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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/27 20180101AFI20230627BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20230627BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20230627BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20230627BHJP
【FI】
F21S41/27
F21S41/148
F21S41/16
F21W102:155
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020074779
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2020181813
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019083664
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】林 政輝
(72)【発明者】
【氏名】小野間 慶
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-084876(JP,A)
【文献】特開2019-057368(JP,A)
【文献】特開2014-154356(JP,A)
【文献】特開2015-158986(JP,A)
【文献】特開2015-230814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/27
F21S 41/148
F21S 41/16
F21W 102/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する発光部と、
複数の入射面を含み、前記発光部からの光を直接前記複数の入射面で入射し前記複数の入射面のそれぞれを介して出射される出射光を重畳して所定の配光パターンを形成するレンズと、
を備え、
前記発光部は、
前記レンズの焦点又は焦点の近傍に配置され、ロービーム用配光パターンの少なくとも一部を前記レンズに形成させる第1半導体型光源と、
前記第1半導体型光源の下方に配置され、前記ロービーム用配光パターンよりも上方に光を照射する上方配光パターンを前記レンズに形成させる第2半導体型光源と、
を含
前記レンズは、
前記複数の入射面のそれぞれのうち当該レンズの上部にある一部が、前記配光パターンの斜めカットオフラインを形成するための傾斜カットオフライン形成領域として構成される、
車両用灯具。
【請求項2】
前記第2半導体型光源は、
発光面積が、前記第1半導体型光源と同じ又は前記第1半導体型光源よりも小さい、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記発光部と前記レンズとを有する第1灯具ユニットと、
前記第1灯具ユニットの前記配光パターンと異なる拡散用配光パターンを形成する第2灯具ユニットと、
を備える、
請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記レンズは、
前記複数の入射面のそれぞれのうち一部が、前記配光パターンにおける他の領域よりも光度が高いホットゾーンを形成するためのホットゾーン形成領域として構成される、
請求項1~3の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体型光源からの光をレンズに直接入射し、直接入射した光をそのレンズから出射させる車両用灯具は、従来から使用されている。このような車両用灯具のうち、ロービームと、ハイビームとを形成するものが提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-084876号公報
【文献】特開2009-193953号公報
【文献】特開2014-154356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術は、1つの発光部内に、ハイビーム用の光源と、ロービーム用の光源とを備えることで灯具の小型化を図るものである。しかし、所定の配光パターンを明瞭に形成するために、例えば、発光部とレンズとの間にシェードを備えている。よって、灯具自体が重量化し、部品点数が増加する。特許文献2に記載の従来技術についても、シェードを備えるため、同様に灯具自体が重量化し、部品点数が増加する。また、特許文献3に記載の従来技術においては、1つの車両用灯具内に、ハイビーム用の灯具ユニットと、ロービーム用の灯具ユニットと、拡散配光用の灯具ユニットとを備え、それぞれの灯具ユニットで異なる発光部を有し、それぞれの発光部内に複数の光源が配置されている。よって、それぞれの発光部内の複数の光源により所定の配光パターンを比較的明瞭に形成することができるが、全体として重量化及び部品点数の増加は避けられない。したがって、特許文献1~3に記載のような従来技術は、灯具自体の小型化且つ部品点数の削減を図ることができない。
【0005】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、灯具自体の小型化且つ部品点数の削減を図ることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面である車両用灯具は、光を出射する発光部と、複数の入射面を含み、前記発光部からの光を直接前記複数の入射面で入射し前記複数の入射面のそれぞれを介して出射される出射光を重畳して所定の配光パターンを形成するレンズと、を備え、前記発光部は、前記レンズの焦点又は焦点の近傍に配置され、ロービーム用配光パターンの少なくとも一部を前記レンズに形成させる第1半導体型光源と、前記第1半導体型光源の下方に配置され、前記ロービーム用配光パターンよりも上方に光を照射する上方配光パターンを前記レンズに形成させる第2半導体型光源と、を含前記レンズは、前記複数の入射面のそれぞれのうち当該レンズの上部にある一部が、前記配光パターンの斜めカットオフラインを形成するための傾斜カットオフライン形成領域として構成される
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、灯具自体の小型化且つ部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示を適用した実施形態1に係る車両用灯具の斜視図である。
図2】本開示を適用した実施形態1に係る車両用灯具の分解斜視図である。
図3】本開示を適応した実施形態1に係る発光部3の正面視の一例を表す図である。
図4】本開示を適応した実施形態1に係る発光部3からレンズ2の入射面21を見た正面視の一例を示す図である。
図5】本開示を適用した実施形態1に係る図4のA-A線断面図である。
図6】本開示を適用した実施形態1に係る面S1(傾斜カットオフライン形成領域)により形成された斜めカットオフラインCLを含むロービーム用配光パターンLPの一例を示す図である。
図7】本開示を適用した実施形態1に係る第1半導体型光源31の点灯時にレンズ2により形成されるロービーム用配光パターンLPを等光度線で表した一例を示す図である。
図8】本開示を適用した実施形態1に係る第2半導体型光源32の点灯時にレンズ2により形成される上方配光パターンUPを等光度線で表した一例を示す図である。
図9】本開示を適用した実施形態1に係る第1半導体型光源31及び第2半導体型光源32の両方の点灯時にレンズ2により形成されるハイビーム用配光パターンHPを等光度線で表した一例を示す図である。
図10】本開示を適用した実施形態2に係る第1灯具ユニット8a及び第2灯具ユニット8bの斜視図である。
図11】本開示を適用した実施形態2に係る第1灯具ユニット8a及び第2灯具ユニット8bのそれぞれにより形成される集光用配光パターンSP、上方配光パターンUP2及び拡散用配光パターンWPを等光度線で表した一例を示す図である。
図12】本開示を適応した実施形態1に係る発光部3の正面視の他の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を適用した車両用灯具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0010】
実施形態1.
(概略構成)
図1は、本開示を適用した実施形態1に係る車両用灯具の斜視図である。図2は、本開示を適用した実施形態1に係る車両用灯具の分解斜視図である。車両用灯具は、例えば、不図示の車両の前方の左右に設けられ、左右で同様の構成であり、ヘッドランプとして機能する。車両用灯具は、フレーム1と、レンズ2と、発光部3と、基板4と、ヒートシンク6と、を備える。ヒートシンク6は、熱伝導率の高い金属部材又は樹脂部材等から構成され、放熱性能を向上させるグリース5を介して、発光部3を搭載する基板4が取り付けられる。基板4は、給電等を行うための不図示の電気コネクタが設けられ、光を出射する発光部3に給電を行いつつ、点灯及び消灯等の各種制御を行う。なお、フレーム1は、レンズ2のホルダーとして機能するものであるが、ネジ固定孔及びボス孔等の説明については当業者であれば容易に理解できるのでそれらの説明については省略する。
【0011】
(要部構成)
次に、発光部3の詳細について説明する。図3は、本開示を適応した実施形態1に係る発光部3の正面視の一例を表す図である。発光部3は、第1半導体型光源31及び第2半導体型光源32を備え、それぞれが不図示の封止樹脂部材で封止されたパッケージから構成されている。第1半導体型光源31及び第2半導体型光源32は、例えば、LED若しくはOLED(有機EL)又はLD(半導体レーザー、レーザーダイオード若しくはダイオードレーザー)等の自発光半導体型光源であり、それぞれが平面矩形形状(平面長方形状)をなす。なお、第1半導体型光源31及び第2半導体型光源32の形状は、正方形であってもよい。また、図3に示すX軸は、発光部3の発光面の中心Oを通る左右方向の水平軸である。図3に示すY軸は、発光部3の発光面の中心Oを通る上下方向の鉛直軸である。
【0012】
第1半導体型光源31は、長手方向がX軸の方向に配置され、短手方向がY軸の方向に沿って配置され、第1半導体型光源31の中心を中心Oとする。第2半導体型光源32は、第1半導体型光源31の下方に配置されているものであり、長手方向がX軸の方向に沿って配置され、短手方向がY軸の方向に沿って配置されている。図3の一例では、第2半導体型光源32は、発光面積が、第1半導体型光源31よりも小さい。なお、第2半導体型光源32は、発光面積が、第1半導体型光源31と同じでもよい。また、第2半導体型光源32は、輝度が、第1半導体型光源31と同じ又は高い。また、図3の一例では、左側通行を想定しているため、第2半導体型光源32は、車両用灯具の前方側から見た正面視で第1半導体型光源31の中心Oよりも右側に配置されている。
【0013】
図4は、本開示を適応した実施形態1に係る発光部3からレンズ2の入射面21を見た正面視の一例を示す図である。図4に示すように、レンズ2の入射面21は、複数の面S1~S8を含む。複数の面S1~S8のうち、面S1は、レンズ2の上部にある一部であって、右側に形成されているものであり、傾斜カットオフライン形成領域として機能する。傾斜カットオフライン形成領域の機能の詳細については後述する。面S3は、Y軸に対し、面S1と対称の位置に形成されているものであって、面S1とおおよそ同じ表面積を有する。面S2は、面S1と面S3との間に形成されているものである。面S6は、X軸に対し、面S1と対称の位置に形成されているものであり、面S1とおおよそ同じ表面積を有する。面S4は、X軸に対し、面S3と対称の位置に形成されているものであり、面S3とおおよそ同じ表面積を有する。面S8は、X軸に対し、面S2とほぼ対称の位置に形成されているものである。面S5は、面S4よりも下方の位置に形成されているものである。面S7は、面S2と、面S8との間に形成されているものであり、中心を通る線が中心Oと一致している。
【0014】
図5は、本開示を適用した実施形態1に係る図4のA-A線断面図である。図6は、本開示を適用した実施形態1に係る面S1(傾斜カットオフライン形成領域)により形成された斜めカットオフラインCLを含むロービーム用配光パターンLPの一例を示す図である。なお、図5において、発光部3から出射した光の向きを明示するためにレンズ2の断面のハッチングの図示はあえて省略している。また、図6以降の図において、符号「VU-VD」は、上下の垂直線を示す。符号「HL-HR」は、左右の水平線を示す。
【0015】
図5に示すZ軸は、第1半導体型光源31の中心Oを通る法線(垂線)、すなわち、図3,4に示すX軸及び図3~5に示すY軸と直交する前後方向の軸(基準光軸)である。つまり、第1半導体型光源31は、第1半導体型光源31の中心OがZ軸である基準光軸の前側を向くように配置されている。このように、X,Y及びZは、直交座標(X-Y-Z直交座標系)を構成する。よって、直交座標の中心と第1半導体型光源31の中心Oとを一致させる。図5に示すように、第1半導体型光源31の中心Oは、レンズ2の焦点F又は焦点F近傍に位置し、且つZ軸である基準光軸上又はその近傍に位置する。よって、第1半導体型光源31は、レンズ2の焦点F又は焦点F近傍に配置されている。
【0016】
また、上記で説明したように、第2半導体型光源32は、第1半導体型光源31の下方に配置されている。第1半導体型光源31は、レンズ2の焦点F又は焦点F近傍に配置されている。よって、第2半導体型光源32は、レンズ2の焦点F又は焦点F近傍の下方に配置されているため、第1半導体型光源31よりもレンズ2の焦点Fから離れた位置に配置されている。
【0017】
なお、上記で説明したように、第1半導体型光源31の発光面の中心Oは、Z軸である基準光軸上又はその近傍に位置するものでもある。よって、第1半導体型光源31は、Z軸である基準光軸上又はその近傍に配置されているとも言える。一方、第2半導体型光源32は、Z軸である基準光軸上又はその近傍の下方に配置されているため、第1半導体型光源31よりもZ軸である基準光軸上から離れた位置に配置されている。
【0018】
レンズ2は、入射面21の他に出射面22を備える。入射面21側において、面S1と面S6は第1半導体型光源31に向かって凸形状となっている。図示は省略するが、面S3と面S4も第1半導体型光源31に向かって凸形状となっている。レンズ2は、発光部3からの光を入射面21から直接入射し、出射面22から出射光を出射する。面S1は、基準光軸より上方に形成されているものであって、図6に示すようなロービーム用配光パターンLPの斜めカットオフラインCLを形成するためのものである。面S1は、面S1に至る光により多数の投影像PIを形成する。よって、面S1の表面形状に応じて、図6に示すように、面S1の投影像PIが次々に重畳されていくことで、ロービーム用配光パターンLPの斜めカットオフラインCLは形成される。したがって、レンズ2は、斜めカットオフラインCLを含んだ所定の配光パターンを形成する。特に、面S1の投影像PIは、図5に示す光路LP1,LP2に示すように斜めカットオフラインCL付近に集光するようにされている。この結果、斜めカットオフラインCL付近については、ロービーム用配光パターンLPの他の箇所よりも光度が高いホットゾーンとして配光形成される。また、このようなホットゾーンを形成することから、面S1についてはホットゾーン形成領域としても機能することとなる。なお、第1半導体型光源31から出射された光と比べ、第2半導体型光源32から出射された光の方が、レンズ2に到達するまでの距離が長いため、第1半導体型光源31から出射された光によりレンズ2から出射した光の投影像PIと比べ、第2半導体型光源32から出射された光によりレンズ2から出射した光の投影像を小さくすることができる。それにより、中央付近(H線とV線の交点付近)の光度を高めることができるため、遠方視認性の優れたハイビーム用配光パターンHPを形成することが容易となる。なお、第1半導体型光源31と第2半導体型光源32との大きさが同じである場合、第1半導体型光源31の輝度(光束)<第2半導体型光源32の輝度(光束)となる。また、第1半導体型光源31が第2半導体型光源32よりも大きい場合、第1半導体型光源31の輝度(光束)≦第2半導体型光源32の輝度(光束)となる。つまり、少なくともハイビームを出射する第2半導体型光源32の方が強い光を照射する。その理由は、後述するハイビーム用配光パターンHPの方がロービーム用配光パターンLPよりも明るい配光とする必要があるためである。
【0019】
(作用)
次に本実施形態における車両用灯具の作用について説明する。図7は、本開示を適用した実施形態1に係る第1半導体型光源31の点灯時にレンズ2により形成されるロービーム用配光パターンLPを等光度線で表した一例を示す図である。第1半導体型光源31は、ロービーム用配光パターンLPをレンズ2に形成させる。具体的には、基板4は、第2半導体型光源32を消灯状態に制御し、第1半導体型光源31を点灯状態に制御する。よって、発光部3は、第1半導体型光源31から出射される光をレンズ2に出射する。第1半導体型光源31から出射される光は、レンズ2の入射面21からレンズ2中に屈折して入射する。このとき、入射光は、入射面21において配光制御される。その配光制御された入射光は、レンズ2の出射面22から外部に屈折して出射される。このとき、出射光は、出射面22において配光制御される。その出射光は、ロービーム用配光パターンLPとして前方に照射される。ここで、第1半導体型光源31から出射される光は、一部が面S1から入射し且つ出射面22の上部から出射する。
【0020】
図8は、本開示を適用した実施形態1に係る第2半導体型光源32の点灯時にレンズ2により形成される上方配光パターンUPを等光度線で表した一例を示す図である。第2半導体型光源32は、第1半導体型光源31よりも発光面積が小さいことで投影像PIを小さくできる。よって、後述するハイビーム用配光パターンHPの中央部分に多重され、中央部の最大光度に寄与することができる。
【0021】
図9は、本開示を適用した実施形態1に係る第1半導体型光源31及び第2半導体型光源32の両方の点灯時にレンズ2により形成されるハイビーム用配光パターンHPを等光度線で表した一例を示す図である。ハイビーム用配光パターンHPは、複数の配光パターンを合成したものになっている。具体的には、基板4は、第1半導体型光源31を点灯状態に制御し、第2半導体型光源32も点灯状態に制御する。よって、発光部3は、第1半導体型光源31から出射される光と、第2半導体型光源32から出射される光と、をレンズ2に出射する。レンズ2は、図7に示すロービーム用配光パターンLPと、図8に示す上方配光パターンUPとを照射する。このとき、図7に示すロービーム用配光パターンLPと、図8に示す上方配光パターンUPとが合成されて、図9に示すハイビーム用配光パターンHPが形成される。このとき、図8に示す上方配光パターンUPが図7に示すロービーム用配光パターンLPよりも上に位置する。つまり、第2半導体型光源32は、ロービーム用配光パターンLPよりも上方に光を照射する上方配光パターンUPをレンズ2に形成させる。
【0022】
(効果)
次に本実施形態における車両用灯具の効果について説明する。第1半導体型光源31から出射された光と比べ、第2半導体型光源32から出射された光の方が、レンズ2に到達するまでの距離が長いため、第1半導体型光源31から出射された光によりレンズ2から出射した光の投影像PIと比べ、第2半導体型光源32から出射された光によりレンズ2から出射した光の投影像PIを小さくすることができる。よって、中央付近(H線とV線の交点付近)の光度を高めることができるため、遠方視認性の優れたハイビーム用配光パターンHPを形成することが容易となる。したがって、全体として重量化及び部品点数の増加を避けることができるので、灯具自体の小型化且つ部品点数の削減を図ることができる。
なお、付言すると、第2半導体型光源32を車両搭載状態において、図3に示すように車両用灯具の前方側から見た正面視で、第1半導体型光源31の下方に配置され、且つ第1半導体型光源31の中心Oよりも右側に配置されることで、ロービーム配光においては斜めカットオフラインCLを明確に形成しつつ、ハイビーム用配光においても中央付近の光度の高いハイビーム用配光パターンHPを形成できる。
具体的には、レンズタイプの配光は、配置された光源からの光を照射する際、上下左右に反転した方向に所定の配光パターンが形成される。実施形態1においては、第2半導体型光源32は、図3に示すような車両用灯具搭載状態において、左下に位置するため、配光パターンとしては、右上に移動した位置に照射される。
換言すれば、図9と合わせて見た場合、本来であればH線とV線との交点の左下に所定の配光パターンが位置するものであるが、上下左右が反転されるため、H線とV線との交点の右上付近に第2半導体型光源32の光源像の中心が位置するように照射される。このため、ロービームにおいては、レンズ2の焦点Fに第1半導体型光源31が位置するので、適したロービーム配光を形成でき、ハイビームにおいては、第2半導体型光源32が、車両用灯具搭載状態において、第1半導体型光源31の中心Oよりも左下にずれているため、ハイビーム配光として最適な配光を形成でき、1つのレンズ2において2つの機能に適した配光を形成することができる。
【0023】
また、実施形態1において、レンズ2は、ロービーム用配光パターンLPの斜めカットオフラインCLを形成するための面S1が構成される。よって、面S1により斜めカットオフラインCLが形成されているため、斜めカットオフラインCL付近の光度を高くすることができる。したがって、ロービーム用配光パターンLPのグレアを確実に防ぐことができ、車両走行に適したロービーム用配光パターンLPを提供することができる。
なお、実施形態1においては斜めカットオフラインCL付近がホットゾーンとされているが、ホットゾーンは斜めカットオフラインCL付近に限らず、適宜変更等が可能である。
【0024】
また、実施形態1において、第2半導体型光源32は、発光面積が、第1半導体型光源31と同じ又は第1半導体型光源31よりも小さい。レンズ2と、第1半導体型光源31との位置関係によりロービーム用配光パターンLPに投影される投影像PIが決まっているため、第2半導体型光源32と、第1半導体型光源31とが同じ発光面積であっても、ハイビームの投影像と、ロービームの投影像PIとの大きさを異ならせることができる。したがって、特に顕著に低コストで、ハイビームと、ロービームとを実現することができる。また、第2半導体型光源32は、発光面積が、第1半導体型光源31よりも小さい場合には、第2半導体型光源32から出射される光の投影像をさらに小さくすることができ、中央付近(H線とV線の交点付近)の光度を高めることができるため、遠方視認性の優れたハイビーム用配光パターンHPを形成することが容易となる。
【0025】
実施形態2.
実施形態2において、実施形態1と同様の構成及び機能の説明を省略する。実施形態2では、上記で説明した車両用灯具において、レンズ2の構成の異なるものを隣接して使用する場合について説明する。図10は、本開示を適用した実施形態2に係る第1灯具ユニット8a及び第2灯具ユニット8bの斜視図である。第1灯具ユニット8aの構成及び機能は、実施形態1で説明した車両用灯具と同様である。図11は、本開示を適用した実施形態2に係る第1灯具ユニット8a及び第2灯具ユニット8bのそれぞれにより形成される集光用配光パターンSP、上方配光パターンUP2及び拡散用配光パターンWPを等光度線で表した一例を示す図である。図11(a)は、集光用配光パターンSPを等光度線で表した一例を示す。図11(b)は、ハイビーム用の上方配光パターンUP2を等光度線で表した一例を示す。図11(c)は、拡散用配光パターンWPを等光度線で表した一例を示す。
【0026】
(概略構成)
第1灯具ユニット8aは、レンズ2aがフレーム1aで固定されている。第1灯具ユニット8aにおいて、第1半導体型光源31の点灯により図11(a)に示すような集光用配光パターンSPと、第2半導体型光源32の点灯により図11(b)に示すような上方配光パターンUP2とがそれぞれ形成される。第2灯具ユニット8bは、レンズ2bがフレーム1bで固定されている。ロービームのときに第2灯具ユニット8bを常時点灯させ、ハイビームのときにも第2灯具ユニット8bを常時点灯させることにより、図11(c)に示すような拡散用配光パターンWPが形成される。よって、集光用配光パターンSP、上方配光パターンUP2及び拡散用配光パターンWPが合成されることで、ハイビームが形成される。
【0027】
(作用効果)
第1灯具ユニット8aには集光用配光パターンSPを形成する機能を分担させ、第2灯具ユニット8bには拡散用配光パターンWPを形成する機能を分担させることにより、集光用と拡散用とに分けることができる。したがって、車両用灯具のデザイン性を向上させることができる。
【0028】
以上、本開示を適用した車両用灯具を実施形態に基づいて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0029】
また、例えば、左側通行を想定しているため、第2半導体型光源32が車両用灯具の前方側から見て発光部3の発光面の中心Oよりも右側に配置されている構成について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、右側通行を想定している場合、第2半導体型光源32が発光部3の発光面の中心Oよりも左側に配置されている構成であってもよい。
【0030】
また、例えば、左側通行を想定しているため、面S1が傾斜カットオフライン形成領域として機能する構成について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、右側通行を想定している場合、面S3が傾斜カットオフライン形成領域として機能する構成であってもよい。
【0031】
図12は、本開示を適応した実施形態1に係る発光部3の正面視の他の例を表す図である。図3に示した発光部3は、第1半導体型光源31及び第2半導体型光源32のそれぞれが封止樹脂部材で封止されたパッケージから構成されていたが、これに限らず、図12に示すように第1半導体型光源31及び第2半導体型光源32の双方が1つのパッケージから構成されていてもよい。これにより、第1半導体型光源31と第2半導体型光源32とを基板4に搭載する際に両者の位置関係が崩れないようにすることができるからである。
【符号の説明】
【0032】
1,1a,1b フレーム、2,2a,2b レンズ、21 入射面、22 出射面
3 発光部、31 第1半導体型光源、32 第2半導体型光源
4 基板、5 グリース、6 ヒートシンク
8a 第1灯具ユニット、8b 第2灯具ユニット
S1 面(傾斜カットオフライン形成領域)、S2~S8 面
CL 斜めカットオフライン、PI 投影像
O 中心、F 焦点
LP ロービーム用配光パターン
UP,UP2 上方配光パターン
HP ハイビーム用配光パターン
SP 集光用配光パターン
WP 拡散用配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12