(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20230627BHJP
B23K 26/12 20140101ALI20230627BHJP
B23K 26/323 20140101ALI20230627BHJP
【FI】
B23K26/21 F
B23K26/12
B23K26/323
(21)【出願番号】P 2022199249
(22)【出願日】2022-12-14
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】202210186963.X
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510120045
【氏名又は名称】哈爾濱工業大学
【氏名又は名称原語表記】HAERBIN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
(73)【特許権者】
【識別番号】522486302
【氏名又は名称】哈爾濱工大溶接科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 曦
(72)【発明者】
【氏名】姜 夢
(72)【発明者】
【氏名】陳 彦賓
(72)【発明者】
【氏名】林 泳
(72)【発明者】
【氏名】李 縦躍
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-031451(JP,A)
【文献】特開2021-028072(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110539078(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/12
B23K 26/323
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1:溶接される異種材料の溶接接触面を研磨、酸洗又はレーザー洗浄処理する異種材料の溶接前処理と、
S2:異種材料を真空チャンバ(3)内の操作ステージ(4)に置いてチャック固定し、レーザー装置の出力スポットのサイズ及び形状を調整し、スポットを溶接ビード
を形成すべき箇所(6)の開始点に合わせ、操作ステージ(4)に連結された走行機構を設定することにより、スポットと複合板材の固定軌跡の相対移動を実現しつつ、スポットの走行軌跡が溶接ビード
を形成すべき箇所(6)の全域を覆うように確保するチャック及び溶接機構
の調整と、
S3:前記真空チャンバ(3)を、対応する異種材料の
予想される溶接深さが指定真空度に達するまで真空引き処理した後、同時に、前記真空チャンバ(3)に高純度不活性ガスを充填し、チャンバ内の吸気、抽気の動的バランスを調整し、1000Pa以下の真空環境を得る高真空度環境処理と、
S4
:形成予定の溶接ビー
ドの形状、サイズ及び性能需要に応じて、対応するレーザー加工パラメータを設置する溶接プロセスパラメータの決定であって、前記レーザー加工パラメータは加工速度、レーザーパワー、デフォーカス量、スポット形状、揺動幅及び揺動周波数を含み、揺動幅と低い揺動周波数は、溶け込み深さに影響を与えずにキーホールの開口の大きさを大きくしてレーザーをよりよくキーホールの底部に接触するように確保する溶接プロセスパラメータの決定と、
S5:パラメータの設定動作が完了した後に、真空レーザー
溶接を開始、
溶接が完了した後に、高温溶接ビード(6)の表面と空気の迅速な反応を防止するために、真空チャンバ(3)内の圧力が一定時間内で変化しないように保持し、その後、保護ガス吸気弁、ポンプ群、フラッパ弁を閉じて、大気の圧力になるまで空気吸気弁を開けて、チャンバドアを開けて、溶接された複合板材を取り出し、真空環境での厚みのある複合板材の高品質溶接を完了する溶け込み及びアスペクト比が大きい溶接ビードの溶接とを含む、
ことを特徴とする厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法。
【請求項2】
前記指定真空度の範囲は100~1000Paである、ことを特徴とする請求項1に記載の厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法。
【請求項3】
前記高純度不活性ガスは、水分含有量が1000ppm以下であり、純度が99.9%以上であり、流量が10L/min以下である、ことを特徴とする請求項2に記載の厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法。
【請求項4】
前記レーザーのプロセスパラメータの一部は、溶接速度が0.1m/min~1m/min、溶接パワーが5~50kW、デフォーカス量が-30mm~0mm、スポットの揺動幅が0.1~1mm、揺動周波数が20~150Hzであるように構成される、ことを特徴とする請求項3に記載の厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法。
【請求項5】
前記レーザーのプロセスパラメータの一部は、溶接速度が0.6m/min、レーザーパワーが5kW、デフォーカス量が0mm、スポット形状が溶接方向に垂直である8字形スポット、揺動幅が0.5mm、揺動周波数が100Hzであるように構成される、ことを特徴とする請求項4に記載の厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法。
【請求項6】
溶接が完了した後に、不活性ガスを導入し続けて真空チャンバ(3)内の圧力が変化しないように保持し、持続時間は3min以上である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法を実現するための厚みのある異種材料高品質真空レーザー溶接システムであって、
真空引きするための真空引き機構と、不活性ガスを導入する不活性ガス導入機構と、
高真空度の溶接環境を提供するための真空チャンバ(3)であって、前記真空チャンバ(3)内に、溶接される厚みのある異種材料を挟持するための操作ステージ(4)が設けられ、前記真空チャンバ(3)に、前記真空引き機構に連結され、真空管路内の気流をオン又はオフにするための電子制御フラッパ弁と、不活性ガス導入機構に連結され、不活性ガスの導入をオン又はオフにするための保護ガス吸気弁と、外部環境から真空チャンバ(3)内への空気の導入をオン又はオフにするための空気吸気弁とが設けられる真空チャンバ(3)と、
前記溶接される厚みのある異種材料の運動を実現するための走行機構であって、該走行機構は前記操作ステージ(4)に連結され、複数種の運転動作を行うように前記操作ステージ(4)を動かす走行機構と、
レーザー装置、レーザー溶接ヘッド(5)及びロボットを含む、前記溶接される厚みのある異種材料の溶接ビードにマッチするレーザー溶接ユニットであって、前記ロボットはレーザー溶接ヘッド(5)の揺動を制御し、且つ前記走行機構にマッチし、レーザー装置がマッチしたパワーを出力することによって、溶接される厚みのある異種材料に対する大溶け込みの溶接ビードの一次成形を実現するレーザー溶接ユニットとを含む、ことを特徴とする厚みのある異種材料高品質真空レーザー溶接システム。
【請求項8】
前記真空チャンバ(3)内に気圧センサが設けられる、ことを特徴とする請求項7に記載の厚みのある異種材料高品質真空レーザー溶接システム。
【請求項9】
前記レーザー溶接ユニットの溶接パラメータは、溶接パワーが5~50kW、デフォーカス量が-30mm~0mm、スポットの揺動幅が0.1~1mm、揺動周波数が20~150Hzであるように構成される、ことを特徴とする請求項7に記載の厚みのある異種材料高品質真空レーザー溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接の技術分野に属し、より具体的には、厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
厚みのある異種材料を溶接した後に圧延するのは厚みのある複合板の製造方法としてよく使用されるもので、化学タンカー、圧力容器及びパイプなどの分野に広く使用されている。この接続方法は、異なる材料にそれぞれの優位性を発揮させることができるが、このような複合板を溶接した溶接ビードは一般的に深さが深く、且つ構造が複雑であるため、溶接の難易度が高く、その品質と効率も保証しにくい。そのため、複合板の溶接ビードの品質と溶接効率をどのように向上させるかは、比較的複雑なシステム工程である。
【0003】
中国特許CN105127566Aは厚みのある炭素鋼-ステンレス鋼複合板の完全溶け込み溶接方法を開示しており、該方法はサブマージアーク溶接を用いて多層多パス溶接を行うことで、従来の技術におけるこのような厚みのある板の溶接で中間層に亀裂が発生し、ベース層の根元部をクリーニングしにくく、溶接継手が融合されず、強固でないなどの品質問題を解決し、60~250mmの厚みのある炭素鋼-ステンレス鋼複合鋼板を実現し、且つ溶接継手の品質が優れている。中国特許CN112008194Aは複合鋼板の溶接プロセスを開示しており、該方法は基材と加工した両面U形開先に手動アーク多層溶接法を用いることで、被覆層の母材に浸炭現象が発生することを回避し、複合層粒界腐食の要求を満たして溶接ビードの品質を保証する。しかし、以上の2種の方法は両方とも多層多パス溶接に属し、且つ開先加工が必要であるため、溶接効率が非常に低い。中国特許CN11260916Aは複合鋼板とその爆発溶接の生産方法を開示しており、該方法は爆発溶接を採用し、その複合鋼板は耐食、耐高温、強靭性の整合がよく、全体性能が高い特性を有し、且つ生産方法が簡単で実用的で効率的で便利である。しかし、爆発溶接には一定の危険性があり、特殊な場所の要求が必要で、複雑な構造の複合鋼の接続に適さず、溶接品質も保証しにくい。
【0004】
レーザーは高エネルギービームの一種として、強い透過能力を有し、且つ入熱が低く、溶接変形が小さく、溶接速度が速く、開先の加工が不要で、溶接効率が高いなどの優位性があり、通常の爆発溶接、手動アーク溶接及びサブマージアーク自動溶接などの溶接方法に代わることができるが、大厚み溶接の分野では、レーザー溶接の過程は依然として非常に不安定で、激しいプルーム(plume)と金属蒸気によってレーザーエネルギーが溶接材料により安定的且つ効率的に吸収されないため、理想的な溶接ビード深さを達成することが困難で、レーザー溶接技術の広範な使用が制限される。
【発明の概要】
【0005】
従来のレーザー溶接技術が大厚み溶接の分野で溶接が不安定で、理想的な溶接ビード深さを達成し難い点について、本発明は厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法及びシステムを提供し、該方法は真空環境下で揺動レーザー手段でより深い溶け込み深さを達成するとともに、溶接ビードの規則性を増加させ、フルサイズの溶接ビードの安定性を向上させ、レーザー溶接技術の厚みのある異種材料溶接への使用の突破を実現した。
【0006】
上記の目的を実現するために、本発明は、厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法を提供し、該方法は、
S1:溶接される異種材料の溶接接触面を研磨、酸洗又はレーザー洗浄処理する異種材料の溶接前処理と、
S2:異種材料を真空チャンバ内の操作ステージに置いてチャック固定し、レーザー装置の出力スポットのサイズ及び形状を調整し、スポットを溶接ビードの開始点に合わせ、操作ステージに連結された走行機構を設定することにより、スポットと複合板材の固定軌跡の相対移動を実現しつつ、スポットの走行軌跡が溶接ビードの全域を覆うように確保するチャック及び溶接機構の動的調整と、
S3:前記真空チャンバを、対応する異種材料の溶接溶け込みが指定真空度に達するまで真空引き処理した後、同時に、前記真空チャンバに高純度不活性ガスを充填し、チャンバ内の吸気、抽気の動的バランスを調整し、1000Pa以下の真空環境を得る高真空度環境処理と、
S4:実際の溶接ビード形状、サイズ及び性能需要に応じて、対応するレーザー加工パラメータを設置する溶接プロセスパラメータの決定であって、前記レーザー加工パラメータは加工速度、レーザーパワー、デフォーカス量、スポット形状、揺動幅及び揺動周波数を含み、揺動幅と低い揺動周波数は、溶け込み深さに影響を与えずにキーホールの開口の大きさを大きくしてレーザーをよりよくキーホールの底部に接触するように確保する溶接プロセスパラメータの決定と、
S5:パラメータの設定動作が完了した後に、真空レーザー再溶解表面の改質を開始、再溶解が完了した後に、高温溶接ビードの表面と空気の迅速な反応を防止するために、真空チャンバ内の圧力が一定時間内で変化しないように保持し、その後、保護ガス吸気弁、ポンプ群、フラッパ弁を閉じて、大気の圧力になるまで空気吸気弁を開けて、チャンバドアを開けて、溶接された複合板材を取り出し、真空環境での厚みのある複合板材の高品質溶接を完了する溶け込み及びアスペクト比が大きい溶接ビードの溶接とを含む。
【0007】
さらに、前記指定真空度の範囲は100~1000Paである。
【0008】
さらに、前記高純度不活性ガスは、水分含有量が1000ppm以下であり、純度が99.9%以上であり、流量が10L/min以下である。
【0009】
さらに、前記レーザーのプロセスパラメータの一部は、溶接速度が0.1m/min~1m/min、溶接パワーが5~50kW、デフォーカス量が-30mm~0mm、スポットの揺動幅が0.1~1mm、揺動周波数が20~150Hzであるように構成される。
【0010】
溶接速度が0.6m/min、レーザーパワーが5kW、デフォーカス量が0mm、スポット形状が溶接方向に垂直である8字形スポット、揺動幅が0.5mm、揺動周波数が100Hzである。
【0011】
さらに、再溶解が完了した後に、不活性ガスを導入し続けて真空チャンバ3内の圧力が変化しないように保持し、持続時間は3min以上である。
【0012】
本発明の別の側面によれば、厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接システムをさらに提供し、該システムは、
真空引きするための真空引き機構及び不活性ガスを導入する不活性ガス導入機構と、
高真空度の溶接環境を提供するための真空チャンバであって、前記真空チャンバ内に、溶接される厚みのある異種材料を挟持するための操作ステージが設けられ、前記真空チャンバに、前記真空引き機構に連結され、真空管路内の気流をオン又はオフにするための電子制御フラッパ弁と、不活性ガス導入機構に連結され、不活性ガスの導入をオン又はオフにするための保護ガス吸気弁と、外部環境から真空チャンバ内への空気の導入をオン又はオフにするための空気吸気弁とが設けられる真空チャンバと、
前記溶接される厚みのある異種材料の運動を実現するための走行機構であって、該走行機構は前記操作ステージに連結され、複数種の運転動作を行うように前記操作ステージを動かす走行機構と、
レーザー装置、レーザー溶接ヘッド及びロボットを含む、前記溶接される厚みのある異種材料の溶接ビードにマッチするレーザー溶接ユニットであって、前記ロボットはレーザー溶接ヘッドの揺動を制御し、且つ前記走行機構にマッチし、レーザー装置によってマッチしたパワーを出力し、溶接される厚みのある異種材料に対する大溶け込みの溶接ビードの一次成形を実現するレーザー溶接ユニットとを含む。
【0013】
さらに、前記真空チャンバ内に気圧センサが設けられる。
【0014】
さらに、前記レーザー溶接ユニットの溶接パラメータは、溶接パワーが5~50kW、デフォーカス量が-30mm~0mm、スポットの揺動幅が0.1~1mm、揺動周波数が20~150Hzであるように構成される。
【0015】
概して、本発明によって構想された以上の技術案は、従来の技術と比較して、下記の有益な効果を取得することができる。
【0016】
1.本発明の厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法は、1000Pa以下の真空環境を提供することにより、溶接ビードの溶け込みが常圧環境での溶接ビードの溶け込みの倍になり、同じレーザーパワー条件下でより深い溶け込み深さを達成し、大溶け込みの溶接ビードの一次成形を実現し、溶接効率を大幅に向上させることができ、且つ溶接ビードのアスペクト比がより高く、3:1に達することができ、アークと通常のレーザー溶接に比べて、より小さい入熱で等軸晶の成長を促進し、溶接ビードの強度を向上させ、さらに低い溶接速度、高いレーザーパワー及び一定範囲内のデフォーカス量を選択して溶け込み深さを増加させる。真空環境下で揺動レーザー手段を加えることで、従来の揺動レーザー溶接の溶け込み能力の束縛を打ち破り、小さい揺動幅と低い揺動周波数で溶け込み深さに影響を与えずにキーホールの開口の大きさを大きくしてレーザーをよりよくキーホールの底部に接触させ、溶け込みを増加させる効果を達成することができ、また、揺動レーザーにより、溶接ビードの規則性を増加させ、フルサイズの溶接ビードの安定性を向上させ、レーザー溶接技術の厚みのある異種材料溶接への使用の突破を実現する。
【0017】
2.本発明の厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法は、真空環境下で溶接することにより、環境中の酸素含有量を低減し、金属の酸化反応を抑制し、気孔の発生を効果的に抑制することができる。さらに、真空環境は、溶接過程におけるプラズマプルーム及び金属飛散の発生を抑制し、レーザーエネルギーを複合鋼板に安定的に吸収させ、溶接可能な深さを向上させる。
【0018】
3.本発明の厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法は、レーザーを用いて熱源として厚みのある複合異種材料を溶接することにより、その光源の溶け込み能力が強く、形式が多様で、ビームは多種のパラメータを調整することでエネルギー場同調を行うことができ、複雑な構造を加工する自由度がより高く、より柔軟であり、大厚み溶接の一次成形を実現することができる。溶接ビードの形状に応じて異なるレーザー溶接ヘッドを選択し、レーザーのデフォーカス量、揺動方式、スポット形状及びレーザーの波長などを設定し、溶接ビード深さに応じてレーザーパワー、溶接速度及び揺動幅などを調整することにより、複数種の異なる材質及び構造の厚みのある異種材料の溶接成形に適用することができる。従来のアーク溶接よりも効率が高く、制御可能性が強く、溶接品質が高い。爆発溶接よりも安全で環境にやさしく、場所の要求が小さい。電子ビーム溶接よりも低コストで複雑な構造への適応性が高い。
【0019】
4.本発明の厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法は、複合板材の溶接前処理により、ベース層板材と被覆層板材との重ね合わせ面の清浄度を保証し、表面汚れ、酸化層などの要因による欠陥の確率が低減する。組立治具、真空チャンバのサイズ、走行機構などの外部設備は具体的な加工ワークのサイズ、加工ワークの構造、加工軌跡などの具体的な状況に応じて柔軟に選択することができ、複雑な構造と厚みのある異種材料の高品質溶接成形を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例における厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法のフロー模式図である。
【
図2】本発明の実施例における厚みのある異種材料高品質真空レーザー溶接システムの構造模式図である。
【
図3】本発明の実施例における真空環境と常圧環境でのレーザー溶接の横断面の比較図である。
【
図4】本発明の実施例における真空レーザー溶接した複合鋼板の表面溶接ビードの金相図である。
【
図5】本発明の実施例における真空レーザー溶接した複合鋼板の溶接ビードの横断面の金相図である。
【
図6】本発明の実施例における真空レーザー溶接した複合鋼板の溶接ビードの縦断面の金相図である。
【0021】
符号の説明
すべての図面において、同じ符号は同じ技術的特徴を示し、具体的には次のとおりである。1-ベース層板材、2-被覆層板材、3-真空チャンバ、4-操作ステージ、5-レーザー溶接ヘッド、6-溶接ビード。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明らかで明確にするために、以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。ここで説明される具体的実施例は本発明を説明するためのものにすぎず、本発明を限定するためのものではないことを理解すべきである。また、以下に説明する本発明の各実施形態に係る技術的特徴は、互いに衝突しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0023】
図1に示すように、本発明は厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法を提供し、該方法は、レーザーと真空環境を組み合わせて厚みのある複合板の溶接効率及び品質を向上させ、レーザー光源の調整手段の多様化などの特徴により、溶接ビード継手の成形及びその内部結晶組織分布の効果を調整して制御し、複雑な構造の厚みのある複合材料の高品質接続を実現し、該方法は、
S1:溶接される異種材料の溶接接触面を研磨、酸洗又はレーザー洗浄処理する異種材料の溶接前処理と、
S2:異種材料を真空チャンバ3内の操作ステージ4に置いてチャック固定し、レーザー装置の出力スポットのサイズ及び形状を調整し、スポットを溶接ビード6の開始点に合わせ、操作ステージ4に連結された走行機構を設定することにより、スポットと複合板材の固定軌跡の相対移動を実現しつつ、スポットの走行軌跡が溶接ビード6の全域を覆うように確保するチャック及び溶接機構の動的調整と、
S3:前記真空チャンバ3に対して、対応する異種材料の溶接溶け込みが指定真空度に達するまで真空引き処理した後、同時に、前記真空チャンバ3に高純度不活性ガスを充填し、チャンバ内の吸気、抽気の動的バランスを調整し、1000Pa以下の真空環境を得る高真空度環境処理と、
S4:実際の溶接ビード6の形状、サイズ及び性能需要に応じて、対応するレーザー加工パラメータを設置する溶接プロセスパラメータの決定であって、前記レーザー加工パラメータは加工速度、レーザーパワー、デフォーカス量、スポット形状、揺動幅及び揺動周波数を含み、揺動幅と低い揺動周波数は、溶け込み深さに影響を与えずにキーホールの開口の大きさを大きくしてレーザーをよりよくキーホールの底部に接触するように確保する溶接プロセスパラメータの決定と、
S5:パラメータの設定動作が完了した後に、真空レーザー再溶解表面の改質を開始し、再溶解が完了した後に、高温溶接ビード6の表面と空気の迅速な反応を防止するために、真空チャンバ3内の圧力が一定時間内で変化しないように保持し、その後、保護ガス吸気弁、ポンプ群、フラッパ弁を閉じて、大気の圧力になるまで空気吸気弁を開けて、チャンバドアを開けて、溶接された複合板材を取り出し、真空環境での厚みのある複合板材の高品質溶接を完了する溶け込み及びアスペクト比が大きい溶接ビードの溶接とを含む。
【0024】
ステップS1において、前記異種材料はベース層板材1と被覆層板材2とを含み、処理時にベース層板材1と被覆層板材2の溶接される領域の表面の油膜、汚れ、酸化などのレーザー溶接を阻害する不純物を除去し、溶接領域のレーザーエネルギーに対する吸収効果の低下による溶接効果に影響することを回避する。
【0025】
ステップS2において、前記は平板の突き合わせに限らず、直方体、筒体、厚み変更などの比較的複雑な構造で突き合わせを行い、操作ステージ4に設けられた対応する治具で両者をチャック固定した後に、次の溶接動作を行ってもよい。前記操作ステージ4に連結された走行機構は、複数種の加工方式に適応可能であり、3次元の協働直線変位、回転、反転などを含む運転動作を行い、協働治具で複合板材の運動軌跡とレーザースポットの相対移動を実現し、溶接ビード6の始点から終点までスポットの相対運動軌跡に覆われることができる。ステップS3において、前記真空チャンバ3のサイズ、形式は実際の必要に応じて調整可能であり、前記指定真空度は100~1000Paにあるべきであり、好ましくは、前記指定真空度は300~800Paにあり、好ましくは、前記指定真空度は500~700Paにある。前記乾燥した高純度不活性ガスは、水分含有量が1000ppm以下、純度が99.9%以上、流量が10L/min以下でなければならない。
【0026】
ステップS4において、前記レーザーのプロセスパラメータの一部は、次のように構成される。
溶接速度は0.1m/min~1m/min、好ましくは、前記溶接速度は0.3m/min~0.8m/min、好ましくは、前記溶接速度は0.5m/min~0.7m/minであり、
溶接パワーは5~50kW、好ましくは、前記溶接パワーは5~30kW、好ましくは、前記溶接パワーは5~20kW、好ましくは、前記溶接パワーは5~10kWであり、
デフォーカス量は-30mm~0mm、好ましくは、前記デフォーカス量は-20mm~0mm、好ましくは、前記デフォーカス量は-10mm~0mm、好ましくは、前記デフォーカス量は-5mm~-0mmであり、
スポットの揺動幅は0.1~1mm、好ましくは、前記スポットの揺動幅は0.3~0.8mm、好ましくは、前記スポットの揺動幅は0.3~0.5mmであり、
揺動周波数は20~150Hz、好ましくは、前記揺動周波数は40~130Hz、好ましくは、前記揺動周波数は60~120Hz、好ましくは、前記揺動周波数は80~110Hzであり、
他のパラメータはレーザー溶接ヘッドの機能及び溶接ビードの要求に応じて独立して選択可能である。
【0027】
ステップS5において、高温溶接ビード6の表面が空気に酸化することによる溶接強度の低下を回避するために、真空チャンバ3内に不活性ガスを導入し続けて圧力が変化しないように保持し、圧力が変化しない持続時間は3min以上である。
【0028】
本発明の実施例において、1000Pa以下の真空環境を提供することにより、溶接ビードの溶け込みが常圧環境での溶接ビードの溶け込みよりも倍になり、限られたレーザーパワー条件下でより大きな溶け込み深さを達成し、大溶け込みの溶接ビードの一次成形を実現し、溶接効率を大幅に向上させることができ、また、レーザー溶接機構は、ロボットによってレーザー溶接ヘッドを高精度に制御し、溶接される異種材料の運動方向と垂直である方向の揺動を実現し、且つその揺動の幅は異種材料の種類、板材の厚みによって適応的な調整を実現することができ、これにより、溶接ビードの幅を広くし、高真空度環境に配合し、溶接ビードのアスペクト比がより高く、3:1に達することができ、アークと通常のレーザー溶接に比べて、より小さい入熱は等軸晶の成長を促進し、溶接ビードの強度を向上させる。さらに、本発明の走行機構と真空レーザー溶接機構の運動は制御システムによって同期制御が実現され、特に異なる種類の異種材料、異なる厚みの材料に対して、計算分析によってその回転速度が決定され、異なるレーザー揺動幅の値にマッチし、真空環境下で揺動レーザーを加える手段は、従来の揺動レーザー溶接の溶け込み能力の束縛を打ち破り、小さい揺動幅と低い揺動周波数は、溶け込み深さに影響を与えずにキーホールの開口の大きさを大きくしてレーザーをよりよくキーホールの底部に接触させ、溶け込みを増加させる効果を達成することができる。
【0029】
図2に示すように、本発明の1つの側面によれば、厚みのある異種材料の高品質真空レーザー溶接方法の実施と配合するために、厚みのある異種材料高品質真空レーザー溶接システムをさらに提供し、該システムは真空チャンバ3とレーザー溶接ユニットとを含み、真空チャンバ3に、複合板材を入れて取り出すためのチャンバドアが設けられ、真空チャンバ3内に操作台が設けられ、前記操作台に溶接されるベース層板材1と被覆層板材2をクランプ固定するための治具が設けられ、前記操作台は走行機構に連結され、走行機構によって複数種の運転動作を行うように動かし、前記真空チャンバ3に空気吸気弁、電子制御フラッパ弁、保護ガス吸気弁及び気圧センサがさらに設けられ、前記空気弁は外部環境から真空チャンバ3内への空気の導入をオン又はオフにするために用いられ、前記電子制御フラッパ弁は真空管路内の気流をオン又はオフにするために用いられ、真空引き機構は電子制御フラッパ弁によって真空チャンバ3内を真空状態に引き出すことができ、前記保護ガス吸気弁は不活性ガスを導入するために使用可能であり、制御システムの制御で不活性ガス導入機構が保護ガス吸気弁によって真空チャンバ3内に設置された流量の不活性ガスを導入し、気圧センサが真空チャンバ3の内部圧力を検出することにより真空引き機構を制御して真空チャンバ3の圧力値を要求範囲内になるまで真空引きしながら、不活性ガスが保護ガス吸気弁により導入された後に、真空チャンバ3内の吸気、抽気の動的バランスに指示を提供する。前記レーザー装置ユニットはレーザー装置、レーザー溶接ヘッド5及びロボットを含み、レーザー装置は実際の必要に応じて、ファイバーレーザー、半導体レーザー、CO
2などのタイプを含む異なるレーザー装置を選択し、レーザー装置溶接ヘッド5はロボットに設けられ、ロボットにより、溶接角度及び姿勢を調整して複合材料を溶接し、前記レーザー装置溶接ヘッドは必要に応じて真空チャンバ3のチャンバ内又はチャンバ外に設けられてもよく、シングルレーザーヘッド、揺動レーザーヘッド、パルスレーザーヘッドなどのタイプを選択してもよい。ロボットとレーザー装置溶接ヘッドと配合することで、溶接ビード6に合わせるとともに、レーザー溶接ヘッド5は出射するレーザービームのスポット形状及びサイズを調整することができ、真空環境と不活性ガスと配合して、銅、アルミニウムなどの材料の高反射率を克服し、これにより、広い加工ウィンドウを有する安定した状態を形成し、溶接時に発生する金属蒸気を効果的に抑制することができ、プラズマプルーム現象を抑制し、スラグの飛散の発生を制御することに寄与する。溶接時、レーザービームの揺動幅と周波数を設定することにより、ロボットはレーザー装置の溶接ヘッド5を揺動させることで溶接幅と溶け込みを変更することができ、揺動幅の増加に伴い、溶接ビードの形状が従来の釘の先端の形状から矩形になり、大きな溶接接触面積が発生し、溶接継手における抵抗が減少し、良好な機械的接続性能を提供することができる。従来のレーザー溶接では高精度の治具が必要であることに対して、ロボットによってレーザー装置の溶接ヘッドと配合して揺動溶接を行うことにより、溶接される材料のチャック要求が大幅に低減し、許容可能な溶接ビード隙間とズレは一般的なレーザー溶接要求の2~3倍である。
【0030】
実施例1
本発明の具体的実施例1において、用意される異種材料の厚みは炭素鋼が20mm、ステンレス鋼が60mmであり、要求される溶接ビード深さが10mm以上であり、溶接方法は次のとおりである。
S1:異種材料の溶接前処理:ベース層板材(炭素鋼)1と被覆層鋼板(ステンレス鋼)2の溶接される領域の表面をレーザー洗浄し、表面の油汚れ、酸化層及び錆びを除去し、
S2:チャック及び溶接機構の動的調整:異種材料を真空チャンバ3内の操作ステージ4に置いてチャック固定し、レーザー装置の出力スポットのサイズ及び形状を調整し、スポットを溶接ビード6の開始点に合わせ、操作ステージ4に連結された走行機構を設定することにより、スポットと複合板材の固定軌跡の相対移動を実現しつつ、スポットの走行軌跡が溶接ビード6の全域を覆うように確保し、
S3:高真空度環境処理:前記真空チャンバ3を、対応する異種材料の溶接溶け込みが指定真空度に達するまで真空引き処理した後、同時に、前記真空チャンバ3に高純度不活性ガスを充填し、チャンバ内の吸気、抽気の動的バランスを調整し、1000Paの真空環境を得て、
S4:溶接プロセスパラメータの決定:実際の溶接ビード6の形状、サイズ及び性能需要に応じて、対応するレーザー加工パラメータを設置し、溶接速度を0.6m/min、レーザーパワーを5kW、デフォーカス量を0mm、スポット形状を溶接方向に垂直である8字形スポット、揺動幅を0.5mm、揺動周波数を100Hzにし、溶け込み深さに影響を与えずにキーホールの開口の大きさを大きくしてレーザーをよりよくキーホールの底部に接触するように確保し、
S5:溶け込み及びアスペクト比が大きい溶接ビードの溶接:パラメータの設定動作が完了した後に、真空レーザー再溶解表面の改質を開始し、再溶解が完了した後に、高温溶接ビード6の表面と空気の迅速な反応を防止するために、真空チャンバ3内の圧力が一定時間内で変化しないように保持し、その後、保護ガス吸気弁、ポンプ群、フラッパ弁を閉じて、大気の圧力になるまで空気吸気弁を開けて、チャンバドアを開けて、溶接された複合板材を取り出し、真空環境での厚みのある複合板材の高品質溶接を完了した。
【0031】
実施例2
本発明の具体的実施例2において、用意される異種材料の厚みは炭素鋼が60mm、ステンレス鋼が160mmで、要求される溶接ビード深さは50mmで、溶接方法は次のとおりである。
S1:異種材料の溶接前処理:ベース層板材(炭素鋼)1と被覆層鋼板(ステンレス鋼)2の溶接される領域の表面をレーザー洗浄し、表面の油汚れ、酸化層及び錆びを除去し、
S2:チャック及び溶接機構の動的調整:異種材料を真空チャンバ3内の操作ステージ4に置いてチャック固定し、レーザー装置の出力スポットのサイズ及び形状を調整し、スポットを溶接ビード6の開始点に合わせ、操作ステージ4に連結された走行機構を設定することにより、スポットと複合板材の固定軌跡の相対移動を実現しつつ、スポットの走行軌跡が溶接ビード6の全域を覆うように確保し、
S3:高真空度環境処理:前記真空チャンバ3を、対応する異種材料の溶接溶け込みが指定真空度に達するまで真空引き処理した後、同時に、前記真空チャンバ3に高純度不活性ガスを充填し、チャンバ内の吸気、抽気の動的バランスを調整し、100Paの真空環境を得て、
S4:溶接プロセスパラメータの決定:実際の溶接ビード6の形状、サイズ及び性能需要に応じて、対応するレーザー加工パラメータを設置し、溶接速度を0.1m/min、レーザーパワーを25kW、デフォーカス量を-20mm、スポット形状を溶接方向に垂直である8字形スポット、揺動幅を1mm、揺動周波数を100Hzにし、溶け込み深さに影響を与えずにキーホールの開口の大きさを大きくしてレーザーをよりよくキーホールの底部に接触するように確保し、
S5:溶け込み及びアスペクト比が大きい溶接ビードの溶接:パラメータの設定動作が完了した後に、真空レーザー再溶解表面の改質を開始し、再溶解が完了した後に、高温溶接ビード6の表面と空気の迅速な反応を防止するために、真空チャンバ3内の圧力が一定時間内で変化しないように保持し、その後、保護ガス吸気弁、ポンプ群、フラッパ弁を閉じて、大気の圧力になるまで空気吸気弁を開けて、チャンバドアを開けて、溶接された複合板材を取り出し、真空環境での厚みのある複合板材の高品質溶接を完了した。
【0032】
実施例3
本発明の具体的実施例3において、用意される異種材料の厚みは炭素鋼が30mm、ステンレス鋼が100mmで、要求される溶接ビード深さは30mmで、溶接方法は次のとおりである。
S1:異種材料の溶接前処理:ベース層板材(炭素鋼)1と被覆層鋼板(ステンレス鋼)2の溶接される領域の表面をレーザー洗浄し、表面の油汚れ、酸化層及び錆びを除去し、
S2:チャック及び溶接機構の動的調整:異種材料を真空チャンバ3内の操作ステージ4に置いてチャック固定し、レーザー装置の出力スポットのサイズ及び形状を調整し、スポットを溶接ビード6の開始点に合わせ、操作ステージ4に連結された走行機構を設定することにより、スポットと複合板材の固定軌跡の相対移動を実現しつつ、スポットの走行軌跡が溶接ビード6の全域を覆うように確保し、
S3:高真空度環境処理:前記真空チャンバ3を、対応する異種材料の溶接溶け込みが指定真空度に達するまで真空引き処理した後、同時に、前記真空チャンバ3に高純度不活性ガスを充填し、チャンバ内の吸気、抽気の動的バランスを調整し、600Paの真空環境を得て、
S4:溶接プロセスパラメータの決定:実際の溶接ビード6の形状、サイズ及び性能需要に応じて、対応するレーザー加工パラメータを設置し、溶接速度を0.3m/min、レーザーパワーを15kW、デフォーカス量を-15mm、スポット形状を溶接方向に垂直である8字形スポット、揺動幅を0.6mm、揺動周波数を80Hzにし、溶け込み深さに影響を与えずにキーホールの開口の大きさを大きくしてレーザーをよりよくキーホールの底部に接触するように確保し、
S5:溶け込み及びアスペクト比が大きい溶接ビードの溶接:パラメータの設定動作が完了した後に、真空レーザー再溶解表面の改質を開始し、再溶解が完了した後に、高温溶接ビード6の表面と空気の迅速な反応を防止するために、真空チャンバ3内の圧力が一定時間内で変化しないように保持し、その後、保護ガス吸気弁、ポンプ群、フラッパ弁を閉じて、大気の圧力になるまで空気吸気弁を開けて、チャンバドアを開けて、溶接された複合板材を取り出し、真空環境での厚みのある複合板材の高品質溶接を完了した。
【0033】
実施例4
本発明の具体的実施例4において、用意される異種材料の厚みは炭素鋼が40mm、ステンレス鋼が140mmで、要求される溶接ビード深さは20mmで、溶接方法は次のとおりである。
S1:異種材料の溶接前処理:ベース層板材(炭素鋼)1と被覆層鋼板(ステンレス鋼)2の溶接される領域の表面をレーザー洗浄し、表面の油汚れ、酸化層及び錆びを除去し、
S2:チャック及び溶接機構の動的調整:異種材料を真空チャンバ3内の操作ステージ4に置いてチャック固定し、レーザー装置の出力スポットのサイズ及び形状を調整し、スポットを溶接ビード6の開始点に合わせ、操作ステージ4に連結された走行機構を設定することにより、スポットと複合板材の固定軌跡の相対移動を実現しつつ、スポットの走行軌跡が溶接ビード6の全域を覆うように確保し、
S3:高真空度環境処理:前記真空チャンバ3を、対応する異種材料の溶接溶け込みが指定真空度に達するまで真空引き処理した後、同時に、前記真空チャンバ3に高純度不活性ガスを充填し、チャンバ内の吸気、抽気の動的バランスを調整し、1000Paの真空環境を得て、
S4:溶接プロセスパラメータの決定:実際の溶接ビード6の形状、サイズ及び性能需要に応じて、対応するレーザー加工パラメータを設置し、溶接速度を0.6m/min、レーザーパワーを10kW、デフォーカス量を-8mm、スポット形状を溶接方向に垂直である8字形スポット、揺動幅を0.3mm、揺動周波数を100Hzにし、溶け込み深さに影響を与えずにキーホールの開口の大きさを大きくしてレーザーをよりよくキーホールの底部に接触するように確保し、
S5:溶け込み及びアスペクト比が大きい溶接ビードの溶接:パラメータの設定動作が完了した後に、真空レーザー再溶解表面の改質を開始、再溶解が完了した後に、高温溶接ビード6の表面と空気の迅速な反応を防止するために、真空チャンバ3内の圧力が一定時間内で変化しないように保持し、その後、保護ガス吸気弁、ポンプ群、フラッパ弁を閉じて、大気の圧力になるまで空気吸気弁を開けて、チャンバドアを開けて、溶接された複合板材を取り出し、真空環境での厚みのある複合板材の高品質溶接を完了した。
【0034】
図3に示すように、真空環境下、溶接速度が0.6m/minであるとき、6kWのレーザーパワーで12mmの溶接ビードの深さを実現可能であり、真空溶接プロセスでの溶接ビードの深さは常圧レーザー溶接の3倍に近い。
【0035】
図4~6に示すように、本発明の実施例において、複合鋼板の真空レーザー溶接した溶接ビードの表面、横断面及び縦断面の金相写真から、溶接ビードの表面に金属光沢を呈し、且つ連続的に安定していることがわかた。揺動レーザーによる溶接ビードの横断面のアスペクト比は3:1以上に達し、溶接ビードの縦断面の平均深さは10mm以上に達することができ、且つ安定的で連続的であり、気孔がなかった。この方法は複合鋼板の高品質一次溶接成形を実現し、溶接効率を大幅に向上させた。
【0036】
本発明の実施例において、複合板材の溶接前処理により、ベース層板材と被覆層板材との重ね合わせ面の清浄度を保証し、表面汚れ、酸化層などの要因による欠陥の確率が低減した。組立治具、真空チャンバのサイズ、走行機構などの外部設備は具体的な加工ワークのサイズ、加工ワークの構造、加工軌跡などの具体的な状況に応じて柔軟に選択することができ、複雑な構造の厚みのある異種材料の高品質接続を実現することができる。
【0037】
本発明の実施例において、真空環境下で溶接することにより、環境中の酸素含有量を低減し、金属の酸化反応を抑制し、気孔の発生を効果的に抑制することができる。同時に、真空環境は、溶接過程におけるプラズマプルーム及び金属飛散の発生を抑制し、レーザーエネルギーを複合鋼板に安定的に吸収させ、溶接可能な深さを向上させる。真空環境での圧力の低下は、沸点の低下、反跳圧力の増加を含む材料の基本的な特性の変化を招くとともに、熱伝導方式も変化し、最終的に溶融池の凝固過程の温度勾配の低下を招き、溶接ビード組織を等軸晶成長させる傾向がある。
【0038】
本発明の実施例において、レーザーを用いて熱源として厚みのある複合異種材料を溶接することにより、その光源の溶け込み能力が強く、形式が多様であり、ビームは多種のパラメータを調整することでエネルギー場同調を行うことができ、複雑な構造を加工する自由度がより高く、より柔軟であり、大厚み溶接の一次成形を実現することができ、溶接ビードの形状要求に応じて異なるレーザー溶接ヘッドを選択してレーザーのデフォーカス量、揺動方式、スポット形状及びレーザー波長などを設計することができ、溶接ビードの深さに応じてレーザーパワー、溶接速度及び揺動幅などを調整することができ、組織構造又はサイズの要求に応じて、揺動レーザー又は他の方式で温度場を調整して組織の構造及びサイズに影響することができる。これにより、特定のサイズ、形状、性能要求の溶接継手を得ることができる。従来のアーク溶接よりも効率が高く、制御可能性が強く、溶接品質が高い。爆発溶接よりも安全で環境にやさしく、場所の要求が小さい。電子ビーム溶接よりも低コストで複雑な構造への適応性が高い。
【0039】
当業者は、上記は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するためのものではなく、本発明の精神と原則の範囲内で行われたいかなる修正、同等の置換及び改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきであることを容易に理解する。
【要約】
【課題】大きな溶け込み深さおよび大溶け込みの溶接ビードの一次成形を実現し、溶接効率を向上させるための不等厚板材の真空揺動レーザー溶接方法及びシステムの提供。
【解決手段】本発明は、真空レーザー溶接方法及びシステムを開示し、該方法は、ベース層板材と被覆層板材を真空チャンバ内の操作ステージに配置して溶接される複合板材を組み立てチャック固定し、真空チャンバ内の空気を真空引きし、不活性ガスを導入し、実際の必要に応じて、溶接パラメータを設定し、真空チャンバ内に設けられた走行機構は、溶接ビードがスポットの相対運動軌跡で覆われるように操作ステージを動かし、真空環境下でレーザー再溶解によって溶接ビードを表面改質し、溶け込み深さを増加させ、溶接ビードの強度を向上させ、溶接が完了した後に不活性ガスを導入し続け、圧力が一定の時間内で変化しないように保持し、空気を導入した後にチャンバドアを開け、溶接動作を完了する。
【選択図】
図1