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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】感熱記録体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/42 20060101AFI20230627BHJP
   B41M 5/44 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B41M5/42 211
B41M5/44 210
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019190521
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021066015
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和之
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-275872(JP,A)
【文献】特開平11-180040(JP,A)
【文献】特開2008-062527(JP,A)
【文献】特開2003-080846(JP,A)
【文献】特開2009-279833(JP,A)
【文献】国際公開第2009/122850(WO,A1)
【文献】特開2013-230619(JP,A)
【文献】特開2010-094981(JP,A)
【文献】特開2016-193394(JP,A)
【文献】特開2016-165835(JP,A)
【文献】特開2017-177346(JP,A)
【文献】特開2015-134425(JP,A)
【文献】特開2010-228171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28-5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に中空粒子、接着剤及び保水剤を含有する下塗り層と、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層とをこの順に有し、前記中空粒子の最大粒子径(D100)が10~30μmである感熱記録体であって、
前記支持体が酸性紙または中性紙であり、前記下塗り層中の接着剤として粒子径が165nm以上のスチレン・ブタジエン共重合体を含有し、前記保水剤としてカルボキシメチルセルロースを含有する、感熱記録体。
【請求項2】
前記スチレン・ブタジエン共重合体のガラス転移温度が10℃以下である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記スチレン・ブタジエン共重合体の粒子径が190~300nmである、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
前記中空粒子の中空率が65%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項5】
前記中空粒子の含有割合が下塗り層の全固形量のうち、5~90質量%である、請求項1~のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の感熱記録体の製造方法であって、中空粒子、接着剤及び保水剤を含む下塗り層用塗料をカーテン塗布法により塗布する工程を含む感熱記録体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無色または淡色のロイコ染料と、フェノール類または有機酸との加熱発色反応を利用して発色画像を記録する感熱記録体は、広く実用化されている。このような感熱記録体は、単に加熱するだけで発色画像が形成されるため、記録装置をコンパクトにでき、記録装置の保守も容易で、騒音の発生が少ないなどの利点を有している。そのため感熱記録体は、ラベルプリンタ等の発行機、自動券売機、CD・ATM、飲食店等の注文伝票出力機、科学研究用機器のデータ出力機等における各種情報記録材料として広範囲に使用されている。
【0003】
感熱記録体が多様な用途に展開されるに伴い、感熱記録体の性能向上に対する要請も高くなってきている。すなわち、画像が濃く鮮明に発色すること、白抜け(印字欠け)が発生せず高画質であること、といった品質上の要望が存在している。
【0004】
そこで、このような要望に対して、多くの改良技術が開発されている。例えば、感熱記録体の支持体と感熱記録層との間に設けられた下塗り層に中空粒子を含有させて、下塗り層の断熱性を高めることにより、感熱記録体の感度を向上させるという方法が知られている。この下塗り層に中空粒子を含有させる方法については、さらに多くの改良技術が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、中空粒子と結着樹脂を含有する下塗り層において、中空率が60~98%であり、その最大粒子径(D100)が5.0~10.0μmであり、その最大粒子径と50容積%頻度の粒子径(D50)との比率D100/D50が1.5~3.0である中空粒子を用いた感熱記録材料が開示されている。
また、特許文献2には、下塗り層に用いる熱膨張性樹脂粒子としては、未膨張時の平均粒子径が好ましくは1~25μmであり、加熱により体積が10~50倍に膨張し、中空率が80%以上となるものが好ましいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許4108380号公報
【文献】特許5781885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の感熱記録材料は、その中空粒子の最大粒子径(D100)が5.0~10.0μmと小さく、断熱性が不十分なことから、印字エネルギーが拡散しやすく、記録濃度に改善の余地を有するものであった。
また、特許文献2に記載の感熱記録材料は、熱膨張性樹脂粒子の粒子径を均一化する観点を持たず、発泡後の粒子径のばらつきが大きいことにより、下塗り層の表面の平滑性が低下するため、画質に改善の余地を有するものであった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、印字欠けが少ない高画質で鮮明な印字画質を与え、高感度で中間調における記録濃度に優れる感熱記録体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、下塗り層に用いる中空粒子についての検討を進めた。その結果、粗大な中空粒子を使用し、さらに保水剤を使用すれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこのような知見を踏まえて完成するに至ったものである。すなわち、本発明は以下のような構成を有している。
【0010】
項1:支持体上に中空粒子、接着剤及び保水剤を含有する下塗り層と、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層とをこの順に有し、前記中空粒子の最大粒子径(D100)が10~30μmである感熱記録体。
項2:前記下塗り層中の接着剤が水不溶性樹脂からなる水分散性接着剤である、項1に記載の感熱記録体。
項3:前記水不溶性樹脂がスチレン・ブタジエン共重合体である、項2に記載の感熱記録体。
項4:前記スチレン・ブタジエン共重合体のガラス転移温度が10℃以下である、項3に記載の感熱記録体。
項5:前記スチレン・ブタジエン共重合体の粒子径が150~300nmである、項3または4に記載の感熱記録体。
項6:前記下塗り層中の保水剤が水溶性樹脂からなる水溶性保水剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項7:前記水溶性樹脂が澱粉、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項6に記載の感熱記録体。
項8:前記中空粒子の中空率が65%以上である、項1~7のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項9:前記中空粒子の含有割合が下塗り層の全固形量のうち、5~90質量%である、項1~8のいずれか1項に記載の感熱記録体。
項10:項1~9のいずれか1項に記載の感熱記録体の製造方法であって、中空粒子、接着剤及び保水剤を含む下塗り層用塗料をカーテン塗布法により塗布する工程を含む感熱記録体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感熱記録体は、印字欠けが少ない高画質で鮮明な印字画質を与え、高感度で中間調における記録濃度に優れている。
【0012】
本発明の実施形態について説明する。但し、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書中において、「含む、含有する」なる表現については、「含む」、「実質のみからなる」、及び「のみからなる」旨の概念を含む。
【0013】
本発明は、支持体上に、中空粒子、接着剤及び保水剤を含有する下塗り層と、ロイコ染料及び呈色剤を含有する感熱記録層とをこの順に有し、前記中空粒子の最大粒子径(D100)が10~30μmである感熱記録体である。
【0014】
[支持体]
本発明における支持体は、種類、形状、寸法等に格別の限定はなく、例えば、上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等の他、各種透明支持体等の中から適宜選択して使用することができる。支持体の厚みは特に制限されず、通常、20~200μm程度である。また、支持体の密度は特に制限されず、0.60~0.85g/cm程度が好ましい。
【0015】
[下塗り層]
本発明の感熱記録体は、支持体と感熱記録層との間に下塗り層を有する。下塗り層は、最大粒子径(D100)が10~30μmである中空粒子を含有し、さらに接着剤及び保水剤を含有している。
【0016】
(中空粒子)
中空粒子は、クッション性を向上する観点から有機樹脂からなることが好ましい。中空粒子を含有することによって高い断熱性を有する下塗り層は、感熱記録層に加えられた熱の拡散を防ぎ、感熱記録体としての感度を高めることができる。
【0017】
有機樹脂からなる中空粒子は、その製造方法の違いによって、発泡タイプと非発泡タイプとに分けることができる。これら二種のうち、発泡タイプの中空粒子は、一般に、非発泡タイプの中空粒子より平均粒子径が大きく中空率も高い。そのため、発泡タイプの中空粒子は、非発泡タイプの中空粒子より良好な感度、画質が得られるが、下塗り層の平滑性が低下傾向となるため、保水剤を含有させることによって、接着剤の支持体側へのマイグレーションを抑え、塗工層の膜厚を維持して平滑性を高めることができる。
【0018】
一方、非発泡タイプの中空粒子は、一般に、平均粒子径が小さく中空率も低い。そのため、良好な感度、画質を得るには、下塗り層における中空粒子の含有量を高くする必要がある。中空粒子の含有量を高くすると、下塗り層用塗料の保水性が低下し、塗工性が低下傾向となる。
【0019】
以下に、発泡タイプの中空粒子の代表的な製造方法を記載する。
まず、樹脂の内部に揮発性液体を封じ込めた粒子を作製し、加熱により前記樹脂を軟化させると共に、前記粒子の内部の液体を気化及び膨張させることで、中空粒子を製造できる。
【0020】
発泡タイプの中空粒子は、製造過程で内部の液体を加熱膨張させることにより、中空率が大きくなり、高い断熱性が得られるため、感熱記録体の感度を高め、記録濃度を向上させることができる。感度の向上は、特に、感熱記録層に加えられる熱エネルギーが小さい中間調領域を発色させる場合に重要である。また、断熱性の高い下塗り層を介して感熱記録層を形成すれば、感熱記録層に加えられた熱の拡散を防ぐことで、画像均一性に優れ、画質を向上させることもできる。そのため、本実施形態では、下塗り層の断熱性の向上に優れた発泡タイプの中空粒子を用いることが好ましい。
【0021】
発泡タイプの中空粒子に用いることができる樹脂には、スチレン-アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリロニトリルを構成成分とするアクリル系樹脂)、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等、ポリ塩化ビニリデンとアクリルニトリルを主体とする共重合体樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。発泡タイプの中空粒子の内部に含まれる気体としては、プロパン、ブタン、イソブタン、空気等が一般的である。
中空粒子に用いる樹脂には、上記の種々の樹脂の中でも発泡粒子の形状を維持する強度の観点からアクリロニトリル樹脂やポリ塩化ビニリデンとアクリルニトリルを主体とする共重合体樹脂が好ましい。
【0022】
一方、非発泡タイプの中空粒子の製造方法は、溶液中でシードを重合させた後に、シードを包むように他の樹脂を重合させ、その後内部のシードを膨潤及び溶解させて除去することにより、内部に空洞を形成するものである。内部のシードを膨潤及び溶解させて除去するときには、アルカリ水溶液等が用いられる。アルカリ膨潤性を有するコア粒子を、アルカリ膨潤性を有しないシェル層で被覆したコア-シェル粒子をアルカリ膨潤処理することにより、平均粒子径が比較的大きい非発泡タイプの中空粒子を得ることもできる。
【0023】
非発泡タイプの中空粒子の製造方法に適性がある単量体としては、スチレン系、アクリル系、アクリロニトリル系等のビニル系単量体がある。スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられる。アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。アクリロニトリル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。その他のビニル系単量体としては、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、無水マレイン酸、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0024】
上記の種々の単量体の中でも、製造の容易さの観点から、スチレン系単量体とアクリル系単量体の組み合わせが好ましく、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせがより好ましい。すなわち、中空粒子は、スチレン-アクリル系樹脂からなることが好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂からなることがより好ましい。
【0025】
本発明における中空粒子の最大粒子径は、10~30μmであり、15~25μmであることが好ましい。最大粒子径は、D100とも呼称される。
中空粒子の最大粒子径が10μm以上であると下塗り層のクッション性が向上するため、印字時における感熱記録体のサーマルへッドへの密着性が向上し、高画質の感熱記録体が得られる。この高画質は、最大記録濃度(Dmax)を与えるより低いエネルギーで発色させる中間調における記録濃度の向上をもたらすことができる。
一方、中空粒子の最大粒子径が30μm以下であると下塗り層の平滑性が向上するため、下塗り層を介して設ける感熱記録層を均一化することができ、画像の白抜けの起こりづらい感熱記録体が得られる。
中空粒子の最大粒子径(D100)は、レーザー回析式粒度分布測定装置によって測定することができる。また、電子顕微鏡を使用し、粒子画像(SEM画像)から粒子径をそれぞれ測定し、10個の平均値で示しても構わない。
【0026】
中空粒子の中空率は、65%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
中空粒子の中空率は、IPA法により真比重を測定し、真比重値から以下のようにして求められる。
(1)サンプルの前処理
・サンプルを60℃で一昼夜乾燥してサンプルとする。
(2)試薬
・イソプロピルアルコール(IPA:試薬一級)
(3)測定法
・メスフラスコを精秤する(W1)。
・メスフラスコに乾燥済サンプルを約0.5g取り精秤する(W2)。
・IPAを約50mg加え、十分に振とうして完全にカプセル外の空気を除去する。
・IPAを標線まで加えて精評する(W3)。
・ブランクとしてメスフラスコにIPAのみを標線まで加え精評する(W4)。
(4)真比重の算出
真比重={(W2-W1)×((W4-W1)/100)}/{(W4-W1)-(W3-W2)}
(5)中空率の算出
中空率(%)={1-1/(1.1/真比重)}×100
【0028】
また、中空率は、次式(d/D)×100でも求められる値である。該式中、dは中空粒子の内径を示し、Dは中空粒子の外径を示す。中空粒子の平均粒子径は、0.5~12μm程度が好ましく、3~12μm程度がより好ましい。
【0029】
中空粒子の含有割合は、下塗り層の全固形量のうち、5~90質量%であることが好ましく、5~70質量%であることがより好ましく、5~50質量%であることがさらに好ましく、10~50質量%が特に好ましい。中空粒子の含有割合が5質量%以上であると、下塗り層の断熱性を向上させることができる。一方、中空粒子の含有割合が90質量%以下であると、塗工性等の面でも問題が生じづらく、均一な下塗り層を形成し易く、記録濃度を向上できる。
また、下塗り層には、吸油性顔料も加えることが好ましい。吸油性顔料を下塗り層に加えることでスティッキングやヘッド粕といった印字障害を効果的に抑えることができる。吸油性顔料としては、例えば焼成カオリンを挙げることができる。吸油性顔料の含有割合は、下塗り層の全固形量のうち、2~80質量%であることが好ましい。
【0030】
(接着剤)
接着剤としては、水不溶性樹脂からなる水分散性接着剤が好ましい。水分散性接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、シリル化ウレタン、アクリル・シリコン複合体、及びアクリル・シリコン・ウレタン複合体、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、ポリウレタン樹脂等のラテックスが挙げられる。中でも、好ましくはスチレン・ブタジエン共重合体である。ラテックスの含有割合は、広い範囲で選択できるが、一般には下塗り層の全固形量のうち、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。ラテックスの含有割合を10質量%以上とすることにより、下塗り層のクッション性をより一層高められる。
【0031】
接着剤(特に、ラテックス)のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず、10℃以下が好ましく、5℃以下がより好ましく、-10℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度が10℃以下の接着剤を使用することで、下塗り層のクッション性をより一層高められる。一方、-50℃以下ではベタツキが生じて好ましくないことから、-40℃以上が好ましい。
【0032】
接着剤(特に、ラテックス)の平均粒子径は、特に制限されず、150nm以上が好ましく、165nm以上がより好ましく、190nm以上がさらに好ましい。一方、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。平均粒子径を150nm以上とすることにより、ラテックスの支持体側へのマイグレーションを効果的に抑えて、均一な下塗り層を形成することができる。平均粒子径を300nm以下とすることにより、ラテックスの融着によって空隙が生じるのを抑えて、感熱記録層用塗料の浸透を抑えて均一な感熱記録層を形成することができる。
【0033】
(保水剤)
保水剤は、下塗り層に含有させることによって、下塗り層用塗料の支持体側へのマイグレーション、特に接着剤成分のマイグレーションを抑え、中空粒子が偏りのない均一に分布した下塗り層を形成することができる。中空粒子の偏在性が減少すれば下塗り層の平滑性が向上するため、下塗り層を介して設けられる感熱記録層を均一化することができる。これにより、最大粒子径が10~30μmと比較的大きい中空粒子を下塗り層中に均一に分布させ、画像の白抜け等を抑止することができ、最高発色濃度も向上する。保水剤は、水溶性樹脂からなる水溶性保水剤であることが好ましい。なお、本発明において、下塗り層中に最大粒子径(D100)が10~30μmである中空粒子が含有される場合、下塗り層に含有される水溶性樹脂は保水剤に該当し、接着剤には該当しないものとする。
【0034】
保水剤には、例えば、セルロースおよびその誘導体、高分子多糖類、ポリアクリル酸変性物、アルギン酸ソーダ、および無水マレイン酸共重合体など各種公知の材料を適宜使用することができる。これらの中でも、澱粉、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性樹脂であることが好ましい。ポリビニルアルコールの具体例としては、例えば完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。澱粉の具体例としては、例えば澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、酢酸澱粉等の誘導体が挙げられる。保水剤の含有割合は、特に限定されないが下塗り層の全固形量のうち、0.3~5質量%の範囲が好ましく、0.5~2質量%の範囲がより好ましい。0.3質量%以上とすることにより、マイグレーションをより一層効果的に抑えることができる。5質量%以下とすることにより、塗料の粘度増加を抑制し塗工適性に優れる。また、耐水性が低下して、水の浸透により膨張(水ぶくれ)が発生し、下塗り層が剥がれてしまうおそれがない。
【0035】
下塗り層は、一般に水を媒体として、中空粒子、接着剤及び保水剤、必要により焼成カオリン等の吸油性顔料、助剤等を混合することにより調製された下塗り層用塗料を塗布した後、乾燥されて支持体上に形成される。下塗り層用塗料の塗布量は、特に限定するものではないが、乾燥重量で2~20g/m程度が好ましく、2~12g/m程度がより好ましい。
【0036】
[感熱記録層]
本発明の感熱記録体における感熱記録層には、無色または淡色の各種公知のロイコ染料を含有させることができる。そのようなロイコ染料の具体例を以下に挙げる。
【0037】
ロイコ染料の具体例としては、例えば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、フルオラン等の青発色性染料、3-(N-エチル-N-p-トリル)アミノ-7-N-メチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、ローダミンB-アニリノラクタム等の緑発色性染料、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-アニリノラクタム、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン等の赤発色性染料、3-(N-エチル-N-イソアミル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ(n-ペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アリニノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-(N-イソアミル-N-エチルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-2-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-〔N-(3-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ〕-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-〔N-(3-エトキシプロピル)-N-メチルアミノ〕-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジ(n-ブチルアミノ)-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、4,4’-ビス-ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン、3-ジエチルアミノ-7-ブチルアミノフルオラン、3-エチル-トリルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-シクロヘキシル-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-(β-エトキシエチル)アミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-(γ-クロロプロピル)アミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-イソアミル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-クロロアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-(p-トルイジノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2,2-ビス{4-〔6’-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-3’-メチルスピロ〔フタリド-3,9’-キサンテン-2’-イルアミノ〕フェニル}プロパン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-トリフルオロメチルフェニル)アミノフルオラン等の黒発色性染料、3,3-ビス〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-p-(p-ジメチルアミノアニリノ)アニリノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-p-(p-クロロアニリノ)アニリノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等の近赤外領域に吸収波長を有する染料等が挙げられる。もちろん、これらに制限されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0038】
かかるロイコ染料の含有割合は、特に制限されず、感熱記録層の全固形量中、3~30質量%程度が好ましく、5~25質量%程度がより好ましく、7~20質量%程度が更に好ましい。3質量%以上とすることにより発色能力を高めて、印字濃度を向上できる。30質量%以下とすることにより、耐熱性を向上できる。
【0039】
呈色剤の具体例としては、例えば、4-tert-ブチルフェノール、4-アセチルフェノール、4-tert-オクチルフェノール、4,4’-sec-ブチリデンジフェノール、4-フェニルフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、4,4’-シクロヘキシリデンジフェニル、4,4’-シクロヘキシリデンジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、4,4’-ビス(p-トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス〔4-(4-ヒドロキシフェニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-n-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アリルオキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン、3,3’-ジアリル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4-ヒドロキシ-4’-メチルジフェニルスルホン、4-アリルオキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン、3,4-ジヒドロキシフェニル-4’-メチルフェニルスルホン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシフタル酸ジメチル、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸プロピル、4-ヒドロキシ安息香酸-sec-ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェニル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、4-ヒドロキシ安息香酸トリル、4-ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル等のフェノール性化合物、または安息香酸、p-クロロ安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3-tert-ブチルサリチル酸、3-イソプロピルサリチル酸、3-ベンジルサリチル酸、3-(α-メチルベンジル)サリチル酸、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸、4-〔2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸、4-〔3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸、5-〔p-(2-p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸、4-{3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛等の芳香族カルボン酸、及びこれらフェノール性化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属との塩、更にはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等の有機酸性物質、N-p-トルエンスルホニル-N’-3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、N-p-トルエンスルホニル-N’-p-ブトキシカルボニルフェニルウレア、N-p-トリルスルホニル-N’-フェニルウレア、4,4’-ビス(p-トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン等のウレア化合物、N,N’-ジ-m-クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、N-(p-トルエンスルホニル)カルバモイル酸p-クミルフェニルエステル、N-(p-トルエンスルホニル)カルバモイル酸p-ベンジルオキシフェニルエステル、N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、N-(o-トルオイル)-p-トルエンスルホアミド等の分子内に-SONH-結合を有する有機化合物、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム等の無機酸性物質等が挙げられる。
【0040】
呈色剤としては、さらに、下記一般式(1)で表される4,4’-ビス〔(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4,4’-ビス〔(2-メチル-5-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4-(2-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド-4’-(4-メチル-5-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイドジフェニルスルホン等のウレアウレタン誘導体、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルホン誘導体等が挙げられる。
【0041】
【化1】
【0042】
【化2】
【0043】
(式中、nは1~6の整数を表す。)
呈色剤は、もちろん、これらに制限されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0044】
かかる呈色剤の含有量は、特に制限されず、使用されるロイコ染料に応じて調整すればよく、一般にロイコ染料1質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましく、1.2質量部以上がより一層好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。また、呈色剤の含有量はロイコ染料1質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、4質量部以下が更に好ましく、3.5質量部以下が特に好ましい。0.5質量部以上とすることにより、記録性能を高めることができる。一方、10質量部以下とすることにより、高温環境下での地肌カブリを効果的に抑えることができる。
【0045】
本発明では、感熱記録層中に、主に発色像の保存性をより一層高めるために、保存性改良剤を更に含有させることができる。このような保存性改良剤としては、例えば、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-〔1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)〕ビスフェノール、4,4’-〔1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)〕ビスフェノール等のフェノール化合物;4-ベンジルオキシフェニル-4’-(2-メチル-2,3-エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4-(2-メチル-1,2-エポキシエチル)ジフェニルスルホン、4-(2-エチル-1,2-エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物;並びに1,3,5-トリス(2,6-ジメチルベンジル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。もちろん、これらに制限されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0046】
保存性改良剤を使用する場合、その使用量は、保存性改良のために有効な量とすればよく、通常は、感熱記録層の全固形量中、1~30質量%程度が好ましく、5~20質量%程度がより好ましい。
【0047】
本発明における感熱記録層中には増感剤を含有させることもできる。これにより、記録感度を高めることができる。増感剤としては、例えば、ステアリン酸アミド、メトキシカルボニル-N-ステアリン酸ベンズアミルド、N-ベンゾイルステアリン酸アミド、N-エイコサン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N-メチロールステアリン酸アミド、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジオクチル、ジフェニルスルホン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニル、2-ナフチルベンジルエーテル、m-ターフェニル、p-ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ-p-クロロベンジルエステル、シュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステル、シュウ酸ジベンジルエステル、p-トリルビフェニルエーテル、ジ(p-メトキシフェノキシエチル)エーテル、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-メトキシフェノキシ)エタン、1,2-ジ(4-クロロフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシエタン、1-(4-メトキシフェノキシ)-2-(3-メチルフェノキシ)エタン、p-メチルチオフェニルベンジルエーテル、1,4-ジ(フェニルチオ)ブタン、p-アセトトルイジド、p-アセトフェネチジド、N-アセトアセチル-p-トルイジン、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン、ジ(β-ビフェニルエトキシ)ベンゼン、p-ジ(ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1-イソプロピルフェニル-2-フェニルエタン、アジピン酸ジ-o-クロルベンジル、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、1,3-ビス(2-ナフトキシ)プロパン、ジフェニル、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは支障のない範囲で併用できる。増感剤の含有割合は、増感のために有効な量とすればよく、通常は、感熱記録層の全固形量中、2~40質量%程度が好ましく、5~25質量%程度がより好ましい。
【0048】
感熱記録層の白色度向上、及び画像の均一性向上のため、白色度が高く、平均粒子径が10μm以下の微粒子顔料を感熱記録層に含有させることができる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、焼成クレー、シリカ、珪藻土、合成珪酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウム、表面処理されたシリカ等の無機顔料、並びに、尿素-ホルマリン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機顔料が使用できる。顔料の含有割合は、発色濃度を低下させない程度の量、すなわち、感熱発色層の全固形量中50質量%以下であることが好ましい。
【0049】
感熱記録層を構成する他の成分材料としては接着剤を用い、更に必要により、架橋剤、ワックス類、金属石鹸、耐水化剤、分散剤、有色染料、蛍光染料等を用いることができる。
【0050】
感熱記録層用塗料に使用される接着剤としては、例えば、水溶性または水分散性の水性接着剤を使用できる。水溶性接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体塩、スチレン-アクリル酸共重合体塩、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩、エチレン-無水マレイン酸共重合体塩、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム等が挙げられる。水分散性接着剤としては、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリル化ウレタン、アクリル-シリコン複合体、及びアクリル-シリコン-ウレタン複合体、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、ポリウレタン樹脂等のラテックスが挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を併用して使用することができる。これらの少なくとも1種を、感熱記録層の全固形量中、好ましくは5~50質量%程度、より好ましくは10~40質量%程度の範囲で配合される。
【0051】
感熱記録層またはその他の層の接着剤を硬化させる架橋剤を感熱記録層中に含有させることができる。これにより、感熱記録層の耐水性を向上させることができる。架橋剤としては、例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、グリオキシル酸塩、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物;過硫酸アンモニウム、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物;硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマー、ヒドラジド化合物、グリオキシル酸塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。架橋剤の使用量は、感熱記録層の全固形量100質量部に対し、1~10質量部程度の範囲が好ましい。これにより、感熱記録層の耐水性を向上することができる。
【0052】
ワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類;例えば、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及びその誘導体等を挙げることができる。
【0053】
金属石鹸としては、高級脂肪酸多価金属塩、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、及びオレイン酸亜鉛等を挙げることができる。また、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱記録層中に、更に撥油剤、消泡剤、粘度調節剤等の各種助剤を添加することができる。
【0054】
感熱記録層は、一般に水を分散媒体とし、ロイコ染料と呈色剤、必要により増感剤と保存性改良剤を一緒に、または別々にボールミル、コボールミル、アトライター、縦型及び横型のサンドミル等の各種撹拌・湿式粉砕機によりポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、スチレン-無水マレイン酸共重合体塩等のような水溶性合成高分子化合物、その他界面活性剤と共に分散して分散液とした後、平均粒子径が2μm以下となるように分散して得た分散液を用いて、必要により顔料、接着剤、助剤等を混合することにより調製された感熱記録層用塗料を塗布した後、乾燥されて下塗り層上に形成される。感熱記録層の塗布量は、特に制限されず、乾燥後の塗布量で1~12g/m程度が好ましく、2~10g/mがより好ましく、2.5~8g/mが更に好ましく、3~5.5g/mが特に好ましい。なお、感熱記録層は必要に応じて2層以上に分けて形成することができ、各層の組成と塗布量は、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0055】
[保護層]
感熱記録体では、感熱記録層上に必要に応じて保護層を備えることもできる。保護層は、顔料及び接着剤を含有することが好ましい。更に保護層には、サーマルヘッドに対するスティッキングを防止する目的で、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸亜鉛のような滑剤を含有させることが好ましく、紫外線吸収剤を含有させることもできる。また、光沢を有する保護層を設けることにより、製品の付加価値を高めることもできる。
【0056】
保護層に含有される接着剤としては、特に制限されず、水溶性または水分散性の水性接着剤を使用できる。接着剤は、感熱記録層に使用できるものの中から適宜選択することができる。
【0057】
保護層は、一般に水を分散媒体とし、顔料と接着剤、必要により助剤等を混合することにより調製された保護層用塗料を塗布した後、乾燥されて感熱記録層上に形成される。保護層用塗料の塗布量は、特に制限されず、乾燥重量で0.3~15g/m程度が好ましく、0.3~10g/m程度がより好ましく、0.5~8g/m程度が更に好ましく、1~8g/m程度が特に好ましく、1~5g/m程度がより一層好ましい。なお、保護層は、必要に応じて2層以上に分けて形成することができ、各層の組成と塗布量は、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0058】
[その他の層]
本発明では、感熱記録体の付加価値を高めるために、これに更に加工を施し、より高い機能を付与した感熱記録体とすることができる。例えば、裏面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤等による塗布加工を施すことにより粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙等とすることができる。また、裏面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット記録用紙、ノーカーボン用紙、静電記録用紙、ゼオグラフィー用紙等としての機能を付与し、両面記録が可能な記録紙とすることもできる。もちろん、両面感熱記録体とすることもできる。また、感熱記録体裏面からの油及び可塑剤の浸透を抑制したり、カールコントロール及び帯電防止のためにバック層を設けることもできる。
【0059】
保護層上にシリコーンを含有した剥離層を塗布加工し、裏面に粘着剤を塗布加工することにより、剥離紙を必要としないライナーレスラベルとすることも可能である。
【0060】
[感熱記録体]
支持体上に上記各層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、カーテン法、スロットダイ法、スライドダイ法、エクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。また、各塗料は1層ずつ塗布及び乾燥して各層を形成してもよく、同一の塗料を2層以上に分けて塗布してもよい。さらに、2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行ってもよい。また、各層を形成し終えた後、または全ての層を形成し終えた後の任意の過程で、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等の既知の方法を用いて平滑化処理することがで
きる。
【0061】
下塗り層は、カーテン塗布法により形成された層であることが好ましい。これにより、均一な厚みを有する層を形成することができ、中空粒子による効果を遺憾なく発揮させ、記録感度を高めたり、油、可塑剤、アルコール等に対するバリア性を高めたりすることができる。カーテン塗布法は、塗料を流下して自由落下させ中間層に非接触で塗布する方法であり、スライドカーテン法、カップルカーテン法、ツインカーテン法等の公知のものを採用することができ、特に制限されるものではない。
【実施例
【0062】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0063】
実施例1
(1)下塗り層用塗料の調製
焼成カオリン(商品名アンシレックス93、BASF社製)59部、スチレン・ブタジエン共重合体(商品名:SR-104、日本A&L社製、固形分濃度48%、粒子径160nm、ガラス転移温度3℃)41.7部、酸化澱粉(商品名:王子エースA、王子コーンスターチ社製)の25%水溶液4部、中空粒子A(発泡タイプ、平均粒子径9μm、最大粒子径20μm、固形分濃度20%)100部、及び水75.5部からなる組成物を混合攪拌して、下塗り層用塗料を得た。
【0064】
(2)ロイコ染料分散液(A液)の調製
3-ジ-(n-ブチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.5μmになるまで粉砕してロイコ染料分散液(A液)を得た。
【0065】
(3)呈色剤分散液(B液)の調製
4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン (日本曹達社製、 D8)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が0.7μmになるまで粉砕して呈色剤分散液(B液)を得た。
【0066】
(4)増感剤分散液(C液)の調製
シュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステル(商品名:HS-3520、DIC社製)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、サンドミル(アイメックス社製、サンドグラインダー)を用いて、レーザー回折式粒径測定器SALD2200(島津製作所社製)によるメジアン径が1.0μmになるまで粉砕して増感剤分散液(C液)を得た。
【0067】
(5)感熱記録層用塗料の調製
A液29.5部、B液59.1部、C液45.4部、ヒドロキシメチルセルロースの5%水溶液20部、完全鹸化ポリビニルアルコール(重合度:1000、鹸化度:99モル%)の10%水溶液45部、ブタジエン系共重合体ラテックス(商品名:L-1571、旭化成社製、固形分濃度48%)9.4部、軽質炭酸カルシウム(商品名:Brilliant-15、白石工業社製)17.1部、パラフィンワックス(商品名:ハイドリンL-700、中京油脂社製、固形分濃度30%)11.7部、アジピン酸ジヒドラジド(大塚化学社製)2部、及び水120部からなる組成物を混合撹拌して感熱記録層用塗料を得た。
【0068】
(6)保護層用塗料の調製
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセネックスZ-200、鹸化度:99.4モル%、平均重合度:1000、変性度:5モル%、日本合成化学工業社製)の12%水溶液300部、カオリン(商品名:HYDRAGLOSS90、KaMin LLC社製)19部、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42M、昭和電工社製)35部、シリカ(商品名:ミズカシルP-527、水澤化学社製)4部、ポリエチレンワックス(商品名:ケミパールW-400、三井化学社製、固形分濃度40%)2.5部、及び水114.5部からなる組成物を混合撹拌して保護層用塗料を得た。
【0069】
(7)感熱記録体の作製
坪量60g/mの上質紙の片面上に、下塗り層用塗料、感熱記録層用塗料、及び保護層用塗料を乾燥後の塗布量がそれぞれ6.0g/m、4.0g/m、2.0g/mとなるように塗布した後、乾燥して、下塗り層、感熱記録層、及び保護層を順次形成した後、スーパーカレンダーで表面を平滑化して感熱記録体を得た。なお、下塗り層は、下塗り層用塗料をカーテン塗布法により塗布した後、乾燥して形成した。
【0070】
実施例2
実施例1の下塗り用塗料の調製において、スチレン・ブタジエン共重合体(商品名:SR-104、日本A&L社製、固形分濃度48%、粒子径160nm、ガラス転移温度3℃)41.7部に代えて、スチレン・ブタジエン共重合体(商品名:SR-107、日本A&L社製、固形分濃度48%、粒子径170nm、ガラス転移温度-15℃)41.7部を用いた以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0071】
実施例3
実施例1の下塗り用塗料の調製において、スチレン・ブタジエン共重合体(商品名:SR-104、日本A&L社製、固形分濃度48%、粒子径160nm、ガラス転移温度3℃)41.7部に代えて、スチレン・ブタジエン共重合体(商品名:SR-103、日本A&L社製、固形分濃度48%、粒子径220nm、ガラス転移温度7℃)41.7部を用いた以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た
【0072】
実施例4
実施例1の下塗り用塗料の調製において、酸化澱粉(商品名:王子エースA、王子コーンスターチ社製)の25%水溶液4部に代えて、ポリビニルアルコール(商品名:PVA11-98、クラレ社製)15%水溶液6.7部を用いた以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0073】
実施例5
実施例1の下塗り用塗料の調製において、酸化澱粉(商品名:王子エースA、王子コーンスターチ社製)の25%水溶液4部に代えて、カルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲン7A、第一工業製薬社製)1部を用いた以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0074】
実施例6
実施例1の下塗り用塗料の調製において、焼成カオリン(商品名アンシレックス93、BASF社製)の量を59部に代えて19部とし、中空粒子A(発泡タイプ、平均粒子径9μm、最大粒子径20μm、固形分濃度20%)の量を100部に代えて300部とした以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0075】
比較例1
実施例1の下塗り用塗料の調製において、中空粒子A(発泡タイプ、平均粒子径9μm、最大粒子径20μm、固形分濃度20%)100部に代えて、中空粒子B(非発泡タイプ、商品名:ローペイクSN-1055、ダウケミカル社製、平均粒子径1μm、最大粒子径2μm、固形分濃度26.5%)75.5部を用いた以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0076】
比較例2
実施例1の下塗り用塗料の調製において、中空粒子A(発泡タイプ、平均粒子径9μm、最大粒子径20μm、固形分濃度20%)100部に代えて、中空粒子C(発泡タイプ、平均粒子径20μm、最大粒子径40μm、固形分濃度15%)133部を用いた以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0077】
比較例3
実施例1の下塗り用塗料の調製において、酸化澱粉(商品名:王子エースA、王子コーンスターチ社製)の25%水溶液4部を使用しなかった以外は、実施例1と同様に感熱記録体を得た。
【0078】
かくして得られた感熱記録体について、以下の評価を行った。その結果は、表1に示す通りであった。
【0079】
〔記録濃度〕
感熱記録評価機(商品名:TH-PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー:0.16mJ/dotの中間調エネルギー領域にて各感熱記録体を記録し、得られた印字部をマクベス濃度計(RD-914、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。数値が大きい程、印字の濃度が濃く、高感度である。
【0080】
〔印字画質〕
ラベルプリンタ(商品名:L-2000、株式会社イシダ製)を用いてバーコードを記録し、その記録画質を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:画質の白抜けやバーコードの太りがなく、全く問題ない。
△:画質の白抜けやバーコードの太りがほとんどなく、実用上問題ない。
×:画像の白抜けやバーコードの太りがあり、実用上問題となる。
【0081】
【表1】