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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】測定システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/00 20060101AFI20230627BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
G08C17/00 A
H04Q9/00 311H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019193811
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021068244
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】石原 佐和子
(72)【発明者】
【氏名】久保田 明
(72)【発明者】
【氏名】朴 赫
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0045071(KR,A)
【文献】特開2017-165195(JP,A)
【文献】特表2019-516598(JP,A)
【文献】特表2018-522302(JP,A)
【文献】特開平11-65619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 15/00-19/48
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定器が搭載された複数のドローンと、前記複数のドローンと無線通信を行うことによって前記測定器による測定データを取得して、測定結果を得るデータ収集装置とを備える測定システムであって、
前記データ収集装置は、前記複数のドローンの中の第1のドローンに搭載された第1の測定器を用いた測定から、前記複数のドローンの中の第2のドローンに搭載された第2の測定器を用いた測定への切替えを行う場合に、前記第1の測定器による第1の測定データと、前記第2の測定器による第2の測定データとに基づいて、前記切替え前後における前記測定結果の連続性を確保する処理を行う、測定システム。
【請求項2】
前記複数のドローンは、前記測定データに対して通信負荷の低減処理を施す、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記データ収集装置は、前記複数のドローンに搭載された処理装置を介して、前記複数のドローンと前記無線通信を行い、前記処理装置は、前記測定データに対して通信負荷の低減処理を施す、請求項1に記載の測定システム。
【請求項4】
前記データ収集装置は、少なくとも1つの中継装置を介して、前記ドローンと前記無線通信を行う、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項5】
第1の測定器を用いた測定から第2の測定器を用いた測定への切替えを行う場合に、
データ収集装置が、前記第1の測定器による第1の測定データと、前記第2の測定器による第2の測定データとに基づいて、前記切替え前後における測定結果の連続性を確保する処理を行うステップを含む、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システムおよび測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドローンを用いた測定技術が知られている。例えば、特許文献1には、ドローンを予め定められた複数の計測点に順次移動させて、各計測点において計測対象を計測器で計測し、前記複数の計測点で得られた複数の計測値を記憶装置に記録し、前記複数の計測値と、前記複数の計測点の位置に基づいて前記計測値の分布を作成することを特徴とする計測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-90741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ドローンを用いた測定技術には改善の余地がある。例えば、ドローンのバッテリ持続時間などの問題により、長時間連続して測定を行うことは必ずしも容易ではない。
【0005】
そこで、本開示は、ドローンを用いた測定技術を改善することができる測定システムおよび測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る測定システムは、測定器が搭載された複数のドローンと、前記複数のドローンと無線通信を行うことによって前記測定器による測定データを取得して、測定結果を得るデータ収集装置とを備える測定システムであって、前記データ収集装置は、前記複数のドローンの中の第1のドローンに搭載された第1の測定器を用いた測定から、前記複数のドローンの中の第2のドローンに搭載された第2の測定器を用いた測定への切替えを行う場合に、前記第1の測定器による第1の測定データと、前記第2の測定器による第2の測定データとに基づいて、前記切替え前後における前記測定結果の連続性を確保する処理を行う。
【0007】
このように、データ収集装置が上述した測定の切替え前後における測定結果の連続性を確保することによって、ドローンを用いた測定を長時間連続して行うことができる。
【0008】
一実施形態において、前記複数のドローンは、前記測定データに対して通信負荷の低減処理を施してもよい。
【0009】
これにより、通信負荷を低減することができる。
【0010】
一実施形態において、前記データ収集装置は、前記複数のドローンに搭載された処理装置を介して、前記複数のドローンと前記無線通信を行い、前記処理装置は、前記測定データに対して通信負荷の低減処理を施してもよい。
【0011】
これにより、通信負荷を低減することができる。
【0012】
一実施形態において、前記データ収集装置は、少なくとも1つの中継装置を介して、前記ドローンと前記無線通信を行ってもよい。
【0013】
このように、中継装置を介することにより、ドローンとデータ収集装置との通信距離を伸ばすことができる。
【0014】
幾つかの実施形態に係る測定方法は、第1の測定器を用いた測定から第2の測定器を用いた測定への切替えを行う場合に、データ収集装置が、前記第1の測定器による第1の測定データと、前記第2の測定器による第2の測定データとに基づいて、前記切替え前後における測定結果の連続性を確保する処理を行うステップを含む。
【0015】
このように、データ収集装置が上述した測定の切替え前後における測定結果の連続性を確保することによって、長時間連続して測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、ドローンを用いた測定技術を改善することができる測定システムおよび測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】比較例に係る測定システムの各構成を示す図である。
図2図1の測定器の各構成を示す図である。
図3図1のドローンの各構成を示す図である。
図4】本開示の一実施形態による測定システムの概略図である。
図5図4のデータ収集装置の各構成を示す図である。
図6図4のデータ収集装置の動作手順を示すフローチャートである。
図7図4のドローンの動作手順を示すフローチャートである。
図8図6のステップS140の処理内容を示すフローチャートである。
図9】第1の変形例に係る測定システムの各構成を示す図である。
図10】第2の変形例に係る測定システムの各構成を示す図である。
図11】第3の変形例に係る測定システムの各構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一符号は、同一または同等の構成要素を示す。
【0019】
まず比較のために、図1から図3を参照して、比較例に係る測定システム5を説明する。
【0020】
図1を参照して、比較例に係る測定システム5は、測定器20が搭載されたドローン10を備える。
【0021】
図2を参照して、測定器20は、測定部21と、制御部22と、入力部23と、出力部24とを有する。
【0022】
測定部21は、サーモカメラ、光学式カメラ、ガスセンサ、振動センサ、温度計、湿度計、放射線計、風力計、雨量計、光量計、濁度計、およびPH計のうちの少なくとも1つによって実現される。ただし、測定部21は、これらに限られない。
【0023】
制御部22は、1つ以上のプロセッサを含むことができる。プロセッサは、汎用のプロセッサ、または特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限られない。制御部22は、測定器20全体の動作を制御する。
【0024】
入力部23は、測定器20の設定を変更するためのユーザ入力を検出する1つ以上の入力インタフェースを含む。入力インタフェースは、物理キー、静電容量キー、又はタッチスクリーンなどであるが、これらに限られない。
【0025】
出力部24は、測定部21による測定によって得られた測定データを後述するドローン10の入力部14に出力する1つ以上の任意のインタフェースを含む。
【0026】
図3を参照して、ドローン10は、制御部11と、動作部12と、記録部13と、入力部14と、通信部15とを有することができる。
【0027】
制御部11は、1つ以上のプロセッサを含むことができる。プロセッサは、汎用のプロセッサ、または特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限られない。
【0028】
動作部12は、1つ以上の駆動機構を含む。駆動機構は、プロペラ、モータ、またはロータ等を含むが、これらに限られない。
【0029】
記録部13は、1つ以上のメモリを含む。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られない。
【0030】
入力部14は、測定器20の出力部24による出力を検出する1つ以上の任意のインタフェースを含む。これにより、ドローン10は、測定器20と有線通信または無線通信を行うことができる。
【0031】
通信部15は、1つ以上の通信インタフェースを含むことができる。通信インタフェースは、無線通信によってデータ通信を行うことが可能なものであるが、これに限られない。
【0032】
ここで、ドローン10の一例として、飛行するドローンの動作を説明する。ドローン10の制御部11は、通信部15を介して取得した操縦者の操作内容、または記録部13に予め記録された操作内容を解釈し、飛行経路、飛行姿勢、ホバリング姿勢などを含むドローン10の動作を動作部12に指示する。動作部12は、制御部11からの指示に従って、ドローン10を動作させる。また、ドローン10は、動作中、入力部14を介して取得した測定器20による測定データを記録部13に記録することができる他、この測定データに基づいて、衝突回避などの異常時の対応を行うことができる。さらに、ドローン10は、動作中、測定器20から入力部14を介して取得した測定データおよびテレメトリデータを、通信部15を介して任意の端末に送信することができる。
【0033】
次に、図1に示す測定器20が搭載されたドローン10を備える測定システム5を用いた測定方法を説明する。
【0034】
例えば、操縦者は、任意の操作端末を用いて、測定器20が搭載されたドローン10を操作し、測定対象がある測定位置までドローン10を移動させる。そして、操縦者は、ドローン10が測定位置に到達すると、測定対象とドローン10との位置関係を適切に保ちつつ、ドローン10に搭載された測定器20を用いて測定対象を測定する。測定器20による測定によって得られた測定データは、ドローン10の記録部13に記録され、測定終了後に回収される。あるいは、ドローン10は、記録部13に予め記録された操作内容に基づいて、測定対象がある測定位置まで移動し、測定位置に到達すると、測定対象との位置関係を適切に保ちつつ、ドローン10に搭載された測定器20を用いて測定対象を測定してもよい。
【0035】
しかしながら、比較例に係る測定システム5では、ドローン10のバッテリの問題により、長時間連続して測定を行うことが難しい。この対策として、測定器20が搭載されたドローン10を複数台用意して測定を行うことが考えられる。すなわち、あるドローンのバッテリ残量が減少すると、バッテリ残量が十分な別のドローンに搭載された測定器を用いた測定に切り替える。しかしながら、各測定器が同じ測定対象に対して同じ物理量を測定していても、各測定器に固有の特性の違いなどに起因して、上述した測定の切替えの際に、測定結果に飛びが生じたりするなど、測定結果が不連続になるという問題があった。
【0036】
そこで、本開示では、長時間連続して測定を行う場合であっても、測定結果の連続性を確保することができる測定システムおよび測定方法について説明する。
【0037】
(測定システム)
以下、図4を参照して、本開示の一実施形態に係る測定システム1について説明する。
【0038】
図4は、第1のドローン10-1に搭載された第1の測定器20-1を用いた測定から、第2のドローン10-2に搭載された第2の測定器20-2を用いた測定への切替えを行う場合の測定システム1の概略図である。この場合、測定システム1は、第1の測定器20-1が搭載された第1のドローン10-1と、第2の測定器20-2が搭載された第2のドローン10-2と、データ収集装置30とを備える。データ収集装置30は、第1のドローン10-1と無線通信を行うことによって第1の測定器20-1による第1の測定データを取得する。また、データ収集装置30は、第2のドローン10-2と無線通信を行うことによって第2の測定器20-2による第2の測定データを取得する。
【0039】
[測定器]
本実施形態における第1の測定器20-1および第2の測定器20-2(以下、「測定器20」と略記する場合がある。)は、データ収集装置30との通信が可能な1つ以上の通信インタフェースを含むことができる以外、それぞれ比較例における測定器20と同様であるので、説明を省略する。なお、本開示において、測定器20自体が、データ収集装置30と無線通信してもよい。また、本開示において、第1のドローン10-1に搭載される第1の測定器20-1の数は、1つとは限らず、2つ以上であってもよい。また、第2のドローン10-2に搭載される第2の測定器20-2の数も、1つとは限らず、2つ以上であってもよい。また、本開示において、第1の測定器20-1は第1のドローン10-1に内蔵されてもよい。また、第2の測定器20-2も第2のドローン10-2に内蔵されてもよい。
【0040】
[ドローン]
本実施形態における第1のドローン10-1および第2のドローン10-2(以下、「ドローン10」と略記する場合がある。)は、それぞれ比較例におけるドローン10と同様であるので、説明を省略する。なお、本開示において、ドローン10は、空中、地上、地中、液中、液面、および宇宙のうちの少なくとも1つ以上を無人で移動することができる。また、本開示において、ドローン10の数は、2つとは限らず、3つ以上であってもよい。
【0041】
[データ収集装置]
図5を参照して、データ収集装置30は、制御部31と、通信部32と、演算部33と、出力部34と、記録部35とを有することができる。
【0042】
制御部31は、1つ以上のプロセッサを含むことができる。プロセッサは、汎用のプロセッサ、または特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限られない。制御部31は、通信部32を介して、ドローン10に対する測定位置への移動の指示および測定位置からの帰還の指示、ならびに測定器20に対する測定開始の指示および測定終了の指示などを行う。また、制御部31は、通信部32を介して、ドローン10および測定器20のバッテリ残量、通信エラーの有無、故障の有無などを監視し、監視結果に基づいてドローン10の交代のタイミングを判断する。また、制御部31は、後述する切替え処理の実行を演算部33に指示する。
【0043】
通信部32は、1つ以上の通信インタフェースを含むことができる。通信インタフェースは、ドローン10と無線通信によってデータ通信などを行うことが可能なものであるが、これに限られない。また、通信部32は、第1のドローン10-1と無線通信によってデータ通信を行うことができる第1の通信インタフェースと、第2のドローン10-2と無線通信によってデータ通信を行うことができる第2の通信インタフェースとを含むことができる。この場合、データ収集装置30は、第1の通信インタフェースを介して、第1のドローン10-1に搭載された第1の測定器20-1による第1の測定データを取得する。また、データ収集装置30は、第2の通信インタフェースを介して、第2のドローン10-2に搭載された第2の測定器20-2による第2の測定データを取得する。
【0044】
演算部33は、1つ以上のプロセッサを含むことができる。プロセッサは、汎用のプロセッサ、または特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限られない。演算部33は、上述した第1の測定データと第2の測定データとの比較に基づいて、補正値を算出する。具体的には、演算部33は、下記(1)式に従って第1の測定データと第2の測定データとの差分をとることによって、補正値を算出することができる。なお、第2の通信インタフェースでは、下記(2)式に従って算出される補正後の第2の測定データによって第2の測定データが上書きされる。
【0045】
[補正値]=[第1の測定データ]-[第2の測定データ]・・・(1)式
【0046】
[補正後の第2の測定データ]=[第2の測定データ]+[補正値]・・・(2)式
【0047】
また、演算部33は、第1の測定データと補正後の第2の測定データとに基づいて、測定結果を算出する。具体的には、演算部33は、下記(3)式に従って測定結果を算出することができる。下記(3)式において、第1のフラグ値は、測定結果として第1の測定データを採用する場合には1であり、測定結果として第1の測定データを採用しない場合には0である。また、第2のフラグ値は、測定結果として補正後の第2の測定データを採用する場合には1であり、測定結果として補正後の第2の測定データを採用しない場合には0である。第1の測定器20-1を用いた測定から第2の測定器20-2を用いた測定への切替えでは、演算部33は、第1のフラグ値を1から0に変更し、第2のフラグ値を0から1に変更する。なお、演算部33は、第2のドローン10-2が測定位置に到着して所定時間が経過した後に、例えばドローンのバッテリなどの下限アラームの発生またはユーザの操作などのイベントをトリガとして動作する機能などを使用して、上述した切替えを行うことが好ましい。これにより、周辺雰囲気などの影響で測定データが不安定になるのを抑制することができる。「所定時間」は、測定器20が周辺雰囲気になじむことができる時間であればよく、任意に設定される。
【0048】
[測定結果]=[第1のフラグ値]×[第1の測定データ]+[第2のフラグ値]×[補正後の第2の測定データ]・・・(3)式
【0049】
このようにして、データ収集装置30は、第1の測定器20-1による第1の測定データと、第2の測定器20-2による第2の測定データとに基づいて、切替え前後で測定結果の連続性を確保することができる。本開示における「連続性」とは、時間軸に沿った連続性を意味する。ただし、本開示では、切替え時を含む数ミリ秒~数十ミリ秒の時間間隔の始点における測定結果と終点における測定結果とが、数学的に厳密に一致する必要はなく、測定誤差以内でずれる場合も許容される。
【0050】
ただし、上述した連続性を確保するための処理は、これに限定されない。例えば、それぞれの測定器20が、校正値として傾きaとオフセットbを有する場合(すなわち、[測定データ]=a×(測定部21の生データ)+bで表わされる場合)、第1の測定データと第2の測定データとの差分に基づいてオフセットbの値を補正するだけでなく、第1の測定データと第2の測定データとの傾きの差分に基づいて傾きaを補正することもできる。以下では、その具体例を説明する。なお、傾きaおよびオフセットbは、測定部21の生データから測定データを算出するために予め設定される数値である。
【0051】
本具体例では、第1の測定器20-1が「0」を示すとき、第2の測定器20-2が「0.2」を示し、第1の測定器20-1が「100」を示すとき、第2の測定器20-2が「100.7」を示し、第2の測定器20-2が補正対象である場合を考える。この場合、「第2の測定データ」は、下記(B1)式で表わされる。
[第2の測定データ]=((100.7-0.2)/100)×[第1の測定データ]+0.2・・・(B1)式
ここで、上記(3)式における「補正後の第2の測定データ」は、上記(B1)式における「第1の測定データ」を「補正後の第2の測定データ」に置換することにより、下記(B2)式で表わされる。
[補正後の第2の測定データ]=([第2の測定データ]-0.2)×(100/(100.7-0.2))・・・(B2)式
このようにして算出した「補正後の第2の測定データ」を用いることによって、上記(3)式における「測定結果」を得てもよい。
【0052】
出力部34は、ユーザに対して測定結果などを含む情報を出力する1つ以上の出力インタフェースを含む。例えば、出力インタフェースは、情報を映像で出力するディスプレイ、または情報を音声で出力するスピーカなどであるが、これらに限られない。
【0053】
記録部35は、1つ以上のメモリを含む。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られない。記録部35には、通信部32を介して取得した測定データおよびドローン10の移動情報などが記録される。
【0054】
(測定方法)
以下、本開示の一実施形態に係る測定システム1を用いて実行することができる測定方法について説明する。
【0055】
[データ収集装置の動作手順]
図4および図6を参照して、データ収集装置30の動作手順について説明する。
【0056】
ステップS100において、データ収集装置30は、第1のドローン10-1および第2のドローン10-2に対して無線通信を依頼する。この時、不具合または故障などによって飛ばすことができないドローン10などが確認(把握)される。なお、本実施形態では、例えばステップS105~S125では、第1のドローン10-1のみを稼働させているので、第2のドローン10-2との無線通信の依頼については、必要時(例えばステップS125とS130との間)に行ってもよい。
【0057】
続いて、ステップS105において、データ収集装置30は、第1のドローン10-1に対して測定位置への移動を指示する。
【0058】
続いて、ステップS110において、データ収集装置30は、第1のドローン10-1から測定位置に到達した旨の通知があると、第1のドローン10-1に搭載された第1の測定器20-1に対して測定開始を指示し、データ収集を開始する。
【0059】
続いて、ステップS115において、データ収集装置30は、データ収集を終了する指示があるか否かを判断する。データ収集を終了する指示がある場合(ステップS115:YES)、ステップS150に進む。データ収集を終了する指示がない場合(ステップS115:NO)、ステップS120に進む。
【0060】
ステップS120に進んだ場合、ステップS120において、データ収集装置30は、第1のドローン10-1のバッテリ残量が所定値未満であるか否かを判断する。バッテリ残量が所定値未満である場合(ステップS120:YES)、ステップS130に進む。バッテリ残量が所定値未満ではない場合(ステップS120:NO)、ステップS125に進む。なお、所定値は、第1のドローン10-1が帰還するために必要な移動距離などに応じて適宜設定される。
【0061】
ステップS125に進んだ場合、ステップS125において、データ収集装置30は、第1の測定器20-1のバッテリ残量が所定値未満であるか否かを判断する。バッテリ残量が所定値未満である場合(ステップS125:YES)、ステップS130に進む。バッテリ残量が所定値未満ではない場合(ステップS125:NO)、ステップS115に戻る。なお、所定値は、第2のドローン10-2が測定位置に到着し、第2の測定器20-2と測定を交代するために必要な移動距離または移動時間などに応じて適宜設定される。
【0062】
ステップS130に進んだ場合、ステップS130において、データ収集装置30は、第2のドローン10-2に対して測定位置への移動を指示する。すなわち、第2のドローン10-2は、第1のドローン10-1と交代するために、測定位置へ移動する。ここで、ステップS130において、データ収集装置30が指示を出す第2のドローン10-2は、帰還した状態にあり、移動および測定の準備が整っている状態にある。なお、このような状態にあるドローンが複数存在する場合には、帰還状態ならびに移動および測定可能状態であるドローンのうち、任意のもの(例えば、前回飛ばした時期が最も古いもの、ドローンおよび測定器のバッテリ残量が多いもの、予め決められた順番のもの)が選択される。
【0063】
続いて、ステップS135において、データ収集装置30は、第2のドローン10-2から測定位置に到着した旨の通知があると、第2のドローン10-2に搭載された第2の測定器20-2に対して測定開始を指示する。
【0064】
続いて、ステップS140において、データ収集装置30は、第1の測定器20-1を用いた測定から第2の測定器20-2を用いた測定への切替え処理を実行する。ステップS140の処理内容については、図8を参照して後述する。
【0065】
続いて、ステップS145において、データ収集装置30は、第1の測定器20-1の測定終了と第1のドローン10-1の帰還を指示し、ステップS115に戻る。なお、ステップS115~S145は、ドローンを特定するために便宜的に付した番号(第1、第2)を適宜読み替えて繰り返される。
【0066】
ステップS150に進んだ場合、ステップS150において、データ収集装置30は、データ収集を終了し、測定器20による測定終了とドローン10の帰還を指示する。
【0067】
続いて、ステップS155において、データ収集装置30は、ドローン10から帰還した旨の通知があると、第1のドローン10-1および第2のドローン10-2との通信を終了する。以上により、本処理が終了する。
【0068】
なお、データ収集装置30は、ステップS120およびS125の条件の他に、ドローン10および測定器20の異常または故障に基づいて、上述した切替えを実行するか否かを判断してもよい。また、ドローン10および測定器20のバッテリ消費量は、風量、気圧、湿度などの気候の影響を受ける。このため、データ収集装置30は、気候条件に基づいて、上述した切替えを実行するか否かを判断してもよい。
【0069】
[ドローンおよび測定器の動作手順]
図7を参照して、測定器20が搭載されたドローン10の動作手順について説明する。
【0070】
ステップS200において、ドローン10は、データ収集装置30からの依頼によって、データ収集装置30との無線通信を確立する。この時、ドローン10からデータ収集装置30への測定データおよびテレメトリデータの送信のための無線通信が開始する。なお、テレメトリデータは、ドローンの現在位置、加速度、バッテリ情報などを含むことができる。
【0071】
続いて、ステップS210において、ドローン10は、データ収集装置30からの指示を受けて、測定位置まで移動し、測定位置に到着後、到着した旨をデータ収集装置30に通知する。
【0072】
続いて、ステップS220において、測定器20は、データ収集装置30からの指示を受けて、測定を開始する。
【0073】
続いて、ステップS230において、測定器20は、データ収集装置30から測定終了の指示があったか否かを判断する。測定終了の指示があった場合(ステップS230:YES)、ステップS240に進む。測定終了の指示がなかった場合(ステップS230:NO)、ステップS230に戻る。
【0074】
続いて、ステップS240において、測定器20は、データ収集装置30からの指示を受けて、測定を終了し、帰還位置に向けて移動する。
【0075】
続いて、ステップS250において、ドローン10は、帰還位置まで移動し、帰還後、帰還した旨をデータ収集装置30に通知する。これにより、本処理が終了する。
【0076】
なお、ドローン10は、帰還後に自動または手動で、充電または燃料の追加などが行われる。
【0077】
[切替え処理]
図8を参照して、図6のステップS140の処理内容について説明する。
【0078】
ステップS300において、データ収集装置30は、上記(1)式および(2)式に基づいて、補正後の第2の測定データを算出する。詳細については、既述の説明を援用する。
【0079】
続いて、ステップS310において、データ収集装置30は、上記(3)式における第1のフラグ値を0から1に変更し、第2のフラグ値を1から0に変更する。そして、データ収集装置30は、上記(3)式に基づいて測定結果を算出する。詳細については、既述の説明を援用する。
【0080】
以上により、本処理が終了すると、図6のステップS145に進む。なお、以降の測定結果には、補正後の第2の測定データが用いられる。
【0081】
本開示によれば、長時間連続して測定を行う場合であっても、測定結果の連続性を確保することができる。特に、本開示によれば、過酷な環境下または電源を確保することが困難な環境下などで測定を行う場合であっても、24時間連続して測定を行うことができる。また、本開示によれば、測定位置において電源工事などが不要であるので、災害などによって緊急の測定を行うことが必要となった場合でも、迅速に対応することができる。また、本開示によれば、測定器を搭載したドローンを用いるので、測定対象がある場所ではなくオペレーションルームなどで、測定器のメンテナンスまたは交換を容易に行うことができる。また、本開示によれば、測定周期が長い場合または広範囲(多地点)での測定を行う場合でも、複数の配線および測定器を設置する必要がないので、コストを抑制することができる。
【0082】
なお、データ収集装置30は、測定結果に基づいて、測定対象において高温などの異常が発生しているか否か、測定器20において異常が発生しているか否か、ドローン10において故障などの異常が発生しているか否かを判断してもよい。そして、異常などが発生している場合、データ収集装置30は、表示機能、アラーム機能、またはメール送信機能などを用いて、ユーザに異常などを通知してもよい。これにより、ユーザは、リアルタイムで異常の発生を認識することができる。また、ドローン10自体が、測定器20による測定データに基づいて異常を検知し、ユーザに通知してもよい。
【0083】
また、データ収集装置30は、測定結果を含む情報を集計し、ユーザに提示してもよい。例えば、データ収集装置30は、事前に読み込んだユーザ指定のフォーマットと測定結果とを用いてレポートを作成し、ユーザに提示してもよい。
【0084】
また、測定器20が搭載されたドローン10は、上述した測定を行いつつ、組み立て、掘削、探査、薬剤散布、および点検のうちから少なくとも1つの作業を行ってもよい。例えば、ドローン10が薬剤散布も行う場合には、データ収集装置30は、ドローン10のバッテリ残量の他に、ドローン10に搭載された薬剤の残量に基づいて、ドローン10を交代させるか否かを判断してもよい。また、データ収集装置30は、測定結果に基づいて、これらの作業が正確に行われたか否かを判断してもよい。
【0085】
以下、本開示の測定システムおよび測定方法を活用した幾つかの活用例を説明する。ただし、本開示の測定システムおよび測定方法を活用した活用例は、これらに限られない。
【0086】
(活用例1)
サーモカメラまたはガスセンサが搭載されたドローン10で定点観測することによって、火山の火口の状態を24時間監視し、噴火の予兆を検出することができる。
【0087】
(活用例2)
放射線計、風力計、または湿度計が搭載されたドローン10で定点観測することによって、事故の発生により人が近づくのが困難な原子力発電所付近の環境測定を行うことができる。
【0088】
(活用例3)
サーモカメラまたはガスセンサが搭載されたドローン10を用いて、工場内を24時間巡回監視することによって、工場配管の接続部分などのフランジの液漏れまたはガス漏れを検出することができる。この他にも、ドローン10を用いて、ソーラーパネルまたはLNG保管タンクなどの設備点検を行うことができる。
【0089】
(活用例4)
光量計または振動センサが搭載された液中ドローン10を用いて、パイプライン内を24時間巡回監視することによって、パイプライン中の水または原油の盗難監視を行うことができる。
【0090】
(活用例5)
サーモカメラが搭載されたドローン10を用いて、パイプライン上を24時間巡回監視することによって、パイプライン中の水または原油の盗難監視を行うことができる。
【0091】
(活用例6)
サーモカメラが搭載されたドローン10を用いて、屋内外を24時間巡回監視することによって、発火のおそれがある石炭などの物質に起因する火災または山火事の検出を行うことができる。
【0092】
(活用例7)
雨量計、風力計、または湿度計が搭載されたドローン10を用いて、ドローン10が飛行可能な高さまでの雨量、風力、または湿度を測定する。これによって、荷物搬送用などのドローンの運用支援を対象とした気象データの収集および提供を行うことができる。
【0093】
以上、本開示を諸図面および実施形態に基づき説明したが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のステップ等を1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【0094】
(第1の変形例)
図9に示す第1の変形例に係る測定システム2では、測定器20が搭載されたドローン10に、測定器20から取得した測定データに対して通信負荷の低減処理を施すことができる処理装置40が搭載される。処理装置40は、ドローン10および測定器20とそれぞれ有線通信することができる。第1の変形例では、処理装置40を介して、ドローン10がデータ収集装置30と無線通信することによって、通信負荷の低減処理が施された測定データがデータ収集装置30に送信される。「通信負荷の低減処理」としては、測定データの時間平均、または異常データのみの抽出などが挙げられる。これら以外については、上述した実施形態の説明を援用する。第1の変形例によれば、例えば1回/10ミリ秒といった測定周期が短い測定を行う場合に、ドローン10からデータ収集装置30への測定データの送信頻度を1回/秒などに低減することができるので、通信負荷が低減される。なお、ドローン10は、処理装置40を搭載する代わりに、その内部に、処理装置40と同様の機能を有する処理部を有してもよい。
【0095】
(第2の変形例)
図10に示す第2の変形例に係る測定システム3では、データ収集装置30は、少なくとも1つの中継装置を介して、ドローン10と無線通信する。中継装置としては、WiFi(登録商標)等のアクセスポイント、またはドローン10との通信距離を伸ばすことができる送受信デバイス50などが挙げられる。例えば、第2の変形例では、データ収集装置30は、送受信デバイス50を介して、ドローン10から測定データおよびテレメトリデータを取得する。送受信デバイス50は、測定データおよびテレメトリデータに対して通信プロトコルの変換などのデータ加工を施してもよい。また、送受信デバイス50は、測定器20と無線通信してもよい。ここで、送受信デバイス50は、ドローン10に搭載されてもよく、あるいはドローン10に搭載されずに地上などに設置されてもよい。送受信デバイス50がドローン10に搭載される場合、送受信デバイス50は、ドローン10および測定器20とそれぞれ有線通信することができ、データ収集装置30と無線通信することができる。一例として、ドローン10に1台の送受信デバイス50が搭載され、地上に複数台の送受信デバイス50が設置されてもよい。一方、図10に示すように、送受信デバイス50がドローン10に搭載されない場合、送受信デバイス50は、ドローン10および測定器20とそれぞれ無線通信することができ、データ収集装置30と有線通信または無線通信することができる。一例として、地上に複数台の送受信デバイス50が設置されてもよい。これら以外については、上述した実施形態の説明を援用する。第2の変形例によれば、測定器20が搭載されたドローン10とデータ収集装置30との間の通信距離を伸ばすことができる。なお、無線通信としては、Wi-Fi(登録商標)を利用するもの以外に、920MHz帯無線(テレメータ用、テレコントロール用、データ伝送用などの無線)を利用するものなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
(第3の変形例)
図11に示す第3の変形例に係る測定システム4は、データ収集装置30と有線通信または無線通信することができる外部サーバ60を備える。第3の変形例では、データ収集装置30が、測定データを必要に応じて加工して、外部サーバ60に送信する。外部サーバ60は、測定データに画像処理などの解析処理を施して、解析処理後の測定データをデータ収集装置30に送信する。なお、外部サーバ60は、データ収集装置30から受信した測定データを保存してもよい。これら以外については、上述した実施形態の説明を援用する。第3の変形例によれば、測定データに対して画像解析などの重い解析処理を効率的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本開示によれば、ドローンを用いた測定技術を改善することができる測定システムおよび測定方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0098】
1、2、3、4、5 測定システム
10 ドローン
10-1 第1のドローン
10-2 第2のドローン
11 制御部
12 動作部
13 記録部
14 入力部
15 通信部
20 測定器
20-1 第1の測定器
20-2 第2の測定器
21 測定部
22 制御部
23 入力部
24 出力部
30 データ収集装置
31 制御部
32 通信部
33 演算部
34 出力部
35 記録部
40 処理装置
50 送受信デバイス(中継装置)
60 外部サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11