IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウシオ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-不活化装置および不活化方法 図1
  • 特許-不活化装置および不活化方法 図2
  • 特許-不活化装置および不活化方法 図3
  • 特許-不活化装置および不活化方法 図4
  • 特許-不活化装置および不活化方法 図5
  • 特許-不活化装置および不活化方法 図6
  • 特許-不活化装置および不活化方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】不活化装置および不活化方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20230627BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L2/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021182519
(22)【出願日】2021-11-09
(62)【分割の表示】P 2021064535の分割
【原出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022087812
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2020199936
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】寺田 庄一
(72)【発明者】
【氏名】佐畠 健一
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-124281(JP,A)
【文献】国際公開第2019/164810(WO,A1)
【文献】特表2018-517488(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131582(WO,A1)
【文献】特開2011-098156(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111905123(CN,A)
【文献】国際公開第2019/186880(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
190nm~235nmの波長帯域に中心波長を有する紫外線を放射する光源部と、
対象空間内に人間が存在するかどうかを検知する検知部と、
前記光源部の点灯状態を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記検知部が人間の存在を検知しない期間に一定時間、紫外線照射を行い、前記一定時間を経過した後に、前記光源部に紫外線照射を停止させ、その後、少なくとも前記検知部が人間の存在を検知するまでの間、可視光が照射される環境下において前記光源部に紫外線照射の停止を継続させる
ことを特徴とする不活化装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記検知部が人間の存在を検知しない期間が前記一定時間を経過して前記光源部に紫外線照射を停止させた後に、前記検知部が人間の存在を検知した場合は、前記紫外線照射を開始させることを特徴とする請求項1に記載の不活化装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記検知部が人間の存在を検知しない期間が前記一定時間を経過して前記光源部に紫外線照射を停止させた後に、前記検知部が人間の存在を検知した場合は、前記紫外線照射の停止を継続するように制御し、前記検知部が人間の存在を検知しなくなると前記紫外線照射を開始させることを特徴とする請求項1に記載の不活化装置。
【請求項4】
190nm~235nmの波長帯域に中心波長を有する紫外線を放射する光源部の点灯状態を制御する不活化方法であって、
対象空間内に人間が存在するかどうかを検知するステップと、
前記人間の存在を検知しない期間に一定時間、紫外線照射を行った後に、前記光源部に紫外線照射を停止させ、その後、少なくとも前記人間の存在を検知するまでの間、可視光が照射される環境下において前記光源部に紫外線照射の停止を継続させるステップと、を含むことを特徴とする不活化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な微生物やウイルスを不活化する不活化装置および不活化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有害な微生物(細菌やカビ等)やウイルスによる感染症の拡大を防ぐため、空間を浮遊する微生物やウイルス、および床面、壁面、物体の表面等の様々な場所に付着している微生物やウイルスを、紫外線を照射して不活化させることが行われている。
例えば特許文献1には、室内上部に取り付けられ、室内の水平方向、斜め下方、および下方に紫外線を照射する室内殺菌装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の室内殺菌装置は、水平照射ユニット、及び、下方照射ユニットを備え、水平方向、斜め下方および下方に紫外線を照射することができる。そして、特許文献1に例示されている254nmの紫外線は、一般的には人体に有害であるとされる。そのため、室内に人が存在する場合は、斜め下方および下方に紫外線を照射することはできない。人が在室時に照射するときは、天井付近に水平に照射するなど、人に紫外線があたらない範囲に限られていた。
【0004】
特許文献2には、紫外線を照射する殺菌灯から便室の室内に向けて紫外線を照射し、室内を殺菌する技術が開示されているが、人の存在を検知すると紫外線の照射を停止することが記載されている。すなわち従来技術において、殺菌を要する領域内に人が進入した場合には、紫外線の照射を停止することが前提となっている。
【0005】
また特許文献3には、人や動物の身体の細胞への危害を実質的に回避しつつ、バクテリアを不活化する技術について開示されている。この特許文献3には、紫外線殺菌照射を用いて食品、空気及び浄水中の微生物を分解でき、典型的にはUVB、又はUVCの紫外線が用いられる点、またこれら紫外線が人間及び他の生物にとって危険である点が記載されている。さらに、波長240nmを超える紫外線はヒトの細胞核中のDNAにダメージを引き起こす点、紫外線は波長によって細胞の貫通力が異なり、短波長ほど放射線の貫通力が小さくなることでヒト細胞に対する有害性がなくなる点、が記載されている。また具体例として、波長200nm~230nmの紫外線を用いて、人や動物の細胞を害することなく微生物やウイルスを選択的に不活化することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-130131号公報
【文献】特開平10-248759号公報
【文献】特表2018-517488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に基づき、人や動物に対する有害性を抑制される紫外線として、240nmよりも短い波長帯域として190nm~235nmの紫外線を用いて、より効率的に微生物およびウイルスを不活化することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る不活化装置の一態様は、190nm~235nmの波長帯域に中心波長を有する紫外線を放射する光源部と、対象空間内に人間が存在するかどうかを検知する検知部と、前記光源部の点灯状態を制御する制御部と、を備え、制御部は、前記検知部が人間の存在を検知しない期間に一定時間、紫外線照射を行い、前記一定時間を経過した後に、前記光源部に紫外線照射を停止させ、その後、少なくとも前記検知部が人間の存在を検知するまでの間、可視光が照射される環境下において前記光源部に紫外線照射の停止を継続させる。
【0009】
ここでの「一定時間」とは、対象空間内に存在する微生物やウイルスが十分に不活化できる程度の時間で設定され、具体的には、選択された点灯動作モードにおいて、不活化率が90%以上、より望ましくは99%以上、更に望ましくは99.9%以上となる程度に紫外線が照射可能な時間で設定される。不活化に必要な紫外線量は、対象とする微生物やウイルスによって異なり、対象とする微生物やウイルスの種類によって適宜変更される。
これにより、検知部が人間の存在を検知しない無人期間において、必要量の紫外線照射を達成した後に消灯することで、不必要な紫外線照射を減らすことができる。特に無人期間においては、人間を介して対象空間内に細菌やウイルスが新たに持ち込まれることがないため、対象空間内における不活化された状態を悪化させることが無い。
【0010】
また紫外線を用いた細菌の不活化を行う場合は、「菌の光回復」を考慮する必要がある。細菌には、紫外線照射によってDNAが損傷された後であっても、波長300nm~500nmの光(可視光域を含む)が照射されることで、DNAの損傷を修復させる作用を起こすものがある。これは、細菌が保有する光回復酵素(例えば、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド))の働きによるもので、この現象は、「菌の光回復」といわれる。
しかし、波長190nm~235nmに中心波長を有する紫外線、例えば波長222nmの紫外線照射によって菌を不活化した場合には、紫外線照射後に可視光が照射されても菌の光回復は行われないことが確認された。この作用は、波長240nmより短い波長帯域の紫外線が、細菌やウイルスが持つ細胞膜や酵素の成分であるタンパク質に効果的に吸収されるためと考えられる。詳述すると、240nmよりも短い波長帯域の紫外光は、人の皮膚表面(例えば角質層)で吸収され、皮膚内部まで浸透し難く、皮膚に対して安全性が高いが、細菌やウイルスはヒト細胞よりも物理的にはるかに小さく、240nmよりも短い波長帯域であっても紫外光が内部まで到達しやすい。そのため、菌やウイルスを構成する細胞、特に、タンパク質成分を含む細胞膜や酵素等に対して効果的に作用し、菌の光回復等の機能を抑制する効果が高められると考えられる。
【0011】
つまり、無人期間内において波長190nm~235nmの紫外線で細菌を不活化させておけば、その後、紫外線の照射を停止したとしても、可視光照射によって細菌の生存量が回復してゆくことが無い。
そのため、一定時間の紫外線照射によって対象空間内の不活化が実行された後は、紫外線の照射を停止させても不活化された状態を維持しやすくなり、不活化装置の消費電力を抑えることができる。また対象空間内に存在する部材(例えば、壁紙、什器等)に対して過剰に紫外線を照射させることが無い。
【0012】
また、前記制御部は、前記検知部が人間の存在を検知しない期間が前記一定時間を経過して前記光源部に紫外線照射を停止させた後に、前記検知部が人間の存在を検知した場合は、前記紫外線照射を開始させてもよい。
人間の存在を検知しない期間に、対象空間内に必要量の紫外線が照射された後であっても、この対象空間内に新たに人間が入り込む場合は、人間を介して新たに微生物やウイルスが持ち込まれる可能性がある。これは不活化された状態を阻害するため、人間の存在を検知したら紫外線照射を行う。これにより、対象空間内の不活化レベルを高く保つことができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記検知部が人間の存在を検知しない期間が前記一定時間を経過して前記光源部に紫外線照射を停止させた後に、前記検知部が人間の存在を検知した場合は、前記紫外線照射の停止を継続するように制御し、前記検知部が人間の存在を検知しなくなると前記紫外線照射を開始させてもよい。
この場合も、人間の存在を検知しない期間に紫外線照射が一定時間行われた後に、対象空間内に新たに人間が入り込む際に、人間を介して新たに微生物やウイルスが持ち込まれる可能性を想定したものであるが、人間への紫外線量が上限値に近い場合においては、人間への直接的な紫外線照射を行わず、再び人間が不在となったタイミングで、対象空間内に残された微生物やウイルスに紫外線を照射することができ、人間への紫外線量の許容限界値を想定したより安全な始動制御が実現できる。
【0014】
また、本発明に係る不活化方法の一態様は、190nm~235nmの波長帯域に中心波長を有する紫外線を放射する光源部の点灯状態を制御する不活化方法であって、対象空間内に人間が存在するかどうかを検知するステップと、前記人間の存在を検知しない期間に一定時間、紫外線照射を行った後に、前記光源部に紫外線照射を停止させ、その後、少なくとも前記人間の存在を検知するまでの間、可視光が照射される環境下において前記光源部に紫外線照射の停止を継続させるステップと、を含む。
【0015】
無人期間内において波長190nm~235nmの紫外線で細菌を不活化させておけば、その後、紫外線の照射を停止したとしても、可視光照射によって細菌の生存量が回復してゆくことが無い。
そのため、一定時間の紫外線照射によって対象空間内の不活化が実行された後は、紫外線の照射を停止させても不活化された状態を維持しやすくなり、不活化装置の消費電力を抑えることができる。また対象空間内に存在する部材(例えば、壁紙、什器等)に対して過剰に紫外線を照射させることが無い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一つの態様によれば、人体への悪影響が抑制された波長範囲の紫外線を用いた微生物および/またはウイルスの不活化を、効果的に、且つ、より適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の不活化装置の外観イメージ図である。
図2】本実施形態の動作例に関する説明図である。
図3】波長254nmの紫外線照射による菌の光回復実験の結果である。
図4】波長222nmの紫外線照射による菌の光回復実験の結果である。
図5】本実施形態の動作例に関する説明図である。
図6】本実施形態の動作例に関する説明図である。
図7】本実施形態の動作例に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における不活化装置100の外観イメージ図である。
不活化装置100は、人や動物が存在する空間内において紫外線照射を行い、当該空間や当該空間内の物体表面に存在する微生物やウイルスを不活化する装置である。
ここで、上記空間は、例えば、オフィス、商業施設、医療施設、駅施設、学校、役所、劇場、ホテル、飲食店等の施設内の空間や、自動車、電車、バス、タクシー、飛行機、船等の乗物内の空間を含む。なお、上記空間は、病室、会議室、トイレ、エレベータ内などの閉鎖された空間であってもよいし、閉鎖されていない空間であってもよい。
【0019】
不活化装置100は、人や動物の細胞への悪影響が少ない波長190~235nmの紫外線(より好ましくは、波長域200nm~230nmの紫外線)を、対象空間に対して照射して、当該対象空間内の物体表面や空間に存在する有害な微生物やウイルスを不活化するものである。ここで、上記物体は、人体、動物、物を含む。また、紫外線を照射する対象空間は、実際に人や動物がいる空間に限定されず、人や動物が出入りする空間であって人や動物がいない空間を含む。
なお、ここでいう「不活化」とは、微生物やウイルスを死滅させる(又は感染力や毒性を失わせる)ことを指すものである。
【0020】
図1に示すように、不活化装置100は、紫外線を生成する光源部と、光源部の点灯を制御する制御部16と、光源部と制御部16を収容する筐体11とを備える。筐体11には、紫外線を放射する光放射面12が形成されている。具体的には、紫外線を放射する光出射窓となる開口部11aが形成されている。この開口部11aには、例えば石英ガラスからなる窓部材が設けられており、窓部材から紫外線を放射する。また、この開口部11aには、不要な波長帯域の光を遮断する光学フィルタ等を設けることもできる。
筐体11内部には、紫外線光源として、エキシマランプ20が収容されている。エキシマランプ20は、例えば中心波長222nmの紫外線を放出するKrClエキシマランプとすることができる。なお、紫外線光源は、KrClエキシマランプに限定されるものではなく、190nm~235nmの波長範囲にある紫外線を放射する光源であればよい。なお、筐体11と紫外線光源(エキシマランプ20)とで光源部を構成している。
【0021】
UV放射線は、波長によって細胞の貫通力が異なり、短波長ほど当該貫通力が小さい。例えば、約200nmといった短波長のUV放射線は、非常に効率良く水を通過するものの、ヒト細胞の外側部分(細胞質)による吸収が大きく、UV放射線に敏感なDNAを含む細胞核に到達するのに十分なエネルギーを有さない場合がある。そのため、上記の短波長のUV放射は、ヒト細胞に対する悪影響が少ない。一方で、波長240nmを超える紫外線は、ヒトの細胞核中のDNAにダメージを与えうる。また、波長190nm未満の紫外線は、オゾンを発生させることが知られている。
そこで、本実施形態では、紫外線光源として、人体への悪影響が少なく、不活化効果が得られる波長域190nm~235nmの紫外線を放射し、それ以外のUVCを実質的に放射しない紫外線光源を用いる。また、さらに安全性の高い波長帯域として、波長域200nm~230nmにピーク波長を有する紫外線光源を用いてもよい。
【0022】
エキシマランプ20は、両端が気密に封止された直管状の放電容器21を備える。放電容器21は、例えば石英ガラスにより構成することができる。また、放電容器21の内部には、発光ガスとして希ガスとハロゲンとが封入されている。本実施形態では、発光ガスとして、塩化クリプトン(KrCl)ガスを用いる。この場合、得られる放射光のピーク波長は222nmである。
なお、発光ガスは上記に限定されない。例えば、発光ガスとして臭化クリプトン(KrBr)ガス等を用いることもできる。KrBrエキシマランプの場合、得られる放射光のピーク波長は207nmである。
また、図1では、不活化装置100が複数(3本)の放電容器21を備えているが、放電容器21の数は特に限定されない。
【0023】
放電容器21の外表面には、一対の電極(第一電極22、第二電極23)が当接するように配置されている。第一電極22および第二電極23は、放電容器21における光取出し面とは反対側の側面(-Z方向の面)に、放電容器21の管軸方向(Y方向)に互いに離間して配置されている。
そして、放電容器21は、これら2つの電極22、22に接触しながら跨るように配置されている。具体的には、2つの電極22、23には凹溝が形成されており、放電容器21は、電極22、23の凹溝に嵌め込まれている。
【0024】
この一対の電極のうち、一方の電極(例えば第一電極22)が高圧側電極であり、他方の電極(例えば第二電極23)が低圧側電極(接地電極)である。第一電極22および第二電極23の間に高周波電圧を印加することで、ランプが点灯される。
【0025】
エキシマランプ20の光取出し面は、光出射窓に対向して配置される。そのため、エキシマランプ20から放射された光は、光出射窓を介して不活化装置100の光放射面12から出射される。
ここで、電極22、23は、エキシマランプ21から放射される光に対して反射性を有する金属部材により構成されていてもよい。この場合、放電容器21から-Z方向に放射された光を反射して+Z方向に進行させることができる。
【0026】
光出射窓となる開口部11aには、上述したように光学フィルタを設けることができる。光学フィルタは、例えば、人体への悪影響の少ない波長域190nm~235nmの光(より好ましくは、波長域200nm~230nmの光)を透過し、波長236nm~280nmのUVC波長帯域をカットする波長選択フィルタとすることができる。具体的には、波長190nm~235nmの波長帯域におけるピーク波長の紫外線照度に対して、波長236nm~280nmの各紫外線照度を1%以下に低減する。波長選択フィルタとしては、例えば、HfO層およびSiO層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いることができる。
【0027】
なお、波長選択フィルタとしては、SiO層およびAl層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いることもできる。このように、光出射窓に光学フィルタを設けることで、エキシマランプ20から人に有害な光が放射されている場合であっても、当該光が筐体11の外に漏洩することをより確実に抑えることができる。
【0028】
また不活化装置100には、対象空間内に人間の存在を検知するための検知部31が設けられている。検知部31は、不活化装置100と一体的に形成されるものであってもよく、外部からの信号を受信することで検知するものであってもよい。一つの実施形態として、人感センサを用いることができる。人感センサは、例えば、人体などから発する熱(赤外線)の変化を検知する焦電型赤外線センサとすることができる。また別の実施形態として、人の利用が想定された対象空間内の占有時間と非占有時間を検知するものであってもよい。
【0029】
また、不活化装置100は、図1に示すように、電源部15と、制御部16と、を備える。
電源部15は、電源からの電力が供給されるインバータ等の電源部材や、電源部材を冷却するためのヒートシンク等の冷却部材を含む。また、制御部16は、光源部を構成するエキシマランプ20の点灯を制御する。
【0030】
図2は、本発明に係る点灯動作の一態様を示した説明図である。
制御部16は、検知部31からの信号に基づき、対象空間内に人間の存在を検知する期間(ここでは、有人期間とも称す)と、対象空間内に人間の存在を検知しない期間(ここでは、無人期間とも称す)とにおいて、光源部から放射される紫外線の平均照度が異なるよう、有人期間においては第一点灯動作を実行し、無人期間においては第二点灯動作を実行するよう制御する。図2に示すように連続的に紫外線を放射する場合、平均照度とは、所定期間内の照度の積算値を、上記所定期間で割った値である。
【0031】
第一点灯動作は、紫外線の平均照度が相対的に低い点灯が実行され、第二点灯動作は、紫外線の平均照度が相対的に高い点灯が実行されるよう、点灯制御される。例えば、第一点灯動作における平均照度は1μW/cm以下に設定され、第二点灯動作における平均照度は、1μW/cmを超える値となるよう、点灯状態が制御されるものとしてもよい。
ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:米国産業衛生専門家会議)やJIS Z 8812(有害紫外放射の測定方法)によれば、人体への1日(8時間)あたりの紫外線照射量は、波長ごとに許容限界値(TLV:Threshold Limit Value)が定められており、許容限界値を超えない程度に所定時間当たりに照射される紫外線の照度と照射量を決定することが求められている。この許容限界値は、今後は改定されてゆく可能性もあるが、例えば、有人期間に実行される第一点灯動作における平均照度は、8時間連続照射しても紫外線照射量が上記許容限界値を超えない値に設定してもよい。
【0032】
本実施形態では、図2に示すように、時刻t1において有人期間から無人期間に切り替わると、第一点灯動作から第二点灯動作へ切り替わり、平均照度が低照度から高照度へ切り替わる。また、その後、時刻t2において無人期間から有人期間に切り替わると、第二点灯動作から第一点灯動作へ切り替わり、平均照度が高照度から低照度へ切り替わる。
したがって、対象空間内に人が存在しない期間においては、紫外線の平均照度がより高い第二点灯動作が実行されることで、より効果的に対象空間内の微生物やウイルスの不活化を行うことができる。また、対象空間内に人間の存在を検知する期間においても、第一点灯動作を実行することで、所定の紫外線を照射し、微生物やウイルスの不活化を行うことができる。
【0033】
また図2に示すとおり、第二点灯動作は、予め設定された一定時間の動作終了後に、動作を停止(消灯)するよう制御されるものであってもよい。つまり、図2に示すように、時刻t3において有人期間から無人期間に切り替わった後、一定時間が経過した時刻t4において紫外線の照射を停止してもよい。
無人期間においては、対象空間内に必要十分な紫外線照射が実行されれば、空間内の不活化が達成される。そのため、人間を介して、新たに微生物やウイルスが入り込むことが想定され難い場合は、点灯動作を停止(消灯)させることで、対象空間内への過剰な紫外線照射を抑えることができる。これにより消費電力を抑えることができる。また光源部の発光動作時間を低減させることができ、不活化装置100の使用寿命を延ばすことができる。
【0034】
また第二点灯動作の停止について、細菌の不活化を想定した場合で詳述する。紫外線を用いた細菌の不活化を行う場合は、「菌の光回復」を考慮する必要がある。細菌には、紫外線照射によってDNAが損傷された後であっても、波長300nm~500nmの光(可視光域を含む)が照射されることで、DNAの損傷を修復させる作用を起こすものがある。これは、細菌が保有する光回復酵素(例えば、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド))の働きによるもので、この現象は、「菌の光回復」といわれる。
【0035】
しかし、波長190nm~235nmに中心波長を有する紫外線、例えば波長222nmの紫外線照射によって菌を不活化した場合には、紫外線照射後に可視光が照射されても菌の光回復は行われないことが確認された。つまり、無人期間内において波長190nm~235nmの紫外線で細菌を不活化させておけば、その後、紫外線の照射を停止したとしても、可視光照射によって細菌の生存量が回復してゆくことが無い。
そのため、一定時間の紫外線照射によって対象空間内の不活化が実行された後は、紫外線の照射を停止させても不活化された状態を維持しやすくなり、不活化装置100の消費電力を抑えることができる。また対象空間内に存在する部材(例えば、壁紙、什器等)に対して過剰に紫外線を照射させることが無い。これは、これまでの殺菌灯として知られている低圧水銀灯(主波長が254nm)では実現し得ない効果である。
【0036】
図3図4には、波長200nm~230nm(主波長が222nm)のKrClエキシマランプと、主波長が254nmの低圧水銀灯とで、細菌の不活化効果を検証した検証結果を示す。
【0037】
図3は、主波長254nmの低圧水銀灯を用いた紫外線照射による菌の光回復実験の結果であり、図4は、波長200nm~230nm(主波長222nm)の紫外線照射による菌の光回復実験の結果である。ここで、不活化対象の細菌は黄色ブドウ球菌とし、波長300nm~500nmの光を含む可視光が照射される環境下において紫外線照射を行い、紫外線照射後の菌の生残率の変化を確認した。なお、黄色ブドウ球菌は光回復酵素を持ち、可視光が照射されることで菌の光回復を生じさせる細菌である。
【0038】
図3および図4において、横軸は経過時間(h)、縦軸は菌のlog生残率である。図3および図4において、実験結果a~dは、紫外線照射量を0mJ/cm、5mJ/cm、10mJ/cm、15mJ/cmとした場合の菌の生残率の変化を示す。なお、ここでは紫外線の照射時間を30分とし、その後は紫外線照射を停止して、菌の生存率の変化を確認したものである。
【0039】
図3に示すように、時間経過とともに菌の生残率は増加している。つまり、可視光が照射される環境下において、波長254nmの紫外線照射を行った後に菌の光回復が行われている。具体的には、可視光の照射によって1~2時間程度で菌の生存数が大幅に回復している。
一方、図4に示すように、波長222nmの紫外線照射を行った場合には、可視光が照射されていても菌の回復が認められない。つまり、菌の光回復が阻害されている。
【0040】
光回復が阻害された菌は、DNAの損傷が残ったままとなるため、増殖することもなく不活化される。波長222nmの紫外線照射は、菌の回復および増殖を有効に低減することができる。したがって、波長222nmの紫外線照射を行う不活化システムは、特に、菌の光回復がしやすい環境、具体的には波長300nm~500nmの光を含む可視光が照射される環境において効果的に作用する。
【0041】
上記のとおり、本発明に係る不活化装置100は、有人期間と無人期間とで点灯動作を変更制御するとともに、無人期間における点灯動作は、対象空間内に十分な紫外線照射が達成させる一定時間が経過した後は消灯させることで、より効率的な不活化を実現することができる。
また、第二点灯動作の時間が継続される時間(一定時間)は、例えば下記のように算定することができる。
【0042】
不活化対象となる微生物やウイルスが、90%以上、より望ましくは、99%以上に不活化できる紫外線量(mJ/cm)をEとし、光放射面12からの離間距離50cmの領域の照度をI50とし、光照射面12から不活化させる対象物(不活化対象)までの距離をhとした場合、下記の算出式(1)に基づいて、十分な不活化に必要とされる照射時間Hを算出してもよい。
必要な照射時間H=E/(0.6×I50×(50/h))・・・(1)
なお、上記(1)式において、I50×(50/h)は、光放射面12から距離hだけ離れた面における紫外線の照度Iである。つまり、照射時間Hは、紫外線照度が、光放射面12から距離hだけ離れた面における紫外線の最大照度に対して60%となる領域(60%照度エリア)において上記不活化対象を不活化可能な時間に設定される。
【0043】
例えば、光放射面12からの離間距離が50cmの領域における照度が53.6μW/cmであり、所定のウイルスが99%不活化するのに必要な紫外線量が2mJ/cmであり、光照射面12から対象物までの距離hが200cmの場合、必要な照射時間Hは、995秒(約17分)となる。また第二点灯動作が、点灯時間と消灯時間を交互に繰り返す間欠動作を行う場合を想定し、点灯時間を15秒、消灯時間を30秒としたとき、必要とされる第二点灯動作の駆動時間が0.8時間と見積もることができる。このような算出により、駆動時間が0.8時間以上となるよう、第二点灯動作の時間が継続される時間(一定時間)を決定してもよい。ここでは、例えば一定時間を1時間と設定することができる。なお、不活化率がより高い値(例えば99.9%)とする場合は、一定時間の幅をより長く設定する必要がある。
【0044】
また、図2に示すように、第二点灯動作が停止された後に、検知部31により人間の存在が検知された場合は、第一点灯動作を実行するようにしてもよい。つまり、図2に示すように、時刻t4において第二点灯動作が停止された後、時刻t5において人間の存在が検知された場合は、この時刻t5において第一点灯動作を実行してもよい。
なお、第二点灯動作が停止された後に、検知部31により人間の存在が検知された場合は、再び、検知部31により人間の存在が検知されなくなるまで待機し、検知部31が人間の存在を検知しなくなった場合に、第二点灯動作を実行するようにしてもよい。つまり、図5に示すように、時刻t4において第二点灯動作が停止された後、時刻t5において人間の存在が検知された場合、この時刻t5では第一点灯動作を実行せずに、その後の時刻t6において人間の存在が検知されなくなった場合に、第二点灯動作を実行するようにしてもよい。
【0045】
ここで、第一点灯動作および第二点灯動作の何れか、又は、両方は、周期的な点灯動作を行うものであってもよく、図6に示すように、点灯動作と消灯動作を交互に繰り返す(光源部が点灯する点灯時間と光源部が消灯する消灯時間とが交互に繰り返される)間欠動作を行うものであってもよい。
図6は、本発明に係る点灯動作の一態様を示した説明図であり、第一点灯動作および第二点灯動作が、それぞれ間欠動作を行う場合の一態様を示したものである。検知部31からの信号に基づき、対象空間内に人間の存在を検知する期間(ここでは、有人期間とも称す)と、対象空間内に人間の存在を検知しない期間(ここでは、無人期間とも称す)とにおいて、光源部から放射される紫外線の平均照度が異なるよう、有人期間においては第一点灯動作を実行し、無人期間においては第二点灯動作を実行するよう制御する。
【0046】
ここでの平均照度とは、1周期あたりの平均照度として判断すればよい。
つまり、図6に示すように周期的な間欠動作を行う場合、平均照度は、照度×デューティ比となる。ここで、デューティ比は、点灯時間と消灯時間との総和に対する点灯時間の割合であり、点灯時間/(点灯時間+消灯時間)で表される値である。
【0047】
第一点灯動作は、紫外線の平均照度が相対的に低い点灯動作が実行され、第二点灯動作は、紫外線の平均照度が相対的に高い点灯動作が実行される。例えば、第一点灯動作における平均照度は1μW/cm以下に設定され、第二点灯動作における平均照度は、1μW/cmを超える値となるよう、点灯状態が制御されるものとしてもよい。
【0048】
この図6に示すように、時刻t11において有人期間から無人期間に切り替わると、第一点灯動作から第二点灯動作へ切り替わり、平均照度が低照度から高照度へ切り替わる。ここでは、周期的な点灯/消灯サイクルにおける消灯時間を短くすることで、平均照度を低照度から高照度へ切り替える。また、その後、時刻t12において無人期間から有人期間に切り替わると、第二点灯動作から第一点灯動作へ切り替わり、平均照度が高照度から低照度へ切り替わる。つまり、消灯時間が長くなる。
したがって、図2に示す実施態様と同様に、対象空間内に人が存在しない期間においては、紫外線の平均照度がより高い第二点灯動作が実行されることで、より効果的に対象空間内の微生物やウイルスの不活化を行うことができる。また、対象空間内に人間の存在を検知する期間においても、第一点灯動作を実行することで、所定の紫外線を照射し、微生物やウイルスの不活化を行うことができる。
【0049】
また図2に示す実施態様と同様に、第二点灯動作は、予め設定された一定時間の動作終了後に、動作を停止(消灯)するよう制御されるものであってもよい。つまり、図6に示すように、時刻t13において有人期間から無人期間に切り替わった後、一定時間が経過した時刻t14において紫外線の照射を停止してもよい。ここで、上記一定時間は、上述した(1)式により算出される照射時間H(sec)が実行される時間である。
無人期間においては、対象空間内に必要十分な紫外線照射が実行されれば、空間内の不活化が達成される。そのため、人間を介して、新たに微生物やウイルスが入り込むことが想定され難い場合は、点灯動作を停止(消灯)させることで、対象空間内への過剰な紫外線照射を抑えることができる。これにより消費電力を抑えることができる。また光源部の発光動作時間を低減させることができ、不活化装置100の使用寿命を延ばすことができる。
【0050】
また、図6に示すように、第二点灯動作が停止された後に、検知部31により人間の存在が検知された場合は、第一点灯動作を実行するようにしてもよい。つまり、図6に示すように、時刻t14において第二点灯動作が停止された後、時刻t15において人間の存在が検知された場合は、この時刻t15において第一点灯動作を実行してもよい。
【0051】
さらに、検知部31が人間の存在を検知し、第一点灯動作に切り替わった場合は、先に消灯時間が開始され、その後に点灯時間が開始されてもよい。つまり、図7に示すように、時刻t14において第二点灯動作が停止された後、時刻t15において人間の存在が検知された場合、周期的な点灯/消灯サイクルにおける消灯時間だけ待機した後の時刻t16において、点灯時間を開始してもよい。
点灯動作から開始するようにすると、人間の存在/不在が激しく変動する場合に、点灯時間が比較的長くなる可能性がある。消灯時間から開始するようにすることで、点灯時間を適切な値に維持しやすい。
【0052】
また、第一点灯動作および第二点灯動作における紫外線の平均照度の制御は、光源部の点灯時間と消灯時間の比を変更、光源部に設けられた発光体への印加電圧の調整、光源部に設けられた発光体への印加電圧の周波数の調整など、種々の制御方法により実現することができる。
なお、第一点灯動作や第二点灯動作において、点灯時間と消灯時間とが交互に繰り返される間欠動作を行う場合、上記実施形態では、消灯時間を調整することで光源部の点灯時間と消灯時間の比を変更する場合について説明したが、点灯時間を調整するようにしてもよいし、点灯時間と消灯時間の両方を調整するようにしてもよい。
【0053】
なお、本実施形態では、検知部31が人間の存在を検知しない期間が一定時間経過した後に、第二点灯動作を停止するよう制御することが提案されている。これは菌の光回復を抑制できる波長帯域の紫外線を用いることで、不活化状態を維持しやすいためである。しかしながら、第二点灯動作を停止するよう制御した後、人が不在のままであったとしても、所定時間経過後に再点灯を実施するようにしてもよい。
対象空間内には、人間を介して新たな細菌やウイルスが持ち込まれる可能性が高いが、人間を介さずとも、空間中に細菌やウイルスが外部から流入される可能性も考えられる。このような場合を想定して、消灯時間が長く続く場合は、再度点灯動作を実行することで、対象空間内の不活化レベルを維持するよう付加的な制御を実行してもよい。
【0054】
また、上記の知見に基づき、下記の装置構成および不活化方法を採用することも考えられる。
例えば、190nm~235nmの波長帯域に中心波長を有する紫外線を放射する光源部と、対象空間内に人間が存在するかどうかを検知する検知部と、前記光源部の点灯状態を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記検知部が人間の存在を検知しない期間に実行される第二点灯動作を備え、前記第二点灯動作は、前記検知部が人間の存在を検知しない期間が一定時間を経過した後に、停止するよう制御されることを特徴とする不活化装置、としてもよい。
【0055】
さらに、上記の不活化装置において、前記光源部が備える光放射面から不活化対象までの距離をh、前記光放射面から距離hだけ離れた面における紫外線の照度をI(mW/cm)、前記不活化対象の不活化に必要な紫外線量をE(mJ/cm)とするとき、前記一定時間は、下式により算出される照射時間H(sec)が実行される時間であってよい。
H=E/(0.6×I
【0056】
または、190nm~235nmの波長帯域に中心波長を有する紫外線を放射する光源部の点灯状態を制御する不活化方法であって、対象空間内に人間が存在するかどうかを検知するステップと、前記検知部が人間の存在を検知しない期間に第二点灯動作を実行するステップと、を含み、前記第二点灯動作は、前記検知部が人間の存在を検知しない期間が一定時間を経過した後に、停止するよう制御されることを特徴とする不活化方法、としてもよい。
【0057】
さらに、上記の不活化方法において、前記光源部が備える光放射面から不活化対象までの距離をh、前記光放射面から距離hだけ離れた面における紫外線の照度をI(mW/cm2)、前記不活化対象の不活化に必要な紫外線量をE(mJ/cm2)とするとき、前記一定時間は、下式により算出される照射時間H(sec)が実行される時間であってよい。
H=E/(0.6×I
【0058】
上記構成は、人間の存在を検知しない期間の第二点灯動作は、前記検知部が人間の存在を検知しない期間が一定時間を経過した後に、停止するよう制御するものである。
ここでの「一定時間」とは、対象空間内に存在する微生物やウイルスが十分に不活化できる程度の時間で設定され、具体的には、選択された点灯動作モードにおいて、不活化率が90%以上、より望ましくは99%以上、更に望ましくは99.9%以上となる程度に紫外線が照射可能な時間で設定される。不活化に必要な紫外線量は、対象とする微生物やウイルスによって異なり、対象とする微生物やウイルスの種類によって適宜変更される。
これにより、検知部が人間の存在を検知しない無人期間において、必要量の紫外線照射を達成した後に消灯することで、不必要な紫外線照射を減らすことができる。特に無人期間においては、人間を介して対象空間内に細菌やウイルスが新たに持ち込まれることがないため、対象空間内における不活化された状態を悪化させることが無い。
【0059】
さらに、上述のとおり波長190~235nmに中心波長を有する紫外線は、「菌の光回復」の機能を抑制する効果があるため、一定時間の紫外線照射によって対象空間内の不活化が実行された後は、紫外線の照射を停止させても不活化された状態を維持しやすくなる。つまり、より効果的に不活化を進めることができ、対象空間内に存在する部材(例えば、壁紙、什器等)に対して過剰に紫外線を照射させることが抑制できる。これによって、不活化装置の消費電力や使用寿命を抑えることができる。
【0060】
上記の点灯動作において、前記第二点灯動作が停止された後に、前記検知部が人間の存在を検知した場合は、停止状態を継続するように制御してもよい。この場合、再び人間の存在を検知しない期間において、第二点灯動作を実行する。また、その第二点灯動作は、一定時間が経過した後に、停止するよう制御するものとしてもよい。
【0061】
第二点灯動作が一定時間継続されることで、対象空間内に必要量の紫外線が照射された後であっても、この対象空間内に新たに人間が入り込む場合は、人間を介して新たに微生物やウイルスが持ち込まれる可能性がある。これは不活化された状態を阻害するため、前記第二点灯動作が停止された後に、前記検知部が人間の存在を検知した場合は、再度、第一点灯動作を実行することで有人期間における紫外線照射を行ってもよい。これにより、対象空間内の不活化レベルを高く保つことができる。
【0062】
または、上記の点灯動作において、前記第二点灯動作が停止された後に、前記検知部が人間の存在を検知した場合は、第一点灯動作および第二点灯動作とは別の点灯動作を実行するようにしてもよい。この場合、再び人間の存在を検知しない期間となった場合において、第二点灯動作を実行する。また、その第二点灯動作は、一定時間が経過した後に、停止するよう制御するものとしてもよい。
【0063】
上記の態様によれば、人体への悪影響が抑制された波長範囲の紫外線を用いた微生物および/またはウイルスの不活化を、効果的に、且つ、より適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
11…筐体、12…光放射面、15…電源部、16…制御部、20…紫外線光源、21…放電容器、22…第一電極、23…第二電極、31…検知部、100…紫外線照射装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7