(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】垂直プローブアレイ用のキャリア構造上のプローブ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/073 20060101AFI20230626BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20230626BHJP
【FI】
G01R1/073 D
G01R31/26 J
(21)【出願番号】P 2021562102
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 US2020030031
(87)【国際公開番号】W WO2020220012
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-01-14
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505377474
【氏名又は名称】フォームファクター, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セルヴァラージ、ムケシュ
(72)【発明者】
【氏名】キスター、ジャニュアリー
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0237099(US,A1)
【文献】特開2007-024555(JP,A)
【文献】特開平07-066252(JP,A)
【文献】特開平07-321168(JP,A)
【文献】特開2008-281564(JP,A)
【文献】特開2011-106980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06-1/073
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気デバイスを試験するためのプローブアレイであって、
スペーストランスフォーマと、
前記スペーストランスフォーマ上、または前記スペーストランスフォーマに近接して配置された2以上のプローブキャリアプレートとを備え、
前記プローブキャリアプレートのそれぞれは、その上に配置された2以上の垂直プローブを有し、
前記垂直プローブのそれぞれは、前記スペーストランスフォーマに電気的に接触する第1の可撓性部材を有し、
前記垂直プローブのそれぞれは、試験中のデバイスに一時的に電気的に接触するように構成された第2の可撓性部材を有
し、
前記垂直プローブのそれぞれは、2以上の前記プローブキャリアプレートのなかの対応する1つに取り付けられたプローブ本体を含み、
前記垂直プローブのそれぞれは、その垂直プローブの前記プローブ本体、前記第1の可撓性部材、及び前記第2の可撓性部材を一体的に有する1個部品であることを特徴とするプローブアレイ。
【請求項2】
前記スペーストランスフォーマに取り付けられた機械的補強部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のプローブアレイ。
【請求項3】
前記プローブキャリアプレートは前記スペーストランスフォーマ上に配置され、
前記機械的補強部材は、前記スペーストランスフォーマの熱膨張と、前記スペーストランスフォーマの平坦度からの逸脱との両方を制限するように構成されることを特徴とする請求項2に記載のプローブアレイ。
【請求項4】
前記機械的補強部材は、前記スペーストランスフォーマに接合部またはスタンドオフを介して取り付けられ、
前記プローブキャリアプレートは前記機械的補強部材上に配置され、
前記垂直プローブの前記第1の可撓性部材は、前記スペーストランスフォーマの熱膨張と、前記スペーストランスフォーマの平坦度からの逸脱との両方に適応するように構成されることを特徴とする請求項2に記載のプローブアレイ。
【請求項5】
前記垂直プローブは2次元MEMSプローブであることを特徴とする請求項1に記載のプローブアレイ。
【請求項6】
前記スペーストランスフォーマはセラミック基板を含むことを特徴とする請求項1に記載のプローブアレイ。
【請求項7】
前記スペーストランスフォーマはプリント基板を含むことを特徴とする請求項1に記載のプローブアレイ。
【請求項8】
2以上の前記垂直プローブ
の先端部
の位置のばらつきが、25μm以下
となる程度まで平坦であることを特徴とする請求項1に記載のプローブアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気デバイス及び回路を試験するためのプローブアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電気デバイス及び回路の試験は、多くの場合、試験対象デバイスに複数の一時的な電気接点を作成するプローブアレイを使用して実行される。デバイスのサイズ及び複雑さが増し、ウェハスケールの試験がより一般的になるにつれて、より大きなプローブアレイに対する需要が増加の一途をたどっている。プローブアレイの従来の構造は単純であり、スペーストランスフォーマは、プローブを取り付けるための機械的支持を提供し、プローブと残りの試験装置との間の電気的接続も提供する。
【0003】
しかしながら、この単純な構造は、数千以上のプローブを備えたプローブアレイについては問題になり得る。ロボットによるピック・アンド・プレース技術を使用した場合でも、多数のプローブを備えたスペーストランスフォーマの設置は、通常、非常に時間のかかるプロセスであるので、組み立て時間はそのような問題の1つである。もう1つの問題は、プローブアレイの先端部の平坦度に厳しい要件が存在し、これにより、スペーストランスフォーマの平坦度及びスペーストランスフォーマの熱膨張について、対応する要件が生じることである。結果的に生じるスペーストランスフォーマの設計制約条件は、解決が困難なものであり得る。したがって、これらの問題を軽減することは、当該技術分野における進歩であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、複数のプローブが各プローブキャリアに配置され、プローブキャリアがスペーストランスフォーマ上またはスペーストランスフォーマに近接して取り付けられたプローブ・オン・キャリア構造が提供されまる。各プローブは、2つの可撓性部材を有する。第1の可撓性部材は、スペーストランスフォーマに電気的に接触します。第2の可撓性部材は、試験対象デバイスに一時的に電気的に接触する。
【0005】
好ましい実施形態では、機械的補強部材を使用して、スペーストランスフォーマの平坦性の欠如及び熱膨張の可能性に対処する。このような補強部材を使用する2つの例示的な方法を以下に詳細に説明する。第1のアプローチでは、機械的補強部材をスペーストランスフォーマに取り付けることにより、スペーストランスフォーマの平坦度及び熱膨張を仕様の範囲内に収め、プローブキャリアをスペーストランスフォーマ上に配置する。
【0006】
第2のアプローチでは、スペーストランスフォーマの平坦度及び熱膨張を仕様内に収めようとすることなく、機械的補強部材をスペーストランスフォーマに取り付け、プローブキャリアを補強部材上に配置する。ここで、垂直プローブの第1の可撓性部材は、スペーストランスフォーマの熱膨張と、スペーストランスフォーマの平坦度からの逸脱との両方に適用するように構成される。
【0007】
スペーストランスフォーマにプローブキャリアを設置するために必要な組み立て作業の数は、スペーストランスフォーマに個々のプローブを設置するために必要な組み立て作業の数よりもはるかに少ないので、組み立て時間が削減される。さらに、プローブキャリアにプローブを並行して配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】本発明の実施形態で使用するための例示的な垂直プローブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1A-Bは、本発明の第1の実施形態を示す。
図1Aは側面図であり、
図1Bは概略的に対応する上面図である。この例のプローブアレイは、スペーストランスフォーマ102と、スペーストランスフォーマ上、またはスペーストランスフォーマに近接して配置された2以上のプローブキャリアプレート104とを備える。プローブキャリアプレート104のそれぞれは、その上に配置された2以上の垂直プローブ106を有する。
【0010】
垂直プローブのそれぞれは、スペーストランスフォーマに電気的に接触する第1の可撓性部材(例えば、第1の可撓性部材106a)と、試験対象デバイスに一時的に電気的に接触するように構成された第2の可撓性部材(例えば、第2の可撓性部材106b)とを有する。
図1Aについての乱雑さを減じるために、これらの特徴はすべてのプローブについて示されているが、プローブのうち1つについてのみ参照している。プローブキャリアプレート104は、接合部108を介してスペーストランスフォーマ102に取り付けられている。
【0011】
このプローブアレイの全体的な構造は、
図1Bを参照することによって最もよく理解できる。
図1Bは、複数のプローブキャリアプレート104を示しており、それぞれのプローブキャリアプレート104はスペーストランスフォーマ102上に配置されている。プローブ(垂直プローブ106)は、プローブキャリアプレート104上に配置され(例えば、図示のように)、プローブの第1の可撓性部材は、スペーストランスフォーマ102と電気的に接触する。任意の数のプローブキャリアプレート104をスペーストランスフォーマ102上に配置することができる。本発明の実施は、スペーストランスフォーマ102上のプローブキャリアプレート104の横方向の配置に決定的には依存しない。この説明の実施例は、スペーストランスフォーマ102上のプローブキャリアプレート104の規則的な配列を示しているが、これは必須ではない。同様に、本発明の実施は、プローブキャリアプレート104上の垂直プローブ106の数または配置に決定的には依存しない。
【0012】
スペーストランスフォーマは、セラミック基板を含み得る。あるいは、スペーストランスフォーマは、プリント基板(printed circuit board substrate)を含み得る。好ましくは、垂直プローブの第2の可撓性部材の先端部は平坦であり、公差は25μm以下である。
【0013】
上記のように、このレベルの平坦度を達成することは、実際には困難であり得る。
図1A-Bの実施例について、スペーストランスフォーマ102は、必要とされる平坦性を提供している。平坦性の提供は、機械的に安定したスペーストランスフォーマ(例えば、セラミック基板上の)を使用して行うことができる。しかしながら、様々な技術(例えば、プリント基板(PCB)など)を使用してスペーストランスフォーマを作成することが望ましい場合が多く、通常、プローブの先端部の平坦性を提供するためには特別な対策が必要である。プリント基板の平坦度は、通常、300mmの範囲で0.5mm~1mmである。PCBスペーストランスフォーマについて考慮すべきCTE(熱膨張係数)の問題も存在する。
【0014】
より具体的には、PCBは通常、約10-50層を有し、使用されるコア及び予備含浸材料は約4ppm/CのCTEを有する。従来のPCBには、グランド、信号、及び電源面(電気経路/接続)用のCuの金属層もいくつか含まれているが、CuのCTEは約16ppm/Cである。PCB層内のCu及びその他の金属は、コア及び予備含浸材料を除くCTEの積み重ね全体の約40-60%を占める。詳細な計算により、4ppm/CというPCBの複合的なCTEを達成することは、これらの従来の材料では非常に困難であることが示されている。このようなPCBの最終的な複合CTEは、通常、約6-8ppm/Cであることがわかった。
【0015】
試験対象デバイス(DUT)は通常シリコン(Si)ウェハであり、SiのCTEは2.7ppm/Cである。これは、DUTのCTEと複合PCBのCTEとの間のずれが大きく、高温負荷試験及び低温負荷試験中にプローブがデバイスパッドに適切に接触しないことを意味する。例えば、一般的な試験温度範囲は-40°Cから150°Cの範囲であり得る。また、PCBは通常、平坦ではない。製造後のPCBの平坦度は通常、約500um-1mmである。上記のように、プローブの先端部は、試験対象デバイスの接触パッドに適切に接触するために、25μmの平坦度の範囲内であることが望ましい。
【0016】
このCTEの問題を軽減するために、PCB内の銅トレースを、ベリリウム、ロジウム、ニッケルベースの合金など、約4-5ppm/CのCTEを有する低CTE金属に置き換えることができる。
【0017】
これらの理由を動機として、好ましい実施形態は、プローブアレイに、機械的補強部材を備える。このような機械的補強部材を使用することができる2つの方法が存在する。第1のアプローチでは(
図2A-B)、機械的補強部材がスペーストランスフォーマに取り付けられることにより、スペーストランスフォーマの平坦度及び熱膨張を仕様の範囲内に収め、プローブキャリアプレートがスペーストランスフォーマ上に配置される。第2のアプローチでは(
図3A-B)、スペーストランスフォーマの平坦度及び熱膨張を仕様の範囲内に収めようとすることなく、機械的補強材部材がスペーストランスフォーマに取り付けられ、プローブキャリアプレートが機械的補強部材上に配置される。
【0018】
図2A-Bは、本発明の第2の実施形態を示す。
図2Aは側面図であり、
図2Bは概略的に対応する上面図である。これは、機械的補強部材202が図示のようにプローブアレイに追加されていることを除いて、
図1A-Bの実施例と同様である。機械的補強部材202は、接合部204によってスペーストランスフォーマ102に取り付けられている。プローブキャリアプレート104は、スペーストランスフォーマ102上に配置されている。
【0019】
機械的補強部材202は、スペーストランスフォーマの熱膨張と、スペーストランスフォーマの平坦度からの逸脱との両方を制限するように構成される。機械的補強部材202は、CTEが4ppm/C未満の低CTE金属またはガラスまたはセラミック製の補強部材で作製することができる。適切な金属としては、これに限定しないが、インバー36及びスーパーインバーが挙げられる。適切なセラミックとしては、これに限定しないが、Photoveel(登録商標)、窒化ケイ素、及びガラスムライトが挙げられる。適切なガラスとしては、これに限定しないが、ホウケイ酸塩、ボロフロート、石英、Pyrex(登録商標)、及びZerodur(登録商標)が挙げられる。
【0020】
機械的補強部材202は、非導電性接着剤、M2/M3ねじのような機械的特徴などによってスペーストランスフォーマ102に取り付けられ得る。本発明の実施は、この接合がどのように行われるかに、決定的には依存しない。
【0021】
上記のようにPCBスペーストランスフォーマに補強部材を取り付けることにより、PCBの平坦度を500um-1mmから50um-100umに改善することができる(約10倍の改善)。プローブキャリアプレート104をスペーストランスフォーマ102に接合するためのロボットによるピック・アンド・プレース技術を使用することにより、プローブ先端部の25μm以下の平坦度を達成することができる。これは、ピック・アンド・プレースによる組み立て中に、プローブキャリアプレートの垂直位置を5μm未満の精度に調整することができるためである。
【0022】
図3A-Bは、本発明の第3の実施形態を示す。
図3Aは側面図であり、
図3Bは概略的に対応する上面図である。これは、機械的補強部材202が図示のようにプローブアレイに追加されていることを除いて、
図1A-Bの実施例と同様である。機械的補強部材202は、接合部304によってスペーストランスフォーマ102に取り付けられている。垂直方向のスタンドオフ302は、接合がなされていないが、垂直支持が依然として提供されている場合に使用することができる。プローブキャリアプレート104は、機械的補強部材202上に配置されている。
【0023】
垂直プローブの第1の可撓性部材は、スペーストランスフォーマの熱膨張とスペーストランスフォーマの平坦度からの逸脱との両方に適応するように構成される。本実施例における機械的補強部材202に適した材料は、上記の通りである。本実施例における機械的補強部材202のスペーストランスフォーマ102への接合は、上記と同様の接合技術を使用して行うことができるが、設計目標が異なる。より具体的には、設計目標は、機械的補強部材202に影響を与えることなく、CTEに起因してスペーストランスフォーマ102を動かすことであるので、本実施例において接合面積は最小化される。そのため、
図3Aは、接合部304と非接合型かつ垂直方向のスタンドオフ302との組み合わせを示す。
【0024】
対照的に、
図2A-Bの実施例の設計目標は、より望ましいCTE特性を有する均一に接合されたアセンブリを形成することによって、スペーストランスフォーマ102のCTEによる動きを制限するための機械的補強部材202である。したがって、
図2A-Bの実施例では、非接合型かつ垂直方向のスタンドオフは設けられておらず、接合領域を最大化することにより、均一に接合されたアセンブリが形成される。
【0025】
上記のように、本発明の実施形態において使用するためのプローブは、垂直プローブである。
図4は、本発明の実施形態において使用するための例示的な垂直プローブを示す。本実施例では、プローブ402は、第1の可撓性部材404及び第2の可撓性部材406を有する。第2の可撓性部材406の端部には、試験対象デバイスに一時的に接触するための先端部412が設けられている。第1の可撓性部材404は、スペーストランスフォーマへの機械的にコンプライアントな電気的接続を行う。本実施例のプローブはまた、プローブキャリアプレートに機械的に取り付けられるように構成されたプローブ本体部408を含む。任意選択で、例えば、接着剤などの保持を改善するために、取り付け機構410を含めることができる。ほとんどの場合、プローブは、同一のプローブキャリアプレートに取り付けられた複数のプローブの電気的独立性を維持するために、プローブキャリアプレートから電気的に絶縁されている。
【0026】
垂直プローブとは、試験対象デバイスをプロービングしている間に弾性変形したときの主要な動きが、プローブを垂直寸法に短縮させたものであるプローブを指す。垂直プローブは、垂直方向に、試験対象デバイス(DUT)と接触する。これは、主要なプローブの動きが梁部材のたわみであり、プローブの寸法が実質的に短縮されず、かつDUTとの接触が水平方向に行われるカンチレバープローブとは対照的であり得る。
【0027】
垂直プローブは、好ましくは2次元MEMS(微小電気機械システム)プローブである。MEMSプローブは、特にシリコンで、MEMS技術を使用して製造されたプローブとして定義される。この製造技術は、比較的複雑なプローブの形状(例えば、
図4の実施例のように)を製造するための可撓性を提供するので、好ましい。
【0028】
垂直プローブは、垂直方向の大きな偏向(例えば、150μm)、試験対象デバイスに接触するときのプローブ先端部の予測可能なスクラブ動作(DUT接触パッドのパンチスルーなし)、DUTサイズの小型化、試験対象デバイスの接触パッドのレイアウトにおける柔軟性の向上など、実施において大きな利点を提供することができる。