(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230627BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/20 M
(21)【出願番号】P 2020049049
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 誉人
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-098867(JP,A)
【文献】実開平04-020993(JP,U)
【文献】特開2014-009912(JP,A)
【文献】特開2009-105140(JP,A)
【文献】特開2015-102257(JP,A)
【文献】特開2006-138519(JP,A)
【文献】特開2012-195258(JP,A)
【文献】特開2010-139188(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0008019(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
盤内の収容空間に電気機器が収容されていて、前記電気機器によって温められた暖気が電動ファンにより送気され、この送気された暖気が水冷式の熱交換器を介して冷却され、この冷却された冷気が前記電気機器を冷却する電力変換装置であって、
前記収容空間は、連通口を介して相互に連通可能に区画された第1収容空間と第2収容空間とを有し、
前記第1収容空間には、前記電気機器が収容され、
前記第2収容空間には、前記熱交換器が配置されると共に、前記熱交換器の鉛直方向の下端部に、前記熱交換器の内部の水分を排出するドレンパンが配置されていて、
前記熱交換器は、気流方向において対向する一対の第1開口部及び第2開口部を有し、
前記第1開口部及び前記第2開口部の鉛直方向下側の周縁部が、第1風洞板及び第2風洞板によって覆われている、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記熱交換器は、サージタンクに貯留された冷却水が循環されることにより熱交換を行い、
前記熱交換器と前記サージタンクとを接続する配管は、前記第2収容空間にのみ配置され、前記第1収容空間には配置されない、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記熱交換器は、水平方向において前記気流方向に直交する気流直交方向に面する第1側壁部及び第2側壁部を有し、
前記配管は、前記第1側壁部又は前記第2側壁部のいずれか一方、又は両方に接続されていて、
前記第1風洞板及び前記第2風洞板は、前記第1開口部及び前記第2開口部の側方に延出し、前記配管を挟んで対向して配置され、
前記ドレンパンは、鉛直方向において、前記第1側壁部又は前記第2側壁部と前記第1風洞板と前記第2風洞板とで囲われた配管収容空間に開口している、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記サージタンクには、内部に貯留された前記冷却水の所定水位を検出する水位センサが設けられ、
前記電気機器は、前記水位センサによる前記所定水位の検出に基づいて停止処理を行う、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1~4に記載の電力変換装置において、
前記第2収容空間は、前記第1収容空間の鉛直方向上側に配置されている、ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1~4に記載の電力変換装置において、
前記第2収容空間は、前記第1収容空間の鉛直方向下側に配置されている、ことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置としては、例えば以下の特許文献に記載されたものが知られている。
【0003】
すなわち、従来の電力変換装置は、盤内の空気の循環に供する電動ファンと、この電動ファンによって送気された暖気を冷却する冷媒循環式の熱交換器と、からなる冷却装置を備え、盤内に収容された電気機器の発熱により温められた空気(暖気)を熱交換器で冷却し、この冷却された空気(冷気)によって電気機器の熱を吸収することで、電気機器の冷却を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の電力変換装置では、熱交換器の内部で結露により発生した水分や、熱交換器及び配管の継手部やろう付け部等から漏出して飛散した冷却水が電気機器に与える悪影響について、具体的に考慮されていない。換言すれば、熱交換器の内部で結露により発生した水分や、熱交換器及び配管の継手部やろう付け部等から漏出して飛散した冷却水から電気機器を保護することについて、改善の余地が残されている。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題に着目して案出されたものであって、熱交換器内部の結露によって発生した水分や、熱交換器及び配管の継手部やろう付け部等から漏出して飛散した冷却水から電気機器を保護することができる電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電力変換装置は、その一態様として、盤内の収容空間に電気機器が収容されていて、前記電気機器によって温められた暖気が電動ファンにより送気され、この送気された暖気が水冷式の熱交換器を介して冷却され、この冷却された冷気が前記電気機器を冷却する電力変換装置であって、前記収容空間は、連通口を介して相互に連通可能に区画された第1収容空間と第2収容空間とを有し、前記第1収容空間には、前記電気機器が収容され、前記第2収容空間には、前記熱交換器が配置されると共に、前記熱交換器の鉛直方向の下端部に、前記熱交換器の内部の水分を排出するドレンパンが配置されていて、前記熱交換器は、前記気流方向において対向する一対の第1開口部及び第2開口部を有し、前記第1開口部及び前記第2開口部の鉛直方向下側の周縁部が、第1風洞板及び第2風洞板によって覆われている。
【0008】
このように、本発明に係る電力変換装置では、熱交換器内部において結露により生じた水分(以下「結露水」という。)をドレンパンによって排出することが可能となり、例えば故障など、当該結露水が電気機器に及ぼす悪影響を抑制することができる。
【0009】
また、盤内の収容空間は、電気機器を収容する第1収容空間と、熱交換器を収容する第2収容空間とに区画され、電気機器と熱交換器が分離して配置されている。これにより、熱交換器内部にて生じた結露水が直ちに電気機器に及ぶおそれがなく、当該結露水が電気機器に及ぼす悪影響を効果的に抑制することができる。
【0010】
さらに、熱交換器の一対の開口部である第1、第2開口部の鉛直方向下側の周縁部が第1、第2風洞板によって覆われていて、熱交換器の鉛直方向下側の周縁部において、外部との連通が遮断されている。これにより、熱交換器内部において熱交換器の内側面に沿って鉛直方向下端部に流れ落ちた結露水が気流方向に沿って流出するのを第1、第2風洞板によって堰き止めることが可能となり、結露水が電気機器に及ぼす悪影響をより効果的に抑制することができる。
【0011】
また、前記電力変換装置の別の態様として、前記熱交換器は、サージタンクに貯留された冷却水が循環されることにより熱交換を行い、前記熱交換器と前記サージタンクとを接続する配管は、前記第2収容空間にのみ配置され、前記第1収容空間には配置されないことが望ましい。
【0012】
このように、熱交換器とサージタンクを接続する配管は、第2収容空間のみに配置され、第1収容空間には配置されない。これにより、熱交換器及び配管の継手部やろう付け部等から漏出した冷却水が電気機器に及ぼす悪影響を抑制することができる。
【0013】
また、前記電力変換装置のさらに別の態様として、前記熱交換器は、水平方向において前記気流方向に直交する気流直交方向に面する第1側壁部及び第2側壁部を有し、前記配管は、前記第1側壁部又は前記第2側壁部のいずれか一方、又は両方に接続されていて、前記第1風洞板及び前記第2風洞板は、前記第1開口部及び前記第2開口部の側方に延出し、前記配管を挟んで対向して配置され、前記ドレンパンは、鉛直方向において、前記第1側壁部又は前記第2側壁部と前記第1風洞板と前記第2風洞板とで囲われた配管収容空間に開口していることが望ましい。
【0014】
このように、配管が、第1側壁部又は第2側壁部と第1風洞板と第2風洞板とで囲われている。このため、当該囲いによって配管の継手部やろう付け部等から漏出した冷却水の飛散が遮断され、前記漏出により飛散した冷却水が電気機器に及ぼす悪影響を抑制することができる。
【0015】
さらに、配管収容空間において、第1、第2側壁部と第1、第2風洞板とによって飛散を遮られた冷却水は、第1、第2側壁部ないし第1、第2風洞板に沿って流れ落ちた後、配管収容空間に開口するドレンパンを介して排出されることになる。これにより、配管収容空間の内部にて配管から漏出した冷却水が電気機器に及ぼす悪影響を、より効果的に抑制することができる。
【0016】
また、前記電力変換装置のさらに別の態様として、前記サージタンクには、内部に貯留された前記冷却水の所定水位を検出する水位センサが設けられ、前記電気機器は、前記水位センサによる前記所定水位の検出に基づいて停止処理を行うことが望ましい。
【0017】
すなわち、ドレンパンの排水能力を超えない範囲で所定水位を設定し、水位センサの所定水位の検出に連動して電気機器の停止処理を行うことによって、熱交換器内の冷却水が電気機器に及ぶ前に、電気機器を安全に停止させることができる。換言すれば、ドレンパンの容積でもって熱交換器からの冷却水の漏出を抑制することにより、電気機器を安全に停止させるまでの時間的猶予を確保することができる。これにより、熱交換器内の冷却水から電気機器を適切に保護することができる。
【0018】
また、前記電力変換装置のさらに別の態様として、前記第2収容空間は、前記第1収容空間の鉛直方向上側に配置されていることが望ましい。
【0019】
暖気は上昇して盤の上部に溜まりやすいため、熱交換器を収容する第2収容空間を鉛直方向の上側に配置したことで、空気(暖気)と冷却水との温度差が大きくなり、熱交換器による熱交換を効率的に行うことができる。
【0020】
また、前記電力変換装置のさらに別の態様として、前記第2収容空間は、前記第1収容空間の鉛直方向下側に配置されていることが望ましい。
【0021】
このように、熱交換器を収容する第2収容空間を鉛直方向の下側に配置したことで、熱交換器から漏出した冷却水が電気機器に及んでしまう可能性を極力抑制することができる。これにより、電気機器の安全性がより一層高められ、電気機器を適切に保護することができる。なお、前記第2収容空間を鉛直方向下側に配置する態様は、熱交換器からの冷却水の漏出量がドレンパンから溢れてしまうほど多量である場合に、特に有効なものとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ドレンパンにより結露水が盤外に排出されるため、結露水が電気機器に及ぼす悪影響を抑制することができる。
【0023】
また、電気機器と熱交換器がそれぞれ別に区画された収容空間に分離して配置されるため、熱交換器内部にて生じた結露水が直ちに電気機器に及ぶおそれがなく、結露水が電気機器に及ぼす悪影響を効果的に抑制することができる。
【0024】
さらに、第1、第2風洞板により、熱交換器内部から気流(エアフロー)に沿って流出する水分が堰き止められるため、結露水が電気機器に及ぼす悪影響をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の冷却システム図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の鉛直方向断面図である。
【
図3】
図2のA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図4】
図1に示す電力変換装置の水冷部の分解斜視図である。
【
図5】
図4に示す電力変換装置の水冷部の組立斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の作用効果の説明に供する図であって、
図2の要部拡大図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の冷却システム図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の鉛直方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る電力変換装置の実施形態を、図面に基づいて詳述する。
【0027】
〔第1実施形態〕
図1~
図6は、本発明に係る電力変換装置の第1実施形態を示す。
【0028】
(電力変換装置の冷却システムの構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の冷却システムの構成を表したシステム構成図を示している。なお、図中の矢印は、冷却水の循環方向を示している。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る電力変換装置M1の冷却システムは、電気機器10が配置される電気機器部1と、水冷式の熱交換器20が配置される水冷部2と、熱交換器20に対する送水に供する送水部3と、を備える。電気機器部1と水冷部2は、電力変換装置M1の筐体を構成する密閉された盤4の内部に収容されていて、送水部3は、電力変換装置M1の盤4の外部に設けられている。なお、他の実施形態として、送水部3は、電力変換装置M1の盤4の内部に設けられていてもよい。また、水冷部2と送水部3とは、第1配管L1と第2配管L2によって接続されていて、第1配管L1を介して送水部3から水冷部2に冷却水が送られ、第2配管L2を介して水冷部2から送水部3に冷却水が戻される。
【0030】
電気機器部1は、盤4の内部に区画された第1収容空間S1内に電気機器10が収容されることによって構成されている。また、電気機器10は、例えば図示外の半導体素子や変圧器など、電力変換に供する各種の電機部品によって構成される。
【0031】
水冷部2は、盤4の内部に区画された第2収容空間S2内に熱交換器20が収容されることによって構成され、熱交換器20には、送水部3から第1配管L1を介して冷却水が送水される一方、第2配管L2を介して送水部3に冷却水が還流される。なお、第1配管L1の下流側であって熱交換器20の上流側には、送水部3から熱交換器20に対する冷却水の供給及び遮断を切り換え可能なバルブVが設けられている。
【0032】
また、水冷部2には、熱交換器20に隣接して電動ファン21が配置されていて、この電動ファン21を介して、第2収容空間S2の空気が熱交換器20へと送気される。また、熱交換器20には、熱交換器20内の水分を排出するドレンパン22が付設されている。すなわち、ドレンパン22により、熱交換器20内で結露により生じた水分や、熱交換器20から漏出した冷却水を排出可能となっている。
【0033】
送水部3は、冷却水の循環に必要十分な冷却水を貯留するサージタンクTと、冷却水を圧送するポンプPと、熱交換器20より還流された冷却水の熱を放散して当該冷却水の冷却に供する放熱部30と、を備える。なお、サージタンクTは、第1配管L1の途中に配置されていて、ポンプPは、第2配管L2の途中に配置されている。また、放熱部30は、例えばヒートシンクによって構成され、熱交換器20において熱交換によって温められた冷却水の熱を放散することで、当該冷却水を冷却する。なお、
図1に示す符号31は、放熱部30で放散された熱を外部へ排出するための電動ファンを示している。
【0034】
図2は、本実施形態に係る電力変換装置M1の鉛直方向断面図を示している。
図3は、
図2のA-A線に沿って切断した断面図を示している。
図4は、
図1に示す電力変換装置M1の水冷部2の分解斜視図を示している。
図5は、
図4に示す電力変換装置M1の水冷部2の組立斜視図を示している。なお、
図2中のX方向は、電力変換装置M1の「幅方向」を示し、
図2中のZ方向は、電力変換装置M1の「高さ方向」を示している。また、
図3中のY方向は、電力変換装置M1の「奥行き方向」を示している。さらに、
図2中の矢印F1~F4は、第1、第2収容空間S1,S2内における空気の循環経路を示している。
【0035】
図2、
図3に示すように、電力変換装置M1の盤4の内部は、鉛直方向(Z方向)において、第1収容空間S1と第2収容空間S2とに区画されていて、第1収容空間S1に電気機器10が配置されると共に、第2収容空間S2に熱交換器20及び電動ファン21が配置されている。また、第1収容空間S1と第2収容空間S2とは隔壁40によって仕切られていて、この隔壁40の上面に、熱交換器20及び電動ファン21が配置されている。また、隔壁40には、鉛直方向(Z方向)に貫通して第1収容空間S1と第2収容空間S2とを連通する複数の連通口41が形成されている。換言すれば、これらの連通口41を通じて、第1収容空間S1内の空気と第2収容空間S2内の空気とが、相互に移動(循環)可能となっている。
【0036】
具体的には、電力変換装置M1では、特に
図3に示すように、電気機器10により温められた空気(暖気)が矢印F1に示すように上昇し、この上昇した暖気が電動ファン21の作動によって連通口41を介して第2収容空間S2に吸引され、矢印F2に示すように熱交換器20側へと送気される。その後、熱交換器20を通過して熱交換により冷却された空気(冷気)は矢印F3に示すように下降し、連通口41を介して第1収容空間S1に移動することで、前記熱交換により冷却された空気(冷気)が矢印F4に示すように電気機器10に作用し、当該電気機器10が冷却される、といった循環構造となっている。
【0037】
また、
図2~
図5に示すように、熱交換器20は、幅方向(X方向)両側に開口して空気の通流に供する第1開口部201及び第2開口部202を有する熱交換器コア200によって構成される。熱交換器コア200は、水平方向においてエアフロー方向(気流方向)に直交する気流直交方向に設けられた一対の側壁部である第1側壁部203及び第2側壁部204を有すると共に、鉛直方向においてエアフロー方向(気流方向)に直交する方向に上下一対に設けられた上壁部205及び下壁部206を有する。
【0038】
また、第1開口部201及び第2開口部202には、当該第1開口部201及び第2開口部202の外周縁部を覆う第1風洞板23及び第2風洞板24が取り付けられる。なお、この第1、第2風洞板23,24は、例えばビスなど、図示外の任意の締結手段により取り付けることができる。また、第1風洞板23及び第2風洞板24は、概ね矩形枠状を呈し、中央部に、第1開口部201及び第2開口部202を第2収容空間S1へと臨ませる概ね矩形状の第1窓部230及び第2窓部240を有する。
【0039】
また、
図2、
図4、
図5に示すように、第1風洞板23及び第2風洞板24は、鉛直方向(Z方向)の下端部に、第1窓部230及び第2窓部240から鉛直方向(Z方向)の下側へ延出する第1下方延出部231及び第2下方延出部241を有する。この第1、第2下方延出部231,241は、奥行き方向(Y方向)に一定の高さ寸法H2を有する帯状に形成されていて、当該第1、第2下方延出部231,241によって、第1、第2開口部201,202の鉛直方向(Z方向)の下端部が覆われ、塞がれている。すなわち、当該第1、第2下方延出部231,241が第1、第2開口部201,202の鉛直方向(Z方向)の下端部と重なる(オーバーラップする)ことにより、第1、第2開口部201,202の鉛直方向(Z方向)の下端部において、外部との連通を遮断するギャップGが形成されている。ここで、ギャップGの高さ寸法H2は、第1、第2開口部201,202の高さ寸法H1の5%程度に設定されていることが望ましい。
【0040】
また、
図3~
図5に示すように、第1風洞板23及び第2風洞板24は、奥行き方向(Y方向)の両側部に、第1窓部230及び第2窓部240からそれぞれ奥行き方向(Y方向)に沿って側方へ延出する第1側方延出部232a,232b及び第2側方延出部242a,242bが形成されている。この第1側方延出部232a,232b及び第2側方延出部242a,242bは、奥行き方向(Y方向)において、第1側方延出部232aと第2側方延出部242aとが対向し、また、第1側方延出部232bと第2側方延出部242bとが対向する。
【0041】
また、第1側壁部203には、一対の管路である第1管路251と第2管路252とが鉛直方向(Z方向)に沿って並行に配置されていて、これら第1、第2管路251,252の中間部に、第1、第2配管L1,L2が接続されている。一方、第2側壁部204には、幅方向(X方向)に沿って延在する第3管路253(
図3参照)が配置されている。なお、第1管路251、第2管路252及び第3管路253は、水冷部2と送水部3を繋ぐ第1、第2配管L1,L2と共に、本発明に係る配管の一部を構成する。また、第3管路253は、第1管路251と接続する熱交換器コア200の内部水路と、第2管路252と接続する熱交換器コア200の内部水路と、を繋いでいる。すなわち、第1配管L1から熱交換器コア200の内部を通流した冷却水が第3管路253によって折り返され、再び熱交換器コア200の内部を通流して第2配管L2に戻されることとなる。
【0042】
また、第1、第2風洞板23,24(第1側方延出部232a,232b及び第2側方延出部242a,242b)が熱交換器コア200の奥行き方向(Y方向)の両側に延出することによって、熱交換器コア200の奥行き方向(Y方向)の一方には、第1側壁部203と第1、第2風洞板23,24とで囲われた第1配管収容空間SP1が画定され、他方には、第2側壁部204と第1、第2風洞板23,24とで囲われた第2配管収容空間SP2が画定されている。第1配管収容空間SP1には、第1、第2管路251,252を含む第1配管L1が収容されていて、第2配管収容空間SP2には、第3管路253を含む第1配管L1が収容されている。ここで、第1配管収容空間SP1は、奥行き方向(Y方向)において、第2ドレンパン28側に開口するように構成される一方、第2配管収容空間SP2は、第2側壁部204に対向配置される平板状の隔離板26によって閉塞されている。
【0043】
また、
図3~
図5に示すように、熱交換器コア200の鉛直方向(Z方向)の下端部には、熱交換器コア200内に生じた結露水や第1、第2、第3管路251,252,253から漏出した冷却水の排出に供するドレンパン22が配置されている。このドレンパン22は、熱交換器コア200の鉛直方向(Z方向)下端部に奥行き方向(Y方向)に沿って配置された第1ドレンパン27と、第1ドレンパン27の下流側端部に接続され、第1ドレンパン27に直交するように幅方向(X方向)に沿って配置された第2ドレンパン28と、で構成される。
【0044】
第1ドレンパン27は、奥行き方向(Y方向)に延設され、熱交換器コア200の底面に開口形成されたドレン孔207に対向する第1ドレン底壁270と、この第1ドレン底壁270の両側縁から立ち上がる一対の第1ドレン側壁271,272とを有する、縦断面概ね凹字形状をなす溝型の樋状に形成されている。さらに、一対の第1ドレン側壁271,272の鉛直方向(Z方向)の上端部には、それぞれ幅方向(X方向)に延出する、いわゆるフランジ状に形成された一対の取付部273,274が設けられていて、この取付部273,274を介して第1ドレンパン27が熱交換器コア200の底部に取り付けられる。これにより、第1ドレンパン27は、ドレン孔207を通じて熱交換器コア200の底部から排出された結露水を受容可能となっている。なお、前記取付部273,274を介した熱交換器コア200に対する第1ドレンパン27の取付固定は、例えばビスなど、図示外の任意の締結手段を用いて行うことができる。
【0045】
また、第1ドレンパン27は、第2収容空間S2の奥行き方向(Y方向)に渡って配置されていて、熱交換器コア200の底部のみならず、熱交換器コア200の奥行き方向(Y方向)の両側部に画定される第1、第2配管収容空間SP1,SP2にも開口している。すなわち、第1ドレンパン27は、熱交換器コアから排出された結露水のほか、第1、第2、第3管路251,252,253を含む第1、第2配管L1,L2から第1、第2配管収容空間SP1,SP2内に漏出及び飛散した冷却水についても、捕集することが可能となっている。
【0046】
また、第1ドレンパン27は、第2ドレンパン28に接続される端壁275の鉛直方向(Z方向)上端部に、第2ドレンパン28側へと下り傾斜状に延出する排出溝276が設けられている。これにより、第1ドレンパン27では、熱交換器コア200から排出された結露水や、第1、第2、第3管路251,252,253を含む第1、第2配管L1,L2から第1、第2配管収容空間SP1,SP2に漏出及び飛散した冷却水の水面が排出溝276に臨む所定の高さ位置に到達したところで、当該排出溝276を介して第2ドレンパン28側へ排出可能となっている。
【0047】
第2ドレンパン28は、幅方向(X方向)に沿って延在し、第2ドレンパン28に接続された第1ドレンパン27の排出溝276の先端部と鉛直方向(Z方向)に対向する第2ドレン底壁280と、この第2ドレン底壁280の両側縁から立ち上がる一対の第2ドレン側壁281,282とを有する、縦断面概ね凹字形状をなす溝型の樋状に形成されている。また、第2ドレン側壁281の鉛直方向(Z方向)の上端部には、下方へ指向する排出口283が設けられている。これにより、第2ドレンパン28では、第1ドレンパン27の排出溝276を通じて導かれた結露水及び冷却水を受容し、この結露水及び冷却水の水面が排出口283に臨む所定の高さ位置に到達したところで、排出口283を介して盤4の外部へ排出可能となっている。
【0048】
(本実施形態の作用効果)
図6は、
図2のB方向から見た矢視図を示している。
【0049】
図6に示すように、本実施形態に係る電力変換装置M1では、熱交換器20の内部において結露が発生すると、この結露により生じた水分(結露水W)は、
図6の矢印Qに示すように、熱交換器コア200の内側面に沿って流れ落ち、ドレン孔207を通じて第1ドレンパン27へと排出されることになる。
【0050】
このように、前記電力変換装置M1では、熱交換器20の鉛直方向(Z方向)の下端部に、熱交換器20の底部に設けられたドレン孔207が開口する第1ドレンパン27が配置されている。このため、熱交換器20の内部に生じた結露水Wを、第1ドレンパン27を介して盤4の外部に排出することができ、当該結露水Wが電気機器10に及ぼす悪影響を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る電力変換装置M1では、盤4の内部の収容空間が、電気機器10を収容する第1収容空間S1と、熱交換器20を収容する第2収容空間S2とに、隔壁40を介して区画されていて、電気機器10と熱交換器20とが分離して配置されている。これにより、熱交換器20の内部に生じた結露水Wが直ちに電気機器10に及ぶおそれがなく、当該結露水Wが電気機器10に及ぼす悪影響を効果的に抑制することができる。
【0052】
さらに、上述のように、熱交換器20の内部の結露水Wを、第1ドレンパン27を介して盤4の外部に排出可能に構成した場合あっても、熱交換器20の内部において熱交換器20の底部に流れ落ちた結露水Wが、熱交換器20を通過するエアフローによって、気流方向に沿って熱交換器20の外へと流出してしまうおそれがある。
【0053】
そこで、本実施形態に係る電力変換装置M1では、前記結露水Wの流出経路を構成する熱交換器20の第1、第2開口部201,202の鉛直方向下側の周縁部が第1、第2風洞板23,24(第1、第2下方延出部231,241)によって覆われてなるギャップGが形成されていて、このギャップGにより、熱交換器20の鉛直方向下端部における熱交換器20の内外の連通が遮断されている。これにより、熱交換器20の内部において、熱交換器20の内側面に沿って鉛直方向下端部(熱交換器20の底部)へと流れ落ちた結露水Wが気流方向に沿って流出するのを、第1、第2風洞板23,24によって堰き止め、結露水Wの熱交換器20外部への流出を抑制することができる。その結果、熱交換器20の内部にて生じた結露水Wが電気機器10に及ぼす悪影響を、より効果的に抑制することができる。
【0054】
なお、前記ギャップGの高さ寸法H2は、第1、第2開口部201,202の高さ寸法H1の5%程度に設定されていることが望ましい。かかる比率で構成することにより、第1開口部201から第2開口部202へ熱交換器20を通過する空気の循環を大きく妨げることなく、前述したような結露水Wの漏出抑制効果を得ることができる。換言すれば、第1、第2開口部201,202に対しギャップGの高さ寸法H2が大きすぎると、このギャップGによって熱交換器20を通過する空気の循環が妨げられ、熱交換器20の冷却効率の低下を招来してしまう可能性がある。
【0055】
また、前記電力変換装置M1では、熱交換器20とサージタンクTとを接続する配管、すなわち第1、第2、第3管路251,252,253を含む第1、第2配管L1,L2が、第2収容空間S2のみに配置され、第1収容空間S1には配置されない構成となっている。このため、第1、第2、第3管路251,252,253を含む第1、第2配管L1,L2の継手部やろう付け部等から漏出した冷却水が電気機器10に及ぼす悪影響を抑制することができる。
【0056】
また、前記電力変換装置M1では、第1、第2、第3管路251,252,253を含む第1、第2配管L1,L2が、第1側壁部203又は第2側壁部204と第1風洞板23(第1側方延出部232a,232b)と第2風洞板24(第2側方延出部242a,242b)とで、平面視コ字形状に囲われた構成となっている。このため、当該第1、第2側壁部203,204と第1風洞板23(第1側方延出部232a,232b)と第2風洞板24(第2側方延出部242a,242b)とで構成された囲いによって、第1、第2、第3管路251,252,253を含む第1、第2配管L1,L2の継手部やろう付け部等から漏出した冷却水の飛散を遮断することができ、この飛散した冷却水が電気機器10に及ぼす悪影響を抑制することができる。
【0057】
さらに、本実施形態に係る電力変換装置M1では、第1、第2側壁部203,204と第1、第2風洞板23,24(第1側方延出部232a,232b及び第2側方延出部242a,242b)により飛散が遮られた冷却水は、第1、第2側壁部203,204及び第1、第2風洞板23,24(第1側方延出部232a,232b及び第2側方延出部242a,242b)を伝って流れ落ちた後、第1、第2配管収容空間SP1,SP2に開口形成された第1ドレンパン27を介して盤4の外部へ排出する構成となっている。これにより、第1、第2、第3管路251,252,253を含む第1、第2配管L1,L2から漏出及び飛散した冷却水が電気機器10に及ぼす悪影響を、より効果的に抑制することができる。
【0058】
また、電気機器10によって温められた暖気は
図2の矢印F1に示すように上昇して盤4の上部に溜まりやすいことから、本実施形態に係る電力変換装置M1では、熱交換器20を収容する第2収容空間S2が、電気機器10を収容する第1収容空間S1に対して鉛直方向(Z方向)の上側に配置されている。これにより、空気(暖気)と冷却水との温度差が大きくなり、熱交換器20による熱交換を効率的に行うことができる。
【0059】
また、熱交換器20の内部で結露により生じた水分を排出するのではなく、例えば特開2006-200756号公報等に記載されるように、熱交換器に供給される冷却水の温度を調節して当該結露自体を抑制する態様を採ることも考えられる。しかし、当該態様の場合には、冷却水のバイパス量の制御が必要となり、冷却システムが複雑化してしまい、電力変換装置の製造コストの増大を招来してしまう可能性がある。
【0060】
〔第2実施形態〕
図7は、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置M2の冷却システム図を示している。なお、以下では、前記第1実施形態に対して変更した点についてのみ説明することとし、前記第1実施形態と同様の構成については、前記第1実施形態と同じ符号を付すことにより、具体的な説明は省略する。
【0061】
図7に示すように、本実施形態に係る電力変換装置M2では、サージタンクTの内部に、当該サージタンクT内に貯留された冷却水の所定水位を検出する水位センサSWが設けられている。この水位センサSWは、第1、第2ドレンパン27,28による排水能力を超えない範囲内における冷却水の減少、すなわち冷却水の漏出を検出する。
【0062】
さらに、本実施形態に係る電力変換装置M2では、水位センサSWによって前記所定水位が検出されて、サージタンクT内の冷却水の減少、すなわち冷却水の漏出を検知すると、電気機器10を安全に停止するための停止処理を実行するように構成されている。
【0063】
このように、本実施形態では、サージタンクTに設けられた水位センサSWによる所定水位の検出に基づいて電気機器10の停止処理が実行される構成となっている。すなわち、本実施形態では、第1、第2ドレンパン27,28による排水能力を超えない範囲で設定された水位センサSWの所定水位の検出に連動して電気機器10の停止処理を実行することにより、熱交換器20から漏出した冷却水が電気機器10へと及ぶ前に、電気機器10を安全に停止させることができる。換言すれば、第1、第2ドレンパン27,28の容積によって熱交換器20からの冷却水の漏出を抑制することにより、電気機器10を安全に停止させるまでの時間的な猶予を確保することが可能となる。これにより、熱交換器20に接続される第1、第2、第3管路251,252,253及び第1、第2配管L1,L2の継手部及びろう付け部等から漏出した冷却水から電気機器10を適切に保護することができ、水漏れによる電気機器10の故障被害を最小限に留めることができる。
【0064】
〔第3実施形態〕
図8は、本発明の第3実施形態に係る電力変換装置M3の鉛直方向断面図を示している。なお、以下では、前記第1実施形態に対して変更した点についてのみ説明することとし、前記第1実施形態と同様の構成については、前記第1実施形態と同じ符号を付すことにより、具体的な説明は省略する。
【0065】
図8に示すように、本実施形態に係る電力変換装置M3では、熱交換器20を収容する第2収容空間S2が、電気機器10を収容する第1収容空間S1に対して鉛直方向(Z方向)の下側に配置されている。かかる構成から、本実施形態では、電動ファン21の作動に基づき、電気機器10によって温められた空気(暖気)が矢印F1に示すように第2収容空間S2側へと吸引され、この吸引された暖気が連通口41を介して第2収容空間S2へと移動し、矢印F2に示すように熱交換器20側へ送気される。その後、熱交換器20を通過して熱交換によって冷却された空気(冷気)が矢印F3に示すように第1収容空間S1側へと吸引され、連通口41を介して第1収容空間S1へ移動し、前記熱交換によって冷却された空気(冷気)が矢印F4に示すように電気機器10側へ送気されることにより、当該電気機器10が冷却されることになる。
【0066】
以上のような構成から、本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様に、ドレンパン22による排出作用、及び第1、第2風洞板23,24による遮蔽作用に基づいて結露水及び冷却水から電気機器10を保護できることは勿論、さらに本実施形態では、熱交換器20を収容する第2収容空間S2が電気機器10を収容する第1収容空間S1よりも鉛直方向(Z方向)の下側に配置されていることにより、熱交換器20から漏出した冷却水が電気機器10に及んでしまう可能性を極力抑制することができる。これにより、電気機器10の安全性がより一層高められて、電気機器10をより適切に保護することができる。なお、本実施形態は、例えば熱交換器20から漏出する冷却水の漏出量が第1、第2ドレンパン27,28から溢れてしまうほど多量である場合に、特に有効なものとなる。
【0067】
本発明は、前記実施形態において例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適用対象の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0068】
特に、前記実施形態で開示した電力変換装置M1~M3の冷却回路の形態は、本発明に係る電力変換装置の一例に過ぎない。換言すれば、本発明に係る電力変換装置の冷却回路を構成する配管(第1、第2、第3管路251,252,253を含む第1、第2配管L1,L2)の取り回しや、ポンプP、放熱部R、サージタンクTの配置については、適用する電力変換装置の仕様等に応じて種々の形態を採用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10…電気機器
20…熱交換器
201…第1開口部
202…第2開口部
21…電動ファン
22…ドレンパン
23…第1風洞板
24…第2風洞板
S1…第1収容空間
S2…第2収容空間