(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】マルチレバー式駐輪ロック装置
(51)【国際特許分類】
B62H 5/16 20060101AFI20230627BHJP
B62H 3/08 20060101ALI20230627BHJP
E05B 71/00 20060101ALI20230627BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20230627BHJP
E05B 47/06 20060101ALI20230627BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B62H5/16
B62H3/08
E05B71/00 Z
E05B47/00 R
E05B47/06 A
E04H6/42 G
(21)【出願番号】P 2019070019
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】597021598
【氏名又は名称】株式会社イケヤフォ-ミュラ
(73)【特許権者】
【識別番号】597056512
【氏名又は名称】三井不動産リアルティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】池谷 信二
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-61960(JP,A)
【文献】特開2012-112144(JP,A)
【文献】特開2013-86520(JP,A)
【文献】特開2013-147207(JP,A)
【文献】特開2010-111293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0178446(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0959072(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 3/00- 3/12
B62H 5/00- 5/20
E04H 6/42
E05B 71/00
E05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を収容可能な車輪保持部に設けられ前記車輪をロックするためのマルチレバー式駐輪ロック装置であって、
前記車輪保持部に対し可動支持され、アーム待機位置で前記車輪の収納を可能にし前記アーム待機位置からアームロック位置へ移動可能なロックアームと、
前記車輪保持部に対し可動支持されると共にレバー待機位置へ向けて付勢され、前記レバー待機位置で前記車輪保持部内に配置され前記車輪からの荷重を受けて前記レバー待機位置からレバーロック位置へ移動するロックレバーと、
前記ロックレバーが前記レバーロック位置へ移動するときに前記ロックアームを連携させて前記アームロック位置へ移動させて前記レバーロック位置の前記ロックレバーに前記車輪保持部内で対向させる
連携部と、
前記ロックレバーが前記レバーロック位置のときに前記アームロック位置に前記ロックアームをロックするロック機構と、
を備え、
前記連携部は、前記ロックアームが前記アームロック位置へ移動するときに前記レバー待機位置にあるロックレバーを連携させない、
ことを特徴とするマルチレバー式駐輪ロック装置。
【請求項2】
請求項1のマルチレバー式駐輪ロック装置であって、
前記ロックレバーのレバーロック位置を検出する検出部を備え、
前記ロック機構は、前記検出部での検出に応じ前記ロックを行う、
ことを特徴とするマルチレバー式駐輪ロック装置。
【請求項3】
請求項1又は2のマルチレバー式駐輪ロック装置であって、
前記ロック機構は、前記ロックアームの係合部と、前記ロックアームに対して進退可能に支持されたロック部材と、前記ロック部材を前記係合部から退避させるように付勢する弾性部と、前記ロック部材を前記係合部に係合するロック位置へ移動させる移動体と、前記移動体を駆動しロック解除位置へ前記移動体を戻して待機させ得るアクチュエーターと、
を備えることを特徴とするマルチレバー式駐輪ロック装置。
【請求項4】
請求項1~3のマルチレバー式駐輪ロック装置であって、
前記アームロック位置のロックアームと前記レバー待機位置のロックレバーとの間の間隔は、自転車のタイヤ高さよりも小さ
く、
前記タイヤ高さは、前記自転車のタイヤ及びリム高を含むリムの内径とタイヤの外径との差の1/2である、
ことを特徴とするマルチレバー式駐輪ロック装置。
【請求項5】
請求項1~4のマルチレバー式駐輪ロック装置であって、
前記ロックアームは、前記アーム待機位置に向けて付勢されている、
ことを特徴とするマルチレバー式駐輪ロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車等の車輪をロックして駐輪させるマルチレバー式駐輪ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駐輪場等に置かれる自転車等の駐輪ロック装置において、従来、特許文献1に示すものがある。
【0003】
この駐輪ロック装置は、二股状のアーム及びラチェット機構のラックを有するロックアームと、回転禁止爪を有するロックレバーと、ロック解除部とを有している。
【0004】
ロックアームが回転して車輪をロックし、ロックアーム自体は、周辺のラックにロックレバーの回転禁止爪が係合することによりロック可能となる。
【0005】
かかる従来の駐輪ロック装置は、自転車の車重によりロックアームが自動的に回転してロックされるため、無賃の不正駐輪を防止することが可能となる。
【0006】
しかし、事前にロックアームを回転させてロックさせ、この状態でロックアームの上に車輪を載せる不正駐輪が問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、駐輪ロック装置において、事前にロックさせたロックアームの上に車輪を載せる不正駐輪が可能であった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車輪を収容可能な車輪保持部に設けられ前記車輪をロックするためのマルチレバー式駐輪ロック装置であって、前記車輪保持部に対し可動支持され、待機位置で前記車輪の収納を可能にし前記待機位置からロック位置へ移動可能なロックアームと、前記車輪保持部に対し可動支持され、待機位置で前記車輪保持部内に配置され前記車輪からの荷重を受けて前記待機位置からロック位置へ移動するロックレバーと、前記ロックレバーが前記ロック位置へ移動するときに前記ロックアームを連携させて前記ロックアームを前記ロック位置へ移動させて前記ロックレバーに前記車輪保持部内で対向させる連携部と、前記ロックレバーが前記ロック位置のときに前記ロックアームをロックするロック機構とを備え、前記連携部は、前記ロックアームが前記アームロック位置へ移動するときに前記レバー待機位置にあるロックレバーを連携させないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のマルチレバー式駐輪ロック装置は、ロックアームのみをロック位置へ移動させても、ロックレバーがレバーロック位置とならずにロックアームがロックされないため、事前にロックさせたロックアームの上に車輪を載せる不正駐輪を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】マルチレバー式駐輪ロック装置を備えた駐輪装置の一部を断面にした側面図である。(実施例)
【
図2】マルチレバー式駐輪ロック装置の側面図である。(実施例)
【
図3】マルチレバー式駐輪ロック装置の正面図である。(実施例)
【
図4】マルチレバー式駐輪ロック装置の背面図である。(実施例)
【
図5】ロックアームを主に示す正面図である。(実施例)
【
図6】ロックレバーを主に示す正面図である。(実施例)
【
図7】空車待機状態に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。(実施例)
【
図8】車両入庫状態に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。(実施例)
【
図9】清算/待機状態に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。(実施例)
【
図10】清算/待機状態に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。(実施例)
【
図11】出庫状態に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。(実施例)
【
図12】不正駐輪の説明に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。(実施例)
【
図13】他の不正駐輪の説明に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、不正駐輪を規制するという目的を以下のマルチレバー式駐輪ロック装置により実現した。
【0013】
車輪を収容可能な車輪保持部に設けられ車輪をロックするためのマルチレバー式駐輪ロック装置であって、車輪保持部に対し可動支持され、アーム待機位置で車輪の収納を可能にしアーム待機位置からアームロック位置へ移動可能なロックアームと、車輪保持部に対し可動支持されると共にレバー待機位置へ向けて付勢され、レバー待機位置で車輪保持部内に配置され車輪からの荷重を受けてレバー待機位置からレバーロック位置へ移動するロックレバーと、ロックレバーがレバーロック位置へ移動するときにロックアームを連携させてアームロック位置へ移動させてレバーロック位置のロックレバーに車輪保持部内で対向させる連携部と、前記ロックレバーが前記ロック位置のときに前記ロックアームをロックするロック機構とを備え、前記連携部は、前記ロックアームが前記アームロック位置へ移動するときに前記レバー待機位置にあるロックレバーを連携させない.
【0014】
ロックレバーのレバーロック位置を検出する検出部を備え、ロック機構は、検出部での検出に応じロックを行う。
【0015】
ロック機構は、ロックアームの係合部と、ロックアームに対して進退可能に支持されたロック部材と、ロック部材を係合部から退避させるように付勢する弾性部と、ロック部材を係合部に係合するロック位置へ移動させる移動体と、移動体を駆動しロック解除位置へ移動体を戻して待機させ得るアクチュエーターとを備える。
【0016】
前記アームロック位置のロックアームと前記レバー待機位置のロックレバーとの間の間隔は、自転車のタイヤ高さよりも小さく、前記タイヤ高さは、前記自転車のタイヤ及びリム高を含むリムの内径とタイヤの外径との差の1/2である。
【0017】
ロックアームは、アーム待機位置に向けて付勢されている。
【実施例】
【0018】
[マルチレバー式駐輪ロック装置]
図1は、マルチレバー式駐輪ロック装置を備えた駐輪装置の一部を断面にした側面図である。
図2は、マルチレバー式駐輪ロック装置の側面図である。
図3は、マルチレバー式駐輪ロック装置を示す正面図である。
図4は、マルチレバー式駐輪ロック装置の背面図である。
図5は、ロックアームを主に示す正面図である。
図6は、ロックレバーを主に示す正面図である。なお、理解容易のために、
図3の正面図では、相互に重なる部材を透視して示し(
図7~
図13も同じ。)、
図4の背面図は、
図3の正面図と同一方向に示している。
【0019】
図1~
図6のように、本実施例のマルチレバー式駐輪ロック装置1(以下、単に「駐輪ロック装置1」と称する。)は、別体の二本のレバー、つまりロックアーム3とロックレバー5とを備えている。
【0020】
駐輪ロック装置1は、車輪を保持するためのフレーム7を備えて駐輪装置9を構成している。
【0021】
フレーム7は、車輪Wを収納可能な車輪保持部8を有するものである。本実施例では、
フレーム7が左右一対のボディパネル11(
図1では、一方のみ示す。)を有し、ボディパネル11間に車輪保持部8としての空間が構成されている。
【0022】
ボディパネル11には、車輪保持部8に面した窓12が形成されている。ボディパネル11の窓12は、ロックアーム3及びロックレバー5がボディパネル11間の車輪保持部8に臨むことを可能にしている。
【0023】
フレーム7は、ボディパネル11間に車輪ガイド10が固定されている。車輪ガイド10は、駐輪時の車輪Wを適切な位置にガイドするものであり、車輪移動ガイド13、車輪載置ガイド15、車止め17とで構成されている。
【0024】
車輪移動ガイド13は、スロープ状に配置され、車輪Wを移動ガイドできるようになっている。車輪載置ガイド15は、ベース21上に配置されている。車止め17は、車輪移動ガイド13に対し車輪載置ガイド15を挟んで配置されている。
【0025】
これらの車輪移動ガイド13、車輪載置ガイド15、車止め17が車輪Wに当接する縁部上端はU字溝形状に形成され、車輪Wを固定的に保持する。なお、車輪移動ガイド13、車輪載置ガイド15、車止め17は、車輪ガイド10の一例であり、車輪ガイド10としては、他の形状を採用することも可能である。
【0026】
駐輪ロック装置1は、かかる駐輪装置9において、車輪保持部8に保持された車輪Wを取り出せないようにロックする。本実施例の駐輪ロック装置1は、支持基板23、25を有している。
【0027】
支持基板23は、取付フランジ27、29によりボディパネル11の一方の外面に固定されている。支持基板25は、支持基板23に対し間隔を置いて対向配置され、支持基板25にピン31、33、35により支持されている。
【0028】
支持基板23には、アームストッパー37、レバーストッパー39が取り付けられている。アームストッパー37及びレバーストッパー39は、支持基板23に固定されたピン31、41の周りにゴムなどの緩衝体31a、41aが取り付けられた構造である。
【0029】
支持基板23、25間には、ロックアーム3及びロックレバー5の他に、ロック機構43、検出部としてのリミットスイッチ45が支持されている。支持基板23の外面には、ロック機構43のアクチュエーターとしてソレノイド46が取り付けられている。
【0030】
主に
図5のように、ロックアーム3は、車輪保持部8に対し可動支持され、アーム待機位置からアームロック位置へ移動可能となっている。アーム待機位置は、ロックアーム3が車輪保持部8への車輪Wの収納を可能にする位置である。本実施例では、ロックアーム3がフレーム7側に収納されて車輪保持部8側に突出しない状態をいう。
【0031】
ただし、ロックアーム3は、アーム待機位置で車輪保持部8への車輪Wの収納を可能にすればよく、この限りにおいてアーム待機位置で一部が車輪保持部8内へ突出するものであってもよい。
【0032】
アームロック位置は、車輪Wを車輪保持部8にロックするための位置である。本実施例では、ロックアーム3が車輪保持部8へ突出し、車輪保持部8内を横断するように位置する状態をいう。なお、ここでの横断では、
図5のように車輪保持部8を完全に横切らなくてもよく、少なくともロックアーム3が車輪Wに対する取り出し方向での妨げになればよい。
【0033】
本実施例のロックアーム3は、アーム基部47、アーム中間部49、アーム先端部51からなる板状のアーム部材であり、フレーム7側に回転自在に支持されることで、車輪保持部8に対して可動支持されている。なお、ロックアーム3の可動支持は、回転自在な支持に限られず、例えば横方向にスライド自在に支持する構成等としてもよい。横方向とは、ボディパネル11が対向する方向をいう(以下、同じ。)。
【0034】
アーム基部47は、ピン33により回転自在に支持された部分である。アーム基部47には、ロック用の係合部である切欠き部47aとロックレバー5との連携用の連携凹部47bとが形成されている。アーム中間部49は、正面から見て若干屈曲し、アーム基部47寄りに湾曲凹部47cが形成されている。アーム先端部51は、アーム中間部49に対して屈曲されている。
【0035】
このロックアーム3は、回動により湾曲凹部47cがレバーストッパー39に当接すると、ロックアーム3のアーム先端部51がボディパネル11の一方の窓12からボディパネル11間の車輪保持部8へ突出し、車輪保持部8内を横断するように位置する。この状態で、ロックアーム3は、アームロック位置となる。
【0036】
ロックアーム3には、係合ピン53が取り付けられ、支持基板23(フレーム7側)の係合ピン55との間に付勢部材としてのリターンスプリング57が取り付けられている。リターンスプリング57の付勢力により、ロックアーム3は、アーム待機位置へ向けて付勢されている。アーム待機位置でロックアーム3は、アームストッパー37に当接し位置決められている。
【0037】
なお、ロックアーム3については、リターンスプリング57を省略することも可能である。ただし、この場合は、ロックアーム3が自重によりアーム待機位置からアームロック位置へ移動しないように構成する必要がある。
【0038】
ロックアーム3は、前記のようにアーム待機位置でボディパネル11間の車輪保持部8に対しフレーム7側に収納されている。ここで、フレーム7側とは、車輪保持部8としての空間に対するものであり、車輪保持部8に対しボディパネル11の一方を挟んだ支持基板23側を意味する。
【0039】
主に
図6のように、ロックレバー5は、車輪保持部8に対し可動支持されると共にレバー待機位置へ向けて付勢され、レバー待機位置で車輪保持部8内に配置され、車輪Wからの荷重を受けてレバー待機位置からレバーロック位置へ移動する。
【0040】
レバー待機位置は、ロックレバー5が車輪保持部8に位置し、収納する際の車輪Wを受ける位置である。レバーロック位置は、レバー待機位置よりもロックレバー5が下降した位置であり、車輪Wが車輪保持部8に収納された状態でのロックレバー5の位置である。
【0041】
本実施例のロックレバー5は、レバー基部59、レバー中間部61、レバー先端部63からなる板状レバー部材であり、フレーム7側に回転自在に支持されることで、車輪保持部8に対して可動支持されている。なお、ロックレバー5の可動支持は、回転自在な支持に限られず、例えば上下方向にスライド自在に支持する構成等としてもよい。
【0042】
レバー基部59は、ピン33に回転自在に支持された部分である。レバー基部59には、回転位置検出用の凹部59aが形成されている。レバー中間部61には、連携ピン65が突設され、ロックアーム3の連携凹部47bに臨んでいる。
【0043】
連携ピン65及び連携凹部47bは、ロックレバー5がレバーロック位置へ移動するときに、ロックアーム3を連携させてアームロック位置へ移動させてレバーロック位置のロックレバー5に車輪保持部8内で対向させる連携部66を構成する。
【0044】
この連携は、連携ピン65が連携凹部47bの係合面47baに係合することで行われる。なお、連携部66は、ロックアーム3とロックレバー5との連携を実現できれば、連携ピン65及び連携凹部47bによるものに限られない。
【0045】
また、連携部66は、ロックアーム3のみをアームロック位置へ移動させても、連携凹部47bの形状によりロックレバー5が連携せず、ロックレバー5がアームロック位置へ移動することはない。
【0046】
ロックレバー5のレバー中間部61には、湾曲凹部61a、61bが形成されている。湾曲凹部61aは、レバーストッパー39に対応し、湾曲凹部61bは、取付フランジ29に対応している。
【0047】
ロックレバー5のレバー先端部63は、湾曲されている。レバー先端部63の湾曲により、車輪保持部8内においてアームロック位置のロックアーム3とレバー待機位置のロックレバー5との間の間隔は、自転車のタイヤ高さよりも小さいものとしている。
【0048】
この場合のタイヤ高さとは、一般的な自転車のタイヤ及びリム高を含むリムの内径とタイヤの外径との差の1/2の寸法を意味する。ここで、一般的な自転車とは、車輪Wのサイズが12インチ~28インチ程度までのものをいい、タイヤ高さは、車輪Wのサイズとタイヤとの関係で最も小さいものとするのが好ましい。
【0049】
かかるロックレバー5は、連携するロックアーム3が回動して湾曲凹部47cがレバーストッパー39に当接すると、連携部66を介して自身の回動が規制され、レバー先端部63がレバー待機位置から下降して車輪保持部8内を横断するようにレバーロック位置に位置する。
【0050】
ロックレバー5には、係合ピン67が取り付けられ、支持基板23(フレーム7側)の係合ピン69との間に付勢部材としてのリターンスプリング71が取り付けられている。このリターンスプリング71の付勢力により、ロックレバー5は、上方に傾斜したレバー待機位置へ位置決められている。
【0051】
レバー待機位置でロックレバー5は、湾曲凹部61aにおいてレバーストッパー39に当接している。レバー待機位置のロックレバー5は、レバー先端部63の湾曲で先端が横方向に指向し、上部から降りてくる車輪Wを受け易くしている。
【0052】
ロック機構43は、ロックレバー5がレバーロック位置のときに、アームロック位置にロックアーム3をロックするものである。これにより、ロック機構43は、ロックアーム3をアームロック位置で位置決め且つロックし、清算によりロックアーム3のロックを解除することを可能とする。
【0053】
本実施例のロック機構43は、ロックアーム3の係合部としての前記切欠き部47aと、ロック部材としてのロックピン73と、弾性部としてのロックピンスプリング75と、移動体としての駆動プレート46aと、前記ソレノイド46とを備えている。
【0054】
係合部としての切欠き部47aは、前記のとおりである。なお、係合部としては、切欠き部47aに限られず、突起部等とすることも可能である。
【0055】
ロックピン73は、フレーム7側である支持基板23に進退可能に支持されている。具体的には、ロックピン73は、支持基板23に固定されたピンブラケット79に移動自在に支持されている。
【0056】
この支持により、ロックピン73は、ロックアーム3のアーム基部47の切欠き部47aに対し進退自在となっている。なお、ロック部材としては、ロックアーム3に対して進退可能であれば、ロックピン73に限られるものではない。ロックピン73を支持するピンブラケット79には、ロックピンスプリング75が配置されている。
【0057】
ロックピンスプリング75は、ロックピン73のフランジ73aとピンブラケット79の内壁との間に介設されている。このロックピンスプリング75は、ロックピン73が切欠き部47aに係合するロック位置に移動すると圧縮され、ロックピン73をロック位置からロック解除位置へと退避させるように付勢する。
【0058】
このロックピン73は、ロックピンプレート77を介してソレノイド46の駆動プレート46aに連結されている。
【0059】
ロックピンプレート77は、支持基板23を挟んでロックピン73に対応して配置されている。本実施例のロックピンプレート77は、ロックピン73の進退方向に延設され、先端部77aが約90°折り曲げられたL字形状のプレートである。
【0060】
ロックピンプレート77の先端部77aは、ロックピン73の端面に結合されている。従って、ロックピンプレート77は、ロックピン73を一体的に移動させるものとなっている。このロックピンプレート77は、駆動プレート46aを介してソレノイド46によって駆動される。
【0061】
駆動プレート46aは、ロックピン73をロックアーム3の切欠き部47aに係合するロック位置及びその係合が解除されるロック解除位置へ移動させるものである。駆動プレート46aは、ソレノイド46の内部の駆動部(図示せず)に連動して設けられている。
【0062】
駆動プレート46aには、ロックピンプレート77が連結されている。具体的には、駆動プレート46aが長穴81を有し、この長穴81にロックピンプレート77のスライドピン80が係合している。長穴81は、ロックピン73の進退方向に長く形成されている。
【0063】
また、駆動プレート46aは、ソレノイドブラケット83にスライド自在に支持されている。駆動プレート46aには、ストッパー85が取り付けられ、ストッパー85とソレノイド46との間にソレノイドスプリング87が介設されている。ストッパー85は、ストッパー85がソレノイドスプリング87の付勢力で移動するとストッパーステー89に当接して位置決められる構成となっている。
【0064】
本実施例のソレノイド46は、待ち機構としての機能を有しており、駆動プレート46aを駆動しロック解除位置へ戻して待機させ得る構成となっている。
【0065】
ソレノイド46は、いわゆる自己保持機能付きのソレノイドによって構成されているが、自己保持機能を有していないものであってもよい。
【0066】
このソレノイド46は、ON時に1又は複数回にわたって短時間通電され(例えば3ショット通電され)、駆動プレート46aを引き込む。これにより、ロックピンプレート7
7の先端部77aがロックピン73の端面を押圧し、ロックピン73が切欠き部47aへ係合するロック位置へ移動する。この状態では、通電が終了しても、永久磁石91によりストッパー85を吸引することでロックピン73のロック位置が維持される。
【0067】
一方、OFF時には、ソレノイド46がON時とは逆向きに1又は複数回にわたって短時間通電され(例えば3ショット通電され)、永久磁石91の吸引力を打ち消す力を発生し、結果としてソレノイドスプリング87の付勢力によって駆動プレート46aが引き出される。
【0068】
駆動プレート46aが引き出されると、ストッパー85がストッパーステー83に当接して位置決められる。この動作により、駆動プレート46aは、長穴81を介してロックピンプレート77に対して相対的にロック解除位置へ移動を戻され待機することが可能となる。
【0069】
リミットスイッチ45は、ロックレバー5のロック位置を検出する検出部であり、支持基板23に取り付けられている。本実施例のソレノイド46は、リミットスイッチ45での検出に応じてロックアーム3のロックを行う。
【0070】
すなわち、リミットスイッチ45は、ロックレバー5上に車輪Wが位置している限り、接触し45aが収縮してONとなる。これに応じて、ソレノイド46もONとなる。
【0071】
一方、リミットスイッチ45は、ロックレバー5上に車輪Wが位置していない場合、接触子45aがロックレバー5の凹部59aにて伸長してOFFとなる。これに応じて、ソレノイド46もOFFとなる。なお、ソレノイド46は、清算によってもOFFとなる。ソレノイド46のON/OFF制御は、図示しないコントローラによって行えばよい。
【0072】
[空車待機状態]
図7は、空車待機状態に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。
【0073】
図7のように、自転車が入庫されていない空車待機状態では、ソレノイド46がOFFであり、ソレノイドスプリング87、ロックピンスプリング75共に伸長状態となっている。
【0074】
この状態では、ロックピン73がロックアーム3から退避し、ロックアーム3がリターンスプリング57の付勢力でアームストッパー37に当接してアーム待機位置に位置決められる。
【0075】
ロックレバー5は、リターンスプリング71の付勢力でレバーストッパー39に当接してレバー待機位置に位置決められる。
【0076】
このとき、リミットスイッチ45の接触子45aに対し凹部59aが位置し、リミットスイッチ45はOFFの状態となっている。
【0077】
かかる空車待機状態では、ロックアーム3がボディパネル11間の車輪保持部8から退避し、且つロックレバー5のレバー先端部63が車輪保持部8内に位置して待機し、車輪Wを車輪保持部8内へ収容してロックレバー5上で受けることが可能になっている。
【0078】
[入庫]
図8は、車両入庫状態に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。
【0079】
自転車を入庫する際には、車輪Wが車輪移動ガイド7上を移動して上方から車輪載置ガイド15上に下ろされると、車輪保持部8内でロックレバー5のレバー先端部63が荷重を受けてピン33の周りに下降回転する。
【0080】
このとき、連携部66の連携ピン65が連携凹部47bに係合してロックアーム3を連携させてピン33の周りに回転させる。かかる回転により、ロックアーム3の湾曲凹部47cがレバーストッパー39に当接すると、ロックアーム3及びロックレバー5の回転が停止される。
【0081】
この位置でロックレバー5のレバー先端部63が車輪保持部8内へ横方向に突出し、ロックアーム3のアーム先端部51が車輪Wの上方(内側)で車輪保持部8内へ横方向に突出してロック位置となる。
【0082】
ロックレバー5の回転に際しては、リミットスイッチ45の接触子45aがロックレバー5の凹部59aから外れてレバー基部59の外周面で押圧され、リミットスイッチ45がONとなる。
【0083】
このリミットスイッチ45のONによりソレノイド46がONとなり、ソレノイド46が複数回、例えば3回にわたり短時間通電される。この複数回の通電において、回転するロックアーム3がアームロック位置となって切欠き部47aがロックピン73に一致したときに、駆動プレート46aがソレノイドスプリング87に抗して引き込まれる。
【0084】
駆動プレート46aが引き込まれると、ロックピンプレート77が先端部77aでロックピン73をロックピンスプリング75に抗して押圧する。この押圧によりロックピン73がロックアーム3の切欠き部47aに突入し、ロックアーム3がアームロック位置に位置決めされロックされる。
【0085】
このロックにより、駐輪装置9は、入庫状態となり、精算機(図示せず)での課金が開始される。なお、ロック状態は、ソレノイド46の自己保持機能、つまり永久磁石91がストッパー85を吸引することによって保持される。
【0086】
[清算/待機状態1]
図9は、清算/待機状態に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。
【0087】
精算機にて清算されるとソレノイド46がOFFとなり、ソレノイド46がON時とは逆向きに複数回例えば、3回にわたり短時間通電される。この通電により、ソレノイド46の永久磁石91の吸引力を打ち消す力を発生し、結果としてソレノイドスプリング87の付勢力によって駆動プレート46aが引き出されて待機状態となる。この引き出しは、長穴81がスライドピン80に対して相対的にスライドすることによって許容される。
【0088】
駆動プレート46aが引き出された後は、ロックピン73及びロックピンプレート77がロックピンスプリング75によって駆動プレート46aに追従するように引き出されてロック解除位置へと戻され、ロックアーム3のロックが解除される。なお、実際のロックピン73の引き出しは、駆動プレート46aに追従してほぼ同時に行われる。
【0089】
[清算/待機状態2]
図10は、清算/待機状態に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。
【0090】
前記のように、精算機にて清算されるとソレノイド46がOFFとなり、駆動プレート46aが引き出される。
【0091】
ここで、車輪Wが傾くこと等によりロックアーム3にアーム待機位置側への負荷が加わっている場合、ロックアーム3の切欠き部47aがロックピン73を軸交差方向に押圧する。
【0092】
この押圧によるロックアーム3及びロックピン73間の摩擦力がロックピンスプリング75の付勢力よりも大きいと、前記のように駆動プレート46aがロック解除位置へ移動を戻されて待機状態となっても、ロックピン73、ロックピンプレート77は追従せずにロック位置にある。
【0093】
この状態で出庫のために自転車を操作された場合等に、ロックアーム3及びロックピン73間の摩擦力がロックピンスプリング75の付勢力よりも小さくなると、待ち状態のロックピン73がロックピンスプリング75によってロック解除位置へと戻される。
【0094】
つまり、本実施例では、ソレノイド46が通電されたときに、ロックピン73をロックアーム3との間の摩擦力によってロック解除位置へと戻すことができなくても、先行してソレノイド46の駆動プレート46aをロック解除位置へ戻して待機状態としておくことができる。
【0095】
そして、ロックピン73は、ソレノイド46への通電とは関係なく、ロックピン73をロックアーム3との間の摩擦力がロックピンスプリング75の付勢力よりも小さくなったときに、自動的にロック解除位置へ戻ることができる。
【0096】
従って、本実施例では、ソレノイド46が複数回にわたり短時間通電される態様であっても、ロックアーム3のロックを確実に解除することができる。
【0097】
[出庫]
図11は、出庫に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。
【0098】
前記のようにロックアーム3のロックが解除されることで、自転車が出庫可能な状態になっている。この状態で自転車を出庫するために車輪Wを持ち上げれば、それに追従してロックレバー5及びロックアーム3がリターンスプリング71及び57の付勢力によりそれぞれレバー待機位置側及びアーム待機位置側へと移動する。
【0099】
車輪Wがロックレバー5から離れると、ロックレバー5がリターンスプリング71の付勢力でレバーストッパー39に当接してレバー待機位置に位置決められ、ロックアーム3がリターンスプリング57の付勢力でアームストッパー37に当接してアーム待機位置に位置決められる。
【0100】
こうして、自転車が入庫されていない空車待機状態となる。
【0101】
[不正駐輪1]
図12は、不正駐輪の説明に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。
【0102】
本実施例の駐輪ロック装置1では、リミットスイッチ45がOFFになると、ソレノイド46もOFFになるため、入庫状態で車輪Wを持ち上げ、リミットスイッチ45をOFFにして出庫するような不正駐輪を規制する必要がある。
【0103】
これに関し、アームロック位置のロックアーム3とレバー待機位置のロックレバー5との間の間隔が自転車のタイヤ高さよりも小さいものとなっている。このため、入庫状態で
車輪Wを持ち上げて内周をロックアーム3に突き当てても、ロックレバー5がレバー待機位置まで戻ることはなく、リミットスイッチ45のONを維持できる。
【0104】
本実施例では、
図12のように、リミットスイッチ45の接触子45aがロックレバー5の凹部59aに一致する直前でも、既にロックレバー5とアームロック位置のロックアーム3との間が、車輪Wのタイヤ高さよりも小さいものとなっている。
【0105】
従って、入庫状態で車輪Wを持ち上げ、リミットスイッチ45をOFFにして出庫するような不正駐輪を確実に規制することができる。
【0106】
[不正駐輪2]
図13は、他の不正駐輪の説明に係り、(A)は、正面図、(B)は、背面図である。
【0107】
本実施例の駐輪ロック装置1では、ロックアーム3のみをアームロック位置に移動させても、ロックアーム3の連携凹部47a内をロックレバー5の連携ピン65が相対的に移動するだけで、ロックレバー5が連携しない。このため、ロックレバー5がレバー待機位置を維持してレバーロック位置とはならないため、ロックアーム3のロックがなされることはない。
【0108】
従って、ロックアーム3をアームロック位置まで移動させ、アーム先端部51上に車輪Wを載せた不正駐輪があったとしても、ロックアーム3がロックされないので、不正駐輪の自転車を撤去等して、他の利用者が正規に駐輪することができる。結果として、不正駐輪を規制することができる。
【0109】
[実施例の効果]
本発明実施例の駐輪ロック装置1により以下の効果が得られる。
【0110】
ロックアーム3のみをアームロック位置へ移動させてもロックレバー5がレバーロック位置とならずにロックアーム3がロックされないため、事前にロックさせたロックアーム3の上に車輪Wを載せる不正駐輪を規制することができる。
【0111】
ロック機構43は、ロックレバー5のレバーロック位置になったときに、リミットスイッチ45での検出に応じロックアーム3のロックを確実に行うことができる。
【0112】
また、ロック機構43は、ソレノイド46が駆動プレート46aを駆動し、ロック解除位置へ戻して待機させることができる。このため、ロックアーム3がロックピン73に意図しない負荷により押し付けられて引き抜きを困難にするにするような場合でも、駆動プレート46aをロック解除位置へ戻して待機させておきさえすれば、その後、負荷が小さくなった時にロックピンスプリング75の付勢力によりロックピン73を自動的に確実にロック解除位置へ戻すことができる。
【0113】
また、アームロック位置のロックアーム3とレバー待機位置のロックレバー5との間の間隔が自転車のタイヤ高さよりも小さいので、入庫状態で車輪Wを持ち上げて内周をロックアーム3に突き当てても、ロックレバー5がレバー待機位置まで戻ることはなく、不正に出庫することを防止できる。
【0114】
[その他]
本発明の駐輪ロック装置は、二輪車の前輪又は後輪のいずれをロックしても良い。又、ロック装置を二つ備えて、前後輪の両輪をロックする装置としても良い。又、本装置が二輪車に限らず三輪車や一輪車にも応用可能なことはもちろんである。
【0115】
駐輪装置9は、複数の駐輪ロック装置1を備えた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 マルチレバー式駐輪ロック装置
3 ロックアーム
5 ロックレバー
8 車輪保持部
43 ロック機構
45 リミットスイッチ(検出部)
46 ソレノイド(アクチュエーター)
46a 駆動プレート(移動体)
47a 切欠き部(係合部)
47b 連携凹部(連携部)
65 連携ピン(連携部)
66 連携部
73 ロックピン(ロック部材)
75 ロックピンスプリング(弾性部)