(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】インナウェザストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/75 20160101AFI20230627BHJP
B60J 10/27 20160101ALI20230627BHJP
B60J 10/277 20160101ALI20230627BHJP
B60J 10/24 20160101ALI20230627BHJP
B60J 10/23 20160101ALI20230627BHJP
【FI】
B60J10/75
B60J10/27
B60J10/277
B60J10/24
B60J10/23
(21)【出願番号】P 2020062377
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 絋亮
(72)【発明者】
【氏名】玉置 清隆
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】実公昭50-017131(JP,Y1)
【文献】特開2000-190739(JP,A)
【文献】特開2011-207325(JP,A)
【文献】実開昭64-018914(JP,U)
【文献】特開2012-030754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/75
B60J 10/27
B60J 10/277
B60J 10/24
B60J 10/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアのベルトライン付近に取り付けられる、長尺方向に沿って屈曲又は湾曲した形状のインナウェザストリップにおいて、
前記インナウェザストリップはシール壁と第1本体部と第2本体部と締結部材とを備え、
前記シール壁の各端部にはそれぞれ前記第1本体部と前記第2本体部が接続され、
前記第1本体部は第1穴部を有し、前記第2本体部は第2穴部を有し、
前記締結部材は第1凸部と第2凸部を有し、
前記第1凸部が前記第1穴部と、前記第2凸部が前記第2穴部と係合して、
前記ドアに取り付けられた状態では、前記シール壁と前記第1本体部と前記第2本体部と前記締結部材によって中空形状が形成され
、
長尺方向における一部分では前記第2本体部が形成されておらず、
前記第2本体部が形成されていない部分には、前記インナウェザストリップの屈曲又は湾曲が開始する位置が含まれているインナウェザストリップ。
【請求項2】
車両のドアのベルトライン付近に取り付けられる、長尺方向に沿って屈曲又は湾曲した形状のインナウェザストリップにおいて、
前記インナウェザストリップはシール壁と第1本体部と第2本体部と締結部材とを備え、
前記シール壁の各端部にはそれぞれ前記第1本体部と前記第2本体部が接続され、
前記第1本体部は第1穴部を有し、前記第2本体部は第2穴部を有し、
前記締結部材は第1凸部と第2凸部を有し、
前記第1凸部が前記第1穴部と、前記第2凸部が前記第2穴部と係合して、
前記ドアに取り付けられた状態では、前記シール壁と前記第1本体部と前記第2本体部と前記締結部材によって中空形状が形成され
、
長尺方向における一部分では前記第2本体部が形成されておらず、
前記第2本体部が形成されていない部分の車両前方または後方の端部は、前記インナウェザストリップの屈曲又は湾曲が開始する位置に接しているインナウェザストリップ。
【請求項3】
車両のドアのベルトライン付近に取り付けられる、長尺方向に沿って屈曲又は湾曲した形状のインナウェザストリップにおいて、
前記インナウェザストリップはシール壁と第1本体部と第2本体部と締結部材とを備え、
前記シール壁の各端部にはそれぞれ前記第1本体部と前記第2本体部が接続され、
前記第1本体部は第1穴部を有し、前記第2本体部は第2穴部を有し、
前記締結部材は第1凸部と第2凸部を有し、
前記第1凸部が前記第1穴部と、前記第2凸部が前記第2穴部と係合して、
前記ドアに取り付けられた状態では、前記シール壁と前記第1本体部と前記第2本体部と前記締結部材によって中空形状が形成され
、
前記第1本体部または前記第2本体部のいずれか一方に突出部が形成され、前記突出部が形成された側の他方には、前記突出部と対応する位置に後退部が形成されて、前記ベルトライン付近に取り付けられた状態では前記突出部に対応する位置に前記後退部が位置して、前記突出部と前記後退部が互いに噛み合うように配置されているインナウェザストリップ。
【請求項4】
前記第2本体部が形成されていない部分よりも車両前方側に少なくとも1組の前記突出部及び前記後退部を有し、前記第2本体部が形成されていない部分よりも車両後方側に少なくとも1組の前記突出部及び前記後退部を有している請求項
3に記載のインナウェザストリップ。
【請求項5】
前記シール壁の前記ドアガラスに接する部分には突起部を有し、前記突起部よりも車両下方でかつ前記突起部と前記第1本体部との間に薄肉部が形成されている請求項1~
4に記載のインナウェザストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアのベルトライン付近に取り付けられて、ドアガラスに対してシールを行うインナウェザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドアのベルトライン付近に取り付けられて、ドアを構成するパネルと、ドアの開口部を昇降・開閉するドアガラスとの間をシールするウェザストリップがある。ドアガラスの車外側をシールするものをアウタウェザストリップ、車内側をシールするものをインナウェザストリップと呼ぶ。
【0003】
ドアのベルトラインは略水平な略直線状に形成されており、ウェザストリップもベルトラインの形状に合わせて略直線状に形成されている。ウェザストリップのドアガラスとの間をシールする部分はリップ状または中空状に形成され、車両に求められる性能に応じて形状が使い分けられる。例えば、ドアガラスの保持性能を高めるために中空状に形成することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両に求められるデザインの変化から、車両前後方向に伸びるベルトラインが車両後方側において車両上方へ向かって屈曲又は湾曲する車両が増加しつつある。ドアガラスが存在する部分において屈曲又は湾曲が開始する場合、その屈曲又は湾曲に合わせて、ウェザストリップも屈曲又は湾曲して形成される必要がある。
【0006】
しかし、屈曲又は湾曲した形状のウェザストリップを、一般的な押出成形によって連続的に形成するのは困難である。押出成形によって一旦直線的に形成した後で熱加工等によって屈曲又は湾曲させてもよいが、工程数が増加するために高コストである。
【0007】
一方、射出成形を用いれば屈曲又は湾曲した形状でも形成することが可能であるが、ウェザストリップのように長尺な製品が中空状のシール部を備えている場合には、ウェザストリップに沿ってシール部も屈曲又は湾曲している。このとき、中空状の形状を形成するために必要な中子はシール部の形状に合わせて作られる。そのため、射出成形後にシール部内部から中子を抜去しにくく、シール部を変形もしくは破壊してしまう恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、簡素な構成で、屈曲または湾曲した形状であっても製造が容易で、かつ耐久性を備えた、中空状のシール部を有するインナウェザストリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、長尺方向に沿って屈曲又は湾曲した形状のインナウェザストリップにおいて、インナウェザストリップはシール壁と第1本体部と第2本体部とを備え、シール壁は本体部との間に本体部とドアの開口を開閉するドアガラスとの間をシールし、シール壁の各端部には第1本体部と第2本体部が接続され、第1本体部は第1穴部を有し、第2本体部は第2穴部を有し、締結部材は基部と第1凸部と第2凸部を有し、第1凸部が第1穴部と、第2凸部が第2穴部と係合して、シール壁と第1本体部と第2本体部とによって中空形状が形成され、長尺方向における一部分では第2本体部が形成されておらず、第2本体部が形成されていない部分には、インナウェザストリップの屈曲又は湾曲が開始する位置が含まれているインナウェザストリップである。
【0010】
請求項1の本発明では、射出成形時には中空形状が形成されていないため、長尺方向の全体的に屈曲または湾曲した形状のインナウェザストリップであっても、耐久性を備えた中空状のシール部を容易に形成できる。また、第2本体部が形成されていない部分に新しい端部(から指や治具を挿入することが可能になり作業性が向上する。さらに、第2本体部3が形成されていない部分によって第2本体部が分割されて2枚の独立したフラップ様に形成されて容易に開閉するため、位置決めを行い易く作業性が向上する。また、屈曲又は湾曲が開始する位置の付近において第2本体部が形成されていない部分が存在するため、余の部分では略直線的もしくは緩やかな湾曲となり、第2本体部の開閉がより容易になるだけでなく、締結部材も略直線的もしくは緩やかな湾曲形状にできるため、さらに作業性が向上する。
【0014】
請求項2の本発明は、長尺方向に沿って屈曲又は湾曲した形状のインナウェザストリップにおいて、インナウェザストリップはシール壁と第1本体部と第2本体部とを備え、シール壁は本体部との間に本体部とドアの開口を開閉するドアガラスとの間をシールし、シール壁の各端部には第1本体部と第2本体部が接続され、第1本体部は第1穴部を有し、第2本体部は第2穴部を有し、締結部材は基部と第1凸部と第2凸部を有し、第1凸部が第1穴部と、第2凸部が第2穴部と係合して、シール壁と第1本体部と第2本体部とによって中空形状が形成され、長尺方向における一部分では第2本体部が形成されておらず、前記第2本体部が形成されていない部分の車両前方または後方の端部は、前記インナウェザストリップの屈曲又は湾曲が開始する位置に接しているインナウェザストリップである。
【0015】
請求項2の本発明では、射出成形時には中空形状が形成されていないため、長尺方向の全体的に屈曲または湾曲した形状のインナウェザストリップであっても、耐久性を備えた中空状のシール部を容易に形成できる。また、第2本体部が形成されていない部分に新しい端部(から指や治具を挿入することが可能になり作業性が向上する。さらに、第2本体部3が形成されていない部分によって第2本体部が分割されて2枚の独立したフラップ様に形成されて容易に開閉するため、位置決めを行い易く作業性が向上する。また、屈曲又は湾曲が開始する位置の付近において第2本体部が形成されていない部分が存在するため、余の部分では略直線的もしくは緩やかな湾曲となり、第2本体部の開閉がより容易になるだけでなく、締結部材も略直線的もしくは緩やかな湾曲形状にできるため、さらに作業性が向上する。
【0016】
請求項3の本発明は、長尺方向に沿って屈曲又は湾曲した形状のインナウェザストリップにおいて、インナウェザストリップはシール壁と第1本体部と第2本体部とを備え、シール壁は本体部との間に本体部とドアの開口を開閉するドアガラスとの間をシールし、シール壁の各端部には第1本体部と第2本体部が接続され、第1本体部は第1穴部を有し、第2本体部は第2穴部を有し、締結部材は基部と第1凸部と第2凸部を有し、第1凸部が第1穴部と、第2凸部が第2穴部と係合して、シール壁と第1本体部と第2本体部とによって中空形状が形成される、第1本体部または前記第2本体部のいずれか一方に突出部が形成され、突出部が形成された側の他方には、突出部と対応する位置に後退部が形成され、ベルトライン付近に取り付けられた状態では突出部に対応する位置に後退部が位置して、突出部と後退部が互いに噛み合うように配置されているインナウェザストリップである。
【0017】
請求項1の本発明では、射出成形時には中空形状が形成されていないため、長尺方向の全体的に屈曲または湾曲した形状のインナウェザストリップであっても、耐久性を備えた中空状のシール部を容易に形成できる。又、ベルトライン付近に取り付けられた状態で第1本体部と第2本体部が突出部と後退部によって互いに噛み合うように配置されているため、シール壁が圧縮変形する際に車両前後方向に発生するズレを互いに規制して、シール性が維持できる。
【0018】
請求項4に記載の本発明は、第2本体部が形成されていない部分よりも車両前方側に少なくとも1組の突出部及び後退部を有し、第2本体部が形成されていない部分よりも車両後方側に少なくとも1組の突出部及び後退部を有している請求項3に記載のインナウェザストリップである。
【0019】
請求項4に記載の本発明では、第2本体部3が形成されていない部分よりも車両前方側と車両後方側で、対になった突出部及び後退部をそれぞれ1対以上設けることで、車両前方側でも車両後方側でもそれぞれが突出部及び後退部による効果を十分得ることができて、シール性が維持される。
【0020】
請求項5の本発明は、シール壁のドアガラスに接する部分と第1本体部との間に薄肉部が形成されている請求項1から請求項4に記載のインナウェザストリップである。
【0021】
請求項5の本発明では、シール壁の車両上方に位置する部分に薄肉部を設けることで、シール壁の車両上方側の部分が空隙の側へ確実に撓むことができるため、第1本体部2の空隙41の側への開きを抑えこむことができ、第1穴部21と第1凸部51との係合が外れない。すなわちシール壁4が変形しても中空形状が保たれてシール性が維持できる。
【発明の効果】
【0022】
射出成形時には中空形状が形成されていないため、長尺方向の全体的に屈曲または湾曲した形状のインナウェザストリップであっても、簡素な構成で中空状のシール部を容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】インナウェザストリップの車内側からの側面視
【
図2】インナウェザストリップの車内側からの側面視
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態の1つであるインナウェザストリップについて
図1から
図5に基づき説明する。
【0025】
インナウェザストリップ1は、車両のドア(図示しない)のベルトラインに取付けられる。本実施形態では、ドアを形成するインナパネル(図示しない)に取り付けられたドアトリム9のドアガラス7側の面に取り付けられてドアガラス7との間をシールしている。インナウェザストリップ1はドアトリム9を介さず、インナパネルのドアガラス7側の面に取り付けられていても良い。また、コンバーチブル車などでクォータウインドウが昇降する場合には、車体に対して直接、もしくは車体に取り付けられた内装トリムに対してインナウェザストリップ1を取り付けて、クォータウインドウとの間をシールするようにしても良い。
【0026】
インナウェザストリップ1は射出成形によって長尺に形成され、
図1に示すように、全体として屈曲した形状である。
図1の左方向は、閉状態のドアのベルトラインにインナウェザストリップ1が取り付けられた状態における車両前方方向であり、車両前方では略水平に取り付けられ、車両後方へ行くに従って緩やかに湾曲しながら車両上方側へ移動し、車両前方の端部よりも車両後方の端部の方が高いところに位置し、すなわち全体として屈曲している。以降、車両前後方向・車両上下方向・車内外側という方向については、同様に閉状態のドアのベルトラインにインナウェザストリップ1が取り付けられた状態におけるものを指す。
【0027】
図3はインナウェザストリップ1の、
図1におけるC-C断面である。インナウェザストリップ1はシール壁4と第1本体部2と第2本体部3とによって、略三角形状の空隙41を形成している。空隙41の中に締結部材5が挿入されて第1本体部2及び第2本体部3と密着して、第1本体部2及び第2本体部を締結している。
【0028】
第1本体部2には第1穴部21が、第2本体部3には第2穴部31が形成されており、締結部材5は平板状の基部50を有し、基部50の主面に第1凸部51と第2凸部52が形成されている。第1凸部51が第1穴部21と、第2凸部52が第2穴部31と係合して、第1本体部2と第2本体部3とが強固に締結される。そのため、シール壁4がドアガラス7に圧接して空隙41を潰すように変形して第1本体部2と第2本体部3に力が加わっても相互に離間することなく、結果、インナウェザストリップ1の中空形状が維持されて、シール性が保たれる。
【0029】
このとき、第1本体部2と第2本体部3は、締結部材5とドアトリム9の間に挟持されているため、締結部材5によって第1本体部2と第2本体部3とが強固に締結される。第1本体部2及び第2本体部3と締結部材5との間は、さらに接着剤によって接着されていても良い。
【0030】
さて、屈曲又は湾曲した形状であるインナウェザストリップ1のシール壁4がドアガラス7に圧接する際、シール壁4には車両前後方向の応力が発生し、第1本体部2と第2本体部3へも伝わって、第1本体部2と第2本体部3とが車両前後方向へズレようとする力が発生する。
【0031】
図2に示すように、本実施形態では第1本体部2から第2本体部3へ突出する突出部22が形成され、第2本体部3の突出部22に対応する位置には後退部32が形成されており、インナウェザストリップ1の全体としては、複数の突出部22と複数の後退部32の間に形成された隙間もしくは両者が接触する境界によって車両上下方向にジグザグする形状が形成されている。
【0032】
このため、シール壁4がドアガラス7に圧接されて第1本体部2と第2本体部3とが車両前後方向へズレようとしても、突出部22と後退部32が接触、係合するため、第1本体部2と第2本体部3とがズレることがなく、結果、インナウェザストリップ1の中空形状が維持されてシール性が保たれる。
【0033】
複数の突出部22の一部にはクリップ孔24が設けられている。さらに締結部材5のクリップ孔24と対応する位置にもクリップ孔53が設けられている。クリップ孔24及びクリップ孔53を貫通するようにして図示しない公知のクリップが挿入されて、ドアトリム9にインナウェザストリップ1を取り付けるようにしてある。また、クリップ孔24は第2本体部3にも設けられており、同様に締結部材5のクリップ孔24と対応する位置にはクリップ孔53が設けられ、同様にクリップが挿入されてドアトリム9にインナウェザストリップ1を取り付けるようにしてある。また車両前方側では、第2本体部3の2つの後退部32の間にクリップ孔24が設けられている。
【0034】
図3は
図1におけるC-C断面である。第1本体部2と第2本体部3が締結部材5によって締結されて、シール壁4と合わせて全体として略三角形の形状の空隙41を形成して、断面が中空形状であるインナウェザストリップ1を形成している。シール壁4と第1本体部2の接続する部分からは車両上方へ延びてドアトリム7に当接する意匠リップ46が形成されている。
【0035】
シール壁4のドアガラス7に当接する部分には突起部44が形成されている。突起部44を含むシール壁4のドアガラス7側の表面には摺動層45が形成されている。シール壁4の車両上方側の部分では空隙41の側に薄肉部42が形成されている。突起部44の先端がドアガラス7に当接すると、シール壁4の車両上方側の部分が撓む。
【0036】
このとき、シール壁4は薄肉部42で屈曲して空隙41の側へ撓む。薄肉部42を形成する位置は、突起部44の先端より車両下方側であることが好ましい。シール壁4がドアガラス7に当接する際にはまず突起部44の先端付近において当接が開始され、同時にシール壁4の撓みが開始される。そのため、シール壁4の空隙41側への撓み変形が確実になる。
【0037】
シール壁4が撓む際には第1本体部2とシール壁4の接続部を支点として第1本体部2の車両下方側の先端が空隙41の側へ移動する、すなわち第1本体部2が空隙41の側へ開く動きをしようとする。シール壁4の車両上方側の部分が空隙41の側へ確実に撓むことができると、第1本体部2の空隙41の側への開きを抑えこむことができる。つまり、開こうとする方向を空隙41から離れる方向であるドアトリム9の側にすることができる。ドアトリム9によって第1本体部2の開きが規制されるため、第1穴部21と第1凸部51との係合が外れない。すなわちシール壁4が変形しても中空状の形状が保たれてシール性が維持できる。
【0038】
さらに第2本体部3とシール壁4とが接続する位置の空隙41側にはノッチ47が設けられている。シール壁4が撓む際には第2本体部3とシール壁4の接続部を支点として第2本体部3の車両上方側の先端がドアトリム9の側へ移動させる力が働く、すなわち第2本体部3がドアトリム9の側へ開く動きをしようとする。第2本体部3がドアトリム9の側へ開く力が強くなると、第2本体部3がテコとして働いて締結部材5を空隙41の側へ押し上げ、第2穴部31と第2凸部52の係合が外れてしまう恐れがある。ノッチ47が設けられていることで、シール壁4が撓む際に第2本体部3へ伝達される力が減少するため上記の第2本体部3の開きが抑制される。従って第2穴部31と第2凸部52との係合が外れない。すなわちシール壁4が変形しても中空状の形状が保たれてシール性が維持できる。
【0039】
図4はインナウェザストリップ1の、
図1におけるB-B断面である。この部分では第2本体部3が形成されていない。さらに第1本体部2の一部と、シール壁4の一部が切り欠かれている。第2本体部3が形成されていない部分の車両後方側からインナウェザストリップ1の屈曲が開始しており、それより車両後方側に位置する部分では緩やかに湾曲しながら車両上方へ向かいながら延在している。すなわち屈曲が開始する部分の付近においては第2本体部3が形成されていない。
【0040】
図4では、第2本体部3が形成されていない部分は、屈曲が開始する部分を開始点として車両前方側へ形成されているが、屈曲が開始する部分を開始点として車両後方側へ形成しても良いし、第2本体部3が形成されていない部分を屈曲が開始する部分を跨って含むようにして形成しても良い。いずれの場合も、後述する効果は同等である。
【0041】
このようにして第2本体部3が形成されていない部分がある場合には、対になった突出部22と後退部32を、第2本体部3が形成されていない部分よりも車両前方側と車両後方側でそれぞれ1対以上形成するようにすることが好ましく、クリップ孔24も車両前方側と車両後方側でそれぞれ1つ以上設けることが好ましい。突出部22と後退部32とによる上述の効果は、インナウェザストリップ1の第2本体部3が形成されていない部分を越えては車両前後方向へ伝搬しない。従って、第2本体部3が形成されていない部分よりも車両前方側と車両後方側でそれぞれ1対以上設けることで、車両前方側でも車両後方側でもそれぞれが十分な効果を得ることができて、シール性が維持される。
【0042】
図5は、締結部材5による締結方法の概念図である。まず、成形後のインナウェザストリップ1は、ベルトラインに組付けられた状態では車内側になる方へ向かって第2本体部3を倒した状態にされる。次に第1本体部2の内側、すなわち空隙41の形成が予定されている側から締結部材5が第1本体部2に押し当てられて、第1穴部21と第1凸部51とが係合される。その後、第2本体部3がノッチ47を支点として
図5の矢印の方向に回動するように折り曲げられて締結部材5に押し付けられ、第2穴部31と第2凸部52とが係合される。このようにして空隙41が形成されて、すなわち中空状のシール部を有するインナウェザストリップ1が形成される。
【0043】
各穴部と各凸部とを係合させる際には、インナウェザストリップ1の車両前後方向の端部から指や治具を挿入して第1本体部2と締結部材5とを、また第2本体部3と締結部材5とを押し付けるようにすると、より強く確実に締結できる。この際、第2本体部3が形成されていない部分には、上記の車両前後方向の端部と同様に指や治具を挿入可能な端部が形成される。すなわち、インナウェザストリップ1の長尺方向に対して中間の位置に新たな端部が設けられ、この端部からも指や治具を挿入することができて、締結力及び作業性が向上する。
【0044】
締結部材5は、第2本体部3が形成されていない部分に配置される部分では、余の部分に比べて細く形成されている。第2本体部が形成されていない部分よりも車両前方に配置される部分と、車両後方に配置される部分とを一体にできると部品点数が削減できる。しかし、第2本体部が形成されていない部分に配置される部分でも余の部分と同等の幅で締結部材5を形成してしまうと、上記の端部をふさいでしまうため、上記のように端部から指や治具を挿入して行う締結作業の作業性を妨げてしまう。一方、本実施形態では幅を細く形成しているために、第2本体部3が形成されていない部分に形成された端部をふさぐことがない。従って、締結力及び作業性が向上する。
【0045】
屈曲が開始する部分の付近においては第2本体部3が形成されていないことで、第2本体部3が形成されていない部分によって第2本体部3が分割されて2枚の独立したフラップ様に形成されているため、第2本体部3と締結部材5を押し付けて第2穴部31と第2凸部52を係合させて締結する際には第2本体部3を開閉しやすく、従って位置決めを行い易く作業性が向上する。
【0046】
別の実施形態においては、インナウェザストリップ1の第2本体部3が形成されていない部分よりも車両前方側で締結部材5を1本用い、車両後方側で別の締結部材5を1本用い、計2本の締結部材が使用することもできる。このようにすることでは、締結部材5の一本当たりの長さが短くなり、従って締結部材5を第1本体部2及び第2本体部3に対して位置決めして締結する際に取り回しが良くなり、作業性が向上する。
【0047】
インナウェザストリップ1は射出成形によって形成される。射出成型時には中空状のシール部を備えないために中子を用いる必要がなく金型構造が簡素化できる。さらに締結部材5を用いて第1本体部2と第2本体部3とを締結することで、長尺方向の全体的に屈曲または湾曲した形状のインナウェザストリップであっても、中子を用いることなく中空状のシール部を容易に形成できる。
【0048】
インナウェザストリップ1は全体的に動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)で形成されている。射出成形グレードのエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)によって形成されても良く、その場合には成形後に熱を加えて架橋を行った後に、締結部材5によって締結する。
【0049】
締結部材5は全体的にTPVで形成されており、本実施形態においてはインナウェザストリップ1と同じ材料を用いている。この場合には、第1本体部2と第2本体部3と締結部材5とが同じ材料を用いて形成されていて硬度や弾性がそれぞれ同程度となるため、インナウェザストリップ1に対して応力が加わる際(例として、組付け時や、ドアガラス7との間をシールする際)には、第1本体部2と第2本体部3と締結部材5との間で変形度合に差が生まれにくい。するとそれらの界面で発生するせん断応力を小さくできるために締結部材5の締結力が低下しにくく、然るにシール性が維持される。
【0050】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0051】
第1穴部21及び第2穴部31は複数形成されて良く、それぞれ数が異なっても良い。第1凸部51及び第2凸部52は複数形成されて良く、それぞれ数が異なっていても良い。第1穴部21及び第2穴部31は貫通穴ではなく、凹部として形成されていてもよい。
【0052】
突出部22は第2本体部3から形成しても良い。その場合は第1本体部2の突出部22に対応する位置に後退部32を設けるようにする。例えば、第1本体部においては突出部22と後退部32とを車両前後方向に沿って交互に設けても良いし、突出部22のほとんどを第1本体部2の側に設けることにして、一部を第2本体部3の側に設けるようにしても良い。
【0053】
締結部材5によって締結する際には、締結部材5と接着剤とを併用して締結しても良い。接着剤は締結部材5によって締結する前に締結部材5に塗布しても良いし、締結後に締結部材5と第1本体部2や第2本体部3との隙間に流し込んでも良い。
【0054】
ドアトリム9への取付には、クリップの代わりにリベットを用いても良い。その際には、リベット締結用の工具を差し込むために、シール壁4のドアガラス7側に挿入孔を設けて、挿入孔から空隙41へ工具を差し込んでリベットを保持し、リベット締結を行うようにすると良い。
【符号の説明】
【0055】
1 インナウェザストリップ
2 第1本体部
21 第1穴部
22 突出部
23 係合部
24 クリップ孔
3 第2本体部
31 第2穴部
32 後退部
4 シール壁
41 空隙
42 薄肉部
44 突起部
45 摺動層
46 意匠リップ
47 ノッチ
5 締結部材
50 基部
51 第1凸部
52 第2凸部
53 クリップ孔
7 ドアガラス
9 ドアトリム