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特許7302693運転制御装置、運転制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】運転制御装置、運転制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
B60W30/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022046360
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元哉
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-302055(JP,A)
【文献】特開2001-134320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0341476(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0062747(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
G05D 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の重量と、前記車両の重心位置と、前記車両の速度と、前記車両の操舵角と、前記車両の横偏差と、前記車両の方位角偏差と、前記車両が走行する路面の曲率と、を取得する取得部と、
所定の制御周期で、前記重量と、前記重心位置と、前記速度と、前記操舵角と、前記横偏差と、前記方位角偏差と、前記曲率と、の関係を示す車両モデルを生成する生成部と、
前記車両モデルに基づいて算出される推定横偏差と、推定方位角偏差と、前記操舵角と、直前の前記制御周期からの前記操舵角の変化量と、を含む評価関数の出力値を最小又は最大にする前記操舵角を最適操舵角として算出する算出部と、
を有し、
前記算出部は、前記車両が発進してから所定の初期期間が経過するまでの間における前記変化量に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記変化量に対応する項の前記重み係数を小さくする、
運転制御装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記車両が発進してから所定の初期期間が経過するまでの間における前記操舵角に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記操舵角に対応する項の重み係数を小さくする、
請求項1に記載の運転制御装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記初期期間が経過してから所定の遷移期間にわたって前記変化量に対応する項の重み係数を変化させる、
請求項1又は2に記載の運転制御装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記初期期間が経過するまでの間における前記推定横偏差に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記推定横偏差に対応する項の重み係数を大きくする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の運転制御装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記初期期間が経過するまでの間における前記推定方位角偏差に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記推定方位角偏差に対応する項の重み係数を大きくする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の運転制御装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記車両の種別と前記評価関数の一以上の項の重み係数とを関連付けて記憶する記憶部を参照することにより、前記評価関数の一以上の項の重み係数の少なくともいずれかを決定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の運転制御装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する、
車両の重量と、前記車両の重心位置と、前記車両の速度と、前記車両の操舵角と、前記車両の横偏差と、前記車両の方位角偏差と、前記車両が走行する路面の曲率と、を取得するステップと、
所定の制御周期で、前記重量と、前記重心位置と、前記速度と、前記操舵角と、前記横偏差と、前記方位角偏差と、前記曲率と、の関係を示す車両モデルを生成するステップと、
前記車両モデルに基づいて算出される推定横偏差と、推定方位角偏差と、前記操舵角と、直前の前記制御周期からの前記操舵角の変化量と、を含む評価関数の出力値を最小又は最大にする前記操舵角を最適操舵角として算出するステップと、
を有し、
前記算出するステップにおいて、前記車両が発進してから所定の初期期間が経過するまでの間における前記変化量に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記変化量に対応する項の重み係数を小さくする、
運転制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
車両の重量と、前記車両の重心位置と、前記車両の速度と、前記車両の操舵角と、前記車両の横偏差と、前記車両の方位角偏差と、前記車両が走行する路面の曲率と、を特定するステップと、
所定の制御周期で、前記重量と、前記重心位置と、前記速度と、前記操舵角と、前記横偏差と、前記方位角偏差と、前記曲率と、の関係を示す車両モデルを生成するステップと、
前記車両モデルに基づいて算出される推定横偏差と、推定方位角偏差と、前記操舵角と、直前の前記制御周期からの前記操舵角の変化量と、を含む評価関数の出力値を最小又は最大にする前記操舵角を最適操舵角として算出するステップと、
を実行させ、
前記算出するステップにおいて、前記車両が発進してから所定の初期期間が経過するまでの間における前記変化量に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記変化量に対応する項の重み係数を小さくする、
プログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転制御装置、運転制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目標軌道に沿って車両を走行させるための走行制御システムが知られている。特許文献1には、車両の速度に基づいて目標軌道の曲率を決定する走行制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4297123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の走行制御システムは、車両の重量及び重心位置を固定値として予め入力した車両モデルを用いることにより、車両が目標軌道に沿って走行するための操舵角を算出する。しかしながら、車両の乗車人数又は積載重量が変化した場合、車両の重量及び重心位置は、車両モデルに固定値として入力した車両の重量及び重心位置と異なる。その結果、走行制御システムは、目標軌道に沿って走行するための操舵角を高い精度で算出することができないため、車両を目標軌道に沿うように走行させることができない場合があるという問題が生じていた。
【0005】
車両を目標軌道に沿って走行させるために、車両モデルに基づいて算出される推定横偏差と、推定方位角偏差と、前記操舵角と、前記操舵角からの変化量と、を含む評価関数の出力値を最小又は最大にする操舵角により車両を走行させることが考えられる。しかしながら、目標軌道に沿って走行させることを実現しようとすると、車両が始動した直後に操舵角が大きく変化してしまい、ドライバフィーリング(すなわち乗り心地)が悪くなるという問題が生じていた。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車両を目標軌道に沿って走行させるとともに、車両の始動時のドライバフィーリングを良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る運転制御装置は、車両の重量と、前記車両の重心位置と、前記車両の速度と、前記車両の操舵角と、前記車両の横偏差と、前記車両の方位角偏差と、前記車両が走行する路面の曲率と、を取得する取得部と、所定の制御周期で、前記重量と、前記重心位置と、前記速度と、前記操舵角と、前記横偏差と、前記方位角偏差と、前記曲率と、の関係を示す車両モデルを生成する生成部と、前記車両モデルに基づいて算出される推定横偏差と、推定方位角偏差と、前記操舵角と、直前の前記制御周期からの前記操舵角の変化量と、を含む評価関数の出力値を最小又は最大にする前記操舵角を最適操舵角として算出する算出部と、を有し、前記算出部は、前記車両が発進してから所定の初期期間が経過するまでの間における前記変化量に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記変化量に対応する項の前記重み係数を小さくする。
【0008】
前記算出部は、前記車両が発進してから所定の初期期間が経過するまでの間における前記操舵角に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記操舵角に対応する項の重み係数を小さくしてもよい。
【0009】
前記算出部は、前記初期期間が経過してから所定の遷移期間にわたって前記変化量に対応する項の重み係数を変化させてもよい。
【0010】
前記算出部は、前記初期期間が経過するまでの間における前記推定横偏差に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記推定横偏差に対応する項の重み係数を大きくしてもよい。
【0011】
前記算出部は、前記初期期間が経過するまでの間における前記推定方位角偏差に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記推定方位角偏差に対応する項の重み係数を大きくしてもよい。
【0012】
前記算出部は、前記車両の種別と前記評価関数の一以上の項の重み係数とを関連付けて記憶する記憶部を参照することにより、前記評価関数の一以上の項の重み係数の少なくともいずれかを決定してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様の運転制御方法は、コンピュータが実行する、車両の重量と、前記車両の重心位置と、前記車両の速度と、前記車両の操舵角と、前記車両の横偏差と、前記車両の方位角偏差と、前記車両が走行する路面の曲率と、を取得するステップと、所定の制御周期で、前記重量と、前記重心位置と、前記速度と、前記操舵角と、前記横偏差と、前記方位角偏差と、前記曲率と、の関係を示す車両モデルを生成するステップと、前記車両モデルに基づいて算出される推定横偏差と、推定方位角偏差と、前記操舵角と、直前の前記制御周期からの前記操舵角の変化量と、を含む評価関数の出力値を最小又は最大にする前記操舵角を最適操舵角として算出するステップと、を有し、前記算出するステップにおいて、前記車両が発進してから所定の初期期間が経過するまでの間における前記変化量に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記変化量に対応する項の重み係数を小さくする。
【0014】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、車両の重量と、前記車両の重心位置と、前記車両の速度と、前記車両の操舵角と、前記車両の横偏差と、前記車両の方位角偏差と、前記車両が走行する路面の曲率と、を特定するステップと、所定の制御周期で、前記重量と、前記重心位置と、前記速度と、前記操舵角と、前記横偏差と、前記方位角偏差と、前記曲率と、の関係を示す車両モデルを生成するステップと、前記車両モデルに基づいて算出される推定横偏差と、推定方位角偏差と、前記操舵角と、直前の前記制御周期からの前記操舵角の変化量と、を含む評価関数の出力値を最小又は最大にする前記操舵角を最適操舵角として算出するステップと、を実行させ、前記算出するステップにおいて、前記車両が発進してから所定の初期期間が経過するまでの間における前記変化量に対応する項の重み係数よりも、前記車両が発進してから前記初期期間が経過した後における前記変化量に対応する項の重み係数を小さくする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両を目標軌道に沿って走行させるとともに、車両の始動時のドライバフィーリングを良好にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】運転制御システムSの要点を説明するための図である。
図2】運転制御システムSの構成を示す図である。
図3】生成部122が生成する車両モデルを説明するための図である。
図4】運転制御装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】操舵角を決定する処理のフローチャートである。
図6】シミュレーションのブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[運転制御システムSの概要]
図1は、運転制御システムSの要点を説明するための図である。運転制御システムSは、車両の操舵角を制御することにより、車両を目標軌道に沿って走行させるためのシステムであり、例えば、当該車両が備えるシステムである。目標軌道は、予め定められた軌道であり、車両が目標とする複数の走行位置と複数の走行位置それぞれに対応する車両が目標とする向きとを含む。
【0018】
運転制御システムSにおいては、車両の走行速度(以下、「車速」という)と、横偏差と、方位角偏差と、車両が走行する路面の曲率との関係を示す車両モデルを用いるモデル予測制御により、一定の制御周期ごとに最適なタイヤ操舵角uを算出する。運転制御システムSは、車両が発進してから所定の期間が経過するまでの間に用いられる発進用モデル予測制御部(発進用MPC)と、所定の期間が経過してから用いられる追従用モデル予測制御部(追従用MPC)とを有することを特徴としている。一例として、発進用MPCと追従用MPCは、タイヤ操舵角u1及びタイヤ操舵角u2を並列に算出する。
【0019】
運転制御システムSは、所定の期間が経過するまでの間は、発進用MPCが算出したタイヤ操舵角u1を車両の制御に使用し、所定の期間が経過した後は、追従用MPCが算出したタイヤ操舵角u2を車両の制御に使用する。発進用MPCは、目標軌道への追従性よりもドライバフィーリングを優先して、単位時間あたりの変化量が大きくなり過ぎないようにタイヤ操舵角u1を決定する。一方、追従用MPCは、目標軌道に追従することを優先してタイヤ操舵角u2を決定する。運転制御システムSが、車両が発進してから所定の期間が経過する前後で発進用MPCと追従用MPCを切り替えることで、良好なドライバフィーリングと目標軌道への追従性能を両立させることができる。
【0020】
[運転制御システムSの構成]
図2は、運転制御システムSの構成を示す図である。運転制御システムSは、状態特定装置1と、走行制御装置2と、運転制御装置10と、を備える。
【0021】
状態特定装置1は、車両の状態を示すパラメータを一定の制御周期で特定する。車両の状態を示すパラメータは、例えば車両の重量、重心位置、速度、操舵角、横偏差、方位角偏差、及び路面の曲率である。横偏差は、車両の進行方向と直交する方向における当該車両が走行する位置と当該車両が目標とする走行位置との差である。方位角偏差は、車両が走行する位置における車両の向きと当該位置に対応する車両が目標とする向きとの差である。
【0022】
状態特定装置1は、例えば車両に搭乗した人の重量及び車両に積載した荷物の重量を計測する。状態特定装置1は、計測した人の重量及び荷物の重量と車両の重量とに基づいて、走行している車両の重量を特定する。状態特定装置1は、特定した車両の重量と車両のホイールベースとに基づいて車両の重心位置を特定する。
【0023】
状態特定装置1は、例えば車両が備える速度センサ(不図示)が測定した車両の速度に基づいて、車両の進行方向の速度である縦速度と、車両の進行方向と直交する方向の速度である横速度と、を特定する。また、状態特定装置1は、例えば車両が備える操舵角センサが測定した車両の操舵角を取得する。状態特定装置1が取得する操舵角は、ハンドルシャフトの回転角度、又は車両の向きと車両が備えるタイヤの向きとの差である。
【0024】
状態特定装置1は、例えばGPS(Global Positioning System)信号を取得することにより、車両の位置及び向きを取得する。状態特定装置1は、取得した車両の位置と当該車両の位置に対応する車両が目標とする走行位置とに基づいて、車両の横偏差を特定する。状態特定装置1は、取得した車両の向きと当該車両の位置に対応する車両が目標とする向きとに基づいて、車両の方位角偏差を特定する。
【0025】
状態特定装置1は、例えば状態特定装置1が有する記憶部に記憶されている地図情報に基づいて、取得した車両の位置に対応する路面の曲率を特定する。状態特定装置1は、特定した車両の重心、重心位置、縦速度、横速度、操舵角、横偏差、方位角偏差及び路面の曲率を一定の制御周期で運転制御装置10に出力する。
【0026】
走行制御装置2は、車両の速度及び向きを制御する。走行制御装置2は、運転制御装置10が一定の制御周期で出力した、次の制御周期の時刻における操舵角(以下、「タイヤ操舵角」という。)に応じて車両の向きを制御する。
【0027】
運転制御装置10は、状態特定装置1から入力された車両の状態に対応する車両モデルを一定の制御周期で生成する。運転制御装置10は、生成した車両モデルを用いて、車両を目標となる方向に走行させるべく、一定の制御周期でタイヤ操舵角を算出する。一定の制御周期は、モデル予測制御におけるサンプリング周期である。運転制御装置10は、算出したタイヤ操舵角を走行制御装置2に入力することにより、車両を目標方向に走行させる。以下、運転制御装置10の構成及び動作を詳細に説明する。
【0028】
[運転制御装置10の構成]
運転制御装置10は、記憶部11と、制御部12とを有する。制御部12は、取得部121と、生成部122と、算出部123と、走行制御部124とを有する。運転制御装置10は、状態特定装置1が出力した車両の状態を示すパラメータに基づいて車両モデルを生成し、生成した車両モデルに対応する評価関数を用いて一定の制御周期でタイヤ操舵角を算出し、走行制御装置2に出力する。
【0029】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶している。制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部12は、記憶部11に記憶されているプログラムを実行することにより、取得部121、生成部122、算出部123、及び走行制御部124として動作する。
【0030】
取得部121は、状態特定装置1が出力した車両の状態を示すパラメータを一定の制御周期で取得する。取得部121は、車両の重量と、車両の重心位置と、車両の進行方向の速度である縦速度と、車両の進行方向と直交する方向の速度である横速度と、車両の操舵角と、車両の横偏差と、車両が走行する位置における車両の向きと位置に対応する車両が目標とする向きとの差である方位角偏差と、車両が走行する路面の曲率と、を取得する。
【0031】
生成部122は、一定の制御周期で、重量と、重心位置と、速度と、操舵角と、横偏差と、方位角偏差と、曲率と、の関係を示す車両モデルを生成する。図3は、生成部122が生成する車両モデルを説明するための図である。生成部122は、例えば図3に示す参照点に対応する車両モデルを生成する。
【0032】
生成部122は、取得部121が一定の制御周期で車両の重量、重心位置、縦速度又は横速度のうち少なくともいずれかを取得したことに応じて、取得部121が重量、重心位置、縦速度、又は横速度のうち少なくともいずれかを取得した時刻に対応する制御周期の次の制御周期の時刻に対応する車両モデルを生成してもよい。生成部122は、例えば一定の制御周期ごとに車両の重量、重心位置、縦速度、又は横速度のうち少なくともいずれかを更新した車両モデルを生成する。
【0033】
生成部122は、連続時間型の車両モデルとして、車両の運動を示す車両プラントモデルと車両が運動した軌跡を示す経路追従モデルとを生成する。続いて、生成部122は、生成した連続時間型の車両モデルから離散時間型の状態方程式を導出する。本実施形態においては、一例として、等価二輪モデルを用いて車両モデルを生成する。
【0034】
最初に、車両プラントモデルを説明する。図3に示す参照点に対応する車両運動は、車両の縦速度vx、車両の横速度vy、ヨー角ψ、車両速度v、操舵角入力δを用いて以下の式(1)及び式(2)のように表現できる。
【数1】
【0035】
ただし、車両の縦速度vxが一定かつすべり角が十分に小さいと仮定し、以下の式(3)が成り立つと仮定する。
【数2】
【0036】
式(1)及び式(2)に用いた係数aij(i,j=1,2,3)は、前輪のコーナリング係数Kf、後輪のコーナリング係数Kr、重心から前輪までの距離lf、重心から後輪までの距離lr、車両の重量m、慣性モーメントIを用いて以下の式(4)から式(9)により算出する。
【数3】
【0037】
車両が走行する軌道を示す曲率κの算出式は、式(1)及び式(2)に基づいて、以下の式(10)のように示される。
【数4】
【0038】
次に、経路追従モデルを説明する。車両プラントモデルを状態空間モデルで表現すると、以下の式(11)から式(14)である。
【数5】
【0039】
参照点と車両との結線と、参照点の接線とが直交しているとすると、経路長さSrは、図3に示す車両と参照点との距離である符号付距離zを用いて以下の式(15)のように示される。符号付距離zは、以下の式(16)のように示される。
【数6】
【0040】
図3に示す方位角偏差θは、すべり角β、ヨー角ψ、及び参照点の姿勢角φを用いた以下の式(17)で算出される。
【数7】
式(1)及び式(2)を式(12)に代入することにより、生成部122は、方位角偏差θを以下の式(18)で算出することもできる。さらに、車両の横偏差が変化する速度と方位角偏差が変化する速度とに以下の式(19)が成り立つと仮定する。
【数8】
【0041】
式(11)から式(14)、及び式(17)から式(19)を用いて状態方程式を再定義することにより、以下の式(20)から式(25)が成り立つ。生成部122は、式(20)から式(25)を用いることにより、曲率及び操舵角に基づいて車両が走行する軌跡を算出することができる。
【数9】
【0042】
生成部122は、このように生成した連続時間の車両モデルに、車両の重量mと、車両の重心位置に基づいて算出した重心から前輪までの距離lf及び重心から後輪までの距離lrと、縦速度vx及び横速度vyとを入力することにより、連続時間の車両モデルを更新する。
【0043】
生成部122がこのように車両モデルを更新することで、生成部122は、一定の制御周期ごとに取得した車両の重量、車両の重心位置、又は車両の速度の少なくともいずれかに応じて車両モデルを更新することができる。その結果、生成部122は、車両の重量、車両の重心位置及び車両の速度の変化に対応する車両モデルを遅滞なく生成することができる。
【0044】
次に、生成部122は、離散時間型の状態方程式を導出する。離散化後の状態方程式は、以下の式(26)から式(29)で示される。Tは制御周期(サンプリング周期)である。
【数10】
【0045】
連続時間の状態方程式の解は以下の式(30)であるため、式(30)を式(26)に代入することにより、以下の式(31)及び式(32)を導出することができる。
【数11】
【0046】
以下の式(33)のように0次ホールドを表すと、式(33)を式(32)に代入することにより、制御周期ごとの状態変数xは、以下の式(34)のように表すことができる。
【数12】
【0047】
さらに、式(34)から以下の式(35)を導出することができる。
【数13】
【0048】
続いて、以下の式(36)及び式(37)を定義することにより、離散時間型の状態方程式は、以下の式(38)のように表すことができる。
【数14】
【0049】
式(26)と式(38)の係数を比較することにより、状態方程式の係数行列は、以下の式(39)及び式(40)のように表すことができる。
【数15】
【0050】
このように、連続時間型の車両モデルである状態方程式から離散時間型の状態空間方程式を導出したが、式(40)は積分を含む方程式であるため、過去の制御周期における車両の運動を含む。その結果、現在の制御周期における車両モデルを精度高く生成できないという場合がある。これに対して、生成部122は、AとBの行列指数関数において成り立つ以下の式(41)を用いることにより、以下の式(42)及び式(43)を導出してもよい。
【数16】
【0051】
この場合、生成部122は、式(41)から式(43)を用いて離散時間型の車両モデルを生成する。このように生成部122が動作することで、生成部122は、精度が高い離散時間型の車両モデルを生成できる。さらに、生成部122は、過去の制御周期における車両の運動を算出することを省略できるため、算出時間を短縮することができる。その結果、生成部122は、一定の制御周期で精度が高い車両モデルを生成することができる。
【0052】
続いて、算出部123の動作について説明する。算出部123は、取得部121が取得した横偏差及び方位角偏差に含まれるノイズを除外した推定横偏差及び推定方位角偏差を算出し、推定横偏差及び推定方位角偏差を含む評価関数を最適化するタイヤ操舵角を算出する。ノイズは、例えば観測ノイズ又はシステムノイズであり、状態特定装置1が横偏差又は方位角偏差を特定する際に含まれる測定誤差を含む。
【0053】
まず、算出部123は、取得部121が取得した縦速度、横速度、重量、及び重心位置に対応する車両モデルに対応する状態空間モデルに、取得部121が取得した操舵角と曲率とを入力することにより、取得部121が取得した横偏差及び方位角偏差に含まれるノイズを推定する。算出部123は、推定したノイズを除外した推定横偏差及び推定方位角偏差を特定する。算出部123は、例えば線形カルマンフィルタを用いた状態方程式を用いることにより推定横偏差及び推定方位角偏差を算出する。
【0054】
算出部123が除外する観測ノイズνとシステムノイズωを白色雑音と仮定した場合、線形カルマンフィルタを用いた状態方程式は、以下の式(44)及び式(45)のように表すことができる。
【数17】
【0055】
続いて、式(44)及び式(45)に基づいて、算出部123は、状態変数xの事前推定値xεを以下の式(46)のように算出することができる。さらに、システムノイズの影響で事前推定値xεと実際の状態量との間に偏差が発生している場合、算出部123は、事前推定値xεを以下の式(47)のように補正することができる。式(47)の変数hは、イノベーションゲインである。
【数18】
【0056】
式(47)において、変数hの値を変化させることに応じて観測ノイズの影響が小さくなる場合は、事前推定値xεに対するシステムノイズの影響が大きくなり、観測ノイズの影響が大きくなる場合は、事前推定値xεに対するシステムノイズの影響が小さくなる。これに対して、算出部123は、変数hを最適化するために、事前分散と事後分散とを更新する。事前分散は以下の式(48)、事後分散は以下の式(50)のように表すことができる。
【数19】
【0057】
算出部123は、式(48)から式(50)を用いてイノベーションゲインである変数hを調整することにより、観測ノイズとシステムノイズの重みづけを最適化する。例えば、観測ノイズの重みを大きくすると、式(49)の分母が大きくなることによりイノベーションゲインが小さくなる。一方、システムノイズの重みを大きくすると、式(49)の分子が大きくなることによりイノベーションゲインが大きくなる。
【0058】
状態行列AdとBdは、時不変と定義されているため、観測ノイズ及びシステムノイズが白色雑音であれば、無限時間における線形時不変な状態方程式の状態変数xが定常値に収束すると考えられる。このように算出部123が観測ノイズ及びシステムノイズの重みづけを最適化することで観測ノイズ及びシステムノイズを特定し、観測ノイズ及びシステムノイズを除外した推定横偏差及び推定方位角偏差を算出することで、運転制御装置10は、推定横偏差及び推定方位角偏差に基づいた精度が高いタイヤ操舵角を算出することができる。
【0059】
算出部123は、車両モデルに基づいて算出される推定横偏差と、推定方位角偏差と、操舵角と、直前の制御周期からの操舵角の変化量と、を含む評価関数の出力値を最小又は最大にする操舵角を最適操舵角として算出する。具体的には、算出部123は、まず、取得部121が取得した縦速度、横速度、重量、及び重心位置に対応する車両モデルに対応する評価関数に、算出した推定横偏差及び推定方位角偏差と、操舵角と、操舵角の変化量と、を入力する。そして、算出部123は、評価関数の出力値を最小又は最大にするためのタイヤ操舵角を算出する。
【0060】
ここで、状態空間方程式の状態変数xを以下の式(51)で表す場合、観測出力yは式(52)となる。ただし、v、ψ、e、eθは、それぞれ横速度、ヨーレート、推定横偏差、推定方位角偏差である。
【数20】
【0061】
算出部123は、定常カルマンフィルタで状態変数xを推定し、以下の式(53)に示す評価関数を用いて、モデル予測制御の最適化問題を計算する。式(53)において、pは予測ホライズン、δは操舵角入力、Δδは操舵角入力と直前の制御周期の操舵角入力との差分、各入出力変数の添え字であるmaxとminはそれぞれ信号の上下限値である。Q、Q、R、Rは、重み係数である。
【数21】
【0062】
算出部123は、式(53)に示す評価関数の出力値Jを最小化する最適化計算をすることにより、タイヤ操舵角を実時間で計算して、車両の目標軌道への追従を実現する。算出部123がこのようなタイヤ操舵角を算出することで、運転制御装置10は、複数の制御周期それぞれの時刻において、目標軌道との誤差が少ない位置を車両に走行させることができる。
【0063】
走行制御部124は、算出部123が算出したタイヤ操舵角に基づいて車両を走行させる。走行制御部124は、算出部123が算出したタイヤ操舵角を一定の制御周期で走行制御装置2に出力することにより、算出されたタイヤ操舵角で車両を走行させる。
【0064】
ここで、算出部123は、例えば、横偏差と方位角偏差を0に収束させることを優先する場合、重み係数Q又はQの少なくともいずれかを大きく設定したり、重み係数R又はRの少なくともいずれかを小さく設定したりする。算出部123は、タイヤ操舵角の変化量を小さくすることを優先する場合、Rを大きく設定する。
【0065】
車両が発進した直後のドライバフィーリングを良好にするとともに、車両の目標軌道への追従性を確保するために、算出部123は、初期期間が経過するまでの間におけるタイヤ操舵角δに対応する項の重み係数R(操舵角係数)よりも、車両が発進してから初期期間が経過した後における重み係数Rを小さくする。また、算出部123は、初期期間が経過するまでの間におけるタイヤ操舵角の変化量Δδに対応する項の重み係数R(操舵角変化量係数)よりも、車両が発進してから初期期間が経過した後における重み係数Rを小さくする。
【0066】
算出部123は、初期期間が経過するまでの間における推定横偏差eに対応する項の重み係数Q(横偏差係数)よりも、車両が発進してから初期期間が経過した後における重み係数Qを大きくしてもよい。また、算出部123は、初期期間が経過するまでの間における推定方位角偏差eθに対応する項の重み係数Q(方位角偏差係数)よりも、車両が発進してから初期期間が経過した後における重み係数Qを大きくしてもよい。
【0067】
具体的には、算出部123は、初期期間が経過するまでの間は、初期期間が経過した後よりも重み係数Q及びQを小さくし、重み係数R及びRを大きくすることにより、タイヤ操舵角が大きくなり過ぎたり、タイヤ操舵角の変化量が大きくなり過ぎたりすることを抑制し、ドライバフィーリングを良好にする。一方、算出部123は、初期期間が経過した後に、重み係数Q及びQを大きくし、重み係数R及びRを小さくすることにより、横偏差と方位角偏差を小さくすることを優先し、目標軌道への追従性を良好にする。
【0068】
算出部123は、ドライバにより設定されたモードに応じて、初期期間が経過するまでの各重み係数の値と、初期期間が経過した後における各重み係数の値とを決定してもよい。例えば、算出部123は、ドライバが、発進直後に目標軌道への追従性よりも良好なフィーリングを優先するモードを選択した場合に、発進直後から目標軌道への追従性を優先するモードを選択する場合に比べて、初期期間が経過するまでの重み係数R及びRを大きくする。
【0069】
ところで、初期期間が経過した時点のみにおいて重み係数を変化させると、ドライバフィーリングが急に変化してしまうおそれがある。そこで、算出部123は、初期期間が経過してから所定の遷移期間にわたって重み係数を変化させてもよい。所定の遷移期間は、例えば変化前の重み係数と変化後の重み係数との差の大きさに基づいて決定され、重み係数の変化にドライバが気付きにくい程度に緩やかに重み係数が変化するために必要な期間である。
【0070】
また、車種によって特性が異なるので、評価関数における最適な重み係数が異なる。そこで、算出部123が、例えば記憶部11に記憶された車両識別情報に基づいて車両の種別を特定し、算出部123は、車両種別と前記評価関数の一以上の項の重み係数とを関連付けて記憶する記憶部11を参照することにより、評価関数の一以上の項の重み係数の少なくともいずれかを決定してもよい。算出部123がこのように構成されていることで、制御部12は、1つのプログラムを実行することにより、複数の車種それぞれに適した重み係数を使用して車両を制御することができる。
【0071】
[運転制御装置10のフローチャート]
図4は、運転制御装置10の動作の一例を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、運転制御装置10が状態特定装置1から取得した車両の状態を示すパラメータに基づいてタイヤ操舵角を算出する動作を示している。
【0072】
取得部121は、車両の状態を示すパラメータである車両の重量、車両の重心位置、車両の縦速度、車両の横速度、車両の操舵角、車両の横偏差、車両の方角偏差及び車両が走行する路面の曲率等の車両の状態量を取得する(S11)。生成部122は、取得部121が取得した車両の状態量に対応する車両モデルを生成する(S12)。
【0073】
算出部123は、生成部122が生成した車両モデルに対応する状態空間モデルに、取得部121が取得した車両の操舵角と車両が走行する路面の曲率を入力することにより、取得部121が取得した車両の横偏差及び車両の方位角偏差に含まれる観測ノイズ及びシステムノイズを除外した推定横偏差及び推定方位角偏差を算出する(S13)。
【0074】
算出部123は、生成部122が生成した車両モデルに対応する評価関数に、取得部121が取得した曲率と算出部123が特定した推定横偏差及び推定方位角偏差とを入力し、評価関数の出力値を最小にするためのタイヤ操舵角を算出する(S14)。
【0075】
運転制御装置10は、処理を終了する操作が行われていない場合(S15のNO)、次の制御周期の時刻に取得した車両の状態を示すパラメータに基づいてタイヤ操舵角を算出するためにS11からS14までの処理を繰り返す。処理を終了する操作が行われた場合(S15のYES)、運転制御装置10は、処理を終了する。
【0076】
図5は、算出部123がタイヤ操舵角を算出する動作の一例を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、車両が発進したか否かを監視する処理から開始している(S21)。
【0077】
算出部123は、車両が発進したと判定すると(S21においてYES)、制御周期ごとに、発進用操舵角u1の算出(S22)と、追従用操舵角u2の算出(S23)を順次実行する。制御周期内におけるこれらの処理の順序は任意であり、算出部123は複数のプロセッサを用いて並列にこれらの処理を実行してもよい。
【0078】
算出部123は、発進用操舵角u1及び追従用操舵角u2を算出すると、車両が発進してからの経過時間が閾値を超えたか否かを判定する(S24)。算出部123は、経過時間が閾値以内である場合は(S24においてNO)、発進用操舵角u1をタイヤ操舵角uとして選択してから(S25)、S22に処理を戻す。
【0079】
算出部123は、経過時間が閾値を超えた場合は(S24においてYES)、追従用操舵角u2をタイヤ操舵角uとして選択してから(S26)、車両が走行を停止したか否かを判定する(S27)。算出部123は、車両が走行を停止していないと判定した場合(S27においてNO)、S22に処理を戻す。算出部123は、車両が走行を停止していると判定した場合(S27においてYES)、エンジンが停止しているか否かを判定する(S28)。算出部123は、エンジンが停止していないと判定した場合(S28においてNO)、算出部123はS21に処理を戻す。
【0080】
[シミュレーションによる効果確認]
発明者は、シミュレーションにより本実施形態に係る運転制御装置10の効果を確認した。図6は、シミュレーションのブロック線図である。
【0081】
コンピュータにより、予め作成された車両モデルを用いて推定横偏差、推定方位角偏差及び曲率を算出し、地図モデルに基づいて前方の曲率を算出し、評価関数に基づく最適化計算をしてタイヤ操舵角を算出した。発進時には、重み係数Q=23.25、重み係数Q=7.5、重み係数R=200、重み係数R=200として、追従時には、重み係数Q=23.25、重み係数Q=7.5、重み係数R=4、重み係数R=75とした。車両の横偏差の初期値を1mに設定し、方位角偏差と車速の初期値を0に設定した。そして、この状態から車両を滑らかに発進させられるかを検証した。
【0082】
車両を発進させる時点から追従用の重み係数を使用した場合、横偏差が0.1m以下となるように動作するため、目標軌道に対してオーバーシュートが発生してしまい、車両がコースアウトしてしまった。これに対して、車両を発進させてから5秒が経過するまでの間は発進時の重み係数を使用すると、車両が目標軌道に向けて緩やかに収束し、目標軌道に沿って進行させることができた。その後、追従時の重み係数に切り替えた後には、目標軌道に沿って車両が走行することを確認できた。
【0083】
[運転制御装置10の効果]
以上説明したように、運転制御装置10の算出部123は、車両モデルに基づいて算出される推定横偏差と、推定方位角偏差と、操舵角と、直前の制御周期からの操舵角の変化量と、を含む評価関数の出力値を最小又は最大にする操舵角を最適なタイヤ操舵角として算出する。そして、算出部123は、前記車両が発進してから所定の初期期間と初期期間が経過した後とで、評価関数の重み係数を切り替える。算出部123は、例えば、初期期間が経過するまでの間における操舵角の変化量に対応する項の重み係数よりも、車両が発進してから初期期間が経過した後における操舵角の変化量に対応する項の前記重み係数を小さくする。このように算出部123が動作することで、車両の発進直後のドライバフィーリングを良好にするとともに、車両が発進して初期期間が経過した後の追従性を両立させることができる。
【0084】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0085】
1 状態特定装置
2 走行制御装置
10 運転制御装置
11 記憶部
12 制御部
121 取得部
122 生成部
123 算出部
124 走行制御部
【要約】      (修正有)
【課題】車両を目標軌道に沿って走行させるとともに、車両の始動時のドライバフィーリングを良好にする。
【解決手段】運転制御装置10は、車両の重量と、重心位置と、車速と、操舵角と、横偏差と、方位角偏差と、車両が走行する路面の曲率と、を取得する取得部121と、所定の制御周期で、重量と、重心位置と、速度と、操舵角と、横偏差と、方位角偏差と、曲率と、の関係を示す車両モデルを生成する生成部122と、車両モデルに基づいて算出される推定横偏差と、推定方位角偏差と、操舵角と、直前の制御周期からの操舵角の変化量と、を含む評価関数の出力値を最小又は最大にする操舵角を最適操舵角として算出する算出部123と、を有し、算出部123は、車両が発進してから所定の初期期間が経過するまでの間における変化量に対応する項の重み係数よりも、車両が発進してから初期期間が経過した後における変化量に対応する項のみ係数を小さくする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6