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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】補助マグネットを含むスピーカー
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
H04R9/02 102C
H04R9/02 102A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017120483
(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公開番号】P2019009487
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】717003389
【氏名又は名称】石橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和也
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09210489(US,B1)
【文献】国際公開第2010/004641(WO,A1)
【文献】特開2007-281869(JP,A)
【文献】特開2001-186588(JP,A)
【文献】特開2009-182846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/00
H04R 9/02- 9/10
H04R 9/18
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を発生させる主マグネットと、その主マグネットに対向して配置したヨークと、主マグネットとヨークとの間に形成したギャップと、ギャップに配置するボイスコイルと、主マグネットと相協力して磁束を高めるための補助マグネットをさらに備えたスピーカーにおいて、その補助マグネットは、主マグネットとの間に前記ヨークの少なくとも一部分を挟み込むような配置にあり、前記ヨークに埋め込まれていることを特徴とするスピーカー。
【請求項2】
スピーカーは外磁型であり、ヨークであるセンターポールの外側に、円環状の主マグネットが位置しており、補助マグネットは、前記ヨークであるセンターポールの中心に位置し、そのセンターポールにより囲まれている、請求項1のスピーカー。
【請求項3】
補助マグネットは、センターポールの上面と面一になるよう配置した、請求項2のスピーカー。
【請求項4】
補助マグネットの下面は、センターポール下面と同等か、それより上に位 置する、請求項3のスピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種音響機器および情報通信機器に使用されるスピーカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にスピーカーの磁気回路は、特許文献1に示すように、マグネットとヨークとそれらヨーク~ヨーク間に形成した空間であるギャップを備えている。
【0003】
また、ギャップの磁束密度をさらに高める形態として、特許文献2に示すように、磁界を発生させる主マグネットと、その主マグネットに対向して配置したヨークと、主マグネットとヨークとの間に形成したギャップと、ギャップに配置するボイスコイルと、主マグネットと相協力して磁束を高めるための補助マグネットをさらに備えたスピーカーが知られている。
【0004】
そのようなスピーカーには、外磁型と内磁型とが知られている。
【0005】
外磁型は、主マグネットを外側に設けるので、マグネットを大きく出来る点で有利である。閉磁はされておらず、ヨーク周辺から磁力漏れが生じており、この磁力は、ギャップ部分を通らない為、磁力のロスとなり磁気回路の効率を下げている。マグネットには主に永久磁石のフェライトが用いられる。
【0006】
反対に、ヨーク中心の先端部に主マグネットを配置し、外磁型で主マグネットに対向して配置したヨークを一体形状とし、前記ヨークと先端部のマグネットで、ギャップを形成する。マグネットの露出がない前記スピーカー構造を、内磁型と呼ぶ。
【0007】
内磁型は、主マグネットを内側に設けるので、マグネットの大きさに制約がある。小さくても磁力のある永久磁石のネオジウムが用いられる。
閉磁されている為、ヨークからの磁力漏れはなく、磁力のロスが少ない。
【0008】
前記ギャップ内に、円筒形状のボビンにコイルを巻いたボイスコイルを配
置し、ダンパーとダイヤフラムとエッジで前記ギャップ内に保持する。
ボイスコイルに音声信号を入力すると、フレミング左手の法則により、
ボイスコイルは電磁石となり磁界が発生する。前記ギャップ内の磁界と吸引・反発をし、ダイアフラムを駆動する。
駆動されたダイヤフラムは、空気を振動させて音波に変換している。
【0009】
前記ギャップの磁束密度向上の為、前記外磁型磁気回路の主マグネットを二段重ねにして、磁力を増強させる構造や、前記センターポールそのものを磁石とし、前記ヨークを介して、外磁との直列磁気回路を形成したダブルマグネット構造を有したものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開昭46―8287
【0011】
【文献】特開2002―273343
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来型スピーカーの外磁型において、主マグネットに対向して配置したヨークである、トッププレートとセンターポール、それぞれの主マグネットからの距離差による磁力差があり、前記ヨークで形成されたギャップ部分に配置したボイスコイルへ電気信号を入力すると、その電気信号で電磁石となった前記ボイスコイルが運動する際、マグネットとの距離が近いトッププレート側に引き寄せられながら吸引・反発をする。内磁型の場合はマグネットがセンターポール側にある為、外磁型とは反対にセンターポール側に引き寄せられることになる。
【0013】
吸引・反発力が前記ギャップ部の内外で差が生じていると、電気信号に対しボイスコイルが純粋な前後運動に変換が出来ず、横方向への磁力も加わる為、ボイスコイル及び振動板へ不要な力が加わる。
これは歪成分となり、音のこもりや歪っぽさという再生時の音質へ悪影響を及ぼしていた。
【0014】
また、前記ギャップ部分を通過する磁束は、そのすべてがギャップ部分に集中して通過することはなく、一部磁束はギャップ部分の上下を弧を描くように膨らんで通る。この漏れ磁束もまた前記ボイスコイルの吸引・反発に影響を及ぼし、ギャップ部分外の磁力と反応することで、余分な吸引・反発を起こし、前記悪影響を及ぼしていた。
【0015】
電気信号入力時には、ボイスコイルが電磁石となる。
その為、ギャップ部周辺のヨークを磁化し、ギャップ部を通過する磁束を乱し、ボイスコイルの吸引・反発を阻害し、歪となり再生されていた。これは、一般的に電流歪と呼ばれる成分である。
【0016】
外磁型で、主マグネットを2段重ねにするダブルマグネット構造は、前記ギャップ部分の磁束密度が向上するものの、ギャップ内外での磁力差は大きくなり、ボイスコイルの横方向への歪成分は解消されないままであった。
【0017】
特許文献2に示す、センターポールそのものを磁石とし、外磁との直列磁気回路を設けたものは、内外での磁力バランスをとるのが難しく、直列回路を形成する為、ギャップ部の磁束は、センターポールを置き換えた磁石の磁力に依存する。
また、磁気回路は外磁型となる為、ヨークからの磁力漏れも発生し磁気回路のロスが発生し、前記悪影響は避けられなかった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のスピーカーは、磁界を発生させる主マグネットと、その主マグネットに対向して配置したヨークと、主マグネットとヨークとの間に形成したギャップと、ギャップに配置するボイスコイルと、主マグネットと相協力して磁束を高めるための補助マグネットをさらに備えたスピーカーにおいて、その補助マグネットは、主マグネットとの間に前記ヨークの少なくとも一部分を挟み込むような配置にある事を特徴とする。
【0019】
前記構成は、内磁型でも適応でき、ヨーク外周部へ補助マグネットを配置することにより、同様の効果を得る事が出来る。
【発明の効果】
【0020】
外磁型磁気回路のヨーク中心部に補助マグネットを配置することで、主マグネットと補助マグネットとで反発力が発生し、ギャップ部分の磁束漏れを抑制でき、さらに前記ギャップ部分の内外での磁力差を解消することが出来る。前記効果は、内磁型磁気回路でも有効である。
【0021】
また、外磁型磁気回路の主マグネットに対向して配置したヨークのギャップ部分周辺を磁気飽和させることが出来き、ボイルコイルが電磁石になることにより発生していた、ギャップ部分周辺の磁化を防ぐことが出来る。
前記効果は、内磁型磁気回路でも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明における、スピーカーユニットの断面図
図2】本発明における、磁気回路の展開図
図3】本発明における、実施形態1の断面図
図4】本発明における、実施形態2の断面図
図5】従来型磁気回路の磁力線図
図6】本発明における、磁気回路の磁力線図
図7】本発明における、実施形態3の断面図
図8】本発明における、実施形態4の断面図
図9】本発明における、実施形態5の断面図
【符号の説明】
【0023】
1 主マグネット
2 補助マグネット
3 ヨーク
3aセンターポール
4 ヨーク
5 ギャップ
6 ボビン
7 ボイスコイル
8 バンパー
9 フレーム
10 エッジ
11 ダイアフラム
12 ダストキャップ
13 主マグネット
14 補助マグネット
15 ヨーク
16 スリーブ
17 調節台座
18 調節つまみ
19 主マグネット磁力線
19aギャップ部磁力線(平行)
19bギャップ部磁力線(斜め)
20 主マグネット漏れ磁力線
21 補助マグネット磁力線
22 補助マグネット漏れ磁力線
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施形態を図1~9に基づいて説明する。
尚、図5図6との比較に用いるものである。
【0025】
図においては、1は磁気回路のメインである主マグネットであり、2はそれの働きを助ける補助マグネットである。強磁性体であるヨーク3・4は、主マグネット1の下面にヨーク3があり、上面にヨーク4がそれぞれ密着している。また、ヨーク3とヨーク4の間には、5の空間が設けてあり、この空間はギャップと呼ばれ、磁力を集中させる為に設けられている。補助マグネット2は、ヨーク3の中心部に位置し、主マグネット1に対し平行に配置され磁気回路を構成している。ギャップ5には、ボビン6にコイルを巻いたボイスコイル7がダンパー8によって支持されている。フレーム9は、ダンパー8とダイアフラム11をエッジ10を介して支えており、ヨーク4に密着している。ダイアフラム11の中心には、ボイスコイル7内に埃が入らないようにダストキャップ12が取り付けられる。
図8において、13は内磁型における主マグネットであり、ヨーク15のセンターポール上面に位置する。14は内磁型における補助マグネットである。
図9において、16は外磁型磁気回路の調節式補助マグネットをスライドさせるためのスリーブである。17は調節式補助マグネットを支持する土台で、18はその土台にネジ結合されたダイヤルである。
【0026】
ここで、本発明のスピーカーの位置づけを明らかにする。
図1は、本発明をスピーカーユニットへ適用した実施形態の断面図である。外磁型における主マグネット1は円環状であり、面方向に着磁されている。主マグネット1の下部には、円盤形状の土台に中心部が円柱状に伸びたヨーク3と、その上部には、円環形状のヨーク4がそれぞれ密着している。ヨーク3の円柱状部分は、通称センターポールと呼ばれ、以降センターポールとの表記は、ヨーク3の円柱部分を指すこととする。ヨークの材質は、強磁性体である継鉄が用いられるのが一般的である。
【0027】
ヨーク3のセンターポール中心部には、円柱形状の補助マグネット2がセンターポールに対して、それぞれの上端と下端を揃えて挿入されている。またヨーク4の内周部とヨーク3のセンターポール上端外周とは密着しておらず、一定の間隔、例えば2mmの間隔を設けている。この間隔を設けることで、そこに主マグネット1の磁力を集中させる事ができる。またこの磁力の強さを磁力線の集まりと表し、磁束密度と呼ぶ。
前記間隔、すなわち空間はギャップと呼ばれ、図1ではギャップ5が該当する。
【0028】
ギャップ5の空間には、ヨーク4に密着したフレーム9とそこに固定されたダンパー8によって、ボビン6が保持される。フレーム9は主にスチール等をプレスして作成されることが多い。
しかし、ヨークに密着させる為、磁性素材を使用すると磁力が逃げてしまい、ギャップ部の磁力へ影響する事から、フレーム9には非磁性素材を使用する事が好ましい。例えば、アルミや樹脂等が利用する事が出来る。
ダンパー8は、ボビン6が前後運動をする際に、ギャップ5内外の間隔を一定に保ち、ヨーク3、4への接触を防いでいる。
それとともに、上下方向へ凹凸を設けているので、ダンパー8は、円周方向にスプリングの役目を果たし、ボビンが運動した際に元の位置へ戻そうとする反力が働く。
これにより、ボビン6とそれに密着するダイアフラム11が暴れるのを防ぎ、適切な位置へ戻し保持する事が出来る。ダンパー8の硬さすなわちスプリングの反力は、ボビン6とそれに巻き付けられるボイスコイル7、ダイアフラム11とダストキャップ12の重量から調整される。硬すぎると低音が出なくなり、軟すぎるとダイアフラムが暴れて音が歪む。ボビン6の素材は、主にフィルムや硬質の紙が用いられることが多いが、ボイスコイルの発熱を放熱する為にアルミ素材が使われることもある。いずれも非磁性素材が用いられる。
【0029】
ボビン6には、ボイルコイル7が巻き付けられおり、ここに音声信号が入力される。前記信号が入力されると、ボイスコイル7は電磁石となり、ギャップ5に発生している磁力と吸引・反発をして、ダイアフラム11を前後運動させる。その為、ギャップ5における磁力の特性が重要になる。
一般的には、ボイルコイルの表記にボビンも含まれて表すことが多い為、以降ボイスコイルとは、ボビン6とボイスコイル7の両方を指すこととする。この前後運動をダンパー8とエッジ10で支え、ボビン6がヨーク3、4へ接触しないよう防いでいる。また、ヨーク3のセンターポールとボビン6の間隔は非常に狭く、埃等の侵入を防ぐ必要がある為、ダストキャップ12が用いられる。ダイアフラム11の前後運動が空気を振動させ音へと変換している。
【0030】
図2は、図1における実施形態の磁気回路を取り出した展開図である。
土台となるヨーク3は、円盤状プレートの中心部分が円柱状に立ち上がっており、この円盤と円柱は一体である。この形状は、円盤面で受けた主マグネット1の磁力を反対の極へ集中させる為、中心部が円柱状になり立ち上がってる。このヨーク内部を磁力線が束になり通過する。円柱部の中心には、磁気回路の効率を高めるために、円柱状の補助マグネットが挿入されている。
磁石の磁極は、主マグネットのヨーク3側をN極とすると、補助マグネットの円盤側はS極とする。磁石の直列回路、すなわち吸引し合う極を向かい合わせにする。ヨーク4は主マグネットの上部、ヨーク3と対向する部分に配置される。こちらも前記円盤面と同じ理由からヨーク3の円柱部に向かって磁力を集中させている。ヨーク4の内周部は、ヨーク3の円柱部より径を大きくし、空間を作ることで磁力を集中させ磁束密度を上げている。
ヨーク3、4共に主マグネット1に密着しており、補助マグネット2も円柱部に密着するよう挿入されている。
【0031】
図3は、図1の磁気回路部を拡大したもので、図2の展開部品がすべて密着
した場合の断面図と同じである。図5の従来型磁気回路の磁力線図と図6の本発明の実施形態での磁力線図を用いて説明する。従来の磁気回路では、図5に示すように、主マグネットの磁力線19がヨーク4を通りヨーク3aを通過している。この時、ギャップ5において、ヨーク4からヨーク3aに向かう磁力線は、平行なギャップ部磁力線19aからヨーク下部へ斜めに向かうギャップ部磁力線19bまであり、磁力線の角度はそれぞれ曖昧である。これにより、ボイスコイル7が前後運動する際、直交している磁力線の反発・吸引力を斜めの磁力線が妨げ、純粋な前後運動を阻害している。また、斜めの磁力線は、ボイスコイルに対し斜め方向の力を加える為、ダイヤフラム11に加わる力が曖昧になる為、結果として音が濁って聞こえたり、歪となって再生されてしまう。また、ヨーク3とヨーク4では、ギャップ5までの距離に差があり、ヨーク3の方がギャップまでの経由距離が長く、さらにはヨーク3の円盤部で集中していた磁力が、円柱部へと移動した際、円盤部より円柱部の断面積が上回る為、磁力が分散してしまい磁束密度が下がることから、ギャップ5の内外で磁力に差が生じてしまう。
このことから、ボイスコイル7は外側に引き寄せられながら前後運動をしてしまう。これもまた音質への悪影響を及ぼしていた。
【0032】
図5の主マグネットの漏れ磁力線20は、ヨークを通り切らなかった磁力がヨーク3'中心部より弧を描くようにヨーク4の上面へと通過している。
この磁力もボイスコイル7付近を通過する為に、角度が曖昧な磁力線の一部となり前記同様の悪影響をもたらす。
【0033】
さて、本発明では、図3のように、補助マグネット2をヨーク3の中心部に挿入する事で、図6に示す、主マグネットの磁力線19と補助マグネットの磁力線21の2つの磁回路が現れる。前記19と21の磁力線は、互いに独立しており反発し合っている。その為、センターポールを通過する主マグネットの磁力線19は、補助マグネットの磁力線21と反発し合い、円柱部外側へと収束する。この点は、方位磁石と砂鉄を用いた実験を行い確認をした
。これにより、従来型のような円柱部での磁力の分散は抑えられ、さらにはヨーク4からヨーク3へ向かう磁力線の角度を平行へ整え、ボイスコイルに純粋な前後運動をさせることが出来る。円柱部の磁束を集中させることは、ギャップ5の内外で発生する磁力差を抑えることにも繋がり、結果として音質の向上と歪の軽減につながる。
【0034】
図3の補助マグネットの漏れ磁力線22は、主マグネットの漏れ磁力線と反発し、図5と比較して弧を描く角度が著しく平行へ近づく、よってボイスコイル7へ及ぼす影響も低減できる。
【0035】
左記に述べたように、主マグネットに対し、補助マグネットを用いて磁束密度を向上し、磁気効率を向上させる技術は以前から知られている。
例えば、主マグネットを2段重ねにしたダブルマグネット構造や、センターポールそのものを磁石とした構造である。
これらは、補助マグネットを主マグネットやヨークと独立した形態で配置した構成である。
それに対し、本発明は、センターポール内に2つの磁気回路を発生させることを特徴としている。これは、センターポール内に補助マグネットを設ける事で、1つの閉回路を作り、主マグネットの磁回路を補助するものである。よって、閉回路を作り出すために、センターポールであるヨークは必要不可欠であり、それ自身がマグネットでは2つの磁回路は発生しない。
【0036】
補助マグネットは、主マグネットの持つ磁力を最大限に引き出すために存在し、その磁力は主マグネットの磁力を十分に反発する力が必要となる。
外磁型である為に、物理的制約から、主マグネットより補助マグネットは面積が小さくなるので、ネオジウム磁石等の小型で強力なマグネットを用いるが、主マグネットとのバランスが取れる磁力を有する磁石であれば、フェライト等の磁石でも適応可能である。
【0037】
ボイスコイルに音声信号を入力した際、電磁石となったボイスコイルの磁力がギャップ部の磁力を乱し、再生音に歪を生じさせることがある。
これは、一般的に電流歪と呼ばれヨークがこれ以上磁化されなくなる磁気飽和の状態にない場合に発生し、ボイスコイルの磁力によって磁化されてしまう為に発生する。これを防ぐ為に、センターポールの中心部に空洞を設けセンターポールの体積を減らし主マグネットの磁力で磁気飽和を狙う構造のものも存在するが、磁力は空間も飛び交う為、空洞にした中心部にも磁力が分散し、返ってギャップ部の磁力を落とす事になる。しかし、本発明ではその空洞部に補助マグネットが存在する為、前記空間を飛び交っていた磁力をヨークに留めることが出来、主マグネットの磁力で磁気飽和に近づけることが可能であり、電流歪に対し非常に有効である。
【0038】
補助マグネットの磁力調整の方法として、補助マグネット自体の磁力を選定する他に、図4に示すようにセンターポール上端部からの長さを調整して反発のバランスを取る方法もある。ギャップ部分の磁束密度向上と磁気飽和を狙う為、補助マグネットはセンターポール上端部と下端部に面をそろえる事が理想であり、そこから下端部への長さを調整する事で、センターポール内を通過する主マグネットの磁力線19の分散具合を調整することが出来る。
【0039】
スピーカーには家庭向けから業務用まで幅広い種類が存在するが、業務用機器では、用途によって連続して高出力を出すものもある。
スピーカーは、高負荷を掛けると、ボイスコイルの発熱や電流歪によるヨークの発熱等により磁気回路が高温にさらされる事がある。
マグネットの種類によっては、高温により減磁してしまうものもある為、図7に冷却機構を設けた実施形態の磁気回路を記載する。
ヨーク3の中心部に設ける補助マグネット2を円筒形状とし、ダイヤフラムが前後する力を利用し、ダストキャップ12の風圧を利用して補助マグネット中心部に送風し、磁気回路を冷却するものである。
これにより、スピーカーの出力に応じて風圧が変化し冷却力を調整できる。
【0040】
本発明は、内磁型磁気回路にも適用でき、その構造を図8に示す。
内磁型磁気回路では、ヨーク16の円柱部上端に主マグネット13が位置し、主マグネットとヨーク外周部とでギャップを構成している。
ギャップ部内周がマグネットの為、内周は磁気飽和されないが、外周であるヨーク側は、主マグネットからの距離があり、内外の磁力差が発生し、電流歪も発生する。
ヨーク15の外周部に補助マグネット14を密着させることで、ヨーク外周部と補助マグネット外周部に磁気回路を生成する事ができ、図3と同等の効果を得る事が出来る。補助マグネット14は外周にある為、閉磁出来ない。
その為、磁力の強い磁石を必要とし円周方向の厚みで磁力調整をする。
また、補助マグネット14をコイルと置き換え、電磁石を利用してもよい。
【0041】
補助マグネットを調整式にし、音質の調整を容易にできるようにした実施形態を図9に示す。
ヨーク3の中心部に、磁性材料で出来た円筒形状のスリーブを挿入する。
これば補助マグネットが移動し易くする為で、内面は鏡面仕上げ等が望ましい。その内周に補助マグネット2を挿入する。補助マグネット2は、調節つまみ18と連結されており、調節つまみ18はネジ構造となっており、調節台座17にねじ込まれている。調節台座17はヨーク3の底部に固定されており、前記17、18は、磁気の影響を受けないよう非磁性素材を使用する。
これにより調節つまみ18を回す事で、補助マグネットの挿入具合を変化させることが出来、磁力と磁気飽和の調節が可能になる。
実際に音を聞きながら音質の変化を確認する事が可能である。
【0042】
また、本発明では、全帯域スピーカー(フルレンジスピーカー)の他に、ツィーター(高域用スピーカー)やウーファー(低域用スピーカー)などの特定帯域を再生するスピーカーや、2つのボイスコイルを持つダブルボイスコイルタイプや複数層のボイスコイルを持ちデジタルドライブされるデジタルスピーカーへの応用も可能である。
【0043】
本発明では、一般に広く普及しているスピーカーの磁気回路の効率改善を狙ったもので、容易に調整・改善が可能な為、従来の製造工程の工数と材料コストを最小限に抑え実現可能である。そして、流通しているスピーカーへの後付けが可能な点で、広く普及しているスピーカーを容易に改善出来る事が強みであり、広く貢献できる技術である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9