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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】締結部材及び金物接合構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 25/10 20060101AFI20230627BHJP
   F16B 25/04 20060101ALI20230627BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20230627BHJP
   E04B 1/26 20060101ALN20230627BHJP
   E04B 1/58 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
F16B25/10 B
F16B25/04 B
F16B7/18 D
E04B1/26 G
E04B1/58 508L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019183902
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021060068
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-10-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 配布日 平成30年10月9日~令和元年6月11日 配布先 日本全国34か所
(73)【特許権者】
【識別番号】500167928
【氏名又は名称】シネジック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519360062
【氏名又は名称】豐合科技股▲分▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519360073
【氏名又は名称】進旌工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】苅部 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】林 政達
(72)【発明者】
【氏名】陳 永明
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-279853(JP,A)
【文献】特開平10-339314(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166368(JP,U)
【文献】特開昭59-017011(JP,A)
【文献】登録実用新案第3141603(JP,U)
【文献】実開昭57-193315(JP,U)
【文献】特開2003-287011(JP,A)
【文献】特開2002-180551(JP,A)
【文献】特開2003-013500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 25/10
F16B 25/04
F16B 7/18
E04B 1/26
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金物接合構造において木質材料によって構成される構造部材と接合金物とを締結するための締結部材であって、
軸部と、
前記軸部の基端に設けられた頭部と、
前記軸部の先端に設けられた穿孔部と、を備え、
前記軸部は、
前記頭部に隣接する第1のねじ部と、
前記穿孔部に隣接する第2のねじ部と、
前記第1のねじ部及び前記第2のねじ部の間に介在する円筒部と、を有し、
前記第1のねじ部は、第1のねじ山を含み、
前記穿孔部は、半円状に突出した複数の切れ刃を含み、
前記第2のねじ部は、前記穿孔部から前記円筒部に向けて切削くずを導く第2のねじ山を含む、
締結部材。
【請求項2】
前記円筒部の外径は、前記第2のねじ部の外径よりも小さい、
請求項1に記載の締結部材。
【請求項3】
前記円筒部の外径及び前記第2のねじ部の外径は、それぞれ、前記穿孔部の幅よりも小さい、
請求項1または請求項2に記載の締結部材。
【請求項4】
前記第2のねじ山の傾斜は、前記第1のねじ山の傾斜よりも緩やかである、
請求項1~3のいずれか一項に記載の締結部材。
【請求項5】
前記頭部から前記切れ刃に亘る全体が中炭素鋼の合金によって構成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の締結部材。
【請求項6】
木質材料によって構成される第1の構造部材と、
前記第1の構造部材の側面に対面する端面を有し、木質材料によって構成される第2の構造部材と、
前記第1の構造部材に固定される第1の被固定部と、前記第1の被固定部に接合され、前記第2の構造部材に固定される板状の第2の被固定部と、を有し、前記第1の構造部材及び前記第2の構造部材を接合する接合金物と、
前記第2の構造部材及び前記接合金物を締結する請求項1~5のいずれか一項に記載された締結部材と、を備え、
前記第2の構造部材には、前記端面から当該端面に交差して延び、前記第2の被固定部が配置されるスリットが設けられ、
前記締結部材は、前記第2の構造部材における前記スリットの一方側と、前記第2の被固定部と、前記第2の構造部材における前記スリットの他方側とに亘って挿通されている、
金物接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結部材及び金物接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木質材料によって構成される構造部材同士を接合する際に鋼板等の接合金物を継手として用いる金物接合構造が知られている。例えば特許文献1には、一方の構造部材(例えば柱)の側面に接合金物をビス等で固定し、当該接合金物を他方の構造部材(例えば梁)の端部のスリットに挿入した状態で、締結部材(例えばドリフトピン)によって接合金物を他方の構造部材に固定する金物接合構造が記載されている。この金物接合構造では、他方の構造部材への接合金物の固定において、他方の構造部材及び接合金物の両方に例えばドリル等によって予めピン挿入穴を形成しておき、後からこのピン挿入穴に締結部材を挿入させて、他方の構造部材及び接合金物を締結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-54082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金物接合構造において、挿通孔の形成及び締結を同時に行う自己穿孔型の締結部材が用いられる場合がある。そのような場合、構造部材及び接合金物は締結部材の先端の刃によってそれぞれ穿孔される。本発明者らは、自己穿孔型の締結部材として、例えば金属製の部材同士の接合に用いられるような締結部材を適用すれば、接合金物を穿孔する際のスピードアップを図ることができると考えた。一方、金属製の部材同士の接合に用いられるような自己穿孔型の締結部材の先端の刃は、木質材料で構成される構造部材を穿孔する際に、木質材料からなる部材のみの接合に用いられる締結部材(所謂、木ねじ)と比較して、多くの切削くず(木くず、金属くず等)を発生する。穿孔されて形成された孔にこの切削くずが詰まると、穿孔の妨げとなってしまう。
【0005】
本発明は、構造部材と接合金物とを締結する際の作業効率を向上できる締結部材及び金物接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る締結部材は、金物接合構造において木質材料によって構成される構造部材と接合金物とを締結するための締結部材であって、軸部と、軸部の基端に設けられた頭部と、軸部の先端に設けられた穿孔部と、を備え、軸部は、頭部に隣接する第1のねじ部と、穿孔部に隣接する第2のねじ部と、第1のねじ部及び第2のねじ部の間に介在する円筒部と、を有し、第1のねじ部は、第1のねじ山を含み、穿孔部は、半円状に突出した複数の切れ刃を含み、第2のねじ部は、穿孔部から円筒部に向けて切削くずを導く第2のねじ山を含む。
【0007】
本発明に係る締結部材においては、穿孔部が複数の切れ刃を含み、複数の切れ刃のそれぞれが半円状に突出している。この構成により、各切れ刃が被穿孔部材(構造部材及び接合金物)に点で接して穿孔するので、切れ刃への摩擦が低減される。このため、穿孔のスピードアップを図ることができる。また、第2のねじ部が、穿孔部から円筒部に向けて切削くずを導く第2のねじ山を含んでいる。これにより、穿孔部において発生した切削くずは、第2のねじ部によって円筒部に導かれ、円筒部を通過して外部に排出される。このため、切削くずを排出しながら穿孔できるので、穿孔されて形成された孔に切削くずが詰まりにくい。したがって、切削くずによって穿孔が妨げられることを回避できる。以上により、構造部材と接合金物とを締結する際の作業効率を向上できる。
【0008】
本発明に係る締結部材において、円筒部の外径は、第2のねじ部の外径よりも小さくてもよい。本発明に係る締結部材において、円筒部の外径及び第2のねじ部の外径は、それぞれ、穿孔部の幅よりも小さくてもよい。本発明に係る締結部材において、第2のねじ山の傾斜は、第1のねじ山の傾斜よりも緩やかであってもよい。これらの構成によれば、穿孔部において発生した切削くずを、第2のねじ山によって円筒部に導きやすい。
【0009】
本発明に係る締結部材において、頭部から穿孔部に亘る全体が中炭素鋼の合金によって構成されていてもよい。ここで、従来の締結部材(例えば木ねじ)は、通常、低炭素鋼によって構成される。しかしながら、木ねじに多く用いられる低炭素鋼で構成される切れ刃では、接合金物が比較的剛性の高い材料で構成されている場合には、当該接合金物を穿孔することが困難である。これに対し、中炭素鋼の合金によって構成された切れ刃によれば、低炭素鋼の場合と比較して切れ刃の硬度を高めることができる。したがって、比較的高い剛性の材料によって構成された接合金物を穿孔することが可能である。
【0010】
本発明に係る金物接合構造は、木質材料によって構成される第1の構造部材と、第1の構造部材の側面に対面する端面を有し、木質材料によって構成される第2の構造部材と、第1の構造部材に固定される第1の被固定部と第2の構造部材に固定される板状の第2の被固定部と、を有し、第1の構造部材及び第2の構造部材を接合する接合金物と、第2の構造部材及び接合金物を締結する上記の締結部材と、を備え、第2の構造部材には、端面から当該端面に交差して延び、第2の被固定部が配置されるスリットが設けられ、締結部材は、第2の構造部材におけるスリットの一方側と、第2の被固定部と、第2の構造部材におけるスリットの他方側とに亘って挿通されていてもよい。この場合、第2の構造部材及び接合金物を締結する部材として上記の締結部材を備えるので、第2の構造部材及び接合金物を締結する際の作業効率を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構造部材と接合金物とを締結する際の作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る金物接合構造の概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、図1のII―II線に沿った断面図である。
図3図3は、図1に示す締結部材の側面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図5は、図3の穿孔部を軸方向の先端側から見た図である。
図6図6(a)は、図3の第1のねじ山の拡大図であり、図6(b)は、図3の第2のねじ山の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0014】
まず、金物接合構造について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る金物接合構造の概略構成を示す斜視図である。図1に示される金物接合構造1は、柱2(第1の構造部材)と、梁3(構造部材;第2の構造部材)と、接合金物4と、締結部材5と、を備える。金物接合構造1は、接合金物4を継手として用いて、柱2と梁3とを接合する構造である。
【0015】
柱2及び梁3は、例えば木質材料からなる角材によって構成されている。柱2は、上下方向に延びる4つの側面21を有する。梁3は、一の側面21に対面する端面31と、端面31に交差して延びる2つの側面32と、上面33と、下面34と、を有する。梁3には、端面31の中央部から端面31に交差する方向に沿って延びるスリット35が設けられている。スリット35は、梁3の上面33から下面34に亘っている。梁3には、一方の側面32から他方の側面32に向かってそれぞれ延びる複数の孔3hが設けられている。複数の孔3hは、それぞれ、スリット35を通る位置に設けられている。
【0016】
接合金物4は、例えば鋼材によって構成されている。接合金物4は、柱2に固定される柱固定部41(第1の被固定部)と梁3に固定される梁固定部42(第2の被固定部)とを有する。柱固定部41及び梁固定部42は、例えばそれぞれ板状である。一例として、柱固定部41及び梁固定部42は、それぞれ、鋼板によって構成されている。接合金物4は、例えばT字形状であって、板状の梁固定部42の端面が板状の柱固定部41の主面に溶接されて構成されている。柱固定部41は、柱2の一の側面21と梁3の端面31との間に配置され、例えば木ねじBによって当該側面21に固定されている。梁固定部42は、梁3のスリット35内に配置(挿入)されている。梁固定部42には、梁3の複数の孔3hにそれぞれ連なる複数の孔42hが設けられている。
【0017】
締結部材5は、梁3と梁固定部42とを締結している。図2は、図1のII―II線に沿った断面図である。なお、図1においては、梁3と梁固定部42とを締結した状態の締結部材5を仮想線で示している。図1及び図2に示されるように、締結部材5は、梁3の側面32に交差(例えば直交)する方向に沿って延びている。締結部材5は、梁3におけるスリット35の一方側S1と、梁固定部42と、梁3におけるスリット35の他方側S2とに亘って、孔3h,42hに挿通されている。締結部材5は、梁3におけるスリット35の他方側S2においては、側面32まで貫通していない。すなわち、締結部材5の先端は、梁3におけるスリット35の他方側S2のうち中実部に位置している。これにより、締結部材5は、梁固定部42を梁3に固定している。以下、締結部材5について詳細に説明する。
【0018】
図3は、図1に示す締結部材の側面図である。図3に示されるように、締結部材5は、軸心C(図5参照)を有する軸部53と、軸部53の基端に設けられた頭部51と、軸部53の先端に設けられた穿孔部52と、を有する。頭部51は、金物接合構造1において、梁3の一方の側面32から露出している(図1参照)。頭部51は、当該側面32に食い込んでいる。頭部51の頂面は、当該側面32と面一であってもよい。穿孔部52及び軸部53は、金物接合構造1において、孔3hあるいは孔42hに配置されている。締結部材5においては、頭部51から穿孔部52に亘る全体が中炭素鋼の合金からなる一部品によって構成されている。
【0019】
図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。図4に示されるように、頭部51の外形は、例えば円形状である。頭部51には、リセス51hが設けられている。リセス51hは、頭部51の頂面から軸部53に向けて凹んだ部分である。リセス51hの形状は、例えば六芒星状である。締結作業の際、リセス51hには、当該リセス51hに嵌め合う形状を呈した締結治具(不図示;例えばビット等)が嵌め込まれる。その状態で、当該締結治具の操作によって締結部材5が被締結部材(ここでは、梁3及び接合金物4)内に回転しながら進入し、締結部材5が被締結部材に螺着される。このようにして、梁3及び接合金物4が締結される。
【0020】
図5は、図3の穿孔部を軸方向の先端側から見た図である。図3及び図5に示されるように、穿孔部52は、軸部53に連続して設けられて被締結部材(ここでは、梁3及び接合金物4)に孔(ここでは、孔3h,42h)を形成する本体部52aと、本体部52aの先端に設けられて被締結部材を切削する一対の切削部52bと、を有する。一対の切削部52bは、それぞれ、軸方向に突出する複数(例えば3つ)の切れ刃52cを含む。
【0021】
本体部52aは、各切削部52bの回転方向Rの前側に連続して形成された略平坦な一対のすくい面52sと、これらのすくい面52sと先端ねじ部55の谷底部55u(後述)との間に形成された略平坦な一対の排出面52wとを含む。また、本体部52aは、各切削部52bの回転方向Rの後ろ側に連続して形成された半円筒状の一対の逃げ面52tを含む。すなわち、穿孔部52は、切削部52b、すくい面52s、排出面52w、及び逃げ面52tをそれぞれ一対ずつ含む。一対の切削部52b、すくい面52s、排出面52w、及び逃げ面52tは、締結部材5の軸心Cに対して線対称(2回の回転対称)に形成されている。
【0022】
穿孔部52は、軸方向に直交する方向において幅Dを有している。複数の切れ刃52cは、それぞれ、穿孔部52の先端において半円状に突出している。各切削部52bの複数の切れ刃52cは、半径上に並ぶように設けられている。一対の切削部52bにおいて、複数(例えば6つ)の切れ刃52cが軸心Cを通る直径上に並んでいる。一対の切削部52bの全体幅が、その直径に相当すると共に本体部52aの幅Dに相当する。
【0023】
締結部材5が被締結部材(梁3及び接合金物4)内に回転しながら進入するとき、一対の切削部52bが被締結部材を切削し、本体部52a(一対のすくい面52s及び一対の排出面52w)が、一対の切削部52bとの協働により、被締結部材に孔3h,42hを形成する(穿孔する)。このようにして、穿孔部52は、締結部材5が被締結部材内に回転しながら進入するときに、被締結部材を穿孔するドリルビットとして機能する。図1の金物接合構造1における孔3h,42hは、穿孔部52によって穿孔されて形成される。
【0024】
図3に示されるように、軸部53は、頭部51に隣接する首下ねじ部(第1のねじ部)54と、穿孔部52に隣接する先端ねじ部(第2のねじ部)55と、首下ねじ部54及び先端ねじ部55の間に介在する円筒部56と、を有する。
【0025】
首下ねじ部54は、螺旋状のねじ山54s(第1のねじ山)を含む雄ねじである。首下ねじ部54は、例えば一条ねじである。首下ねじ部54には、ねじ山54sによって山頂部54tと谷底部54uとが形成されている。首下ねじ部54は、図1及び図2の金物接合構造1において、孔3hのうち梁3の一方の側面32側(スリット35の一方側S1)に位置するとともに当該位置にて孔3hに螺合している。
【0026】
先端ねじ部55は、螺旋状のねじ山55s(第2のねじ山)を含む雄ねじである。先端ねじ部55は、多条ねじ(例えば二条ねじ)である。先端ねじ部55には、ねじ山55sによって山頂部55tと谷底部55uとが形成されている。先端ねじ部55の外径φ2(図6の山頂部55tに接する仮想的な円筒の直径)は、首下ねじ部54の外径φ1(図6の山頂部54tに接する仮想的な円筒の直径)よりも小さい。外径φ2は、例えば7.00mmである。先端ねじ部55は、図1及び図2の金物接合構造1において、孔3hのうち梁3の他方の側面32側(スリット35の他方側S2)に位置している。なお、先端ねじ部55は、孔3hに螺合していなくてもよい。本実施形態においては、首下ねじ部54が孔3hに螺合することにより、締結部材5が梁3及び接合金物4を締結している。
【0027】
先端ねじ部55において、ねじ山55sは、締結部材5が被締結部材(ここでは、梁3及び接合金物4)内に回転しながら進入したときに、穿孔部52から円筒部56に向けて切削くずを導く機能を有する。そのために、先端ねじ部55の外径φ2は、穿孔部52の幅Dよりも小さい。幅Dは、例えば7.50mmである。また、ねじ山54sのピッチよりもねじ山55sのピッチの方が大きい。
【0028】
図6を参照して、本実施形態におけるねじ山54s及びねじ山55sの構成について、より具体的に説明する。図6(a)は、図3のねじ山54sの拡大図であり、図6(b)は、図3のねじ山55sの拡大図である。図6に示されるように、先端ねじ部55のねじ山55sの傾斜は、首下ねじ部54のねじ山54sの傾斜よりも緩やかである。具体的には、ねじ山54sの傾斜角θ1よりもねじ山55sの傾斜角θ2の方が大きい。本実施形態において、ねじ山55sは、進み側の面(締結部材5が被締結部材に進入する方向に対面する面)と追い側の面(進み側の面と反対の面)とが対称に傾斜して形成された、いわゆる対称ねじである。ねじ山55sの傾斜面は、外側に膨らむように湾曲している。
【0029】
締結部材5においては、ねじ山54sのリード角δ1よりもねじ山55sのリード角δ2の方が大きい。ねじ山54sの高さH1よりもねじ山55sの高さH2の方が小さい。また、ねじ山55sの軸方向の長さL1は、谷底部55uの軸方向の長さL2と同じか長さL2よりも長い。切削くずを詰まりにくくする観点から、ねじ山55sの谷底部55uは曲面状を呈していてもよい。さらに、本実施形態において、ねじ山55sの山頂部55tは、曲面状を呈している。
【0030】
図3に戻り、円筒部56は、ねじ山のない部分である。円筒部56の軸方向の中央部は、図1及び図2の金物接合構造1において、梁固定部42の孔42hに位置している。これにより、例えば、梁3が自重等によって降下しようとした際、円筒部56は、梁3に埋め込まれた2点(首下ねじ部54及び先端ねじ部55)の中間地点において直接あるいは切削くずを介して接合金物4に支持されることで、梁3を支持し得る。
【0031】
円筒部56は、締結部材5が被締結部材(ここでは、梁3及び接合金物4)内に回転しながら進入したときに、切削くずの通路として機能する。そのために、本実施形態において、円筒部56の外径φ3は、先端ねじ部55の外径φ2よりも小さく、且つ穿孔部52の幅Dよりも小さい。外径φ3は、例えば6.85mmである。ただし、外径φ3は、外径φ2及び幅Dの少なくとも一方よりも小さければよい。この構成により、締結部材5が被締結部材(ここでは、梁3及び接合金物4)内に回転しながら進入したときに、穿孔部52が形成した孔3h,42hの内表面と円筒部56の外表面との間に隙間ができるので、当該隙間にて切削くずを通過させて外部に排出することができる。
【0032】
続けて、図1を参照し、金物接合構造1において、柱2及び梁3を接合する方法の一例について説明する。まず、柱2の一の側面21に、接合金物4の柱固定部41を木ねじBによって固定する。次に、梁3のスリット35内に梁固定部42が配置されるように、梁3の端面31を上記側面21に近接させる。
【0033】
その状態で、梁3におけるスリット35の一方側S1と、梁固定部42と、梁3におけるスリット35の他方側S2とに亘って締結部材5が挿通するように、梁3の一方の側面32から締結部材5を進入させる。なお、締結部材5の進入前において、梁3及び梁固定部42には孔が設けられていない。ここでは、締結部材5を進入させることにより、梁3及び梁固定部42への穿孔と、梁3及び梁固定部42の締結とを同時に行う。
【0034】
このとき、締結部材5が回転しながら梁3及び梁固定部42に進入するので、穿孔部52は、梁3及び梁固定部42を切削して、梁3及び梁固定部42のそれぞれに直径が幅Dである孔(孔3h,42h)を形成する。ここで、梁3及び梁固定部42が複数の切れ刃52cによって切削されることにより、形成された孔3h、42hのうち穿孔部52の先端付近には多くの切削くずが発生する。これらの切削くずは、すくい面52sにすくわれるとともに、すくい面52s及び排出面52wによってかき集められるように回収されて、先端ねじ部55の谷底部55uに到達する。そして、切削くずは、先端ねじ部55のねじ山55sに沿うようにして、円筒部56に向かって谷底部55uを進み、円筒部56に導かれる。その後、切削くずは、穿孔部52が形成した孔3h,42hの内表面と円筒部56の外表面との間の隙間を通過して、梁3の一方の側面32から外部に排出される。これにより、切削くずに穿孔が阻害されることが回避された状態で、梁3及び梁固定部42への穿孔と、梁3及び梁固定部42の締結とが実行される。梁3及び梁固定部42に所定数の締結部材5を挿通させたら、柱2及び梁3の接合が完了する。
【0035】
以上説明した締結部材5及び金物接合構造1の作用効果について説明する。本実施形態に係る締結部材5においては、穿孔部52が複数の切れ刃52cを含み、複数の切れ刃52cのそれぞれが半円状に突出している。この構成により、各切れ刃52cが被穿孔部材(梁3及び接合金物4)に点で接して穿孔するので、切れ刃52cへの摩擦が低減される。このため、穿孔のスピードアップを図ることができる。また、先端ねじ部55が、穿孔部52から円筒部56に向けて切削くずを導くねじ山55sを含んでいる。これにより、穿孔部52において発生した切削くずは、先端ねじ部55によって円筒部56に導かれ、円筒部56を通過して外部に排出される。このため、切削くずを排出しながら穿孔できるので、穿孔されて形成された孔3h,42hにおいて穿孔部52の先端付近に切削くずが詰まりにくい。したがって、切削くずによって穿孔が妨げられることを回避できる。以上により、梁3と接合金物4とを締結する際の作業効率を向上できる。
【0036】
円筒部56の外径φ3は、先端ねじ部55の外径φ2よりも小さいので、孔3h,42hの内表面と円筒部56の外表面との間に、切削くずが通過するのに十分な隙間が確保される。外径φ3及び外径φ2は、それぞれ、穿孔部52の幅Dよりも小さいので、穿孔部52において切削くずが発生しても、先端ねじ部55及び円筒部56が進入可能な孔3h、42hを形成し得る。ねじ山55sの傾斜は、ねじ山54sの傾斜よりも緩やかである。以上の構成により、穿孔部52において発生した切削くずを、ねじ山55sによって円筒部56に導きやすい。
【0037】
ところで、従来の締結部材(例えば木ねじ)は、通常、低炭素鋼によって構成される。しかしながら、木ねじに多く用いられる低炭素鋼で構成される切れ刃では、接合金物4が比較的剛性の高い材料で構成されている場合に、当該接合金物4を穿孔することが困難である。ここで、例えば高炭素鋼で締結部材5を構成することにより、切れ刃の硬度を高くすることも考えられる。しかしながら、高炭素鋼によって締結部材5の全体を構成することは困難である。高炭素鋼が、頭部51のリセス51hの成形に適していないためである。また、切れ刃(穿孔部)のみを高炭素鋼によって構成することも考えられる。しかしながら、この場合、切れ刃(穿孔部)と他の部分とを接合(例えば溶接)する必要が生じ、接合箇所において強度が低下してしまう。これにより、締結部材5の穿孔能力も低下する場合がある。
【0038】
これに対し、締結部材5は、頭部51から穿孔部52に亘る全体が中炭素鋼の合金からなる一部品によって構成されているので、低炭素鋼の場合と比較して切れ刃の硬度を高めることができるとともに、接合箇所等による強度の低下が抑制される。したがって、比較的高い剛性の材料によって構成された接合金物4を穿孔することが可能である。
【0039】
本実施形態に係る金物接合構造1は、木質材料によって構成される柱2と、柱2の一の側面21に対面する端面31を有し、木質材料によって構成される梁3と、柱2に固定される柱固定部41と、柱固定部41に接合され、梁3に固定される板状の梁固定部42と、を有し、柱2及び梁3を接合する接合金物4と、梁3及び接合金物4を締結する上記の締結部材5と、を備える。梁3には、端面31から当該端面31に交差して延び、梁固定部42が配置されるスリット35が設けられている。締結部材5は、梁3におけるスリット35の一方側S1と、梁固定部42と、梁3におけるスリット35の他方側S2とに亘って挿通されている。この金物接合構造1は、梁3及び接合金物4を締結する部材として上記の締結部材5を備えるので、梁3及び接合金物4を締結する際の作業効率を向上できる。
【0040】
以上の実施形態は、本発明に係る締結部材及び金物接合構造の一実施形態について説明したものである。本発明に係る締結部材及び金物接合構造は、上述した実施形態を任意に変更したものとすることができる。
【0041】
例えば、接合される2つの構造部材としては、柱2及び梁3の場合に限定されない。例えば、接合される2つの構造部材が同種(例えば2つの柱あるいは2つの梁等)であってもよい。また、接合される構造部材は、柱及び梁以外の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…金物接合構造、2…柱(第1の構造部材)、21…側面、3…梁(構造部材;第2の構造部材)、31…端面、35…スリット、4…接合金物、5…締結部材、51…頭部、52…穿孔部、52c…切れ刃、53…軸部、54…首下ねじ部(第1のねじ部)、54s…ねじ山(第1のねじ山)、55…先端ねじ部(第2のねじ部)、55s…ねじ山(第2のねじ山)、56…円筒部、D…幅、φ1~φ3…外径、S1…一方側、S2…他方側。
図1
図2
図3
図4
図5
図6