(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電磁シールド部材及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20230627BHJP
H05K 7/20 20060101ALN20230627BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
H05K9/00 L
H05K7/20 B
B60R16/02 620A
(21)【出願番号】P 2022048103
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2019043638の分割
【原出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕太
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-192578(JP,A)
【文献】特開2005-44607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 7/20
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が収容される溝部を有するケースと、
前記溝部内に収容され、前記電線を押圧する押圧機構と、を備える電磁シールド部材であって、
前記押圧機構は、前記溝部と共に前記電線の外周を囲む壁部と、前記壁部に設けられ、前記電線を押圧する押圧部と、を有してい
て、
前記押圧機構の前記壁部は、前記溝部の幅方向において対向する一対の対向壁部を含み、
前記押圧部は、前記一対の対向壁部の少なくとも一方に設けられ、他方に向けて前記電線を押圧する、
電磁シールド部材。
【請求項2】
前記押圧部は、前記一対の対向壁部の双方に設けられている、
請求項1に記載の電磁シールド部材。
【請求項3】
前記押圧部の各々は、前記溝部の延在方向において互いに異なる位置に設けられている、
請求項2に記載の電磁シールド部材。
【請求項4】
電線が収容される溝部を有するケースと、
前記溝部内に収容され、前記電線を押圧する押圧機構と、を備える電磁シールド部材であって、
前記押圧機構は、前記溝部と共に前記電線の外周を囲む壁部と、前記壁部に設けられ、前記電線を押圧する押圧部と、を有していて、
前記押圧部は、前記壁部の一部を切り起こすことによって形成されている、
電磁シールド部材。
【請求項5】
前記押圧機構は、前記押圧部を前記電線に向けて付勢する付勢部材を備えている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電磁シールド部材。
【請求項6】
前記押圧部の先端部には、前記電線の前記溝部の内面からの浮き上がりを規制する規制部が設けられている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電磁シールド部材。
【請求項7】
前記規制部は、前記押圧部とは別体に設けられている、
請求項6に記載の電磁シールド部材。
【請求項8】
電線と、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電磁シールド部材と、を備え、
前記電線は、前記押圧機構の前記押圧部により押圧されている、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁シールド部材及び同電磁シールド部材と電線とを備えるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電気自動車などの車両に適用されるワイヤハーネスは、複数の電線と、導電性を有し、複数の電線を個別に覆うことで電磁シールドを行う電磁シールド部材とを備えている(例えば、特許文献1参照)。同文献1に記載の電磁シールド部材は、各電線を個別に収容可能な溝状収容部を有するシールドプロテクタと、溝状収容部を塞ぐカバーとを備えている。そして、シールドプロテクタとカバーとにより各電線の外周が覆われることで各電線が電磁シールドされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の電磁シールド部材を含む従来の電磁シールド部材及び同電磁シールド部材を備えるワイヤハーネスにおいては、放熱性の向上が望まれている。特に、インバータなどの高電圧の電気機器に電線が接続されるワイヤハーネスにあっては、電線に流れる電流が大きくなるために電線の発熱による課題が顕著となる。
【0005】
本発明の目的は、電線の放熱性を高めることができる電磁シールド部材及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための電磁シールド部材は、電線が収容される溝部を有するケースと、前記溝部内に収容され、前記電線を押圧する押圧機構と、を備えるものであり、前記押圧機構は、前記溝部と共に前記電線の外周を囲む壁部と、前記壁部に設けられ、前記電線を押圧する押圧部と、を有している。
【0007】
同構成によれば、ケースの溝部内には、電線を押圧する押圧部を有する押圧機構が設けられている。押圧部は、ケースの溝部と共に電線の外周を囲む壁部に設けられているため、電磁シールド部材内に電線を収容することで、電線が押圧部により押圧されるようになる。このため、電線の熱が押圧部を含む壁部を介して放熱されやすくなる。
【0008】
上記電磁シールド部材において、前記押圧機構の前記壁部は、前記溝部の幅方向において対向する一対の対向壁部を含み、前記押圧部は、前記一対の対向壁部の少なくとも一方に設けられ、他方に向けて前記電線を押圧することが好ましい。
【0009】
同構成によれば、押圧部が一対の対向壁部の少なくとも一方に設けられている。このため、熱膨脹による余長が電線に生じた場合には、電線が押圧部により押圧された状態で幅方向に湾曲するようになる。これにより、電線の余長が吸収されるとともに押圧部が電線の外周面に接触した状態が維持される。したがって、電線に余長が生じた場合であっても、電線の熱が押圧部を含む対向壁部を介して放熱されやすくなる。
【0010】
上記電磁シールド部材において、前記押圧部は、前記一対の対向壁部の双方に設けられていることが好ましい。
同構成によれば、押圧部が一対の対向壁部の双方に設けられているため、電線が幅方向の両側から押圧されるようになる。このため、電線が押圧部により幅方向の一方側からのみ押圧される構成と比較して、各押圧部と電線とが密着しやすくなるとともに各押圧部と電線との接触面積が増加する。したがって、電線の熱が押圧部を含む対向壁部を介して一層放熱されやすくなる。
【0011】
上記電磁シールド部材において、前記押圧部の各々は、前記溝部の延在方向において互いに異なる位置に設けられていることが好ましい。
同構成によれば、各押圧部が溝部の延在方向において互いに異なる位置に設けられている。このため、電線のうち幅方向の一方側に向けて押圧される部分と、幅方向の他方側に向けて押圧される部分とが延在方向において異なる位置となる。これにより、熱膨脹による余長が電線に生じた場合に、延在方向の異なる位置において、電線が幅方向の一方側及び他方側に湾曲することとなる。したがって、各押圧部と電線とを密着させながらも、当該電線の余長を好適に吸収することができる。
【0012】
また、上記構成によれば、各押圧部が延在方向の異なる位置において幅方向の両側から電線を押圧する。このため、所定の余長を吸収するために各押圧部が電線を押圧する距離は、幅方向の一方側にのみ押圧部が設けられた構成において当該押圧部が電線を押圧する距離よりも小さくなる。これにより、押圧機構の一対の対向壁部同士の間隔、ひいては、押圧機構の幅方向における体格を小さくすることができる。
【0013】
上記電磁シールド部材において、前記押圧部は、前記壁部の一部を切り起こすことによって形成されていることが好ましい。
同構成によれば、押圧部と壁部とが一体に形成されている。このため、押圧部が壁部とは別体に形成された構成と比較して、押圧部と壁部との界面における熱抵抗が小さくなる。したがって、電線の熱が押圧部を介して放熱されやすくなる。
【0014】
また、上記構成によれば、別体の押圧部を準備する必要がないため、押圧機構の部品点数の増加を抑制することができる。
上記電磁シールド部材において、前記押圧機構は、前記押圧部を前記電線に向けて付勢する付勢部材を備えていることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、押圧部が付勢部材により電線に向けて付勢されているため、熱膨脹による余長が電線に生じて電線が湾曲した場合には、押圧部が電線の湾曲に追従することで電線の外周面に好適に接触するようになる。したがって、電線の熱が押圧部を介して放熱されやすくなる。
【0016】
上記電磁シールド部材において、前記押圧部の先端部には、前記電線の前記溝部の内面からの浮き上がりを規制する規制部が設けられていることが好ましい。
同構成によれば、押圧部の先端部に設けられた規制部により、ケースの溝部の内面から電線が浮き上がることが抑制される。このため、電線と溝部の内面とが接触した状態が維持されやすくなる。したがって、電線の熱が押圧部及びケースの溝部を介して放熱されやすくなる。
【0017】
上記電磁シールド部材において、前記規制部は、前記押圧部とは別体に設けられていることが好ましい。
押圧部が押圧機構の対向壁部の一部から切り起こされることにより形成されるとともに、規制部が押圧部と一体に設けられている構成にあっては、押圧部と規制部とを同一の対向壁部から切り起こす必要があるため、規制部の形状の自由度が低下するおそれがある。
【0018】
この点、上記構成によれば、規制部が押圧部とは別体に設けられているため、上述した不都合が生じることを抑制できる。
また、上記目的を達成するためのワイヤハーネスは、電線と、上記いずれか1つの電磁シールド部材と、を備え、前記電線は、前記押圧機構の前記押圧部により押圧されていることが好ましい。
【0019】
同構成によれば、上記いずれか1つの電磁シールド部材の作用効果に準じた作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電線の放熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】電磁シールド部材及びワイヤハーネス一実施形態について、ワイヤハーネスを示す斜視図。
【
図2】同実施形態の電磁シールド部材を示す分解斜視図。
【
図5】
図3に対応する図であって、各電線に余長が生じた状態のワイヤハーネスを示す断面図。
【
図6】第1変更例の押圧機構を示す図であって、(a)は、押圧部に当接部材が取り付けられた状態を示す斜視図、(b)は、押圧部及び当接部材を中心とした縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~
図5を参照して、電磁シールド部材及びワイヤハーネスの一実施形態について説明する。なお、添付図面においては、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0023】
本実施形態のワイヤハーネスは、例えばハイブリッド車や電気自動車などの車両の床下を含む経路に配索されるとともに、複数の機器同士を電気的に接続する。
図1及び
図2に示すように、ワイヤハーネスは、並んで配置される2本の電線10と、各電線10を覆う導電性の電磁シールド部材20とを備えている。
【0024】
電線10は、例えば、芯線と当該芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有している。なお、各電線10の両端部は、上記機器に接続されている。
電磁シールド部材20は、各電線10が個別に収容される溝部30a,30bを有するケース30と、ケース30に取り付けられ、各溝部30a,30bを覆うカバー40と、各溝部30a,30b内に収容され、各電線10を押圧する複数の押圧機構50とを備えている。本実施形態では、ケース30の各溝部30a,30b内に押圧機構50が1つずつ設けられている。ケース30、カバー40、及び押圧機構50は、それぞれアルミニウム合金などの金属材料により形成されている。
【0025】
なお、以降において、各溝部30a,30bの延在する方向を延在方向Lと称し、延在方向Lに直交する方向であって、各溝部30a,30bが並ぶ方向を幅方向Wと称する。
<ケース30>
図2に示すように、ケース30は、延在方向Lに沿って延在する底壁31と、底壁31の幅方向Wの両端及び幅方向Wの中央部から突出する都合3つの側壁32とを有している。各側壁32は、底壁31の延在方向Lの全体にわたって延在している。
【0026】
底壁31と、幅方向Wにおいて隣り合う一対の側壁32とにより各溝部30a,30bが構成されている。本実施形態では、溝部30aと溝部30bとが、幅方向Wの中央部に位置する側壁32を共有している。
【0027】
ケース30は、幅方向Wの両端の側壁32の外面に接合された一対のL字状のブラケット35を有している。各ブラケット35は、上記側壁32の延在方向Lの一端に接合された接合部36と、接合部36の延在方向Lの一端から屈曲した取付部37とを有している。各取付部37には、延在方向Lに貫通する取付孔38が形成されている。なお、各取付部37は、各側壁32の延在方向Lの一端面と面一となっている。
【0028】
<カバー40>
図2に示すように、カバー40は、延在方向Lに沿って延在するとともにケース30の底壁31に対向する対向壁41と、対向壁41の幅方向Wの両端から突出する2つの側壁42とを有している。各側壁42は、対向壁41の延在方向Lの全体にわたって延在している。
【0029】
図1及び
図4に示すように、カバー40の各側壁42は、ケース30の幅方向Wの両端の側壁32を幅方向Wの外側から覆っている。
図2に示すように、カバー40は、幅方向Wの両端の側壁42の外面に接合された一対のL字状のブラケット45を有している。各ブラケット45は、上記側壁42の延在方向Lの一端に接合された接合部46と、接合部46の延在方向Lの一端から屈曲した取付部47とを有している。各取付部47には、延在方向Lに貫通する取付孔48が形成されている。
【0030】
ここで、各側壁42の延在方向Lの一端には、カバー40がケース30に取り付けられる際に、ケース30のブラケット35の接合部36を逃がすための逃がし部49が切り欠いて形成されている。各ブラケット45の接合部46は、各逃がし部49を幅方向Wの外側から覆っている。
【0031】
ケース30の各ブラケット35とカバー40の各ブラケット45とが延在方向Lにおいて重ね合わされるとともに、各ブラケット35の取付孔38と各ブラケット45の取付孔48とに挿通されたボルト100にナット101が螺合されることにより、カバー40がケース30に取り付けられる。
【0032】
<押圧機構50>
図2に示すように、押圧機構50は、ケース30の底壁31と共に各電線10の外周を囲む壁部51を有している。壁部51は、延在方向Lに沿って延在するとともにケース30の底壁31に対向する頂壁部52と、頂壁部52の幅方向Wの両端から突出するとともに幅方向Wにおいて対向する一対の対向壁部53とにより構成されている。各対向壁部53は、頂壁部52の延在方向Lの全体にわたって延在している。
【0033】
図2及び
図3に示すように、幅方向Wの一方側(
図3における右側)の対向壁部53及び幅方向Wの他方側(
図3における左側)の対向壁部53には、それぞれの一部を幅方向Wの内側に向かって切り起こすことによって形成され、各電線10を幅方向Wの内側に押圧する押圧部55A,55Bが設けられている。押圧部55Aは、上記一方側の対向壁部53における延在方向Lの一方側(
図3における下側)に設けられている。また、押圧部55Bは、上記他方側の対向壁部53における延在方向Lの他方側(
図3における上側)に設けられている。したがって、各押圧部55A,55Bは、延在方向Lにおいて互いに異なる位置に設けられている。
【0034】
押圧部55Aは、延在方向Lの他方側を基端、延在方向Lの一方側を先端として対向壁部53から切り起こされている。また、押圧部55Bは、延在方向Lの一方側を基端、延在方向Lの他方側を先端として対向壁部53から切り起こされている。したがって、各押圧部55A,55Bは、延在方向Lにおいて互いに異なる向きに延びている。
【0035】
各押圧部55A,55Bは、対向壁部53から幅方向Wの内側に膨らむように湾曲した湾曲部56と、湾曲部56の先端から延在方向Lに沿って延びる延在部57とを有している。各電線10は、各押圧部55A,55Bの各延在部57により、幅方向Wの内側に押圧されている。
【0036】
図2~
図4に示すように、各延在部57の先端における頂壁部52側の部分には、各電線10がケース30の底壁31から浮き上がることを規制する規制部58が形成されている。各規制部58は、各電線10の外周面に当接するように各延在部57の上記部分から延びている。このため、各電線10は、各押圧部55A,55Bの各延在部57により幅方向Wの内側に押圧されるとともに、各規制部58により幅方向Wの内側及び底壁31に向けて押圧されることとなる。なお、本実施形態においては、湾曲部56、延在部57、及び規制部58が一体に形成されている。
【0037】
各対向壁部53には、各押圧部55A,55Bを各電線10に向けて付勢する付勢部材としての板ばね60が設けられている。各板ばね60は、延在方向L沿って延びる長方形状をなしている。各板ばね60は、基端が対向壁部53に例えば溶接などにより接合されており、先端が押圧部55A,55Bの延在部57に幅方向Wの外側から当接している。板ばね60は、例えばステンレス鋼などの金属材料を曲げ加工することにより形成されている。
【0038】
なお、本実施形態では、各溝部30a,30b内に収容された各押圧機構50は、延在方向Lにおける同一の位置に設けられている。
本実施形態の作用について説明する。
【0039】
図3に示すように、電磁シールド部材20内に収容された各電線10は、各押圧機構50の各押圧部55A,55Bにより幅方向Wの内側に押圧されている。(以上、作用1)。
【0040】
ここで、
図5に示すように、熱膨脹による余長が各電線10に生じた場合には、各電線10が各押圧部55A,55Bにより押圧された状態で幅方向Wに湾曲するようになる。これにより、各電線10の余長が吸収されるとともに、各押圧部55A,55Bが各電線10の外周面に接触した状態が維持される(以上、作用2)。
【0041】
また、各押圧部55A,55Bは、延在方向Lにおいて互いに異なる位置に設けられているため、各電線10は、幅方向Wの一方側に向けて押圧される部分と、幅方向Wの他方側に向けて押圧される部分とが延在方向Lにおいて互いに異なる位置となる。これにより、熱膨脹による余長が各電線10に生じた場合に、延在方向Lの異なる位置において、各電線10が幅方向Wの一方側及び他方側に湾曲することとなる(以上、作用3)。
【0042】
本実施形態の効果について説明する。
(1)電磁シールド部材20は、2本の電線10が収容される溝部30a,30bを有するケース30と、ケース30に取り付けられ、溝部30a,30bを覆うカバー40と、溝部30a,30b内に収容され、各電線10を押圧する複数の押圧機構50とを備える。各押圧機構50は、幅方向Wにおいて対向する一対の対向壁部53を有し、ケース30の底壁31と共に各電線10の外周を囲む壁部51と、壁部51の一対の対向壁部53にそれぞれ設けられ、各電線10を幅方向Wの内側に押圧する押圧部55A,55Bとを有している。
【0043】
こうした構成によれば、上記作用1を奏することから、各電線10の熱が押圧部55A,55Bを含む対向壁部53を介して放熱されやすくなる。
また、上記作用2を奏することから、各電線10に余長が生じた場合であっても、各電線10の熱が押圧部55A,55Bを含む対向壁部53を介して放熱されやすくなる。
【0044】
(2)各押圧部55A,55Bは、延在方向Lにおいて互いに異なる位置に設けられている。
こうした構成によれば、上記作用3を奏することから、各押圧部55A,55Bと各電線10とを密着させながらも、各電線10の余長を好適に吸収することができる。
【0045】
また、上記構成によれば、各押圧部55A,55Bが延在方向Lの異なる位置において幅方向Wの両側から各電線10を押圧する。このため、所定の余長を吸収するために各押圧部55A,55Bが各電線10を押圧する距離は、幅方向Wの一方側にのみ押圧部が設けられた構成において当該押圧部が各電線10を押圧する距離よりも小さくなる。これにより、押圧機構50の一対の対向壁部53同士の間隔、ひいては、押圧機構50の幅方向Wにおける体格を小さくすることができる。
【0046】
(3)各押圧部55A,55Bは、各対向壁部53の一部を切り起こすことによって形成されている。
こうした構成によれば、各押圧部55A,55Bと各対向壁部53とが一体に形成されている。このため、各押圧部55A,55Bが各対向壁部53とは別体に形成された構成と比較して、各押圧部55A,55Bと各対向壁部53との界面における熱抵抗が小さくなる。したがって、各電線10の熱が各押圧部55A,55Bを介して放熱されやすくなる。
【0047】
また、上記構成によれば、別体の押圧部を準備する必要がないため、押圧機構50の部品点数の増加を抑制することができる。
(4)押圧機構50は、各押圧部55A,55Bを各電線10に向けて付勢する付勢部材としての板ばね60を備えている。
【0048】
こうした構成によれば、各押圧部55A,55Bが各板ばね60により各電線10に向けて付勢されているため、熱膨脹による余長が各電線10に生じて各電線10が湾曲した場合には、各押圧部55A,55Bが各電線10の湾曲に追従することで各電線10の外周面に好適に接触するようになる。したがって、各電線10の熱が各押圧部55A,55Bを介して放熱されやすくなる。
【0049】
(5)各押圧部55A,55Bの延在部57には、各電線10のケース30の底壁31からの浮き上がりを規制する規制部58が設けられている。
こうした構成によれば、各押圧部55A,55Bの延在部57に設けられた規制部58により、ケース30の底壁31から各電線10が浮き上がることが抑制される。このため、各電線10とケース30の底壁31とが接触した状態が維持されやすくなる。したがって、各電線10の熱が各押圧部55A,55B及びケース30の底壁31を介して放熱されやすくなる。
【0050】
(6)ワイヤハーネスは、2つの押圧機構50の各押圧部55A,55Bにより押圧される2本の電線10と、電磁シールド部材20とを備えている。
こうした構成によれば、上記効果(1)から効果(5)に準じた効果を奏することができる。
【0051】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
なお、以下の
図6、
図7、及び
図8にそれぞれ示す第1変更例、第2変更例、及び第3変更例において、上記実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すとともに、対応する構成については、「100」、「200」、及び「300」を加算した符号を付すことにより、重複した説明を省略する。
【0052】
・各押圧部55A,55Bは、湾曲部56、延在部57、及び規制部58が一体に形成されるものに限定されない。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、各押圧部155A,155Bを湾曲部156と延在部157とにより構成するとともに、当該押圧部155A,155Bに、規制部158を有し、各電線10に当接する当接部材170を取り付けるようにしてもよい。当接部材170は、延在方向Lに沿って延びる板状の取付部171と、取付部171における頂壁部52側の部分に形成された規制部158とを有している。取付部171の幅方向Wの外側の面であって、延在方向Lの一方側の部分には、延在部157の先端が挿入されるとともに固定される凹部172が形成されている。この場合、板ばね60は、取付部171の幅方向Wの外側の面のうち、凹部172が形成されていない部分を押圧するように設ければよい。
【0053】
ところで、押圧部が押圧機構の対向壁部の一部から切り起こされることにより形成されるとともに、規制部が押圧部と一体に設けられている構成にあっては、押圧部と規制部とを同一の対向壁部から切り起こす必要があるため、規制部の形状の自由度が低下するおそれがある。
【0054】
この点、第1変更例の構成によれば、規制部158を有する当接部材170が各押圧部155A,155Bとは別体に設けられているため、上述した不都合が生じることを抑制できる。
【0055】
・上記第1変更例において、当接部材170は、金属材料からなるものであってもよいし、樹脂材料からなるものであってもよい。また、当接部材170と延在部157とが溶接や接着剤を介した接着などによって固定されていてもよい。
【0056】
・
図7に示すように、規制部58が省略され、湾曲部256と延在部257とにより構成された押圧部255A,255Bを採用することもできる。
・
図8に示すように、対向壁部53とは別体の押圧部355A,355Bを採用することもできる。この場合、各押圧部355A,355Bは、対向壁部53に例えば溶接により固定すればよい。
【0057】
また、こうした構成においては、板ばね60に代えて、各押圧部355A,355Bの延在部357を幅方向Wの内側に向けて付勢するコイルばね360を設けることもできる。
【0058】
・各押圧部55A,55Bは、延在方向Lにおいて同一の位置に設けられていてもよい。
・各押圧機構50は、複数の押圧部55A,55Bを有するものであってもよい。
【0059】
・各押圧機構は、押圧部55Aのみを有するものであってもよいし、押圧部55Bのみを有するものであってもよい。
・押圧部は、壁部51の頂壁部52の一部を切り起こすことによって形成され、各電線10をケース30の底壁31に向けて押圧するものであってもよい。この場合であっても、上記作用1を奏することができるため、各電線10の熱が上記押圧部を含む頂壁部52を介して放熱されやすくなる。
【0060】
・電磁シールド部材20は、アルミニウム合金からなるものに限定されない。他に例えば、ステンレス鋼などからなるものであってもよい。
・電磁シールド部材20は、延在方向Lに互いに間隔をおいて設けられた複数の押圧機構50を備えるものであってもよい。
【0061】
・本発明は、1本の電線10または3本以上の電線10を有するワイヤハーネスに対しても適用することができる。
・ワイヤハーネスの搭載姿勢は上記実施形態における姿勢に限定されず、適宜変更できる。
【0062】
・各電線10は、延在方向Lに直交する面における断面形状が半円状や多角形状など任意の断面形状を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…電線、20…電磁シールド部材、30…ケース、30a…溝部、30b…溝部、31…底壁、32…側壁、35…ブラケット、36…接合部、37…取付部、38…取付孔、40…カバー、41…対向壁、42…側壁、45…ブラケット、46…接合部、47…取付部、48…取付孔、49…逃がし部、50…押圧機構、51…壁部、52…頂壁部、53…対向壁部、55A,155A,255A,355A…押圧部、55B,155B,255B,355B…押圧部、56,156,256,256,356…湾曲部、57,157,257,357…延在部、58,158…規制部、60…板ばね、100…ボルト、101…ナット、170…当接部材、171…取付部、172…凹部、360…コイルばね。