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特許7302032流動特性および消泡特性を有する栄養成分
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】流動特性および消泡特性を有する栄養成分
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/16 20160101AFI20230626BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230626BHJP
   A23C 9/16 20060101ALN20230626BHJP
【FI】
A23L33/16
A23L5/00 D
A23C9/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021572505
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 US2020034792
(87)【国際公開番号】W WO2020247225
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】62/858,566
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エレン,ネクラ
(72)【発明者】
【氏名】ラプランテ,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ナリニ
(72)【発明者】
【氏名】ドウィル,ノーマネルラ
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-121781(JP,A)
【文献】特開平09-131163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
A23C 9/00-9/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集カルシウム源を含む栄養成分であって、前記凝集カルシウム源が、レシチンバインダーで一緒に付着されたカルシウム源の粒子を含み、
前記カルシウム源が、リン酸三カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、およびそれらの組み合わせから選択され、並びに
前記凝集カルシウム源が、4.95μm~30μmの平均粒子径を有する、栄養成分。
【請求項2】
前記レシチンバインダーが、4~12の親水性-親油性バランス(HLB)を有するレシチンを含む、請求項1記載の栄養成分。
【請求項3】
前記カルシウム源が、リン酸三カルシウムを含みかつ前記レシチンバインダーが、4~12のHLBを有するレシチンを含む、請求項1または2に記載の栄養成分。
【請求項4】
前記凝集カルシウム源が、55重量%~99.5重量%の前記カルシウム源の粒子と0.5重量%~40重量%のレシチンバインダーを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養成分。
【請求項5】
前記凝集カルシウム源が、10μm~50μmのx90粒子径を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養成分。
【請求項6】
前記凝集カルシウム源が、1.7~4の流動係数を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養成分。
【請求項7】
前記凝集カルシウム源が、0.35g/cm~0.7g/cmのゆるみかさ密度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養成分。
【請求項8】
前記凝集カルシウム源が、1.4g/cm~3g/cmの骨格密度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の栄養成分。
【請求項9】
タンパク質、脂肪、および炭水化物の1つ以上を含むベース粉末と、
レシチンバインダーで一緒に付着されたカルシウム源の粒子を含む凝集カルシウム源、
を含む栄養粉末であって、
前記カルシウム源が、リン酸三カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、およびそれらの組み合わせから選択され、並びに
前記凝集カルシウム源が、4.95μm~30μmの平均粒子径を有する、栄養粉末
【請求項10】
前記レシチンバインダーが、4~12の親水性-親油性バランス(HLB)を有するレシチンを含む、請求項に記載の栄養粉末。
【請求項11】
前記カルシウム源が、リン酸三カルシウムを含みかつ前記レシチンバインダーが、4~12のHLBを有するレシチンを含む、請求項9または10に記載の栄養粉末。
【請求項12】
前記凝集カルシウム源が、55重量%~99.5重量%の前記カルシウム源の粒子と0.5重量%~40重量%のレシチンバインダーを含む、請求項11のいずれか一項に記載の栄養粉末。
【請求項13】
前記栄養粉末が、前記栄養粉末の総重量に基づいて、0.1重量%~3重量%の前記凝集カルシウム源を含む、請求項12のいずれか一項に記載の栄養粉末。
【請求項14】
水での再構成の際に、前記栄養粉末が、前記凝集カルシウム源を含まず他の点では同一の栄養粉末と比較して10%~88%少ない泡を生じる、請求項13のいずれか一項に記載の栄養粉末。
【請求項15】
前記栄養粉末が、前記凝集カルシウム源を含まず他の点では同一の栄養粉末と比較して15%~75%の流動係数の上昇を呈する、請求項14のいずれか一項に記載の栄養粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年6月7日に出願の米国仮特許出願第62/858,566号の優先権および利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、栄養粉末中での使用のための栄養成分に関する。より具体的には、本開示は、流動剤および消泡剤として機能する凝集カルシウム源、ならびに凝集カルシウム源を含む栄養粉末に関する。
【背景技術】
【0003】
乳児用調製粉乳および粉末飲料製品などの栄養粉末は、消費者に一次栄養、補足栄養、または唯一の栄養を提供するために広く使用されている。これらの栄養粉末は、典型的には、水などの液体と組み合わされて、栄養粉末を経口摂取に好適なものにする。しかし、多くの栄養粉末は、多くの場合、不十分な流動挙動を呈し、それは粉末の塊として現れ、栄養粉末をすくうまたは注ぐことを困難にし得る。さらに、多くの栄養粉末は、再構成中に過剰な泡を生じ、これは一般的に、消費者に好まれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、栄養粉末中での使用のための栄養成分に関する。栄養成分は、栄養粉末の再構成中の不十分な流動性および過剰な泡の発生の問題に対する1つの解決策を提供する。栄養成分および栄養粉末を作製する方法もまた、本明細書に開示される。
【0005】
本開示によれば、凝集カルシウム源を含む栄養成分が提供される。凝集カルシウム源は、レシチンバインダーで一緒に付着されたカルシウム源の粒子を含む。
【0006】
本開示によれば、栄養粉末が提供される。栄養粉末は、タンパク質、脂肪、および炭水化物の1つ以上を含むベース粉末と、レシチンバインダーで一緒に付着されたカルシウム源の粒子を含む凝集カルシウム源とを含む。本栄養粉末は、優れた流動性と再構成中の最小限の泡の発生を呈する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に開示されるのは、栄養成分、および栄養成分を含む栄養粉末である。本開示は、栄養成分および栄養粉末の特定の実施形態について詳細に記載しているが、本開示は、例示的であると見なされるべきであり、開示された実施形態に限定されることを意図するものではない。また、本明細書に開示される実施形態の特定の要素または特徴は、特定の実施形態に限定されず、代わりに、本開示のすべての実施形態に適用される。
【0008】
本明細書に記載の用語は、実施形態を記載するのみのものであり、開示全体を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示の単数形の特性または制限へのすべての言及は、特に明記されない限り、または言及される文脈によって反対に明示される場合を除き、対応する複数形の特性または限定を含み、逆もまた同様である。特に明記されない限り、「a」、「an」、「the」、および「少なくとも1つ」は、同義的に使用される。さらに、説明および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、それらの複数形を含む。
【0009】
「含む(includes)」または「含んでいる(including)」という用語が説明または特許請求の範囲で使用される限り、「含む(comprising)」という用語は、請求項の移行単語として使用される場合に、解釈される用語と同様の方法で包括的であることが意図される。さらに、「または(or)」という用語が使用される限り(例えば、AまたはB)、それは「AまたはBまたはその両方」を意味することを意図している。出願人が「AまたはBのみであり、両方ではない(only A or B but not both)」と示す場合は、「AまたはBのみであり、両方ではない(only A or B but not both)」という用語が使用される。したがって、本明細書における「または(or)」という用語の使用は包括的であり、排他的使用ではない。
【0010】
本開示の栄養成分および栄養粉末は、本明細書に記載の本開示の必須要素、ならびに本明細書に記載の、または栄養用途で有用である任意の追加要素もしくは任意の要素を含む、これらからなる、または本質的にこれらからなってよい。
【0011】
本明細書で使用されるすべてのパーセンテージ、部、および比率は、特に明記されない限り、全組成物の重量による。列挙される成分に関連するすべての重量は、活性レベルに基づくため、特に明記されない限り、市販の材料中に含まれ得る溶媒、副産物、または他の成分を含まない。
【0012】
本明細書に開示されるすべての範囲およびパラメータ、例えば、パーセンテージ、部、および比率などは、想定され、その中に包含される任意のすべての下位範囲、およびエンドポイント間の各数を包含するものと理解される。例えば、「1~10」の指定された範囲には、最小値1以上で始まり、最大値10以下(例えば、1~6.1、または2.3~9.4)、およびこの範囲内に含まれる各整数(1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10)で終わる任意のすべての下位範囲を含むものとみなすべきである。
【0013】
本明細書で使用される「約」という用語は、おおよそ、その領域で、おおまかに、またはその周辺を意味する。「約」という用語が数値範囲と組み合わせて使用される場合、それは、示された数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、記載された値の上下の数値を10%修飾するために使用される。
【0014】
本明細書で使用される「成人用栄養粉末」という用語は、一般に成人の健康を維持するかまたは改善するために好適である栄養粉末を指す。
【0015】
本明細書で使用される「乳児」という用語は、特に明記しない限り、生後約36ヶ月以下のヒトを指す。本明細書で使用される「幼児」という用語は、特に明記しない限り、生後約12ヶ月~生後約36ヶ月である乳児のサブグループを指す。本明細書で使用される「小児」という用語は、特に明記しない限り、約3歳~約18歳のヒトを指す。本明細書で使用される「成人」という用語は、特に明記しない限り、約18歳以上のヒトを指す。
【0016】
本明細書で使用される「乳児用栄養粉末」という用語は、乳児、幼児、またはその両方に単独の栄養または補足の栄養を提供しかつ一般にそれらの健康を維持するかまたは改善するために、主要栄養素、微量栄養素、およびカロリーの適切なバランスを有する、栄養粉末を指す。乳児用栄養粉末は、好ましくは、対象となる消費者またはユーザー集団のための、関連する乳児用調製粉乳ガイドラインに従った栄養素を含み、その例は、21C.F.R.§107.100(2018年4月1日版)に記載される乳児用調製粉乳の栄養素仕様である。
【0017】
本明細書で使用される「栄養粉末」という用語は、特に明記しない限り、一般に流動性またはすくい取り可能な粒子の形態にある固体または半固体である、栄養製品を指す。栄養粉末は、通常、水または別の液体を添加することにより再構成されて、個体への投与(例えば、個体に提供する、または個体による消費)の前に液体栄養組成物を形成する。
【0018】
本明細書で使用される「小児用栄養粉末」という用語は、幼児、小児、またはその両方の健康を一般的に維持するかまたは改善するのに好適である栄養粉末を指す。
【0019】
本明細書で使用される方法またはプロセスステップの組み合わせはいずれも、別段の指定がない限り、または参照される組み合わせが行われる文脈によって反対に明確に意味されない限り、任意の順序で実行できる。
【0020】
本開示の一態様では、栄養成分が提供される。本開示による栄養成分は、凝集カルシウム源である。凝集カルシウム源は、レシチンバインダーで一緒に付着されたカルシウム源の粒子を含む。本開示の凝集カルシウム源は、流動剤および消泡剤の両方として機能し、したがって、単一の成分において二重の機能を提供する。本明細書で使用される「凝集」という用語は、粉末の粒子が一緒に付着して、粒子間の接触点が制限されている凝集体を形成するように加工処理された粉末を指し、その結果、凝集体の表面積の大部分(例えば、50%を超える)を湿潤させることができる。
【0021】
様々なカルシウム源を使用して、本開示の凝集カルシウム源を形成できる。実施形態では、カルシウム源は、リン酸三カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、およびそれらの組み合わせから選択される。本開示の凝集カルシウム源を形成するために使用される好ましいカルシウム源は、リン酸三カルシウムである。
【0022】
カルシウム源に加えて、本開示の凝集カルシウム源は、レシチンバインダーを含む。レシチンバインダーは、凝集カルシウム源を形成するときに、カルシウム源の粒子を一緒に付着させるように機能する。さらに、レシチンバインダーは、凝集カルシウム源に消泡機能をもたらす。
【0023】
レシチンバインダーは、一般にレシチンを含む。様々なレシチンをレシチンバインダー中に使用して、本開示の凝集カルシウム源を形成し得る。実施形態では、レシチンバインダーは、約4~約12の親水性-親油性バランス(HLB)を有するレシチンを含む。当業者が理解するとおり、HLB値は、両親媒性化合物が親水性または親油性(疎水性)である傾向を表す。HLBスケールの範囲は、1~20である。高いHLB値(例えば、10以上)を有する化合物は一般に、より親水性であり、一方で低いHLB値(例えば、10未満)を有する化合物は一般に、より親油性である。
【0024】
レシチンバインダー中での使用のために好適であるレシチンとしては、これらに限定されないが、SOLEC(商標)152(HLB≒4)、SOLEC(商標)162-US(HLB≒4)、SOLEC(商標)HR-2B(HLB≒8)、SOLEC(商標)E(HLB≒12)、およびSOLEC(商標)CA(HLB≒6)(Solae,LLC(St.Louis,MO))として市販されている大豆レシチンが挙げられる。レシチンバインダーは、これらに限定されないが、卵、ヒマワリ種子、カノーラ、綿実、または動物性脂肪など、大豆以外の供給源に由来するレシチンを含み得ることも企図される。好ましくは、レシチンバインダーは、大豆レシチンを含む。
【0025】
実施形態では、レシチンバインダーは、水およびレシチンの混合物を含む。実施形態では、レシチンバインダーは、レシチンバインダーの総重量に基づいて、0重量%~90重量%の水および10重量%~100重量%のレシチンを含む。実施形態では、レシチンバインダーは、レシチンバインダーの総重量に基づいて、80重量%~90重量%の水および10重量%~20重量%のレシチンを含む。実施形態では、レシチンバインダーは、レシチンバインダーの総重量に基づいて、40重量%~60重量%の水および40重量%~60重量%のレシチンを含む。実施形態では、レシチンバインダーは、本質的にレシチンからなる(すなわち、レシチン成分は、ある量の、典型的には約1重量%未満の固有の水を含み得るが、水はレシチン成分に添加されない)。
【0026】
本開示の凝集カルシウム源は、上記のカルシウム源のいずれか1つ以上およびレシチンバインダーのいずれか1つ以上を含み得る。本開示の凝集カルシウム源の実施形態では、カルシウム源は、リン酸三カルシウムを含み、レシチンバインダーは、約4~約12のHLBを有するレシチンを含む。本開示の凝集カルシウム源の実施形態では、カルシウム源は、リン酸三カルシウムからなり、レシチンバインダーは、約4~約12のHLBを有するレシチンを含む。
【0027】
実施形態では、本開示の凝集カルシウム源は、凝集カルシウム源の総重量に基づいて、55重量%~99.5重量%のカルシウム源の粒子、および0.5重量%~45重量%のレシチンバインダーを含む。実施形態では、本開示の凝集カルシウム源は、凝集カルシウム源の総重量に基づいて、60重量%~99重量%のカルシウム源の粒子、および1重量%~40重量%のレシチンバインダーを含む。実施形態では、本開示の凝集カルシウム源は、凝集カルシウム源の総重量に基づいて、75重量%~99重量%のカルシウム源の粒子、および1重量%~25重量%のレシチンバインダーを含む。実施形態では、本開示の凝集カルシウム源は、凝集カルシウム源の総重量に基づいて、55重量%~75重量%のカルシウム源の粒子、および25重量%~45重量%のレシチンバインダーを含む。実施形態では、本開示の凝集カルシウム源は、凝集カルシウム源の総重量に基づいて、90重量%~99重量%のカルシウム源の粒子、および1重量%~10重量%のレシチンバインダーを含む。
【0028】
流動性は、一般に、特定の条件下で粉末が流動する容易性として記載される。本開示の凝集カルシウム源の粒子径は、凝集カルシウム源の流動性に影響を与えるパラメータである。実施形態では、凝集カルシウム源は、4.95μm~30μm、例えば、5μm~20μm、5.5μm~15μmなど、および5.75μm~10μmなどの平均粒子径を有する。実施形態では、凝集カルシウム源は、10μm~50μm、10μm~45μm、10μm~35μmなど、および12μm~25μmなどのx90粒子径を有する。x90粒子径は、サンプル中の粒子の90%が体積ベースでより小さい、粒子径を指す。レーザー回折技術を使用して、本開示の凝集カルシウム源の粒子径および粒子径分布を測定できる。粉末は、空気流に分散され、レーザービームを通過する。
【0029】
実施形態では、本開示の凝集カルシウム源は、1.7~4、例えば、1.75~3、1.8~2.75など、および1.9~2.5などの流動係数を有する。流動係数(または体積流動性)は、Brookfieldパウダーフローテスター(Brookfield Engineering Laboratories,Inc.,Middleboro,Massachusetts)に好適である試験方法のいずれか(Brookfield Powder Flow Tester manual、例えば、Manual No.M09-1200-C0213に記載されているものなど)を使用して決定できる。Brookfieldパウダーフローテスターは、無次元単位「ff」で粉末の流動係数を測定する。流動係数は、最大主圧密応力(x軸)と非拘束破壊強度(unconfined failure strength)(y軸)との比率として定義される。
【0030】
実施形態では、本開示の凝集カルシウム源は、0.35g/cm~0.7g/cm、例えば、0.35g/cm~0.65g/cm、0.4g/cm~0.6g/cmなど、および0.4g/cm~0.55g/cmなどのゆるみかさ密度を有する。ゆるみかさ密度は、これらに限定されないが、ASTM D6683-14、「Standard Test Method for Measuring Bulk Density Values of Powders and Other Bulk Solids as a Function of Compressive Stress」およびGEA Niro Analytical Method A 2 A、「Powder Bulk Density」などのいくつかの業界標準方法のいずれかによって測定され得る。実施形態では、本開示の凝集カルシウム源は、1.4g/cm~4g/cm、例えば、1.6g/cm~3g/cm、1.7g/cm~2.9g/cm、および1.8g/cm~2.8g/cmなどの骨格密度を有する。骨格密度は、ガスピクノメトリーなどの当技術分野において公知である技術を使用して測定できる。
【0031】
本開示の凝集カルシウム源は、凝集プロセスまたはインスタント化プロセスなどの周知のプロセスに従って生成できる。本開示の実施形態では、凝集カルシウム源は、凝集プロセスを用いて生成され得る。凝集プロセスは、流動床中でカルシウム源の粒子にレシチンバインダーを噴霧することを含む。当業者が理解するとおり、凝集プロセスにおいて、カルシウム源の粒子は、流動化空気流によって流動床内で空中浮遊となるようにされ、カルシウム源の空中浮遊粒子は、レシチンバインダーと共に噴霧される。カルシウム源の空中浮遊粒子の少なくとも一部の外面は、レシチンバインダーで部分的に覆われており、これはカルシウム源の粒子が互いに接触するときにそれらを一緒に付着させるように機能し、したがって凝集カルシウム源を形成する。カルシウム源の粒子およびレシチンバインダーは、前述のカルシウム源およびレシチンバインダーのいずれか1つ以上であり得る。
【0032】
本開示の凝集カルシウム源は、乾式混合などによって、ベース栄養粉末に組み込むことができる均質な粉末である。凝集カルシウム源が組み込まれるベース栄養粉末は、これらに限定されないが、乳児用栄養粉末、小児用栄養粉末、および成人用栄養粉末を含む、任意の栄養粉末として配合され得る。
【0033】
したがって、本開示の別の態様では、栄養粉末が提供される。栄養粉末は、タンパク質、脂肪、および炭水化物の1つ以上を含むベース粉末と、レシチンバインダーで一緒に付着されたカルシウム源の粒子を含む凝集カルシウム源とを含む。凝集カルシウム源は、前述の凝集カルシウム源のいずれか1つ以上であり得る。さらに、凝集カルシウム源を形成するために使用されるカルシウム源の粒子およびレシチンバインダーは、前述のカルシウム源およびレシチンバインダーのいずれか1つ以上であり得る。
【0034】
本開示の栄養粉末の実施形態では、ベース粉末は、タンパク質、脂肪、および炭水化物を含む。栄養粉末は、栄養粉末が意図される個体(すなわち、乳児、幼児、小児、または成人)のために、唯一の、一次的な、または補足的な栄養源を提供するために、十分な種類および量の栄養素と配合され得る。一般的に、栄養粉末は、最終ユーザーの栄養ニーズに合わせて調整されたカロリー密度を有するであろう。典型的な例では、栄養粉末は、約90kcal/100g~約550kcal/100gを含む、また約150kcal/100g~約550kcal/100gを含む、約65kcal/100g(の栄養粉末)~約800kcal/100gを提供し得る。他のカロリー密度は、本開示の範囲内である。
【0035】
上記のとおり、栄養粉末は、タンパク質、脂肪、および炭水化物の1つ以上を含むベース粉末を含む。本開示の栄養粉末の実施形態では、ベース粉末は、少なくとも1つのタンパク質源、少なくとも1つの炭水化物源、および少なくとも1つの脂肪源を含む。一般に、栄養製品中での使用に好適であるタンパク質、脂肪、または炭水化物の任意の供給源は、そのような主要栄養素が、本明細書に記載の栄養粉末の必須要素とも適合性があるという条件で、本開示の栄養粉末での使用にも好適である。
【0036】
タンパク質、脂肪、および炭水化物の総濃度または量は、栄養粉末が配合される特定の個人の栄養ニーズに応じて変動し得るが、そのような濃度または量は、ほとんどが、典型的には、本明細書に記載の任意の他の必須タンパク質、脂肪、または炭水化物成分を含む、以下の具体化された範囲の1つに該当する。
【0037】
栄養粉末が乳児用栄養粉末として配合される実施形態では、タンパク質成分は、典型的には、乳児用栄養粉末の約5重量%~約35重量%、例えば、約10%~約30%、約10%~約25%、約15%~約25%、約20%~約30%、約15%~約20%などの量、および乳児用栄養粉末の約10重量%~約16重量%で存在する。炭水化物成分は、典型的には、乳児用栄養粉末の約40重量%~約75重量%、例えば、約45%~約75%、約45%~約70%、約50%~約70%、約50%~約65%、約50%~約60%、約60%~約75%、約55%~約65%など、また、乳児用栄養粉末の約65重量%~約70重量%などの量で存在する。脂肪成分は、典型的には、乳児用栄養粉末の約10重量%~約40重量%、例えば、約15%~約40%、約20%~約35%、約20%~約30%、約25%~約35%など、および乳児用栄養粉末の約25重量%~約30重量%などの量で存在する。
【0038】
栄養粉末が小児用調製粉乳として配合される実施形態では、タンパク質成分は、典型的には、小児用栄養粉末の約5重量%~約30重量%、例えば、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%、約15%~約20%など、および小児用栄養粉末の約12重量%~約20重量%などの量で存在する。炭水化物成分は、典型的には、小児用栄養粉末の約40重量%~約75重量%など、例えば、約45%~約70%、約50%~約70%、約55%~約70%など、および小児用栄養粉末の約55重量%~約65重量%などの量で存在する。脂肪成分は、典型的には、小児用栄養粉末の約10重量%~約25重量%、例えば、約12%~約20%など、および小児用栄養粉末の約15重量%~約20重量%などの量で存在する。
【0039】
栄養粉末が、栄養粉末の総カロリーのパーセンテージに基づいて、乳児用栄養粉末または小児用粉末として配合される、これらの実施形態におけるタンパク質、脂肪、および炭水化物の追加の好適な範囲を、表1に示す。
【表1】
注記:表中の各数値の前には、「約」という用語がある。
【0040】
栄養粉末が成人用栄養粉末として配合される実施形態では、タンパク質成分は、典型的には、成人用栄養粉末の約5重量%~約35重量%、例えば、約10%~約30%、約10%~約20%、約15%~約20%など、および成人用栄養粉末の約20重量%~約30重量%などの量で存在する。炭水化物成分は、典型的には、成人用栄養粉末の約40重量%~約80重量%、例えば、約50%~約75%、約50%~約65%、約55%~約70%など、また、成人用栄養粉末の60重量%~75重量%などの量で存在する。脂肪成分は、典型的には、成人用栄養粉末の約0.5重量%~約20重量%、例えば、約1%~約15%、約1%~約10%、約1%~約5%、約5%~約20%、約10%~約20%など、および成人用栄養粉末の約15重量%~約20重量%などの量で存在する。
【0041】
栄養粉末が、栄養粉末の総カロリーのパーセンテージに基づいて、成人用栄養粉末として配合される、これらの実施形態におけるタンパク質、脂肪、および炭水化物の追加の好適な範囲を、表2に示す。
【表2】
注記:表中の各数値の前には、「約」という用語がある。
【0042】
実施形態では、本開示の栄養粉末は、タンパク質またはタンパク質源を含む。一般に、それが経口栄養組成物に好適であり、さもなければ栄養粉末中の任意の他の選択された成分または特徴と適合性がある限り、任意のタンパク質源を使用できる。本開示の栄養粉末中での使用に好適であるタンパク質(およびその供給源)の例としては、これらに限定されないが、無処置であり、加水分解された、または部分的に加水分解されたタンパク質が挙げられ、これは、ミルク(例えば、カゼイン、ホエイ)、動物(例えば、肉、魚)、シリアル(例えば、米、トウモロコシ、小麦)、野菜(例えば、大豆、エンドウ豆、ジャガイモ、豆)、およびそれらの組み合わせなどの既知のまたは他の好適な供給源に由来し得る。タンパク質はまた、栄養製品中での使用が知られているアミノ酸の混合物(多くの場合、遊離アミノ酸として記載される)、またはそのようなアミノ酸と本明細書に記載の無処置であるか、加水分解された、もしくは部分的に加水分解されたタンパク質との組み合わせを含み得る。アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であるかまたは合成アミノ酸であり得る。
【0043】
本開示の栄養粉末中での使用に好適であるタンパク質(またはタンパク質源)のより具体的な例としては、これらに限定されないが、全牛乳、部分的または完全脱脂ミルク、ミルクプロテイン濃縮物、ミルクプロテイン単離物、脱脂粉乳、コンデンススキムミルク、ホエイプロテイン濃縮物、ホエイプロテイン単離物、酸性カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウム、マメ科植物タンパク質、大豆たんぱく質濃縮物、大豆たんぱく質分離物、エンドウタンパク濃縮物、エンドウタンパク分離物、コラーゲンタンパク質、ジャガイモタンパク質、米タンパク質、小麦タンパク質、カノーラタンパク質、キヌア、昆虫タンパク質、ミミズタンパク質、真菌(例えば、きのこ)たんぱく質、加水分解酵母、ゼラチン、ウシ初乳、ヒト初乳、グリコマクロペプチド、マイコプロテイン、微生物によって発現されるタンパク質(例えば、細菌および藻類)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本開示の栄養粉末は、任意の個々のタンパク質源または上記の様々なタンパク質源の組み合わせを含み得る。
【0044】
加えて、本明細書に開示の栄養粉末中に使用されるタンパク質はまた、栄養製品中での使用が公知である遊離アミノ酸を含むか、またはそれらにより完全にもしくは部分的に置き換えられてよく、その非限定的な例としては、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリン、L-トリプトファン、L-グルタミン、L-チロシン、L-メチオニン、L-システイン、タウリン、L-アルギニン、L-カルニチン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
実施形態では、本開示の栄養粉末は、加水分解されたタンパク質を含むタンパク質成分を含む。加水分解されたタンパク質成分は、部分的に加水分解されても、広範囲に加水分解されてもよい。「部分的に加水分解された」という用語は、25%以下、例えば、20%未満など、15%未満など、10%未満などの加水分解度を有するタンパク質、および5%未満などの加水分解度を有するタンパク質を指す。「広範囲に加水分解された」という用語は、25%を超える加水分解度を有するタンパク質、例えば、28%を超える、30%を超える、40%を超えるなど、および50%を超える加水分解度を有するタンパク質などを指す。加水分解度は、加水分解化学反応によってペプチド結合が切断される程度である。これらの実施形態の加水分解されたタンパク質成分を定量化するために、タンパク質加水分解度は、選択された栄養粉末のタンパク質成分のアミノ窒素対全窒素比(AN/TN)を定量化することによって決定される。アミノ窒素成分は、アミノ窒素含有量を決定するためのUSP滴定法によって定量化され、全窒素成分は、TECATORケルダール法によって決定される。これらの分析方法は、周知である。
【0046】
実施形態では、本開示の栄養粉末は、炭水化物または炭水化物源を含む。本開示の栄養粉末中での使用に好適である炭水化物または炭水化物源は、単純、複雑、またはそれらの変形または組み合わせであり得る。一般に、炭水化物は、経口栄養組成物中での使用に好適であり、かつさもなければ栄養粉末の任意の他の選択された成分または特徴と適合性がある、任意の炭水化物または炭水化物源を含み得る。
【0047】
本開示の栄養粉末中での使用に好適である炭水化物(または炭水化物源)の例としては、これらに限定されないが、ポリデキストロース、マルトデキストリン;加水分解または加工デンプンまたはトウモロコシデンプン;グルコースポリマー;コーンシロップ;コーンシロップ固形物;スクロース;グルコース;フルクトース;ラクトース;高フルクトースコーンシロップ;蜂蜜;糖アルコール(例えば、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール);イソマルツロース;スクロマルト(sucromalt);プルラン;ジャガイモデンプン;および他のゆるやかに消化される炭水化物;食物繊維、例えば、これらに限定されないが、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、オート麦繊維、大豆繊維、アラビアガム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、グアーガム、ゲランガム、ローカストビーンガム、こんにゃく粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガカントガム、カラヤガム、アラビアガム、キトサン、アラビノガラクタン、グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸塩、ペクチン、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、穀物ベータグルカン(例えば、オーツ麦ベータグルカン、大麦ベータグルカン)、カラギーナンおよびオオバコ、難消化性マルトデキストリン(例えば、FIBERSOL(商標)、難消化性マルトデキストリン、可溶性食物繊維を含む);果物または野菜に由来する可溶性および不溶性繊維;他の難消化性デンプンなど;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書の本開示の栄養粉末は、任意の個々の炭水化物源または上記の様々な炭水化物源の組み合わせを含み得る。
【0048】
実施形態では、本開示の栄養粉末は、脂肪または脂肪源を含む。本開示の栄養粉末中での使用に好適である脂肪または脂肪源は、これらに限定されないが、植物、動物、およびそれらの組み合わせなど、様々な供給源に由来し得る。一般に、脂肪は、経口栄養組成物中での使用に好適であり、かつさもなければ栄養粉末中の任意の他の選択された成分または特徴と適合性がある、任意の脂肪または脂肪源を含み得る。本開示の栄養粉末中での使用に好適である脂肪(またはその脂肪源)の例としては、これらに限定されないが、ココヤシ油、分留ココヤシ油、大豆油、高オレイン酸大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、サフラワー油、高オレイン酸サフラワー油、中鎖トリグリセリド油(MCT油)、高ガンマリノレン(GLA)サフラワー油、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、パームオレイン、カノーラ油、高オレイン酸カノーラ油、海産油、魚油、藻油、ボラージオイル、綿実油、真菌油、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)、共役リノール酸(CLA)、α-リノレン酸、こめ油、小麦胚芽油(wheat bran oil)、エステル交換油(interesterified oil)、エステル交換油(transesterified oil)、構造脂質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
一般に、乳児用栄養粉末および小児用栄養粉末を配合するための栄養粉末中で使用される脂肪は、エネルギー源として、および乳児、幼児、または小児の健康な発達のための両方に必要とされる脂肪酸を提供する。これらの脂肪は、典型的にはトリグリセリドを含むが、脂肪はまた、ジグリセリド、モノグリセリド、および遊離脂肪酸も含み得る。栄養粉末中の脂肪によって提供される脂肪酸としては、これらに限定されないが、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、ARA、EPA、およびDHAが挙げられる。本開示の栄養粉末は、任意の個々の脂肪源または上記の様々な脂肪源の組み合わせを含んでよい。
【0050】
実施形態では、本開示の栄養粉末は、栄養粉末の物理的、化学的、快楽的、もしくは加工特性を改変し得る、または標的集団に使用される場合に追加の栄養成分として作用し得る、任意の成分をさらに含み得る。任意の成分は、ベース粉末中に含まれてよく(すなわち、ベース粉末を生成するための配合物中に成分として含まれる)、またはベース粉末から分離されてよい(例えば、ベース粉末が生成された後にベース粉末に別個の成分として添加される)。そのような任意の成分が、経口投与に安全かつ有効であり、栄養粉末中の必須成分および他の成分と適合性があるならば、そのような任意の成分の多くは、栄養製品中での使用が知られているか、そうでなければ使用のために好適であり、かつ本開示の栄養粉末中でも使用され得る。
【0051】
そのような任意の成分の例としては、これらに限定されないが、防腐剤、抗酸化剤、乳化剤、緩衝液、本明細書に記載の追加の栄養素、着色剤、フレーバー(天然の、人工の、または両方)、増粘剤、流動剤、固結防止剤、および安定剤が挙げられる。
【0052】
実施形態では、本開示の栄養粉末は、ミネラルをさらに含み(凝集カルシウム源に加えて)、その非限定的な例としては、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ナトリウム、カリウム、モリブデン、クロム、セレン、塩化物、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ミネラルは、ベース粉末中に含まれてよく(すなわち、ベース粉末を生成するための配合物中に成分として含まれる)、またはベース粉末から分離されてよい(例えば、ベース粉末が生成された後にベース粉末に別個の成分として添加される)。
【0053】
実施形態では、本開示の栄養粉末は、ビタミンまたは関連する栄養素をさらに含み、その非限定的な例としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12、ニコチン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、カロテノイド(例えば、ルテイン、ベータカロチン、リコピン、ゼアキサンチン)、コリン、イノシトール、プロバイオティクス、ヌクレオチド、ヌクレオシド、それらの塩および誘導体、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。任意のビタミンまたは関連栄養素は、ベース粉末中に含まれてよく(すなわち、ベース粉末を生成するための配合物中に成分として含まれる)、またはベース粉末から分離されてよい(例えば、ベース粉末が生成された後にベース粉末に別個の成分として添加される)。
【0054】
本開示の栄養粉末は、典型的には、流動性粒子状組成物、またはスプーンもしくは同様の他のデバイスで容易にすくい取って測定できる少なくとも粒子状組成物の形態であり、組成物は、意図された使用者により、好適な水性流体、典型的には水で容易に再構成されて、即時経口使用または経腸使用のための液体栄養配合物を形成できる。この文脈では、「即時」使用は、一般に、約48時間以内、最も典型的には約24時間以内、好ましくは再構成直後を意味する。1食分に好適である量を生成するために必要とされる栄養粉末の量は、変動し得る。
【0055】
本開示の栄養粉末は、単回使用容器または複数回使用容器に入れられ、密封され得、次いで、周囲条件下で最大約36ヶ月以上、より典型的には約12ヶ月~約24ヶ月保存され得る。多目的容器の場合、これらのパッケージは、開封され、ユーザーが繰り返し使用できるようにするために、カバーを付けられ、ただしカバーを付けられたパッケージは、周囲条件で保管され(例えば、極端な温度を避ける)、その内容物は、約1ヶ月以内に使用されるものとする。
【0056】
本開示の栄養粉末は、凝集カルシウム源およびベース粉末を含む成分を乾式混合することによって製造され得る。本開示のベース粉末は、栄養ベース粉末または同様の配合物を作製し配合するのに好適である任意の既知の技術、さもなければ有効な技術によって調製され得る。任意の所与の調製粉乳に対するそのような技術およびその変形は、栄養粉末製造技術における通常の技術の1つによって決定され、適用され得る。
【0057】
本開示のベース粉末は、様々な既知のまたはさもなければ有効な配合方法または製造方法のいずれかによって調製できる。これらの方法は、典型的には、炭水化物、タンパク質、脂肪、安定剤または他の配合助剤、ビタミン、ミネラル、またはそれらの組み合わせを含む水性スラリーが最初に形成されることを伴う。スラリーは、乳化され、低温殺菌され、均質化され、かつ冷却される。様々な他の溶液、混合物、または他の材料を、さらなる加工処理の前、最中、または後に、得られるエマルジョンに添加できる。このエマルジョンを次に、さらに希釈し、熱処理し、その後噴霧乾燥などによって乾燥させて、ベース粉末を生成できる。栄養ベース粉末を精製する他の適切な方法は、例えば、米国特許第6,365,218号(Borschel et al.)、米国特許第6,589,576号(Borschel et al.)、米国特許第6,306,908号(Carlson et al.)、米国特許出願第20030118703号(Nguyen et al.)に記載され、これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
ベース粉末が生成されると、凝集カルシウム源が、ベース粉末に乾式混合されて、本開示の栄養粉末を生成する。凝集カルシウム源をベース粉末に導入し、好適な従来の混合装置を使用してベース粉末へと完全に混合して、均質な栄養粉末を生成する。
【0059】
本開示の凝集カルシウム源を含む栄養粉末は、凝集カルシウム源を含まない他の同一の栄養粉末と比較して、改善された流動性およびより少ない泡の発生(水または他の液体で再構成された場合)を呈する。本開示の栄養粉末の実施形態では、栄養粉末は、凝集カルシウム源を含まず他の点では同一の栄養粉末と比較して、15%~75%の流動係数の上昇を呈する。本開示の栄養粉末の実施形態では、栄養粉末は、凝集カルシウム源を含まず他の点では同一の栄養粉末と比較して、25%~75%、例えば、35%~75%、40%~75%、50%~75%など、また、60%~75%などの流動係数の上昇を呈する。
【0060】
本開示の栄養粉末の実施形態では、栄養粉末を水で再構成することは、凝集カルシウム源を含まず他の点では同一の栄養粉末と比較して、10体積%~88体積%少ない泡を生じる。本開示の栄養粉末の実施形態では、栄養粉末を水で再構成することは、凝集カルシウム源を含まず他の点では同一の栄養粉末と比較して、20体積%~88体積%、例えば、30体積%~88体積%、35体積%~88体積%、50体積%~88体積%、60体積%~88体積%少ない、また、75体積%~88体積%少ない泡を生じる。
【0061】
泡の体積は、起泡試験方法を使用して測定できる。起泡試験方法では、栄養粉末のサンプルを、栄養粉末の推奨される再構成率に従って秤量する(例えば、1リットルあたり130グラムの栄養粉末)。180mLの水道水の量を測定し、再閉可能な蓋付きの8液量オンスボトルに移す。栄養粉末のサンプルを、8液量オンスボトル内の水面に添加し、蓋をボトルに配置する。蓋をしたボトルを次に、メカニカルシェーカーを使用して5秒間振とうする。ボトルをメカニカルシェーカーから取り出し、ボトルの内容物の3分の2をすぐに250mLシリンダーの側面に注ぐ。ボトルの内容物の残りを、すべての残存する泡を捕捉するために手動でかき混ぜ、250mLシリンダーの側面に注ぐ。250mLシリンダー内の泡の量(mL)を即時に測定し、記録する(初期泡測定)。30分経過後、泡の量(mL)を再度測定し、記録する。
【0062】
実施例
以下の実施例は、本開示の範囲内の特定の実施形態をさらに説明し、実証する。これらの例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0063】
実施例1-この実施例では、本開示の凝集カルシウム源の実施形態の14のサンプルを調製し、それらの物理的特性を、リン酸カルシウム三塩基対照(対照TCP)と比較した。凝集カルシウム源のサンプルを調製するために、対照TCPを、流体床凝集器中で、異なるレシチン濃度の異なるレシチン(Danisco USA,Inc.(New Century,Kansas)から市販されている)を含むレシチンバインダー噴霧溶液(SS)(表3を参照)で処理した。各サンプルの作製に使用した流動床凝集器プロセス変数(PV)を、表4に示す。適用されたレシチンの理論量(重量%)および凝集カルシウム源の各サンプルに組み込まれたレシチンの推定量(重量%)を、凝集カルシウム源の各サンプルを作製するために使用された噴霧溶液(SS)およびプロセス変数(PV)と共に表3に示す。表6~8は、凝集カルシウム源および未処理対照TCPの各サンプルに関連する様々な物理的特性を示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
NDDML=方法の制限により求められていない。
【表7】
【表8】
【0064】
表6~8から認識できるとおり、凝集カルシウム源のサンプルは、対照TCPと比較して、独特の物理的特性を有する。全体として、凝集カルシウム源は、対照TCPと比較して、より高いゆるみかさ密度(101%~268%の範囲でより高い)、より低い骨格密度(4.5%~43.9%の範囲でより低い)、より低い気孔率(7%~34.8%の範囲でより低い)、より大きい粒子径(66%~325.5%の範囲でより高い)、より高い多分散度(110%~202.6%の範囲での増加により示されるとおり)、および低下された真円度(最大で20%の低下)を有する。粒子径値は、レーザー回折技術を使用して決定され、形態値は、静止画像分析によって粒子のサイズおよび形状を測定するMalvern MorphologiG3粒子特性評価システムを使用して決定された。
【0065】
加えて、凝集カルシウム源のサンプルは、対照TCPと比較して、それほど白くなく、より緑色、およびより黄色を呈する(レシチン適用の程度によって異なる)(例えば、ΔL(サンプルの「L値」から対照TCPの「L値」を引いたもの)は、-0.62~-8.9の範囲であり、Δa(サンプル「a値」から対照TCP「a値」を引いたもの)は、-0.29~-2.45の範囲であり、Δb(サンプル「b値」から対照TCP「b値」を引いたもの)は、1.46~24.27の範囲である)。色の値は、ハンターカラーL、a、b法を使用して決定された。
【0066】
さらに、凝集カルシウム源のサンプルは、流動係数の上昇(すなわち、流動係数の約21.8%~約97%の上昇)によって示されるとおり、対照TCPよりも良好に流れる。流動係数値は、本明細書に記載のBrookfieldパウダーフローテストを使用して求められた。
【0067】
実施例2-この実施例では、本開示の凝集カルシウム源を含む栄養粉末の14のサンプルを調製し、それらの物理的特性を、ベース粉末(ベース粉末1およびベース粉末2)およびリン酸カルシウム三塩基と乾式混合されたベース粉末(ベース粉末1)を含む対照栄養粉末(対照粉末)と比較した。サンプル栄養粉末を調製するために、凝集カルシウム源(実施例1のサンプル1~14の1つ)をベース粉末(ベース粉末1またはベース粉末2)と乾式混合した。ベース粉末を、従来の製造技術を使用して調製した。ベース粉末は、任意の追加のカルシウム成分(タンパク質源などの、別の成分中に本質的に存在するカルシウム以外)またはレシチンを含まなかった。
【0068】
表9に見られるとおり、粉末1は、実施例1の凝集カルシウム源のサンプル1と乾式混合されたベース粉末1を含み、粉末2は、実施例1の凝集カルシウム源のサンプル2と乾式混合されたベース粉末1を含み、以下同様である。同様に、対照粉末は、リン酸カルシウム三塩基(すなわち、実施例1からの対照TCP)と乾式混合されたベース粉末1を含んだ。表10~14は、粉末1~14、ベース粉末1、ベース粉末2、および対照粉末に関連する様々な物理的特性を示す。
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
ND=未定
【0069】
表10~14から理解できるように、凝集カルシウム源を含む粉末1~14は、凝集カルシウム源を含まないことを除いて他の点では同一である、ベース粉末と比較して、固有の物理的特性を有する。全体として、粉末1~14は、流動係数の上昇によって示されるとおり、ベース粉末1およびベース粉末2よりも良好に流れる(すなわち、流動係数の約15%~約75%の上昇、表11を参照)。流動係数値は、本明細書に記載のBrookfieldパウダーフローテストを使用して求められた。
【0070】
さらに、粉末1~14は、一般に、ベース粉末1およびベース粉末2と比較して、より少ない泡を生成した(初期および30分後の両方で)(すなわち、約10%~約88%少ない泡、表14を参照)。泡の値は、本明細書に記載の起泡試験方法に従って求められた。
【0071】
他の物理化学的特性に関して、粉末1~14は、ベース粉末1およびベース粉末2と比較して、同様の値を有した。
【0072】
本明細書に別段の記載がない限り、すべての下位実施形態および任意の実施形態は、本明細書に記載のすべての実施形態に対するそれぞれの下位実施形態および任意の実施形態である。本開示は、その実施形態の説明によって例示されており、実施形態はかなり詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制約するかまたは何らかの方法で限定することは出願人の意図ではない。当業者であれば、追加の利点および修正が容易に生じるであろう。したがって、本開示は、そのより広い態様において、特定の詳細、代表的な組成物または配合物、および示され記載された例示的な例に限定されない。したがって、本明細書における出願人の一般的な開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱できる。