(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 1/14 20150101AFI20230626BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230626BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230626BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230626BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20230626BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230626BHJP
H10K 50/85 20230101ALI20230626BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230626BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
G02B1/14
H05B33/02
H05B33/14 A
H10K50/00
H10K50/10
H10K59/00
H10K59/10
H10K50/85
G02F1/1335
G09F9/00 302
(21)【出願番号】P 2023509460
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015704
(87)【国際公開番号】W WO2022210792
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2021058832
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 慎
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正英
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-157592(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065878(WO,A1)
【文献】特開2017-177667(JP,A)
【文献】特開2019-34422(JP,A)
【文献】特開2020-157693(JP,A)
【文献】特開2019-136880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10- 1/18
B32B 1/00-43/00
H05B33/02
H10K50/00-99/00
G02F 1/1335
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの両面にそれぞれ、電離放射線硬化型樹脂組成物を含有するハードコート層を設けたハードコートフィルムであって、下記条件(I)、(II)及び(III)を満た
し、
前記電離放射線硬化型樹脂組成物が、さらに下記条件(VI)を満たし、
前記基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムである
ことを特徴とするハードコートフィルム。
条件(I):前記電離放射線硬化型樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を含むアクリル系樹脂を含有する。
条件(II):前記電離放射線硬化型樹脂組成物は、無機微粒子又は有機微粒子を含有する。
条件(III):ピーク面積比1((A/B)×100)が40%以上。
(但し、未硬化の前記電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定で、1000~1120cm
-1に現れるピーク面積をAとし、1650~1800cm
-1に現れるピーク面積をBとする。)
条件(VI):ピーク面積比4((E/B’)×100)が20%以下。
(但し、硬化後の前記電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定で、1370~1435cm
-1
に現れるピーク面積をEとし、1650~1800cm
-1
に現れるピーク面積をB’とする。)
【請求項2】
前記電離放射線硬化型樹脂組成物が、さらに下記条件(IV)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
条件(IV):ピーク面積比2((C/B)×100)が5%以上。
(但し、未硬化の前記電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定で、3250~3500cm
-1に現れるピーク面積をCとし、1650~1800cm
-1に現れるピーク面積をBとする。)
【請求項3】
前記電離放射線硬化型樹脂組成物が、さらに下記条件(V)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
条件(V):ピーク面積比3((D/B)×100)が30%以下。
(但し、未硬化の前記電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定で、1500~1580cm
-1に現れるピーク面積をDとし、1650~1800cm
-1に現れるピーク面積をBとする。)
【請求項4】
前記無機微粒子又は有機微粒子の含有量は、前記電離放射線硬化型樹脂組成物の固形分に対して、1質量%~60質量%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムの一方の面のハードコート層Aの膜厚をD
A、他方の面のハードコート層Bの膜厚をD
Bとしたとき、ハードコート層A、Bの膜厚D
A、D
Bは、いずれも0.5μm~12.0μmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
前記基材フィルムの一方の面のハードコート層Aの膜厚をD
A
、他方の面のハードコート層Bの膜厚をD
B
としたとき、前記ハードコート層Aと前記ハードコート層Bの膜厚比((D
A/D
B)×100)が50%~150%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関し、更に詳しくは、液晶表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置等のフラットパネルディスプレイ、タッチパネル等の部材や、キャリアフィルム、フレキシブル基板等のベースフィルム等として使用することができるハードコート層を設けたハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)等のフラットパネルディスプレイの表示面には、取り扱い時に傷が付いて視認性が低下しないように耐擦傷性を付与することが要求される。そのため、基材フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムを利用して耐擦傷性を付与することが一般的に行われている。近年、表示画面上で表示を見ながら指やペン等でタッチすることでデータや指示を入力できるタッチパネルの普及により、光学的視認性の維持と耐擦傷性を有するハードコートフィルムに対する機能的要求は高まっている。
また、キャリアフィルム、フレキシブル基板等のベースフィルムでは、近年、ニーズが複雑化してきており、新しいエレクトロニクスを実現する材料や技術が求められている。熱による耐熱性(寸法安定性)やフィルム上に形成する積層膜との密着性に優れるフィルムの要求は高まっている。そこで各種基材フィルムにハードコート層(機能層)を設けて、基材フィルム単体では得られない性能を付与し、更なる高性能化の要求に応えられる高機能フィルムが求められる。
【0003】
そのため、基材フィルムとして透明性、耐熱性、寸法安定性、低吸湿性に優れるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンやさらに寸法安定性に優れるポリイミド、液晶ポリマーは光学部材や電子部材用途への利用が期待されている。このような基材フィルム上にさらにハード性を付与する為のハードコート層を設けたハードコートフィルムは、近年の用途の多様化に伴い、基材フィルムとハードコート層との密着性に優れていることは勿論のこと、さらに光学特性や耐熱性、積層膜との密着性にも優れていることが要求されている。
【0004】
従来、たとえば特に光学特性に優れているシクロオレフィンフィルム等の基材フィルムにハードコート層との易接着性を付与する方法が特許文献1、特許文献2等に開示されている。特許文献1では、基材フィルム表面に対してコロナ処理、プラズマ処理、UV処理等を行う方法が開示されており、特許文献2では、基材フィルム上にアンカーコート剤を塗設(アンカーコート処理)することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-147304号公報
【文献】特開2006-110875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなハードコート層との易接着性を付与するための基材フィルムの表面処理や、アンカーコート処理を行わずとも、基材フィルムとハードコート層との密着性を改善できることが望まれている。
【0007】
また、最近では、ハードコートフィルムの用途によっては、高い耐熱性を要求されている。すなわち、熱処理後のハードコートフィルムにおいて、外観の劣化、形状変化や、光学特性(例えば、ヘイズなど)の変化等が発生しないことが要求されている。
【0008】
そこで、本発明は、高い耐熱性を有しながら、光学特性や、ハード性(耐擦傷性、鉛筆硬度など)、ハードコート層の密着性にも優れるハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ハードコート層に含有される樹脂組成物の赤外分光スペクトルにおける特徴(ピーク面積比)に着目し、この赤外分光スペクトル上の特徴が、特にハードコートフィルムの耐熱性や、ハードコート層の密着性の向上などに寄与することを見出した。そして、この赤外分光スペクトル上の特徴を備えるハードコート層とすることで、耐熱性に優れ、さらに光学特性や、ハード性(耐擦傷性、鉛筆硬度など)、ハードコート層の密着性にも優れるハードコートフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
(第1の発明)
基材フィルムの両面にそれぞれ、電離放射線硬化型樹脂組成物を含有するハードコート層を設けたハードコートフィルムであって、下記条件(I)、(II)及び(III)を満たすことを特徴とするハードコートフィルム。
条件(I):前記電離放射線硬化型樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を含むアクリル系樹脂を含有する。
条件(II):前記電離放射線硬化型樹脂組成物は、無機微粒子又は有機微粒子を含有する。
条件(III):ピーク面積比1((A/B)×100)が40%以上。
(但し、未硬化の前記電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定で、1000~1120cm-1に現れるピーク面積をAとし、1650~1800cm-1に現れるピーク面積をBとする。)
【0011】
(第2の発明)
前記電離放射線硬化型樹脂組成物が、さらに下記条件(IV)を満たすことを特徴とする第1の発明に記載のハードコートフィルム。
条件(IV):ピーク面積比2((C/B)×100)が5%以上。
(但し、未硬化の前記電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定で、3250~3500cm-1に現れるピーク面積をCとし、1650~1800cm-1に現れるピーク面積をBとする。)
【0012】
(第3の発明)
前記電離放射線硬化型樹脂組成物が、さらに下記条件(V)を満たすことを特徴とする第1又は第2の発明に記載のハードコートフィルム。
条件(V):ピーク面積比3((D/B)×100)が30%以下。
(但し、未硬化の前記電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定で、1500~1580cm-1に現れるピーク面積をDとし、1650~1800cm-1に現れるピーク面積をBとする。)
【0013】
(第4の発明)
前記電離放射線硬化型樹脂組成物が、さらに下記条件(VI)を満たすことを特徴とする第1乃至第3の発明のいずれかに記載のハードコートフィルム。
条件(VI):ピーク面積比4((E/B’)×100)が20%以下。
(但し、硬化後の前記電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定で、1370~1435cm-1に現れるピーク面積をEとし、1650~1800cm-1に現れるピーク面積をB’とする。)
【0014】
(第5の発明)
前記無機微粒子又は有機微粒子の含有量は、前記電離放射線硬化型樹脂組成物の固形分に対して、1質量%~60質量%の範囲であることを特徴とする第1乃至第4の発明のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0015】
(第6の発明)
前記基材フィルムの一方の面のハードコート層Aの膜厚をDA、他方の面のハードコート層Bの膜厚をDBとしたとき、ハードコート層A、Bの膜厚DA、DBは、いずれも0.5μm~12.0μmの範囲であることを特徴とする第1乃至第5の発明のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0016】
(第7の発明)
前記ハードコート層Aと前記ハードコート層Bの膜厚比((DA/DB)×100)が50%~150%の範囲であることを特徴とする第1乃至第6の発明のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0017】
(第8の発明)
前記基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィン、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、トリアセチルセルロース、液晶ポリマーから選ばれるいずれかであることを特徴とする第1乃至第7の発明のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高い耐熱性を有しながら、光学特性や、ハード性(耐擦傷性、鉛筆硬度など)、ハードコート層の密着性にも優れるハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「○○~△△」とは、特に断りのない限り、「○○以上△△以下」を意味するものとする。
【0020】
本発明は、上記第1の発明にあるとおり、基材フィルムの両面にそれぞれ、電離放射線硬化型樹脂組成物を含有するハードコート層を設けたハードコートフィルムであって、下記条件(I)、(II)及び(III)を満たすことを特徴とするハードコートフィルムである。
条件(I):前記電離放射線硬化型樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を含むアクリル系樹脂を含有する。
条件(II):前記電離放射線硬化型樹脂組成物は、無機微粒子又は有機微粒子を含有する。
条件(III):ピーク面積比1((A/B)×100)が40%以上。
(但し、未硬化の前記電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定で、1000~1120cm-1に現れるピーク面積をAとし、1650~1800cm-1に現れるピーク面積をBとする。)
かかる本発明のハードコートフィルムの構成を以下に詳しく説明する。
【0021】
[基材フィルム]
まず、本発明のハードコートフィルムの上記基材フィルムについて説明する。
本発明において、ハードコートフィルムの基材フィルムは特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニルのフィルムないしシート等を挙げることができる。その中でも耐熱性、寸法安定性などに優れるポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィン、ポリエチレンナフタレート、及びポリイミド、トリアセチルセルロース、液晶ポリマーを用いることが好ましく、中でも安価で入手性の高いポリエチレンテレフタレートや光学特性や低吸湿性に優れるシクロオレフィンは、更に好ましい。
【0022】
また、本発明において、上記基材フィルムの厚さは、ハードコートフィルムが使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性等の観点から、10μm~300μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは20μm~200μmの範囲である。
【0023】
本発明において、上記基材フィルムは、ハードコートフィルム用途に用いる場合には、紫外線による塗膜の劣化、密着不良を防止する目的で、基材フィルムを構成する樹脂と紫外線吸収剤を混練した樹脂をフィルム状に製膜、或いは基材フィルムの片面或いは両面に熱可塑性或いは熱硬化性樹脂と紫外線吸収剤とを混合した塗料を塗設したフィルムを使用してもよい。
【0024】
[ハードコート層]
次に、上記ハードコート層について説明する。
本発明において、上記ハードコート層は、電離放射線硬化型樹脂組成物を含有する。上記ハードコート層は、この電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化塗膜で形成されている。
上記ハードコート層に含有される樹脂としては、特にハードコート層の表面硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)を付与し、また、紫外線の露光量によって架橋度合を調節することが可能であり、ハードコート層の表面硬度の調節が可能になるという点で、電離放射線硬化型樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0025】
本発明では、上記電離放射線硬化型樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基を含むアクリル系樹脂を含有する(上記条件(I))。
本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂組成物は、紫外線(以下、「UV」と略記する。)や電子線(以下、「EB」と略記する。)を照射することによって硬化する透明な樹脂であり、(メタ)アクリロイル基を含むアクリル系樹脂を含むものであることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を含むウレタンアクリレート樹脂であることが更に好ましい。
【0026】
前にも説明したように、本発明者らは、ハードコート層に含有される樹脂組成物の赤外分光スペクトルにおける特徴(ピーク面積比)に着目し、この赤外分光スペクトル上の特徴が、特にハードコートフィルムの耐熱性や、ハードコート層の密着性の向上などに寄与することを見出した。
【0027】
すなわち、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂組成物は、未硬化の状態の電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定において、1000~1120cm-1に現れるピーク面積(ピーク範囲の面積)をAとし、1650~1800cm-1に現れるピーク面積(ピーク範囲の面積)をBとした時に、ピーク面積比1((A/B)×100)が40%以上を満たすことが重要である(上記条件(III))。ピーク面積比1は、50%~400%であることが好ましい。
【0028】
本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂組成物は、さらに無機微粒子又は有機微粒子を含有する(上記条件(II))。
この場合、未硬化の上記電離線放射線硬化型樹脂において、赤外分光スペクトルの1000~1120cm-1に現れるピークは、上記無機微粒子である例えばナノシリカや、上記有機微粒子である例えばシリコーン樹脂由来のケイ素-酸素結合を表すと推測される。また、赤外分光スペクトルの1650~1800cm-1に現れるピークは、(メタ)アクリロイル基由来の炭素‐酸素伸縮振動のピークを表す。
【0029】
つまり(メタ)アクリロイル基の存在割合に対し、一定割合以上の1000~1120cm-1に現れるピークを有することは、結合エネルギーが高く熱安定性に優れたケイ素-酸素結合をハードコート層中に多く含むことと同義であることから、ハードコート層の耐熱性向上に寄与すると推測される。これにより、ハードコートフィルムの耐熱性を向上させることができると考えられる。
【0030】
上記のとおり、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂組成物には、さらに無機微粒子又は有機微粒子を含有する。この無機微粒子又は有機微粒子を含有させることにより、ハードコート層の表面硬度(耐擦傷性)や表面平滑性の向上を図ることが可能である。さらには、上述したように、ハードコートフィルムの耐熱性の向上にも寄与する。
【0031】
この場合、無機微粒子又は有機微粒子の平均粒子径は1~150nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは平均粒子径10~100nmの範囲である。平均粒子径が1nm未満であると、十分な表面硬度を得ることが困難である。一方、平均粒子径が150nmを超えると、ハードコート層の光沢、透明性が低下し、可撓性も低下するおそれがある。
【0032】
上記無機微粒子としては、例えばシリカやアルミナなどを好ましく挙げることができる。また、上記有機微粒子としては、例えばシリコーン樹脂などを好ましく挙げることができる。
本発明においては、結合エネルギーが非常に高く、熱安定性に優れる無機微粒子のシリカを含有することが特に好適である。
【0033】
本発明において、上記無機微粒子又は有機微粒子の含有量は、電離放射線硬化型樹脂組成物の固形分に対して、1~60質量%の範囲であることが好ましく、特に15~50質量%の範囲であることが好ましい。含有量が1質量%未満であると、表面硬度(耐擦傷性)の向上効果や、耐熱性の向上効果が得られ難い。一方、含有量が60質量%を超えると、可撓性の低下やヘイズが上昇するため好ましくない。
【0034】
また、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂組成物は、さらに下記条件(IV)を満たすことが好ましい。
すなわち、未硬化の状態の電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定において、3250~3500cm-1に現れるピーク面積(ピーク範囲の面積)をCとし、1650~1800cm-1に現れるピーク面積(ピーク範囲の面積)をBとした時に、ピーク面積比2((C/B)×100)が5%以上を満たすことが好ましい(条件(IV))。ピーク面積比2は、5%~400%であることが好ましい。
【0035】
未硬化の上記電離線放射線硬化型樹脂組成物において、赤外分光スペクトルの1650~1800cm-1に現れるピークは、(メタ)アクリロイル基由来の炭素‐酸素伸縮振動のピークを表す。また、赤外分光スペクトルの3250~3500cm-1に現れるピークは、アミド基由来の窒素-水素結合、又はヒドロキシル基由来の酸素-水素結合を表すと推測される。
【0036】
つまり(メタ)アクリロイル基の存在割合に対し、一定割合以上の3250~3500cm-1に現れるピークを有することで、(メタ)アクリロイル基による基材に対するハードコート層の密着力と、ハードコート層が層内で硬化収縮することにより基材フィルムとの界面と別方向に力が掛かり剥がれる剥離力とのバランスが保たれるため、極性基の少ないシクロオレフィンフィルムを含む各種基材フィルムに対し、アンカー層や基材フィルムの改質を必要とせずに、基材フィルムに対するハードコート層の密着性を向上させることができると推測される。
【0037】
また、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂組成物は、さらに下記条件(V)を満たすことが好ましい。
すなわち、未硬化の状態の電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定において、1500~1580cm-1に現れるピーク面積(ピーク範囲の面積)をDとし、1650~1800cm-1に現れるピーク面積(ピーク範囲の面積)をBとした時に、ピーク面積比3((D/B)×100)が30%以下を満たすことが好ましい(条件(V))。ピーク面積比3は、0.5%~10%であることが特に好ましい。
【0038】
未硬化の上記電離線放射線硬化型樹脂組成物において、赤外分光スペクトルの1500~1580cm-1に現れるピークは、アミド基由来の窒素-水素結合、フェニル環由来の炭素-水素結合、又はアゾ基由来の窒素-窒素二重結合を表すと推測される。また、上記のとおり、赤外分光スペクトルの1650~1800cm-1に現れるピークは、(メタ)アクリロイル基由来の炭素‐酸素伸縮振動のピークを表す。
【0039】
つまり、(メタ)アクリロイル基の存在割合に対し、一定割合以下の1500~1580cm-1に現れるピークを有することで、基材フィルムに対するハードコート層のハード性をさらに向上させることができると推測される。
【0040】
また、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂組成物は、さらに下記条件(VI)を満たすことが好ましい。
すなわち、硬化後の状態の電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定で、1370~1435cm-1に現れるピーク面積(ピーク範囲の面積)をEとし、1650~1800cm-1に現れるピーク面積(ピーク範囲の面積)をB’とした時に、ピーク面積比4((E/B’)×100)が20%以下を満たすことが好ましい(条件(VI))。ピーク面積比4は、0.5%~10%であることが特に好ましい。
【0041】
赤外分光スペクトルの1370~1435cm-1に現れるピークは、(メタ)アクリロイル基由来の炭素‐炭素二重結合を表す。また、赤外分光スペクトルの1650~1800cm-1に現れるピークは、(メタ)アクリロイル基由来の炭素‐酸素伸縮振動のピークを表す。よって、硬化後の電離放射線硬化型樹脂組成物の赤外分光スペクトル測定による上記ピーク面積比4は、(メタ)アクリロイル基に対するカルボニル基の存在比を表し、ハードコート層の硬化の進行度合いを示すものである。つまり、このピーク面積比4の数値が大きいほど、未反応の(メタ)アクリロイル基が残存していることを表し、ハードコート層中に未硬化成分が増加することから、結果としてハードコート層の剛性が低下し、基材フィルムの熱変形を抑制する力が低下すると推測される。本発明では、ピーク面積比4が20%以下であることにより、ハードコート層の剛性の低下や、基材フィルムの熱変形の抑制力の低下を抑えることができ、ハードコートフィルムの耐熱性向上にも寄与する。
【0042】
また、上記電離放射線硬化型樹脂組成物には、上述の(メタ)アクリロイル基を含むアクリル系樹脂の他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、スチレン-アクリル、繊維素等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ、ケイ素樹脂等の熱硬化性樹脂を、本発明の効果や、ハードコート層の硬度、耐擦傷性を損なわない範囲内で配合してもよい。
【0043】
また、上記電離放射線硬化型樹脂組成物の光重合開始剤としては、市販のOmnirad 651やOmnirad 184(いずれも商品名:IMG社製)などのアセトフェノン類、また、Omnirad 500(商品名:IMG社製)などのベンゾフェノン類を使用でき特に制限されるものではない。
【0044】
[ハードコートフィルム]
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの両面にそれぞれ上述の条件を満たす電離放射線硬化型樹脂組成物を用いてハードコート層を形成したハードコートフィルムである。
【0045】
上記ハードコート層には、塗工性の改善を目的にレベリング剤の使用が可能であり、たとえばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、ハードコート層の樹脂の固形分100質量部に対し0.01質量部~7質量部の範囲での配合が可能である。また、タッチパネル用途等において、タッチパネル端末のカバーガラス(CG)、透明導電部材(TSP)、液晶モジュール(LCM)等との接着を目的に光学透明樹脂OCRを用いた対接着性が要求される場合には、表面自由エネルギーの高い(凡そ40mJ/cm2以上)アクリル系レベリング剤やフッ素系のレベリング剤の使用が好ましい。
【0046】
上記ハードコート層に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、消泡剤、表面張力調整剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
【0047】
上記ハードコート層は、上述の電離放射線硬化型樹脂組成物、光重合開始剤、その他の添加剤等を適当な溶媒に溶解、分散した塗料を上記基材フィルム上に塗工、乾燥して形成される。溶媒としては、配合される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、光重合開始剤、その他添加剤)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n-ヘプタンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶剤を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することもできる。
【0048】
上記ハードコート層の塗工方法については、特に限定はないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スピン塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設した後、通常50~120℃程度の温度で乾燥する。
【0049】
本発明においては、上記の電離放射線硬化型樹脂組成物等を含有するハードコート層用塗料を基材フィルムに塗工、乾燥後に、電離放射線(UVまたはEB等)を照射することにより、光重合が起こりハード性に優れる硬化塗膜(ハードコート層)を得ることができる。特に、JIS K5600-5-4に規定される鉛筆硬度が3B~3Hを有するハードコート層であることが好ましい。乾燥後の塗工膜に対する電離放射線(UV、EB等)の照射量は、ハードコート層に十分なハード性を持たせるに必要な照射量であればよく、電離放射線硬化型樹脂の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0050】
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの両面にそれぞれハードコート層を設けたハードコートフィルムである。
上記ハードコート層の膜厚は、特に制約されるわけではないが、上記基材フィルムの一方の面のハードコート層Aの膜厚をDA、他方の面のハードコート層Bの膜厚をDBとしたとき、ハードコート層A、Bの膜厚DA、DBは、いずれも0.5μm~12.0μmの範囲にあることが好ましく、特に1.0μm~9.0μmの範囲にあることが好ましい。膜厚が0.5μm未満では、ハードコート層に関して十分な剛性が得られず、基材フィルムの熱変形をハードコート層により抑制することが困難となる。また、膜厚が12.0μmを超える場合は、ハードコート層の剛性が顕著に向上し、ハードコート層の屈曲性や耐クラック性が著しく低下するため好ましくない。両者のバランスを保つうえで、膜厚が5.0μm~7.0μmの範囲にあることがより好適である。
【0051】
また、上記ハードコート層Aと上記ハードコート層Bの膜厚比((DA/DB)×100)は、50%~150%の範囲にあることが好ましく、80%~120%の範囲にあることが特に好ましい。ハードコート層Aとハードコート層Bの膜厚比が上記比率であることで、硬化収縮に伴うハードコート層A、Bのカールが相殺されるので好ましい。
【0052】
以上詳細に説明したように、本発明は、基材フィルムの両面にそれぞれ、電離放射線硬化型樹脂組成物を含有するハードコート層を設けたハードコートフィルムであって、前述の条件(I)、(II)及び(III)を満たすハードコートフィルムであり、本発明によれば、高い耐熱性を有しながら、光学特性や、ハード性(耐擦傷性、鉛筆硬度など)、ハードコート層の密着性にも優れるハードコートフィルムを提供することができる。
また、本発明のハードコートフィルムは、前述の条件(IV)及び/又は(V) 及び/又は(VI)を満たすものであることがさらに好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。併せて、比較例についても説明する。
なお、特に断りのない限り、以下に記載する「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0054】
(実施例1)
[ハードコート層形成用樹脂組成物(ハードコート層用塗料)1の調製]
電離放射線硬化型樹脂組成物(ウレタンアクリレートとアクリルエステルを合計で23%、非晶性シリカを15%、光重合開始剤を2%含有し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを35%、メチルエチルケトンを15%、トルエンを10%含有。)に、対固形分比0.1%となるようフッ素系レベリング剤を添加したものを主剤とし、希釈剤(1-プロパノールを70%、ジアセトンアルコールを30%で混合した希釈剤)で固形分濃度25%に調整した。
以上のようにして、本実施例に用いるハードコート層形成用樹脂組成物1を調製した。
【0055】
[ハードコートフィルムの作製]
基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートを主成分とする基材フィルム(商品名「コスモシャインA4360」、厚み125μm、東洋紡株式会社製)を使用し、この基材フィルムの両面にそれぞれ、上記のハードコート層形成用樹脂組成物1を、バーコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ、塗膜厚み3.0μm(片面)の塗工層を形成した。なお、塗膜厚みは両面とも同じにした。塗膜厚みは、Thin-Film Analyzer F20(商品名)(FILMETRICS社製)を用いて測定した。
これを、塗工面より60mmの高さにセットされたUV照射装置を用い、UV照射量157mJ/cm2にて硬化させて、基材フィルムの両面にそれぞれハードコート層を形成し、実施例1のハードコートフィルムを得た。
【0056】
(実施例2)
実施例1における塗膜厚み(片面)を6.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のハードコートフィルムを作製した。
【0057】
(比較例1)
電離放射線硬化型樹脂組成物(ポリエステルアクリレート系紫外線硬化型樹脂「M7300K」(固形分100%、東亜合成株式会社製)を95%、光重合開始剤を5%含有。)に、対固形分比0.1%となるようフッ素系レベリング剤を添加したものを主剤とし、希釈剤(1-プロパノールを40%、酢酸プロピルを60%で混合した希釈剤)で固形分濃度45%に調整した。
以上のようにして、ハードコート層形成用樹脂組成物2を調製した。
上記のハードコート層形成用樹脂組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のハードコートフィルムを作製した。
【0058】
(参考例)
参考例として、上記実施例、比較例に用いたポリエチレンテレフタレートを主成分とする基材フィルム(商品名「コスモシャインA4360」、厚み125μm、東洋紡株式会社製)についても以下の評価を行った。
【0059】
<評価方法>
得られた上記各実施例および各比較例のハードコートフィルム、並びに参考例の基材フィルムを下記の方法および基準で評価した。その結果を纏めて表1および表2に示した。
【0060】
(1)電離放射線硬化型樹脂組成物のピーク面積およびピーク面積比
赤外分光光度計を用いて未硬化の状態の電離放射線硬化型樹脂組成物(上記ハードコート層に用いた樹脂)に対するATR法により、赤外分光スペクトル(赤外吸収スペクトル)を測定した。赤外分光光度計はFT-IR Spectrometer Spectrum 100 (パーキンエルマージャパン社製)を使用した。
【0061】
測定方法としては、上記のハードコート層形成用樹脂組成物を塗工した基材フィルムを80℃の乾燥炉で3時間乾燥させた後、温度23℃/湿度50%環境下で、赤外分光光度計の測定部位(センサー部)に塗工面を接触させ、赤外分光スペクトルを測定した。
【0062】
得られた横軸を波数(cm-1)とし、縦軸を吸光度としたスペクトルチャート上において、1000~1120cm-1、1650~1800cm-1、3250~3500cm-1、1500~1580cm-1にそれぞれベースラインを引き、このベースラインとスペクトル曲線とで囲まれる面積をそれぞれピーク面積A、B、C及びDとし、その比((A/B)×100)、((C/B)×100)及び((D/B)×100)をそれぞれピーク面積比1、2、3とした。
【0063】
また、上記赤外分光光度計を用いてハードコートフィルムのハードコート層表面(硬化後の電離放射線硬化型樹脂組成物)に対するATR法により、赤外分光スペクトル(赤外吸収スペクトル)を測定した。測定方法としては、温度23℃/湿度30%環境下で、赤外分光光度計の測定部位(センサー部)にハードコート層表面を接触させ、赤外分光スペクトルを測定した。
【0064】
得られた横軸を波数(cm-1)とし、縦軸を吸光度としたスペクトルチャート上において、1370~1435cm-1、1650~1800cm-1にそれぞれベースラインを引き、このベースラインとスペクトル曲線とで囲まれる面積をそれぞれピーク面積E、B’とし、その比((E/B’)×100)をピーク面積比4とした。
以上の結果は纏めて表1に示した。
【0065】
(2)光学特性(透過率、ヘイズ(Haze))
JIS-K-7361-1及びJIS-K-7136に準じて、ヘイズメーターHM150(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
【0066】
(3)耐擦傷性
各ハードコートフィルムについて、JIS-K-5600-5-10に準じた試験法にて、ハードコート層面(参考例の場合は基材フィルム面)を、スチールウール#0000を用い、荷重250g/cm2を掛け10往復摩擦し、傷のつき具合を次の基準で評価した。○評価品を耐擦傷性は良好(合格)とした。
○:傷の発生なし
△:傷が少し発生する(1~9本)
×:傷が無数に発生する(10本以上)
【0067】
(4)鉛筆硬度
各ハードコートフィルムについて、JIS-K-5600-5-4に準じた試験法により鉛筆硬度を測定した。表面に傷の発生なき硬度を測定し、表1中に表記した。
【0068】
(5)密着性
密着性は、JIS-K5600-5-6に準じて碁盤目剥離試験により評価した。具体的には、各ハードコートフィルムについて、通常条件下(23℃、50%RH)で、碁盤目剥離試験治具を用い1mm2のクロスカットを100個作製し、積水化学工業株式会社製の粘着テープNo.252をその上に貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付け後、60度方向に剥離し、同じ箇所で5回、圧着・剥離を行った後に、ハードコート層の残存個数を3段階評価した。評価基準は下記の通りである。
○:100個(剥がれなし)
△:99~90個(軽微な剥がれあり)
×:89~0個(剥がれあり)
【0069】
以上の光学特性、耐擦傷性、鉛筆硬度、密着性に関する評価結果は纏めて表1に示した。
【0070】
(6)耐熱性
各ハードコートフィルムの一方のハードコート層A面を上にしてステンレス板の上に設置し(参考例の場合は基材フィルムをステンレス板上に設置)、定温乾燥器DY300(ヤマト科学株式会社製)の乾燥炉で一定時間熱処理した後、熱処理後のフィルムの外観、変形、Δヘイズ(ΔHaze)をそれぞれ評価した。なお、熱処理は、150℃30分、200℃30分、240℃10分の3通りで行った。
【0071】
[外観評価]
熱処理前後での各フィルムの外観、見栄え(フィルム表面の白化度合、基材フィルム内部からのオリゴマー成分の析出度合など)を目視にて比較評価した。評価基準は下記の通りである。
○:変化なし △:軽微な変化あり ×:変化あり
【0072】
[変形評価]
熱処理後の各フィルムに発生した形状変化(フィルムの湾曲(変形)、ハードコート層のクラック(割れ)など)を目視にて評価した。評価基準は下記の通りである。
○:発生なし △:軽微な発生あり ×:発生あり
【0073】
[Δヘイズ(ΔHaze)]
熱処理後の各フィルムのヘイズ(Haze)から、熱処理前(未処理)の各フィルムのヘイズ(Haze)を差し引いた値をΔヘイズ(ΔHaze)と定義した。なお、ヘイズ(Haze)は、上記のとおり、JIS-K-7136に準じて、ヘイズメーターHM150(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
以上の耐熱性に関する評価結果は纏めて表2に示した。
【0074】
【0075】
【0076】
表1及び表2の結果から明らかなように、本発明の条件(I)、(II)及び(III)を満たしている本発明実施例によれば、高い耐熱性を有しながら、光学特性や、ハード性(耐擦傷性、鉛筆硬度など)、ハードコート層の密着性にも優れるハードコートフィルムを提供することができる。
他方、本発明の条件(I)、(II)及び(III)のいずれかを満たしていない比較例では、耐熱性、光学特性、ハード性(耐擦傷性、鉛筆硬度など)、ハードコート層の密着性のすべてを満足するハードコートフィルムは得られない。比較例では、特に耐熱性が不十分である。