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特許7302819故障点位置標定システム、親局、親局の制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】故障点位置標定システム、親局、親局の制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20200101AFI20230627BHJP
   H02H 7/26 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
G01R31/08
H02H7/26 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019189253
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021063747
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000144108
【氏名又は名称】株式会社三英社製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 久征
(72)【発明者】
【氏名】絹村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】小林 和博
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108254657(CN,A)
【文献】特開2004-132762(JP,A)
【文献】特開2005-121434(JP,A)
【文献】特開2012-189392(JP,A)
【文献】特開平02-103478(JP,A)
【文献】実開平05-011739(JP,U)
【文献】特開平07-256216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/08-31/11、
H02H 7/22-7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線路に設置される複数の子局と、前記各子局によって検出される零相電圧及び零相電流に基づいて前記各子局のサージ到達時刻の差を算出し、前記サージ到達時刻の差に基づいて故障点の位置を標定する親局と、を含んで構成される故障点位置標定システムであって、
前記親局は、
前記零相電流の波形を処理する際に、カットオフ周波数を超える前記配電線路に重畳する零相成分の高周波ノイズの影響を除去するデジタルフィルタと、
前記故障点の位置を標定することができるまで、前記デジタルフィルタの前記カットオフ周波数を初期値から下限値までの範囲内で一定値ずつ低く設定する処理を繰り返す周波数処理部と、
を備えたことを特徴とする故障点位置標定システム。
【請求項2】
前記初期値は、数MHzの周波数であり、
前記下限値は、数百KHzの周波数であり、
前記一定値は、数十KHzの周波数である
ことを特徴とする請求項に記載の故障点位置標定システム。
【請求項3】
配電線路に設置される複数の子局と、前記各子局によって検出される零相電圧及び零相電流に基づいて前記各子局のサージ到達時刻の差を算出し、前記サージ到達時刻の差に基づいて故障点の位置を標定する親局と、を含んで構成される故障点位置標定システムに用いられる前記親局であって、
前記零相電流の波形を処理する際に、カットオフ周波数を超える前記配電線路に重畳する零相成分の高周波ノイズの影響を除去するデジタルフィルタと、
前記故障点の位置を標定することができるまで、前記デジタルフィルタの前記カットオフ周波数を初期値から下限値までの範囲内で一定値ずつ低く設定する処理を繰り返す周波数処理部と、
を備えたことを特徴とする親局。
【請求項4】
前記初期値は、数MHzの周波数であり、
前記下限値は、数百KHzの周波数であり、
前記一定値は、数十KHzの周波数である
ことを特徴とする請求項に記載の親局。
【請求項5】
配電線路に設置される複数の子局と、前記各子局によって検出される零相電圧及び零相電流に基づいて前記各子局のサージ到達時刻の差を算出し、前記サージ到達時刻の差に基づいて故障点の位置を標定する親局と、を含んで構成される故障点位置標定システムに用いられる前記親局の制御方法であって、
前記親局において、
前記故障点の位置を標定することができるまで、前記零相電流の波形を処理する際にカットオフ周波数を超える前記配電線路に重畳する零相成分の高周波ノイズの影響を除去するためのデジタルフィルタの前記カットオフ周波数を、初期値から下限値までの範囲内で一定値ずつ低く設定する処理を繰り返す
ことを特徴とする親局の制御方法。
【請求項6】
配電線路に設置される複数の子局と、前記各子局によって検出される零相電圧及び零相電流に基づいて前記各子局のサージ到達時刻の差を算出し、前記サージ到達時刻の差に基づいて故障点の位置を標定する親局と、を含んで構成される故障点位置標定システムに用いられる前記親局のコンピュータに、
前記親局が前記故障点の位置を標定することができるまで、前記親局に設けられる前記零相電流の波形を処理する際にカットオフ周波数を超える前記配電線路に重畳する零相成分の高周波ノイズの影響を除去するためのデジタルフィルタの前記カットオフ周波数を、初期値から下限値までの範囲内で一定値ずつ低く設定する処理を繰り返す機能を実現させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障点位置標定システム、親局、親局の制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱等)を用いた分散型電源を設置する場合、例えば、分散型電源で発生する直流電力を一般の電気器具で使用可能な交流電力に変換する機能、分散型電源を商用電力系統と連系運転する機能、分散型電源を自動運転する機能、等を備えたパワーコンディショナーを分散型電源とともに付設する必要がある。
【0003】
近年、分散型電源の設置数の増加に伴ってパワーコンディショナーの設置数も増加し、パワーコンディショナー等のインバータ機器に起因して配電線路に重畳する零相成分の高周波ノイズの影響を無視できなくなっている。
【0004】
例えば、配電線路に地絡事故が発生したときの故障点の位置を標定するシステムでは、零相電流の波形を処理する過程でこのような高周波ノイズの影響を除去するローパスフィルタを採用している。(例えば、特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-196819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、高周波ノイズの周波数は、パワーコンディショナーの仕様、設置数等の条件によって、配電線路の架設場所ごとに異なっている。従って、固定の周波数帯域を有するローパスフィルタを採用しても、高周波ノイズの影響を完全に除去することはできない。一方、配電線路の架設場所ごとに高周波ノイズに対応する周波数帯域を有するローパスフィルタを採用しても、パワーコンディショナーの設置条件が変わってしまうと高周波ノイズの影響を完全に除去することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、配電線路に重畳する零相成分の高周波ノイズの周波数に関わらず、故障点の位置を標定する際に当該高周波ノイズの影響を除去することが可能な故障点位置標定システム、親局、親局の制御方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する主たる本発明は、配電線路に設置される複数の子局と、前記各子局によって検出される零相電圧及び零相電流に基づいて前記各子局のサージ到達時刻の差を算出し、前記サージ到達時刻の差に基づいて故障点の位置を標定する親局と、を含んで構成される故障点位置標定システムであって、前記親局は、前記零相電流の波形を処理する際に、カットオフ周波数を超える前記配電線路に重畳する零相成分の高周波ノイズの影響を除去するデジタルフィルタと、前記故障点の位置を標定することができるまで、前記デジタルフィルタの前記カットオフ周波数を初期値から下限値までの範囲内で一定値ずつ低く設定する処理を繰り返す周波数処理部と、を備える。
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配電線路に重畳する零相成分の高周波ノイズの周波数に関わらず、故障点の位置を標定する際に当該高周波ノイズの影響を除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る故障点位置標定システムを概略的に示す図である。
図2】本実施形態に係る故障点位置標定システムに用いられる子局の一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る故障点位置標定システムに用いられる親局の一例を示すブロック図である。
図4】本実施形態に係る故障点位置標定システムにおいて、親局が子局から取得する零相電流と地絡事故の検出時刻との関係を示す図である。
図5】本実施形態に係る故障点位置標定システムに用いられる親局におけるデジタルフィルタのカットオフ周波数を変更するための処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る故障点位置標定システムに用いられる子局の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態に係る故障点位置標定システムに用いられる親局の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
===故障点位置標定システム===
【0012】
図1は、本実施形態に係る故障点位置標定システムを概略的に示す図である。
故障点位置標定システム1は、配電線路10に地絡事故が発生したときの故障点位置を標定するシステムである。故障点位置標定システム1は、配電線路10上の故障点位置を標定するための手段として、複数の子局20及び親局30を含んで構成されている。尚、説明の便宜上、複数の子局20は、2つの子局20A、20Bであることとする。
【0013】
子局20A、20Bは、配電線路10に設置され、配電線路10に地絡事故が発生したときの零相電流の情報を、GPS衛星40から受信する時刻情報に対応付けた情報を、親局30に送信する装置である。親局30は、子局20A、20Bから上記の情報を受信することによって、子局20A、20Bのサージ到達時刻の差を算出し、当該サージ到達時刻の差に基づいて故障点位置を標定する装置である。尚、親局30が子局20A、20Bのサージ到達時刻の差を算出することができるように、子局20A、20Bは、配電線路10上に対して所定の距離を介して設置されることとする。
子局20A、20B及び親局30の詳細については、後述する。
===子局===
【0014】
図2は、本実施形態に係る故障点位置標定システムに用いられる子局の一例を示すブロック図である。尚、本実施形態において、子局20A、20Bは同一の構成であるため、一方の子局20Aについて以下に説明する。
【0015】
子局20Aは、電流センサ201、電圧センサ202、アナログフィルタ203、204、高速A/D変換回路205、零相電圧検出回路206、アンテナ207、GPS受信機208、同期分周回路209、書込制御回路210、メモリ211、コントローラ212、データ通信装置213を含んで構成されている。
【0016】
電流センサ201は、配電線路10に流れる零相電流を検出するセンサであって、配電線路10に設置されている。
【0017】
電圧センサ202は、配電線路10に現れる零相電圧を検出するセンサであって、配電線路10における電流センサ201の近傍に設置されている。
【0018】
高速A/D変換回路205は、電流センサ201によって検出された零相電流の波形をアナログ値からデジタル値(波形データ)へ変換する回路であって、折り返し雑音を除去するアナログフィルタ203を介して電流センサ201と接続されている。
【0019】
一般に、配電線路10に地絡事故が発生した場合、零相電圧は商用周波数領域において急激に変化することが知られている。そこで、零相電圧検出回路206は、電圧センサ202によって検出された零相電圧を監視し、零相電圧が商用周波数領域において急激に変化したタイミングを検出する回路であって、折り返し雑音を除去するアナログフィルタ204を介して電圧センサ202と接続されている。例えば、零相電圧検出回路206は、零相電圧が所定の閾値電圧を超えたときに、零相電圧が急激に変化したこととして検出する。
【0020】
そして、本実施形態では、零相電圧を用いて地絡事故のタイミングを検出し、零相電流を用いてサージ到達時間を特定することとする。
【0021】
GPS受信機208は、アンテナ207を介してGPS衛星40から時刻情報を受信する。当該時刻情報は、1秒を周期とするクロック信号CL0である。
【0022】
同期分周回路209は、1秒よりも短い時間を周期とする高速クロック信号CL1を内部で自走発振するとともにクロック信号CL0に同期させる。同期後のクロック信号CL1は、1秒未満の詳細な時刻データをタイムスタンプとするために用いられる。
【0023】
書込制御回路210には、高速A/D変換回路205から出力される零相電流の波形データと、零相電圧検出回路206から出力される零相電圧が商用周波数領域において急激に変化したか否かを示す検出信号と、同期分周回路209から出力される同期後のクロック信号CL1と、が入力される。
【0024】
メモリ211は、第1記憶エリア211A及び第2記憶エリア211Bを有している。第1記憶エリア211Aには、コントローラ212の動作を制御するためのプログラムが予め記憶されている。第2記憶エリア211Bには、高速A/D変換回路205から出力される零相電流の波形データが記憶される。更に、第2記憶エリア211Bには、零相電圧検出回路206の検出出力を契機として、同期分周回路209から出力される同期後のクロック信号CL1に基づいて得られる時刻データが記憶される。第2記憶エリア211Bのアドレス空間は、例えば、零相電流の波形データを順次記憶するとともに更新することができるように、仮想リング状に配置されている。
【0025】
零相電圧検出回路206によって零相電圧が商用周波数領域において急激に変化したことが検出されていない場合、書込制御回路210は、高速A/D変換回路205から出力される零相電流の波形データを、高速A/D変換回路205のサンプリング周期に従ってメモリ211に順次記憶させる。一方、零相電圧検出回路206によって零相電圧が商用周波数領域において急激に変化したことが検出された場合、書込制御回路210は、高速A/D変換回路205から出力された、零相電圧検出回路206による検出前後の一連の零相電流の波形データを、同期分周回路209から出力される同期後のクロック信号CL1に基づいて得られる時刻データと対応付けてメモリ211に記憶させる。
【0026】
コントローラ212は、メモリ211の第1記憶エリア211Aに記憶されているプログラムに従って、親局30からの要求に応じて、メモリ211の第2記憶エリア211Bに対応付けて記憶されている零相電流の波形データ及び時刻データを読み出す。
【0027】
データ通信装置213は、子局20と親局30との間の通信を行うインターフェースである。コントローラ212は、データ通信装置213を介して、メモリ211の第2記憶エリア211Bから読み出された零相電流の波形データ及び時刻データを親局30に送信する。
===親局===
【0028】
図3は、本実施形態に係る故障点位置標定システムに用いられる親局の一例を示すブロック図である。
【0029】
親局30は、コントローラ301、記憶装置302、データ通信装置303、入出力装置304を含んで構成されている。
【0030】
コントローラ301は、要求指示部301A、サージ到達時刻算出部301B、故障点位置標定部301C、デジタルフィルタ301D、周波数処理部301Eを含んで構成されている。尚、要求指示部301A、サージ到達時刻算出部301B、故障点位置標定部301C、デジタルフィルタ301D、周波数処理部301Eのそれぞれの機能は、記憶装置302に記憶されているコントローラ301の動作を制御するためのプログラムを実行することによって実現される。
【0031】
要求指示部301Aは、子局20A(20B)に対して、メモリ211に記憶されている零相電流の波形データ及び時刻データを親局30に送信することを指示する第1指示信号を生成する。又、要求指示部301Aは、周波数処理部301Eに対して、故障点位置の標定が不明である場合に、カットオフ周波数を変更することを指示する第2指示信号を生成して出力する。
【0032】
デジタルフィルタ301Dは、サージ到達時刻算出部301Bにおいて故障点から子局20A(20B)までのサージ到達時刻を算出する前の処理として、子局20A(20B)から取得した零相電流の波形データから、パワーコンディショナー等のインバータ機器に起因して配電線路10に重畳する零相成分の高周波ノイズを除去するフィルタである。つまり、デジタルフィルタ301Dは、子局20A(20B)から取得した零相電流の波形データに基づいて、要求指示部301Aからの第2指示信号のカットオフ周波数のフィルタ処理を行った波形を生成する。
【0033】
周波数処理部301Eは、子局20A(20B)から取得した零相電流の波形データから零相成分の高周波ノイズを除去するために、デジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数を、この高周波ノイズの周波数を含む周波数帯域に変化するように制御する。尚、周波数処理部301Eの具体的な制御方法については後述する。
【0034】
サージ到達時刻算出部301Bは、デジタルフィルタ301Dが生成した零相電流の波形データ及び時刻データに基づいて、故障点から子局20A(20B)までのサージ到達時刻を算出する。
【0035】
故障点位置標定部301Cは、子局20A(20B)のサージ到達時刻の差に基づいて故障点位置を標定する。
【0036】
記憶装置302は、第1記憶エリア302A及び第2記憶エリア302Bを有している。第1記憶エリア302Aには、コントローラ301の動作を制御するためのプログラムが予め記憶されている。第2記憶エリア302Bには、コントローラ301から出力されるサージ到達時刻や故障点位置を示すデータが記憶される。
【0037】
データ通信装置303は、子局20と親局30との間の通信を行うインターフェースである。コントローラ301は、データ通信装置303を介して、第1指示信号を子局20A(20B)に送信する。又、コントローラ301は、データ通信装置303を介して、メモリ211の第2記憶エリア211Bから読み出された零相電流の波形データ及び時刻データを受信する。
【0038】
入出力装置304は、作業者と親局30との間のインターフェースである。入出力装置304は、キーボード304A、ディスプレイ304B、プリンタ304C等を含んで構成されている。
【0039】
キーボード304Aは、コントローラ301が故障点位置を標定する際に必要となるデータを入力するための入力装置である。
【0040】
ディスプレイ304Bは、コントローラ301が故障点位置を標定したときの情報を視覚的に出力するための表示装置である。例えば、ディスプレイ304Bには、子局20A(20B)における零相電流の波形と地絡事故の検出時刻との関係を示す情報が表示される。
【0041】
プリンタ304Cは、ディスプレイ304Bに標示される情報を印刷する印刷装置である。
===故障点位置の標定方法===
【0042】
図6は、本実施形態に係る故障点位置標定システムに用いられる子局の動作の一例を示すフローチャートである。図7は、本実施形態に係る故障点位置標定システムに用いられる親局の動作の一例を示すフローチャートである。
【0043】
先ず、図6を参照しつつ、子局20A(20B)の動作について説明する。
各子局20A(20B)において、零相電圧検出回路206が零相電圧の急激な変化を検出した場合[ステップS10:YES]、書込制御回路210は、零相電圧検出回路206から出力される検出信号を契機として、メモリ211に対する零相電流の波形データの記憶を停止するとともに、メモリ211に対してこの時点まで記憶されている零相電流の波形データにこの時点の時刻データを対応付けて記憶させる[ステップS11]。
【0044】
コントローラ212がデータ通信装置213を介して親局30から第1指示信号を受信すると[ステップS12:YES]、書込制御回路210は、メモリ211に記憶されている上記の零相電流の波形データ及び時刻データをコントローラ212に出力する[ステップS13]。
【0045】
コントローラ212は、データ通信装置213を介して上記の零相電流の波形データ及び時刻データを親局30に送信する[ステップS14]。
【0046】
尚、本実施形態において、子局20Aは配電線路10の電源に近い側に設置され、子局20Bは配電線路10の電源から遠い側(負荷(需要家)に近い側)に設置されていることとする。又、親局30は、子局20A、20Bの順に零相電流の波形データ及び時刻データを受信するように第1指示信号を出力することとする。
【0047】
次に、図7を参照しつつ、親局30の動作について説明する。
コントローラ301は、データ通信装置303を介して子局20Aから零相電流の波形データ及び時刻データを受信する[ステップS20:YES]。
【0048】
サージ到達時刻算出部301Bは、子局20Aの零相電流の波形データ及び時刻データに基づいて、配電線路10に地絡事故が発生したときの故障点から子局20Aまでのサージ到達時刻T1を算出する[ステップS21]。尚、ステップS21において、サージ到達時刻T1を算出する前に、子局20Aから取得した零相電流の波形データから配電線路10に重畳する零相成分の高周波ノイズを除去する処理が行われるが、この処理の詳細については後述する。
【0049】
コントローラ301は、データ通信装置303を介して子局20Bからサージ到達時刻T1付近における所定の高周波領域の零相電流の波形データ及び時刻データを受信する[ステップS22:YES]。
【0050】
サージ到達時刻算出部301Bは、子局20Bの零相電流の波形データ及び時刻データに基づいて、配電線路10に地絡事故が発生したときの故障点から子局20Bまでのサージ到達時刻T2を算出する[ステップS23]。尚、ステップS23において、サージ到達時刻T2を算出する前に、子局20Bから取得した零相電流の波形データから配電線路10に重畳する零相成分の高周波ノイズを除去する処理が行われるが、この処理の詳細については後述する。
【0051】
尚、サージ到達時刻T1、T2の算出には、例えば二電位法等の周知の方法を用いればよい。
【0052】
故障点位置標定部301Cは、以下の式(1)に従って故障点から子局20Aまでの距離L1を算出する[ステップS24]。
L1=(L+(T1-T2)v)/2 ・・・(1)
但し、L:子局20A、20B間の配電線路10の距離
L1:故障点から子局20Aまでの配電線路10の距離
T1-T2:サージ到達時刻の差
v:サージ伝搬速度(一定)
である。尚、サージ伝搬速度vは、実験等の検証から得られた一定値(例えば 280m/μsec)であることとする。
【0053】
故障点位置標定部301Cは、距離L1を算出することによって、子局20Aの設置位置から子局20Bの設置位置へ向かって距離L1だけ離れた位置を故障点と標定する[ステップS25]。
===デジタルフィルタのカットオフ周波数の変更方法===
【0054】
近年、分散型電源の設置数の増加に伴ってパワーコンディショナー等のインバータ機器の設置数が増加し、配電線路10に重畳する零相成分の高周波ノイズが、配電線路10に地絡事故が発生したときの故障点位置の標定精度に影響を与えている。そこで、本実施形態では、サージ到達時刻算出部301Bにおいてサージ到達時刻T1、T2を算出する過程において、子局20A(20B)から得られる零相電流の波形データから零相成分の高周波ノイズの影響を除去するために、デジタルフィルタ301D及び周波数処理部301Eをコントローラ301に設けている。
【0055】
図4(A)は、親局30が子局20A(20B)から取得した零相電流の波形データから零相成分の高周波ノイズを除去していないときの零相電流と地絡事故の検出時刻との関係を示す図であって、例えばディスプレイ304Bに視覚情報として表示される。同様に、図4(B)は、親局30が子局20A(20B)から取得した零相電流の波形データから零相成分の高周波ノイズを除去したときの零相電流と地絡事故の検出時刻との関係を示す図であって、例えばディスプレイ304Bに視覚情報として表示される。図4(A)(B)において、横軸は時刻(例えば50nsec/point)、縦軸は零相電流の値(例えば1mA/point)を示している。図4(A)(B)において、太実線は零相電流の波形を示し、子局20A(20B)から受信する零相電流の波形データに基づいてコントローラ301から出力される視覚情報である。図4(A)(B)において、破線は地絡事故のサージの発生を示し、子局20A(20B)から受信する時刻データに基づいてサージ到達時刻とし、零相電流の値(零相成分の高周波ノイズの場合も含む)が所定の閾値を超えたときにコントローラ301から出力される視覚情報である。
【0056】
図4(A)の場合、零相電流が閾値を超えて変化する前に零相成分の高周波ノイズが閾値を超えて変化した時刻が、サージ到達時刻となっている。この場合、零相電流が閾値を超えて変化する時刻とサージ到達時刻との差が1μsec程度まで広がってしまうと、サージ伝搬速度から考えて約140mの誤差が発生し、故障点位置の標定が不可能になる。そこで、親局30では子局20A(20B)から取得した零相電流の波形データから零相成分の高周波ノイズを除去する必要がある。
【0057】
図4(B)の場合、零相電流の波形データから零相成分の高周波ノイズが除去されているため、零相電流が閾値を超えて変化したときの時刻がそのままサージ到達時刻となっている。
【0058】
図4(A)のように、零相電流が閾値を超えて変化する時刻とサージ到達時刻とがずれている場合、故障点位置が子局20A、20Bの間に存在しなくなる等、故障点位置の標定結果が不明となるため、故障点位置標定部301Cの標定結果を契機として、要求指示部301Aでは、デジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数を変更するための第2指示信号を生成することができる。そして、周波数処理部301Eによってデジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数を変更することができる。
【0059】
図5は、本実施形態に係る故障点位置標定システムにおいて、コントローラ301に設けられるデジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数を変更するための処理の一例を示すフローチャートである。又、デジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数に関して、以下の記号を用いることとする。
fc:カットオフ周波数
fs:カットオフ周波数の初期値(例えば、数MHz)
fe:カットオフ周波数の下限値(例えば、数百KHz)
Δfc:1回の処理ごとのfcの変化幅(例えば、50kHz)
[ステップS1]
【0060】
先ず、要求指示部301Aは、デジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数fcの変更処理に際して、カットオフ周波数fcを初期値fsに設定するための第2指示信号を生成する。周波数処理部301Eは、この第2指示信号に従って、デジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数fcを初期値fsに設定する。
[ステップS2]
【0061】
デジタルフィルタ301Dは、子局20A、20Bごとに、第2指示信号によるカットオフ周波数fcでフィルタ処理した零相電流波形を生成する。これによって、記憶装置302の第2記憶エリア302Bには、カットオフ周波数fcを超える高周波ノイズが除去された零相電流の波形データが記憶される。
【0062】
サージ到達時刻算出部301Bは、記憶装置302の第2記憶エリア302Bに記憶されている零相電流の波形データ及び時刻データからサージ到達時刻T1、T2を算出する。
【0063】
故障点位置標定部301Cは、子局20A、20Bまでのサージ到達時刻T1、T2の差T1-T2に基づいて故障点を標定する。
[ステップS3]
【0064】
要求指示部301Aは、故障点位置標定部301Cのデータに基づいて、故障点位置を標定することができたか否かを判定する。
[ステップS4]
【0065】
故障点位置を標定することができず、故障点位置の標定結果が不明である場合(ステップS3:YES)、要求指示部301Aは、零相電流の波形データから零相成分の高周波ノイズの影響を除去しきれていないと判定し、初期値fsからΔfcだけ低いカットオフ周波数fcとするための第2指示信号を生成する。これにより、周波数処理部301Eは、デジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数fcをΔfcだけ更に低い値に設定する。
[ステップS5]
【0066】
要求指示部301Aは、カットオフ周波数fcが下限値fe未満であるか否かを判定する。カットオフ周波数fcが下限値fe未満ではない場合(ステップS5:NO)、要求指示部301Aは、カットオフ周波数fcを設定するための第2指示信号を生成する。このように、故障点位置を標定することができるように、デジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数fcが初期値fsから下限値feまでの範囲内において、ステップS2~S5を繰り返し実行する。
[ステップS6]
【0067】
故障点位置を標定することができた場合(ステップS3:NO)、コントローラ301は、故障点位置の標定結果(電柱番号、サージ到達時刻等)をディスプレイ304Bに表示する。又、コントローラ301は、子局20A、20Bごとに、零相電流の波形とサージ到達時刻との関係(図4)を示す視覚情報を生成してディスプレイ304Bに表示する。
[ステップS7]
【0068】
デジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数fcが下限値fe未満となった場合(ステップS5:YES)、コントローラ301は、故障点位置の標定結果が不明であることをディスプレイ304Bに表示する。又、コントローラ301は、子局20A、20Bごとに、零相電流の波形とサージ到達時刻との関係(図4)を示す視覚情報を生成してディスプレイ304Bに表示する。
===まとめ===
【0069】
以上説明したように、配電線路10に設置される子局20A、20Bと、子局20A、20Bによって検出される零相電圧及び零相電流に基づいて子局20A、20Bのサージ到達時刻の差T1-T2を算出し、サージ到達時刻の差T1-T2に基づいて故障点の位置を標定する親局30と、を含んで構成される故障点位置標定システム1であって、親局30は、零相電流の波形を処理する際に、配電線路10に重畳する零相成分の高周波ノイズの影響を除去するデジタルフィルタ301Dと、親局30が故障点の位置を標定することができるように、デジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数fcを変更する周波数処理部301Eと、を備える。
【0070】
又、周波数処理部301Eは、親局30が故障点の位置を標定することができるまで、デジタルフィルタ301Dのカットオフ周波数fcを初期値fsから下限値feまでの範囲内で一定値Δfcずつ低く設定する処理を繰り返す。
【0071】
又、初期値fsは例えば数MHzの周波数、下限値feは例えば数百KHzの周波数、一定値Δfeは例えば50KHzの周波数であることが望ましい。
【0072】
本実施形態によれば、配電線路10に重畳する零相成分の高周波ノイズの周波数に関わらず、故障点の位置を標定する際に当該高周波ノイズの影響を除去することが可能となる。
【0073】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 故障点位置標定システム
10 配電線路
20、20A、20B 子局
30 親局
40 GPS衛星
201 電流センサ
202 電圧センサ
203,204 アナログフィルタ
205 高速A/D変換回路
206 零相電圧検出回路
207 アンテナ
208 GPS受信機
209 同期分周回路
210 書込制御回路
211 メモリ
211A 第1記憶エリア
211B 第2記憶エリア
212 コントローラ(CPU)
213 データ通信装置
301 コントローラ(CPU)
301A 要求指示部
301B サージ到達時刻算出部
301C 故障点位置標定部
301D デジタルフィルタ
301E 周波数処理部
302 記憶装置
302A 第1記憶エリア
302B 第2記憶エリア
303 データ通信装置
304 入出力装置
304A キーボード
304B ディスプレイ
304C プリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7