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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】保冷コンテナ
(51)【国際特許分類】
   F25D 3/00 20060101AFI20230627BHJP
   F25D 3/12 20060101ALI20230627BHJP
   F25D 16/00 20060101ALI20230627BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230627BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
F25D3/00 A
F25D3/12
F25D16/00
F25D11/00 101W
F25B21/02 T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019028506
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2020134024
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】515135114
【氏名又は名称】株式会社Eサーモジェンテック
(73)【特許権者】
【識別番号】596086251
【氏名又は名称】全日空商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池村 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 道生
(72)【発明者】
【氏名】大畑 惠一
(72)【発明者】
【氏名】南部 修太郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 健
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-215455(JP,A)
【文献】特開2003-156272(JP,A)
【文献】特開平10-132339(JP,A)
【文献】特開2006-145168(JP,A)
【文献】特開2000-081263(JP,A)
【文献】特開2008-043095(JP,A)
【文献】特開2003-269817(JP,A)
【文献】米国特許第04276752(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00-31/00
F25B 21/02
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却剤容器を備えた保冷収納庫と、
前記冷却剤容器からの冷気を、前記保冷収納庫内に循環させる循環気ファンと、
前記冷却剤容器の底面に装着された熱電発電モジュールと、
前記保冷収納庫内の温度を調整する温度制御器と
を備え、
前記冷却剤容器に、ドライアイスが収容されており、
前記熱電発電モジュールは、前記冷却剤容器の底面と、前記循環ンによって前記保冷収納庫内を循環し、前記温度制御器によって一定の温度に制御された循環冷気との温度差により発電され、
前記熱電発電モジュールで発電された熱電発電電力によって、前記温度制御器と前記循環気ファンとを駆動する、保冷コンテナ。
【請求項2】
前記熱電発電モジュールの循環冷気側の面に、放冷フィンが装着されている、請求項1に記載の保冷コンテナ。
【請求項3】
前記熱電発電モジュールの余剰の熱電発電電力が充電される二次電池をさらに備えている、請求項1または2に記載の保冷コンテナ。
【請求項4】
前記循環気ファンの停止時に、前記二次電池からの電力で、前記熱電発電モジュールをペルチェモードにして、前記冷却剤容器を冷却する、請求項に記載の保冷コンテナ。
【請求項5】
前記熱電発電モジュールの一部を、前記ペルチェモードにする、請求項に記載の保冷コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機等に搭載され、生鮮食品や冷凍食品等の冷蔵・冷凍品を低温で輸送する保冷コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生鮮食品や冷凍食品等の冷蔵・冷凍品を長距離輸送するケースが増えている。このような食品は、輸送中に品質を保つように定温で維持できる保冷コンテナに収納されている。
【0003】
特許文献1に、温度制御可能な保冷コンテナが開示されている。図6に示すように、特許文献1に開示された保冷コンテナ101は、前面に物品取出し用のドア103と保冷ボックス107とを備え、保冷ボックス107内の後面壁に、蓄冷装置109が取り付けられている。蓄冷装置109の蓄冷パネル111には、蓄冷剤125の凍結を制御する制御ユニット113が備えられている。また、保冷ボックス107の天井には、保冷ボックス107内の空気を撹拌して、温度の均一化を図る循環用ファン115が設けられている。なお、符号123は、冷凍サイクルを構成する蒸発パイプ、符号131は、冷却通路、符号135は、保冷ボックス107内の空気の吸込口、符号153は、制御用ファンである。
【0004】
この保冷コンテナ101の使用方法は、車両や航空機で輸送する場合、先ず、商用電源を用いて蓄冷装置109を運転し、蓄冷剤125を凍結させてから、保冷ボックス107に物品を収納し、車両、航空機に搭載する。そして、商用電源により、制御ユニット113を作動させて、制御用ファン153および循環用ファン115を駆動させて、保冷ボックス107内の温度の均一化、定温化を図るものである。
【0005】
また、簡便な構造として、特許文献2には、物品収納室に隣接してドライアイス等の保冷剤収納室を設け、送風機により両者の間に備えられた通風ダクトを通じて、保冷剤収納室と熱交換した冷気を、物品収納室に吹き出させる保冷コンテナが開示されている。ここで、送風機はバッテリー電源で駆動され、物品収容室内が、所定の温度になるように、サーモスタットで運転・停止が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2-290485号公報
【文献】特開2001-241816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された保冷コンテナでは、蓄冷装置が必要であり、使用前に蓄冷剤を凍結する時間を要するとともに、車両、航空機に搭載後は、商用電源の電力を消費するという課題がある。また、特許文献2に開示された保冷コンテナでも、バッテリー電源の消費・交換のコストが多大になる問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、その主な目的は、保冷収納庫内を循環気で定温に保つ保冷コンテナにおいて、冷却が効果的で、かつ自己発電電力で温度制御器と循環気ファンとを駆動できる手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る保冷コンテナは、冷却剤容器を備えた保冷収納庫と、冷却剤容器からの冷気を、保冷収納庫内に循環させる循環気ファンと、冷却剤容器の外面に装着された熱電発電モジュールと、保冷収納庫内の温度を調整する温度制御器とを備え、冷却剤容器と保冷収納庫内の循環冷気との温度差により、熱電発電モジュールで発電された熱電発電電力によって、温度制御器と循環気ファンとを駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単かつ手間のかからない構成により、自己発電電力で、保冷収納庫内の温度を均一化、定温化の機能を有する保冷コンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における保冷コンテナの構成図である。
図2】本発明の一実施形態における保冷コンテナの低温・定温動作時の電気回路図である。
図3】本発明の他の実施形態における保冷コンテナの電気回路図である。
図4】本発明の他の実施形態において、発電時の電気回路図である。
図5】本発明の他の実施形態において、ペルチェモード時の電気回路図である。
図6】従来の保冷コンテナの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態における保冷コンテナの構成を示した図である。また、図2は、保冷コンテナの保冷収納庫内の低温・定温動作時の電気回路図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態における保冷コンテナ1は、保冷収納庫2、冷却剤容器3、冷却剤容器3の外面に装着された熱電発電モジュール5、放冷フィン6、保冷収納庫2内の冷気を循環させる循環気ファン7、及び温度制御器11を主たる構成要素としている。なお、図1中の符号4は冷却剤の投入口の扉、符号10は保冷収納庫2の扉である。また、図2中の符号12はDC-DCコンバータ、符号13は温度センサーである。
【0015】
本実施形態における保冷コンテナ1の動作は次のとおりである。ステンレス製等の冷却剤容器3に、冷却剤(例えば、ドライアイス)を投入すると、熱電発電モジュール5は、冷却剤容器に装着側が冷却され、周辺外気と接する放冷フィンとの温度差で、直ちに発電が開始する。
【0016】
保冷収納庫2内に設けられた温度センサー13により、保冷収納庫2内の温度が設定より高い時は、循環気ファン7の電源ラインのスイッチをOnにして、循環気ファン7を駆動する。これにより、放冷フィン6で冷やされた空気は、矢印8a~8eの方向に沿って、保冷収納庫2内への冷気吹出し口9まで循環されて、保冷収納庫2内が冷却される。
【0017】
保冷収納庫2内の温度が設定値になれば、スイッチをOffにして循環気ファン7が停止し、この繰り返しで、保冷収納庫2内の温度がほぼ一定値に保たれる。
【0018】
本実施形態において、温度制御器11および循環気ファン7を駆動させる電力は、熱電発電モジュール5から供給される。なお、冷却剤容器に装着する熱電発電モジュール5の仕様(大きさや個数等)は、駆動する電力の大きさに合わせて、適宜決めればよい。また、DC-DCコンバータ12の仕様は、熱電発電モジュール5の出力電圧を、温度制御器11及び循環気ファン7の入力仕様(例えば、12V)に合わせて、適宜決めればよい。
【0019】
なお、冷却剤は、ドライアイスを用いることが好ましい。ドライアイスは、入手容易で、昇華温度が―79℃であるため、冷却剤として優れており、長時間に亘り、冷却剤容器3ひいては熱電発電モジュール5の装着面ならびに放冷フィン6の温度を維持することができる。
【0020】
また、熱電発電モジュール5は、冷却剤容器3の底面に装着することが好ましい。ドライアイスが消費されてきても、冷却剤容器3の底面は長時間に亘り低温度が維持できるため、熱電発電モジュール5による発電を長期に亘って維持することができる。
【0021】
保冷コンテナ1の具体的な動作環境としては、例えば、保冷収納庫2内の設定温度を―22℃、循環気ファン7の駆動開始温度を-21℃以上、温度制御器11及び循環気ファン7の駆動に必用な電力を6Wに設定すればよい。
【0022】
また、熱電発電モジュール5は、このような低温でも特性の落ちないBiTe系素子を使用し、素子専有面積が約300cmの熱電発電モジュール5を、冷却剤容器3の底面に装着することが好ましい。また、放冷フィン6は、素子専有面積の10倍程度の表面積を有するAlからなる放冷フィン6を使用することが好ましい。
【0023】
(他の実施形態1)
図3は、本発明の他の実施形態1における電気回路図である。本実施形態では、素子専有面積500cmの熱電発電モジュール5を使用し、余剰電力を二次電池15に充電する。ここで、符号14は電圧制御、過充電防止等の制御回路である。また、二次電池として、ニッケル水素電池等が使用できる。
【0024】
(他の実施形態2)
図4及び図5は、本発明の他の実施形態2における電気回路図である。
【0025】
図4は、図3と同じく、熱電発電モジュール5で発電し、温度制御器11および循環気ファン7を駆動するとともに、余剰電力を二次電池15に充電するモードである。
【0026】
図5は、循環気ファン7の停止時に、二次電池15からの電力で熱電発電モジュール5をペルチェモードにし、熱電発電モジュール5の冷却剤容器3側を冷却するモードである。なお、ペルチェモードで有効に冷却するには大電流が要るので、本実施形態では、熱電発電モジュール5を分割し、例えば、3つのモジュール51,52、53のように構成し、中央のモジュール52だけに電流を流すようにしている。このような動作を可能にする各回路のスイッチが、循環気ファン7の駆動スイッチと連動することを一点鎖線で繋げて示している。例えば、二次電池15の電圧は12V、ペルチェモードで電流を流すモジュール52は全体の1/3、電流は2.5A、吸熱量は約20Wに設定することができる。
【0027】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、冷却剤としてドライアイスの例を説明したが、他にポリアクリル酸ナトリウムを用いた蓄冷剤、エチレングリコールモノブチルエーテル等の冷媒を用いてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 保冷コンテナ
2 保冷収納庫
3 冷却剤容器
5 熱電発電モジュール
6 放冷フィン
7 循環気ファン
11 温度制御器
13 温度センサー
15 二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6