(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
F02D 11/02 20060101AFI20230627BHJP
F02D 11/10 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
F02D11/02 R
F02D11/10 U
F02D11/10 G
(21)【出願番号】P 2019137076
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】大城 幸男
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081564(JP,A)
【文献】特開2018-091201(JP,A)
【文献】特開2018-119454(JP,A)
【文献】特開2016-156631(JP,A)
【文献】特開2006-182178(JP,A)
【文献】特開2002-309811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 11/02
F02D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスロットルグリップの回転操作と共に回転し得る連動部材と、
前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
を具備したスロットルグリップ装置であって、
前記スロットルグリップは、正方向及び逆方向に回転操作可能とされるとともに、前記スロットルグリップが初期位置から正方向に回転操作されたとき、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされ、前記スロットルグリップが初期位置から逆方向に回転操作されたとき、車両のエンジンを始動可能
に構成され、
前記スロットルグリップの正方向の回転操作を前記回転角度検出手段で検知するとともに、前記スロットルグリップの逆方向の回転操作を検知可能なマイクロスイッチを具備し、前記マイクロスイッチは、突出及び後退して作動可能な作動部を具備するとともに、前記連動部材は、一方の面に傾斜面を有する突出部が形成され、且つ、前記作動部の作動方向が前記連動部材の突出部の一方の面に対して直交する方向となるよう前記マイクロスイッチが取り付けられ、前記連動部材が逆方向に回転すると、前記作動部が前記傾斜面にて押圧されてオンすることを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記連動部材は、前記スロットルグリップが正方向に回転操作されたとき、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢する第1付勢手段と、前記スロットルグリップが逆方向に回転操作されたとき、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢する第2付勢手段とを具備したことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記連動部材は、内径側に前記第1付勢手段が取り付けられるとともに、当該第1付勢手段の取付位置より外径側の部位に前記第2付勢手段が取り付けられたことを特徴とする請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記連動部材は、前記第2付勢手段を保持したスライド部材が取り付けられるとともに、前記スロットルグリップが逆方向に回転操作されたとき、当該スライド部材が前記連動部材に対して移動して前記第2付勢手段を圧縮し、当該第2付勢手段の圧縮で生じた付勢力が前記スロットルグリップに付与されることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記スライド部材は、前記連動部材の周方向に延びる円弧状部品から成り、前記スロットルグリップが逆方向に回転操作されたとき、前記連動部材の周方向に移動して前記第2付勢手段を圧縮可能とされたことを特徴とする請求項4記載のスロットルグリップ装置。
【請求項6】
前記回転角度検出手段は、前記連動部材の所定位置に取り付けられた磁石から生じる磁気の変化を検出することにより前記連動部材の回転角度を検出し得るセンサから成るとともに、前記磁石及びスライド部材は、前記連動部材の周方向に並設されたことを特徴とする請求項2~5の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置。
【請求項7】
前記磁石は、周方向に対して磁界が連続的に変化するよう構成され、前記連動部材の回動に伴って回動し得ることを特徴とする請求項6記載のスロットルグリップ装置。
【請求項8】
前記磁石は、円弧状に屈曲しつつ高さが連続的に変化するヘリカル面を有し、前記ヘリカル面に対して前記回転角度検出手段が対峙して取り付けられたことを特徴とする請求項7記載のスロットルグリップ装置。
【請求項9】
前記突出部は、前記連動部材の外径方向に一体的に突出形成されたことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両のエンジンが制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をポテンショメータ等のスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたスロットルグリップ装置が普及するに至っている。そして、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいてエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉が制御されるようになっている。
【0003】
従来のスロットルグリップ装置として、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップと連動する連動部材に磁石を取り付けるとともに、その磁石の磁気変化を磁気センサにて検出することにより、連動部材及びスロットルグリップの回転角度を検出してエンジン制御が行われるようになっていた。
【0004】
また、従来のスロットルグリップ装置は、正方向及び逆方向に回転操作可能なスロットルグリップを有し、スロットルグリップが初期位置から正方向に回転操作されたとき、磁気センサで検出されたスロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされ、スロットルグリップが初期位置から逆方向に回転操作されたとき、クルーズコントロール等の機能をオフするよう構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、正方向及び逆方向に回転操作可能なスロットルグリップを有し、スロットルグリップを逆方向に回転操作したとき、クルーズコントロール等の機能をオフすることができるものの、スロットルグリップを逆方向に回転操作した場合に、より効果的な機能を追加する要求が求められていた。しかるに、本出願人は、スロットルグリップを逆方向に回転操作した場合の、安全性及び操作性を向上させることができる機能を鋭意検討するに至った。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、スロットルグリップを逆方向に回転操作した場合に、より効果的、且つ、安全性及び操作性を向上させ得る機能を発揮させることができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、車両のスロットルグリップの回転操作と共に回転し得る連動部材と、前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段とを具備したスロットルグリップ装置であって、前記スロットルグリップは、正方向及び逆方向に回転操作可能とされるとともに、前記スロットルグリップが初期位置から正方向に回転操作されたとき、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされ、前記スロットルグリップが初期位置から逆方向に回転操作されたとき、車両のエンジンを始動可能に構成され、前記スロットルグリップの正方向の回転操作を前記回転角度検出手段で検知するとともに、前記スロットルグリップの逆方向の回転操作を検知可能なマイクロスイッチを具備し、前記マイクロスイッチは、突出及び後退して作動可能な作動部を具備するとともに、前記連動部材は、一方の面に傾斜面を有する突出部が形成され、且つ、前記作動部の作動方向が前記連動部材の突出部の一方の面に対して直交する方向となるよう前記マイクロスイッチが取り付けられ、前記連動部材が逆方向に回転すると、前記作動部が前記傾斜面にて押圧されてオンすることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材は、前記スロットルグリップが正方向に回転操作されたとき、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢する第1付勢手段と、前記スロットルグリップが逆方向に回転操作されたとき、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢する第2付勢手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材は、内径側に前記第1付勢手段が取り付けられるとともに、当該第1付勢手段の取付位置より外径側の部位に前記第2付勢手段が取り付けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載のスロットルグリップ装置において、前記連動部材は、前記第2付勢手段を保持したスライド部材が取り付けられるとともに、前記スロットルグリップが逆方向に回転操作されたとき、当該スライド部材が前記連動部材に対して移動して前記第2付勢手段を圧縮し、当該第2付勢手段の圧縮で生じた付勢力が前記スロットルグリップに付与されることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のスロットルグリップ装置において、前記スライド部材は、前記連動部材の周方向に延びる円弧状部品から成り、前記スロットルグリップが逆方向に回転操作されたとき、前記連動部材の周方向に移動して前記第2付勢手段を圧縮可能とされたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項2~5の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置において、前記回転角度検出手段は、前記連動部材の所定位置に取り付けられた磁石から生じる磁気の変化を検出することにより前記連動部材の回転角度を検出し得るセンサから成るとともに、前記磁石及びスライド部材は、前記連動部材の周方向に並設されたことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のスロットルグリップ装置において、前記磁石は、周方向に対して磁界が連続的に変化するよう構成され、前記連動部材の回動に伴って回動し得ることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載のスロットルグリップ装置において、前記磁石は、円弧状に屈曲しつつ高さが連続的に変化するヘリカル面を有し、前記ヘリカル面に対して前記回転角度検出手段が対峙して取り付けられたことを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記突出部は、前記連動部材の外径方向に一体的に突出形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、スロットルグリップが初期位置から正方向に回転操作されたとき、回転角度検出手段で検出されたスロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされ、スロットルグリップが初期位置から逆方向に回転操作されたとき、車両のエンジンを始動可能とされたので、スロットルグリップを逆方向に回転操作した場合に、より効果的、且つ、安全性及び操作性を向上させ得る機能を発揮させることができる。
【0018】
すなわち、スロットルグリップを逆方向に回転操作してエンジンを始動させるので、エンジンの始動操作時において、スロットルグリップが初期位置から正方向に回転操作されることはなく、エンジン始動と同時にスロットルグリップを正方向に回転操作してしまうのを確実に回避することができるとともに、スロットルグリップを確実に把持してエンジン始動操作を行うことができるので、安全性及び操作性を向上させることができる。
また、スロットルグリップの正方向の回転操作を回転角度検出手段で検知するとともに、スロットルグリップの逆方向の回転操作を検知可能なマイクロスイッチを具備したので、スロットルグリップの逆方向の回転操作をマイクロスイッチにより確実に検知することができ、エンジン始動時の操作性をより向上させることができる。
さらに、作動部の作動方向が連動部材の突出部の一方の面に対して直交する方向となるようマイクロスイッチが取り付けられ、連動部材が逆方向に回転すると、作動部が傾斜面にて押圧されてオンするので、連動部材が逆方向に回転した際、マイクロスイッチの作動部を適正なストロークの範囲で押圧させることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、連動部材は、スロットルグリップが正方向に回転操作されたとき、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢する第1付勢手段と、スロットルグリップが逆方向に回転操作されたとき、当該スロットルグリップ及び連動部材を初期位置に向かって回転方向に付勢する第2付勢手段とを具備したので、スロットルグリップの正方向の回転操作時と逆方向の回転操作時との操作感を異ならせることができ、それぞれの操作時において適切な付勢力を付与させることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、連動部材は、内径側に第1付勢手段が取り付けられるとともに、当該第1付勢手段の取付位置より外径側の部位に第2付勢手段が取り付けられたので、連動部材の径方向に第1付勢手段及び第2付勢手段を配設することができ、幅方向の寸法が増大してしまうのを抑制することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、連動部材は、第2付勢手段を保持したスライド部材が取り付けられるとともに、スロットルグリップが逆方向に回転操作されたとき、当該スライド部材が連動部材に対して移動して第2付勢手段を圧縮し、当該第2付勢手段の圧縮で生じた付勢力がスロットルグリップに付与されるので、スロットルグリップの逆方向の回転力をスライド部材に円滑且つ確実に伝達させることができ、スロットルグリップに対して第2付勢手段の付勢力を効率的に付与させることができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、スライド部材は、連動部材の周方向に延びる円弧状部品から成り、スロットルグリップが逆方向に回転操作されたとき、連動部材の周方向に移動して第2付勢手段を圧縮可能とされたので、スライド部材及びその移動範囲を連動部材に対して容易に形成することができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、回転角度検出手段は、連動部材の所定位置に取り付けられた磁石から生じる磁気の変化を検出することにより連動部材の回転角度を検出し得るセンサから成るとともに、磁石及びスライド部材は、連動部材の周方向に並設されたので、連動部材の径方向の寸法が増大してしまうのを抑制することができ、スロットルグリップ装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るスロットルグリップ装置の外観を示す正面図及び側面図
【
図4】同スロットルグリップ装置のケースを示す斜視図
【
図5】同スロットルグリップ装置の連動部材を示す3面図
【
図7】同連動部材にリターンスプリング及びスライド部材を組み付けた状態を示す3面図
【
図8】同連動部材にリターンスプリング及びスライド部材を組み付けた状態を示す斜視図
【
図9】同スロットルグリップ装置のリターンスプリングを示す斜視図
【
図10】同スロットルグリップ装置の保持部材を示す3面図
【
図11】同保持部材によって連動部材、リターンスプリング及び逆回転用リターンスプリングが一体構成とされた状態を示す平面図及び側面図
【
図12】同保持部材によって連動部材、リターンスプリング及び逆回転用リターンスプリングが一体構成とされた状態を示す斜視図
【
図13】同保持部材によって連動部材、リターンスプリング及び逆回転用リターンスプリングが一体構成とされた状態を示す斜視図
【
図14】同スロットルグリップ装置のスライド部材を示す5面図
【
図18】同スロットルグリップ装置の磁気センサと始動手段との接続関係を示すブロック図
【
図19】本発明の第2の実施形態に係るスロットルグリップ装置の外観を示す正面図及び側面図
【
図23】同スロットルグリップ装置のケースを示す斜視図
【
図24】同スロットルグリップ装置の連動部材を示す3面図
【
図26】同連動部材にリターンスプリング及びスライド部材を組み付けた状態を示す3面図
【
図27】同連動部材にリターンスプリング及びスライド部材を組み付けた状態を示す斜視図
【
図28】同保持部材によって連動部材、リターンスプリング及び逆回転用リターンスプリングが一体構成とされた状態を示す3面図
【
図29】同保持部材によって連動部材、リターンスプリング及び逆回転用リターンスプリングが一体構成とされた状態を示す斜視図
【
図30】同保持部材によって連動部材、リターンスプリング及び逆回転用リターンスプリングが一体構成とされた状態を示す斜視図
【
図31】同スロットルグリップ装置のマイクロスイッチの取付状態を示す模式図
【
図32】同スロットルグリップ装置のマイクロスイッチの取付状態を示す側面図
【
図33】同スロットルグリップ装置のマイクロスイッチと始動手段との接続関係を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、
図1に示すように、二輪車のハンドルパイプHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送信するためのもので、
図1~25に示すように、連動部材1と、磁気センサ2(回転角度検出手段)と、リターンスプリング3(第1付勢手段)と、保持部材4と、スライド部材5と、逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)と、ケースCとを有して構成されている。
【0029】
連動部材1は、車両のスロットルグリップGの回転操作と共に回転し得るもので、
図5、6に示すように、略円筒形状の樹脂成形品から成り、スロットルグリップGの嵌合部Ga(
図2参照)を嵌合し得る被嵌合部1aと、リターンスプリング3を収容するための収容凹部1bと、リターンスプリング3の一端3aを係止するための係止部1cと、所定位置で突出したストッパ部1dとが形成されている。
【0030】
また、本実施形態に係る連動部材1は、その一方の端面に円弧状の磁石mが取り付けられている。かかる磁石mは、周方向に対して磁界が連続的に変化するよう構成されており、連動部材1の回転に伴って回動し得るようになっている。かかる磁石mは、円弧状に屈曲しつつ高さが連続的に変化するヘリカル面を有したものであってもよく、その場合、連動部材1に取り付けられた状態で、ヘリカル面と対峙させて磁気センサ2(回転角度検出手段)を配設させる必要がある。
【0031】
さらに、収容凹部1bは、連動部材1の一方の端面において円環状に形成された溝形状から成り、その一部と連続した係止部1cが形成されている。そして、収容凹部1bにリターンスプリング3を収容すると、
図7、8に示すように、コイル部3cが収容凹部1bに嵌入されるとともに、一端3aが係止部1cに嵌入して係止されるようになっている。これにより、リターンスプリング3が連動部材1に内在されることとなり、幅寸法を小さくすることができる。
【0032】
ケースCは、二輪車(車両)のハンドルパイプH(
図3参照)の先端側(スロットルグリップGの基端側)に固定されたもので、
図3、4に示すように、下ケースCa及び上ケースCbをボルトB(
図3参照)にて組み付けて構成される。これら下ケースCa及び上ケースCbには、
図4に示すように、それぞれ収容凹部が形成されており、下ケースCa及び上ケースCbが組み付けられることにより、内部に収容空間が形成されるようになっている。なお、下ケースCaの壁面には、
図4に示すように、ネジ穴nが形成されており、下ケースCa内の所定位置に保持部材4をネジ止め可能とされている。
【0033】
磁気センサ2(回転角度検出手段)は、
図2、3に示すように、下ケースCaの所定位置に配設されたセンサから成り、磁石mから生じる磁気の変化を検出することにより、連動部材1の回転角度を検出し、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ2は、磁石mの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。しかして、スロットルグリップGが回転操作されて連動部材1が回転するのに伴い、磁石mが回動すると、磁気が変化することとなる。
【0034】
これにより、連動部材1の回転角度によって磁気が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材1の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンが制御され得るようになっている。なお、図中符号hは、磁気センサ2から延設された配線を示しており、かかる配線hを介して車両側に検出信号が送信されるよう構成されている。
【0035】
本実施形態に係るスロットルグリップGは、運転者が把持可能とされて二輪車のハンドルパイプH(
図3参照)に対して回転操作可能なもので、
図1に示すように、運転者の手前側に向かう方向に回転させる正方向(α1)の回転操作と、運転者から遠ざかる方向に回転させる逆方向(α2)の回転操作との両方の操作が可能とされている。そして、本実施形態においては、スロットルグリップGが正方向α1に回転操作されたとき、当該スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に向かって回転方向に付勢する第1付勢手段としてのリターンスプリング3と、スロットルグリップGが逆方向α2に回転操作されたとき、当該スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に向かって回転方向に付勢する第2付勢手段としての逆回転用リターンスプリング6とを具備している。
【0036】
リターンスプリング3(第1付勢手段)は、スロットルグリップGの正方向α1の回転操作時、当該スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に向かって回転方向に付勢するねじりコイルバネから成り、
図9に示すように、連動部材1の係止部1cに係止される一端3a、保持部材4の係止部4aに係止される他端3b、及び一端3a及び他端3bの間に位置するコイル部3cとを有して構成されている。
【0037】
このように、リターンスプリング3は、その一端3aが連動部材1に取り付けられ、且つ、他端3bが保持部材4に取り付けられて組み付けられており、スロットルグリップGを正方向α1に回転させると、リターンスプリング3の付勢力に抗して連動部材1が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に戻す力が作用するのである。
【0038】
逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)は、スロットルグリップGの逆方向α2の回転操作時、当該スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に向かって回転方向に付勢するコイルバネから成り、連動部材1において弧状に形成された収容凹部1i(
図5参照)に収容されている。また、連動部材1の収容凹部1iには、
図7に示すように、スライド部材5が取り付けられ、かかるスライド部材5の移動によって逆回転用リターンスプリング6が圧縮されて付勢力が生じ得るようになっている。
【0039】
スライド部材5は、
図5~8に示すように、連動部材1の周方向に延びる円弧状部品から成り、
図14~17に示すように、逆回転用リターンスプリング6を保持する収容凹部5aと、逆転用リターンスプリング6の一端を受けるバネ受け部5bと、保持部材4の保持部4c(
図13参照)と当接する当接部5cと、連動部材1に形成された案内溝1g(
図12参照)に挿通する突出部5dとが一体的に形成されている。
【0040】
そして、逆回転用リターンスプリング6が収容凹部5aに保持された状態のスライド部材5を連動部材1の収容凹部1iに収容すると、逆回転用リターンスプリング6の一端がスライド部材5のバネ受け部5bに当接するとともに、当該逆回転用リターンスプリング6の他端が収容凹部5aの壁部に当接するようになっている。これにより、スロットルグリップGが逆方向α2に回転操作されたとき、当該スライド部材5が連動部材1に対して周方向に移動して逆回転用リターンスプリング6を圧縮し、当該逆回転用リターンスプリング6の圧縮で生じた付勢力がスロットルグリップGに付与されるので、スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に戻す力が作用することとなる。
【0041】
また、スライド部材5が連動部材1の収容凹部1iに組み付けられると、当該スライド部材5の突出部5dが連動部材1の案内溝1gに挿通するよう構成されており、スロットルグリップGが逆方向α2に回転操作されたとき、突出部5dが案内溝1gに沿って移動するので、スライド部材5の移動が案内溝1gにて案内されることとなる。これにより、スライド部材5の移動を円滑且つ正確に行わせることができる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る連動部材1は、
図5~8に示すように、内径側にリターンスプリング3(第1付勢手段)が取り付けられるとともに、当該リターンスプリング3の取付位置より外径側の部位に逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)が取り付けられており、且つ、磁石m及びスライド部材5は、連動部材1の周方向に並設されている。また、本実施形態に係る連動部材1は、磁石m及びスライド部材5が並設された周方向において、バネ7及び押圧部品8が取り付けられており、バネ7の付勢力で押圧部品8が保持部材4に向かって付勢されるよう構成されている。これにより、連動部材1の回転時、所望の摩擦力が付与されて操作感を向上し得るようになっている。
【0043】
保持部材4は、連動部材1を位置決めしつつ回転可能に保持するとともに、リターンスプリング3の他端3bを係止しつつ保持するもので、
図10に示すように、リターンスプリング3の他端3bを係止する係止部4aと、連動部材1を位置決めしつつ保持する案内部4bと、所定位置に形成された保持部4cとが形成された金属製の板状部材から成る。なお、保持部材4の所定位置には、ネジ穴nが形成されており、下ケースCa内の所定位置に保持部材4をネジ止め可能とされている。
【0044】
係止部4aは、保持部材4の一部を折り曲げ形成して得られた部位から成るもので、リターンスプリング3の他端3bを確実に係止し得るよう構成されている。案内部4bは、保持部材4の一部をバーリング加工等により円環状に突出形成された部位から成り、
図2に示すように、連動部材1に一体形成された円環状壁部1e(
図8参照)を挿通することにより連動部材1を回転可能に嵌合して位置決め(特に、径方向の位置決め)可能とされている。
【0045】
保持部4cは、
図12、13に示すように、スライド部材5の当接部5cと当接して周方向に保持する部位から成るもので、スロットルグリップGが逆方向α2に回転操作されて同方向に連動部材1が回転する際、スライド部材5を係止して同方向に対する回転を規制することにより、連動部材1とスライド部材5とを相対的に移動させ得るようになっている。これにより、スロットルグリップGが逆方向α2に回転操作されると、連動部材1とスライド部材5とが相対的に移動して逆回転用リターンスプリング6を圧縮し、当該逆回転用リターンスプリング6の圧縮で生じた付勢力がスロットルグリップGに付与されることとなる。なお、スロットルグリップGが逆方向α2に所定角度回転操作されると、連動部材1のストッパ部1dが保持部4cで係止された当接部5cに当接することとなり、それ以上の回転操作が規制される。
【0046】
一方、スロットルグリップGが逆方向α2に回転操作された場合は、リターンスプリング3の付勢力が逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)で生じる付勢力とは反対方向に発生するものの、当該逆回転用リターンスプリング6の方がリターンスプリング3の付勢力よりも大きく設定されているため、逆回転用リターンスプリング6の付勢力のみが連動部材1及びスロットルグリップGに付与されることとなる。なお、スロットルグリップGが正方向α1に回転操作されると、スライド部材5の当接部5cは保持部4cと離間する方向に移動するので、連動部材1と共にスライド部材5が回転して逆回転用リターンスプリング6による付勢力は生じない。
【0047】
加えて、本実施形態においては、収容凹部1bにリターンスプリング3を収容した状態において、リターンスプリング3の他端3bを保持部材4の係止部4aに係止した後、リターンスプリング3のコイル部3cが捩れて所定の付勢力が生じる方向に保持部材4及び連動部材1を相対的に一定角度回転させ、スライド部材5の当接部5cに保持部材4の保持部4cを当接させる。
【0048】
しかるに、本実施形態に係るリターンスプリング3(第1付勢手段)は、逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)より初期設定荷重が低く設定されているので、当接部5c及び保持部4cの当接状態においては、逆回転用リターンスプリング6の圧縮はなされず、保持部材4の保持部4cがリターンスプリング3の付勢力を受けることとなり、保持部材4がリターンスプリング3で付勢された連動部材1を保持することができる。
【0049】
これにより、保持部材4は、収容凹部1bに収容されたリターンスプリング3の他端3bを係止して連動部材1を所定の付勢力を持って保持するので、
図11~13に示すように、連動部材1、リターンスプリング3及び逆回転用リターンスプリング6が一体構成とされる。このように、保持部材4により一体構成とされた連動部材1、リターンスプリング3及び逆回転用リターンスプリング6は、ユニットYとされ、
図2に示すように、ケースC内の所定位置に取り付けられて固定される。
【0050】
さらに、本実施形態に係るリターンスプリング3は、回転方向(スロットルグリップGを正方向α1に回転した際の初期位置に向かう方向)に加え、連動部材1を軸方向βに付勢するものとされている。具体的には、本実施形態に係るリターンスプリング3は、
図9に示すように、隣合う巻き線の間に隙間を生じさせたコイル部3cとされており、保持部材4により一体構成とされた状態(
図11~13で示すユニットYとされた状態)において、
図2に示すように、ケースCに収容されると、コイル部3cの巻き線の間の隙間が小さくなる方向に圧縮されることとなり、連動部材1を軸方向βに付勢するようになっている。
【0051】
これにより、連動部材1は、リターンスプリング3による軸方向βの付勢力にて一方の端面がケースCの内周面に押圧された状態で組み付けられることとなる。したがって、スロットルグリップGを回転操作すると、連動部材1がリターンスプリング3又は逆回転用リターンスプリング6の付勢力に抗して回転し、当該連動部材1の一方の端面がケースCの内周面に押圧された状態で摺動することとなる。
【0052】
ここで、本実施形態に係るスロットルグリップ装置においては、スロットルグリップGが初期位置から正方向α1に回転操作されたとき、磁気センサ2で検出されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされ、スロットルグリップGが初期位置から逆方向α2に回転操作されたとき、車両のエンジンを始動可能とされている。
【0053】
具体的には、本実施形態に係る磁気センサ2は、スロットルグリップGの正方向α1及び逆方向α2の回転操作を検出可能とされており、
図18に示すように、エンジンEを始動するための始動手段Rと電気的に接続されている。そして、スロットルグリップGが初期位置から逆方向α2に回転したことを磁気センサ2にて検出されると、その検出信号が始動手段Rに出力され、車両に搭載されたエンジンEを始動するよう構成されている。
【0054】
始動手段Rは、エンジンEを始動し得るものであれば足り、例えば、エンジンEを始動するためのスタータリレーであってもよく、或いはエンジンEを制御するためのECU(engine control unit)に形成したものであってもよい。なお、始動手段RがECUに形成されたものとした場合、スロットルグリップGが正方向α1又は逆方向α2に回転したとき、何れの場合でも磁気センサ2の検出信号がECUに出力されることとなる。
【0055】
これにより、運転者がスロットルグリップGを把持しつつ初期位置から逆方向α2に回転操作することにより、車両のエンジンEを始動させることができ、スロットルグリップGを初期位置に戻した後、そのスロットルグリップGの把持を維持しつつ初期位置から正方向α1に回転操作することにより、当該スロットルグリップGの回転角度に応じてエンジンEを制御することができ、任意速度による走行が可能となる。
【0056】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、
図19に示すように、二輪車のハンドルパイプHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送信するためのもので、
図19~28に示すように、連動部材1と、磁気センサ2(回転角度検出手段)と、リターンスプリング3(第1付勢手段)と、保持部材4と、スライド部材5と、逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)と、ケースCと、マイクロスイッチSとを有して構成されている。
【0057】
連動部材1は、車両のスロットルグリップGの回転操作と共に回転し得るもので、
図24、25に示すように、略円筒形状の樹脂成形品から成り、スロットルグリップGの嵌合部Ga(
図20参照)を嵌合し得る被嵌合部1aと、リターンスプリング3を収容するための収容凹部1bと、リターンスプリング3の一端3aを係止するための係止部1cと、所定位置で突出したストッパ部1dとが形成されている。
【0058】
また、本実施形態に係る連動部材1は、その一方の端面に円弧状の磁石mが取り付けられている。かかる磁石mは、周方向に対して磁界が連続的に変化するよう構成されており、連動部材1の回転に伴って回動し得るようになっている。かかる磁石mは、円弧状に屈曲しつつ高さが連続的に変化するヘリカル面を有したものであってもよく、その場合、連動部材1に取り付けられた状態で、ヘリカル面と対峙させて磁気センサ2(回転角度検出手段)を配設させる必要がある。
【0059】
さらに、収容凹部1bは、連動部材1の一方の端面において円環状に形成された溝形状から成り、その一部と連続した係止部1cが形成されている。そして、収容凹部1bにリターンスプリング3を収容すると、
図26、27に示すように、コイル部3cが収容凹部1bに嵌入されるとともに、一端3aが係止部1cに嵌入して係止されるようになっている。これにより、リターンスプリング3が連動部材1に内在されることとなり、幅寸法を小さくすることができる。
【0060】
さらに、本実施形態に係る連動部材1は、
図24~28に示すように、外径方向に一体的に突出形成された突出部1hを有している。かかる突出部1hは、一方の面に傾斜面Qが形成されており、
図31に示すように、上ケースCbに取り付けられたマイクロスイッチSの作動部Saを傾斜面Qにて押圧可能とされている。すなわち、上ケースCbの所定位置に形成された取付部Nには、取付ボルトfにて取付部品Tが固定されており、かかる取付部品TにマイクロスイッチSが取り付けられている。
【0061】
本実施形態に係るマイクロスイッチSは、突出及び後退して作動可能な作動部Saを具備しており、
図32に示すように、その作動部Saの作動方向が突出部1hの一方の面に対して直交する方向となるよう取り付けられている。そして、連動部材1が逆方向α2に回転すると、マイクロスイッチSの作動部Saが傾斜面Qにて押圧されて後退し、スイッチが電気的にオンするようになっている。
【0062】
ケースCは、第1の実施形態と同様、二輪車(車両)のハンドルパイプH(
図21参照)の先端側(スロットルグリップGの基端側)に固定されたもので、
図21~23に示すように、下ケースCa及び上ケースCbをボルトB(
図21参照)にて組み付けて構成される。これら下ケースCa及び上ケースCbには、
図23に示すように、それぞれ収容凹部が形成されており、下ケースCa及び上ケースCbが組み付けられることにより、内部に収容空間が形成されるようになっている。なお、下ケースCaの壁面には、
図23に示すように、ネジ穴nが形成されており、下ケースCa内の所定位置に保持部材4をネジ止め可能とされている。
【0063】
なお、磁気センサ2(回転角度検出手段)、リターンスプリング3(第1付勢手段)、保持部材4、スライド部材5、逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)、バネ7及び押圧部品8については、第1の実施形態と同様の部品であり、詳細な説明を省略する。また、本実施形態に係るスロットルグリップGは、第1の実施形態と同様、運転者が把持可能とされて二輪車のハンドルパイプH(
図21参照)に対して回転操作可能なもので、
図19に示すように、運転者の手前側に向かう方向に回転させる正方向(α1)の回転操作と、運転者から遠ざかる方向に回転させる逆方向(α2)の回転操作との両方の操作が可能とされている。
【0064】
しかるに、本実施形態に係るリターンスプリング3(第1付勢手段)は、第1の実施形態と同様、逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)より初期設定荷重が低く設定されているので、当接部5c及び保持部4cの当接状態においては、逆回転用リターンスプリング6の圧縮はなされず、保持部材4の保持部4cがリターンスプリング3の付勢力を受けることとなり、保持部材4がリターンスプリング3で付勢された連動部材1を保持することができる。
【0065】
これにより、保持部材4は、収容凹部1bに収容されたリターンスプリング3の他端3bを係止して連動部材1を所定の付勢力を持って保持するので、
図26~30に示すように、連動部材1、リターンスプリング3及び逆回転用リターンスプリング6が一体構成とされる。このように、保持部材4により一体構成とされた連動部材1、リターンスプリング3及び逆回転用リターンスプリング6は、ユニットYとされ、
図20、22に示すように、ケースC内の所定位置に取り付けられて固定される。
【0066】
さらに、本実施形態に係るリターンスプリング3は、第1の実施形態と同様、回転方向(スロットルグリップGを正方向α1に回転した際の初期位置に向かう方向)に加え、連動部材1を軸方向βに付勢するものとされている。具体的には、本実施形態に係るリターンスプリング3は、
図9に示すように、隣合う巻き線の間に隙間を生じさせたコイル部3cとされており、保持部材4により一体構成とされた状態(
図26~30で示すユニットYとされた状態)において、
図20、22に示すように、ケースCに収容されると、コイル部3cの巻き線の間の隙間が小さくなる方向に圧縮されることとなり、連動部材1を軸方向βに付勢するようになっている。
【0067】
これにより、連動部材1は、リターンスプリング3による軸方向βの付勢力にて一方の端面がケースCの内周面に押圧された状態で組み付けられることとなる。したがって、スロットルグリップGを回転操作すると、連動部材1がリターンスプリング3又は逆回転用リターンスプリング6の付勢力に抗して回転し、当該連動部材1の一方の端面がケースCの内周面に押圧された状態で摺動することとなる。
【0068】
ここで、本実施形態に係るスロットルグリップ装置においては、スロットルグリップGが初期位置から正方向α1に回転操作されたとき、磁気センサ2で検出されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされ、スロットルグリップGが初期位置から逆方向α2に回転操作されたとき、車両のエンジンを始動可能とされている。
【0069】
具体的には、本実施形態に係る磁気センサ2は、スロットルグリップGの正方向α1の回転操作を検出可能とされるとともに、スロットルグリップGの逆方向α2の回転操作をマイクロスイッチSにて検出可能とされており、かかるマイクロスイッチSは、
図33に示すように、エンジンEを始動するための始動手段Rと電気的に接続されている。そして、スロットルグリップGが初期位置から逆方向α2に回転したことをマイクロスイッチSにて検出されると、その検出信号が始動手段Rに出力され、車両に搭載されたエンジンEを始動するよう構成されている。
【0070】
始動手段Rは、第1の実施形態と同様、エンジンEを始動し得るものであれば足り、例えば、エンジンEを始動するためのスタータリレーであってもよく、或いはエンジンEを制御するためのECU(engine control unit)に形成したものであってもよい。なお、始動手段RがECUに形成されたものとした場合、スロットルグリップGが正方向α1又は逆方向α2に回転したとき、何れも場合でも磁気センサ2又はマイクロスイッチSの検出信号がECUに出力されることとなる。
【0071】
これにより、運転者がスロットルグリップGを把持しつつ初期位置から逆方向α2に回転操作することにより、車両のエンジンEを始動させることができ、スロットルグリップGを初期位置に戻した後、そのスロットルグリップGの把持を維持しつつ初期位置から正方向α1に回転操作することにより、当該スロットルグリップGの回転角度に応じてエンジンEを制御することができ、任意速度による走行が可能となる。
【0072】
上記第1、2の実施形態によれば、スロットルグリップGが初期位置から正方向α1に回転操作されたとき、磁気センサ2(回転角度検出手段)で検出されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンEを制御可能とされ、スロットルグリップGが初期位置から逆方向α2に回転操作されたとき、車両のエンジンEを始動可能とされたので、スロットルグリップGを逆方向α2に回転操作した場合に、より効果的、且つ、安全性及び操作性を向上させ得る機能を発揮させることができる。
【0073】
すなわち、スロットルグリップGを逆方向α2に回転操作してエンジンEを始動させるので、エンジンEの始動操作時において、スロットルグリップGが初期位置から正方向α1に回転操作されることはなく、エンジン始動と同時にスロットルグリップGを正方向α1に回転操作してしまうのを確実に回避することができるとともに、スロットルグリップGを確実に把持してエンジン始動操作を行うことができるので、安全性及び操作性を向上させることができる。
【0074】
また、上記第1、2の実施形態に係る連動部材1は、スロットルグリップGが正方向α1に回転操作されたとき、当該スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に向かって回転方向に付勢するリターンスプリング3(第1付勢手段)と、スロットルグリップGが逆方向α2に回転操作されたとき、当該スロットルグリップG及び連動部材1を初期位置に向かって回転方向に付勢する逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)とを具備したので、スロットルグリップGの正方向α1の回転操作時と逆方向α2の回転操作時との操作感を異ならせることができ、それぞれの操作時において適切な付勢力を付与させることができる。
【0075】
さらに、上記第1、2の実施形態に係る連動部材1は、内径側にリターンスプリング3(第1付勢手段)が取り付けられるとともに、当該リターンスプリング3(第1付勢手段)の取付位置より外径側の部位に逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)が取り付けられたので、連動部材1の径方向にリターンスプリング3(第1付勢手段)及び逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)を配設することができ、幅方向の寸法が増大してしまうのを抑制することができる。
【0076】
またさらに、上記第1、2の実施形態に係る連動部材1は、逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)を保持したスライド部材5が取り付けられるとともに、スロットルグリップGが逆方向α2に回転操作されたとき、当該スライド部材5が連動部材1に対して移動して逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)を圧縮し、当該逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)の圧縮で生じた付勢力がスロットルグリップGに付与されるので、スロットルグリップGの逆方向α2の回転力をスライド部材5に円滑且つ確実に伝達させることができ、スロットルグリップGに対して逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)の付勢力を効率的に付与させることができる。
【0077】
加えて、上記第1、2の実施形態に係るスライド部材5は、連動部材1の周方向に延びる円弧状部品から成り、スロットルグリップGが逆方向α2に回転操作されたとき、連動部材1の周方向に移動して逆回転用リターンスプリング6(第2付勢手段)を圧縮可能とされたので、スライド部材5及びその移動範囲を連動部材1に対して容易に形成することができる。
【0078】
また、上記第1、2の実施形態に係る磁気センサ2(回転角度検出手段)は、連動部材1の所定位置に取り付けられた磁石mから生じる磁気の変化を検出することにより連動部材1の回転角度を検出し得るセンサから成るとともに、磁石m及びスライド部材5は、連動部材1の周方向に並設されたので、連動部材1の径方向の寸法が増大してしまうのを抑制することができ、スロットルグリップ装置の小型化を図ることができる。
【0079】
さらに、第1の実施形態によれば、スロットルグリップGの正方向α1及び逆方向α2の回転操作を磁気センサ2(回転角度検出手段)で検知可能とされたので、スロットルグリップGの逆方向α2の回転操作を検知するための別個のスイッチを不要とすることができ、部品点数を削減することができる。一方、第2の実施形態によれば、スロットルグリップGの正方向α1の回転操作を磁気センサ2(回転角度検出手段)で検知するとともに、スロットルグリップGの逆方向α2の回転操作を検知可能なマイクロスイッチSを具備したので、スロットルグリップGの逆方向α2の回転操作をマイクロスイッチSにより確実に検知することができ、エンジン始動時の操作性をより向上させることができる。
【0080】
特に、第2の実施形態によれば、マイクロスイッチSは、突出及び後退して作動可能な作動部Saを具備するとともに、連動部材1は、一方の面に傾斜面Qを有する突出部1hが形成され、且つ、作動部Saの作動方向が連動部材1の突出部1hの一方の面に対して直交する方向となるようマイクロスイッチSが取り付けられ、連動部材1が逆方向α2に回転すると、作動部Saが傾斜面Qにて押圧されてオンするので、連動部材1が逆方向α2に回転した際、マイクロスイッチSの作動部Saを適正なストロークの範囲で押圧させることができる。
【0081】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば連動部材1がスロットルグリップG(具体的には、スロットルグリップGの芯材)と一体とされたものであってもよい。この場合、連動部材1は、上記実施形態と同様、保持部材4によって保持されてリターンスプリング3と一体構成とされるので、連動部材1がスロットルグリップGと別体とされたものに比べ、部品点数を削減することができるとともに、スロットルグリップ装置の組み付け作業性を向上させることができる。
【0082】
さらに、スロットルグリップGの回転角度を検出する磁気センサ2に代えて、他の汎用的なセンサ(磁石の磁気を検出するものに限らないとともに、非接触式のセンサに限らず接触式のセンサ等も含む)としてもよい。またさらに、磁石mに代えて、連動部材1の周方向に着磁したものであってもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
スロットルグリップが初期位置から正方向に回転操作されたとき、回転角度検出手段で検出されたスロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされ、スロットルグリップが初期位置から逆方向に回転操作されたとき、車両のエンジンを始動可能とされたスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 連動部材
1a 被嵌合部
1b 収容凹部
1c 係止部
1d ストッパ部
1e 円環状壁部
1f 収容穴
1g 案内溝
1h 突出部
1i 収容凹部
2 磁気センサ(回転角度検出手段)
3 リターンスプリング(第1付勢手段)
3a 一端
3b 他端
3c コイル部
4 保持部材
4a 係止部
4b 案内部
4c 保持部
5 スライド部材
5a 収容凹部
5b バネ受け部
5c 当接部
5d 突出部
6 逆回転用リターンスプリング(第2付勢手段)
7 バネ
8 押圧部品
C ケース
Ca 下ケース
Cb 上ケース
m 磁石
h 配線
R 始動手段
Q 傾斜面
f 取付ボルト
Cb1 取付部
T 取付部品
S マイクロスイッチ
Sa 作動部
E エンジン
Y ユニット