)のパネルA及びパネルBは、GSHで修飾したCuNCsの典型的なSEM画像を示し、異なるTEM画像からそれらのサイズ分布を計算した。その結果、CuNCsが十分に分散され、それらのサイズが0.5-5.0nmの範囲にあることを示した。
【0153】
2)X線光電子分光法
【0154】
X線光電子分光法(XPS)スペクトルを、ESCALAB 250Xi X線光電子分光計で測定した。両面導電性接着剤(3mm×3mm)をアルミニウム箔に付着させ、試験粉末を両面テープ上に均一に広げ、アルミニウム箔の層で被覆した。試料を8MPaの圧力下で1分間保持した。表面上の残留粉末を除去し、次いで中心試料(1mm×1mm)をXPS試験のために切り出した。
【0155】
図15のパネルCは、CuNCs中のCu元素のXPSスペクトルである。2つのピークは、それぞれ、931.98及び951.88eVに現れ、Cuの2p3/2及び2p1/2電子の結合エネルギーによるものである。942.0eV付近のCu2p3/2サテライトピークの不在により、Cu(II)電子が存在しないことが確認された。Cu(0)の結合エネルギーはCu(I)のそれから0.1eVだけ離れたため、Cu(I)の形成を排除することは不可能であり、得られたGSHで修飾したCuNCs中のCuの原子価状態は、0から+1の間にある可能性が最も高かった。
【0156】
3)フーリエ変換赤外(FT-IR)分光法
【0157】
PerkinElmer LS 55蛍光分光計でFT-IRスペクトルを試験した。試験粉末を超純水に溶解し、室温で測定した。走査範囲は200~800nmであり、試料セルは1cmの光路を有する標準石英キュベットであった。
【0158】
図15のパネルDは、GSHで修飾したCuNCs(上)とGSH(下)とのFT-IR分光法の比較を示す。GSHは、数多くの特徴的IRバンド、即ち、COOH(1390及び1500cm-1)、N-Hストレッチ(3410cm-1)、及びNH基のN-H曲げ(1610cm-1)を示した。2503cm-1で観察されたピークは、S-Hストレッチ振動モードによるものである。S-Hストレッチ振動帯(2503cm-1)以外のすべての対応する特徴的IRバンドは、GSHで修飾したCuNCsに見られる。これは、S-H結合が切断されること、及び、Cu-S結合を形成することにより、GSH分子がCuNCsの表面に結合されることを示唆している。
【0159】
4)蛍光分光法
【0160】
試験粉末を超純水に溶解し、室温で蛍光分光法により測定した。
【0161】
図15のパネルEに示されるように、CuNCsは、365nmでの励起ピーク下で、595nmでピークを有する赤色発光と、約80nmの対応する半値全幅(FWHM)とを示す。なお、凝集誘起発光特性のため、エタノールが溶液に添加されたとき、CuNCsのFL強度が著しく改善された。さらに、大きなストークスシフト(230nm)は、蛍光プローブ及びバイオイメージングのための良好な見込みを示した。
【0162】
(15)CuNCsのCAT活性
【0163】
現在、CAT活性の検出は、紫外線吸収のみにより240nmでの過酸化水素の紫外線吸収強度が特徴づけられる。しかしながら、合成された銅クラスターは、Hプロセスを触媒した後に変化する可能性があるので、紫外線吸収は、300nm未満で大きく増加する。従って、本実験は、CuNCsにより触媒されるHから生成された酸素を観察することによりCuNCsの触媒効果を確認した。本実験は、Hの分解により生成された気泡を観察し、従って、実験的現象は、Hの濃度が高いほど明らかである。実験手順は以下の通りであった。
【0164】
室温で、10%H溶液(4ml)を試験管に添加し、次いで2000ppmのCuNCs溶液(2ml)を添加し、3分間触媒した。図16に示すように、左側の試験管は、CuNCsが添加された試験管であり、管壁にHの触媒分解により生成された大量のO気泡を有し、右側の試験管は、等量の超純水が添加された対照群であり、明らかな気泡を有しなかった。本実験から、CuNCsが優れたカタラーゼ活性を有することがわかった。
【0165】
(16)CuNCsのGPx活性
【0166】
銅クラスターのGPx活性を5,5'-ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)発色アッセイにより研究した。GPxは、過酸化水素と還元型グルタチオン(GSH)との反応を促進して、水及び酸化型グルタチオン(GSSG)を形成する。チオール含有化合物はDTNBと反応してDTNBのジスルフィド結合を切断して、2-ニトロ-5-チオ安息香酸(NTB)を生成することができ、これは中性又はアルカリ性のpH条件下で、水中でイオン化して、NTB2-二価アニオンを形成することができる。NTB2-は、412nmでの吸光度を測定することにより定量することができ、それにより、反応におけるGSHの量を定量することができる。
【0167】
実験手順は以下の通りであった。
【0168】
以下の試薬を試験管に室温で順次添加した。
【0169】
(1)0.2mlの一定濃度のCuNCs溶液(適切な量のCuNCsをPBS緩衝液に溶解したもの)。
【0170】
(2)0.5mlのGSH(1mM)(適切な量のGSH粉末をPBS緩衝液に溶解したもの)。
【0171】
(3)0.5mlのH溶液(1.5mM)
【0172】
(4)0.2mlの1%クエン酸ナトリウムを含むDTNB(1mM)(0.3gのクエン酸三ナトリウム二水和物をPBS緩衝液(30ml)に溶解し、それにDTNBを溶解し、超音波処理を行ったもの)。
【0173】
試験管を穏やかに振盪することにより溶液を混合し、UVスペクトルを検出した。
【0174】
ブランク群では、CuNCs溶液を0.2ml PBS緩衝液で置き換えた;実験群は、銅クラスターの濃度及び触媒時間を変化させることにより触媒効果を研究した。
【0175】
図17aは、異なる濃度の銅クラスター(30ppm、60ppm、90ppm、120ppm、150ppm)について室温で5分間触媒することにより得られた実験結果を示す。412nmでのUV吸収が触媒濃度の増加に従って著しく減少することが見出され、システム中のGSHが触媒濃度の増加と共に減少したことがわかった。これからも、触媒の増加と伴い、より多くのHがGSHを酸化させたことを意味する。
【0176】
その後の実験の結果を観察するために、反応時間を延長した。図17bは、13分間の触媒作用後の結果を示す。銅クラスター濃度が30ppm及び60ppmであると、紫外線吸収が減少し続け、触媒反応が継続していることを示し、一方、銅ナノクラスター濃度が90ppm以上である場合には、反応はほとんど停止し、GSHがほとんど完全に触媒されたことを示した。従って、90ppmを選択して連続モニタリングを行った。
【0177】
図17cに示すように、触媒反応が開始時に遅く、触媒速度は反応が進行するにつれて徐々に増加し、触媒反応は11~13分間でほとんど完了した。
【0178】
(17)CuNCsのSOD活性
【0179】
SOD活性アッセイは、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)アッセイキット(Nanjing Jiancheng Bio)を用いて測定した。要するに、レンゲオキシダーゼ及びキサンチンオキシダーゼを反応させてスーパーオキシドを生成し、さらにWST-1(2-(4-ヨードフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-5-(2,4-ジフェニル)-2H-テトラゾリウム)を還元し、生成したホルマザンを440nmの紫外スペクトルにおいて検出する。440nmでの紫外線吸収の減少を観察するために、銅クラスターを添加することによりSOD活性を判定した。
【0180】
基質作用溶液の調製:基質原液:緩衝溶液を1:200の比率で混合して、現在使用される基質作用溶液を調製した。
【0181】
酵素作用溶液の調製:酵素原液:酵素希釈溶液を1:10の比率で混合して、現在使用される酵素作用溶液を調製した。
【0182】
【0183】
上記の設定によれば、96ウェルプレート中のウェルに、(1)基質作用溶液、(2)酵素希釈溶液、(3)被験試料又は蒸留水、及び((4)酵素作用溶液を順次に添加した。混合されたウェルをマイクロプレートリーダーで37℃でインキュベートし、450nmでUV吸光度を読み取った。
【0184】
図18aは、異なる濃度のCuNCsを用いて60分間のインキュベーションの間、450nmでのUV吸光度を示す。図18aに示すように、CuNCsの濃度が増加したと伴い、インキュベーションの間にUV吸収値が徐々に減少し、CuNCsの各用量に対するUV吸収値は30分後に平坦化された。これから、CuNCsが優れたSOD活性を有し、そのSOD活性がCuNCsの濃度の増加と伴い増加したことがわかった。上記の結果から、20分間のインキュベーション時間でのUV吸収値を選択してSOD阻害率を計算した。図18bに示すように、60ppm、90ppm、120ppm、150ppm、及び180ppmでCuNCsのSOD阻害率は、それぞれ、16.9%、23.2%、33.7%、44.8%、及び55.2%であった。SOD活性は、SOD阻害率が反応系において50%に達する際にSOD活性単位に対応する酵素の量を意味する。従って、例えば、150ppmのCuNCsは、10.24U/mgのSOD活性を有する。
【0185】
実験結果から、合成されたGSH-CuNCsが、カタラーゼ(CAT)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)及びスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)という異なる構造及び機能を有する3つの主要抗酸化酵素の酵素活性を有することがわかった。
【0186】
(18)H誘発緑内障細胞(RGC-5)モデル
【0187】
この実施形態では、細胞生存率を指標として用いて、Hにより誘導される細胞毒性についてリガンド修飾銅ナノクラスター(CuNCs)の効果を試験した。cck-8アッセイの結果によれば、CuNCsが網膜神経節細胞(RGC)における酸化ストレス誘導損傷に対する神経保護効果を有することがわかった。
【0188】
対数増殖期のRGC-5細胞を完全培地(DMEM培地+10%FBS+1%ペニシリン-ストレプトマイシン)で5×10/mlの密度の細胞懸濁液に希釈し、96ウェルプレート中100μL/ウェルで接種した。細胞を5%COインキュベーター中で37℃で培養した。細胞を付着させた後、元の培養液を廃棄し、維持培地(DMEM培地+2%FBS+1%ペニシリン-ストレプトマイシン)から調製した50μlの異なる濃度のCuNCsをそれぞれのウェルに加えた。最終濃度は、それぞれ、0.5、5及び20ppmであった(即ち、それぞれ、図19中の5、6、7)。2時間前処理後、約50μlのH(最終濃度105μM)を加えた。細胞を24時間インキュベートし、10%CCK-8を各ウェルに加え、各ウェルの吸光度値を450nmの波長で測定し、H誘発損傷に対するCuNCsの保護効果を評価した。上記実験では、細胞を処理しなかったブランク対照群、105μMのHで細胞を処理したモデル対照群、100ppmのCuNCsを添加したがHを添加しなかったCuNCs対照群、及び20ppmのリガンドと105μMのHを添加した配位子対照群(即ち、それぞれ、図19中の1、2、3、4)を提供した。
【0189】
図19に示すように、GSHで修飾したCuNCsの実験結果を例として挙げる。その結果は、24時間の培養後に、100ppmのCuNCを補充したが、Hで処理されなかった銅クラスター対照群(即ち、群2)の細胞生存率は、ブランク対照群(即ち、群1)(100%)に対して103.2±7.0%であり(P>0.05)、CuNCが非毒性であったことがわかった。100μM Hを添加したが、CuNCを添加しなかったモデル対照群(即ち、群3)の細胞生存率は、ブランク対照群の58.0±6.2%まで低下した(P<0.005)。20ppmのGSH及び100μmのHを添加したリガンド対照群(即ち、群4)の細胞生存率は、ブランク対照群の56.5±5.9%であり(ブランク対照群との比較する場合P<0.01、モデル対照群と比較する場合P>0.05)、単独で使用したときに、リガンドが、H誘発損傷細胞モデルにおける細胞生存率を増加させないことがわかった。0.5ppm (即ち、群5)、5ppm (即ち、群6)及び20ppm (即ち、群7)CuNCsでの投与群の細胞生存率は、65.9±4.5%(モデル対照群と比較する場合p<0.05)、87.1±7.4%(モデル対照群と比較する場合p<0.01)、及び91.2±5.7%(モデル対照群と比較する場合p<0.01)に増加した。
【0190】
上記の結果によれば、本発明のCuNCsが、H誘発損傷RGC細胞モデルにおける細胞生存率を有意に改善することができ、酸化ストレスにより誘導されるRGC細胞のアポトーシスに抵抗することができる一方、GSHが、酸化ストレスにより誘導されるRGC細胞のアポトーシスに明らかな影響を及ばないことがわかった。
【0191】
他のリガンドで修飾したCuNCsも同様の工程の後に試験されており、同様の効果を有するため、ここで説明を省略する。
【0192】
本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、実施形態は例示的なものであり、本発明の範囲はそれに限定されないことが理解されるべきである。本発明に係る分野の当業者にとって、本発明の他の実施形態は自明である。このような代替実施形態は、いずれも本発明の範囲内に包含されると考えられる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義され、前記の説明によりサポートされる。


図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図16
図17
図18
図19