(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】エアバッグ装置の取付機構
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20230627BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20230627BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230627BHJP
F16F 15/073 20060101ALI20230627BHJP
F16F 1/18 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R21/203
F16F15/02 C
F16F15/073
F16F1/18 Z
(21)【出願番号】P 2020153718
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】笹木 健治
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 健人
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197185(JP,A)
【文献】特開2020-019379(JP,A)
【文献】特開2015-145173(JP,A)
【文献】特開2019-182360(JP,A)
【文献】特開2015-083396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
B60R 21/203
F16F 15/02
F16F 15/073
F16F 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物におけるステアリングホイールの芯金の後方に配置されたエアバッグ装置を前記芯金に取付けるエアバッグ装置の取付機構であり、
前記芯金に挿通され、かつ締結部材により前記芯金に対し締結されるホルダと、
前記エアバッグ装置に取付けられ、かつ前記エアバッグ装置よりも前方へ延びて前記ホルダに挿通される支持部材と、
前記エアバッグ装置及び前記ホルダの間に配置されて前記エアバッグ装置を後方へ付勢する付勢部材と、
前記支持部材の前記ホルダに対する挿通部分に、前後方向への動きを規制された状態で取付けられる機能部材と
を備え、前記機能部材は、前記支持部材及び前記ホルダの間の間隙よりも薄く形成されたばね部を、前記間隙に有しており、前記機能部材は、前記ばね部が前記エアバッグ装置の振動に伴い前記支持部材の径方向へ弾性変形することで前記振動を抑制するものであるエアバッグ装置の取付機構。
【請求項2】
前記機能部材は、前記前後方向における前記支持部材の一部を取り囲む基部を備え、
前記ばね部は、前記支持部材のうち、前記基部により取り囲まれていない箇所から径方向における外方へ離間した状態で前後方向へ延びる弾性本体部と、前記弾性本体部の前記前後方向における一方の端部を前記基部に連結する連結部とを備えている請求項1に記載のエアバッグ装置の取付機構。
【請求項3】
前記ばね部は、前記支持部材の周りの3箇所以上の複数箇所において等角度毎に配置されている請求項2に記載のエアバッグ装置の取付機構。
【請求項4】
前記機能部材は、隣り合う前記ばね部の間に装着部を有しており、
前記装着部は、前記支持部材に接触した状態で前後方向へ延び、かつ同方向における一方の端部において前記基部に連結されている請求項3に記載のエアバッグ装置の取付機構。
【請求項5】
前記支持部材は、前記前後方向に互いに離間した箇所においてそれぞれ円柱状に形成された2つの一般部と、両一般部の間において、両一般部よりも小径の円柱状に形成された係止部と、前記係止部の両一般部との境界部分に形成された2つの段差部とを備えており、
前記基部は、前記前後方向における前記係止部の一部を取り囲んでおり、
前記装着部は、前記係止部のうち、前記基部により取り囲まれていない箇所に接触しており、
前記弾性本体部は、前記係止部のうち、前記基部により取り囲まれていない箇所から前記径方向における外方へ離間している請求項4に記載のエアバッグ装置の取付機構。
【請求項6】
前記締結部材、前記支持部材及び前記機能部材は、それぞれ導電性を有する材料により形成され、
前記ホルダは、絶縁性を有する材料により形成され、
前記支持部材は前記ホルダに対し前後方向へスライド可能に挿通され、
前記締結部材は、前記乗物に設けられたホーン装置の作動及び停止を切替えるホーンスイッチ機構における固定接点部として機能し、
前記機能部材は、前記固定接点部とともに前記ホーンスイッチ機構を構成する可動接点部を備え、前記機能部材は、前記エアバッグ装置の非押圧操作時には、前記可動接点部を前記締結部材から後方へ離間させることにより前記ホーンスイッチ機構をオフさせて前記ホーン装置を停止させ、前記エアバッグ装置の押圧操作に伴い前記可動接点部を前記締結部材に接触させることにより前記ホーンスイッチ機構をオンさせて前記ホーン装置を作動させる請求項1~5のいずれか1項に記載のエアバッグ装置の取付機構。
【請求項7】
乗物におけるステアリングホイールの芯金の後方に配置されたエアバッグ装置を前記芯金に取付けるエアバッグ装置の取付機構であり、
絶縁性を有する材料により形成されるとともに、前記芯金に挿通され、かつ導電性を有する締結部材により前記芯金に対し締結されるホルダと、
前記エアバッグ装置に取付けられ、かつ前記エアバッグ装置よりも前方へ延びて前記ホルダに対し前後方向へスライド可能に挿通される支持部材と、
前記エアバッグ装置及び前記ホルダの間に配置され、かつ前記エアバッグ装置を後方へ付勢する付勢部材と、
導電性を有する材料により形成され、かつ前記支持部材の前記ホルダに対する挿通部分に、前後方向への動きを規制された状態で取付けられる機能部材と
を備え、前記締結部材は、前記乗物に設けられたホーン装置の作動及び停止を切替えるホーンスイッチ機構における固定接点部として機能し、
前記機能部材は、前記締結部材とともに前記ホーンスイッチ機構を構成する可動接点部を備え、前記機能部材は、前記エアバッグ装置の非押圧操作時には、前記可動接点部を前記締結部材から後方へ離間させることにより前記ホーンスイッチ機構をオフさせて前記ホーン装置を停止させ、前記エアバッグ装置の押圧操作に伴い前記可動接点部を前記締結部材に接触させることにより前記ホーンスイッチ機構をオンさせて前記ホーン装置を作動させるエアバッグ装置の取付機構。
【請求項8】
前記芯金は、導電性を有する材料により形成され、かつ前記乗物のボディにアースされており、
前記支持部材は、導電性を有する材料により形成され、
前記ホーン装置は、前記エアバッグ装置に対し電気的に接続され、
前記締結部材は、前記芯金に対し接触した状態で取付けられている請求項7に記載のエアバッグ装置の取付機構。
【請求項9】
前記機能部材は、前記前後方向における前記支持部材の一部を取り囲む基部を備え、
前記可動接点部は、前記基部から前記支持部材の径方向における外方へ延びている請求項7又は8に記載のエアバッグ装置の取付機構。
【請求項10】
前記可動接点部は、前記支持部材の周方向における複数箇所に形成されている請求項9に記載のエアバッグ装置の取付機構。
【請求項11】
前記締結部材は、前記芯金よりも前方に保持され、
前記締結部材は、前記支持部材の径方向に弾性変形し得る弾性部を有しており、
前記ホルダの前端部は、前記芯金よりも前方に位置しており、
前記ホルダの前端部には、前記弾性部が係止される被係止部が形成されており、
前記弾性部及び前記被係止部により、前記ホルダの前記芯金に対する挿通に伴い前記弾性部が前記被係止部に係止されるスナップフィット構造が構成されている請求項1~10のいずれか1項に記載のエアバッグ装置の取付機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールの芯金に対しエアバッグ装置を取付けるエアバッグ装置の取付機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の乗物におけるステアリングホイールの一形態として、ホーン装置を作動させるためのホーンスイッチ機構が設けられるとともに、乗物に前方から衝撃が加わった場合に、その衝撃から運転者を保護するためのエアバッグ装置が設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記ステアリングホイールでは、
図14に示すように、エアバッグ装置104が押圧操作されないときには、バッグホルダ105に挿通された支持部材111の後端部の固定接点部112から可動接点部117が後方へ離間する。支持部材111は、車両のボディ(グランドGND)にアースされた芯金102に対し、締結部材103を介して電気的に接続されている。可動接点部117及び固定接点部112が導通を遮断(ホーンスイッチ機構:オフ)され、ホーン装置106が作動しない。このときには、エアバッグ装置104がダイナミックダンパのダンパマスとして機能する。スライダ113とダンパホルダ118との間の弾性部材119が、ダイナミックダンパのばねとして機能する。そのため、ステアリングホイール101が振動すると、その振動の周波数と同一又は近い共振周波数で弾性部材119が弾性変形しながら、エアバッグ装置104を伴って振動し、ステアリングホイール101の振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ステアリングホイール101の振動が抑制される。
【0004】
これに対し、上記
図14の状態からエアバッグ装置104が押圧操作されると、そのエアバッグ装置104に加えられた力が、キャップ部材116を介して可動接点部117及びスライダ113に伝達される。キャップ部材116によってスライダ113が押圧される。支持部材111の前端部のばね受け114とスライダ113との間に配置されたばね115に抗して、そのスライダ113が前方へスライドさせられる。また、キャップ部材116と一緒に可動接点部117が前方へ移動し、固定接点部112に接触して導通(ホーンスイッチ機構:オン)されると、ホーン装置106が作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の取付機構110では、ホーンスイッチ機構の一部を構成する固定接点部112及び可動接点部117が、取付機構110のうち、エアバッグ装置104との取付け部分に配置されている。また、振動抑制のための弾性部材119が、取付機構110のうち、エアバッグ装置104との取付け部分に配置されている。そのため、上記取付け部分が支持部材111の径方向に大きくなってしまう。そして、ステアリングホイール101において上記取付け部分の周囲の部材、例えば、ステアリングホイール101の最後部に位置していて意匠面を有するパッド部の形状、大きさ等が、上記取付け部分から影響を受ける。その結果、パッド部が支持部材111の径方向に大きくなったり、パッド部の形状の自由度が小さくなったりする懸念がある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、エアバッグ装置との取付け部分を、支持部材の径方向に小さくすることのできるエアバッグ装置の取付機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するエアバッグ装置の取付機構は、乗物におけるステアリングホイールの芯金の後方に配置されたエアバッグ装置を前記芯金に取付けるエアバッグ装置の取付機構であり、前記芯金に挿通され、かつ締結部材により前記芯金に対し締結されるホルダと、前記エアバッグ装置に取付けられ、かつ前記エアバッグ装置よりも前方へ延びて前記ホルダに挿通される支持部材と、前記エアバッグ装置及び前記ホルダの間に配置されて前記エアバッグ装置を後方へ付勢する付勢部材と、前記支持部材の前記ホルダに対する挿通部分に、前後方向への動きを規制された状態で取付けられる機能部材とを備え、前記機能部材は、前記支持部材及び前記ホルダの間の間隙よりも薄く形成されたばね部を、前記間隙に有しており、前記機能部材は、前記ばね部が前記エアバッグ装置の振動に伴い前記支持部材の径方向へ弾性変形することで前記振動を抑制するものである。
【0009】
上記の構成を有する取付機構によれば、付勢部材によって後方へ付勢されたエアバッグ装置は、芯金に締結されたホルダに対し、支持部材を介して支持される。エアバッグ装置が芯金に対し、支持部材の径方向に振動すると、その振動は、エアバッグ装置に取付けられた支持部材と、その支持部材に取付けられた機能部材とに伝達される。この伝達により、支持部材が機能部材を伴って、上記径方向へ振動する。ばね部は、支持部材及びホルダの間の間隙よりも薄く形成されていて、支持部材の径方向に弾性変形可能である。そのため、支持部材は、ばね部を弾性変形させることで上記径同方向へ振動可能である。そして、ばね部が支持部材に対し径方向へ弾性変形すると、支持部材ひいてはエアバッグ装置の上記振動が抑制される。
【0010】
ここで、振動抑制機能を発揮する機能部材は、上述したように支持部材のホルダに対する挿通部分に位置していて、上記取付機構のうち、芯金との取付け部分に位置する。そのため、取付機構のうち振動抑制機能を有する部分が、エアバッグ装置との取付け部分に位置する場合に比べ、同エアバッグ装置との取付け部分を支持部材の径方向に小さくすることが可能となる。
【0011】
上記エアバッグ装置の取付機構において、前記機能部材は、前記前後方向における前記支持部材の一部を取り囲む基部を備え、前記ばね部は、前記支持部材のうち、前記基部により取り囲まれていない箇所から径方向における外方へ離間した状態で前後方向へ延びる弾性本体部と、前記弾性本体部の前記前後方向における一方の端部を前記基部に連結する連結部とを備えていることが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、機能部材のうち、前後方向における支持部材の一部を取り囲む基部は、同機能部材を支持部材に取付ける箇所の少なくとも一部として機能する。ばね部の連結部は、前後方向へ延びる弾性本体部を上記基部に連結する。ばね部は、弾性本体部の前後方向のうち、連結部によって基部に連結された側の端部を固定端とし、かつ連結されていない側の端部を自由端とする、いわゆる片持ち梁の支持構造を採る。そのため、ばね部は、他の支持構造を採る場合に比べ、弾性変形しやすい。従って、ばね部の弾性変形により、エアバッグ装置の振動が効率よく抑制される。
【0013】
上記エアバッグ装置の取付機構において、前記ばね部は、前記支持部材の周りの3箇所以上の複数箇所において等角度毎に配置されていることが好ましい。
ばね部が上記の条件を満たすように配置されることで、エアバッグ装置が芯金に対し、支持部材の径方向に振動した場合、いずれかのばね部が弾性変形する。そのため、振動の方向に拘らず、また、支持部材の周方向におけるばね部の位置に拘わらず、振動を抑制することが可能である。
【0014】
上記エアバッグ装置の取付機構において、前記機能部材は、隣り合う前記ばね部の間に装着部を有しており、前記装着部は、前記支持部材に接触した状態で前後方向へ延び、かつ同方向における一方の端部において前記基部に連結されていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、隣り合うばね部の間に配置され、かつ前後方向における一方の端部において上記基部に連結された装着部は、支持部材に接触することで、基部とともに、機能部材を支持部材に取付ける箇所として機能する。このように、機能部材は、支持部材に対し、基部及び装着部といった多くの箇所で取付けられる。そのため、上記機能部材における弾性本体部は、支持部材のうち、基部により取り囲まれていない箇所から径方向における外方へ離間した状態に安定して保持される。
【0016】
上記エアバッグ装置の取付機構において、前記支持部材は、前記前後方向に互いに離間した箇所においてそれぞれ円柱状に形成された2つの一般部と、両一般部の間において、両一般部よりも小径の円柱状に形成された係止部と、前記係止部の両一般部との境界部分に形成された2つの段差部とを備えており、前記基部は、前記前後方向における前記係止部の一部を取り囲んでおり、前記装着部は、前記係止部のうち、前記基部により取り囲まれていない箇所に接触しており、前記弾性本体部は、前記係止部のうち、前記基部により取り囲まれていない箇所から前記径方向における外方へ離間していることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、機能部材の前後方向における両側に段差部が位置する。基部、装着部及び弾性本体部のいずれかが、上記段差部に接触することで、機能部材が支持部材に対し前後方向へ動くことが規制される。
【0018】
上記エアバッグ装置の取付機構において、前記締結部材、前記支持部材及び前記機能部材は、それぞれ導電性を有する材料により形成され、前記ホルダは、絶縁性を有する材料により形成され、前記支持部材は前記ホルダに対し前後方向へスライド可能に挿通され、前記締結部材は、前記乗物に設けられたホーン装置の作動及び停止を切替えるホーンスイッチ機構における固定接点部として機能し、前記機能部材は、前記固定接点部とともに前記ホーンスイッチ機構を構成する可動接点部を備え、前記機能部材は、前記エアバッグ装置の非押圧操作時には、前記可動接点部を前記締結部材から後方へ離間させることにより前記ホーンスイッチ機構をオフさせて前記ホーン装置を停止させ、前記エアバッグ装置の押圧操作に伴い前記可動接点部を前記締結部材に接触させることにより前記ホーンスイッチ機構をオンさせて前記ホーン装置を作動させることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、エアバッグ装置の非押圧操作時には、機能部材の可動接点部が、固定接点部として機能する締結部材から後方へ離間する。可動接点部及び締結部材が導通を遮断された状態(ホーンスイッチ機構:オフ)となり、ホーン装置が作動しない。これに対し、エアバッグ装置が付勢部材の付勢力に抗して押圧操作されると、支持部材が機能部材を伴って前方へ移動する。可動接点部が締結部材に接触すると、可動接点部及び締結部材が導通された状態(ホーンスイッチ機構:オン)となり、ホーン装置が作動する。
【0020】
この場合にも、可動接点部が機能部材の一部として設けられているため、ホーンスイッチ機構が、上記取付機構のうちエアバッグ装置との取付け部分に位置する場合に比べ、同取付け部分を、支持部材の径方向に小さくする効果が得られる。
【0021】
上記課題を解決するエアバッグ装置の取付機構は、乗物におけるステアリングホイールの芯金の後方に配置されたエアバッグ装置を前記芯金に取付けるエアバッグ装置の取付機構であり、絶縁性を有する材料により形成されるとともに、前記芯金に挿通され、かつ導電性を有する締結部材により前記芯金に対し締結されるホルダと、前記エアバッグ装置に取付けられ、かつ前記エアバッグ装置よりも前方へ延びて前記ホルダに対し前後方向へスライド可能に挿通される支持部材と、前記エアバッグ装置及び前記ホルダの間に配置され、かつ前記エアバッグ装置を後方へ付勢する付勢部材と、導電性を有する材料により形成され、かつ前記支持部材の前記ホルダに対する挿通部分に、前後方向への動きを規制された状態で取付けられる機能部材とを備え、前記締結部材は、前記乗物に設けられたホーン装置の作動及び停止を切替えるホーンスイッチ機構における固定接点部として機能し、前記機能部材は、前記締結部材とともに前記ホーンスイッチ機構を構成する可動接点部を備え、前記機能部材は、前記エアバッグ装置の非押圧操作時には、前記可動接点部を前記締結部材から後方へ離間させることにより前記ホーンスイッチ機構をオフさせて前記ホーン装置を停止させ、前記エアバッグ装置の押圧操作に伴い前記可動接点部を前記締結部材に接触させることにより前記ホーンスイッチ機構をオンさせて前記ホーン装置を作動させる。
【0022】
上記の構成を有する取付機構によれば、付勢部材によって後方へ付勢されたエアバッグ装置は、芯金に締結されたホルダに対し、支持部材を介して支持された状態となる。
エアバッグ装置の非押圧操作時には、機能部材の可動接点部が、固定接点部として機能する締結部材から後方へ離間する。可動接点部及び締結部材が導通を遮断された状態(ホーンスイッチ機構:オフ)となり、ホーン装置が作動しない。これに対し、エアバッグ装置が付勢部材の付勢力に抗して押圧操作されると、支持部材が機能部材を伴って前方へ移動する。可動接点部が締結部材に接触すると、可動接点部及び締結部材が導通された状態(ホーンスイッチ機構:オン)となり、ホーン装置が作動する。
【0023】
ここで、締結部材は芯金に設けられている。また、上記機能部材は、支持部材のホルダに対する挿通部分に取付けられていて、上記取付機構のうち、芯金との取付け部分に位置する。そのため、ホーンスイッチ機構が、上記取付機構のうちエアバッグ装置との取付け部分に位置する場合に比べ、同エアバッグ装置との取付け部分を、支持部材の径方向に小さくすることが可能となる。
【0024】
上記エアバッグ装置の取付機構において、前記芯金は、導電性を有する材料により形成され、かつ前記乗物のボディにアースされており、前記支持部材は、導電性を有する材料により形成され、前記ホーン装置は、前記エアバッグ装置に対し電気的に接続され、前記締結部材は、前記芯金に対し接触した状態で取付けられていることが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、エアバッグ装置が付勢部材の付勢力に抗して押圧操作されると、支持部材が機能部材を伴って前方へ移動する。可動接点部が締結部材に接触して、ホーンスイッチ機構がオンされると、ホーン装置が、エアバッグ装置、支持部材、機能部材及び締結部材を介して芯金に対し導通された状態となり、作動する。
【0026】
上記エアバッグ装置の取付機構において、前記機能部材は、前記前後方向における前記支持部材の一部を取り囲む基部を備え、前記可動接点部は、前記基部から前記支持部材の径方向における外方へ延びていることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、機能部材は、基部が前後方向における支持部材の一部を取り囲むことによって、その支持部材に取付けられる。可動接点部は、上記基部から支持部材の径方向における外方へ延びているため、基部を介して支持部材に対し、安定した状態で取付けられる。そして、支持部材が前後方向にスライドすると、上記のように基部において支持部材に取付けられた機能部材の可動接点部が前後方向へ移動し、締結部材に対し接触又は離間する。
【0028】
上記エアバッグ装置の取付機構において、前記可動接点部は、前記支持部材の周方向における複数箇所に形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、支持部材を取り囲む基部であって、支持部材の周方向における複数箇所から可動接点部がそれぞれ同支持部材の径方向における外方へ延びているため、締結部材との接触の対象となる可動接点部が多くなる。そのため、エアバッグ装置の押圧操作により支持部材が機能部材を伴って前方へスライドした場合、可動接点部が1つである場合に比べ、同可動接点部が締結部材に接触しやすくなる。
【0029】
上記エアバッグ装置の取付機構において、前記締結部材は、前記芯金よりも前方に保持され、前記締結部材は、前記支持部材の径方向に弾性変形し得る弾性部を有しており、前記ホルダの前端部は、前記芯金よりも前方に位置しており、前記ホルダの前端部には、前記弾性部が係止される被係止部が形成されており、前記弾性部及び前記被係止部により、前記ホルダの前記芯金に対する挿通に伴い前記弾性部が前記被係止部に係止されるスナップフィット構造が構成されていることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、エアバッグ装置を芯金に取付ける際には、エアバッグ装置に取付けられた取付機構におけるホルダが、弾性部を有する締結部材が保持された芯金に挿通される。この挿通の途中で、ホルダの前端部に設けられた被係止部が芯金を通過し、弾性部に対向する箇所まで移動すると、弾性部が被係止部に係止される。このようにして、ホルダを芯金に挿通するといった簡単な作業を行なうだけで、ホルダが芯金に対し、スナップフィット構造にて締結される。
【発明の効果】
【0031】
上記エアバッグ装置の取付機構によれば、エアバッグ装置との取付け部分を、支持部材の径方向に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】エアバッグ装置の取付機構を具体化した一実施形態を示す図であり、車両内におけるステアリングホイール及びその周辺箇所を示す概略側面図。
【
図2】一実施形態における取付機構が適用されてエアバッグ装置が取付けられたステアリングホイールの正面図。
【
図3】一実施形態において、エアバッグ装置の非押圧操作時における取付機構の状態を示す部分側断面図。
【
図4】一実施形態において、エアバッグ装置の押圧操作時における取付機構の状態を示す部分側断面図。
【
図5】一実施形態におけるエアバッグ装置を取付機構とともに示す分解斜視図。
【
図6】一実施形態におけるエアバッグ装置の取付機構の分解斜視図。
【
図7】一実施形態において、機能部材が取付けられた支持部材の斜視図。
【
図8】一実施形態において、機能部材が取付けられ支持部材を
図7とは異なる方向から見た斜視図。
【
図9】一実施形態において、機能部材が取付けられた支持部材の側面図。
【
図12】一実施形態における機能部材を
図11とは異なる方向から見た斜視図。
【
図14】従来のエアバッグ装置の取付機構を示す部分側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、車両用エアバッグ装置の取付機構に具体化した一実施形態について、
図1~
図13を参照して説明する。
図1に示すように、乗物としての車両10内の運転席11の前方には、同車両10を操舵する際に運転者Dによって操作される操舵装置12が設けられている。操舵装置12は、ステアリングコラム13と、ステアリングコラム13の後側に回転操作可能に配置されたステアリングホイール14とを備えている。ステアリングコラム13内には、ステアリングホイール14の回転をステアリングギヤボックス(図示略)に伝達するステアリングシャフト15が配置されている。ステアリングシャフト15は、車両10の前後方向における後側ほど高くなるように傾斜した状態で配置されている。
【0034】
本実施形態では、ステアリングホイール14の各部について説明する際には、ステアリングシャフト15の軸線L1を基準とする。この軸線L1に沿う方向をステアリングホイール14の「前後方向」といい、軸線L1に直交する面に沿う方向のうち、ステアリングホイール14の起立する方向をステアリングホイール14の「上下方向」というものとする。従って、ステアリングホイール14の前後方向及び上下方向は、車両10の前後方向(水平方向)及び上下方向(鉛直方向)に対し若干傾いていることとなる。
【0035】
なお、
図3、
図4、
図7~
図9、
図11及び
図12では、便宜上、ステアリングホイール14の前後方向が水平方向に合致し、同ステアリングホイール14の上下方向が鉛直方向に合致した状態で図示されている。この点は、従来技術を示す
図14についても同様である。
【0036】
図2に示すように、ステアリングホイール14は、リング部(ハンドル部、リム部と呼ばれることもある)16、パッド部17及びスポーク部24を備えている。リング部16は、運転者Dによって把持されて回転操作される部分であり、上記軸線L1を中心とした円環状又はそれに近い環状をなしている。パッド部17は、リング部16によって囲まれた空間に配置されている。スポーク部24は、リング部16及びパッド部17の間であって軸線L1の周りの1箇所又は複数箇所(
図2では3箇所)に設けられている。ステアリングホイール14は、エアバッグ装置(エアバッグモジュール)40を備えている。上記パッド部17は、エアバッグ装置40の一部を構成している。
【0037】
図3に示すように、ステアリングホイール14の骨格部分は、芯金25によって構成されている。芯金25は、導電性を有する金属材料によって形成されている。芯金25は、車両10のボディ(グランドGND)にアース(接地)されている。芯金25は、図示はしないが、上記ステアリングシャフト15の後端部に対し、一体回転可能に取付けられている。
【0038】
芯金25において、ステアリングシャフト15の周囲の複数箇所(本実施形態では3箇所、
図3では1箇所のみ図示)には、それぞれ貫通孔27を有する保持部26が設けられている。各貫通孔27は、保持部26を前後方向に貫通している。各貫通孔27の前端部を除く大部分は、後側ほど内径が拡大するテーパ状をなしている。
【0039】
各保持部26の前方近傍には締結部材28が配置されている。締結部材28は、導電性を有するばね鋼等の金属からなる線材を所定形状に屈曲させることによって形成されている。締結部材28の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。複数の場合、締結部材28は保持部26毎に設けられてもよい。
【0040】
締結部材28の一部は、貫通孔27の前方近傍に位置している。
図3では、図示されていないが、締結部材28は、貫通孔27とは異なる箇所で芯金25の前面に接触している。締結部材28は、保持部26に保持されることにより、芯金25に取付けられている。締結部材28は、貫通孔27の径方向に弾性変形し得る弾性部28aを有している。
【0041】
車両10には、警告音を発するホーン装置30が設けられている。締結部材28は、ホーン装置30の作動及び停止を切替えるホーンスイッチ機構における固定接点部を構成している。
【0042】
エアバッグ装置40は、上記芯金25の後方に配置されている。エアバッグ装置40は、上記貫通孔27と同数の取付機構60により芯金25に取付けられている。複数の取付機構60は、互いに同一の構成を有している。
【0043】
各取付機構60は、上記締結部材28とともにホーンスイッチ機構を構成する部材を有している。また、各取付機構60は、エアバッグ装置40の振動を抑制する機能を有している。さらに、各取付機構60は、エアバッグ装置40を芯金25に支持する機能も有している。
【0044】
次に、エアバッグ装置40及び取付機構60のそれぞれについて説明する。
<エアバッグ装置40>
図3及び
図5に示すように、エアバッグ装置40は、上記パッド部17に加え、バッグホルダ41、インフレータ45、エアバッグ51及びリングリテーナ52を備えている。
【0045】
パッド部17は、意匠面を有する外皮部18と、前面が開口された筒状の収容壁部19とを備えている。外皮部18と収容壁部19とによって囲まれる空間は、主としてエアバッグ51を収容するためのバッグ収容空間21を構成している。収容壁部19の前端部の複数箇所には係止爪22が形成されている。
【0046】
バッグホルダ41は、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。バッグホルダ41には、開口部42が形成されている。バッグホルダ41において、上記係止爪22の前方となる箇所には、係止孔43が形成されている。そして、各係止爪22が、対応する係止孔43に挿通されて係止されることにより、収容壁部19にバッグホルダ41が取付けられている。
【0047】
バッグホルダ41には、インフレータ45及びエアバッグ51が取付けられている。より詳しくは、インフレータ45は、略円柱状の本体部46を備えている。本体部46の外周にはフランジ部47が形成されている。本体部46の内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。本体部46のうち、フランジ部47よりも後側部分の複数箇所にはガス噴出孔48が形成されている。
【0048】
そして、本体部46のフランジ部47よりも後側部分がバッグ収容空間21側に突出するように、インフレータ45が前側からバッグホルダ41の開口部42に挿通されている。
【0049】
エアバッグ51は、強度が高く、かつ可撓性を有する織布等の布によって形成されている。エアバッグ51は、自身の前部に開口部(
図5では図示略)を有している。エアバッグ51のうち、少なくとも開口部の周縁部を除く大部分は、折り畳まれてコンパクトにされている。エアバッグ51における開口部の周縁部は、バッグホルダ41における開口部42の周縁部の後側に配置されている。
【0050】
エアバッグ51を上記開口部の周縁部においてバッグホルダ41に取付けるために、リングリテーナ52が用いられている。リングリテーナ52は、バッグホルダ41の開口部42と同等の開口部53を有している。リングリテーナ52は、エアバッグ51の開口部の後側に位置するように、エアバッグ51の内部に配置されている。リングリテーナ52は、開口部53の周りの複数箇所にボルト54を備えている。
【0051】
これらのボルト54は、エアバッグ51、バッグホルダ41及びインフレータ45のフランジ部47に対し、後側から挿通されている。さらに、挿通された状態の各ボルト54に前側からナット55が締付けられている。これらの締付けにより、エアバッグ51がリングリテーナ52を介してバッグホルダ41に取付けられるとともに、インフレータ45がフランジ部47においてバッグホルダ41に取付けられている。
【0052】
バッグホルダ41において、開口部42の周りの複数箇所(本実施形態では3箇所)には、取付機構60を取付けるための取付孔44が等角度毎に形成されている。各取付孔44は、芯金25の上記貫通孔27の後方となる箇所に位置している(
図3参照)。
【0053】
<取付機構60>
図3及び
図6に示すように、各取付機構60は、ホルダ61、支持部材71、付勢部材79及び機能部材81を備えている。次に、取付機構60の各構成部材について説明する。
【0054】
<ホルダ61>
ホルダ61の骨格部分は、ホルダ本体62によって構成されている。ホルダ本体62の外周面は、前側ほど外径が縮小するテーパ状をなしている。ホルダ本体62は、円形の断面を有し、かつ前後方向に貫通する挿通孔63を自身の中心部分に有している。
【0055】
ホルダ本体62の後面における挿通孔63の周りからは、環状突部64が後方へ突出している。ホルダ本体62の前面における挿通孔63の周りの複数箇所(3箇所)からは、支持板部65が前方へ突出している。各支持板部65は、挿通孔63の径方向における外方へ膨らむように湾曲している。各支持板部65の前側には、同支持板部65に対応して、上記径方向における外方へ膨らむように湾曲する円弧板状の係止板部66が形成されている。各係止板部66は、自身の内周部において支持板部65の前端部に接続されている。
【0056】
各ホルダ61は、環状の被係止部67を自身の前端部に有している。被係止部67の一部は、各支持板部65の周りであって、ホルダ本体62と係止板部66とによって挟まれた空間によって構成されている。
【0057】
上記の構成を有するホルダ61の全体は、電気絶縁性を有する材料、本実施形態では樹脂材料により形成されている。各ホルダ61は、芯金25の対応する貫通孔27に挿通されている。より詳しくは、ホルダ本体62の前端部は、貫通孔27に嵌合されている。ホルダ本体62の前面は、貫通孔27内に位置している。支持板部65の後部は貫通孔27内に位置している。係止板部66の全体と、支持板部65の前部とは、貫通孔27(芯金25)よりも前方に位置している。
【0058】
締結部材28の上記弾性部28aは、被係止部67内に入り込んでいる。ホルダ61は、上記締結部材28により芯金25に締結されている。
<支持部材71>
図3、及び
図7~
図10に示すように、支持部材71は、軸部72及び頭部77を備えており、全体が導電性材料、例えば、導電性を有する金属材料によって形成されている。
【0059】
軸部72は、円形の断面を有し(
図10参照)、かつ前後方向に延びている。軸部72は、小径部73、2つの一般部74、係止部75、及び2つの段差部76を備えている。小径部73は、軸部72の後端部に位置している。小径部73は、一般部74よりも小径に形成されており、バッグホルダ41の対応する取付孔44に対し前方から挿通されている。小径部73のうち、取付孔44から後方へ突出した部分は押し潰されて、変形前の小径部73よりも大径状に形成されている。このようにして、軸部72の後端部がかしめられることにより、支持部材71が取付孔44の周縁部においてバッグホルダ41に導通された状態で取付けられている。
【0060】
なお、軸部72の後端部は、上述したかしめとは異なる方法によってバッグホルダ41に取付けられてもよい。例えば、軸部72の後端部の外周面に環状溝が形成され、この環状溝に取付孔44の周縁部が係合されてもよい。
【0061】
軸部72の後端部を除く大部分は、バッグホルダ41(エアバッグ装置40)よりも前方へ延びている。軸部72は、ホルダ本体62の挿通孔63に対し前後方向へスライド可能に挿通されている。
【0062】
2つの一般部74は、軸部72において、前後方向に互いに離間した箇所に形成されている。後側の一般部74は、小径部73に隣接している。両一般部74は、互いに同一の外径を有している。係止部75は、両一般部74の間に形成されている。係止部75は、両一般部74よりも小径に形成されている。各段差部76は、一般部74と係止部75との間に形成されていて、円環状をなしている。
【0063】
頭部77は、前側の一般部74に隣接している。頭部77は、ホルダ61の係止板部66よりも前側に位置している。頭部77の外周面の後端部を除く大部分は、前側ほど外径が縮小するテーパ状をなしている。頭部77の少なくとも後端部は、一般部74よりも大径状をなしている。
【0064】
<付勢部材79>
図3及び
図6に示すように、付勢部材79は、エアバッグ装置40をホルダ61、ひいては芯金25に対し、後方へ付勢するためのものである。本実施形態では、この付勢部材79として、コイルばねが用いられている。付勢部材79は、バッグホルダ41とホルダ61との間であって、支持部材71の周りにおいて、圧縮された状態で配置されている。付勢部材79の前端部は、ホルダ61の環状突部64の周りに配置されて、ホルダ本体62の後面に接触している。
【0065】
<機能部材81>
図11及び
図12に示すように、機能部材81は、全体が導電性材料、本実施形態では、導電性を有する金属製の板材を曲げ加工することにより形成されている。この板材は、
図3に示すように、ホルダ61における挿通孔63の内壁面と、支持部材71における係止部75との間隙よりも小さな厚みを有している。
【0066】
機能部材81は、支持部材71のホルダ61に対する挿通部分に、前後方向への動きを規制された状態で取付けられており、支持部材71と一体でホルダ61に対し前後方向へスライド可能である。
【0067】
図3、
図11及び
図12に示すように、機能部材81は、基部82、複数のばね部83、複数の装着部86及び複数の可動接点部87を備えている。基部82は、係止部75の前後方向における一部、本実施形態では前部を取り囲んでいる。基部82は、6角形の環状に近い形状をなしている(
図13参照)。基部82の周方向における一方の端部は、他方の端部に接近又は接触している。基部82は、係止部75に対し接触又は接近している。
【0068】
図10に示すように、ばね部83は、本実施形態では3つ設けられている。これらのばね部83は、係止部75の周りに等角度毎に配置されている。各ばね部83は、係止部75及びホルダ61の間の間隙よりも薄く形成されている(
図3参照)。
図11~
図13に示すように、各ばね部83は、弾性本体部84及び連結部85を備えている。ばね部83毎の弾性本体部84は、係止部75から径方向における外方へ離間した状態で前後方向へ延びる長方形の板状をなしている。弾性本体部84の外周面は、ホルダ61の内壁面に接触している(
図3参照)。
【0069】
ばね部83毎の連結部85は板状をなし、弾性本体部84の前後方向における一方の端部、本実施形態では前端部を基部82に連結している。機能部材81は、エアバッグ装置40が振動した場合に、連結部85を支点としてばね部83を支持部材71の径方向へ弾性変形させることで振動を抑制する機能を有している。
【0070】
図3、
図10及び
図13に示すように、装着部86は、本実施形態ではばね部83と同数である3つ設けられている。これらの装着部86は板状をなし、係止部75の周りであって、隣り合うばね部83間に配置されている。各装着部86は、機能部材81の中心軸線CL1を挟んで、ばね部83の反対側に位置している。表現を変えると、装着部86とばね部83とは、中心軸線CL1を挟んで対向している。各装着部86は、係止部75に接触した状態で前後方向へ延びている。各装着部86は、自身の前端部において基部82に連結されている。
【0071】
可動接点部87は、本実施形態では3つ設けられている。これらの可動接点部87は、係止部75の周りに等角度毎に配置されている。各可動接点部87は、本実施形態では、係止部75の周方向のうち、装着部86の前方となる箇所に配置されている。各可動接点部87は、平板状をなし、かつ基部82から係止部75の径方向における外方へ延びている。
【0072】
ここで、上述したように、機能部材81が支持部材71に対し、前後方向への動きを規制された状態で取付けられていることから、各可動接点部87は支持部材71と一緒に前後方向へ移動可能である。
【0073】
図3に示すように、各可動接点部87は、上記ホーンスイッチ機構の一部を構成している。可動接点部87は、エアバッグ装置40の非押圧操作時には、締結部材28から後方へ離間することにより、ホーンスイッチ機構をオフさせる。
図4に示すように、可動接点部87は、エアバッグ装置40の押圧操作に伴い締結部材28に接触することにより、ホーンスイッチ機構をオンさせる。
【0074】
このようにして、複数の単体部品、すなわち、ホルダ61、支持部材71、付勢部材79及び機能部材81がユニット化されて、アセンブリとされた取付機構60が構成されている。そのため、エアバッグ装置40の芯金25に対する取付けに際し、ユニット化された取付機構60を1つの集合体として扱うことが可能である。
【0075】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について、状況毎に分けて説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
<エアバッグ装置40の取付け作業について>
この作業は、各取付機構60がバッグホルダ41に取付けられた状態で行なわれる。この状態では、付勢部材79により、バッグホルダ41及びホルダ61に対し、両者を互いに前後方向へ遠ざけようとする力が働いている。バッグホルダ41に加わった力は、同バッグホルダ41に取付けられた支持部材71に伝達される。支持部材71の頭部77は、ホルダ61の各係止板部66に対し、前側から接触している。
【0076】
上記状態の各取付機構60が、芯金25において対応する貫通孔27に対し、後方から挿通される。支持部材71では、頭部77と、前側の一般部74と、係止部75の前端部とがそれぞれ貫通孔27に挿通される。機能部材81では、可動接点部87を含む前部が貫通孔27に挿通される。また、ホルダ61では、支持板部65及び係止板部66と、ホルダ本体62の前部とが貫通孔27に挿通される。
【0077】
上記挿通の途中で、支持部材71の頭部77が締結部材28の弾性部28aに接触する。さらに、弾性部28aの付勢力に抗して取付機構60が前方へ移動されると、弾性部28aが支持部材71の径方向における外方へ弾性変形させられる。そして、ホルダ61の係止板部66が、弾性部28aよりも前方へ移動すると、すなわち、被係止部67が弾性部28aに対向すると、弾性部28aが自身の弾性復元力によって被係止部67に係合する。締結部材28の弾性部28aにおいて、貫通孔27の前方に位置する部分が、芯金25と、係止板部66とによって前後から挟み込まれ、前後方向の動きを規制される。一方、弾性部28aが被係止部67に係合したときには、ホルダ本体62が貫通孔27に嵌合する。ホルダ61は締結部材28と、貫通孔27の内壁面とによって、前後方向の動きを規制される。このようにして、ホルダ61が締結部材28の弾性部28aによって芯金25に係止されることで、各取付機構60の芯金25に対する締結と、エアバッグ装置40の芯金25に対する取付けとが行なわれる。ホルダ61が、貫通孔27への挿通に伴い締結部材28の弾性部28aによって芯金25に係止される上記構造は、スナップフィット構造と呼ばれる。
【0078】
このように、各取付機構60の前部を、対応する貫通孔27に挿通させるといった簡単な作業を行なうだけで、各取付機構60を芯金25に対し、スナップフィット構造によって取付けることができる。
【0079】
<通常時(非衝突時)の作用について>
車両10に対し、前面衝突(前突)等による前方からの衝撃が加わらないとき(通常時)には、エアバッグ装置40では、インフレータ45のガス噴出孔48からガスが噴出されず、エアバッグ51が折り畳まれた状態に維持される。
【0080】
また、機能部材81の前後方向における両側に段差部76が位置する。上記段差部76との接触により、機能部材81が支持部材71に対し前後方向へ動くことが規制される。
<エアバッグ装置40の非押圧操作時の作用について>
図3に示すように、上記通常時において、エアバッグ装置40が押圧操作されない場合には、付勢部材79によって後方へ付勢されたエアバッグ装置40は、芯金25に締結されたホルダ61に対し、支持部材71を介して支持された状態となる。
【0081】
また、機能部材81では、基部82が前後方向における係止部75の一部を取り囲んでいる。可動接点部87は、基部82から支持部材71の径方向における外方へ延びている。そのため、各可動接点部87は、基部82を介して係止部75に対し、安定した状態で取付けられている。
【0082】
機能部材81のいずれの可動接点部87も、締結部材28から後方へ離間する。可動接点部87及び締結部材28が導通を遮断された状態(ホーンスイッチ機構:オフ)となり、ホーン装置30が作動しない。
【0083】
エアバッグ装置40が芯金25に対し、支持部材71の径方向に振動すると、その振動は支持部材71と、その支持部材71に取付けられた機能部材81とに伝達される。この伝達により、支持部材71が、機能部材81を伴って、上記径方向へ振動する。ばね部83は、ホルダ61における挿通孔63の内壁面と、支持部材71における係止部75との間隙よりも薄く形成されていて、支持部材71の径方向に弾性変形可能である。そのため、支持部材71は、ばね部83を弾性変形させることで、上記径方向へ振動可能である。そして、ばね部83が支持部材71に対し上記径方向へ弾性変形すると、支持部材71ひいてはエアバッグ装置40の上記振動が抑制される。
【0084】
特に、本実施形態では、機能部材81のうち、前後方向における係止部75の一部を取り囲む基部82は、同機能部材81を係止部75に取付ける箇所の少なくとも一部として機能する。各ばね部83の連結部85は、前後方向へ延びる弾性本体部84を、基部82に連結する。
【0085】
各ばね部83は、弾性本体部84の前後方向のうち、連結部85によって基部82に連結された側である前端部を固定端とし、かつ連結されていない側である後端部を自由端とする、いわゆる片持ち梁の支持構造を採っている。そのため、各ばね部83は、他の支持構造を採る場合に比べ、弾性変形しやすい。従って、各ばね部83の弾性変形により、エアバッグ装置40の振動を効率よく抑制することができる。
【0086】
また、各ばね部83が、支持部材71の周りの3箇所において等角度毎に配置されていることで、エアバッグ装置40が芯金25に対し、支持部材71の径方向に振動した場合、いずれかのばね部83が弾性変形する。そのため、振動の方向に拘らず、また、支持部材71の周方向におけるばね部83の位置に拘わらず、振動を抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態では、各ばね部83における弾性本体部84が、ホルダ61の内壁面に接触した状態で、機能部材81が支持部材71のホルダ61に対する挿通部分に取付けられている。そのため、弾性本体部84が上記内壁面から離れている場合よりも、ばね部83を早く弾性変形させて振動を早期に抑制することができる。また、弾性本体部84がホルダ61の内壁面から離れている場合には、弾性本体部84が上記内壁面に接触する際に音が発生するおそれがある。この点、弾性本体部84がホルダ61の内壁面に接触している本実施形態では、こうした音の発生の問題は起こらない。
【0088】
隣り合うばね部83の間に配置され、かつ前端部において基部82に連結された複数の装着部86は、それぞれ係止部75に接触することで、基部82とともに、機能部材81を支持部材71に取付ける箇所として機能する。このように、機能部材81は、係止部75に対し、基部82及び複数の装着部86といった多くの箇所で取付けられる。そのため、弾性本体部84を、係止部75のうち、基部82により取り囲まれていない箇所から径方向における外方へ離間した状態に安定して保持することができる。
【0089】
特に、本実施形態では、複数(3つ)の装着部86が係止部75の周方向における複数箇所(3箇所)において等角度毎に配置されて、係止部75に接触している。そのため、いずれの弾性本体部84も係止部75から離間させた状態に、より安定して保持することができる。
【0090】
<エアバッグ装置40の押圧操作時の作用について>
一方、上記通常時において、ホーン装置30の作動のために、エアバッグ装置40が、付勢部材79の付勢力に抗して、
図4において矢印で示す方向へ押圧操作されると、操作された箇所に拘わらず、少なくとも1つの取付機構60における支持部材71が前方へ移動する。これに伴い、基部82において係止部75に取付けられた機能部材81の可動接点部87が前方へ移動する。可動接点部87が締結部材28に接触すると、車両10のボディにアースされた芯金25と、ホーン装置30が接続されたバッグホルダ41とが、支持部材71、機能部材81及び締結部材28を介して導通された状態となる。ホーンスイッチ機構がオンされ、ホーン装置30が作動する。
【0091】
特に、本実施形態では可動接点部87が、係止部75を取り囲む基部82であって、係止部75の周方向における複数箇所から径方向における外方へ延びているため、締結部材28との接触の対象となる可動接点部87が多くなる。いずれかの可動接点部87を締結部材28に対し接触させることができる。そのため、エアバッグ装置40の押圧操作に応じて支持部材71が機能部材81を伴って前方へスライドした場合、可動接点部87が1つである場合に比べ、可動接点部87が締結部材28に接触しやすくなる。
【0092】
<エアバッグ装置40の作動時の作用について>
車両の走行時に前突等により車両10に対し前方から衝撃が加わると、慣性により運転者Dが前傾しようとする。一方、エアバッグ装置40では、上記衝撃に応じインフレータ45が作動させられ、ガス噴出孔48から膨張用ガスが噴出される。この膨張用ガスがエアバッグ51に供給されることで、同エアバッグ51が折り状態を解消(展開)しながら膨張する。このエアバッグ51により、パッド部17の外皮部18に加わる押圧力が増大していくと、同外皮部18が破断される。破断により生じた開口を通じてエアバッグ51が後方へ向けて引き続き展開及び膨張する。前突の衝撃により前傾しようとする運転者Dの前方に、展開及び膨張したエアバッグ51が介在する。このエアバッグ51が、運転者Dの前傾を拘束し、運転者Dを衝撃から保護する。
【0093】
<取付機構60におけるエアバッグ装置40との取付け部分の小型化について>
特許文献1では、
図14に示すように、ホーンスイッチ機構を構成する部分(固定接点部112、可動接点部117)と、振動抑制機能を有する部分(弾性部材119)とが、取付機構110のうち、エアバッグ装置104との取付け部分に配置されている。そのため、パッド部が、上記取付け部分から影響を受け、支持部材111の径方向に大きくなったり、同パッド部の形状の自由度が小さくなったりする懸念がある。
【0094】
この点、本実施形態では、
図3に示すように、振動抑制機能を発揮する部分であるばね部83は、上述したように支持部材71とホルダ61との間に位置していて、取付機構60のうち、芯金25との取付け部分に位置する。
【0095】
また、ホーンスイッチ機構の一部を構成する機能部材81は、上記取付機構60のうち、芯金25との取付け部分に位置する。また、ホーンスイッチ機構の他の一部を構成する締結部材28も、芯金25の前方に位置する。
【0096】
そのため、本実施形態によると、特許文献1に比べ、取付機構60のうちエアバッグ装置40との取付け部分を、支持部材71の径方向に小さくすることができる。
従って、パッド部17の形状、大きさ等が、取付機構60のエアバッグ装置40との取付け部分から影響を受けにくくなる。その結果、上記パッド部17が支持部材71の径方向に大きくなったり、同パッド部17の形状の自由度が小さくなったりするのを抑制することができる。
【0097】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・機能部材81が振動抑制機能を有するとともに、ホーンスイッチ機構の一部を構成している。そのため、振動抑制機能を有する部材と、ホーンスイッチ機構を構成する部材とが別々に設けられた場合に比べて、取付機構60の部品点数を少なくして、同取付機構60の小型化を図ることができる。
【0098】
・特許文献1では、
図14に示すように、支持部材111、スライダ113、ばね受け114、ばね115、キャップ部材116、可動接点部117、ダンパホルダ118及び弾性部材119といった8つの部品によって取付機構110を構成している。
【0099】
これに対し、本実施形態では、
図6に示すように、ホルダ61、支持部材71、機能部材81及び付勢部材79といった4つの部品によって取付機構60を構成している。しかも、いずれの取付機構60も、特許文献1における取付機構110と同様、振動抑制機能と、ホーン装置30のスイッチ機能とを有している。従って、本実施形態によると、機能を維持しつつ、より少ない部品で、取付機構60を構成することができる。
【0100】
なお、取付機構60の部品点数を少なくできたのは、1つには、振動を抑制することと、ホーンスイッチ機構の一部を構成することとを共通の部材(機能部材81)によって実現したことによる。また、締結部材28における弾性部28aを、固定接点部として機能させたことにもよる。締結部材28とは別に固定接点部を設けなくてもすむからである。
【0101】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0102】
<ホルダ61について>
・ホルダ61における支持板部65及び係止板部66の組合せの数が、上記実施形態の数とは異なる数に変更されてもよい。
【0103】
<付勢部材79について>
・付勢部材79としては、エアバッグ装置40(バッグホルダ41)を芯金25(ホルダ61)に対し後方へ付勢するものであることを条件として、コイルばねとは異なる種類のばねや、ばねとは異なる弾性部材が用いられてもよい。
【0104】
<機能部材81について>
・弾性本体部84は、その長さ方向における中間部や後部において基部82に接続されてもよい。
【0105】
・機能部材81におけるばね部83の数が4以上に変更されてもよい。これらのばね部83は、支持部材71の周りに等角度毎に配置される。なお、上記ばね部83の数の変更に伴い、装着部86の数もばね部83と同数に変更される。
【0106】
・弾性本体部84の外周面がホルダ61の内壁面から僅かに離れていてもよい。
・ばね部83は、支持部材71及びホルダ61の間の間隙よりも薄いことを条件に、板状とは異なる形状に形成されてもよい。
【0107】
・可動接点部87は、支持部材71の周方向における装着部86の前方とは異なる箇所、例えば、ばね部83の前方となる箇所に配置されてもよい。
<その他>
・エアバッグ装置40を芯金25に取付けるために、上記実施形態とは異なる数の取付機構60が用いられてもよい。
【0108】
・ホーンスイッチ機構の一部が、機能部材81とは異なる部材又は機構によって構成されてもよい。これらの部材又は機構は、取付機構60の一部として設けられてもよいし、取付機構60とは別に設けられてもよい。
【0109】
・エアバッグ装置40の振動抑制が、機能部材81とは異なる部材又は機構によって行なわれてもよい。これらの部材又は機構は、取付機構60の一部として設けられてもよいし、取付機構60とは別に設けられてもよい。
【0110】
・上記エアバッグ装置の取付機構は、車両以外の乗物、例えば、航空機、船舶等における操舵装置のステアリングホイールにエアバッグ装置を取付ける場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0111】
10…車両(乗物)
14…ステアリングホイール
25…芯金
28…締結部材(固定接点部)
28a…弾性部
30…ホーン装置
40…エアバッグ装置
60…取付機構
61…ホルダ
67…被係止部
71…支持部材
74…一般部
75…係止部
76…段差部
79…付勢部材
81…機能部材
82…基部
83…ばね部
84…弾性本体部
85…連結部
86…装着部
87…可動接点部