(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】工事用バリケード
(51)【国際特許分類】
E01F 13/00 20060101AFI20230627BHJP
E01F 13/04 20060101ALI20230627BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
E01F13/00 301
E01F13/04 Z
E04G21/32 C
(21)【出願番号】P 2019179662
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】300021839
【氏名又は名称】ミツギロン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519353145
【氏名又は名称】森本 典志
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100103104
【氏名又は名称】廣瀬 邦夫
(73)【特許権者】
【識別番号】519353400
【氏名又は名称】森本 涼太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100103104
【氏名又は名称】廣瀬 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】森本 典志
(72)【発明者】
【氏名】森本 涼太朗
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実公昭43-021294(JP,Y1)
【文献】実開昭60-195314(JP,U)
【文献】実開平01-102210(JP,U)
【文献】実開平07-020310(JP,U)
【文献】実開昭63-194921(JP,U)
【文献】実開昭52-097093(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0329781(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/00-15/14
E01F 1/00
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往来を規制す
べく水平に延びるバーと、このバーを両持ち支持する一対の脚をもつ工事用バリケードにおいて、
前記バーの
両端と前記脚の
上端を連結するとともに
下方に開口を有する一対の中空の連結部材を有し、
前記連結部材は、前記バーの延びる方向の外側に設けられる前記バー及び前記脚以外の第三の部材を係止させるフックと、内部において、前記バーに垂直かつ水平な方向からなる前後方向に延びるよう支持される支持軸、及び前記バーの延びる方向を軸方向とするピンに上下方向の中間部を枢支され、その先端部の間隙を狭める側にバネにより付勢されるとともに前記先端部の通し孔に前記支持軸が遊びのある状態で挿通された一対の板状のハサミとを有し、
前記脚のそれぞれは、上端が前記ハサミの下端に連結され、前記ハサミを介して前記支持軸の回りに揺動して、上下方向に起立した開脚状態と前記バーに沿って倒伏した閉脚状態とに姿勢変更可能とした棒状の第1脚及び第2脚を有し、
前記連結部材は、前後の側面に設けられ、下方が前記開口に連続して開口する末広がりの半円錐状をなす部分円錐部と、前記バーが延びる方向の内向きに開口するとともに、前記部分円錐部と前記連結部材の下方の開口を介して連通する前後一対の部分円とを有し、
前記第1脚及び第2脚は、前記開脚状態において、互いの下端側が前後方向に開くよう前記バネにより付勢されて、前記部分円錐部に係止するよう構成されるとともに、開脚状態にある前記前記第1脚及び第2脚の下端を前後方向に閉じると、前記第1脚及び前記第2脚は、前記部分円錐部から脱出し、この閉じた状態で、前記開口を通して前記支持軸まわりに前記バー側へ揺動させて、前記部分円に係止させて閉脚状態に固定可能に構成されていることを特徴とする工事用バリケード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に工事現場等において、一般人の立入りを規制する目印や標識等として機能する工事用バリケードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバリケードは、特許文献1又は2等で知られているように、人の往来を規制する丸棒や長尺板等から成るバーと、このバーを左右両端等において両持ち支持する一対の脚をもち、工事現場等の規制エリアの境界線に沿って設置するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭60-115919号公報
【文献】特開平10-18248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のバリケードは、隙間のない規制を行うには、複数のバリケードを隣り合う脚を互いに近づけて並べる必要があり、多くの台数を要し、不経済となる。また、それぞれのバリケードは、主にバーと脚の重量により単独で自立することを基本にしているため、突風等の自然現象や押し倒し等の人的行為により転倒等がし易い。この場合に、脚の下部に錘を付けてこれを防ぐことも考えられるが、しゃがみ込んでの作業となり、その作業性も悪い。
【0005】
本発明は、経済性と作業性を高めることができる工事用バリケードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、往来を規制すべく水平に延びるバーと、このバーを両持ち支持する一対の脚をもつ工事用バリケードにおいて、 前記バーの両端と前記脚の上端を連結するとともに下方に開口を有する一対の中空の連結部材を有し、前記連結部材は、前記バーの延びる方向の外側に設けられる前記バー及び前記脚以外の第三の部材を係止させるフックと、内部において、前記バーに垂直かつ水平な方向からなる前後方向に延びるよう支持される支持軸、及び前記バーの延びる方向を軸方向とするピンに上下方向の中間部を枢支され、その先端部の間隙を狭める側にバネにより付勢されるとともに前記先端部の通し孔に前記支持軸が遊びのある状態で挿通された一対の板状のハサミとを有し、前記脚のそれぞれは、上端が前記ハサミの下端に連結され、前記ハサミを介して前記支持軸の回りに揺動して、上下方向に起立した開脚状態と前記バーに沿って倒伏した閉脚状態とに姿勢変更可能とした棒状の第1脚及び第2脚を有し、前記連結部材は、前後の側面に設けられ、下方が前記開口に連続して開口する末広がりの半円錐状をなす部分円錐部と、前記バーが延びる方向の内向きに開口するとともに、前記部分円錐部と前記連結部材の下方の開口を介して連通する前後一対の部分円とを有し、前記第1脚及び第2脚は、前記開脚状態において、互いの下端側が前後方向に開くよう前記バネにより付勢されて、前記部分円錐部に係止するよう構成されるとともに、開脚状態にある前記前記第1脚及び第2脚の下端を前後方向に閉じると、前記第1脚及び前記第2脚は、前記部分円錐部から脱出し、この閉じた状態で、前記開口を通して前記支持軸まわりに前記バー側へ揺動させて、前記部分円に係止させて閉脚状態に固定可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の[構成A]によれば、隣り合う複数のバリケードのフックに、チェーン等を掛け渡すことにより、隣り合うバリケードを間隔を空けて設置でき、総設置台数を少なくでき、経済性を高めることができる。しかも、フックは、バーと脚を連結する連結部材に設け、フックをある程度の高さに位置させることができるため、チェーン等や錘を係止させる作業をする場合、しゃがみ込んでの作業を要せず、その作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る工事用バリケードの斜視図。
【
図7】隣り合うバリケードのフックにチェーンを掛け渡した正面図。
【
図8】隣り合うバリケードのフックに連結錘を掛け渡した斜視図。
【
図9】隣り合うバリケードのフックに連結錘を掛け渡した正面図。
【
図10】転倒の恐れを低減できる作用効果の説明図。
【
図11】バーを長尺板にした第2実施形態の6面図(その1)。
【
図12】バーを長尺板にした第2実施形態の6面図(その2)。
【
図13】バーを長尺板にした第2実施形態の6面図(その3)。
【
図14】脚の長さ及びバーの長さを可変にした第3実施形態の正面図。
【
図15】脚の長さ及びバーの長さを可変にした第3実施形態の作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図4に示すように、本発明の第1実施形態に係る工事用バリケード100は、人の往来を規制する丸棒10から成るバー1と、このバー1を左右両端部において両持ち支持する左右一対の脚2をもつ。
【0014】
丸棒10は、外表面11を白色や黄色のポリエチレン(PE)フィルムにより被覆したスチール製のパイプから成り、全長は数十cm~数m、例えば1.5m程度、径は数十mm、例えば35mmや40mm程度としている。外表面11には、緑色等の反射シート12を間隔を空けて貼り付けている。
【0015】
左右の脚2は、それぞれ、第1脚21及び第2脚22を有し、各脚21,22は、白色や黄色のPEフィルムにより被覆したスチール製のパイプから成り、全長は数十cm、例えば70cm程度、径は数十mm、例えば18mmや22mm程度としている。各脚21,22の下部には、土付き23を嵌合している。
【0016】
左右においてバー1と脚2を連結する連結部材3は、バー連結部31と脚連結部32を一体に備え、全体を、白色等の塩化ビニル(ABS)等で形成している。バー1はバー連結部31にネジ13により固定している。
【0017】
脚連結部32の側面端面部には部分円筒部33を設け、その高さ方向中間部に、バー1及び脚2以外の第三の部材、例えばチェーンや錘等を係止させるフック4を一体に設けている。フック4の付け根41は、肉盛り42により補強している。
【0018】
フック4の突出側は、バー連結部31の端部に設ける曲面部34及びこれに連続する部分円筒部33に対面させ、先端には、やや内方に曲がる返り43を設けている。
【0019】
これにより、特に、チェーンをフック4に引っ掛ける場合、曲面部34にチェーンの端を滑らせてフック4に案内でき、引っ掛け作業を良好に行えると共に、チェーンを引っ掛けた状態では、部分円筒部33回りにチェーンの回動を許容でき、チェーンの引き回し作業も良好に行える。また、このような機能を果たす外観形状として、独特の意匠的効果も奏する。
【0020】
図5及び
図6に示すように、第1脚21及び第2脚22の上部は、ピン6の回りに揺動する一対のハサミ7と、その先端部70の間隙を狭める側に付勢するコイル状のバネ8をもつ挟み機構9により組み合わせている。ハサミ7は、中間部のフランジ71の下部に連続させる圧入部72を各脚21,22の上部に圧入することにより、各脚21,22に一体化している。
【0021】
各ハサミ7の先端部70の近くには通し穴73を設けており、連結部材3における脚連結部32の内部に支持する支持軸5に、適度な遊びのある状態で挿通している。支持軸5は、ボルト51とナット52により構成している。ピン6は、各ハサミ7に平行に設ける合せ片74,75を重ねた二つの重合部分76,77を回転自由に束ね、止め輪61で抜け止めしている。バネ8は、各ハサミ7のバネ係止ピン78に係止させている。
【0022】
第1脚21及び第2脚22は、支持軸5の回りに揺動でき、
図2に示す起立した開脚状態と、
図4に示す倒伏した閉脚状態とに姿勢変更可能にしている。
【0023】
起立した開脚状態では、バネ8により先端部70が狭まって下方の各脚21,22が開き、脚連結部32の下裾に設ける部分円錐部35に当接する。部分円錐部35に設ける係止穴36に、ハサミ7のフランジ71に設ける突起79を係止させる。
【0024】
倒伏した閉脚状態では、バー連結部31と脚連結部32との連結板37に切り欠く一対の部分円38に各脚21,22を揃えて納め、脚連結部32に設ける係止穴39に、突起79を係止させる。
【0025】
図7に示すように、隣り合う複数のバリケード100のフック4に、チェーンCを掛け渡すことにより、隣り合うバリケード100を間隔を空けて設置できる。このため、広範囲な工事現場等において、バリケード100の総設置台数を少なくできる。
【0026】
しかも、フック4は、バー1と脚2を連結する連結部材3に設け、現場の作業員が立ったまま手の届く高さに位置するため、チェーンCを係止させる作業をする場合、地面Gにしゃがみ込んでの作業は要しない。
【0027】
図8及び
図9に示すように、チェーンに代えて、隣接するバリケード100に同時に重しを加える連結錘Wを係止させることもできる。
【0028】
連結錘Wは、全体を白色等のPE製等から成り、本体W1の内部にキャップW2を外して水や砂を入れてキャップW2を閉じ、両サイドに設ける係止片W3の穴W4をフック4の上からフック4に挿入するか、或は、穴W4の開放間隙W5を介してフック4の横からフック4を穴W4に押し込むことにより、係止させる。本体W1には、「立入禁止」等の注意喚起表示シールSを貼るのも効果的である。
【0029】
連結錘Wは、隣り合うバリケード間に掛け渡す連携係止を可能にしている他、本体W1の上部に、両サイドに設ける係止片W3と同様の単独係止用の係止片W6を一体に設けており、係止片W6の穴W7をフック4の上からフック4に挿入するか、或は、穴W7の開放間隙W8を介してフック4の横からフック4を穴W7に押し込み、端に設置するバリケードに対して効果的に重しを加えることができる。
【0030】
図10に示すように、フック4は、開脚状態において第1脚21と第2脚22の一方が地面Gから浮き上がり他方が地面Gに垂直になった場合に、フック4に作用する鉛直下向きの荷重Fが、垂直になった脚22の反転倒側、すなわち、脚22の中心線Oを挟んで転倒に近づく転倒側Tとは反対側に作用する関係に設けている。フック4の付け根41を支持軸5の高さ以下の位置に位置させることにより、この関係が満たされる。
【0031】
なお、
図10において、フック4は、連結部材3の後ろ側に隠れるが、作用効果を説明するため、太実線で描いている。
【0032】
こうして、フック4を設け、フック4及びその係止物によりフック4に作用する荷重Fの加算によってバリケード100の上部が重くなるが、第1脚21と第2脚22の一方が浮き上がり他方が地面に垂直になっても、転倒の恐れを低減できる。
【0033】
フック4は、脚連結部32のさらに下部に設けてもよい。もっとも、第1脚21及び第2脚22が地面Gに両脚接地する安定姿勢では、側面視において連結部材3の中心線上のどの位置にフック4を設けていても、フック4及びその係止物による荷重によりバリケード全体の重量を高めて安定度を増すことができるため、フック4をバー連結部31の頂部等に設けることも可能である。
【0034】
図11~
図13に示すように、本発明の第2実施形態に係る工事用バリケード200は、丸棒に代わる長尺板20から成るバー1を、左右両端の連結部材3の上部に一体に突設するバー連結部310にネジ14により固定している。
【0035】
長尺板20の全長、脚2の長さは、第1実施形態と同様にしている。白色等とした長尺板20の外表面15には、緑色等の反射シート16を間隔を空けて貼り付けている。
【0036】
バー連結部310の下部には、傾斜部312を介して、第1実施形態と構造及び機能を同じにした脚連結部320を一体に備え、脚連結部320の側面端面部に設ける部分円筒部330の高さ方向中間部に、フック4を一体に設けている。
【0037】
フック4の突出側は、バー連結部310の端部に設ける部分円筒部340及びこれに連続する部分円筒部33に対面させている。脚2の構造及び機能は、第1実施形態と同一で、作用効果も同様である。
【0038】
図14及び
図15に示すように、本発明の第3実施形態に係る工事用バリケード300は、内パイプ17と外パイプ18とをネジ部19の締結を緩めることにより長さ方向にスライド自由で且つネジ部19の締結により無段階の所望長さを保てる回転スライド機構301を設けたバー1を用いている。
【0039】
170は、内パイプ17を回転フリーに受け入れる空回り機構であり、長さ変更に伴い内パイプ17と外パイプ18が相対回転しても、左右の脚2の姿勢に捻れが生じないようにしている。なお、脚2は、第1実施形態や第2実施形態と同様、前後左右合わせて全部で4本有する。
【0040】
脚2は、それぞれ、第1実施形態の第1脚21又は第2脚22と構造及び機能が同一で下部に部分球から成る突起24を設けたインナー脚25と、突起24を内部でスライドさせる径方向外方に膨出するガイド26と突起24を複数段階例えば3段階の高さ位置にて係止させる係止穴27とを設けたアウター脚28とを嵌合した係止スライド機構302をもつ。係止穴27への突起24の係止位置を変更することにより、各脚2の長さを変更し、バー1の高さを変更可能にしている。
【0041】
これにより、バー1の長さ及び高さが可変になるため、多様な工事現場等に対応させることができると共に、
図14中の二点鎖線の想像線で示すように、バー1及び脚2の長さを短めの組合せにすることにより、閉脚した脚2の土付き23が丁度突き合わせられた最もコンパクトで且つ安定した状態で収納することもできる。
【0042】
さらに、
図16に示すように、凹凸等のある地面Gに対応させて脚2の長さを変更することにより、横に並べて設置するフック4の高さ位置を揃えることができ、フック4を介した複数台の連携設置等を一層良好に行うことができる。
【0043】
なお、バー1の長さ方向のスライドは、回転スライド機構301に代えて脚2に適用した係止スライド機構302に代えてもよい。また、脚2の高さ方向のスライドは、係止スライド機構302に代えてバー1に適用した回転スライド機構301に代えてもよい。
【0044】
さらに、これらのスライド機構は、
図14に示したものに限定されず、種々の変更が可能である。また、バー1に長尺板20を用いる
図11~
図13に示したものについても、バー1を長さ方向に伸縮自在にし、脚2を高さ方向に伸縮自在にしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…バー、2…脚、21…第1脚、22…第2脚、3…連結部材、31…バー連結部、32…脚連結部、4…フック、41…付け根、42…肉盛り、43…返り、5…支持軸、6…ピン、7…ハサミ、8…バネ、9…挟み機構