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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】塗工ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
B05C5/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019070354
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020168592
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷野 聖
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-008504(JP,A)
【文献】特開2004-008989(JP,A)
【文献】特開2003-275652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00- 5/04
7/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのリップ部材が互いに直接又は他の部材を介して組み付けられた塗工ヘッドであって、
前記2つのリップ部材の間に、塗工液を前記塗工ヘッドの長手方向に拡幅するためのマニホールド、塗工液を塗工ヘッドから吐出するための塗工ヘッドの長手方向に延在する吐出口、およびマニホールドと吐出口とを連通するスリット、を有し、
前記2つのリップ部材のそれぞれには、ビッカース硬さ800Hv以上の材料で形成された流路形成部材が、互いに対向するように、着脱可能に取り付けられており、
前記2つのリップ部材の少なくとも一方のリップ部材に取り付けられた前記流路形成部材には、もう一方のリップ部材に取り付けられた前記流路形成部材とともに、前記マニホールドを構成する凹みが形成されており、
前記2つの流路形成部材の間には、前記マニホールドの部分から前記塗工ヘッドの外部に至る間隙があいており、この間隙が前記スリットおよび前記吐出口を構成している、
塗工ヘッド。
【請求項2】
2つのリップ部材が互いに直接又は他の部材を介して組み付けられた塗工ヘッドであって、
前記2つのリップ部材の間に、塗工液を前記塗工ヘッドの長手方向に拡幅するためのマニホールド、塗工液を塗工ヘッドから吐出するための塗工ヘッドの長手方向に延在する吐出口、およびマニホールドと吐出口とを連通するスリット、を有し、
前記2つのリップ部材のそれぞれには、炭化タングステンまたはDLCで表面処理された流路形成部材が、互いに対向するように、着脱可能に取り付けられており、
前記2つのリップ部材の少なくとも一方のリップ部材に取り付けられた前記流路形成部材には、もう一方のリップ部材に取り付けられた前記流路形成部材とともに、前記マニホールドを構成する凹みが形成されており、
前記2つの流路形成部材の間には、前記マニホールドの部分から前記塗工ヘッドの外部に至る間隙があいており、この間隙が前記スリットおよび前記吐出口を構成している、
塗工ヘッド。
【請求項3】
前記対向する流路形成部材の対向する方向を厚み方向として、前記リップ部材とリップ部材に取り付けられた前記流路形成部材との間に、リップ部材に対する流路形成部材の厚み方向の取り付け位置を調整するためのステンレス鋼で形成された寸法調整部材を有する、請求項1または2の塗工ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、紙、ガラス基板、および金属箔等の被塗工部材に塗工液を塗工するための塗工ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムやガラス基板といった被塗工部材に塗工液を塗工するための塗工ヘッドとして、スリットダイが知られている。近年、スリットダイは多くの分野への適用が進み、多様な塗工液の塗工に用いられるようになってきている。
【0003】
スリットダイは、2つのリップ部材を対向させて設置する構成であり、そのリップ部材間には、供給された塗工液を長手方向に拡幅するためのマニホールド、塗工液を吐出するための長手方向に延在する吐出口、およびマニホールドと吐出口を連通するスリットが形成されている。このスリットダイの吐出口を被塗工部材に近接させて相対移動させるとともに、塗工液を吐出することで被塗工部材表面に均一な塗膜を形成することができる。
【0004】
スリットダイの塗工精度は、送液される塗工液の送液精度やスリットダイ自体の加工精度によって決まるため、作業者の熟練度に左右されず安定した塗工品位を実現できる。
【0005】
しかし、塗工液の組成によってはガラスやセラミック粒子などに代表される高硬度の粒子やフィラーが含有しているために、一般的なスリットダイの材料として適用されているステンレス鋼では、経時的に摩耗してしまって塗工品位が悪くなるという問題がある。そのため、長期に渡っての安定生産を実現するためには、いかに納入時の高精度な加工状態を維持していくかが極めて重要となっている。
【0006】
この摩耗問題に対して、スリットダイの材質に超硬合金やセラミック等の高硬度の材質を適用することが容易に想像できるが、高硬度材料は非常に高価であるために、スリットダイの製作コストが大幅に増大してしまい現実的ではない。そこで特許文献1には、リップ部材の吐出口側だけに、超硬合金からなる先端部材を組み込んで、耐摩耗性を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-224607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、スリットダイの先端部材の硬度が高くなって、吐出口と吐出口近傍のスリット部分は耐摩耗性が向上するものの、マニホールドとマニホールド近傍のスリット部分は摩耗が進行してしまう。すなわち、吐出口近傍のスリットとマニホールド近傍のスリットには、摩耗進行の速度差が生じ、スリット途中に存在する異種材料間の継ぎ目部には必然的に段差が生まれる。このような段差部は塗工液の滞留箇所になるため、塗工液の劣化が促進される。そして、その劣化した塗工液が流出することで外観不良を引き起こして、生産収率を大幅に低下させる重大なトラブルとなる。
【0009】
さらに特許文献1に開示の方法では、例えば低粘度の塗工液を扱う場合、表面張力によって塗工液が異種材料間の継ぎ目部分に浸み込んでしまうため、塗工の途中で劣化した塗工液が少量ずつ流出して外観不良を発生させてしまうトラブルも発生する恐れがある。
【0010】
そこで本発明は、耐摩耗性を向上させることができ、塗工液の劣化による塗工外観不良を発生させずに安定的な塗工ができる塗工ヘッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の塗工ヘッドは、2つのリップ部材が互いに直接又は他の部材を介して組み付けられた塗工ヘッドであって、
上記2つのリップ部材の間に、塗工液を上記塗工ヘッドの長手方向に拡幅するためのマニホールド、塗工液を塗工ヘッドから吐出するための塗工ヘッドの長手方向に延在する吐出口、およびマニホールドと吐出口とを連通するスリット、を有し、
上記2つのリップ部材のそれぞれには、流路形成部材が、互いに対向するように、着脱可能に取り付けられ、
上記2つのリップ部材の少なくとも一方のリップ部材に取り付けられた上記流路形成部材に、もう一方のリップ部材に取り付けられた前記流路形成部材とともに、上記マニホールドを構成する凹みが形成されており、
上記2つの流路形成部材の間には、上記マニホールドの部分から上記塗工ヘッドの外部に至る間隙があいており、この間隙が上記スリットおよび上記吐出口を構成している。
【0012】
本発明の塗工ヘッドは、上記リップ部材とリップ部材に取り付けられた上記流路形成部材との間に、リップ部材に対する流路形成部材の取り付け位置を調整するための寸法調整部材を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塗工ヘッドを使用すれば、摩耗に起因する塗工外観不良を発生させることなく、塗工液が通過する部位の硬度を上げて摩耗性を向上させることができて、長期的に安定した塗工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の塗工ヘッドの概略構成を示す断面図である。
図2図1の塗工ヘッドのリップ部材1、2を離間させた状態の概略斜視図である。
図3図1のA-A断面矢視図で、塗工ヘッド内部の正面図である。
図4】本発明の別の実施形態である塗工ヘッド200の概略構成を示す断面図である。
図5図4のB-B断面矢視図で、塗工ヘッド内部の正面図である。
図6】本発明の別の実施形態である塗工ヘッド300のリップ部材301、302、およびシム320を離間した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る塗工ヘッドの実施形態について説明する。ただし、本発明は図面に示された形態に限定されるものではない。
【0016】
図1、2を参照する。図1は、本発明の塗工ヘッド100の概略構成を示す断面図である。図2は、本発明の塗工ヘッド100のリップ部材1、2を離間させた状態の概略斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の塗工ヘッド100は、リップ部材1、2が互いに対向して構成されている。リップ部材1にはリップ部材2に対向する面に流路形成部材3が、リップ部材2にはリップ部材1に対向する面に流路形成部材4が、それぞれ着脱できるように取り付けられており、流路形成部材3、4も互いに対向している。リップ部材1、2は、断面と直交する方向、すなわち図2に示すY軸方向に長く延びた形状である。流路形成部材3、4も、それぞれが取り付けられているリップ部材1、2とY軸方向に同じ長さを持つ形状である。
【0018】
流路形成部材3、4にはそれぞれ、図2に示すように、互いに対向する面にY軸方向に延在する凹み5a、凹み5b(図示せず)が形成されている。リップ部材1に取り付けられた流路形成部材3の凹み5aが形成されている面と、リップ部材2に取り付けられた流路形成部材4の凹み5b(図示せず)が形成されている面とが向かい合った状態で、リップ部材1とリップ部材2とを組み合わせることで、図1に示すようにY軸方向に延在するマニホールド5が構成される。
【0019】
図1に示すように、リップ部材1とリップ部材2とが組み合った状態で、流路形成部材3と流路形成部材4との間の、マニホールド5から塗工ヘッド100の外部に至るまでの部分(マニホールド5からZ軸下方向の部分)には間隙があいている。この間隙がスリット6を、間隙の出口部分が吐出口7を構成している。
【0020】
マニホールド5は、図1に示されるような略円形だけに限定されるものではない。流路形成部材3あるいは流路形成部材4のいずれか一方だけに凹み5a(5b)を形成し、他方には凹み5b(5a)を形成せずに略平面のままとして、略半円形のマニホールド5を構成してもよい。また図2に示すようなY軸方向に同じ断面形状をしたストレート型でもよいし、Y軸両方向の端部に向けて断面積が縮小している形状をしたコートハンガー型であってもよい。さらには、マニホールド5は2つ以上あってもよい。
【0021】
スリット6は、X軸方向に狭い隙間量tを有している。隙間量tは、塗工液10の液物性に対応して設計される寸法であり、塗工液10が均一に吐出できる寸法になっている。塗工液10が1~10000mPa・s程度までの粘度領域であれば、一般に隙間量tは50μm~500μmの範囲が好適に用いられる。
【0022】
塗工を行う際は、塗工ヘッド100に供給された塗工液10が、マニホールド5でY軸両方向に拡幅されて、スリット6を通過して、吐出口7からZ軸下方向に吐出される。被塗工部材(図示せず)は、塗工ヘッド100に対して数ミクロン~数百ミクロンに近接した状態を保持してX軸方向に相対移動しており、塗工ヘッド100から吐出された塗工液10が被塗工部材上に塗工される。
【0023】
リップ部材1、2の材質は、比較的安価で耐薬品性に優れたステンレス鋼が好適に用いられる。耐摩耗性を向上させるために、炭化タングステンやDLCに代表される硬質相を形成するための表面処理が施してあってもよい。
【0024】
流路形成部材3、4の材質はステンレス鋼を用いてもよいが、高硬度の粒子やフィラーを含有する塗工液を扱う場合には好ましくない。なぜなら、流路形成部材3、4は、マニホールド5、スリット6および吐出口7を構成するため、塗工液との接触頻度が高く、ステンレス鋼では摩耗が進行してしまうためである。
【0025】
そこで、流路形成部材3、4の材質は硬質な材料を用いるのが好ましい。硬質な材料であればどのようなものでもよいが、好ましくは、ビッカース硬さ800Hv以上、より好ましくは1200Hv以上の高硬度の硬質材料がよい。これら硬質材料を用いることで、塗工液に含有される高硬度の粒子やフィラーによる摩耗を低減することができる。あるいは、硬質材料でなくても、炭化タングステンやDLCに代表される硬質相を形成するための表面処理が施してあってもよい。
【0026】
図3を参照する。図3は、図1のA-A断面矢視図で、塗工ヘッド内部の正面図を示している。
【0027】
リップ部材1には、リップ部材2と密接する非接液面1bがある。リップ部材1に取り付けられている流路形成部材3には、流路形成部材4に密接する非接液面3bと、流路形成部材4とともにスリット6を構成する接液面3aがある。接液面3aと非接液面3bとの間には段差があり、リップ部材1とリップ部材2とが組み合わされて、流路形成部材3と流路形成部材4とが対向することで、X軸方向に隙間量tを持つスリット6が構成される。
【0028】
リップ部材1および流路形成部材3は、非接液面3bと非接液面1bとが略同一面となるように製作される。また図示しないが、リップ部材2および流路形成部材4も、それぞれの非接液面が略同一面となるように製作される。そのため、対向するリップ部材1、2をボルト締結で組み合わせることで、略同一面同士が接触してシールされるため、吐出口7以外からの塗工液10の漏出を防止できる。
【0029】
このように、塗工液10は接液面3aが構成するスリット6のみを流れるので、流路形成部材3が塗工液10との接触で摩耗したとしても、接液面3aだけが摩耗して非接液面3bは摩耗しないため、非接液面3bと非接液面1bとの間には段差は発生せず、塗工ヘッド100のシール性が維持できる。
【0030】
一方、接液面3aは塗工液10との接触により摩耗するので、接液面3aと非接液面3bとの間の段差は大きくなるが、塗工ヘッド100のシール性には影響しない。接触面3aの摩耗により、スリット6のX軸方向の隙間量tは広がることになるが、流路形成部材3を高硬度の材質で製作していれば、摩耗による隙間の変化量△tは初期の隙間量tに対して小さくて済む。摩耗の進行により、隙間の変化量△tの増大が極度に進むと、塗工ヘッド100の吐出均一性が失われてしまうため、隙間の変化量△tは初期の隙間量tに対して、△t≦0.2tに管理されることが好ましい。さらに好ましくは、摩耗の進行に合わせてリップ部材1から流路形成部材3を取り外して、新しい流路形成部材3’を取り付けることで、隙間変化量△tを△t≦0.1tに維持するのがよい。
【0031】
図4、5を参照する。図4は、本発明の別の実施形態である塗工ヘッド200の概略構成を示す断面図である。図5は、図4のB-B断面矢視線で、塗工ヘッド内部の正面図を示している。
【0032】
塗工ヘッド200では、リップ部材201と流路形成部材203との間、リップ部材202と流路形成部材204との間に、X軸方向とZ軸方向における寸法精度をミクロンオーダーで調整できるようにするための寸法調整部材が組み込まれている。X軸方向には厚み調整部材208、209が、Z軸方向には高さ調整部材210、211がそれぞれ組み込まれている。
【0033】
流路形成部材203を取り外して、新しい流路形成部材203’に置き換えた場合、リップ部材201の非接液面201bと流路形成部材203’の非接液面203’bとが略同一面でないと、塗工ヘッド200のシール性が悪化して吐出口207以外から塗工液10が漏出する恐れがある。そのため、流路形成部材203’は置き換え前の流路形成部材203と略同一となるように高精度に製作することが好ましいが、略同一に加工するためにはミクロンオーダーの高精度な加工が必要となり、製作コストが高くなってしまう。
【0034】
あるいはミクロンオーダーの高精度な加工を施した場合でも、流路形成部材203’は剛性が低く加工歪みが生じやすいので、塗工ヘッド200のシール性が悪化する恐れがある。
【0035】
そこで流路形成部材203’を高精度に加工せずとも、非接液面201bと203’bとを略同一面とするには、厚み調整部材208を取り外して、新しい厚み調整部材208’に置き換えることが好ましい。新しい調整部材208’のX軸方向の寸法は流路形成部材203と203’とのX軸方向の厚み差分だけ、厚み調整部材208に対して調整した寸法で、高精度に製作されていることが好ましい。厚み調整部材208(’)は、流路形成部材203(’)と比較して形状が単純であるため、ミクロンオーダーでX軸方向の寸法を管理することが比較的容易となり、製作コストを抑えて非接液面201bと203’bとを略同一面にすることができる。
【0036】
厚み調整部材208’は、非接液面201bと203’bとを略同一面とできれば、どのような形状でも構わない。例えば、Y軸方向に延在する1枚のプレートでもよいし、Y軸方向に点在する複数個のブロックであってもよい。
【0037】
厚み調整部材209(’)もリップ部材202において、厚み調整部材208(’)と同様の効果を発現できれば、どのような形状でも構わない。
【0038】
厚み調整部材208(’)、209(’)の材質は、ミクロンオーダーの加工が可能であればどのような材料を用いても構わないが、より好ましくは加工性と耐薬品性に優れたステンレス鋼である。
【0039】
また、流路形成部材203を流路形成部材203’に、流路形成部材204を流路形成部材204’に入れ替えても、Z軸方向における吐出口207の位置を略同一にするには、高さ調整部材210を新しい高さ調整部材210’に、高さ調整部材211を新しい高さ調整部材211’に置き換えることが好ましい。新しい高さ調整部材210’は、流路形成部材203と流路形成部材203’とのZ軸方向の高さ差分だけ、高さ調整部材210に対して調整した寸法で、新しい高さ調整部材211’は、流路形成部材204と流路形成部材204’とのZ軸方向の高さ差分だけ、高さ調整部材211に対して調整した寸法で、それぞれ高精度に製作されていることが好ましい。高さ調整部材210(’)、211(’)は、流路形成部材203(’)、204(’)と比較して形状が単純であるため、ミクロンオーダーでZ軸方向の寸法を管理することが比較的容易となり、製作コストを抑えて、Z軸方向における吐出口207の位置を略同一にすることができる。吐出口207の位置が略同一となることで、吐出口207と被塗工部材(図示しない)との間の近接した距離が略一定に保たれるため、塗工設備の再調整が最小限にできるので、好ましい。
【0040】
高さ調整部材210(’)、211(’)は、Z軸方向の寸法を高精度に管理できればどのような形状でもよく、例えばY軸方向に延在する1枚のプレートでもよいし、Y軸方向に点在する複数個のブロックであってもよい。
【0041】
高さ調整部材210(’)、211(’)の材質は、ミクロンオーダーの加工が可能であればどのような材料を用いても構わないが、より好ましくは加工性と耐薬品性に優れたステンレス鋼である。
【0042】
図6を参照する。本発明の塗工ヘッドは、上記の実施形態に限定されるものではなく、図6に示すように、リップ部材301とリップ部材302との間にスリット形成用のシム320を挟み込むことで、隙間量tのスリットが形成される構成でもよい。
【0043】
シム320の厚みや形状を変更することで、スリットの隙間量tを変更したり、吐出口307(図示しない)のY軸方向に開口する長さを変更したりすることができるので、様々な塗工液や製品幅に対応する塗工ヘッドには、より好適に用いられる。
【0044】
以上より、本発明の塗工ヘッドを使用すれば、摩耗に起因する塗工外観不良を発生させることなく、塗工液が通過する部位の硬度を上げて摩耗性を向上させることができ、長期的に安定した塗工が可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1、2 リップ部材
3(’)、4 流路形成部材
5 マニホールド
5a、5b 凹み
6 スリット
7 吐出口
10 塗工液
100 塗工ヘッド
200 塗工ヘッド
201、202 リップ部材
203(’)、204(’) 流路形成部材
205 マニホールド
205a、205b 凹み
206 スリット
207 吐出口
208(’)、209(’) 厚み調整部材
210(’)、211(’) 高さ調整部材
300 塗工ヘッド
301、302 リップ部材
303、304 流路形成部材
305 マニホールド
305a、305b 凹み
320 シム
3a、203(’)a 接液面
1b、3b、201b、203b 非接液面
t 隙間量
△t 隙間の変化量
図1
図2
図3
図4
図5
図6