(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】画像投射装置および画像投射方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/26 20060101AFI20230626BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20230626BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20230626BHJP
F21V 23/04 20060101ALI20230626BHJP
F21V 9/40 20180101ALN20230626BHJP
【FI】
B60Q1/26 Z
F21V7/00 590
F21V14/04
F21V23/04 500
F21V9/40 400
(21)【出願番号】P 2022056412
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2021063850の分割
【原出願日】2016-03-31
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2015080724
(32)【優先日】2015-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015155165
(32)【優先日】2015-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國井 康彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】賀来 信行
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-157873(JP,A)
【文献】特開2008-129764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/26
F21V 7/00
F21V 14/04
F21V 23/04
F21V 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の画像投射装置であって、
車両に関する情報を取得可能な取得部と、
前記取得部が取得した前記情報に基づき、画像を路面に投射可能な画像投射部を備え、
前記画像投射部の投射領域における投射画像は、情報画像と前記情報画像の周囲の画像とを有し、
前記画像投射部は、前記車両の外の明るさに応じ
て前記情報画像
と前記情報画像の周囲の画像とを
異なる明るさで投射する、
画像投射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投射装置であって、
前記画像投射部は、前記車両の外の明るさが明るいときは前記
情報画像を通常より明るく投射する、
画像投射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像投射装置であって、
前記画像投射部は、前記車両の外の明るさが暗いときは前記
情報画像を通常より暗く投射する、
画像投射装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像投射装置であって、
前記画像投射部は、前記車両の外の明るさが明るいときは前記
情報画像の色を変えて投射する、
画像投射装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像投射装置であって、
前記画像投射部は、前記車両の外の明るさが明るいときは前記
情報画像を通常より明るく、前記
情報画像の周囲
の画像を通常より暗く投射する、
画像投射装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像投射装置であって、
前記画像投射部は、前記車両の外の明るさが暗いときは前記
情報画像を通常より暗く、前記
情報画像の周囲
の画像を通常より明るく投射する、
画像投射装置。
【請求項7】
車両用の画像投射装置であって、
車両に関する情報を取得可能な取得部と、
前記取得部が取得した前記情報に基づき、画像を路面に投射可能な画像投射部を備え、
前記車両の外の明るさを検知する検知部と、
前記検知部が検知された前記車両の外の明るさに基づき、前記画像投射部を制御する制御部と、を備え、
前記画像投射部は、前記車両の外の明るさに応じた画像を投射し、
前記制御部は、前記画像投射部からの画像の明るさと前記画像の周囲の明るさを制御する、
画像投射装置。
【請求項8】
車両用の画像投射装置であって、
車両に関する情報を取得可能な取得部と、
前記取得部が取得した前記情報に基づき、画像を路面に投射可能な画像投射部と、
前記車両の外の明るさを検知する検知部と、
前記検知部が検知された前記車両の外の明るさに基づき、前記画像投射部の光源を制御する制御部と、を備え、
前記画像投射部は、前記車両の外の明るさに応じた画像を投射し、
前記画像投射部の光源は、高輝度光源と低輝度光源とを有し、
前記制御部は、前記検知部からの検知信号
により昼
と判別される場合、前記画像投射部の高輝度光源を用いて投射する
ように制御する、
画像投射装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の画像投射装置であって、
前記高輝度光源は、レーザー光源を用い、
前記低輝度光源は
、LED光源を用いる、
画像投射装置。
【請求項10】
請求項
8に記載の画像投射装置であって、
前記高輝度光源と前記低輝度光源は、両方ともLED光源を用い、
前記高輝度光源は、多数のLEDを点灯させ、
前記低輝度光源は、少ない数のLEDを点灯させる、
画像投射装置。
【請求項11】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の画像投射装置であって、
前記
情報画像は矢印である、
画像投射装置。
【請求項12】
車両用の画像投射装置における画像投射方法において、
車両に関する情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップが取得した前記情報に基づき画像を路面に投射する画像投射ステップを有し、
前記画像を投射する投射領域における投射画像は、情報画像と前記情報画像の周囲の画像とを有し、
前記画像投射ステップは、前記車両の外の明るさに応じ
て前記情報画像
と前記情報画像の周囲の画像とを
異なる明るさで投射する、
画像投射方法。
【請求項13】
請求項
12に記載の画像投射方法であって、
前記画像投射ステップは、前記車両の外の明るさが明るいときは前記
情報画像を通常より明るく投射する、
画像投射方法。
【請求項14】
請求項
12に記載の画像投射方法であって、
前記画像投射ステップは、前記車両の外の明るさが暗いときは前記
情報画像を通常より暗く投射する、
画像投射方法。
【請求項15】
請求項
12に記載の画像投射方法であって、
前記画像投射ステップは、前記車両の外の明るさが明るいときは前記
情報画像の色を変えて投射する、
画像投射方法。
【請求項16】
請求項
12に記載の画像投射方法であって、
前記画像投射ステップは、前記車両の外の明るさが明るいときは前記
情報画像を通常より明るく、前記
情報画像の周囲
の画像を通常より暗く投射する、
画像投射方法。
【請求項17】
請求項
12に記載の画像投射方法であって、
前記画像投射ステップは、前記車両の外の明るさが暗いときは前記
情報画像を通常より暗く、前記
情報画像の周囲
の画像を通常より明るく投射する、
画像投射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像投射装置および画像投射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタに代表される映像投射装置は、所望の映像を拡大して投射するための装置として、既に広い分野で利用されており、更に近年においては、パーソナルコンピュータや携帯電話のための表示装置としても広く利用されてきている。
【0003】
かかる映像投射装置について、特に車両での使用に関する従来技術としては、以下のものが既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-43781号公報
【文献】特開2004-136838号公報
【文献】特開2010-26759号公報
【文献】特開2012-247369号公報
【文献】特開2014-153868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、上記特許文献1は、外部光源としての車両のヘッドライトの前に、光源を内蔵せずに携帯性に優れたLCDプロジェクタを配置することで、ヘッドライトを外部光源として用いる投射型表示装置を開示するものである。特許文献2は、その問題点を解決すべく、予めプロジェクタをヘッドライトの前でかつ車両の中に組み込んだ第1の状態と、プロジェクタ若しくはヘッドライトを移動させてヘッドライトからの光束を直接、車両の外部に照射する第2の状態を実現し、更には、道路上に画像を表示する実施形態をも示している。
【0006】
更に、特許文献3には、車両の運転支援装置として、車線逸脱判定時に自車両の乗員に対して効果的に注意を喚起するため、車両前方の路上に、車両前方のヘッドライト部分に取り付けられた照射手段(レーザー)により、喚起を促すための情報を表示するものが知られている。
【0007】
また、特許文献4によれば、車両の先頭部分に投影手段としてのプロジェクタを取り付け、ナビゲーションシステムで探索された経路情報に基づいて、分岐方向へ誘導する経路案内画像を、投射角度の設定を伴って、車両前方の路面に投影するものも既に知られている。加えて、特許文献5によれば、ターゲットマークとトラッキングラインからなる描画パターンを、自車両の走行状態に基づいて車両前方の路面に投影することにより、自車両の走行先の認識を可能として、これに基づいて適切な運転を可能にする車両の運転支援装置も、既に、知られている。
【0008】
車両は昼夜を問わず走行するものであって、昼間は車両の周りが明るく、また、夜間はヘッドライト(HL)の点灯により車両前方が明るくなるため、車両前方の路面に投影された画像の視認性が悪くなる恐れがある。車両の近傍を歩行している歩行者等に対しても安全性をより高く確保するために、路面に投影された画像は、良好な視認性が求められる。しかしながら、上述した従来技術は、車外の明るさや走行状態が変化したとき、投影された画像が分かり易く視認できるように、効果的に投影するものではなかった。
【0009】
そこで、本発明は上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、例えば、自車両(自動車等に代表される移動体)の明るさや走行状態等の車両の情報に基づいて、画像を路面上や壁面、自車両上など(以下、路面等)に投射することで、画像が分かり易く視認できるように表示することを可能とする映像投射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の態様は、例えば特許請求の範囲に記載されるように構成すればよい。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、画像を投射する画像投射装置であって、車両に関する情報を取得する取得部と、取得部が取得した情報に基づいて画像を投射する画像投射部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両に関する情報に基づいて、分かり易い画像を路面等に投射して表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る映像投射装置を搭載して路面等に映像を投射している車両の前方からの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る映像投射装置を搭載して路面等に映像を投射している車両の後方からの斜視図である。
【
図3】映像投射装置を構成する配光制御ECUの全体構成を示す図である。
【
図4】配光制御ECUとその周辺要素の更に詳細な構成例を示すブロック図である。
【
図6】車両の速度に応じてヘッドライトを制御した状態で映像を路面上に投射する説明図である。
【
図7】車速に応じたヘッドライトと映像投射装置の制御形態を示す図である。
【
図9】ヘッドライトのオン(ON)/オフ(OFF)に応じて映像の輝度を変えて路面上に投射する説明図である。
【
図11】ヘッドライトのハイ(High)/ロー(Low)に応じて映像の表示位置を変えて路面上に投射する説明図である。
【
図13】昼夜に応じて映像の輝度を変えて路面上に投射する説明図である。
【
図14】車外の明るさに応じて映像の輝度を変えて路面上に投射する説明図である。
【
図16】昼夜(車外の明るさ)に応じて映像の輝度を変えて路面上に投射する動作フローを示す図である。
【
図17】車外の明るさに応じて映像を路面上に投射する動作フローを示す図である。
【
図18】本発明の他の実施例になる映像投射装置におけるヘッドライトの照射領域と映像投射装置による映像の投射領域を説明するための図である。
【
図19】上記他の実施例において、ヘッドライトの照射領域内に映像の投射領域を分割して形成するための具体的構成の一例を示す図である。
【
図20】上記の構成によりヘッドライトの照射領域内に分割して形成される映像の投射領域の一例を示す図である。
【
図21】上記他の実施例において、ヘッドライトの照射領域内に映像の投射領域を分割して形成するための具体的構成の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながらその詳細内容について説明する。
<映像投射装置の配置>
【0014】
まず、
図1(A)および(B)には、本発明の一実施の形態に係る映像投射装置を搭載した自車両10の一例として乗用車が示されており、これらの図に示すように、当該自車両(乗用車)10の本体の前方には、左右一対のヘッドライト(HL)11が設けられている。そして
図1(A)の例では、ここではその詳細な図示はしないが、これら一対のヘッドライト11の内部には発光体であるランプが組み込まれている。また、
図1(A)の例では、自車両(乗用車)10には以下に詳述する映像投射装置が左右一対となって2台搭載されている。そして、当該各映像投射装置からの2つの映像光は、例えば、透明な左右一対の窓部13a、13bを介して自車両の前方の路面に投射される。
【0015】
14aは映像投射装置から自車両の右側の窓部13aを介して投射される投射領域、14bは自車両の左側の窓部13bを介して投射される投射領域、15aは投射領域14aに投射された矢印の一部の投映図、15bは投射領域14bに投射された矢印の他の一部の投映図である。これらの2個の投映図が合成されて自車両(乗用車)10の前方の路面に車両が右折することを示す矢印が投映される。
図1(A)の例では、左右に投射領域14a、14bが分割されているが、上下に投射領域を分割してもよい。
【0016】
図1(B)には、映像投射装置を車体の先端部に1台だけ搭載した例を示しており、この場合には、映像投射装置からの映像光は、例えば車体の先端部に設けられた透明な窓部12を介して自車両の前方の路面に投射されることとなる。16は1個の映像投射装置から投射される投射領域で、17はこの領域に投射された矢印を示す投映図である。
【0017】
上記に示された路面等に投射される矢印の映像は、自車両(乗用車)10の近傍を歩行している歩行者等に対して車両の現在或いは、その後の進行方向を示しており、これにより安全性をより高く確保するものである。
【0018】
次に、
図2(A)および(B)には、本発明の一実施の形態に係る映像投射装置を1台搭載した上記自車両(乗用車)10の後方が示されており、これらの図に示すように、車体の後方には、赤色のテールランプ18、18’が設けられている。そして、この
図2(A)の例では、その詳細は図示しないが、これらテールランプ18、18’の内部には発光体であるランプが組み込まれている。また、
図2(A)の例では映像投射装置が左右一対となって2台搭載されており、当該映像投射装置からの映像光は、例えば、透明な窓部を介して2個の投映図が組み合わされて、自車両(乗用車)10の後方の路面に車両が後退しながら右折することを示す矢印が投映される。
【0019】
また、
図2(B)は、映像投射装置を、例えば、車体の屋根付近等に搭載した例を示している。この
図2(B)の例では、上記
図1(B)と同様、車体の後端に設けられた透明な窓部を介して、映像光が自車両(乗用車)10の後方の路面に車両が後退しながら右折することを示す矢印が投映される。
【0020】
なお、以上では1台または複数台(例えば一対)の映像投射装置を自車両10の前後に搭載する例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば、映像投射装置を自車両10の前後以外の場所、例えばサイドミラー部分や屋根の上や車体の側面、底面等に搭載してもよい。また、映像投射装置をヘッドライトやテールランプの内部に一体に組み込んでもよい。つまり、本発明では当該映像投射装置により所望の映像を路面等に投射することができればよい。なお、映像投射装置をヘッドライトやテールランプの内部に一体に組み込んだ場合は、ヘッドライトやテールランプの光源を投射用の光源としても用いることもできる。
<配光制御ECUの構成>
【0021】
続いて、
図3には、上述した自車両10内に搭載された電子制御ユニット(配光制御ECU)の構成の一例が示されている。この図からも明らかなように、当該配光制御ECU40は、CPU(中央演算装置)41、記憶手段であるRAM42やROM43、更には、入出力装置(I/Oユニット)44を備えている。そして、当該配光制御ECU40には、上記I/Oユニット44を介して、以下の各種情報取得部や通信部からの情報が入力され、上記のヘッドライト11の駆動や映像投射装置500の映像投射を制御している。
【0022】
なお、ここで、上記各種情報取得部からの情報としては、例えば、自車両10の走行速度を示す速度信号、エンジンの状態(オン/オフ)を示す信号、ギアの位置を示すギア情報、周囲のドライバーに危険の存在を知らせるハザード信号、ハンドルの操舵角度を示すハンドル舵角信号、ターンシグナル(または、「ウィンカー」とも言う)の有無や左右どちらが点灯/点滅しているかを示すターンシグナル信号、更には、上記各種のランプの点灯/点滅状態を示すランプ点灯情報が含まれる。
【0023】
また、上記各種情報取得部からの情報としては、更に、例えば、車の外部の光(明るさ)を検出する外光センサーからの情報(照度信号、色度信号等)、車に取り付けられたカメラからの映像情報、自車両10の前方等、周辺を走行する車両やその他の対象物との間の距離等を検出する距離センサーからの信号、更には、夜間における車の外部の状況を検出する赤外線センサーからの信号等が含まれる。
【0024】
更に、上記通信部からの情報には、例えば、自車両10の位置を割り出すためのGPS(Global Positioning System、全地球測位網)信号、経路案内等を行うナビゲーション装置からの情報である、所謂、ナビ情報、更には他の車両との間で行われる車車間通信や道路と車の間で行われる路車間通信の情報等が含まれる。
【0025】
図4には、上述した配光制御ECU40とその周辺要素についての、更に詳細な構成が示されている。すなわち、図において方向指示器センサー51、ハンドル操舵角センサー52、シフトポジションセンサー53、車速センサー54、アクセル操作センサー55、ブレーキ操作センサー56、照度センサー57、色度センサー58、エンジン始動センサー59、ハザードランプセンサー60からの信号が、上記配光制御ECU40に入力されている。更に、カメラ61からの信号は、画像処理部62を介して配光制御ECU40に入力され、GPS受信部63と地図情報出力部64からの信号は、演算部65を介して配光制御ECU40に入力されている。
【0026】
また、上記映像投射装置500を構成する投映器100には、上記配光制御ECU40からの制御信号と、投映信号出力部110からの信号(路面等に投射する映像信号)が制御部120を介して入力されており、これにより以下に説明する路面等への映像の投射が実行される。
【0027】
加えて、上記配光制御ECU40には、更に、ヘッドライトセンサー66からのヘッドライトの点灯、消灯、点灯時の輝度を示す各信号、そして、ハイ/ローセンサー67からのヘッドライト点灯時の光ビームのハイ/ロー状態を示す信号が入力されている。これらの各センサー51~60、および66、67でセンサー部が構成される。
【0028】
更に、上記配光制御ECU40からヘッドライト制御部(HL制御部)19を介してヘッドライト11の輝度が制御される。
<映像投射装置>
【0029】
続いて、上記
図4に示した投映器100、投映信号出力部110および制御部120を含む映像投射装置500の更に詳細な構成の一例について、以下に、
図5を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
投映器100を構成する投射光学系501は、映像を路面等へ投射する光学系で、レンズおよび/またはミラーを含む。表示素子502は、透過する光または反射する光を変調して映像を生成する素子で、例えば、透過型液晶パネル、反射型液晶パネル、DMD(Digital Micromirror Device)(登録商標)パネル等を用いる。表示素子駆動部503は、表示素子502に対して駆動信号を送り、表示素子502に映像を発生させる。光源505は映像投射用の光を発生するもので、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、LED光源、レーザー光源等を用いる。電源506は、光源505に電力を供給する。更に電源506は、その他各部にそれぞれ必要な電力を供給する。照明光学系504は、光源505で発生した光を集光し、より均一化して表示素子502に照射する。冷却部515は、光源505、電源506または表示素子502など、高温状態になる各部位を空冷方式や液冷方式で必要に応じて冷却する。操作入力部507は、操作ボタンやリモコンの受光部であり、ユーザからの操作信号を入力する。
【0031】
映像信号入力部531は、外部の映像出力装置を接続して映像データを入力する。音声信号入力部533は、外部の音声出力装置を接続して音声データを入力する。音声出力部540は、音声信号入力部533に入力された音声データに基づいた音声出力を行うことが可能である。また、音声出力部540は内蔵の操作音やエラー警告音を出力してもよい。通信部532は、例えば、外部の情報処理装置と接続し、各種の制御信号を入出力する。
【0032】
不揮発性メモリ508は、プロジェクタ機能で用いる各種データを格納する。不揮発性メモリ508に格納されるデータには、路上に投射するための、予め用意した画像データや映像データなども含まれる。メモリ509は、投射する映像データや装置各部の制御パラメータ等を記憶する。制御部510は、接続される各部の動作を制御する。
【0033】
画像調整部560は、映像信号入力部531で入力した映像データや、不揮発性メモリ508に格納される画像データや、映像データに対して画像処理を行うものである。当該画像処理としては、例えば、画像の拡大、縮小、変形等を行うスケーリング処理、輝度を変更するブライト調整処理、画像のコントラストカーブを変更するコントラスト調整処理、画像を光の成分に分解して成分ごとの重み付けを変更するレティネックス処理等がある。
【0034】
ストレージ部570は、映像、画像、音声、各種データなどを記録するものである。例えば、製品出荷時に予め映像、画像、音声、各種データなどを記録しておいてもよく、通信部532を介して外部機器や外部のサーバ等から取得した映像、画像、音声、各種データなどを記録してもよい。ストレージ部570に記録された映像、画像、各種データなどは、表示素子502と投射光学系501を介して投射映像として出力すればよい。ストレージ部570に記録された音声は音声出力部540から音声として出力すればよい。
【0035】
以上説明したように、映像投射装置500には様々な機能を載せることが可能である。しかしながら、映像投射装置500は必ずしも上述した構成の全てを有する必要はない。映像を投射する機能があればどのような構成でもよい。
【0036】
図6は像面も含めた投映器100の光線図である。図において、図示しないLED等からなる光源から出射して映像表示素子を透過した映像光は、フィルタ等を通過し、各種のレンズ系で屈折作用を受け、更には、構成に応じて反射作用を受けた後で、像面8(路面等)に投射される。
【0037】
このように、上述した上記映像投射装置500では、投射距離700mmに対して、投射像の範囲の長辺の長さが10061-542=9519≒9520mmなので、投射比は700/9520≒0.07という、かつてない大幅な広角化を実現している。
【0038】
そして夜間、自車両10はヘッドライト11を点灯して走行するので、ヘッドライト11からの光ビームが像面(路面等)8に照射される。従って、夜間の像面(路面等)8には、上記映像投射装置500からの投射映像とヘッドライト11からの光ビームとが重なって照射される。
【0039】
なお、上記では1台の映像投射装置500とその投射光学系について述べたが、上述したように、本発明では1台または複数台(例えば一対)の投映器を車両に搭載し(或いはヘッドライトやテールランプに一体に組み込み)、所望の映像を路面等に投射するものであってもよい。その際、特に上記
図1(A)や
図2(A)に示すように、複数台(例えば一対)の映像投射装置500による場合には、各映像投射装置500から同一の映像を路面等に投射してもよく(その場合、
図5の表示素子502には同じ映像が表示される)、または左右の映像投射装置500から異なる映像を投射して路面等で合成してもよい(その場合、
図5の表示素子502には、所望の映像を左右に分割した映像が表示される)。
【0040】
また、上記では、路面等に映像を投射する映像投射装置500として、透過型の液晶映像表示素子を使用した構成について説明したが、本発明ではこれに限定されることなく、当該映像投射装置500としては、その他、例えばDLP(デジタルライトプロセッシング)装置などのマイクロミラーからなる反射型の映像投射装置500、光変調可能な面状の発光ダイオードからの映像光を投射光学系を介して投射することの可能な映像投射装置500など、各種の映像投射装置500を使用することも可能である。すなわち、本発明では当該映像投射装置500により、所望の映像を路面等に投射することが可能となればよい。
<路面等への投射映像の制御>
【0041】
続いて、以上に詳細を説明したヘッドライトと映像投射装置500を、一例として上述のように車体の前方および/または後方に搭載し、車両情報との関係により路面等に投射される各種の映像の具体例について、以下、
図7~17を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下の実施例では映像投射装置500からの映像例として矢印を用いて説明したが、これに限らず、方向を示す形状や文字情報等であってもよい。
【0042】
図7は、夜間の車両走行での減速時において、自車両10の前方に路面に投射されるヘッドライトの光と、映像投射装置500の矢印映像の制御形態を示している。21は路面に投射されるヘッドライトの投射領域、22は映像投射装置500からの投射領域、23は投射領域22に投射された矢印映像である。投射領域22にはヘッドライトの光と、映像投射装置500の矢印映像が重なって投射される。
【0043】
上記
図4に示す車速センサー54からの信号に基づいて、通常速度においては、ヘッドライトは通常の輝度で路面に光を照射し、映像投射装置500は通常の輝度で矢印映像23を路面に投射する(
図7(A))。車両が減速または停止すると、車速センサー54の信号に基づいて、ヘッドライトは法規によって規定されている範囲で、通常より減光した状態で路面に光を照射し、映像投射装置500は上記と同じ輝度で矢印映像23を路面に投射する(
図7(B))。
【0044】
なお、映像投射装置500における輝度の制御は、画像調整部560のブライト調整処理機能で行うことができ、また、光源として複数のLEDを備えて、点灯するLEDの数や、パルス幅変調によっても制御することができる。このように制御することにより、車両の減速または停止時には、映像投射装置500の映像が強調されるため人の注意を喚起し、車両の現在或いはその後の進行方向を、周囲のドライバーや歩行者に対してより確実に提示(警告)し、高い安全性を確保することができる。
【0045】
図7に示す例では、映像投射装置500からの映像の輝度を変えずに、ヘッドライトを減光させているが、これに限らず、ヘッドライトの輝度を変えずに、映像投射装置500からの映像の輝度を上げてもよく、また、ヘッドライトの輝度を下げて、映像投射装置500からの映像の輝度を上げてもよい。すなわち、車両の減速または停止時に、相対的にヘッドライトより映像投射装置500からの映像の輝度を上げる制御を行えば、上記と同様に安全性をより高く確保することができる。
【0046】
なお、
図7に示す例は、映像投射装置500からの映像の輝度を変えにくい場合に有効である。
【0047】
図8は、
図7の制御形態の動作フローの概略を示している。配光制御ECU40が、ステップ200で車速センサー54からの速度信号より、ステップ201で自車両10の減速、または停止を検出すると、ステップ202で映像投射装置500の輝度が制御され、また、ステップ203でヘッドライトの輝度が制御される。輝度の制御は、映像投射装置500は、
図5に示す制御部510によってなされ、ヘッドライトはヘッドライト制御部(HL制御部)19によってなされる。
【0048】
図2に示す自車両10の後退時の映像投射装置500からの映像の投射では、自車両10の後退は減速しながらなされるので、
図7、
図8に示される本制御形態が適用される。この場合、ヘッドライトに代えて後退灯(バックライト)の輝度が制御される。
【0049】
図9は、夕方または夜間でのヘッドライトの点灯や消灯時において、自車両10の前方の路面に投射されるヘッドライトの光と、映像投射装置500からの矢印映像の制御形態を示している。25は路面に投射されるヘッドライトの投射領域、26は映像投射装置500からの投射領域、27は投射領域26に投射された矢印映像である。投射領域26にはヘッドライトの光と、映像投射装置500の矢印映像が重なって投射される。
【0050】
図4に示すヘッドライトセンサー66からの点灯、消灯を示す信号の入力に基づいて、ヘッドライト消灯時においては映像投射装置500から通常の輝度で矢印映像27を路面に投射する(
図9(A))。そして、ヘッドライト点灯時においては、ヘッドライトの光が照射された路面に、映像投射装置500から通常の輝度より高い輝度で矢印映像27を投射する(
図9(B))。
【0051】
通常、ヘッドライト(HL)の点灯により車両前方が明るくなるため、車両前方の路面に投映された映像投射装置500からの画像の視認性が悪くなるが、
図9に示す制御を行うことにより、ヘッドライトが点灯しても、映像投射装置500からの矢印映像は輝度上昇により視認性の低下が防止できる。従って、ヘッドライト(HL)が点灯しても、矢印映像が強調されるため人の注意を喚起し、自車両10の進行方向を、周囲のドライバーや歩行者に対してより確実に提示(警告)し、高い安全性を確保することができる。
【0052】
図10は、
図9の制御形態の動作フローの概略を示している。ステップ204でヘッドライトセンサー66から点灯(オン)、または、消灯(オフ)信号が発せられ、ステップ205で配光制御ECU40がこの信号を検出すると、ステップ206で映像投射装置500からの輝度を高めるように制御される。なお、映像投射装置500の輝度の制御は、画像調整部560のブライト調整処理機能で行うことができ、また、光源として複数のLEDを備えて、点灯するLEDの数や、パルス幅変調によっても制御することができる。
【0053】
図11は、夜間の車両走行において、自車両10の前方路面に投射されるヘッドライトの光のハイ/ロー状態と、映像投射装置500からの矢印映像の投映位置の制御形態を示している。
図11では、映像投射装置500の投射領域を示しているが、この投射領域はヘッドライトの投射領域に合わせてもよい。
【0054】
本制御形態では、
図4に示すハイ/ローセンサー67からのヘッドライト点灯時の光ビームのハイ/ロー状態に応じて、映像投射装置500からの矢印映像の投射位置を変える。すなわち、ハイビーム状態では映像投射装置500からの矢印映像28を自車両10から遠方の路面に投射し(
図11(A))、ロービーム状態では映像投射装置500からの矢印映像28を自車両10から近い位置の路面に投射する(
図11(B))。また投映位置が遠くなる際には、ドライバーからの視角が小さくなるため、投映位置に加え映像も変更してもよい。
【0055】
映像投射装置500からの矢印映像の投射位置を変える具体的な制御としては、
図5で光源506を制御する場合、投射光学系501を制御する場合、および表示素子502の液晶パネルの使用部位を変える場合がある。
【0056】
光源506を制御する場合は、光源として複数のLEDを備え、点灯するLEDの位置を変えることで投射する位置を変える。すなわち、点灯するLEDの位置を変えることにより、投射光学系501からの矢印映像の照射方向を変え、結果的に矢印映像の路面での投映位置を変更する。
【0057】
投射光学系501を制御する場合は、投射光学系501の光軸を機械的に変えることで矢印映像の照射方向を変え、結果的に矢印映像の路面での投映位置を変更する。
【0058】
表示素子502の液晶パネルの使用部位を変える場合は、配光制御ECU40がハイビームの信号を検出すると映像投射装置500を制御し、映像投射装置500内では、表示素子駆動部503が表示素子502に駆動信号を送り、車両から遠い位置の路面に映像が投射されるように表示素子502の液晶パネルの使用部位を変えて映像を発生させる。同様に、配光制御ECU40がロービームの信号を検出すると、映像投射装置500内の表示素子駆動部503が表示素子502に駆動信号を送って、車両から近い位置の路面に映像が投射されるように表示素子502の液晶パネルの使用部位を変えて映像を発生させる。
【0059】
図12は、
図11の制御形態の動作フローの概略を示している。ステップ207でハイ/ローセンサー67からハイまたはロー信号が発せられると、ステップ208で配光制御ECU40がこれらの信号を検出し、ステップ209で各信号に応じて映像投射装置500の矢印映像の投射(表示)位置を制御する。
【0060】
ヘッドライトのハイ/ロー信号、および車速の組み合わせに応じて、投射位置を変えてもよい。例えば、ヘッドライトのロービーム状態で低速時には近距離に投射し、ヘッドライトのハイビーム状態で中速時には中距離に、そして高速時には遠距離に投射するように制御される。
【0061】
通常、ヘッドライトは、車両の走行中に対向する人や車両がない場合にハイビーム状態とし、対向する人や車両がある場合には眩惑を防ぐためにロービーム状態とする。本制御形態によれば、車両の近いところに人や車両が存在する場合に、車両の近くの路面に映像投射装置500からの矢印映像を投射するので、矢印映像が強調され、人の注意を喚起し、車両の進行方向を、周囲のドライバーや歩行者に対してより確実に提示(警告)し、高い安全性を確保することができる。
【0062】
また、自車両10の運転者はヘッドライトのロービーム状態では視線を自車両10の近いところに向け、ハイビーム状態では視線を遠方に移す。上記配光制御によれば、映像投射装置500からの矢印映像が自車両10の運転者の視線の方向に投射されるので、自車両10の運転者へも注意喚起することになり、高い安全性を確保することができる。
【0063】
図13は、昼夜の明るさに応じて映像投射装置500からの映像の輝度を変える制御形態を示している。29と30はそれぞれ昼間と夜間での映像投射装置500からの矢印映像、31は投射領域で矢印映像の周囲の映像をも示す。
【0064】
昼間は、映像投射装置500からの矢印映像29の輝度を上げ、その周囲の映像31の輝度を低下させ(
図13(A))、一方、夜間では矢印映像30の輝度を下げて矢印映像30の周囲の映像31の輝度を上げる(
図13(B))。
【0065】
図14は、車外の明るさに応じて映像投射装置500からの映像の輝度を変える制御形態を示している。32と33はそれぞれ明るいときと暗いときの映像投射装置500からの矢印映像、31は投射領域で矢印映像の周囲の映像でもある。
【0066】
図4に示す照度センサー57からの明るさの信号により、車外が明るいときは映像投射装置500からの矢印映像32の輝度を上げて(例えば色付)矢印映像の周囲の映像31の輝度を低下させる(
図14(A))。一方、暗いとき(夜またはトンネル内)は矢印映像33の輝度を下げて(例えば白抜き)矢印映像の周囲の映像31の輝度を上げる(
図14(B))。
【0067】
上記した
図13、
図14に示す制御形態によれば、明るいときに矢印映像の輝度を上げるので矢印映像の視認が容易となり、周囲のドライバーや歩行者に対してより確実に提示(警告)し、高い安全性を確保することができる。一方、暗いときは、矢印映像の視認が容易なので輝度を下げてその周囲の輝度を上げることで周囲を明るくすることができ、周囲のドライバーや歩行者に対してより確実に提示(警告)するとともに、周囲を明るくして高い安全性を確保することができる。
【0068】
特に、
図14の路面等への投射映像によれば、周囲のドライバーや歩行者にとっては、自車両10の進行方向が認識しやすく、またナビ情報からの信号により矢印映像を投映する際には、自車両10のドライバーにとっても交差点での自車両10が進入すべき経路が認識しやすく、より高い安全性を確保することが可能となる。なお、天気や時間帯、周囲の明るさに応じて矢印等の大きさや色を可変としてもよい。
【0069】
図15は、
図14の制御の概略を示している。ステップ210で照度センサー57によって車外の明るさを検知し、ステップ211でその検知信号が配光制御ECU40に入力される。そして、ステップ212で配光制御ECU40は明るさ検知信号に基づいて、映像投射装置500を制御し、矢印映像の輝度とその周囲の輝度を制御する。
【0070】
図16は、昼夜(
図13)や車外の明るさ(
図14)に応じて映像投射装置500の光源を高輝度光源と通常光源に切り替える動作フローを示している。
【0071】
ステップ213で映像投射装置500が起動し、ステップ214で照度センサーによって周囲の光が検出され、ステップ215で昼夜が判別され、昼の場合ステップ216で映像投射装置500内の高輝度光源が駆動され、昼でない場合ステップ217で映像投射装置500内の低輝度の通常の光源が駆動される。
【0072】
ここで、高輝度光源としてレーザー光源を用い、通常光源としてはLED光源を用いる。すなわち、
図5における光源505として、レーザー光源(第1の光源)と、LED光源(第2の光源)の2種の光源を備えて、昼と夜、または車外の明るさによって、両光源を切り替えて駆動することで必要な輝度を得ることができる。夜間や周囲が暗いときには、瞳孔が開いてしまうため、LED光源を使用することが望ましい。
【0073】
高輝度光源としてのレーザー光は、指向性に優れた平行光であるため、投射時に拡散しないために途中で輝度が低下することが少なく、矢印映像を高い輝度で路面に表示することができる。レーザー光源はレーザーを走査して矢印部を表示するレーザー走査型を用いる。このように、レーザー光を用いれば、車外が明るい場合でも視認性の高い輝度で矢印映像を路面に表示できるので、周囲のドライバーや歩行者に対し、より確実に提示(警告)し、高い安全性を確保することができる。
【0074】
また、高輝度光源として複数のLEDを備えて、個別に点灯することにより必要な高輝度を得ることができる。すなわち、通常の低輝度の光源の場合は少ない数のLEDを点灯させ、高輝度の光源の場合は多数のLEDを点灯させる。この場合、点灯するLEDの数を変えることにより、輝度を多段階に変えることができるので、例えば、車外の明るさ(照度)の程度によって、視認性の高い状態を保てる最低限の輝度で照射するようにすれば、高輝度光源を省エネルギーで駆動することができる。
【0075】
図13~
図16の制御形態は、
図2に示す車両の後退時の映像投射装置500の映像の投射にも適応できる。かかる制御形態の路面等への投射映像によれば、特に車庫入れの際、周囲のドライバーや歩行者に対してより確実に提示(警告)して、高い安全性を確保することを可能としている。
【0076】
図17は、車外の明るさ(
図14)に応じて映像投射装置500の投映の可否を決める動作フローを示している。ステップ218で映像投射装置500が起動された後、ステップ219で照度センサー57にて車外の周囲光を検出する。ステップ220で配光制御ECU40が検出した周囲光に対して、映像投射装置500の投映像(矢印)が十分コントラストがとれるかを判断する。
【0077】
投映像が十分コントラストがとれれば、路面に投射された矢印映像の視認が容易となり、周囲のドライバーや歩行者に対してより確実に提示(警告)し、高い安全性を確保することができる。しかし、投映像が十分コントラストがとれなければ、周囲のドライバーや歩行者が路面に投射された矢印映像の視認が困難となり、安全性を確保することができないため、映像投射装置500から投射しても無駄である。
【0078】
従って、ステップ220で十分コントラストがとれると判断した場合、配光制御ECU40から、ステップ221で映像投射装置500に投映指令が出される。一方、ステップ220で十分コントラストがとれないと判断した場合、ステップ222で配光制御ECU40から、映像投射装置500に投映指令が出されない。なお、このとき、運転者へは投映指令が出されない旨のメッセージが表示される。
<ヘッドライトと映像投射装置による照射/表示領域の分離>
【0079】
上記の実施例では、主に、映像投射装置から路面上に表示される映像は、夜間やトンネル内での走行時においては、車両のヘッドライトによる照射領域内において投射されるものとして説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明になる映像投射装置による表示領域がヘッドライトによる照射領域と重複した場合には、当該ヘッドライトによる照射光により、映像投射装置から路面上に投射した映像のコントラストが低下してしまい、その視認性が悪化(劣化)することが考えられる。そこで、本発明では、上記ヘッドライト11内に配置され、ヘッドライトによる照射領域と映像投射装置による照射領域とを分離(分割)するための、所謂、表示領域形成部により、上述した課題を解決するものであり、以下にその実施例の詳細について説明する。
【0080】
図18は、本実施例により、表示領域形成部により、ヘッドライトによる照射領域と、映像投射装置による表示領域とを分離した状態を示しており、特に、
図18(A)では、自車両10前方のヘッドライトによる照射領域300に対して、映像投射装置による表示領域が、車両前方の比較的近い領域(例えば、車両前方の0m~10mの範囲:以下、「近領域」と言う)310に設定され、
図18(B)では、映像投射装置による表示領域が、車両前方の比較的遠い領域(例えば、車両前方の10m~20mの範囲:以下、「遠領域」と言う)320に設定された場合を示している。
【0081】
より具体的には、
図18(A)では、ヘッドライトからの光により照射される領域(通常、車両前方の0m~40mの範囲)300のうち、ヘッドライト光の一部の上記近領域に至る照明光を遮断し、もって、ヘッドライトからの照明光が遮断された領域(=近領域)310を表示領域とし、当該近領域310に映像投射装置による投射映像を表示する。一方、
図18(B)では、ヘッドライトの照射領域300のうち、上記遠領域に至る照明光を遮断し、もって、ヘッドライトからの照明光が遮断された領域(=遠領域)320を表示領域とし、当該近領域320に映像投射装置による投射映像を表示する。なお、これら映像投射装置による投射映像の表示領域、すなわち、近領域310または遠領域320は、ヘッドライトによる照射領域300を超えるものではない。
【0082】
そして、上記のようにして形成した近領域310または遠領域320内において、上述した映像投射装置(上記
図3~5の符号500を参照)による映像(本例では、例えば、自車両10の進行方向を示すための矢印)を投射することによれば、投射した映像のコントラストが低下することから解消され、特に、ヘッドライト点灯時における投射映像の視認性が向上されることとなり、周囲のドライバーや歩行者に対するより確実に提示(警告)が可能となり、高い安全性を確保することができる。なお、このとき、上記の矢印を含む映像を、例えば、白地に黒抜きの状態で表示することによれば、映像投射装置からの投射光を、ヘッドライトからの照射光の一部を担うために利用できることから、照明効率を向上することができることから最も好ましい。なお、ここで言う、白地に黒抜きとは、投射する映像部分については識別性に優れた色光で形成すると共に、それ以外の領域の光色を白色光とすることを意味する。
【0083】
続いて、ヘッドライトからの照射光の照射領域を変更して、ヘッドライトによる照射領域300内に、映像投射装置からの映像を表示するための映像表示領域である、上述した近領域310または遠領域320を形成するための上記表示領域形成部の具体的な構成について、
図19および20を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0084】
まず、
図19は、所謂、シェードを利用して、ヘッドライト(上記
図3または4の符号11を参照)から照射される光の一部を遮光することにより上述した近領域310または遠領域320を形成するものであり、特に、
図19(A)は、当該遮光構成を含めたヘッドライトの全体構成を示す断面であり、
図19(B)は、当該遮光構成を中心にしたヘッドライトの全体構成を示す部分的斜視図である。
【0085】
図19(A)において、基板111上には、例えば、LEDから成る光源112が配置され、その周囲には、当該光源112からの発光を集めて所定の位置からの発光光に変換するための反射板113(例えば、楕円を回転して得られる半球状の反射面を持つミラー)が取り付けられている。更に、この反射板113により集められた光は、レンズなどの光学素子114により集光されてヘッドライト11のガラス前面から前方に向かって照射される。そして、ヘッドライト11から照射される光の一部を遮光することにより近領域310または遠領域320を形成するための手段であるシェード115は、例えば、上記光学素子114に至る光路の途中に設けられる。
【0086】
このシェード115は、
図19(B)にも示すように、複数枚(本例では3枚)に板状の部材(羽)115-1、115-2、115-3を、共通の回転軸116を中心にして回転可能に取り付けて構成されており、ここでは図示しないモーター等の回動手段によりそれぞれの角度位置に設定される。すなわち、これら3枚の羽115-1、115-2、115-3により、それぞれ、光源112からの一部を遮蔽し、換言すれば、3枚の羽115-1、115-2、115-3を組み合わせて形成されるシェードの開口部を通過させた後、レンズなどの光学素子114を介してヘッドライト11の前方に向かって照射することによれば、
図20(A)~
図20(C)に示すように、所定の領域300を照射すると共に、所望の映像表示領域310または320を含む照明光を得ることができる。
【0087】
または、上記に代えて、例えば
図21にも示すように、複数のLEDを面上にアレイ状に配置して成る面状光源117からの光を、レンズなどの光学素子114を介してヘッドライト11の前方に向かって照射する構成のヘッドライト11によれば、当該面状光源117を構成する複数のLEDの一部の点灯を制御することによって、上記
図20(A)~
図20(C)と同様に、所定の領域300を照射すると共に、所望の映像表示領域310または320を含む照明光を得ることができる。
【0088】
以上に詳述した実施例によれば、ヘッドライト11の前方に形成される照明領域300内に、適宜、映像投射装置からの映像を投射するための映像表示領域310または320を分離して形成することから、映像投射装置による表示領域がヘッドライトによる照射領域と重複することはなく、そのため、投射映像のコントラストが低下してその視認性が悪化(劣化)することもなく、ヘッドライト点灯時においても、周囲のドライバーや歩行者に対するより確実に提示(警告)が可能となり、高い安全性を確保することができる。
【0089】
なお、上述した実施例では、ヘッドライト11による照明領域300と映像表示領域310または320との分離は、映像投射装置からの映像を投射する際に行うものとして説明したが、しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、常時、分割するようにしてもよい。また、ヘッドライトと、映像投射装置からの映像を投射する映像表示領域310または320との間の境界領域については、これらをオーバーラップさせる(重ね合わせる)こと、或いは、グラデーションを付けて重ね合わせることによれば、その接合部(つなぎ目)を分かり難くすることも可能である。なお、このグラデーションは、映像投射装置から投射される映像表示領域またはヘッドライトから照射される照射領域のいずれか片方だけでもよい。これによれば、運転中のドライバーの違和感を軽減し、高い安全性を確保することができる。
【0090】
また、上記の実施例では、映像投射装置により映像表示領域310または320内に投射される映像の一例として、車両の進行方向を示すための矢印の例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、その他の映像を表示する場合にも適用することが可能である。また、上記の実施例では、ヘッドライト11の前方に照射される照射領域300としては、所謂、ハイビームにより得られる領域について例示したが、本発明はこれに限定されることなく、例えばロービームにより得られる領域について、上記と同様にして、所望の映像表示領域310または320を含む照明光を得ることができる。なお、ヘッドライト以外のライト(例えばバックライト等)について本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0091】
10…自車両(乗用車)、11…ヘッドライト、12、13a、13b…窓部、14a、14b、16…投射領域、15a、15b、17…投映図、18、18´…テールランプ、19…ヘッドライト制御部、21…ヘッドライトの投射領域、22…映像投射装置の投射領域、23…矢印映像、40…配光制御ECU、51…方向指示器センサー、52…ハンドル操舵角センサー、53…シフトポジションセンサー、54…車速センサー、55…アクセル操作センサー、56…ブレーキ操作センサー、57…照度センサー、58…色度センサー、59…エンジン始動センサー、60…ハザードランプセンサー、61…カメラ、62…画像処理部、63…GPS受信部、64…地図情報出力部、66…ヘッドライトセンサー、67…ハイ/ローセンサー、100…投映器、110…投映信号出力部、120…制御部、500…映像投射装置、501…投射光学系、502…表示素子、503…表示素子駆動部、504…照明光学系、505…光源、531…映像信号入力部、533…音声信号入力部、532…通信部。