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特許7302334制御モジュール、測定装置、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】制御モジュール、測定装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/50 20060101AFI20230627BHJP
   H01M 6/14 20060101ALI20230627BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230627BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20230627BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20230627BHJP
【FI】
H01M6/50
H01M6/14 A
H02J7/00 302A
G01R31/389
G01R31/378
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019120105
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021005537
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】岸本 勇作
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-177091(JP,A)
【文献】特開2013-228246(JP,A)
【文献】特開平05-323000(JP,A)
【文献】特開平09-127216(JP,A)
【文献】特開平05-176091(JP,A)
【文献】実開平05-088153(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/00-6/52
G01R 31/389
G01R 31/378
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象に対して測定処理を実行する測定装置が有する塩化チオニール系一次電池の内部状態を制御する制御モジュールであって、
前記塩化チオニール系一次電池に関するパラメータを取得する制御部と、
前記塩化チオニール系一次電池において流れる負荷電流を供給する電流供給部と、
を備え、
前記制御部は、取得された前記パラメータが第1の値から第2の値へと増加するときに、連続して流れる前記負荷電流の強度又は繰り返しのパルスとして流れる前記負荷電流の平均強度を増加させる制御処理を、前記測定装置が動作している間連続して実行する、
制御モジュール。
【請求項2】
前記パラメータと前記負荷電流の前記強度又は前記平均強度との対応関係を示す制御データを記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記制御データに基づいて、前記パラメータに対応する前記負荷電流の前記強度又は前記平均強度を決定する、
請求項1に記載の制御モジュール。
【請求項3】
前記制御部は、取得された前記パラメータが第1の値から第2の値へと変化するときに、前記パラメータの大小、及び前記パラメータの変化の正負の少なくとも一方に関する判定に基づいて前記制御処理を実行する、
請求項1に記載の制御モジュール。
【請求項4】
前記パラメータは、前記塩化チオニール系一次電池の内部抵抗を含み、
前記制御部は、取得された前記内部抵抗の値が前記内部抵抗に関する第1閾値よりも大きいか否かの判定結果に基づいて、前記内部抵抗が前記第1閾値から所定の範囲内で変動するように前記負荷電流の前記強度又は前記平均強度を変化させる、
請求項1に記載の制御モジュール。
【請求項5】
ユーザに対して報知を行う報知部を備え、
前記制御部は、前記第1閾値よりも大きく、かつ前記所定の範囲に含まれない前記内部抵抗に関する第2閾値よりも、取得された前記内部抵抗の値が大きいと判定すると、前記報知部により前記ユーザに対する報知を実行する、
請求項4に記載の制御モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の制御モジュールと、前記塩化チオニール系一次電池と、前記塩化チオニール系一次電池から放電電流の供給を受ける内部回路と、を備える測定装置。
【請求項7】
被測定対象に対して測定処理を実行する測定装置が有する塩化チオニール系一次電池の内部状態を制御する制御方法であって、
前記塩化チオニール系一次電池に関するパラメータを取得する第1ステップと、
取得された前記パラメータが第1の値から第2の値へと増加したか否かを判定する第2ステップと、
取得された前記パラメータが前記第1の値から前記第2の値へと増加したと判定すると、前記塩化チオニール系一次電池において連続して流れる負荷電流の強度又は繰り返しのパルスとして流れる前記負荷電流の平均強度を増加させる第3ステップと、
を含み、
前記測定装置が動作している間、前記第1ステップ乃至前記第3ステップに関する制御処理が連続して実行される、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御モジュール、測定装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塩化チオニール系一次電池の内部抵抗の上昇を抑制するために、塩化チオニール系一次電池の内部における塩化膜の生成状態を制御する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化チオニール系一次電池及び内部回路を有する測定装置であって、内部回路の現在の状態の放電電流より大きい他の状態へ遷移する場合に、塩化チオニール系一次電池に対して測定された電圧と内部回路の遷移前後の状態の放電電流に基づく閾値とを比較する測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-177091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような従来の測定装置は、例えば測定装置が動作を開始するときにのみ、塩化チオニール系一次電池の塩化膜を徐々に破壊している。このように、従来の測定装置では、塩化膜除去の制御は、測定装置が動作遷移を実行する直前に限定されており、測定装置が動作遷移を完了した後又は安定動作時における塩化膜除去の制御については考慮されていなかった。したがって、塩化チオニール系一次電池の塩化膜の除去を継続的に行うことは困難であった。
【0006】
本開示は、塩化チオニール系一次電池の塩化膜の除去を継続的に行うことができる制御モジュール、測定装置、及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る制御モジュールは、被測定対象に対して測定処理を実行する測定装置が有する塩化チオニール系一次電池の内部状態を制御する制御モジュールであって、前記塩化チオニール系一次電池に関するパラメータを取得する制御部と、前記塩化チオニール系一次電池において流れる負荷電流を供給する電流供給部と、を備え、前記制御部は、取得された前記パラメータが第1の値から第2の値へと変化するときに、連続して流れる前記負荷電流の強度又は繰り返しのパルスとして流れる前記負荷電流の平均強度を変化させる制御処理を、前記測定装置が動作している間連続して実行する。これにより、制御モジュールは、塩化チオニール系一次電池の塩化膜の除去を継続的に行うことができる。したがって、塩化チオニール系一次電池の内部抵抗に不可逆な変化を与える可能性が低下する。
【0008】
一実施形態における制御モジュールは、前記パラメータと前記負荷電流の前記強度又は前記平均強度との対応関係を示す制御データを記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記制御データに基づいて、前記パラメータに対応する前記負荷電流の前記強度又は前記平均強度を決定してもよい。これにより、制御モジュールは、簡便な処理により塩化チオニール系一次電池の内部状態を制御することが可能となる。したがって、製品としてのコストが低減する。
【0009】
一実施形態において、前記制御部は、取得された前記パラメータが第1の値から第2の値へと変化するときに、前記パラメータの大小、及び前記パラメータの変化の正負の少なくとも一方に関する判定に基づいて前記制御処理を実行してもよい。これにより、制御モジュールは、例えば制御データを記憶するような記憶部を有さずとも、簡便な処理により塩化チオニール系一次電池の内部状態を制御することが可能となる。したがって、製品としてのコストが低減する。
【0010】
一実施形態において、前記パラメータは、前記塩化チオニール系一次電池の内部抵抗を含み、前記制御部は、取得された前記内部抵抗の値が前記内部抵抗に関する第1閾値よりも大きいか否かの判定結果に基づいて、前記内部抵抗が前記第1閾値から所定の範囲内で変動するように前記負荷電流の前記強度又は前記平均強度を変化させてもよい。これにより、塩化チオニール系一次電池の塩化膜の除去を継続的に行うことができ、測定装置の動作中におけるいかなる状況においても、測定装置が動作するために必要な電力を塩化チオニール系一次電池から確実に取り出すことが可能である。
【0011】
一実施形態における制御モジュールは、ユーザに対して報知を行う報知部を備え、前記制御部は、前記第1閾値よりも大きく、かつ前記所定の範囲に含まれない前記内部抵抗に関する第2閾値よりも、取得された前記内部抵抗の値が大きいと判定すると、前記報知部により前記ユーザに対する報知を実行してもよい。これにより、ユーザは、塩化チオニール系一次電池の消耗状態を正確に把握することができる。制御モジュールは、使用済みの塩化チオニール系一次電池に対して制御処理を停止させることで、制御の効率化に寄与することができる。
【0012】
幾つかの実施形態に係る測定装置は、上記のいずれかの制御モジュールと、前記塩化チオニール系一次電池と、前記塩化チオニール系一次電池から放電電流の供給を受ける内部回路と、を備えてもよい。これにより、測定装置は、塩化チオニール系一次電池の塩化膜の除去を継続的に行うことができる。したがって、塩化チオニール系一次電池の内部抵抗に不可逆な変化を与える可能性が低下する。
【0013】
幾つかの実施形態に係る制御方法は、被測定対象に対して測定処理を実行する測定装置が有する塩化チオニール系一次電池の内部状態を制御する制御方法であって、前記塩化チオニール系一次電池に関するパラメータを取得する第1ステップと、取得された前記パラメータが第1の値から第2の値へと変化したか否かを判定する第2ステップと、取得された前記パラメータが前記第1の値から前記第2の値へと変化したと判定すると、前記塩化チオニール系一次電池において連続して流れる負荷電流の強度又は繰り返しのパルスとして流れる前記負荷電流の平均強度を変化させる第3ステップと、を含み、前記測定装置が動作している間、前記第1ステップ乃至前記第3ステップに関する制御処理が連続して実行される。これにより、測定装置は、塩化チオニール系一次電池の塩化膜の除去を継続的に行うことができる。したがって、塩化チオニール系一次電池の内部抵抗に不可逆な変化を与える可能性が低下する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、塩化チオニール系一次電池の塩化膜の除去を継続的に行うことができる制御モジュール、測定装置、及び制御方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る制御モジュールによって実行される制御処理の一例を示す模式図である。
図3図1の記憶部が記憶する制御データの一例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る制御モジュールによる制御方法の一例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6】第2実施形態に係る制御モジュールによる制御方法の一例を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る制御モジュールによって実行される制御処理の第1例を示す模式図である。
図8】第2実施形態に係る制御モジュールによって実行される制御処理の第2例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0017】
例えば、塩化チオニールリチウム一次電池は、出力電圧が高い、及び自己放電が少なく長期間の使用が可能であるという特徴を有する。したがって、塩化チオニールリチウム一次電池は、長時間の安定動作が要求されるプロセスプラント及び工場等のフィールドで使用される無線用測定装置に組み込まれる場合がある。
【0018】
塩化チオニールリチウム一次電池を使用する上で、塩化チオニールリチウム一次電池において流れる負荷電流が微小である場合、当該一次電池内部で塩化膜が生成されて内部抵抗が上昇するという問題がある。負荷電流が微小な状態が長時間続き、内部抵抗が大きくなった状態の当該一次電池に対し、当該一次電池を電源としている測定装置が急激に高負荷の動作に遷移すると、当該一次電池の内部抵抗によって、当該一次電池の出力電圧が急激に低下する恐れがある。これにより、測定装置の電源の動作が停止したり、内部回路が暴走したりする恐れがあった。
【0019】
このような問題を解決するために、特許文献1に記載の測定装置は、複数の定電流放電部により、塩化チオニール系一次電池において流れる負荷電流を段階的に増加させていくと同時に、電池電圧測定部で当該一次電池の出力電圧を測定する。当該測定装置では、測定された出力電圧に基づいて計算された内部抵抗値が予め設定された閾値を超えていなければ内部回路の状態遷移を行わず、超えていれば状態遷移を行うようにして、内部回路を順々に起動させる制御が実行されている。これにより、塩化膜が生成され、内部抵抗が大きくなった当該一次電池が測定装置に接続されても、測定装置の動作開始時に塩化膜を徐々に破壊しつつ、内部回路を順々に確実に動作させ、安定動作状態まで遷移させることが可能となる。
【0020】
また、古くは、塩化膜により内部抵抗が上昇した塩化チオニール系一次電池に対し、測定装置の動作前に、CPU(Central Processing Unit)の低速モード、CPUの高速モード、受信部電源オン、及び送信部電源オンと時刻を追って段階的に塩化チオニール系一次電池の放電電流を高める方法も提案されている。これにより、塩化チオニール系一次電池の出力電圧の急激な低下が抑制される。
【0021】
しかしながら、上述した従来技術には以下の問題がある。
【0022】
第1に、塩化膜除去の制御は、測定装置が動作遷移を行う直前に限定されており、測定装置の動作遷移後又は安定動作時における塩化膜除去の制御については考慮されていなかった。
【0023】
例えば無線通信の周期の長い間欠動作状態等、塩化チオニール系一次電池において流れる負荷電流が少ない安定動作状態において、当該一次電池の内部で再び塩化膜が生成されて内部抵抗が徐々に増加していく恐れがあった。このように負荷電流が少ない安定動作状態に移行した測定装置は、所定のタイミングでその設定変更等の要求を受け付けると、負荷電流が大きい動作状態へと移行するときに、再び塩化膜除去の制御を実行する必要があった。測定装置は、このような制御を実行した後でなければ、動作遷移を実行することができないため、迅速な状態遷移が要求される場合については、要求仕様を満たすことができなかった。
【0024】
塩化チオニールリチウム電池は、負荷電流が少ない状態で長時間放置されると、生成された塩化膜が結晶化して、前回塩化膜を除去したときと同じ負荷電流を与えても、再び動作可能な内部抵抗値に戻すことが困難となる恐れもあった。最悪の場合、負荷電流を極端に大きくしたとしても塩化膜が除去できなくなるという不可逆的な変化が引き起こされる恐れもあった。
【0025】
第2に、塩化チオニール系一次電池を有する測定装置以外の他の装置と組み合わせるときの制御についても考慮されていなかった。
【0026】
測定装置の内部回路等、放電のタイミングが予め既知である対象に対しては、従来技術の制御は実行可能であった。しかしながら、例えば、無線用測定装置とゲートウェイの関係のように、ゲートウェイの動作によって測定装置の動作が変化する場合等、放電のタイミングが他の装置に依存して決定される場合、塩化膜除去の制御が実行される前に、測定装置が負荷の大きい動作状態へと遷移する恐れがあった。
【0027】
第3に、塩化チオニール系一次電池を有する一の測定装置に対して構築された制御処理を他の装置に対して適用することは困難であった。
【0028】
塩化膜除去の制御に使用する、内部回路の動作遷移に関する情報等が装置ごとに異なるため、一の測定装置に対して構築された塩化膜除去の制御は、他の装置にそのまま適用することが困難であった。
【0029】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、塩化チオニール系一次電池の塩化膜の除去を継続的に行うことができる制御モジュール、測定装置、及び制御方法を提供することを目的とする。以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る測定装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1を参照しながら、第1実施形態に係る測定装置1の構成について主に説明する。
【0031】
測定装置1は、後述する塩化チオニール系一次電池20を電源として動作する任意の装置を含む。測定装置1は、例えば、被測定対象に対する測定処理を実行して測定値を取得するセンサ装置を含む。被測定対象は、例えば測定装置1が配置されているプラント設備において発生した気体及び液体等を含む流体の温度、圧力、及び流量、並びにプラント設備の腐食度及び振動量等を含む。これに限定されず、被測定対象は、バルブ、モータ、及びリレー等を含むアクチュエータに関連する、温度及び圧力等を含む状態パラメータを含む。測定装置1は、例えば、測定処理によって取得した測定データを無線等の任意の通信手段によって上位装置に送信してもよい。
【0032】
測定装置1は、制御モジュール10と、塩化チオニール系一次電池20と、塩化チオニール系一次電池20から放電電流の供給を受ける内部回路30と、を有する。制御モジュール10は、電流供給部11と、電池抵抗測定部12と、温度測定部13と、定電圧回路部14と、制御部15と、記憶部16と、報知部17と、を有する。
【0033】
塩化チオニール系一次電池20は、例えば塩化チオニールリチウム電池を含む。塩化チオニール系一次電池20の陽極部、すなわち出力部は、制御モジュール10の入力に接続されている。より具体的には、塩化チオニール系一次電池20の陽極部は、電流供給部11、電池抵抗測定部12、及び定電圧回路部14の入力に接続されている。塩化チオニール系一次電池20の陰極部は、共通電圧グラウンドに接続されている。
【0034】
電流供給部11は、抵抗及びトランジスタ等の回路素子によって構成される任意の電流回路を含む。電流供給部11は、制御部15による後述の制御によって、塩化チオニール系一次電池20において流れる負荷電流を供給する。
【0035】
電池抵抗測定部12は、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗を測定する任意の測定回路を含む。
【0036】
温度測定部13は、塩化チオニール系一次電池20の温度を測定する任意の温度センサを含む。塩化チオニール系一次電池20の温度は、例えば塩化チオニール系一次電池20の周囲温度を含む。これに限定されず、塩化チオニール系一次電池20の温度は、例えば塩化チオニール系一次電池20の内部温度及び表面温度等を含んでもよい。
【0037】
電池抵抗測定部12と温度測定部13とは、まとめて測定部Mを構成する。測定部Mは、塩化チオニール系一次電池20に関するパラメータを測定する。第1実施形態においては、塩化チオニール系一次電池20に関するパラメータは、塩化チオニール系一次電池20の温度を含む。塩化チオニール系一次電池20に関するパラメータは、温度に代えて、又は加えて、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗を含んでもよい。
【0038】
定電圧回路部14は、予め設定された電圧値を有する定電圧を出力可能な任意の定電圧回路を含む。定電圧回路部14は、塩化チオニール系一次電池20からの出力電圧に基づく定電圧回路部14における入力電圧が所定の値以上であるときに、予め設定された電圧値を有する定電圧を出力する。
【0039】
制御部15は、1つ以上のプロセッサを含む。より具体的には、制御部15は、汎用のプロセッサ及び特定の処理に特化した専用のプロセッサ等の任意のプロセッサを含む。例えば、制御部15は、制御モジュール10による塩化チオニール系一次電池20の内部状態の制御を実行可能にするプロセッサを含む。ここで、塩化チオニール系一次電池20の内部状態は、塩化チオニール系一次電池20の内部における塩化膜の生成状態を含む。制御部15は、制御モジュール10を構成する各構成部に接続され、各構成部をはじめとして制御モジュール10全体を制御及び管理する。
【0040】
記憶部16は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等の任意の記憶モジュールを含み、制御モジュール10の動作を実現するために必要な情報を記憶する。例えば、記憶部16は、制御モジュール10の動作を実現するプログラムを記憶する。記憶部16は、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部16は、制御モジュール10に内蔵されているものに限定されず、USB等のデジタル入出力ポート等によって接続されている外付け型の記憶モジュールであってもよい。
【0041】
報知部17は、例えば、塩化チオニール系一次電池20の長期使用に基づく劣化に伴って内部抵抗が上昇すると、ユーザに対して報知を行う任意の出力インタフェースを含む。報知部17は、例えば、液晶ディスプレイ等によって構成される画像出力インタフェースを含んでもよいし、スピーカ等の音声出力インタフェースを含んでもよい。報知部17は、例えば、画像、文字、色彩の表示若しくは発光等による視覚的な方法、アラーム音若しくは音声ガイドによる音声等の聴覚的な方法、又はそれらの組み合わせにより報知を行ってもよい。報知部17が行う報知は、視覚的又は聴覚的な方法に限定されず、塩化チオニール系一次電池20の長期使用に基づく劣化に伴って内部抵抗が上昇したことをユーザが認識できる任意の方法を含んでもよい。例えば、報知部17は、振動パターン等によりユーザに対して報知を行ってもよい。
【0042】
図2は、第1実施形態に係る制御モジュール10によって実行される制御処理の一例を示す模式図である。図2を参照しながら、第1実施形態に係る制御モジュール10によって実行される制御処理の一例について主に説明する。図2の上半部に示すグラフ図において、縦軸は、塩化チオニール系一次電池20の温度を示す。横軸は、時間を示す。図2の下半部は、図2の上半部に示すグラフ図に対応する時間において流れる塩化チオニール系一次電池20の負荷電流の様子を示している。
【0043】
一般的に、塩化チオニール系一次電池20の構造によっては、周囲温度の変化により、塩化チオニール系一次電池20内部の化学反応の速度が変化し、塩化膜の生成速度が変化することも考えられる。このとき、塩化チオニール系一次電池20の温度と塩化チオニール系一次電池20の内部状態とは密接な対応関係を示す。より具体的には、塩化チオニール系一次電池20の温度が高いと、塩化チオニール系一次電池20の内部における塩化膜の生成が促進される傾向にある。逆に、塩化チオニール系一次電池20の温度が低いと、塩化チオニール系一次電池20の内部における塩化膜の生成が抑制される傾向にある。したがって、塩化チオニール系一次電池20の温度の変動に応じた適切な負荷電流によって塩化膜を破壊し塩化チオニール系一次電池20の内部状態を良好に維持することが考えられる。
【0044】
制御部15は、塩化チオニール系一次電池20において繰り返しのパルスとして流れる負荷電流を電流供給部11により供給する処理を、測定装置1が動作している間連続して実行する。制御部15は、測定部Mのうち温度測定部13のみを用いて塩化チオニール系一次電池20の温度を取得する。
【0045】
制御部15は、温度測定部13によって取得された塩化チオニール系一次電池20の温度が第1の値から第2の値へと変化するときに、例えば値の変化の方向と同一の方向に、繰り返しのパルスとして流れる負荷電流の平均強度を変化させる制御処理を、測定装置1が動作している間連続して実行する。第1の値は、例えば、後述する温度T1乃至温度T3のいずれかに対応する。同様に、第2の値は、例えば、後述する温度T1乃至温度T3のいずれかに対応する。平均強度は、負荷電流パルスのピーク強度に当該パルスのデューティ比を乗算することで算出される。
【0046】
制御部15は、温度測定部13によって取得された塩化チオニール系一次電池20の温度が変化しないときは、繰り返しのパルスとして流れる負荷電流の平均強度を変化させずに維持する。
【0047】
記憶部16は、塩化膜の生成を十分に抑制して塩化チオニール系一次電池20の内部状態を良好に維持することができる、塩化チオニール系一次電池20の温度と負荷電流の平均強度との対応関係を示す制御データを記憶する。例えばユーザは、測定装置1が動作を開始して制御モジュール10による制御処理が開始される前に予め実験的に制御データを取得してもよい。例えば、制御部15は、記憶部16に記憶されている制御データに基づいて、塩化チオニール系一次電池20の温度に対応する負荷電流の平均強度を決定してもよい。
【0048】
塩化チオニール系一次電池20の温度と負荷電流の平均強度との対応関係を示す制御データは、例えば、測定装置1の最も負荷が大きい内部回路30のタスク実行時に、定電圧回路部14が安定動作を継続するために最低限必要となる入力電圧を確保できる、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗値と、当該内部抵抗値以下に内部抵抗を制御できるような負荷電流の平均強度と、を各温度において予め実験的に決定することで生成されてもよい。
【0049】
例えば、図2に示すとおり、塩化チオニール系一次電池20の温度が、測定装置1の使用条件及び使用環境等の変化によって、時間経過共に、温度T1から温度T2に上昇し、温度T2から温度T3に上昇し、温度T3から温度T2に下降し、温度T2から温度T1に再度下降したとする。例えば、記憶部16は、図3に示すような制御データを記憶する。
【0050】
図3は、図1の記憶部16が記憶する制御データの一例を示す図である。当該制御データでは、図2の下半部に示すとおり、負荷電流パルスのピーク強度及び周期は、一例としてそれぞれI及びTで一定であるとする。周期Tは、生成された塩化膜を破壊するための負荷電流パルスを発生させる周期である。したがって、周期Tは、例えば、生成された塩化膜を直ちに破壊し、塩化チオニール系一次電池20の内部状態を制御するために十分な短い値である。例えば、周期Tが長すぎると、塩化膜の生成がその間に進行し、内部状態の制御が困難となる恐れがある。周期Tは、使用する塩化チオニール系一次電池20の特性に合わせて、例えばユーザにより適切な値に設定される。
【0051】
塩化チオニール系一次電池20の温度が温度T1であるとき、対応する負荷電流の平均強度I1は、負荷電流のパルス幅をW1としてI1=I・W1/Tである。塩化チオニール系一次電池20の温度が温度T2であるとき、対応する負荷電流の平均強度I2は、負荷電流のパルス幅をW2(>W1)としてI2=I・W2/Tである。塩化チオニール系一次電池20の温度が温度T3であるとき、対応する負荷電流の平均強度I3は、負荷電流のパルス幅をW3(>W2)としてI3=I・W3/Tである。
【0052】
このとき、図2に示すとおり、制御部15は、図3に示す制御データに基づいて、塩化チオニール系一次電池20の温度が温度T1であるとき、負荷電流の平均強度を平均強度I1に決定する。制御部15は、平均強度I1のパルスとして流れる負荷電流を電流供給部11により供給する。
【0053】
制御部15は、塩化チオニール系一次電池20の温度が温度T1から温度T2に上昇すると、図3に示す制御データに基づいて、負荷電流の平均強度を平均強度I2に決定する。すなわち、制御部15は、温度T1から温度T2へと変化したと判定すると、温度の増加に従って、負荷電流の平均強度を増加させる。制御部15は、平均強度I2のパルスとして流れる負荷電流を電流供給部11により供給する。
【0054】
制御部15は、塩化チオニール系一次電池20の温度が温度T2から温度T3に上昇すると、図3に示す制御データに基づいて、負荷電流の平均強度を平均強度I3に決定する。すなわち、制御部15は、温度T2から温度T3へと変化したと判定すると、温度の増加に従って、負荷電流の平均強度を増加させる。制御部15は、平均強度I3のパルスとして流れる負荷電流を電流供給部11により供給する。
【0055】
制御部15は、塩化チオニール系一次電池20の温度が温度T3から温度T2に下降すると、図3に示す制御データに基づいて、負荷電流の平均強度を平均強度I2に決定する。すなわち、制御部15は、温度T3から温度T2へと変化したと判定すると、温度の減少に従って、負荷電流の平均強度を減少させる。制御部15は、平均強度I2のパルスとして流れる負荷電流を電流供給部11により供給する。
【0056】
制御部15は、塩化チオニール系一次電池20の温度が温度T2から温度T1に再度下降すると、図3に示す制御データに基づいて、負荷電流の平均強度を平均強度I1に決定する。すなわち、制御部15は、温度T2から温度T1へと変化したと判定すると、温度の減少に従って、負荷電流の平均強度を減少させる。制御部15は、平均強度I1のパルスとして流れる負荷電流を電流供給部11により供給する。
【0057】
図4は、第1実施形態に係る制御モジュール10による制御方法の一例を示すフローチャートである。図4を参照しながら、第1実施形態に係る制御モジュール10による制御方法の一例について主に説明する。
【0058】
ステップS101では、制御部15は、測定装置1が動作を開始する前に予めユーザにより実験的に取得された制御データを記憶部16に格納する。
【0059】
ステップS102では、制御部15は、測定装置1が動作を開始したか否かを判定する。制御部15は、測定装置1が動作を開始したと判定すると、ステップS103の処理を実行する。制御部15は、測定装置1が動作を開始していないと判定すると、ステップS102の処理を再度実行する。
【0060】
ステップS103では、制御部15は、測定装置1が動作を開始したと判定すると、塩化チオニール系一次電池20において繰り返しのパルスとして流れる負荷電流を電流供給部11により供給する。
【0061】
ステップS104では、制御部15は、測定部Mのうち温度測定部13のみを用いて塩化チオニール系一次電池20の温度を取得する。
【0062】
ステップS105では、制御部15は、取得された塩化チオニール系一次電池20の温度が第1の値から第2の値へと変化したか否かを判定する。制御部15は、取得された塩化チオニール系一次電池20の温度が第1の値から第2の値へと変化したと判定すると、ステップS106の処理を実行する。制御部15は、取得された塩化チオニール系一次電池20の温度が第1の値から第2の値へと変化していないと判定すると、ステップS105の処理を再度実行する。
【0063】
ステップS106では、制御部15は、取得された塩化チオニール系一次電池20の温度が第1の値から第2の値へと変化したと判定すると、値の変化の方向と同一の方向に、塩化チオニール系一次電池20において繰り返しのパルスとして流れる負荷電流の平均強度を変化させる。
【0064】
ステップS107では、制御部15は、測定装置1が動作を終了したか否かを判定する。制御部15は、測定装置1が動作を終了したと判定すると、ステップS108の処理を実行する。制御部15は、測定装置1が動作を終了していないと判定すると、ステップS104の処理を再度実行する。
【0065】
ステップS108では、制御部15は、測定装置1が動作を終了したと判定すると、塩化チオニール系一次電池20において繰り返しのパルスとして流れる負荷電流の供給を停止する。
【0066】
以上のように、制御部15は、測定装置1が動作している間、上述したステップS104からステップS106までの制御処理を連続して実行する。制御部15は、ステップS108における処理を実行することで、測定装置1が動作を終了した後は負荷電流の供給を停止してもよいし、これに限定されず、ステップS108における処理を実行せずに、測定装置1が動作を終了した後も負荷電流の供給を継続してもよい。
【0067】
以上のような第1実施形態に係る制御モジュール10、測定装置1、及び制御方法によれば、塩化チオニール系一次電池20の塩化膜の除去を継続的に行うことができる。例えば、制御部15は、測定装置1が動作している間、上述したステップS104からステップS106までの制御処理を連続して実行することで、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗を定常的に一定値以下に抑制可能である。内部抵抗が定常的に一定値以下に抑制されているため、制御モジュール10は、負荷電流の大きい動作に遷移するときに、塩化膜除去の処理を付加的に行う必要はない。加えて、塩化膜の生成を未然に抑制することができるため、塩化膜の結晶化を抑制することができる。したがって、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗に不可逆な変化を与える可能性が低下する。
【0068】
例えば、測定装置1は、放電のタイミングが他の装置に依存して決定される場合であっても、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗を定常的に一定値以下に抑制しているので、他の装置の影響に基づいて負荷電流を供給するタイミングを決定する必要もない。したがって、測定装置1は、定常的な安定動作を実現可能である。
【0069】
塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗を一定値以下に抑制する上記の制御処理は、塩化チオニール系一次電池20に対する制御のみで完結しており、測定装置1の内部回路30の動作に影響を与えない。したがって、装置の種類及び数量等が異なって、内部回路30等の回路構成が変化したとしても、上述した内容と同様の制御処理が当該他の装置に対しても適用可能である。これにより、制御モジュール10を当該他の装置に流用することが容易である。
【0070】
上記第1実施形態では、図3に示すとおり、制御データにおいて、塩化チオニール系一次電池20の一の温度に対して一の平均強度が対応付けられているが、これに限定されない。例えば、制御データにおいて、塩化チオニール系一次電池20の一の温度に対して一の平均強度範囲が対応付けられていてもよい。例えば、制御データにおいて、塩化チオニール系一次電池20の一の温度範囲に対して一の平均強度が対応付けられていてもよい。例えば、制御データにおいて、塩化チオニール系一次電池20の一の温度範囲に対して一の平均強度範囲が対応付けられていてもよい。
【0071】
上記第1実施形態では、記憶部16が記憶している制御データに基づいて負荷電流の平均強度を決定すると説明したが、これに限定されない。例えば、制御部15は、温度測定部13によって取得された温度が第1の値から第2の値へと変化するときに、温度の大小に関する判定に基づいて上記の制御処理を実行してもよい。より具体的には、制御部15は、第2の値が第1の値よりも大きいと判定すると、記憶部16に予め記憶された所定量に基づいて負荷電流の平均強度を増加させてもよい。制御部15は、第2の値が第1の値よりも小さいと判定すると、記憶部16に予め記憶された所定量に基づいて負荷電流の平均強度を減少させてもよい。所定量は、固定量であってもよいし、温度の絶対値及び変化量の少なくとも一方に基づく変動量であってもよく、ユーザによって予め実験的に取得されていてもよい。
【0072】
例えば、制御部15は、温度の大小に関する判定に代えて、又は加えて、温度の変化の正負に関する判定に基づいて上記の制御処理を実行してもよい。より具体的には、制御部15は、第1の値から第2の値への変化が正であると判定すると、記憶部16に予め記憶された所定量に基づいて負荷電流の平均強度を増加させてもよい。制御部15は、第1の値から第2の値への変化が負であると判定すると、記憶部16に予め記憶された所定量に基づいて負荷電流の平均強度を減少させてもよい。所定量は、例えば、固定量であってもよいし、温度の絶対値及び変化量の少なくとも一方に基づく変動量であってもよく、ユーザによって予め実験的に取得されていてもよい。
【0073】
上記第1実施形態では、制御部15は、パルス幅を変化させることで負荷電流の平均強度を変化させるとして説明したが、これに限定されない。制御部15は、パルス幅に代えて、又は加えて、負荷電流パルスのピーク強度及び周期の少なくとも一方を変化させてもよい。
【0074】
上記第1実施形態では、制御部15は、繰り返しのパルスとして流れる負荷電流の平均強度を変化させるとして説明したが、これに限定されない。制御部15は、負荷電流の平均強度に代えて、連続して流れる負荷電流の強度を同様に変化させてもよい。
【0075】
上記第1実施形態では、制御部15は、測定部Mのうち温度測定部13のみを用いて取得した塩化チオニール系一次電池20の温度に基づいて制御処理を実行するとして説明したが、これに限定されない。制御部15は、塩化チオニール系一次電池20の温度に代えて又は加えて、塩化チオニール系一次電池20に関するパラメータとしての塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗に基づいて上記と全く同様の制御処理を実行してもよい。
【0076】
塩化膜除去のために塩化チオニール系一次電池20に与える電流供給部11による負荷電流が大きい場合、塩化チオニール系一次電池20の出力電圧が急激に低下する恐れがある。これにより、内部回路30に供給する電圧を生成する定電圧回路部14の入力電圧が低下する恐れがある。したがって、図1に示すように、定電圧回路部14の一次側には、任意の電圧保持部14aが配置されていてもよい。電圧保持部14aは、例えば、ダイオード又はスイッチ、及びコンデンサの組み合わせを含む。これにより、例えば、負荷電流パルスにより出力電圧が低下しているときであっても、定電圧回路部14の一次側電圧は、コンデンサに蓄えられた電荷によって維持される。コンデンサから電流供給部11側への電流はダイオード又はスイッチによって抑制可能である。
【0077】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る測定装置1の構成の一例を示すブロック図である。図5を参照しながら、第2実施形態に係る測定装置1の構成について主に説明する。
【0078】
第2実施形態に係る測定装置1は、第1実施形態の電池抵抗測定部12及び温度測定部13に代えて電池電圧測定部18を有する点で第1実施形態に係る測定装置1と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例等については、第1実施形態と同様であり、対応する説明が、第2実施形態に係る測定装置1においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0079】
電池電圧測定部18は、塩化チオニール系一次電池20の出力電圧を測定する任意の測定回路を含む。電池電圧測定部18は、測定部Mを構成する。
【0080】
制御部15は、電池電圧測定部18を用いて、塩化チオニール系一次電池20に関するパラメータを取得する。第2実施形態において、塩化チオニール系一次電池20に関するパラメータは、塩化チオニール系一次電池20の出力電圧において、塩化チオニール系一次電池20の開放時、すなわち無負荷時の電圧Vb1と、測定用の負荷電流の印加による有負荷時の電圧Vb2との電圧差に基づく内部抵抗を含む。
【0081】
一般的に、塩化チオニール系一次電池20の内部状態と塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗とは密接な対応関係を示す。より具体的には、塩化チオニール系一次電池20の内部における塩化膜の生成が進行すると、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗が大きくなる。逆に、塩化チオニール系一次電池20の内部における塩化膜の生成が抑制されていると、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗は小さい。第2実施形態では、制御部15は、第1実施形態と同様に塩化チオニール系一次電池20に負荷電流パルスを与え続ける。第2実施形態では、制御部15は、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗の値が後述する第1閾値Rthよりも大きいか否かの判定結果に基づいて、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗が第1閾値Rthから所定の範囲内で変動するように負荷電流の平均強度を変化させる。所定の範囲は、例えば、塩化チオニール系一次電池20によって測定装置1を正常に動作させることができる範囲として、ユーザによって予め実験的に決定される。
【0082】
制御部15は、電池電圧測定部18によって測定された無負荷時の電圧Vb1と、測定用の負荷電流の印加による有負荷時の電圧Vb2との電圧差に基づいて、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗Rnを式1のとおり算出する。
【0083】
n=(Vb1-Vb2)/Im (式1)
【0084】
ただし、Imは、測定用の負荷電流を示す。制御部15は、例えば電流供給部11を用いて測定用の負荷電流を発生させる。
【0085】
制御部15は、内部抵抗に関する情報を記憶部16に格納してもよい。内部抵抗に関する情報は、例えば、前回算出された塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗Rn-1、算出された塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗の変化量ΔRn(=Rn-Rn-1)、内部抵抗制御の基準抵抗値となる第1閾値Rth、及び塩化チオニール系一次電池20の長期使用に基づく劣化の判断基準となる第2閾値Rlimを含む。
【0086】
第1閾値Rthは、例えば、測定装置1の最も負荷が大きい内部回路30のタスク実行時に、定電圧回路部14が安定動作を継続するために最低限必要となる入力電圧を確保できる、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗値よりも小さくなるように、ユーザによって予め実験的に決定される。第2閾値Rlimは、例えば、第1閾値Rthよりも大きく、かつ上記の所定の範囲に含まれない値に決定される。
【0087】
第2閾値Rlimは、制御モジュール10が後述する制御処理を実行する前に塩化チオニール系一次電池20が使用可能な状態にあるか否かの判定基準である。例えば、塩化チオニール系一次電池20が長期使用により消耗している状態では、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗は大きくなる。そこで、制御モジュール10は、内部抵抗が大きくなる要因として、塩化チオニール系一次電池20の消耗に基づく要因と、塩化膜の生成に基づく要因とを判別する必要がある。第2閾値Rlimは、塩化チオニール系一次電池20の消耗に基づく要因によって内部抵抗が大きくなっていることを示すための値である。
【0088】
記憶部16は、内部抵抗に関する情報以外にも、パルス幅に関する情報を記憶していてもよい。パルス幅に関する情報は、決定された負荷電流パルスのパルス幅Wn、前回決定された負荷電流パルスのパルス幅Wn-1、及び負荷電流パルスのパルス幅の変化量ΔWを含む。
【0089】
負荷電流パルスのパルス幅Wn及び負荷電流パルスのパルス幅の変化量ΔWは、例えば、第1閾値Rthを基準とした内部抵抗制御を効果的に実現できるように、ユーザによって予め実験的に決定される。
【0090】
図6は、第2実施形態に係る制御モジュール10による制御方法の一例を示すフローチャートである。図6を参照しながら、第2実施形態に係る制御モジュール10による制御方法の一例について主に説明する。
【0091】
ステップS201では、制御部15は、測定装置1が動作を開始したか否かを判定する。制御部15は、測定装置1が動作を開始したと判定すると、ステップS202の処理を実行する。制御部15は、測定装置1が動作を開始していないと判定すると、ステップS201の処理を再度実行する。
【0092】
ステップS202では、制御部15は、電池電圧測定部18によって測定された電圧に基づいて式1により塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗Rnを取得する。
【0093】
ステップS203では、制御部15は、内部抵抗に関する情報を記憶部16に格納する。
【0094】
ステップS204では、制御部15は、記憶部16に格納されている内部抵抗に関する情報に基づいて、ステップS202で取得された内部抵抗Rnが第2閾値Rlim以下であるか否かを判定する。制御部15は、Rn≦Rlimであると判定すると、ステップS206の処理を実行する。制御部15は、Rn>Rlimであると判定すると、ステップS205の処理を実行する。
【0095】
ステップS205では、制御部15は、ステップS204においてRn>Rlimであると判定すると、負荷電流パルスのパルス幅Wnをゼロに決定し、かつ報知部17を用いてユーザに対して報知する。
【0096】
ステップS206では、制御部15は、ステップS204においてRn≦Rlimであると判定すると、内部抵抗Rnが第1閾値Rth以上であるか否かを判定する。制御部15は、Rn≧Rthであると判定すると、ステップS208の処理を実行する。制御部15は、Rn<Rthであると判定すると、ステップS207の処理を実行する。
【0097】
ステップS207では、制御部15は、ステップS206においてRn<Rthであると判定すると、負荷電流パルスのパルス幅Wnを、Wn=Wn-1-ΔWに決定する。すなわち、制御部15は、前回決定された負荷電流パルスのパルス幅Wn-1から変化量ΔW分だけ減算して負荷電流パルスのパルス幅Wnを決定する。
【0098】
ステップS208では、制御部15は、ステップS206においてRn≧Rthであると判定すると、内部抵抗Rn-1が第1閾値Rth以下であるか否かを判定する。制御部15は、Rn-1≦Rthであると判定すると、ステップS209の処理を実行する。制御部15は、Rn-1>Rthであると判定すると、ステップS210の処理を実行する。
【0099】
ステップS209では、制御部15は、ステップS208においてRn-1≦Rthであると判定すると、負荷電流パルスのパルス幅Wnを、Wn=Wn-1+ΔWに決定する。すなわち、制御部15は、前回決定された負荷電流パルスのパルス幅Wn-1から変化量ΔW分だけ加算して負荷電流パルスのパルス幅Wnを決定する。
【0100】
ステップS210では、制御部15は、ステップS208においてRn-1>Rthであると判定すると、内部抵抗の変化量ΔRnが前回算出された内部抵抗の変化量ΔRn-1以上であるか否かを判定する。制御部15は、ΔRn≧ΔRn-1である、すなわち、前回の内部抵抗の変化量以上の変化量で内部抵抗Rnが変化したと判定すると、ステップS209の処理を実行する。制御部15は、ΔRn<ΔRn-1である、すなわち、前回の内部抵抗の変化量よりも小さい変化量で内部抵抗Rnが変化したと判定すると、ステップS211の処理を実行する。
【0101】
ステップS211では、制御部15は、ステップS210においてΔRn<ΔRn-1であると判定すると、負荷電流パルスのパルス幅Wnを、Wn=Wn-1に決定する。すなわち、制御部15は、前回決定された負荷電流パルスのパルス幅Wn-1を維持する。
【0102】
ステップS212では、制御部15は、ステップS207、S209、及びS211のいずれかによって決定された負荷電流パルスのパルス幅Wnに応じて負荷電流を電流供給部11により供給する。
【0103】
ステップS213では、制御部15は、測定装置1が動作を終了したか否かを判定する。制御部15は、測定装置1が動作を終了したと判定すると、ステップS214の処理を実行する。制御部15は、測定装置1が動作を終了していないと判定すると、ステップS202の処理を再度実行する。
【0104】
ステップS214では、制御部15は、ステップS213において測定装置1が動作を終了したと判定すると、塩化チオニール系一次電池20において繰り返しのパルスとして流れる負荷電流の供給を停止する。
【0105】
以上のように、制御部15は、測定装置1が動作している間、上述したステップS202からステップS212までの制御処理を連続して実行する。制御部15は、第1実施形態と同様に、ステップS214における処理を実行することで、測定装置1が動作を終了した後は負荷電流の供給を停止してもよいし、これに限定されず、ステップS214における処理を実行せずに、測定装置1が動作を終了した後も負荷電流の供給を継続してもよい。
【0106】
図7は、第2実施形態に係る制御モジュール10によって実行される制御処理の第1例を示す模式図である。図7は、図6に示すフローチャートの一部の制御処理を説明するための図である。
【0107】
図6を参照しながら説明したように、塩化チオニール系一次電池20の測定された内部抵抗と、内部抵抗制御の基準抵抗値となる第1閾値Rthとの間の関係性に基づいて、塩化チオニール系一次電池20に与える負荷電流パルスのパルス幅が変化する。例えば、内部抵抗が第1閾値Rthよりも大きい場合、塩化膜を除去して内部抵抗を小さくするように負荷電流パルスのパルス幅が大きくなる。一方で、内部抵抗が第1閾値Rthよりも小さい場合、塩化膜の生成が抑制されていることから平均強度の高い負荷電流パルスを積極的に与える必要はなく、負荷電流パルスのパルス幅が小さくなる。
【0108】
図7を参照すると、例えば、負荷電流パルスのピーク強度及び周期は、一例としてそれぞれ一定であるとする。図6に示す制御処理は、一定の周期Tごとに連続的に繰り返される。負荷電流パルスのパルス幅Wnの初期値W0は、制御対象となる塩化チオニール系一次電池20に基づく適切な値に、例えばユーザによって予め実験的に設定される。
【0109】
制御部15は、取得された塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗が第1の値から第2の値へと変化するときに、例えば値の変化の方向と同一の方向に、繰り返しのパルスとして流れる負荷電流の平均強度を変化させる制御処理を、測定装置1が動作している間連続して実行する。
【0110】
第1の値が、例えば、図7に示す内部抵抗R0であり、第2の値が、例えば、図7に示す内部抵抗R1であるとき、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗が上昇する。このとき、制御部15は、内部抵抗R0から内部抵抗R1へと変化したと判定すると、内部抵抗の増加に従って、負荷電流の平均強度を増加させる。第1の値が、例えば、図7に示す内部抵抗R3であり、第2の値が、例えば、図7に示す内部抵抗R4であるとき、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗が下降する。このとき、制御部15は、内部抵抗R3から内部抵抗R4へと変化したと判定すると、内部抵抗の減少に従って、負荷電流の平均強度を減少させる。
【0111】
図8は、第2実施形態に係る制御モジュール10によって実行される制御処理の第2例を示す模式図である。図8は、図6に示すフローチャートの一部の制御処理を説明するための図である。
【0112】
図8に示すとおり、塩化チオニール系一次電池20の消耗に基づく要因によって内部抵抗が大きくなると、その上昇は、負荷電流の平均強度を大きくしても抑制困難である。したがって、制御部15は、内部抵抗Rnに関する第2閾値Rlimよりも、取得された内部抵抗Rnの値が大きいか否かを判定する。制御部15は、取得された内部抵抗Rnの値が第2閾値Rlimよりも大きいと判定すると、制御対象となっている塩化チオニール系一次電池20が使用済であると決定し、報知部17によりユーザに対する報知を実行する。加えて、制御部15は、取得された内部抵抗Rnの値が第2閾値Rlimよりも大きいと判定すると、負荷電流パルスのパルス幅Wnをゼロにして負荷電流パルスの生成を停止する。
【0113】
以上のような第2実施形態に係る制御モジュール10、測定装置1、及び制御方法によれば、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗の目標値を第1閾値Rthとして定め、第1閾値Rthから所定の範囲内で内部抵抗が変動するように負荷電流の平均強度を変化させる。これにより、塩化チオニール系一次電池20の塩化膜の除去を継続的に行うことができ、測定装置1の動作中におけるいかなる状況においても、測定装置1が動作するために必要な電力を塩化チオニール系一次電池20から確実に取り出すことが可能である。
【0114】
ユーザは、測定装置1における全てのタスクにおいて、最も電力を消費する、すなわち放電電流が最も大きいタスクを予め把握することで、そのタスクが十分に実行可能な塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗値を決定することが可能となる。制御モジュール10は、決定された内部抵抗値を第1閾値Rthとして記憶部16に格納する。これにより、測定装置1は、動作遷移前であっても、塩化膜除去の前処理を行うことなく、電力消費の小さい動作から、大きい動作にスムーズに遷移することができる。
【0115】
塩化チオニール系一次電池20に対して定常的に負荷電流を与えているため、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗が極端に上昇する恐れは小さく、塩化膜の結晶化による不可逆な変化が起こりにくい。
【0116】
ユーザは、測定装置1以外の他の装置と組み合わせて測定装置1が動作する場合であっても、測定装置1及び他の装置に関わらず、電力消費に関する全てのタスクの中で、最も電力を消費する、すなわち放電電流が最も大きいタスクを予め把握することで、そのタスクが十分に実行可能な塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗値を決定することが可能となる。制御モジュール10は、決定された内部抵抗値を第1閾値Rthとして記憶部16に格納しておけば、他の装置との組み合わせに基づくいかなる測定装置1の動作においても、電源ダウン及び回路の暴走等を引き起こす恐れは小さい。
【0117】
他の製品において、回路構成及び動作するタスクが一の測定装置1から変化したとしても、ユーザは、その構成における最大電力消費タスクを把握して、制御モジュール10の記憶部16に格納される第1閾値Rthのデータのみを変更すればよい。したがって、製品が変わったとしても、制御モジュール10による制御処理に関する技術の流用が容易である。
【0118】
上記第2実施形態では、制御モジュール10は、電池電圧測定部18を有すると説明したが、これに限定されない。制御モジュール10は、電池電圧測定部18に代えて、又は加えて第1実施形態の電池抵抗測定部12のような構成部を有してもよい。
【0119】
上記第2実施形態では、制御モジュール10は、塩化チオニール系一次電池20の内部抵抗の測定値Rn、Rn-1、及び内部抵抗の変化量ΔRn、ΔRn-1に基づいて制御処理を実行すると説明したが、これに限定されない。制御モジュール10は、内部抵抗値を制御するにあたって、他のパラメータを用いてもよい。例えば、制御モジュール10は、測定データを複数使用し、その統計処理によって、制御量を変化させてもよいし、比例制御又はPID制御を用いてもよい。
【0120】
上記第2実施形態では第1実施形態と同様に、図5に示すように、定電圧回路部14の一次側に、任意の電圧保持部14aが配置されていてもよい。電圧保持部14aは、例えば、ダイオード又はスイッチ、及びコンデンサの組み合わせを含む。これにより、例えば、負荷電流パルスにより出力電圧が低下しているときであっても、定電圧回路部14の一次側電圧は、コンデンサに蓄えられた電荷によって維持される。コンデンサから電流供給部11側への電流はダイオード又はスイッチによって抑制可能である。
【0121】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0122】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0123】
例えば、上述した制御モジュール10の動作における各ステップ及び各ステップに含まれる機能等は、論理的に矛盾しないように再配置可能であり、ステップの順序を変更したり、複数のステップを1つに組み合わせたり、又は1つのステップを複数に分割したりすることが可能である。
【0124】
例えば、本開示は、上述した制御モジュール10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0125】
制御モジュール10は、上記第2実施形態に係る制御処理に加えて、例えば第1実施形態において説明した塩化チオニール系一次電池20の温度に基づく制御を並行して実行してもよい。
【符号の説明】
【0126】
1 測定装置
10 制御モジュール
11 電流供給部
12 電池抵抗測定部
13 温度測定部
14 定電圧回路部
14a 電圧保持部
15 制御部
16 記憶部
17 報知部
18 電池電圧測定部
20 塩化チオニール系一次電池
30 内部回路
M 測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8