IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビューラー インセクト テクノロジー ソリューションズ アー・ゲーの特許一覧

<>
  • 特許-気候システム 図1
  • 特許-気候システム 図2
  • 特許-気候システム 図3
  • 特許-気候システム 図4
  • 特許-気候システム 図5
  • 特許-気候システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】気候システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022518417
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2020065293
(87)【国際公開番号】W WO2020245158
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】19177861.2
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520480290
【氏名又は名称】ビューラー インセクト テクノロジー ソリューションズ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Buehler Insect Technology Solutions AG
【住所又は居所原語表記】Gupfenstrasse 5, 9240 Uzwil, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、エリック ホラント
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン、ジャコ
(72)【発明者】
【氏名】アーツ、キース ヴィルヘルムス ペトリュス
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン、マウリッツ ペトリュス マリア
(72)【発明者】
【氏名】デ ヘルデル、フィンセント
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0066552(US,A1)
【文献】特開2018-120275(JP,A)
【文献】特開2012-208934(JP,A)
【文献】特開2011-133129(JP,A)
【文献】特開2010-002069(JP,A)
【文献】特開2008-096049(JP,A)
【文献】特開2006-046766(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022596(WO,A1)
【文献】実開昭52-145190(JP,U)
【文献】実公昭51-023579(JP,Y1)
【文献】特開2008-032255(JP,A)
【文献】特開2009-036395(JP,A)
【文献】米国特許第05819685(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫の幼虫を飼育するための部屋に調整された空気を提供するためのシステムであって、
前記昆虫の幼虫を保管するためのクレート(1)であって、前記クレート(1)は、積み重ねられたクレート(1)の縦方向の縦列を形成するように前記部屋の内部に積み重ね可能であり、前記クレート(1)は、対向する側上に配設された横方向の切り欠き部(11)を備える、クレート(1)と、
前記クレート(1)に調整された空気を提供するための空気入口ダクト(2)であって、前記空気入口ダクト(2)は、縦列内の各クレート(1)について少なくとも1つのノズル(21)を備え、前記少なくとも1つのノズル(21)の位置は、積み重ねられたクレート(1)の前記縦列内のそれぞれの前記クレート(1)の前記横方向の切り欠き部(11)の位置に対応し、
クレート(1)の複数の縦列は、横列を形成するように配置されており、クレート(1)の水平方向の少なくとも1つの横列には、調整された空気がそれぞれの前記少なくとも1つのノズルによって提供される、空気入口ダクト(2)と、
空気出口ダクト(3)であって、前記空気出口ダクト(3)は、クレート(1)の2つの隣接する縦列間の空間によって形成されており、前記空気入口ダクト(2)の反対側にある積み重ねられたクレート(1)の前記縦列の側上に配設されており、
吸引力は、前記空気出口ダクト(3)を介して排出空気を吸引するために提供され、
前記部屋の天井の上にある上方空間は、全ての空気出口ダクト(3)に均一な吸引力を提供するために、前記空気出口ダクト(3)の上方に形成され、且つ前記部屋と前記上方空間とを有する区画の天井の下方に形成されている、空気出口ダクト(3)と
を備え
前記空気出口ダクト(3)は、前記排出空気を前記部屋から前記上方空間に吸引するために、前記部屋の天井に設けられた少なくとも一つの開口部(31)を有する、
システム。
【請求項2】
前記空気は、特定の温度、湿度、速度/圧力、O率、及び/又はCO率を有するように調整される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記空気入口ダクト(2)は、各クレート(1)に均一な空気圧を提供するために、ベローから形成されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記空気入口ダクト(2)は、1つのクレート(1)当たり3つ又は5つのノズル(21)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記空気入口ダクト(2)は、前記空気入口ダクト(2)に対して互いに反対側に配置されている積み重ねられたクレート(1)の2つの縦列に、調整された空気を提供する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
積み重ねられたクレート(1)の前記2つの縦列は各々、前記2つの縦列と前記縦列のそれぞれの外側上にある2つの空気出口ダクト(3)との中間に調整された空気を提供するために、1つの共通空気入口ダクト(2)を有する、請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫の幼虫を飼育するための部屋に調整された空気を提供するためのシステムに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
昆虫の幼虫の飼育のとき、特に、幼虫及び基材の熱、水分、及びCO産出に起因して、かつ、最適な成長気候を確立するために、新鮮な調整された空気、すなわち、設定された温度、水分、O及びCO含量を有する空気を全ての昆虫の幼虫に均質に提供することが重要である。従来の飼育施設では、昆虫の幼虫は、クレート内の基材上で成長する。換言すれば、クレート内部には、幼虫と、幼虫の餌、昆虫の糞、昆虫の皮膚部分、微生物などを含み得る基材とからなるバイオマスがある。空気循環はファンによって得られる。しかしながら、これは低密度のシナリオについてのみ実現可能である。1つの部屋当たりより多くのクレートが使用されている場合、空気循環の有効性が低減し、ある時点において、このようなシステムの限界に達する。従来のシステムでは、クレートが使用されているが、クレートは、全てのシナリオについて最適な均質な気候状態を生じさせない。
【0003】
したがって、部屋の中の空気循環を改善することによって、大量の幼虫の高密度の飼育を可能にするシステムを提供することが望ましい。特に、バイオマスを空気エネルギー転送に最適化するための、各個々のクレートの上の方向付けられた空気流、及び調整された空気が提供される。更に、空気は、昆虫の幼虫にとって最適な成長気候を有するために、熱及び水分の蓄積を可能にすることなく、部屋から抽出される必要がある。
【0004】
これらの目的は、特許請求の範囲において定義されている本発明によって解決される。
【0005】
特に、本発明は、昆虫の幼虫を飼育するための部屋に調整された空気を提供するためのシステムに関する。システムは、昆虫の幼虫を保管するためのクレートを備え、クレートは、縦方向の縦列を形成するように積み重ね可能であり、クレートは、対向する側上に配設された横方向の切り欠き部を備える。クレートに調整された空気を個々に提供するための空気入口ダクトは、縦方向に配設されており、空気入口ダクトは、縦列内の各クレートについて少なくとも1つのノズルを備える。少なくとも1つのノズルの位置は、それぞれのクレートの横方向の切り欠き部の位置に対応する。システムは、空気出口ダクトを更に備え、空気出口ダクトは、縦方向に配設されており、空気出口ダクトは、空気入口ダクトの反対側にある積み重ねられたクレートの側上に配設されている。
【0006】
好ましくは、空気は、特定の温度、湿度、速度/圧力、及び/又はCO率を有するように調整される。空気入口ダクトは、各クレートに均一な空気圧を提供するために、ベローから形成され得る。空気入口ダクトは、1つのクレート当たり3つ又は5つのノズルを備え得る。空気入口ダクトは、空気入口ダクトに対して互いに反対側に配置されている積み重ねられたクレートの2つの縦列に、調整された空気を提供し得る。
【0007】
好ましくは、空気出口ダクトは、クレートの2つの隣接する縦列間の空間によって形成されている。積み重ねられたクレートの2つの縦列は各々、縦列のそれぞれの外側上にある2つの空気出口ダクトとの中間に調整された空気を提供するために、1つの空気入口ダクトを有してもよい。吸引力は、空気出口ダクトを介して排出空気を吸引するために提供され得る。好ましくは、空間は、全ての空気出口ダクトに均一な吸引力を提供するために、空気出口ダクトの上方に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面を参照して、本発明について説明する。
図1図1は、クレートを通る空気流のCFDシミュレーションを示す。
図2図2は、クレートを通る空気流のCFDシミュレーションを示す。
図3図3は、排出システムの例示的な構造を示す。
図4図4は、本発明によるシステムの例示的な断面図を示す。
図5図5は、本発明による空気調整された部屋の例示的な図を示す。
図6図6は、概略システム図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、昆虫の幼虫を飼育するための好適な環境を提供することを目的とした加熱、換気、及び空気調整(HVAC)システムに関する。幼虫は、栄養を提供する基材、すなわち栄養培地上で成長することができる。培地は、昆虫の幼虫にとって好適であり昆虫の幼虫の成長を可能にする有機廃棄物又は他の種類の栄養を備え得る。これにより、基材自体が、成長し熱及びCOを産出する微生物を含有する。幼虫は、基材と一緒に、矩形であり得る積み重ね可能なクレート1に保管される。クレート1の壁部自体が、好ましくは、気密性である。クレート1は、縦列を形成するように積み重ねられており、複数の縦列は、横列を形成するように互いに隣接して格納されている。複数の横列は、互いに隣接して格納されてもよく、したがって、壁部及び通廊を形成する。積み重ね可能であることは、例えば、クレート壁部上のセルフセンタリング要素によって達成され、セルフセンタリング要素は、クレートの垂直な積み重ねを可能にし、これにより、クレートをほぼ気密に封止する。しかしながら、クレート1の垂直な積み重ねを可能にするための他の手段が設けられてもよい。好ましくは、クレート1の縦列は、3~30個のクレート1を備える。これにより、幼虫の高密度及び大きな生産量が達成される。
【0010】
幼虫には新鮮な空気が供給される必要があるので、切り欠き部11は、空気の通過を可能にするためにクレート1内に形成されている。切り欠き部11は、対向する側上、好ましくは短手側上に形成されているが、全ての4つの側上に設けられてもよい。したがって、切り欠き部11は、横方向に配設され得る。
【0011】
クレート1は、基材又は栄養培地の高さが100mmであることを可能にするために、好ましくは、高さ約290mmを有し、クレート1の底部から切り欠き部11までの高さが少なくとも150mmである。より好ましくは、クレート1の底部から切り欠き部11までの高さは160mmであり、当該高さは、切り欠き部11の高さ130mmをもたらす。これにより、切り欠き部11の幅は、好ましくは、450mmである。したがって、切り欠き部11の面積は、約58500mmであり得る。クレートは、好ましくは、300~1200mmの長さ、200~800mmの幅、及び100~500mmの高さを有する。クレート1は、溝及び突出部などの構造的特徴部を有してもよく、構造的特徴部は、クレートが積み重ね可能であることを可能にする。更に、クレート1は各々、クレート1の識別及び自動化された処理を可能にするRFIDチップ、バーコード、又はQRコードなどを含んでもよい。
【0012】
しかしながら、クレート1が横列及び縦列を形成するように部屋の中に単純に積み重ねられており、部屋が従来のファンによって換気されているとき、クレート1の数が飼育をスケールアップするために増加されている場合には特に、クレート1を通る均質な空気流を提供することは困難である。したがって、本発明は、各個々のクレート1の上の方向付けられた空気流を提供する。更に、空気は、最適な温度、水分、及び空気中のCO含量を保証するために慎重に調整されてもよい。したがって、各クレート1は、各クレート1の個々の空気供給を有し得る。
【0013】
本発明によれば、空気入口ダクト2は、調整された空気を提供するために、積み重ねられたクレート1の縦列に隣接して形成されている。空気入口ダクト2は、縦方向に配設されてもよく、「縦(vertical)」とは、地面に対して垂直な方向を指す。空気入口ダクトは2また、水平方向に配設されてもよく、「水平(horizontal)」とは、地面に対して平行な方向を指す。空気入口ダクト2内の開口部又はノズル21として設計され得る空気出口は、積み重ねられた配置にあるとき、クレート1の切り欠き部11に対応する間隔で形成されている。ノズルは、好ましくは、切り欠き部11の底部線の10~80mm上方に配置されている。少なくとも1つの開口部及び最大10個の開口部が1つのクレート1当たり設けられているが、1つのクレート1当たり1~5つの開口部が好ましい場合がある。ノズル21として開口部を設計することによって、方向付けられた空気流が確保され得、最適化された熱分布が達成され得る。すなわち、ノズル21は、空気流を方向付ける、及び/又は調節するように機能する。開口部又はノズル21の直径は、適応可能であってもよい。
【0014】
クレート1は、互いの後方に配置されてもよく、ノズル21は、複数のクレート1に調整された空気を提供し得る。したがって、クレート1の複数の縦列は、空気流の方向に横列を形成することができ、空気は、クレートを順次水平方向に通過する。これにより、1つのノズル21及びノズル21の配置はそれぞれ、1~8つのクレート1、好ましくは1~4つのクレート1、最も好ましくは1つのクレート1のみについて機能し得る。換言すれば、1つのノズル21又はノズル21の配置が機能する面積はそれぞれ、2m未満、好ましくは1m未満、より好ましくは0.5m未満であり得る。
【0015】
各クレート1への調整された空気の均質な空気圧及び流量を保証にするために、縦方向の空気入口ダクト2は、例えばベロー又は靴下様のもの(sock)から形成された可撓性の空気ダクトであってもよい。ベローは、例えば、加圧空気で充填され得、次いで、加圧空気は、ノズル21を介してクレート1に送達される。ベローは、円形断面を有してもよい。円形断面を有するベローが使用されている場合、クレート1内部の渦の発達は、互いに対してオフセットされた角度を有するノズル21を配置することによって回避され得る。しかし、各クレート1に空気を均等に同一の圧力及び流量で分配することができる他の構造がまた、この目的に使用され得る。全ての空気入口ダクト2への圧力、空気流、及び空気パラメータに対する空気の均一な分布を保証するために、加圧チャンバが、クレートの積み重ねの上方に設けられてもよい。縦方向の空気入口ダクト2の場合、ベローは天井から吊り下げられてもよい。ノズル21は、積み重ねられたクレート1の2つの縦列に調整された空気を同時に提供することができるように、空気入口ダクト2の対向する側上に配設され得る。1つのクレート当たりの空気流は、40m/h未満、好ましくは30m/h未満、より好ましくは20m/h未満であり得る。シミュレーションは、1つのクレート当たりの適切な体積空気流が13m/hであり得ることを示した。
【0016】
最適な構成を見出すために、数値流体力学(CFD)シミュレーションが実行された。クレート1の切り欠き部11に対して垂直に方向付けられた1つのノズル21を使用することは、入口から出口への直接噴流をもたらしたが、バイオマスとの相互作用がほとんどないようであった。他のCFDシミュレーションは、3つのノズル21を使用し、1つはクレート1の切り欠き部11に対して垂直であり、他の2つは各々、それぞれ左右に30°オフセットされた。これは、ノズル21の反対側にあるクレートの切り欠き部11において流れが漏出することなく、クレート1を通る均一な分布及び空気流をもたらした。したがって、クレート1の全体にわたるバイオマスとの相互作用が達成された。また、ノズル21の数を5つまで増加させて、5つのノズル21をそれぞれ30°及び45°オフセットさせることによって、クレート1における良好な流れ分布が観察された。同様に、クレートの切り欠き部11における漏出は起こらず、したがって、調整された空気とバイオマスとの良好な相互作用が期待され得る。しかしながら、外部のノズル21は、ある再循環現象を創出し得る。しかしながら、本開示は、1つ、3つ、又は5つのノズル21に限定されず、他の数及び角度も使用され得る。
【0017】
図1は、クレート1と3つのノズル21との単純なモデルを使用するCFDシミュレーションの結果を2つの異なる斜視図から示す。流線22から分かるように、調整された空気は、クレート1の容積の大部分にわたって分配され、したがって、均質な成長気候を提供する。図2は、空気入口ダクト2、クレート1、及び空気出口ダクト3の上面図である。このシミュレーションでは、上述したような3つのノズル21を有するベローが使用された。同様に、調整された空気の均一な分布が、空気の流線22において観察され得る。
【0018】
効率的な空気調整及び循環の1つの重要な点は、部屋から出る排出空気、すなわち、熱、水分、及びCOの輸送である。したがって、空気出口ダクト3は、空気入口ダクト2の反対側にあるクレート1の側上に、積み重ねられたクレート1の2つの縦列と横列との間の空間によって形成されている。切り欠き部11は、クレート1の少なくとも2つの側上に設けられているので、通過する空気は、空気入口ダクト2の反対側の切り欠き部11を通ってクレート1から出ることができる。
【0019】
空気調整された部屋の天井には、部屋から出る排出空気を吸引するために、排出ダクト32内に形成された少なくとも1つの開口部31が設けられている。それぞれの空気流33は、図3a)及び図3b)に示されている。開口部31は、図3b)に示すように、単一の中央排出開口部31として形成され得る。単一の中央開口部31ではなく複数の開口部が形成されている場合、開口部31の位置は、好ましくは、空気出口ダクト3に対応する。図3a)を参照すると、CFDシミュレーションは、好ましくはクレート1の2つの隣接する縦列について1つである複数の空気出口ダクト3及びそれぞれの開口部31は、好ましい結果をもたらしたことを示した。部屋から出る空気を効率的に吸引するために、吸引力が生成されてもよい。しかしながら、真空が全ての空気出口ダクト3にわたって均一に分配される必要があるという問題がある。
【0020】
縦列の各対について、すなわち、各空気出口ダクト3について、別個の開口部を設ける必要を回避するために、空気出口ダクト3の横列は接続されてもよく、空気出口ダクト3の横列には単一の開口部が設けられてもよい。しかしながら、横列内の全ての空気出口ダクト3について、したがって全てのクレートについて同様の吸引力を提供するために、クレートの上方の排出ダクト、すなわち、出口ダクトから開口部まで空気を導くクレートの上方の空間は、テーパ状の形態に形成されてもよい。換言すれば、出口ダクト3は、クレート1の縦列間の空間によって形成されており、排出ダクト32は、クレート1の縦列の上方に形成されており、クレート1が位置する格納ホールの天井によって制限されている。したがって、開口部31は、好ましくは、格納ホールの天井内に形成されている。単一の中央開口部31が使用されるべきである場合、全ての空気出口ダクト3間の真空分布は、排出ダクト32の高さを上昇させることによって、すなわち、クレートの上方の容積を拡大することによって改善され得る。これにより、クレート1の横列及び縦列から形成された1つの飼育区画内の出口点における吸引力は統合され得る。したがって、出口チャネルからの全ての出口開口部は同じ吸引力を有するので、各クレートについて均一な空気流量が達成され得る。
【0021】
好ましくは、クレート1の内部を既に通過した排出空気は、空気出口ダクト3に負圧を提供する吸引力によって除去される。また、積み重ねられたクレート1によって形成された空気出口ダクト3は、空気入口ダクト2よりも広くてもよい。例えば、空気出口ダクト3は、幅200~1000mm、より好ましくは幅300~500mmであり得る。
【0022】
したがって、出口ダクト3は、出口チャネルに均一な吸引力を提供するためにチャネル及びチャネルの上方のダクトをそれぞれ形成する、積み重ねられたクレート1と積み重ねられたクレート1の壁部との間の空間から形成され得る。
【0023】
温度、水分、及びCOに対する流入空気及び排出空気の測定は、空気調整を制御し昆虫の幼虫の成長に関する情報を収集するために実行され得る。
【0024】
図4は、90°オフセットされている空気調整された部屋を通る2つの断面図を示す。この例示的な実施形態では、空気入口ダクト2及び空気出口ダクト3をそれぞれ形成する縦列間の空間は、300mm及び400mmである。クレート1のサイズ及び合計数、並びに空気調整された部屋の内部におけるクレート1の配置に応じて、他の大きさがまた適切であり得る。
【0025】
図5は、6列のクレート1を有する3つの別個の区画の、本発明の例示的な実施形態による空気調整された部屋の中のクレートの例示的な配置を示し、各区画は、3つの空気入口ダクト2と、4つの空気出口ダクト3とを有する。したがって、各区画内の順序は、各入口ダクト2がクレート1の2つの縦列によって共有されているように反復して、空気出口ダクト3、クレート1、空気入口ダクト2、クレート1、空気出口ダクト3であることができる。
【0026】
図5a)~図5c)は、排出ダクト32の構造が異なる、本発明の3つの例示的な実施形態を示す。図5a)及び図5b)の両方は、上記で説明したように、テーパ状の排出ダクト32を示す。図5c)の区画では、排出ダクト32の上昇した天井が示されている。更に、新鮮な空気を供給する3つの異なる構造が図5に示されている。
【0027】
本発明の有効性及び性能は、クレート1の横列又は縦列のうちのいくつかが定位置にない場合に影響を受けない。したがって、より高密度のクレート1、したがってより大量の昆虫の幼虫が同時に調整され得るが、システムは、常に部屋がクレート1で完全に充填されているように適切に機能する必要はない。
【0028】
図6は、本発明一実施形態による空気流を示す概略システム図である。調整された飼育部屋からの返り空気は、新鮮な空気と混合され得、温度(加熱/冷却)、CO含量、O含量、及び水分などの異なるパラメータに対して調整され得る。調整された空気は、流入空気として部屋に供給され、昆虫の幼虫にとって健全な成長気候を提供する。飼育部屋からの返り空気は、部分的に再循環され得、排出空気として環境に部分的に放出され得る。再循環速度は、内部空気及び外部空気の状態に応じて、0~100%であり得る。電源が、空気調整システムを駆動するために設けられている。温度、水分、及びCO含量などの空気の状態に関する測定データは、調整システムから戻され、部屋の内部の気候が常に最適であるために、当該測定データは、当該システムを制御し必要に応じてパラメータを適応させるために使用される。測定点又はセンサが、入口ダクト2、出口ダクト3、又はクレート1自体に配設されてもよい。入ってくる及び/又は出ていく空気のパラメータを分析し調整された空気を相応して適応させるために、コントローラが設けられてもよい。
【0029】
要約すると、本発明によれば、均質な最適な成長気候を大量の昆虫の幼虫に効率的に提供することが可能である。従来のファンを使用する空気循環のアップスケールは、部屋の中のある密度のクレートまでのみ実現可能である。従来のファンによって空気を循環させる代わりに、各個々のクレートの上の空気流を直接方向付け、空気を慎重に調整することによって、基材から空気へのエネルギー転送が最適化され、昆虫の幼虫の高密度の飼育が実現可能である。更に、システムは、熱及び水分の蓄積を防止するために、部屋から空気を抽出する。したがって、使用されるエネルギーの量を低減しながら、昆虫の幼虫の均一かつ健全な成長が可能である。動物のうちの一部が病気である場合、各クレートへの及び各クレートからの個々の空気流が存在するので、単一のクレートのみが、クレートの残りに影響を及ぼすことなく抽出され得る。空気入口ダクトをベロー又は靴下様のものとして設計することによって、各クレートを通る均等かつ均質な空気流が確保される。クレートはまた、流体を使用して調整されてもよい。例えば、各個々のクレートに接続されている水路が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 クレート
11 切り欠き部
2 空気入口ダクト
21 ノズル
22 新鮮な空気流
3 空気出口ダクト
31 排出開口部
32 排出ダクト
33 排出空気流

図1
図2
図3
図4
図5
図6