(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】品質管理システム、アスファルトプラントおよび車両
(51)【国際特許分類】
E01C 19/08 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
E01C19/08
(21)【出願番号】P 2019111938
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】515188372
【氏名又は名称】有限会社あおい運輸
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 克実
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-199927(JP,A)
【文献】特開平07-238507(JP,A)
【文献】実開平04-007351(JP,U)
【文献】特開2018-123587(JP,A)
【文献】特開2003-291724(JP,A)
【文献】特開2014-198968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0136466(US,A1)
【文献】特開平06-026007(JP,A)
【文献】特開2017-072433(JP,A)
【文献】特開2019-188718(JP,A)
【文献】特開2011-75528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00-19/52
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状体とアスファルトとを混合したアスファルト混合物の外観画像を撮影するカメラと、
撮影範囲内の前記アスファルト混合物の温度分布画像を取得するサーモグラフィカメラと、
前記外観画像及び前記温度分布画像から前記アスファルト混合物の品質についての合否判定を行う情報処理装置と、
を具備
し、
前記カメラは、前記アスファルト混合物から正反射した照明光を受光して撮影を行えるように配置されており、
前記情報処理装置は、前記アスファルト混合物の品質についての合否判定として、前記カメラから取得した前記外観画像中の明るさに基づき、前記アスファルト混合物の配合状態が所定の配合状態であるか否かの判定を行うことを特徴とするアスファルト混合物の品質管理システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記アスファルト混合物の品質についての合否判定として、前記外観画像に基づき前記粒状体の大きさの最大値が閾値を超えているか否かの判定を行うとともに、前記温度分布画像に基づき前記アスファルト混合物の温度が基準範囲内であるか否かの判定を行うことを特徴とする請求項1記載のアスファルト混合物の品質管理システム。
【請求項3】
アスファルト混合物を車両の荷台に積み込むアスファルトプラントであって、請求項1
または請求項
2に記載の品質管理システムを備えたことを特徴とするアスファルトプラント。
【請求項4】
前記アスファルトプラントは、前記粒状体と前記アスファルトとを混合する混合装置を有し、
前記カメラと前記サーモグラフィカメラは、前記混合装置から前記車両の荷台に排出されている途中の前記アスファルト混合物を撮影することを特徴とする請求項
3記載のアスファルトプラント。
【請求項5】
前記アスファルトプラントは、前記アスファルト混合物を貯蔵する貯蔵装置を有し、
前記カメラと前記サーモグラフィカメラは、前記貯蔵装置から前記車両の荷台に排出されている途中の前記アスファルト混合物を撮影することを特徴とする請求項
3または請求項
4記載のアスファルトプラント。
【請求項6】
前記アスファルトプラントは、
前記粒状体と前記アスファルトとを混合する混合装置と、
前記アスファルト混合物を貯蔵する貯蔵装置と、
前記混合装置から排出された前記アスファルト混合物を前記貯蔵装置まで搬送する搬送装置と、
を有し、
前記カメラと前記サーモグラフィカメラは、前記混合装置から前記搬送装置に排出されている途中の前記アスファルト混合物を撮影することを特徴とする請求項
3から請求項
5のいずれかに記載のアスファルトプラント。
【請求項7】
アスファルト混合物を荷台に載せて搬送する車両であって、請求項
1または請求項
2に記載の品質管理システムを備えたことを特徴とする車両。
【請求項8】
前記荷台の全面に被せる覆いを有し、且つ前記覆いが荷台外からの操作により開閉可能であることを特徴とする請求項
7記載の車両。
【請求項9】
前記カメラと前記サーモグラフィカメラは、その向きを変えて複数の撮影範囲を撮影し、
前記情報処理装置は、前記カメラと前記サーモグラフィカメラから当該撮影範囲の前記アスファルト混合物までの距離に応じた画像補正を前記外観画像及び前記温度分布画像について行ったうえで、前記合否判定を行うことを特徴とする請求項7または請求項8記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト混合物の品質管理システムおよびこれを備えたアスファルトプラント、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト混合物は、フィラー、細骨材、粗骨材などの粒状体とアスファルトを高温で混合して製造される。製造されたアスファルト混合物は舗設現場に運搬され、舗設される。アスファルト混合物における上記粒状体やアスファルトの配合は、アスファルト混合物の舗設位置(例えば道路の表層やその下層等)、求められる機能(排水性やすべり抵抗性等)などに応じて適切なものに定められる。
【0003】
アスファルト混合物内に大きな異物が入っていると舗設後に破損の原因となり、アスファルト混合物の温度が低ければ舗設時の作業性悪化の原因となる。また、アスファルト混合物の配合が適切でなければ舗設不良の原因となる。そのため、これらの品質管理は重要である。
【0004】
従来、アスファルト混合物の品質管理としては、アスファルトプラントにおいてアスファルト混合物を運搬車両の荷台に積み込んだ後、作業員が荷台に上ってアスファルト混合物に保温シートを被せる際に、その作業員が目視でアスファルト混合物の粒径や配合状態の確認を行っていた。また特許文献1には、アスファルト混合物を車両で運搬する際に、荷台に載せたアスファルト混合物の温度を熱電対等のセンサで測定し、管理するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のようにアスファルト混合物の品質を目視で確認する場合、確認結果が正確でない場合がある。一方、特許文献1では測定データを用いて正確な品質管理ができるものの、測定するのはセンサ位置のアスファルト混合物の温度のみであり、そのような限られた範囲では十分な品質管理を行えない可能性もある。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、アスファルト混合物の品質管理を好適に行うことができる品質管理システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、粒状体とアスファルトとを混合したアスファルト混合物の外観画像を撮影するカメラと、撮影範囲内の前記アスファルト混合物の温度分布画像を取得するサーモグラフィカメラと、前記外観画像及び前記温度分布画像から前記アスファルト混合物の品質についての合否判定を行う情報処理装置と、を具備し、前記カメラは、前記アスファルト混合物から正反射した照明光を受光して撮影を行えるように配置されており、前記情報処理装置は、前記アスファルト混合物の品質についての合否判定として、前記カメラから取得した前記外観画像中の明るさに基づき、前記アスファルト混合物の配合状態が所定の配合状態であるか否かの判定を行うことを特徴とするアスファルト混合物の品質管理システムである。
【0009】
第1の発明の品質管理システムによれば、カメラにより撮影されたアスファルト混合物の外観画像と、サーモグラフィカメラを用いて取得されたアスファルト混合物の温度分布画像に基づき、アスファルト混合物の品質についての合否判定を行う。そのため客観的なデータに基づいて正確な品質管理が可能になる。また、アスファルト混合物の画像を品質管理に用いることにより、広範囲のアスファルト混合物を対象とする品質管理が可能になり、より精度の高い品質管理を行うことが可能になる。
【0010】
前記情報処理装置は、前記アスファルト混合物の品質についての合否判定として、例えば前記外観画像に基づき前記粒状体の大きさの最大値が閾値を超えているか否かの判定を行うとともに、前記温度分布画像に基づき前記アスファルト混合物の温度が基準範囲内であるか否かの判定を行う。特に第1の発明では、前記外観画像に基づき、前記アスファルト混合物の配合状態が所定の配合状態であるか否かの判定を行う。
上記のように、品質管理システムによる管理項目は例えば粒状体の大きさやアスファルト混合物の温度、配合状態等であり、これらの管理により、設計上の粒度分布を外れた大きな異物の混入、アスファルト混合物の温度や配合状態の不良等を発見することができる。
【0011】
第2の発明は、アスファルト混合物を車両の荷台に積み込むアスファルトプラントであって、第1の発明の品質管理システムを備えたことを特徴とするアスファルトプラントである。
これにより、アスファルトプラントにおけるアスファルト混合物の品質管理を、第1の発明の品質管理システムを用いて好適に行える。
【0012】
例えば、前記アスファルトプラントは、前記粒状体と前記アスファルトとを混合する混合装置を有し、前記カメラと前記サーモグラフィカメラは、前記混合装置から前記車両の荷台に排出されている途中の前記アスファルト混合物を撮影する。あるいは、前記アスファルトプラントは、前記アスファルト混合物を貯蔵する貯蔵装置を有し、前記カメラと前記サーモグラフィカメラは、前記貯蔵装置から前記車両の荷台に排出されている途中の前記アスファルト混合物を撮影してもよい。
これにより、出荷直前のアスファルト混合物の品質を確認でき、品質に問題のあるアスファルト混合物が舗設現場に搬送されるのを防止できる。
【0013】
また、前記アスファルトプラントは、前記粒状体と前記アスファルトとを混合する混合装置と、前記アスファルト混合物を貯蔵する貯蔵装置と、前記混合装置から排出された前記アスファルト混合物を前記貯蔵装置まで搬送する搬送装置と、を有し、前記カメラと前記サーモグラフィカメラは、前記混合装置から前記搬送装置に排出されている途中の前記アスファルト混合物を撮影することも望ましい。
これにより、品質に問題のあるアスファルト混合物が貯蔵装置に貯蔵されるのを防止できる。
【0014】
第3の発明は、アスファルト混合物を荷台に載せて搬送する車両であって、第1の発明の品質管理システムを備えたことを特徴とする車両である。
これにより、車両で運搬されるアスファルト混合物の品質管理を第1の発明の品質管理システムを用いて好適に行うことができ、品質に問題のあるアスファルト混合物が舗設されるのを防止できる。
【0015】
前記車両は、例えば前記荷台の全面に被せる覆いを有し、且つ前記覆いが荷台外からの操作により開閉可能である。
このようなタイプの車両では、作業員は車両の荷台に上らずに荷台の全面に覆いを被せることができ、作業員が車両の荷台に上ってアスファルト混合物に保温シートを被せる必要が無く、作業員が荷台から転落する危険が無くなる。その一方で、従来のように荷台に上ってアスファルト混合物にシートを被せる際に目視によるアスファルト混合物の品質確認を行うといったことはできなくなるので、第1の発明に係る品質管理システムを用いて荷台外からの品質管理を行えるようにすることは特に有効である。
前記カメラと前記サーモグラフィカメラは、その向きを変えて複数の撮影範囲を撮影し、前記情報処理装置は、前記カメラと前記サーモグラフィカメラから当該撮影範囲の前記アスファルト混合物までの距離に応じた画像補正を前記外観画像及び前記温度分布画像について行ったうえで、前記合否判定を行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、アスファルト混合物の品質管理を好適に行うことができる品質管理システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】情報処理装置45のハードウェア構成を示す図。
【
図4】アスファルト混合物43の品質についての合否判定の手順を示すフローチャート。
【
図5】アスファルト混合物43の外観画像Iと温度分布画像Tの例。
【
図8】トロリ35に排出されるアスファルト混合物43を撮影する例。
【
図9】品質管理システム2を備えた車両33を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
(1.アスファルトプラント1)
図1は本発明の実施形態に係る品質管理システムを備えるアスファルトプラント1の概略を示す図である。
【0020】
アスファルトプラント1は、アスファルト混合物43の製造、貯蔵、車両33への積み込み等を行うものであり、
図1に示すように、骨材ホッパー3、ベルトコンベア5、ドライヤ7、ホットエレベータ9、スクリーン11、ホットビン13、石粉サイロ15、石粉エレベータ17、アスファルトタンク19、骨材計量槽21、アスファルト計量槽23、石粉計量槽25、ミキサ27、トロリ35、ホットサイロ37等を有する。
【0021】
骨材ホッパー3は、アスファルト混合物43の製造ラインに供給する骨材(細骨材および粗骨材)を、常温で一時的に貯蔵する。骨材ホッパー3から排出された骨材は、ベルトコンベア5によりドライヤ7まで搬送される。ドライヤ7は骨材を加熱し乾燥する。加熱、乾燥された骨材はホットエレベータ9によりスクリーン11まで搬送される。
【0022】
スクリーン11は、ホットエレベータ9により搬送された骨材を粒度区分ごとに分級する。分級された骨材は、粒度区分ごとにホットビン13で保温され一時的に貯蔵される。骨材は、アスファルト混合物43の製造時に、ホットビン13から骨材計量槽21に供給される。骨材計量槽21は、分級された骨材を粒度区分ごとに計量し、ミキサ27に投入する。
【0023】
石粉サイロ15は、フィラーとして用いる石粉を一時的に常温で貯蔵する。石粉は例えば石灰岩を粉末にしたものである。フィラーは石粉エレベータ17によって石粉計量槽25まで搬送される。石粉計量槽25は、フィラーを計量し、ミキサ27に投入する。
【0024】
アスファルトタンク19は、アスファルトを保温し液体状で貯蔵する。アスファルトは、アスファルトポンプ(不図示)によりアスファルト計量槽23まで搬送される。アスファルト計量槽23はアスファルトを計量し、ミキサ27に投入する。
【0025】
ミキサ27は、フィラー、骨材(細骨材および粗骨材)などの粒状体とアスファルトを混合し、アスファルト混合物43を製造する混合装置である。ミキサ27は、アスファルト混合物43を車両33の荷台やトロリ35に排出する。
【0026】
トロリ35は、ミキサ27で製造されたアスファルト混合物43をホットサイロ37まで搬送する搬送装置である。ホットサイロ37は、アスファルト混合物43を保温し貯蔵する貯蔵装置である。ホットサイロ37は、アスファルト混合物43を車両33の荷台に排出する。
【0027】
ミキサ27からアスファルト混合物43を排出する排出口、およびホットサイロ37からアスファルト混合物43を排出する排出口の近傍には、カメラ29とサーモグラフィカメラ31がそれぞれ設けられる。
【0028】
カメラ29は、ミキサ27やホットサイロ37から排出されている途中のアスファルト混合物43を撮影し、アスファルト混合物43の外観画像を得るものである。
【0029】
カメラ29は、光学レンズ、撮像素子、A/D(Analog/Digital)変換部等を有するデジタルカメラである。カメラ29では、光学レンズを介して受光した光を撮像素子により光電変換し、アナログ画像信号を生成する。そして、A/D変換部によりアナログ画像信号をデジタル画像データに変換し、アスファルト混合物43の外観画像を生成する。特に図示しないが、カメラ29の近傍にはアスファルト混合物43の撮影範囲に照明光を照射する照明なども設けられる。
【0030】
サーモグラフィカメラ31は、ミキサ27やホットサイロ37から排出されている途中のアスファルト混合物43を撮影し、アスファルト混合物43の温度分布画像を得るものである。
【0031】
サーモグラフィカメラ31は、ゲルマニウムレンズ、赤外線検出素子、増幅器、A/D変換部等を有する。サーモグラフィカメラ31では、撮影範囲から放出される赤外線をゲルマニウムレンズにより集光して赤外線検出素子に結像し、赤外線検出素子により電気信号に変換する。電気信号を増幅器により増幅して生成したアナログ画像信号をA/D変換部によりデジタル画像データに変換することで、アスファルト混合物43の温度分布画像が生成される。
【0032】
図2は、
図1のA部を示す図である。前記したように、アスファルト混合物43はミキサ27の排出口から車両33の荷台39に排出される。
【0033】
図2に示すように、本発明の実施形態に係る品質管理システム2は、前記したカメラ29、サーモグラフィカメラ31に加え、情報処理装置45を有する。
【0034】
情報処理装置45は、カメラ29とサーモグラフィカメラ31からアスファルト混合物43の外観画像と温度分布画像を受信し、これらの画像を用いて後述するようにアスファルト混合物43の品質についての合否判定を行う。
【0035】
図3は情報処理装置45のハードウェア構成を示す図である。情報処理装置45は、制御部47、表示部49、入力部51、記憶部53、通信部55、周辺機器I/F(Interface)部57等をバスにより接続したコンピュータ等で実現できる。但しこれに限ることなく、適宜様々な構成をとることができる。
【0036】
制御部47は、CPU、ROM、RAMなどから構成される。CPUは、記憶部53やROMなどの記憶媒体に格納された情報処理装置45の処理に係るプログラムをRAM上のワークエリアに呼び出して実行する。ROMは不揮発性メモリであり、ブートプログラムやBIOSなどのプログラム、データなどを恒久的に保持する。RAMは揮発性メモリであり、記憶部53やROMなどからロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部47が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0037】
表示部49は、液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの表示装置を有する。
入力部51は、マウスやキーボードなどのポインティングデバイス、テンキーなどの入力装置を有する。
【0038】
記憶部53は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどであり、制御部47が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS等が格納される。記憶部53には、情報処理装置45が後述する合否判定処理を実行するためのプログラムも格納されている。
【0039】
通信部55は、情報処理装置45とネットワーク(不図示)間の通信を媒介する通信インターフェースである。
周辺機器I/F部57は周辺機器を接続するためのポートである。情報処理装置45は、カメラ29やサーモグラフィカメラ31などの周辺機器との間で周辺機器I/F部57を介してデータの送受信を行う。
【0040】
図2の説明に戻る。車両33は、アスファルト混合物43を舗設現場まで運搬する運搬車両である。また車両33は荷台39の全面に被せる覆い41を有し、且つこの覆い41が荷台39外からの操作により開閉可能となっている。
【0041】
すなわち、覆い41は幌と複数の骨組(不図示)で構成され蛇腹状に伸縮可能であり、その一方の端部が固定部品38を介してワイヤ40に固定され、他方の端部は荷台39の前部に固定される。ワイヤ40は荷台39の前後に設けた滑車42a、42bに巻き回されており、荷台39外に設けたハンドル44を回転させると、滑車42aの回転によりワイヤ40が移動する。これにより、覆い41の上記一方の端部を荷台39の前方または後方へと移動させることができる。当該端部を荷台39の後方に向かって移動させれば覆い41が伸長して荷台39が閉じられ、当該端部を荷台39の前方に向かって移動させれば覆い41が収縮して荷台39が開かれる。
図2は覆い41を収縮させて荷台39を開いた状態を示している。
【0042】
このようなタイプの車両33では、作業員が車両33の荷台39に上らずに荷台39の全面に覆い41を被せることができる。そのため、従来のように、アスファルト混合物43を荷台39に積み込んだ後に、作業員が車両33の荷台39に上ってアスファルト混合物43に保温シートを被せる必要が無く、作業員が荷台39から転落する危険が無くなる。
【0043】
(2.アスファルト混合物43の品質についての合否判定)
図4は、品質管理システム2で行われるアスファルト混合物43の品質についての合否判定の手順を示すフローチャートである。
図4の各ステップは情報処理装置45の制御部47が情報処理装置45の各部を制御することで実行される。
【0044】
図2に示すように、本実施形態ではミキサ27から車両33の荷台39に排出されている途中のアスファルト混合物43をカメラ29とサーモグラフィカメラ31により撮影しており、情報処理装置45は、カメラ29からアスファルト混合物43の外観画像を受信して取得する(S101)とともに、サーモグラフィカメラ31からアスファルト混合物43の温度分布画像を受信して取得する(S102)。
【0045】
図5(a)は、アスファルト混合物43の外観画像Iの例である。外観画像Iでは、アスファルトと混合された各粒状体が認識可能である。粒状体は、フィラー431、細骨材432、粗骨材433の順に粒径が大きくなる。外観画像Iは、簡単に言うと、粗骨材433の間の隙間が細骨材432やフィラー431で埋められ、更に細骨材432の間の隙間もフィラー431によって満たされたような形となっている。
【0046】
図5(b)は、アスファルト混合物43の温度分布画像Tの例である。温度分布画像Tの各画素の画素値は、当該画素に対応する位置のアスファルト混合物43の温度に応じたものとなっており、この温度分布画像Tにより撮影範囲内のアスファルト混合物43の温度分布が可視化される。
【0047】
カメラ29とサーモグラフィカメラ31は、所定量のアスファルト混合物43がミキサ27から車両33の荷台39に落下する間、落下中のアスファルト混合物43の外観画像I、温度分布画像Tを所定の時間間隔で撮影、取得する。アスファルト混合物43の撮影間隔は適宜設定され、ミキサ27から排出される所定量のアスファルト混合物43の一部あるいは全てを撮影する。前者の場合、当該一部の外観画像Iと温度分布画像Tにより上記所定量のアスファルト混合物43の品質管理を行うことができるので情報処理装置45の処理負担が小さく、後者の場合、所定量のアスファルト混合物43全てを撮影することで、より確実な品質管理が可能になる。
【0048】
情報処理装置45は、これらの外観画像Iと温度分布画像Tを用いて、アスファルト混合物43の品質についての合否判定を行う。
【0049】
この合否判定として、本実施形態では、情報処理装置45が、外観画像Iに含まれるアスファルト混合物43の粒状体の大きさの最大値として粒状体の最大面積を求め、この最大面積が閾値を超えているか否かを判定する(S103)。最大面積は、例えば外観画像Iのエッジ抽出を行い、エッジで囲まれた閉領域のうち最も大きな領域の面積として求めることができるが、これに限定されず既知の種々の手法を用いることができる。閾値は設計上の粒度分布等に応じて定めることができ、最大面積を閾値と比較することにより、設計上の粒度分布を外れるような大きさを有する異物の存在を検出できる。
【0050】
また情報処理装置45は、外観画像Iに基づいて、アスファルト混合物43の配合状態が所定の配合状態であるか否か判定する(S104)。なお配合状態とはアスファルト混合物43において何がどの程度の量配合されているかという意味であり、後述するフィラー431、細骨材432、粗骨材433、アスファルトの配合量、アスファルトの種類などを含む。
【0051】
上記の判定は、例えばアスファルト混合物43の光沢を利用して行うことができる。すなわち、アスファルト混合物43の撮影範囲に照明光を照射してカメラ29により撮影を行うと、フィラー431、細骨材432、粗骨材433の各粒状体の間で光沢が異なり、外観画像I中の明るさが異なる。例えば
図6(a)に簡単に示すように、粒径の大きい粗骨材433では照明光Lがその滑らかな表面で正反射して光沢が生じやすく、正反射した照明光Lをカメラ29で受光することで外観画像Iにおいて明るく写る。一方、
図6(b)に示すように、粒径の小さなフィラー431では、その細かな凹凸によって照明光Lが拡散反射(図中L’参照)しやすく、カメラ29での受光量が少なくなって外観画像Iにおいて暗く写りやすい。
【0052】
従って、粗骨材433の配合量が多い場合、外観画像Iにおいて高明度の領域が多くなり、フィラー431の配合量が多い場合、外観画像Iにおいて高明度の領域は少なくなる。その他、アスファルトの配合量が多い場合、それが粒状体の表面に付着して滑らかな表面を形成することで光沢が生じやすく、外観画像Iが全体的に明るくなりやすい。またポリマーなどの樹脂が添加されたアスファルトが用いられる場合、樹脂の光沢により外観画像Iがさらに明るくなる。
【0053】
前記したように、アスファルト混合物43の配合状態は、アスファルト混合物43の舗設位置(例えば道路の表層やその下層等)、求められる機能(排水性やすべり抵抗性等)などの条件に応じて適切なものに定められ、フィラー431、細骨材432、粗骨材433、アスファルトの配合量、アスファルトの種類なども上記の条件に応じて異なる。
【0054】
そこでS104では、例えば
図7に示すように外観画像Iを所定の閾値で二値化し、その際の明領域の面積が所定範囲内であるか否かを判定する。上記の閾値と所定範囲は、アスファルト混合物43について予め定められた設計上の配合状態(所定の配合状態)に基づいて設定し、明領域の面積が上記所定範囲内に無い場合に、アスファルト混合物43の配合状態が所定の配合状態でないと判定する。
【0055】
また、情報処理装置45は、温度分布画像Tに基づき、アスファルト混合物43の温度が基準範囲内であるか否かを判定する(S105)。この基準範囲は事前に適切なものに設定しておき、例えば温度分布画像Tにおける温度の最大値と最小値が上記基準範囲内に収まっていればアスファルト混合物43の温度が基準範囲内とするが、判定方法はこれに限らない。
【0056】
情報処理装置45は、アスファルト混合物43の粒状体の大きさの最大値が閾値以下であり(S103;NO)、アスファルト混合物43の配合状態が所定の配合状態であり(S104;YES)、アスファルト混合物43の温度が基準範囲内にある(S105;YES)場合、アスファルト混合物の品質を合格と判定してその旨を表示部49に表示し(S106)、処理を終了する。
【0057】
一方、情報処理装置45は、アスファルト混合物43の粒状体の大きさの最大値が閾値を超える場合(S103;YES)、または、アスファルト混合物43の配合状態が所定の配合状態でない場合(S104;NO)、あるいは、アスファルト混合物43の温度が基準範囲外の場合(S105;NO)、アスファルト混合物の品質を不合格と判定し、表示部49に警告画面を表示するなどして警告を発し(S107)、処理を終了する。
【0058】
以上はミキサ27から車両33の荷台39に排出されるアスファルト混合物43の品質について合否判定を行う例であるが、前記したように、カメラ29とサーモグラフィカメラ31はホットサイロ37にも設けられており、ホットサイロ37から車両33の荷台39に排出されるアスファルト混合物43についても同様に合否判定を行うことが可能である。これにより、ホットサイロ37内に残存したアスファルトが炭化により粒径の大きい異物となり、これがアスファルト混合物43に混入するなどといった、貯蔵中におけるアスファルト混合物43の品質の変化も検出することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の品質管理システム2によれば、カメラ29により撮影されたアスファルト混合物43の外観画像Iと、サーモグラフィカメラ31を用いて取得されたアスファルト混合物43の温度分布画像Tに基づき、アスファルト混合物43の品質についての合否判定を行う。そのため客観的なデータに基づいて正確な品質管理が可能になる。また、アスファルト混合物43の画像を品質管理に用いることにより、広範囲のアスファルト混合物43を対象とする品質管理が可能になり、より精度の高い品質管理を行うことが可能になる。
【0060】
品質管理システム2による管理項目は前記したように粒状体の大きさやアスファルト混合物43の温度、配合状態等とでき、これらの管理により、設計上の粒度分布を外れた大きさの異物の混入、アスファルト混合物の温度や配合状態の不良等を発見することができる。
【0061】
また本実施形態では、品質管理システム2をアスファルトプラント1に設けることで、アスファルトプラント1におけるアスファルト混合物43の品質管理を、品質管理システム2を用いて好適に行える。本実施形態ではミキサ27やホットサイロ37から車両33の荷台39に排出されている途中のアスファルト混合物43を撮影することで、出荷直前のアスファルト混合物43の品質を確認でき、品質に問題のあるアスファルト混合物が舗設現場に搬送されるのを防止できる。
【0062】
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば
図8に示すように、カメラ29とサーモグラフィカメラ31によってミキサ27からトロリ35へ排出されている途中のアスファルト混合物43の外観画像I、温度分布画像Tを取得し、外観画像I、温度分布画像Tに基づき前記の合否判定を行うことも可能である。不合格と判定されたアスファルト混合物43はトロリ35から不良品排出部(不図示)に排出するなどして、品質に問題のあるアスファルト混合物43がホットサイロ37に貯蔵されるのを防止できる。
【0063】
また、品質管理システム2における管理項目も前記に限らず、アスファルト混合物43の品質に関するものであり、前記の外観画像Iや温度分布画像Tから合否の判定ができるものであればよい。
【0064】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と異なる点を主に説明し、同様の点については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
【0065】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、品質管理システム2を前記の車両33に設け、車両33により運搬されるアスファルト混合物43の品質について前記した合否判定を行う。
【0066】
そのため、本実施形態では
図9に示すように荷台39の内部にカメラ29およびサーモグラフィカメラ31を配置し、これにより荷台39に載せられたアスファルト混合物43を撮影する。情報処理装置45は運転席等に配置されており、カメラ29およびサーモグラフィカメラ31から得られた外観画像I、温度分布画像Tを用いて第1の実施形態と同様に合否判定を行う。
【0067】
これにより、第2の実施形態では、車両33で運搬されるアスファルト混合物43の品質管理を運転席等に居ながらにして好適に行うことができ、品質に問題のあるアスファルト混合物43が舗設現場で舗設されるのを防止できる。またアスファルト混合物43の温度低下といった、運搬中におけるアスファルト混合物43の品質の変化も検出することができる。
【0068】
前記したように、車両33は荷台39の全面に被せる覆い41を有し、且つ覆い41が荷台39外からの操作により開閉可能であるため、作業員は車両33の荷台39に上らずに荷台39の全面に覆いを被せることができる。そのため、アスファルトプラント1において車両33の荷台39にアスファルト混合物43を積み込んだ後、作業員が車両33の荷台39に上ってアスファルト混合物43に保温シートを被せる必要が無く、作業員が荷台39から転落する危険が無くなる。その一方で、従来のように荷台39に上ってアスファルト混合物43に保温シートを被せる際に目視によるアスファルト混合物43の品質確認を行うといったことはできなくなるので、品質管理システム2を用いて荷台39外からの品質管理を行えるようにすることは特に有効である。ただし、品質管理システム2を設ける車両がこれに限ることない。
【0069】
なお、第2の実施形態では、情報処理装置45が、カメラ29やサーモグラフィカメラ31から撮影範囲のアスファルト混合物43までの距離に応じた画像補正を外観画像Iや温度分布画像Tについて行ったうえで、前記の合否判定を実行することも可能である。これにより、カメラ29やサーモグラフィカメラ31の向きを変えて荷台39の前後の複数の撮影範囲を撮影し、それぞれの撮影範囲で撮影されたアスファルト混合物43の品質管理を好適に行うことができる。
【0070】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0071】
1:アスファルトプラント
2:品質管理システム
27:ミキサ
29:カメラ
31:サーモグラフィカメラ
33:車両
35:トロリ
37:ホットサイロ
39:荷台
41:覆い
43:アスファルト混合物
45:情報処理装置
431:フィラー
432:細骨材
433:粗骨材
I:外観画像
T:温度分布画像