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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】車両の外側面構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/10 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
B60J1/10 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020119791
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016831
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 悠司
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 侃史
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲治
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-193667(JP,A)
【文献】実開昭61-190713(JP,U)
【文献】特開2009-248901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0126834(US,A1)
【文献】国際公開第2013/128620(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00 - 1/20
B60J 5/06
B60J 10/00 - 10/90
B60R 13/04 ; 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディとドア間で縦に延びる見切り隙と、窓ガラスの下端縁に取付けられて前記見切り隙の位置まで延び、前記見切り隙の方向に前記窓ガラスの表側の水が伝うように傾斜している縁部材と、前記縁部材の下側でその縁部材に沿って前記見切り隙の位置まで延びる外装部材とを有する車両の外側面構造であって、
前記縁部材には、前記窓ガラスの表側でその縁部材を伝って前記見切り隙の方向に流れる水を阻止する阻止部が形成されており、
前記外装部材には、前記縁部材の阻止部に阻止されて、下方に流れる水を前記外装部材の内側を通して下方に導く導水部が設けられている車両の外側面構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車両の外側面構造であって、
前記阻止部は、前記縁部材の表面に水の伝う方向に対して交差して形成された凸部、あるいは凹部である車両の外側面構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両の外側面構造であって、
前記外装部材の導水部は、前記水をその外装部材の内側に導く切欠部を備えている車両の外側面構造。
【請求項4】
請求項3に記載された車両の外側面構造であって、
前記外装部材の内側には、その外装部材を前記車両ボディに固定するブラケットが設けられており、
前記ブラケットは、前記切欠部から前記外装部材の内側に導かれた水をその外装部材の内壁面に沿って下方に導く前記導水部を構成している車両の外側面構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された車両の外側面構造であって、
前記外装部材は、前記ドアの前後スライドをガイドするセンターガイドレールを覆うカバー部材である車両の外側面構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディとドア間で縦に延びる見切り隙と、窓ガラスの下端縁に取付けられて前記見切り隙の位置まで延びる縁部材と、前記縁部材の下側でその縁部材に沿って前記見切り隙の位置まで延びる外装部材とを有する車両の外側面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外側面構造に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車両では、図11に示すように、車両ボディ100の側面にスライドドア開口部102が形成されており、そのスライドドア開口部102の後側にクォータガラス104が設けられている。クォータガラス104は、略逆台形状のガラスであり、そのガラスの下端縁が後側の急傾斜部104kと前側の緩傾斜部104fとから構成されている。そして、クォータガラス104の内側周縁が車両ボディ100の窓開口部(図番省略)の周縁にシール材(図示省略)を介して固着されている。スライドドア開口部102は、スライドドア103により開閉可能に構成されている。そして、閉状態のスライドドア103と車両ボディ100、及びクォータガラス104間には、縦方向に延びる見切り隙105が形成される。
【0003】
上記構成のクォータガラス104では、そのクォータガラス104の急傾斜部104kの内側に位置するシール材の下側を伝って雨水等が流下することがある。このため、クォータガラス104の内側の急傾斜部104kと緩傾斜部104fとの境界位置で前記シール材の下側には、前記シール材に密着した状態でスポンジ107が設けられている。これにより、クォータガラス104の急傾斜部104kのシール材の下側を伝って流下する雨水等が前記スポンジ107に当たって、下方に落下するようになる。この結果、前記雨水がクォータガラス104の前側の緩傾斜部104fのシール材を伝って見切り隙105に流れ込むことがなくなる。これにより、凍結等でスライドドア103が開動作不良となるトラブルを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5904265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、図11に示すように、クォータガラス104(下端縁)の急傾斜部104kの内側に位置するシール材の下側を伝って雨水等が流下することを前提にした技術である。即ち、下端縁に急傾斜部104k等が存在する形状のクォータガラス104に特有の技術である。このため、クォータガラスの下端縁がほぼ直線状で、シール材の下側を雨水等が伝わない構成のクォータガラスについては上記技術を適用できない。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、窓ガラスの形状如何に係わらず前記窓ガラスの下端部等に沿って流れる水が車両ボディとドア間の見切り隙に入り込まないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、車両ボディとドア間で縦に延びる見切り隙と、窓ガラスの下端縁に取付けられて前記見切り隙の位置まで延び、前記見切り隙の方向に前記窓ガラスの表側の水が伝うように傾斜している縁部材と、前記縁部材の下側でその縁部材に沿って前記見切り隙の位置まで延びる外装部材とを有する車両の外側面構造であって、前記縁部材には、前記窓ガラスの表側でその縁部材を伝って前記見切り隙の方向に流れる水を阻止する阻止部が形成されており、前記外装部材には、前記縁部材の阻止部に阻止されて、下方に流れる水を前記外装部材の内側を通して下方に導く導水部が設けられている。
【0008】
本発明によると、窓ガラスの下端縁に取付けられて車両ボディとドア間の見切り隙の位置まで延びる縁部材には、窓ガラスの表側で見切り隙の方向に伝う水を阻止する阻止部が形成されている。このため、縁部材を伝って流れる水は阻止部の働きと重力とにより下方に導かれる。これにより、縁部材を伝って流れる水が前記見切り隙に入り込み難くなる。即ち、窓ガラスの下端縁の形状如何に係わらず縁部材を伝って流れる水が前記見切り隙に入り込まないようになる。また、縁部材の下側で前記見切り隙の位置まで延びる外装部材には、縁部材の阻止部の位置から下方に流れる水を前記外装部材の内側を通して下方に導く導水部が設けられている。このため、縁部材の阻止部の位置から下方に流れる水が外装部材を伝って前記見切り隙の方向に流れることがない。このように、車両ボディとドア間の見切り隙に水が入り込み難くなるため、凍結によりドアが開かなくなる不具合を防止できる。
【0009】
請求項2に係る発明によると、阻止部は、縁部材の表面に水の伝う方向に対して交差して形成された凸部、あるいは凹部である。
【0010】
請求項3に係る発明によると、外装部材の導水部は、水をその外装部材の内側に導く切欠部を備えている。
【0011】
請求項4に係る発明によると、外装部材の内側には、その外装部材を車両ボディに固定するブラケットが設けられており、前記ブラケットは、切欠部から外装部材の内側に導かれた水をその外装部材の内壁面に沿って下方に導く導水部を構成している。即ち、外装部材を車両ボディに固定するブラケットを導水部として利用できるため、専用の導水部を設ける必要がなくなり、コスト低減を図ることができる。
【0012】
請求項5に係る発明によると、外装部材は、ドアの前後スライドをガイドするセンターガイドレールを覆うカバー部材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、窓ガラスの形状如何に係わらず窓ガラスの下端部等に沿って流れる水が車両ボディとドア間の見切り隙に入り込まないようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1に係る外側面構造を備える車両のスライドドア閉時の模式斜視図である。
図2】前記車両のスライドドア開時の模式斜視図である。
図3】本発明の実施形態1に係る車両の外側面構造を表す全体側面図である。
図4図3のIV-IV矢視縦断面図である。
図5図3のV-V矢視縦断面図である。
図6図3のVI- VI矢視縦断面図である。
図7図3のVII矢視拡大斜視図である。
図8図7のVIII-VIII矢視縦断面図である。
図9図8のIX-IX矢視平断面図である。
図10図7図8のX-X矢視平断面図である。
図11】従来の車両の外側面構造を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
以下、図1図10に基づいて本発明の実施形態1に係る車両の外側面構造について説明する。本実施形態に係る車両の外側面構造は、車両のクォータガラスの下端縁を伝って流れる雨水等が車両ボディとスライドドア間の見切り隙に入り込まないようにするための構造である。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、本実施形態に係る外側面構造を備える車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0016】
<車両ボディ10の概要について>
車両ボディ10の側面には、図2に示すように、前部座席(図示省略)に対応するフロントドア開口部11と、中央座席R1、及び後部座席R2に対応するリヤドア開口部12が形成されている。そして、フロントドア開口部11がドアヒンジ(図示省略)を中心に回動可能なフロントドア15により開閉可能に構成されている。また、リヤドア開口部12が、図1図2に示すように、スライドドア20により開閉可能に構成されている。
【0017】
車両ボディ10には、図1図2に示すように、スライドドア20をスライド方向にガイドするアッパーガイドレール21とロアガイドレール22とセンターガイドレール23(図8等参照)とが車両前後方向に延びるように設けられている。アッパーガイドレール21とロアガイドレール22とは、リヤドア開口部12の上下に設けられており、センターガイドレール23は、図1に示すように、リヤドア開口部12の後側で車両ボディ10のサイドアウタパネル19の高さ方向中央位置に設けられている。
【0018】
アッパーガイドレール21には、図1図2に示すように、スライドドア20の前端上部に設けられた上部ローラーユニット26がアッパーガイドレール21に沿って転動可能な状態で連結されている。ロアガイドレール22には、スライドドア20の前端下部に設けられた下部ローラーユニット27がロアガイドレール22に沿って転動可能な状態で連結されている。同様に、センターガイドレール23には、図1に示すように、スライドドア20の後端中央部に設けられた中央部ローラーユニット28がセンターガイドレール23に沿って転動可能な状態で連結されている。これにより、スライドドア20は各ガイドレール21,22,23に沿ってスライドが可能になる。また、スライドドア20が閉じられた状態で、図3に示すように、前記スライドドア20と車両ボディ10のサイドアウタパネル19間には縦方向に延びる見切り隙Sが形成されるようになる。
【0019】
車両ボディ10のリヤドア開口部12の後側に位置するサイドアウタパネル19には、上記したように、高さ方向中央位置にセンターガイドレール23が設けられている。そして、前記センターガイドレール23の上側が、図1図3に示すように、サイドアウタパネル19に取付けられたセンターレールカバー30によって覆われている。センターレールカバー30は、図3に示すように、車両ボディ10とスライドドア20間の見切り隙Sの位置から車両ボディ10の後部位置まで後方に延びている。そして、センターレールカバー30の後側にバックランプユニット17が設けられている。また、センターレールカバー30とバックランプユニット17との上側で、ルーフサイドパネル18の下側に位置するサイドアウタパネル19には、長方形状の窓開口部19wが形成されている。そして、サイドアウタパネル19の窓開口部19wが長方形状のクォータガラス40によって塞がれている。クォータガラス40は、図1図3に示すように、スライドドア20の窓部20wと連続するように車両ボディ10の後部位置から前記見切り隙Sの位置まで設けられている。
【0020】
<車両の外側構造を構成するクォータガラス40について>
クォータガラス40は、車両ボディ10の窓開口部19wを塞いだ状態で窓開口部19wの周縁のパネル(サイドアウタパネル19等)に固定されるガラスである。クォータガラス40は、図3図6に示すように、透明なガラス本体部41と、そのガラス本体部41の周縁に固定された樹脂製のベルトモール43と、ガラス本体部41の裏側四隅に設けられた固定クリップ44とを備えている。ガラス本体部41の上辺部は、図3に示すように、後側が低くなるように緩やかに傾斜しており、ガラス本体部41の下辺部は、前側が低くなるように緩やかに傾斜している。ベルトモール43は、角形枠状に形成されており、図3図6に示すように、ガラス本体部41の外周縁に連続した状態で固定されている。
【0021】
ベルトモール43は、図4図6に示すように、ガラス本体部41の裏面と窓開口部19wの周縁のパネル19f,18f間の寸法を一定に保持するとともに、クォータガラス40の装飾用の部材である。ベルトモール43の上辺部43uと前後の縦辺部43f,43bとは、図5図6に示すように、断面略L字形に形成されてガラス本体部41の裏面と外周面とを覆っている。また、ベルトモール43の下辺部430は、図4に示すように、断面略U字形に形成されてガラス本体部41の裏面と外周面と表面とを覆っている。そして、ガラス本体部41の表側を覆うベルトモール43の下辺部430の表側露出部432は、上面が断面略円弧形に成形されている。
【0022】
上記したように、ガラス本体部41の下辺部は前側(車両前側)が低くなるように緩やかに傾斜しているため、ガラス本体部41の表側を覆うベルトモール43の下辺部430も車両前側が低くなるように傾斜している。このため、ガラス本体部41の表側を流下する融雪時の水等はベルトモール43の下辺部430の表側露出部432を伝って車両前側に流れるようになる。ベルトモール43の下辺部430の表側露出部432には、図3、及び図7に示すように、前記見切り隙Sの近傍位置に表側露出部432を伝って車両前側に流れる水を遮って下方に導くための凸部435が形成されている。凸部435は、図7に示すように、稜線が前後方向に対して直交するように延びる断面三角形の山形に形成されている。
【0023】
クォータガラス40(ガラス本体部41)は、図4図5に示すように、裏面四隅の固定クリップ44が窓開口部19wの周縁のパネル19f,18fの四隅に形成されたクリップ孔(図番省略)に挿入されることで、前記窓開口部19wに対して位置決めされる。そして、各固定クリップ44が各クリップ孔に挿入され、ガラス本体部41の裏面とパネル19f,18fとがゴム系接着剤46により接着されることで、クォータガラス40が窓開口部19wの周縁のパネル19f,18fに固定される。ここで、ゴム系接着剤46は、図3の点線で示すように、ベルトモール43の内側、かつクリップ孔の外側で窓開口部19wの全体を囲むように連続して設けられている。
【0024】
即ち、ガラス本体部41の下辺部を固定するゴム系接着剤46の下辺部は、前記ガラス本体部41の下辺部に合わせて前側が低くなるように傾斜している。また、ガラス本体部41の上辺部を固定するゴム系接着剤46の上辺部は、ガラス本体部41の上辺部に合わせて後側が低くなるように傾斜している。クォータガラス40の上辺部では、雨水等は、図5に示すように、ガラス本体部41の裏面とゴム系接着剤46の上面とパネル18fに囲まれた溝状の空間内を流れるようになる。このため、クォータガラス40の上辺部では、後側が低くなるように傾斜しているゴム系接着剤46の働きで雨水等は後方に流れるようになる。また、ガラス本体部41の上辺部では、前記溝状の空間は、図6に示すように、前記見切り隙Sの近傍位置でベルトモール43、及びゴム系接着剤46により塞がれている。このため、雨水等が前記見切り隙Sに入り込むことはない。
【0025】
<車両の外側構造を構成するセンターレールカバー30について>
センターレールカバー30は、図8に示すように、センターガイドレール23を上方から覆う外装部材であり、そのセンターガイドレール23と係合しているスライドドア20の中央部ローラーユニット28(図8では省略)と干渉しないように構成されている。センターレールカバー30は、センターガイドレール23を上方から覆うレールカバー本体部31と、レールカバー本体部31を車両ボディ10のサイドアウタパネル19に取付けるブラケット33とから構成されている。レールカバー本体部31は、図3に示すように、センターガイドレール23とほぼ等しい長さ寸法で形成された帯板状の装飾部材である。レールカバー本体部31は、クォータガラス40のベルトモール43(下辺部430)の下側でスライドドア20と車両ボディ10間の見切り隙Sとバックランプユニット17間に設けられている。また、レールカバー本体部31の下側には、レールカバー本体部31とサイドアウタパネル19の棚部19x間にスライドドア20の中央部ローラーユニット28が通される通路部23zがセンターガイドレール23に沿って形成されている。
【0026】
レールカバー本体部31は、図8に示すように、断面略コ字形に形成されている。即ち、レールカバー本体部31の上端位置には、裏側に凸となるような水平フランジ部31uが形成されており、下端位置には裏側に凸となるような傾斜フランジ部31dが形成されている。そして、レールカバー本体部31の水平フランジ部31uには、図7に示すように、クォータガラス40のベルトモール43(下辺部430)における凸部435の真下位置に角形の切欠部31cが形成されている。また、クォータガラス40のベルトモール43の下辺部430には、図8図9に示すように、隙間を介した状態でレールカバー本体部31の水平フランジ部31uの切欠部31cに挿入される下側突部433が形成されている。
【0027】
レールカバー本体部31は、車両前後方向に設けられた複数のブラケット33によって車両ボディ10のサイドアウタパネル19に取付けられている。ここで、前部のブラケット33は、図7に示すように、レールカバー本体部31(水平フランジ部31u)の切欠部31cの真下に配置されている。そして、前部のブラケット33(以下、ブラケット33という)は、レールカバー本体部31を車両ボディ10に取付ける機能の他、レールカバー本体部31(水平フランジ部31u)の切欠部31cを通過して落下する雨水を下方にガイドする働きを有している。
【0028】
ブラケット33は、図10の平断面図に示すように、幅方向両側(前後両側)で縦方向に延びるように設けられた一対のフランジ部33fと、両フランジ部33f間で縦方向に延びるように設けられた台形状の溝部33mとから構成されている。そして、ブラケット33の両フランジ部33fの表側が、例えば、両面テープ状の接着剤によりレールカバー本体部31の内壁面に固着される。これにより、図7図8に示すように、レールカバー本体部31の内壁面とブラケット33間には水を導く流路が形成されるようになる。また、ブラケット33の上部には、レールカバー本体部31(水平フランジ部31u)の切欠部31cから落下する水を溝部33mに導く傾斜ガイド部33kが設けられている。また、ブラケット33の裏側には、図8に示すように、固定クリップ33cが設けられており、その固定クリップ33cが車両ボディ10のサイドアウタパネル19のクリップ孔(図番省略)に挿入されることで、ブラケット33がサイドアウタパネル19に固定される。即ち、レールカバー本体部31がブラケット33を介して車両ボディ10のサイドアウタパネル19に取付けられる。
【0029】
<本実施形態に係る車両の外側構造の働きについて>
上記したようにクォータガラス40は、ベルトモール43の下辺部430が車両前側で低くなるように緩やかに傾斜している。このため、例えば、融雪によりクォータガラス40の表面を流下する水は、図3に示すように、ベルトモール43の下辺部430の表側露出部432を伝って車両前側に流れる。ここで、ベルトモール43(下辺部430)の表側露出部432には、図3等に示すように、車両ボディ10とスライドドア20間の見切り隙Sの近傍位置に凸部435が形成されている。このため、ベルトモール43の表側露出部432を伝って車両前側に流れる水は、前記見切り隙Sの前側で凸部435に遮られ、重力により下方に導かれる。
【0030】
そして、ベルトモール43の表側露出部432の凸部435により下方に導かれた水は、通常、表側露出部432、及びセンターレールカバー30の表面を流れて下方に落下する。また、ベルトモール43の表側露出部432とセンターレールカバー30との隙間に入り込んだ水は、図7図8の矢印に示すように、センターレールカバー30の水平フランジ部31uの切欠部31cからレールカバー本体部31の内側に入り込む。そして、レールカバー本体部31の内側に入り込んだ水は、ブラケット33の傾斜ガイド部33kから溝部33mに導かれる。そして、前記水は溝部33mを流れることでレールカバー本体部31の内壁面とブラケット33間を通過し、レールカバー本体部31の下側に導かれて通路部23zから下方に落下する。これにより、クォータガラス40のベルトモール43(下辺部430)の表側露出部432を伝って車両前側に流れる水と、ベルトモール43の表側露出部432とセンターレールカバー30との隙間に入り込んだ水とが車両ボディ10とスライドドア20間の見切り隙Sに流れ込み難くなる。
【0031】
また、クォータガラス40の上辺部では、ゴム系接着剤46の上辺部が後側で低くなるように傾斜している。このため、ルーフサイドパネル18の表面の融雪により生じた水はゴム系接着剤46の上辺部の上を後方に流れるようになる。これにより、前記水が車両ボディ10とスライドドア20間の見切り隙Sに流れ込むことがなくなる。
【0032】
<本実施形態において使用した用語と本発明に係る用語との対応>
本実施形態のクォータガラス40のガラス本体部41が本発明の窓ガラスに相当し、ベルトモール43の下辺部430が本発明の縁部材に相当する。また、ベルトモール43の下辺部430(表側露出部432)の凸部435が本発明の阻止部に相当する。また、センターレールカバー30が本発明の外装部材、及びカバー部材に相当し、レールカバー本体部31の切欠部31c、及びブラケット33の傾斜ガイド部33k、溝部33mが本発明の導水部に相当する。また、スライドドア20が本発明のドアに相当する。
【0033】
<本実施形態に係る車両の外側面構造の長所について>
本実施形態に係る車両の外側面構造によると、クォータガラス40(窓ガラス)の下端縁に沿って車両ボディ10とスライドドア20間の見切り隙Sまで設けられたベルトモール43の下辺部430(縁部材)には、クォータガラス40の表側で前方向に伝う水を阻止する凸部435(阻止部)が形成されている。このため、ベルトモール43の下辺部430を伝って流れる水は凸部435の働きと重力とにより下方に導かれる。これにより、ベルトモール43の下辺部430を伝って流れる水が前記見切り隙Sに入り込むことがなくなる。即ち、クォータガラス40の下端縁の形状如何に係わらずベルトモール43の下辺部430を伝って流れる水が前記見切り隙Sに入り込まない。また、ベルトモール43の下辺部430の下側で前記見切り隙Sの位置まで延びるセンターレールカバー30(外装部材)には、ベルトモール43の下辺部430の凸部435の位置から下方に流れる水をセンターレールカバー30の内側に導き、さらに下方に導く切欠部31c、及びブラケット33の傾斜ガイド部33k、溝部33m(導水部)が設けられている。このため、ベルトモール43の下辺部430の凸部435の位置から下方に流れる水がセンターレールカバー30に沿って前記見切り隙Sの方向に流れることがない。このように、車両ボディ10とスライドドア20間の見切り隙Sに水が入り込み難くなるため、凍結によりスライドドア20が開かなくなる不具合を防止できる。
【0034】
また、センターレールカバー30のレールカバー本体部31を車両ボディ10に固定するブラケット33を水の導水部として利用できるため、専用の導水部を設ける必要がなくなり、コスト低減を図ることができる。
【0035】
[変更例]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、クォータガラス40のベルトモール43の下辺部430に稜線が前後方向に対して直交するように延びる断面三角形の凸部435を形成する例を示した。しかし、前記凸部435の代わりに前後方向に対して直交するように延びる断面三角溝状の凹部を設けることも可能である。また、本実施形態では、センターレールカバー30(レールカバー本体部31)を車両ボディ10に固定するブラケット33に傾斜ガイド部33k、溝部33mからなる導水部を設ける例を示した。しかし、前記ブラケット33とは別に、例えば、レールカバー本体部31の裏側に傾斜ガイド部33k、溝部33mからなる導水部をレールカバー本体部31と一体で設ける構成でも可能である。また、本実施形態では、窓ガラスの一例としてクォータガラス40を例示したが、窓ガラスの下に車両前後方向に延びる外装部材を備えるスライドドア等に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10・・・・車両ボディ
20・・・・スライドドア(ドア)
30・・・・センターレールカバー(外装部材)
31・・・・レールカバー本体部(外装部材(カバー部材))
31c・・・切欠部(導水部)
33・・・・ブラケット
33k・・・傾斜ガイド部(導水部)
33m・・・溝部(導水部)
40・・・・クォータガラス(窓ガラス)
41・・・・ガラス本体部(窓ガラス)
43・・・・ベルトモール(縁部材)
430・・・下辺部(縁部材)
432・・・表側露出部(縁部材)
435・・・凸部(阻止部)
S・・・・・見切り隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11