(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】ガラス溶融炉の炉内圧制御方法、及びガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/04 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
C03B5/04
(21)【出願番号】P 2019098743
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】後 克也
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-023327(JP,Y1)
【文献】特開2019-019032(JP,A)
【文献】特開昭53-119911(JP,A)
【文献】特開2001-132940(JP,A)
【文献】特開平07-286725(JP,A)
【文献】特開平11-083006(JP,A)
【文献】特表2006-501430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/00 - 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉本体と、前記炉本体を加熱する複数の燃焼バーナーとを備えるガラス溶融炉の炉内圧制御方法であって、
前記炉本体に接続された煙道には、前記煙道から排出される排気ガスの流量を調整する排気ダンパが設けられ、
稼働中の少なくとも一つの前記燃焼バーナーが停止した場合に、
前記煙道
における前記排気ダンパよりも上流側である前記炉本体側に補填用ガスを送風することを特徴とする炉内圧制御方法。
【請求項2】
管ガラス又はガラス繊維の製造に用いられる前記ガラス溶融炉に適用される請求項
1に記載の炉内圧制御方法。
【請求項3】
ガラス溶融炉から供給される溶融ガラスを用いてガラス物品を成形する成形工程を有するガラス物品の製造方法であって、
前記ガラス溶融炉は、炉本体と、前記炉本体を加熱する複数の燃焼バーナーとを備え、
前記炉本体に接続された煙道には、前記煙道から排出される排気ガスの流量を調整する排気ダンパが設けられ、
稼働中の少なくとも一つの前記燃焼バーナーが停止した場合に、
前記煙道
における前記排気ダンパよりも上流側である前記炉本体側に補填用ガスを送風することを特徴とするガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス溶融炉の炉内圧制御方法、及びガラス物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、天然ガス等の燃料と酸素とを混合して燃焼させる形式の燃焼バーナーを備えるガラス溶融炉が知られている。燃焼バーナーを備えるガラス溶融炉の炉内圧は、ガラス溶融炉から排出される排気ガスに適度な抵抗を与えて炉内外に差圧を設けることにより得られる。特許文献1には、ガラス溶融炉の煙道に設けられる排ガスファン及び排ガスダンパの動作を制御することにより、ガラス溶融炉の炉内圧を調整する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃焼バーナーを備えるガラス溶融炉では、その稼働中に燃焼バーナーの清掃作業が行われる場合がある。燃焼バーナーの清掃作業は、次のようにして行われる。まず、ガラス溶融炉に設けられる燃焼バーナーのうち、清掃対象となる燃焼バーナーを停止してガラス溶融炉から取り外し、清掃を行う。その後、清掃された燃焼バーナーをガラス溶融炉に取り付け、当該バーナーの稼働を再開する。ガラス溶融炉に備えられる全ての燃焼バーナーについて、上記の一連の清掃作業を一つずつ実施する。
【0005】
本発明者らは、上記清掃作業に連動して、ガラス溶融炉から供給される溶融ガラスを用いて成形されるガラス物品の寸法に変動が生じることに気付いた。ガラス物品の寸法の変動は、ガラス物品の品質の低下を引き起こす。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラス物品の寸法の変動を抑制し、ガラス物品の品質の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する炉内圧制御方法は、炉本体と、前記炉本体を加熱する複数の燃焼バーナーとを備えるガラス溶融炉の炉内圧制御方法であって、稼働中の少なくとも一つの前記燃焼バーナーが停止した場合に、前記炉本体に接続される煙道又は前記炉本体に補填用ガスを送風する。
【0008】
ガラス溶融炉の稼働中において、燃焼バーナーを停止すると、停止した燃焼バーナーに供給されていた燃料及び酸素等の供給ガスが断たれることにより、炉本体に供給される供給ガスの総量が減少して炉内圧が急激に低下する。本発明者らは、燃焼バーナーの停止による炉内圧の急激な低下が、ガラス物品の寸法の変動の要因の一つであることを見出した。上記構成によれば、燃焼バーナーを停止した際に減少する供給ガスの減少分の少なくとも一部が、煙道又は炉本体に送風される補填用ガスによって補填されることにより、炉内圧の急激な低下が抑制される。その結果、ガラス物品の寸法の変動も抑制され、ガラス物品の品質の低下を抑制することができる。
【0009】
上記炉内圧制御方法において、前記煙道に補填用ガスを送風することが好ましい。
上記構成によれば、炉本体内の温度よりも低い温度の補填用ガスを送風しても、炉本体に補填用ガスを直接送風する場合と比較して、炉内温度の低下を抑制できる。
【0010】
上記炉内圧制御方法において、前記煙道には、前記煙道から排出される排気ガスの流量を調整する排気ダンパが設けられ、前記煙道における前記排気ダンパよりも上流側である前記炉本体側に補填用ガスを送風することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、燃焼バーナーの停止後における炉内圧の急激な低下をより抑制しやすくなり、ガラス物品の寸法変動が抑制されやすくなる。
上記炉内圧制御方法は、管ガラス又はガラス繊維の製造に用いられる前記ガラス溶融炉に適用されることが好ましい。
【0012】
管ガラス又はガラス繊維は、板ガラス等の他の形状のガラス物品と比較して、ガラス溶融炉の炉内圧の変動が、そのガラス溶融炉から供給される溶融ガラスを用いて成形されるガラス物品の寸法に影響を与えやすい。そのため、管ガラス又はガラス繊維の製造に用いられるガラス溶融炉に上記炉内圧制御方法を適用することにより、ガラス溶融炉の稼働中における燃焼バーナーの停止に起因するガラス物品の寸法の変動を抑制する効果がより顕著に得られる。
【0013】
上記課題を解決するガラス物品の製造方法は、ガラス溶融炉から供給される溶融ガラスを用いてガラス物品を成形する成形工程を有するガラス物品の製造方法であって、前記ガラス溶融炉は、炉本体と、前記炉本体を加熱する複数の燃焼バーナーとを備え、稼働中の少なくとも一つの前記燃焼バーナーが停止した場合に、前記炉本体に接続された煙道又は前記炉本体に補填用ガスを送風する。
【0014】
上記構成によれば、燃焼バーナーを停止した際に減少する供給ガスの総量の減少分の少なくとも一部が、煙道又は炉本体に送風される補填用ガスによって補填されることにより、炉内圧の急激な低下が抑制される。これにより、ガラス溶融炉から供給される溶融ガラスを用いて成形されたガラス物品の寸法の変動を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガラス溶融炉の稼働中における燃焼バーナーの停止に起因するガラス物品の寸法の低下を抑制でき、ガラス物品の品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1に示すように、ガラス物品を製造する製造装置は、ガラス原料を供給する供給部11と、ガラス原料を溶融させて溶融ガラスとするガラス溶融炉12と、溶融ガラスをガラス物品に成形する成形部13とを備えている。
【0018】
供給部11は、ガラス溶融炉12にガラス原料を供給する。供給部11は、例えば、ガラス原料を貯留し、下部にガラス原料を排出する貯留槽と、貯留槽下方に位置し、貯留槽より排出されたガラス原料をガラス溶融炉12まで搬送するコンベアにより構成される。ガラス原料としては、例えば、硅砂、石灰及びソーダ灰等の混合物が挙げられる。
【0019】
図2に示すように、ガラス溶融炉12は、炉本体20を備えている。炉本体20は、煉瓦等の耐火物により構成される底壁21、側壁22及び上壁23を有し、側壁22には、供給部11に接続され、供給部11より供給されたガラス原料が投入される投入口24、及び成形部13に接続される流出口25が形成されている。
【0020】
炉本体20の側壁22には、炉本体20の内部を加熱する加熱手段として、天然ガス等の燃料と酸素とを混合して燃焼させる形式の燃焼バーナーが取り付けられている。燃焼バーナーは、供給部11から炉本体20に供給されたガラス原料を加熱して溶融させることで溶融ガラスMGを製造する。本実施形態では、燃焼バーナーとして、第1燃焼バーナー26a、第2燃焼バーナー26b、第3燃焼バーナー26c、及び第4燃焼バーナー26dの4個の燃焼バーナー26が取り付けられている。第1~第4燃焼バーナー26a~26dは、それぞれ独立して点火及び消火が可能に設けられるとともに、それぞれ独立して炉本体20に対する取り付け及び取り外しが可能に設けられている。以下、第1~第4燃焼バーナー26a~26dをまとめて燃焼バーナー26と記載する。
【0021】
炉本体20には、炉本体20内の排ガスを排出するための煙道27が接続されている。煙道27には、煙道27から排出される排ガスの流量を調整することにより炉内圧を制御することが可能な排気ダンパ28が設けられている。また、ガラス溶融炉12は、炉本体20の炉内圧を検出する圧力センサ29と、圧力センサ29により検出される炉本体20の炉内圧に基づいて、炉内圧を予め設定された所定の圧力に近づけるように排気ダンパ28の開度をフィードバック制御するダンパ制御部30とを備えている。
【0022】
煙道27における排気ダンパ28よりも上流側である炉本体20側には、煙道27内に補填用ガスを送風する送風機31が設けられている。送風機31は、ターボ形送風機であり、炉外から取り込んだ空気(外気)を補填用ガスとして煙道27内に送風する。
【0023】
送風機31には、ガラス溶融炉12の稼働中における燃焼バーナー26の状態に連動させて送風機31の駆動を制御する送風制御部32が接続されている。送風制御部32は、稼働中の燃焼バーナー26の一部又は全部が停止された場合に、燃焼バーナー26の停止と同時に送風機31を駆動して、煙道27内への空気の送風を開始する。また、送風制御部32は、停止された燃焼バーナー26の稼働が再開された場合に、燃焼バーナー26の稼働と同時に送風機31の駆動を停止して、煙道27内への空気の送風を停止する。
【0024】
送風制御部32は、停止された燃焼バーナー26の燃焼に用いられていた燃料及び酸素(以下、まとめて供給ガスという。)の体積流量に応じた流量の空気を煙道27内に送風させるように送風機31を駆動する。例えば、停止された燃焼バーナー26を通じて炉本体20内に供給されていた供給ガスの合計流量を100%とした場合、送風機31から送風する空気の流量は、50%以上150%以下となる流量であることが好ましく、90%以上110%以下となる流量であることがより好ましい。なお、2以上の燃焼バーナー26が同時に停止された場合には、停止された全ての燃焼バーナー26を通じて供給されていた供給ガスの流量の合計を100%として、送風機31から送風する空気の流量が設定される。
【0025】
成形部13は、ガラス物品の種類に応じた成形方法に基づき選択することができる。成形方法としては、例えば、ダンナー法、ロールアウト法、アップドロー法、フロート法、紡糸法、及びダウンドロー法(スリットダウンドロー法又はオーバーフローダウンドロー法)が挙げられる。
【0026】
ガラス物品の種類としては、例えば、管ガラス、ガラス繊維(ガラス長繊維)、及び板ガラスが挙げられる。これらのなかでも、管ガラス又はガラス繊維が好ましい。
次に、上記の製造装置を用いたガラス物品の製造方法について説明する。
【0027】
図3に示すように、ガラス物品の製造方法は、ガラス溶融炉12においてガラス原料を溶融させて溶融ガラスMGとする溶融工程S1と、ガラス溶融炉12から成形部13へ溶融ガラスMGを移送する移送工程S2と、成形部13において溶融ガラスMGを用いてガラス物品を成形する成形工程S3とを有する。
【0028】
溶融工程S1では、ガラス溶融炉12の炉本体20に連続的に供給されるガラス原料を燃焼バーナー26により加熱して溶融ガラスMGとする。炉本体20内の温度は、ガラス原料の融点以上の温度であり、例えば、800℃以上であることが好ましく、1800℃以下であることが好ましい。炉本体20の炉内圧は、ガラス溶融炉12の煙道27に設けられる排気ダンパ28の開度を調整することによって一定範囲内に制御されている。
【0029】
移送工程S2では、ガラス溶融炉12から成形部13へスロートやフィーダー等(図示略)を通じて溶融ガラスMGを移送する。移送工程S2における溶融ガラスMGの移送速度等の移送状態は、例えば、ガラス溶融炉12の炉本体20内における溶融ガラスMGの液面高さや供給部11から供給されるガラス原料の単位時間あたりの供給量や後述する成形工程S3において、成形部13から引き出される単位時間あたりのガラス流量を調整することによって制御される。供給部11から供給されるガラス原料の単位時間あたりの供給量及び成形部13から引き出される単位時間あたりのガラス流量が一定である場合、炉本体20内における溶融ガラスMGの液面高さは、炉本体20内の溶融ガラスMGに作用する圧力である炉内圧に基づいて変化するパラメータである。本実施形態においては、炉内圧を一定範囲内に制御することによって、溶融ガラスMGの液面高さの変動を抑制し、溶融ガラスMGの移送状態を安定させている。
【0030】
成形工程S3では、ガラス溶融炉12から成形部13に移送された溶融ガラスMGを用いて、所定の成形方法によりガラス物品を製造する。
次に、ガラス溶融炉12の稼働中に燃焼バーナー26を停止した場合の炉内圧制御方法について、燃焼バーナー26のメンテナンスを行う場合を例として説明する。なお、ガラス溶融炉12の稼働中とは、炉本体20内がガラス原料の融点以上の温度であり、炉本体20内に溶融ガラスMGが保持されている状態を意味する。
【0031】
図4に示すように、ガラス溶融炉12の稼働中に燃焼バーナー26のメンテナンスを行う場合には、まず、作業者の操作に基づいて、稼働中の複数の燃焼バーナー26の中からメンテナンスの対象となる一つの燃焼バーナー26(例えば、第1燃焼バーナー26a)が停止される。第1燃焼バーナー26aが停止されると、送風制御部32により送風機31が駆動されて、第1燃焼バーナー26aを通じて炉本体20内に供給されていた供給ガスに応じた流量の空気が煙道27に送風される。
【0032】
第1燃焼バーナー26aの停止後、炉本体20から第1燃焼バーナー26aを取り出して、清掃、部品交換、燃焼バーナー26自体の交換等のメンテナンスを行う。メンテナンス後、第1燃焼バーナー26aを炉本体20に取り付けて、第1燃焼バーナー26aの稼働を再開させる。第1燃焼バーナー26aの稼働が再開されると、送風制御部32により送風機31の駆動が停止されて、煙道27内への空気の送風が停止される。その後、残りの燃焼バーナー26についても、上記の一連のメンテナンス作業を一つずつ実施する。
【0033】
ここで、第1燃焼バーナー26aを停止させる際に、第1燃焼バーナー26aを停止させる処理のみを行った場合、第1燃焼バーナー26aを通じた供給ガスの供給が断たれることにより、ガラス溶融炉12の炉本体20の炉内圧が急激に低下する。炉本体20の炉内圧の急激な低下は、炉本体20の溶融ガラスMGの液面高さの変動、ひいては溶融ガラスMGの移送状態の変動を招く。そして、溶融ガラスMGの移送状態が変動することによって、成形部13により成形されるガラス物品の寸法が変動してしまう。なお、こうした燃焼バーナー26の停止に起因するガラス溶融炉12の炉内圧の低下は、短時間で急激に起こるため、排気ダンパ28による圧力制御では、変動の抑制が間に合わない。
【0034】
本実施形態では、第1燃焼バーナー26aから供給されていた供給ガスに応じた量の空気を煙道27に供給することにより、第1燃焼バーナー26aから供給されていた供給ガスが断たれることによる供給ガスの減少分を補填して、炉本体20の炉内圧の急激な低下を抑制している。そして、炉内圧の急激な低下を抑制することによって、成形部13により成形されるガラス物品の寸法の変動を抑制している。
【0035】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)炉本体20と、炉本体20を加熱する燃焼バーナー26とを備えるガラス溶融炉12の炉内圧制御方法は、稼働中の燃焼バーナー26が停止した場合に、炉本体20に接続される煙道27に補填用ガスを送風する。
【0036】
上記構成によれば、燃焼バーナー26を停止した際に減少する供給ガスの減少分の少なくとも一部が、煙道27に送風される補填用ガスによって補填されることにより、炉本体20の炉内圧の急激な低下が抑制される。
【0037】
(2)ガラス溶融炉12の煙道27に補填用ガスを送風する。
上記構成によれば、炉本体20内の温度よりも低い温度の補填用ガスを送風しても、炉本体20に補填用ガスを直接送風する場合と比較して、炉内温度の低下を抑制できる。
【0038】
(3)煙道27には、煙道27から排出される排気ガスの流量を調整する排気ダンパ28が設けられ、煙道27における排気ダンパ28よりも上流側である炉本体20側に空気を送風している。
【0039】
上記構成によれば、燃焼バーナー26の停止後に、排気ダンパ28の開度が大きく変化することを抑制できる。
(4)送風機31として、ターボ形送風機を用いている。
【0040】
ターボ形送風機は、所定の流量が得られるまでの立ち上がり時間が短く応答性に優れているため、燃焼バーナー26の停止に起因する炉内圧の急激な低下をより効果的に抑制できる。
【0041】
(5)炉内圧制御方法の対象となるガラス溶融炉12は、管ガラス又はガラス繊維の製造に用いられるガラス溶融炉である。
管ガラス又はガラス繊維は、板ガラス等の他のガラス物品と比較して、ガラス溶融炉12の炉内圧の変動が、そのガラス溶融炉12から供給される溶融ガラスMGを用いて成形されるガラス物品の寸法に影響を与えやすく、特に径方向の寸法が変化しやすい。そのため、管ガラス又はガラス繊維の製造に用いられるガラス溶融炉12に上記炉内圧制御方法を適用することにより、燃焼バーナー26の停止に起因するガラス物品の寸法の変動を抑制する効果がより顕著に得られる。
【0042】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ガラス溶融炉12に設けられる燃焼バーナー26の数は特に限定されるものではなく、1~3であってもよいし、5以上であってもよい。
【0043】
・燃焼バーナー26は、燃料と酸素とを混合して燃焼させる形式のものに限定されるものではなく、燃料や酸素等の供給ガスを供給しながら燃焼させるものであればよい。
・送風機31は、ターボ形送風機に限定されるものではなく、その他の送風機を用いてもよい。
【0044】
・補填用ガスの種類は、空気(外気)に限定されるものではない。例えば、加熱した空気を送風してもよいし、煙道27から排出された排気ガスの一部を回収して補填用ガスとして煙道27に送風してもよい。
【0045】
・煙道27における排気ダンパ28よりも下流側に補填用ガスを送風してもよい。
・補填用ガスの送風箇所は煙道27に限定されるものではなく、炉本体20に補填用ガスを送風してもよい。例えば、炉本体20に連通される専用の流路を設け、その流路に送風機31を設けてもよい。
【0046】
・補填用ガスの送風箇所の数は、2以上であってもよい。
・上記実施形態では、燃焼バーナー26の停止と同時に送風機31を駆動していたが、送風機31を駆動するタイミングはこれに限定されるものではない。例えば、燃焼バーナー26を停止する操作や信号の入力に基づく第1タイミングで送風機31を先に駆動し、第1タイミングから送風機31の立ち上がり時間に応じた待機時間を経た第2タイミングで燃焼バーナー26を停止させるようにしてもよい。
【0047】
・送風制御部32を省略して、作業者の操作等によって送風機31を駆動してもよい。
・製造装置におけるガラス溶融炉12と成形部13との間に任意の工程設備を設けて、溶融ガラスMGに対して当該工程設備による任意の処理を行ってもよい。例えば、ガラス溶融炉12と成形部13とを接続するスロートやフィーダー等の途中に清澄等を目的とした清澄室を設けて、移送工程S2中に溶融ガラスMGの清澄を行ってもよい。
【0048】
・ガラス溶融炉12以外の装置に設けられる燃焼バーナーが停止した場合に補填用ガスを送風してもよい。例えば、フィーダー加熱用燃焼バーナーが内部に設けられるとともに煙道が接続されたフィーダーにおいて、稼働中のフィーダー加熱用燃焼バーナーが停止した場合に、フィーダーに接続される煙道又はフィーダーに補填用ガスを送風してもよい。
【0049】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)炉本体と、前記炉本体を加熱する複数の燃焼バーナーとを備えるガラス溶融炉であって、前記炉本体に接続される煙道に設けられ、前記煙道から排出される排気ガスの流量を調整する排気ダンパと、前記煙道又は前記炉本体に補填用ガスを送風する送風機と、前記送風機の駆動を制御する送風制御部とを備え、前記送風制御部は、稼働中の少なくとも一つの前記燃焼バーナーが停止した場合に前記送風機を駆動することを特徴とするガラス溶融炉。
【符号の説明】
【0050】
MG…溶融ガラス、10…製造装置、11…供給部、12…ガラス溶融炉、13…成形部、20…炉本体、26…燃焼バーナー、26a~26d…第1~第4バーナー、27…煙道、28…排気ダンパ、31…送風機、32…送風制御部。