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特許7302025結腸・直腸がんを治療するための薬物の製造におけるFGF21の使用
<図1>
  • 特許-結腸・直腸がんを治療するための薬物の製造におけるFGF21の使用 図1
  • 特許-結腸・直腸がんを治療するための薬物の製造におけるFGF21の使用 図2
  • 特許-結腸・直腸がんを治療するための薬物の製造におけるFGF21の使用 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】結腸・直腸がんを治療するための薬物の製造におけるFGF21の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20230626BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230626BHJP
   C07K 14/50 20060101ALN20230626BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
A61K38/18
A61P35/00
C07K14/50 ZNA
C12N15/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021570517
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 CN2020136762
(87)【国際公開番号】W WO2021227493
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】202010396043.1
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朱升龍
(72)【発明者】
【氏名】陳永泉
【審査官】鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/139741(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106432509(CN,A)
【文献】特表2016-513073(JP,A)
【文献】Gastroenterology,2019年,Vol. 157,No. 5,p.1413-1428
【文献】Cancers,2019年,Vol. 11,No. 8,#1154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61P 35/00-35/04
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸・直腸がんを予防、緩和及び/又は治療するための医薬組成物の製造におけるFGF21タンパク質の使用であって、前記FGF21タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.1に示される、使用。
【請求項2】
前記FGF21タンパク質の有効用量が0.1~10mg/kgである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
結腸・直腸がんを治療するための医薬組成物であって、アミノ酸配列がSEQ ID NO.1に示されるFGF21タンパク質を有効成分として含む、医薬組成物
【請求項4】
さらに、薬学的に許容可能な担体又は補助材を含む、請求項3に記載の医薬組成物
【請求項5】
前記医薬組成物の投与経路は、経口投与、腹腔内注射、皮下注射、静脈内注射又は筋肉注射を含む、請求項4に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結腸・直腸がんを治療するための薬物の製造におけるFGF21の使用に関し、特に、結腸・直腸がんを治療するための薬物の製造におけるヒトFGF21の使用に関し、医薬技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
大腸がんは、臨床的に一般的な悪性腫瘍の1つであり、大腸がんは、結腸がん及び直腸がんを含み、中国で3番目に多い悪性腫瘍である。その発病率は、生活水準の向上に伴って増大する傾向があり、世界範囲内で、大腸がんは、毎年1023152症例の新規症例数で、一般的な悪性腫瘍発病率の第3位を占め、悪性腫瘍の総発症数の10.38%を占める。中国では、住民ライフスタイル及び食事構成の変化に伴い、結腸・直腸がんの発病率の上昇傾向が明らかになり、毎年に4%の速度で逓増し、年間増加速度は、世界範囲の速度より2%ポイント高い。
【0003】
現在、大腸がんの治療は、主に外科的根治手術を主とし、化学療法、放射線治療、漢方医薬治療及び生物学的治療をその補助的な治療手段とする。最初に診断された患者は、約三分の二が根治手術を受けるが、半分を超える患者には、再発又は遠隔転移が発生する。進行がん腫瘍又は広く転移したがん腫に対して、根治手術を行うことができないが、内科統合的治療法が、常に、主な治療手段となり、手術可能な患者では、大腸がん術後に依然として高い再発率がある。一般的な治療薬物は、一般的に広域スペクトル化学薬物であり、多くの副作用がある。したがって、腫瘍の成長及び再発を阻害すると同時に臓器を保護するという効果を有し、関連する顕著な副作用がなく、結腸・直腸がんを治療する安全な薬物の開発は、現在、開発の理想的な目的である。
【0004】
近年、大量の臨床調査結果は、結腸・直腸がんの発生及び発展が代謝異常に密接に関連付けられることを示す。大量の研究により、解糖、トリカルボン酸回路、脂肪酸代謝、グルタミド代謝などという代謝経路に、腫瘍細胞においていずれも再プログラム変化が発生し、腫瘍細胞が、様々な代謝経路の間の協調により、増殖に必要な脂肪酸、ヌクレオチド等を提供することができ、それによって、生体高分子の合成プロセスが腫瘍細胞の迅速な増殖に適することを発見した。特に指摘すべきものとして、代謝異常は、腫瘍が進行した結果のみではないが、腫瘍の開始及び進行過程に直接関与する可能性もある。現在、代謝の角度から抗腫瘍薬物を開発し、抗腫瘍薬物が既に多くの腫瘍において成功裏に応用され、例えば、最近の研究により、代謝酵素をコードするいくつかの遺伝子自体ががん遺伝子であることが発見され、例えば、フマル酸カルボキシラーゼの突然変異が腎臓がんの発生、進行に関連し、コハク酸カルボキシラーゼの突然変異がクロム親和性細胞腫の発生、進行に関し、イソクエン酸脱水素酵素の突然変異が代謝物小分子2HGからHNF4αの発現を生じさせて、胆管がんなどを誘導する。以上の分析に基づいて腫瘍細胞の代謝を標的とすることが腫瘍細胞を死滅させる有効な方法の1つである可能性を示す。しかしながら、現在開発された薬物は、いずれもいくつかの小分子阻害剤であり、標的性が低く、副作用が高いが、生物学的タンパク質類薬物の吸収が速く、標的性が高い。したがって、結腸・直腸がんに対して新規な標的生物学的タンパク質類製剤を開発することは、現在の腫瘍研究のホットスポットである。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、数多くの研究により、糖類・脂質代謝ネットワークの複数の部分に関与する重要なメンバーであるヒト線維芽細胞成長因子21は、結腸・直腸がんの発生及び進行及び転移を顕著に阻害可能なことを発見した。これに基づいて、本発明は、結腸・直腸がんを予防、緩和及び/又は治療する薬物の製造におけるFGF21タンパク質の新たな用途を提供する。
【0006】
本発明の第1の目的は、結腸・直腸がんを予防、緩和及び/又は治療する薬物の製造におけるFGF21タンパク質の使用を提供することである。
【0007】
一実施形態において、前記FGF21タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.1~5又はSEQ ID NO.11~14のいずれかに示される。
【0008】
一実施形態において、前記FGF21タンパク質の有効用量は、0.1~10mg/kgである。
【0009】
本発明の第2の目的は、結腸・直腸がんを治療する薬物を提供することであり、前記薬物の活性成分は、FGF21タンパク質を含む。
【0010】
一実施形態において、前記FGF21タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.1~5又はSEQ ID NO.11~14のいずれかに示される。
【0011】
一実施形態において、前記薬物は、薬学的に許容可能な担体又は補助材をさらに含む。
【0012】
一実施形態において、前記薬物の投与経路は、経口投与、腹腔内注射、皮下注射、静脈内注射又は筋肉注射を含む。
【0013】
本発明の第3の目的は、結腸・直腸がんを治療する薬物のスクリーニングにおける薬物標的としての、FGF21遺伝子の使用を提供する。
【0014】
一実施形態において、前記FGF21遺伝子のヌクレオチド配列が、SEQ ID NO.6~10のいずれかに示される。
【0015】
一実施形態において、前記使用は、FGF21タンパク質の小分子活性化剤をスクリーニングすることである。
【0016】
本発明の第4の目的は、腫瘍糖代謝及び/又はグルタミン代謝阻害剤の製造におけるFGF21タンパク質の使用を提供することである。
【0017】
一実施形態において、前記使用は、HK2、PKM2、PFKP、PD、GPDのうちの1種又は複数種が腫瘍糖代謝の重要なタンパク質を阻害する阻害剤を製造することである。
【0018】
一実施形態において、前記使用は、グルタミド代謝関連タンパク質GLSの阻害剤の製造である。
【0019】
本発明は、さらに、前立腺がん、食道がん、結腸・直腸がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、膵臓がん、胆嚢がん、肝臓がん、淡明細胞型腎がん、黒色腫、多発性骨髄腫のうちの1種又は複数種の疾患を予防、緩和及び/又は治療する薬物の製造における前記FGF21タンパク質の使用を権利範囲として請求している。
【0020】
従来の技術に比べて、本発明は、以下の有利な効果を有する。
【0021】
(1)本発明は、FGF21遺伝子の新たな機能を発見し、それは、腫瘍代謝を顕著に変化させることができ、特に、腫瘍糖代謝及びグルタミド代謝過程の重要なタンパク質HK2、PKM2及びGLSを顕著に阻害し、結腸直腸腫瘍細胞系の増殖、侵襲、転移を抑制し、マウスモデルにおいて腫瘍病巣の大きさを顕著に低下させることができ、したがって、様々な剤形薬物の有効成分とすることができ、結腸・直腸がんの治療に対して極めて重大な意義を有する。
【0022】
(2)本発明は、FGF21タンパク質を注射することにより、結腸・直腸がんの発生及び進行を緩和し、結腸がんの生成及び転移を阻害することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、ヒト結腸・直腸がん移植腫瘍の成長速度へのFGF21の影響であり、ここで、Aは、腫瘍体積の変化であり、Bは、腫瘍質量の変化である。
図2図2は、FGF21 AOM/DSSによって誘導されたマウス結腸・直腸がんの影響であり、ここで、Aは、大腸腫瘍の数であり、Bは、大腸の形態である。
図3図3は、腫瘍代謝の重要なタンパク質へのFGF21の影響であり、ここで、Aは、腫瘍糖代謝経路の重要なタンパク質の変化であり、Bは、腫瘍グルタミド代謝の重要なタンパク質の変化である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実験動物及び飼育:ヌードマウス及びC57BL/6マウスは、上海SLAC会社から購入した。江南大学無錫医学院動物センタに飼育し、12時間ごとに照明の点灯・消灯を繰り返し、温度は20±2℃であった。
【0025】
細胞培養:結腸・直腸がん細胞株SW620は、中国科学院生物化学及び細胞生物学研究所により提供された。
【0026】
RPMI1640、DMEM、0.05%Trypsinは、博士徳社から購入し、ウシ胎児血清は、四季青社から購入した。アゾキシメタンは、sigma会社(ロット番号098k1488)、デキストラン硫酸ナトリウムMP Biomedicals(ロット番号0216011050)から購入し、他の薬品は、国産分析純試薬であった。結腸・直腸がん細胞株を壁に付着させて10%ウシ胎児血清を含有するRPMI 1640培養液に成長させ、37℃で、5%CO加湿インキュベーターで培養し、隔日継代した。
【0027】
実施例1:薬物の製造におけるFGF21の使用
FGF21タンパク質は、微生物細胞を培養することにより製造され、製造方法は、登録番号CN106432509 Bの特許出願に開示されている。
【0028】
微生物細胞を製造して得られたFGF21タンパク質を薬学的に許容可能な担体又は補助材と共に薬物の製造に用いて、前記薬学的に許容可能な担体又は補助材は、賦形剤、アジュバント及び/又は希釈剤等であってもよい。
【0029】
実施例2:ヒト結腸・直腸がん移植腫瘍の成長速度へのFGF21の影響
実施例1の方法に応じてアミノ酸配列が例えば、SEQ ID NO.1に示されるFGF21タンパク質を製造した。
【0030】
ヒト結腸がん細胞SW620細胞を1×10個の細胞/匹で6週齢の雄性ヌードマウスの皮下に接種し、腫瘍が200mmに成長すると、4群にランダムに分け、(1)生理食塩水群:等体積の生理食塩水を注射し、(2)低用量群:1mg/kgのFGF21を注射し、(3)中用量群:5mg/kgのFGF21を注射し、(4)高用量群:FGF21を10mg/kg注射した。毎日に1回注射し、15日間連続的に注射した。毎日に腫瘍体積を監視し、三週間後にマウスを屠殺し、腫瘍重量を秤量した。結果として、3種類の異なる用量のFGF21は、いずれも移植腫瘍の体積及び最終腫瘍重量を阻害することができ、かつ用量依存性を示す。高用量のFGF21(10mg/kg)を注射した後、腫瘍の成長を完全に阻害することができ、腫瘍を500mmに維持し、最終体積は、対照群の30%であり、同様に腫瘍質量も約70%低下し、1mg/kg及び5mg/kg注射すると、それぞれ、腫瘍質量を30%及び50%低下させた(図1に示すとおりである)。
【0031】
実施例3:AOM/DSSによって誘導されたマウス結腸・直腸がんへのFGF21の影響
実施例1の方法に応じてアミノ酸配列が例えば、SEQ ID NO.1に示されるFGF21タンパク質を製造した。
【0032】
C57マウスに第1週にアゾキシメタン10mg/kgを注射した同時に、2.5%のデキストラン硫酸ナトリウムの自由な食用周期を開始し、各周期は、3週間、即ち21日間であり、第1週に、デキストラン硫酸ナトリウム含有の水を飲用させ、後の2週間に通常の水を飲用させ、3週間を1周期として、合計で3つの周期の処理を行った。第6週から、生理食塩水群及びFGF21注射群に分け、FGF21注射群に注射量10mg/kgで注射し、生理食塩水群に同じ量の生理食塩水を注射し、毎日に1回注射し、4週間連続的に注射した。
【0033】
結果は、図2Aに示すとおりであり、FGF21を注射した後に平均腫瘍病巣の数を4から1に減少させることができ、図2Bは、FGF21治療群と対照群の大腸の代表的な写真を示し、FGF21の治療効果を直感的に示すことができ、腫瘍の数を減少させ、腸がんの長さの短縮問題を改善し、結腸の長さを対照群よりも10-20mm増加させ、平均で18mm増加させた。
【0034】
実施例4:腫瘍代謝の重要なタンパク質へのFGF21の影響
実施例1の方法に応じてアミノ酸配列が例えば、SEQ ID NO.1に示されるFGF21タンパク質を製造した。
【0035】
Western Blot(タンパク質イムノブロット)により実施例3の腫瘍組織における腫瘍代謝関連タンパク質レベルを検出した。
【0036】
a)溶液の調製:
(1)10%(w/v)のラウリル硫酸ナトリウムSDS溶液:0.1gのSDS、及び1ミリリットルのHO脱イオン水で調製し、室温で保存した。
【0037】
(2)分離ゲル緩衝液:1.5mmol/LのTris-HCL(pH8.8):18.15gのTrisを80ミリリットルの水で溶解し、HClでpHを8.8に調節し、水を添加して100ミリリットルの最終体積まで希釈した。
【0038】
(3)濃縮ゲル緩衝液:0.5mmol/LTris-HCL(pH6.8):6.05gのTrisを80ミリリットルの水に溶解し、HClでpHを6.8に調節し、水を添加して100ミリリットルの最終体積まで希釈した。
【0039】
(4)SDS-PAGEローディング緩衝液:pH6.8の0.5mol/LのTris緩衝液8ミリリットル、グリセリン6.4ミリリットル、10%SDS 12.8ミリリットル、メルカプトエタノール3.2ミリリットル、0.05%ブロモフェノールブルー1.6ミリリットル、HO32ミリリットルを均一に混合して使用に備えた。
【0040】
(5)Tris-グリシン電気泳動緩衝液:303gのTris、188gのグリシン、10gのSDSを、蒸留水で1000ミリリットルに溶解し、使用前に10倍希釈した。
【0041】
(6)転写緩衝液:14.4gのグリシン、6.04gのTrisを量り、200ミリリットルのメタノールを加え、水を総量1Lまで添加した。
【0042】
(7)Tris緩衝塩溶液(TBS):20mmol/LのTris/HCl(pH7.5)、500mmol/L のNaCl。
【0043】
b)具体的なステップについて、実施例2における一部の移植腫瘍細胞をPBSで3回洗浄し、溶解液を添加し、5分間直接的に沸騰させ、氷上で冷却した後、12000rpmで2分間、遠心分離し、上澄液を-20℃で保存して使用に備えた。
【0044】
(一)タンパク質の濃度測定
BCA法によるタンパク質の濃度の測定:0.5mg/mLの標準タンパク質のラダーをウェルプレートに加え、PBSで20μLまで補充し、適切な体積(3μL)のタンパク質サンプルをウェルプレートに加え、PBSで20μLまで補充し、各ウェルに200μLのBCA作動液を添加し(使用前に調製して使用に備える)、37℃で30分間、インキュベートし、波長562nmでの吸光度を測定し、標準曲線及びサンプル体積によりタンパク質の濃度を算出した。
【0045】
(二)SDS-PAGEゲル電気泳動
(1)洗浄されたガラス板を整列させた後にクランプに入れて係止し、次にラックに垂直に係止されてゲルを注入した。
【0046】
(2)10%の分離ゲルを配合し、TEMEDを加えた後に直ちに均一に振れば、ゲルを注入することができ、エタノールで液封し、ゲルが十分に凝固すると、ゲル上層のエタノールを除去し、吸水紙で吸い取って乾燥させた。
【0047】
(3)5%の濃縮ゲルを配合し、TEMEDを添加した後に直ちに均一に振れば、ゲルを注入した。残りの空間を濃縮ゲルで満たした後に、櫛を濃縮ゲルに挿入した。濃縮ゲルが凝固した後、それを垂直に上向きに軽く引き抜いた。
【0048】
(4)それを電気泳動槽に入れ、十分な電気泳動液を加えた後にサンプル注入の準備を開始する。タンパク質サンプルに対してタンパク質含有量を測定した後、5×SDSローディング緩衝液を、最終濃度が1×になるまで加え、沸騰水で3分間、煮て均一に混合した後に、総タンパク質量が35μgである。
【0049】
(5)定電圧80Vで電気泳動を行い、サンプルが下層ゲルに入った後に、ブロモフェノールブルーがゲルの底部に達するまで定電圧120Vで電気泳動し、メンブレンに転写した。
【0050】
(三)メンブレン転写:
(1)ゲル切断:ガラス板を除去し、小さいガラス板を除去した後、濃縮ゲルを掻き取り、実験の需要に基づいてタンパク質の分子量に応じて、Markerを対照としてゲルを切断した。
【0051】
(2)メンブレンの準備:PVDFメンブレンと濾紙を切断し、切断されたPVDFを80%メタノール溶液に入れて30秒間、活性化した。
【0052】
(3)メンブレンの装入:メンブレン転写用のクリップを開いて、黒面(負極)を水平に保持した。上面には1枚のスポンジパッドを敷いた。メンブレン転写溶液を加えて浸漬し、パッドに浸漬された濾紙を敷き、その後にゲル-ニトロセルロース膜-濾紙-スポンジパッドの順序に応じて重ねた。最後に、白色板(正極)をカバーしてメンブレン転写槽に入れた。
【0053】
(4)メンブレン転写:クリップを転写槽内に入れ、クリップの黒面を槽の黒面に向き合わせ、クリップの白面を槽の赤面に向き合わせた。4℃でメンブレンを転写し、定電流400mAとした。
【0054】
(5)転写した後にメンブレンを取り外し、1隅をマークづけた。
【0055】
(四)免疫反応
(1)密閉:メンブレンをTBSTで3回洗浄(各回5分間)を行った。洗浄後にニトロセルロース膜を5%の脱脂粉乳に入れ、室温でシェーカーで1時間、インキュベートした。
【0056】
(2)1次抗体の添加:密閉されたニトロセルロース膜を、TBSTを含有する洗浄シリンダに入れてシェーカーで3回洗浄(各回5分間)を行った。1次抗体を添加したシャーレに入れて4℃で一晩インキュベートした。
【0057】
(3)2次抗体の添加:1次抗体を回収し、ニトロセルロース膜を、TBST洗浄シリンダで、シェーカーで室温で3回洗浄(各回5分間)を行い、その後に、洗浄されたニトロセルロース膜を2次抗体が添加されたシャーレに入れ、暗所で室温で45分間、インキュベートした。インキュベートした後に、ニトロセルロース膜をTBST洗浄シリンダで3回洗浄(各回5分間)を行った。
【0058】
(五)化学発光
(1)A及びBの2種類の試薬を、小遠心分離管に、発光キットのプロトコールに応じて操作してそれを混合し、ニトロセルロース膜に加え、化学発光イメージャーで発色させた。
【0059】
腫瘍細胞は、主に代謝の変化により、その異常増殖及び転移に必要なエネルギーを維持するが、代謝速度の変化は、主に、代謝過程の重要な遺伝子発現レベルを調節することにより実現され、ここで、解糖代謝及びグルタミド代謝の変化は、特に重要である。図3から分かるように、FGF21注射後に、腫瘍糖代謝の重要なタンパク質HK2(ヘキソキナーゼ2)、PKM2(ピルビン酸キナーゼ)、PFKP(ホスホフルクトキナーゼ)、PD(ピルビン酸デヒドロゲナーゼ酵素)、GPD(グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)(図3A)、グルタミド代謝関連タンパク質GLS(グルタミナーゼ)(図3B)を顕著に阻害することができ、これらのタンパク質は、腫瘍の異常増殖において顕著に高発現し、様々な薬物がこれらのタンパク質を標的して阻害した後に、結腸がんを顕著に改善することができ、これらの重要なタンパク質の発現に対するFGF21の阻害は、FGF21の結腸・直腸がんに対する治療効果をさらに示すとともに、結腸・直腸がん細胞に対するFGF21の抗腫瘍効果が主に解糖とグルタミド代謝による阻害作用であることを示す。
【0060】
発明者らは、さらに、SEQ ID NO.2~5に示されるFGF21タンパク質の融合タンパク質の、結腸・直腸がんの治療における効果を研究し、その結果により、SEQ ID NO.2~5及び/又はSEQ ID NO.11~14のいずれかに示されるFGF21融合タンパク質が、SEQ ID NO.1に示されるFGF21タンパク質に相当する効果を有することを示す。
【0061】
は以上のように本発明、好ましい実施例で開示されているが、それは、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び改変を行うことができ、したがって、本発明の権利範囲は、特許請求の範囲によって規定されるべきである。
図1
図2
図3
【配列表】
0007302025000001.app