(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】歯の漂白用デバイス及びキット並びに歯の漂白方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/20 20060101AFI20230627BHJP
A61C 19/06 20060101ALI20230627BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20230627BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20230627BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230627BHJP
A61Q 11/02 20060101ALI20230627BHJP
C01B 11/02 20060101ALI20230627BHJP
C01B 11/10 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61K8/20
A61C19/06 Z
A61K8/23
A61K8/24
A61Q11/00
A61Q11/02
C01B11/02 F
C01B11/10
(21)【出願番号】P 2019113858
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】502124248
【氏名又は名称】リジェンティス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100107799
【氏名又は名称】岡田 希子
(72)【発明者】
【氏名】柴 肇一
(72)【発明者】
【氏名】川添 祐美
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-516891(JP,A)
【文献】特表2009-536935(JP,A)
【文献】特開2016-117634(JP,A)
【文献】国際公開第2012/128022(WO,A1)
【文献】特開2007-008931(JP,A)
【文献】特開2001-247438(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058892(WO,A1)
【文献】特開2016-101303(JP,A)
【文献】特開2012-036072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61C 1/00-19/10
A61G 15/14-15/18
C01B 7/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層(a)、層(b)及び透湿・防水性部材がこの順で重ねられており、これらの外周部には防水性の外部部材が存在し、層(a)及び層(b)は、層(a)及び層(b)の一方は固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)を含み、他方は固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含み、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)とが非接触状態にある歯の漂白用デバイスであって、さらに二酸化塩素トラップ部材を備え、二酸化塩素トラップ部材は、透湿・防水性部材の、層(b)に対向しない面に接触して、又は、透湿・防水性部材の、層(b)に対向しない面から所定距離離れて空間を介して存在しており、ここで、二酸化塩素トラップ部材は、水性ゲルの形態の二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)を保持していることを特徴とする歯の漂白用デバイス。
【請求項2】
二酸化塩素トラップ部材の外表面がポリマー製フィルム又はシートで被覆されている、請求項1に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項3】
層(a)と層(b)との間に、さらに透水性、吸水性又は水溶性の隔壁を有する、請求項1又は2に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項4】
外部部材が、中空の防水性部材である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項5】
層(a)及び/又は層(b)が透水性、吸水性又は水溶性の保持部材を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項6】
さらに、層(a)の封止材を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の歯の漂白用デバイスと、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかに反応する物質を含まない水性液体(a)をその内部に収容している液体供給用部材(a)とを含むことを特徴とする、歯の漂白用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜塩素酸塩を使用する歯の漂白用デバイス及びキットと、それらを用いる歯の漂白方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯の漂白、即ち、ホワイトニングには、過酸化水素や過酸化尿素等の酸素系漂白剤が用いられている。しかし、これらの酸素系漂白剤を用いたホワイトニングで有効な効果を得るためには、通常、8乃至10分間の処理を3回行うこと、即ち、合計で約30分間以上の処理時間が必要であり、数時間を要する場合もあった。
【0003】
日本において食品添加物としての使用が許可されている亜塩素酸ナトリウムを用いた歯の漂白方法が、特許文献1及び2に開示されている。特許文献1によると、亜塩素酸ナトリウムを酸味料と接触させて二酸化塩素を生じさせ、その二酸化塩素によって歯を漂白するのである。しかし、特許文献1に記載の方法では、酸性状態で漂白を行うため、歯の脱灰を促進してしまうという問題がある。
【0004】
特許文献2の
図1には、亜塩素酸ナトリウムにクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液を加えて系のpHを低下させても、二酸化塩素はわずかしか生成されなかった旨が、また
図1及び
図3には、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液の代わりに無水コハク酸及びコハク酸二ナトリウムを加えると、二酸化塩素が生成され且つ漂白効果が得られた旨が記載されている。後者の実施例では、亜塩素酸ナトリウムに弱塩基性(5%水溶液のpHが7.0乃至9.0)のコハク酸二ナトリウムを先に加え、その後、使用直前に無水コハク酸を加えている。
【0005】
また、特許文献1及び2のいずれも、使用の直前まで、亜塩素酸ナトリウムと酸味料又は有機酸無水物とを、物理的に相互に隔離した状態に保持する旨を教示している。
【0006】
特許文献3には、気体の二酸化塩素の緩慢な発生方法が開示されている。その方法は、亜塩素酸塩の粉体、又は亜塩素酸塩若しくは安定化二酸化塩素の水溶液を塩基性固体物質に混合又は吸着させた組成物に、酸若しくはエステルの蒸気を接触せしめることを特徴とする。
【0007】
特許文献4には、亜塩素酸塩を含む第一の成分を第一の多孔質層に含浸させる過程、酸性物質を含む第二の成分を第二の多孔質層に含浸させる過程、並びに第一及び第二の多孔質層を面同士密着させる過程からなる気体の二酸化塩素の発生方法が開示されている。多孔質層は、例えばろ紙である。
【0008】
特許文献5には、吸水性の基材中で亜塩素酸塩と水溶性酸性物質とを、水の存在下で接触させて反応させることを特徴とする、二酸化塩素を発生させる方法、及びそのような方法に使用する二酸化塩素発生用キットが開示されている。吸水性の基材は、例えばろ紙である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2000-516221
【文献】特表2009-536935
【文献】特開昭61-48404
【文献】特開2016-117634
【文献】特開2017-222528
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、二酸化塩素を気体状態で発生させ、それを水性液体に吸収、溶解させるという機構を利用する、歯の脱灰を生じさせない歯の漂白方法、並びにその方法の実施に適する歯の漂白用デバイス及びキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、気体の二酸化塩素を使用する歯の漂白方法を研究している間に、気体の二酸化塩素を水に吸収、溶解させてなる水性液体が、ほぼ中性を示すことを見出した。この知見に基づき、本発明者らは、以下の本発明を成し遂げた。
【0012】
本発明の歯の漂白用デバイス(1)は、層(a)、層(b)及び透湿・防水性部材がこの順で重ねられており、これらの外周部には防水性の外部部材が存在し、層(a)及び層(b)は、層(a)及び層(b)の一方は固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)を含み、他方は固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含み、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)とが非接触状態にあることを特徴とする。
【0013】
上記本発明の歯の漂白用デバイス(1)には、次のような態様が包含される:
(A)さらに二酸化塩素トラップ部材を備え、二酸化塩素トラップ部材は、透湿・防水性部材の、層(b)に対向しない面に接触して、又は、透湿・防水性部材の、層(b)に対向しない面から所定距離離れて空間を介して存在している態様、この態様において、二酸化塩素トラップ部材の外表面(即ち、透湿・防水性部材に対向しない面)は、ポリマー製フィルム又はシートで被覆されていてもよい;
(B)層(a)と層(b)との間に、さらに透水性、吸水性又は水溶性の隔壁を有する態様;
(C)外部部材が、中空の防水性部材である態様、この態様において、層(a)及び/又は層(b)は、透水性、吸水性又は水溶性の保持部材を含んでいてもよい;
(D)層(a)及び層(b)が透水性又は吸水性の保持部材を含み、層(a)と層(b)との間に、さらに透水性又は吸水性の隔壁を有し、外部部材が、歯の漂白用デバイスの構成要素同士をそれらの外周部で接着している接着剤層である態様;及び
(E)さらに層(a)の封止材を有する態様。
【0014】
上記態様(A)乃至(E)は、いずれか一態様のみが適用されることもあるし、二以上の態様が同時に適用されることもある。
【0015】
本発明の歯の漂白用キット(1)は、上記の歯の漂白用デバイス(1)と、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかに反応する物質を含まない水性液体(a)をその内部に収容している液体供給用部材(a)とを含むことを特徴とする。デバイス(1)における漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)の量比は、デバイス(1)に水性液体(a)が添加されて生じる、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む水性液体が、酸性(好ましくはpH(25℃)が1乃至5)となる比率であることが好ましい。なお、「pH(25℃)」は、25℃におけるpHを意味し、以下においても同様である。
【0016】
本発明の歯の漂白用デバイス(2)は、層(c)及び透湿・防水性部材がこの順で重ねられており、これらの外周部には防水性の外部部材が存在し、層(c)は、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)を含むことを特徴とする。
【0017】
上記本発明の歯の漂白用デバイス(2)には、次のような態様が包含される:
(F)さらに二酸化塩素トラップ部材を備え、二酸化塩素トラップ部材は、透湿・防水性部材の、層(c)に対向しない面に接触して、又は、透湿・防水性部材の、層(c)に対向しない面から所定距離離れて空間を介して存在している態様、この態様において、二酸化塩素トラップ部材の外表面(即ち、透湿・防水性部材に対向しない面)は、ポリマー製フィルム又はシートで被覆されていてもよい;
(G)外部部材が、中空の防水性部材である態様、この態様において、層(c)は、透水性、吸水性又は水溶性の保持部材を含んでいてもよい;
(H)層(c)が透水性又は吸水性の保持部材を含み、外部部材が、歯の漂白用デバイスの構成要素同士をそれらの外周部で接着している接着剤層である態様;及び
(I)さらに層(c)の封止材を有する態様。
【0018】
上記態様(F)乃至(I)は、いずれか一態様のみが適用されることもあるし、二以上の態様が同時に適用されることもある。
【0019】
本発明の歯の漂白用キット(2)は、上記の歯の漂白用デバイス(2)と、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)をその内部に収容している液体供給用部材(b)とを備えることを特徴とする。デバイス(2)中の漂白剤前駆体(I)と、液体供給用部材(b)中の酸性化剤(II)との量比は、デバイス(2)に水性液体(b)が添加されて生じる、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む水性液体が、酸性(好ましくはpH(25℃)が1乃至5)となる比率であることが好ましい。
【0020】
本発明の歯の漂白用デバイス(3)は、層(d)及び透湿・防水性部材がこの順で重ねられており、これらの外周部には防水性の外部部材が存在し、層(d)は、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含むことを特徴とする。
【0021】
上記本発明の歯の漂白用デバイス(3)には、次のような態様が包含される:
(J)さらに二酸化塩素トラップ部材を備え、二酸化塩素トラップ部材は、透湿・防水性部材の、層(d)に対向しない面に接触して、又は、透湿・防水性部材の、層(d)に対向しない面から所定距離離れて空間を介して存在している態様、この態様において、二酸化塩素トラップ部材の外表面(即ち、透湿・防水性部材に対向しない面)は、ポリマー製フィルム又はシートで被覆されていてもよい;
(K)外部部材が、中空の防水性部材である態様、この態様において、層(d)は、透水性、吸水性又は水溶性の保持部材を含んでいてもよい;
(L)層(d)が透水性又は吸水性の保持部材を含み、外部部材が、歯の漂白用デバイスの構成要素同士をそれらの外周部で接着している接着剤層である態様;及び
(M)さらに層(d)の封止材を有する態様。
【0022】
上記態様(J)乃至(M)は、いずれか一態様のみが適用されることもあるし、二以上の態様が同時に適用されることもある。
【0023】
本発明の歯の漂白用キット(3)は、上記の歯の漂白用デバイス(3)と、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)であって、そのpH(25℃)が9乃至14であるものをその内部に収容している液体供給用部材(c)とを備えることを特徴とする。デバイス(3)中の酸性化剤(II)と、液体供給用部材(b)中の漂白剤前駆体(I)との量比は、デバイス(3)に水性液体(c)が添加されて生じる、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む水性液体が、酸性(好ましくはpH(25℃)が1乃至5)となる比率であることが好ましい。
【0024】
本発明の歯の漂白方法(1)は、歯の漂白用デバイス(1)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程1-1、デバイスの層(a)に、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(a)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程1-2、工程1-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程1-3、デバイスの透湿・防水性部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程1-4、及びデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程1-5を含む。
【0025】
本発明の歯の漂白方法(2)は、歯の漂白用デバイス(1)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、デバイスの透湿・防水性部材の外表面上に塗布する工程2-1、デバイスの層(a)に、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(a)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程2-2、工程2-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程2-3、デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材の外表面上に保持されている水性ゲルに吸収、溶解させる工程2-4、及び二酸化塩素を溶解した水性ゲルを、漂白すべき歯に押し当てる工程2-5を含む。
【0026】
本発明の歯の漂白方法(3)は、歯の漂白用デバイス(1)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程3-1、漂白用デバイスの層(a)に、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(a)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程3-2、工程3-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材及び二酸化塩素トラップ部材を通過させてデバイス外に導く工程3-3、デバイスの二酸化塩素トラップ部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程3-4、及びデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程3-5を含む。
【0027】
本発明の歯の漂白方法(4)は、歯の漂白用デバイス(1)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、デバイスの二酸化塩素トラップ部材に、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)を保持させる工程4-1、デバイスの層(a)に、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(a)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程4-2、工程4-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させて二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に導く工程4-3、水性液体(e)に気体の二酸化塩素を吸収、溶解させ、二酸化塩素を含む水性液体(f)を得る工程4-4、及び水性液体(f)を保持した二酸化塩素トラップ部材を、漂白すべき歯に押し当てる工程4-5を含む。
【0028】
本発明の歯の漂白方法(5)は、歯の漂白用デバイス(2)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程5-1、デバイスの層(c)に、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程5-2、工程5-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程5-3、デバイスの透湿・防水性部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程5-4、及びデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程5-5を含む。
【0029】
本発明の歯の漂白方法(6)は、歯の漂白用デバイス(2)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、デバイスの透湿・防水性部材の外表面上に塗布する工程6-1、デバイスの層(c)に、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程6-2、工程6-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程6-3、デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材の外表面上に保持されている水性ゲルに吸収、溶解させる工程6-4、及び二酸化塩素を溶解した水性ゲルを、漂白すべき歯に押し当てる工程6-5を含む。
【0030】
本発明の歯の漂白方法(7)は、歯の漂白用デバイス(2)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程7-1、デバイスの層(c)に、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程7-2、工程7-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材及び二酸化塩素トラップ部材を通過させてデバイス外に導く工程7-3、デバイスの二酸化塩素トラップ部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程7-4、及びデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程7-5を含む。
【0031】
本発明の歯の漂白方法(8)は、歯の漂白用デバイス(2)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、デバイスの二酸化塩素トラップ部材に、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)を保持させる工程8-1、デバイスの層(c)に、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程8-2、工程8-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させて二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に導く工程8-3、水性液体(e)に気体の二酸化塩素を吸収、溶解させ、二酸化塩素を含む水性液体(f)を得る工程8-4、及び水性液体(f)を保持した二酸化塩素トラップ部材を、漂白すべき歯に押し当てる工程8-5を含む。
【0032】
本発明の歯の漂白方法(9)は、歯の漂白用デバイス(3)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程9-1、デバイスの層(d)に、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものを添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程9-2、工程9-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程9-3、デバイスの透湿・防水性部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程9-4、及びデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程9-5を含む。
【0033】
本発明の歯の漂白方法(10)は、歯の漂白用デバイス(3)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、デバイスの透湿・防水性部材の外表面上に塗布する工程10-1、デバイスの層(d)に、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものを添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程10-2、工程10-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程10-3、デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材の外表面上に保持されている水性ゲルに吸収、溶解させる工程10-4、及び二酸化塩素を溶解した水性ゲルを、漂白すべき歯に押し当てる工程10-5を含む。
【0034】
本発明の歯の漂白方法(11)は、歯の漂白用デバイス(3)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程11-1、デバイスの層(d)に、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものを添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程11-2、工程11-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材及び二酸化塩素トラップ部材を通過させてデバイス外に導く工程11-3、デバイスの二酸化塩素トラップ部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程11-4、及びデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程11-5を含む。
【0035】
本発明の歯の漂白方法(12)は、歯の漂白用デバイス(3)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、デバイスの二酸化塩素トラップ部材に、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)を保持させる工程12-1、デバイスの層(d)に、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものを添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程12-2、工程12-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させて二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に導く工程12-3、水性液体(e)に気体の二酸化塩素を吸収、溶解させ、二酸化塩素を含む水性液体(f)を得る工程12-4、及び水性液体(f)を保持した二酸化塩素トラップ部材を、漂白すべき歯に押し当てる工程12-5を含む。
【0036】
本発明の歯の漂白方法は、美容用の歯の漂白方法を包含する。また、本発明の歯の漂白方法において、各工程は、上記の順に実施されるとは限らず、合理的な範囲内において、工程の実施順序は変更され得る。
【発明の効果】
【0037】
本発明では、気体の二酸化塩素を水性液体に吸収、溶解させてなる、ほぼ中性の水性液体を用いて歯のホワイトニングを行うため、歯が脱灰されない。また、本発明により、高効率で、即ち、短時間で、歯のホワイトニングを実施できるようになる。さらに、本発明により、飛躍的に高い歯の漂白効果が、容易に且つ確実に得られる。本発明により、自宅やエステティックサロンにおいても歯の漂白を実施できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1(1)は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)の一例の正面図であり、
図1(2)は、その縦断面図である。
図1(3)は、
図1(1)及び(2)に記載した本発明の歯の漂白用デバイス(1)に蓋を被せた状態を示す正面図であり、
図1(4)は、その縦断面図である。
【
図2】
図2(1)は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)の他の例の正面図であり、
図2(2)は、その縦断面図である。
【
図3】
図3(1)は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)のさらに他の例の正面図であり、
図3(2)は、その縦断面図である。
【
図4】
図4(1)は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)のさらに他の例の正面図であり、
図4(2)は、その縦断面図である。
【
図5】
図5(1)は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)のさらに他の例の正面図であり、
図5(2)は、その縦断面図である。
【
図6】
図6(1)は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)のさらに他の例の正面図であり、
図6(2)は、その縦断面図である。
【
図7】
図7(1)は、液体供給用部材の一例の一部切欠き模式的斜視図であり、
図7(2)は、(1)に示した液体供給用部材の使用時の模式的断面図である。
【
図8】
図8は、液体供給用部材の他の例であるパウチの模式的斜視図である。
【
図9】
図9(1)は、本発明の歯の漂白用デバイス(2)の一例の正面図であり、
図9(2)は、その縦断面図である。
【
図10】
図10(1)は、本発明の歯の漂白用デバイス(2)の他の一例の正面図であり、
図10(2)は、その縦断面図である。
【
図11】
図11(1)は、本発明の歯の漂白用デバイス(2)のさらに他の一例の正面図であり、
図11(2)は、その縦断面図である。
【
図12】
図12(1)本発明の歯の漂白用デバイス(2)のさらに他の一例の正面図であり、
図12(2)は、その縦断面図である。
【
図13】
図13は、実験例2及び3で使用した歯の漂白用デバイスの模式的断面図である。
【
図14】
図14は、実験例4及び5で使用した歯の漂白用デバイスの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
先ず初めに、本明細書及び特許請求の範囲において使用する用語の意味等を説明する。
【0040】
「亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)」は、亜塩素酸塩を必須成分として含み、本発明の効果を損ねない限り、他の任意成分を含有していてもよい。漂白剤前駆体(I)は、水溶液等の水性液体や、粉末等の固体の形態等、様々な形態をとり得る。「漂白剤前駆体」と称しているのは、亜塩素酸塩が、漂白剤である二酸化塩素の前駆体であるからである。
【0041】
漂白剤前駆体(I)に含有される亜塩素酸塩の例としては、亜塩素酸ナトリウム(CAS:7758-19-2)、亜塩素酸カリウム及び亜塩素酸リチウム等の水溶性の亜塩素酸塩が挙げられる。亜塩素酸塩は、その塩基性(好ましくはpH(25℃)が9以上)の水溶液は比較的安定である。亜塩素酸ナトリウムの水溶液は、無色乃至淡黄色である。亜塩素酸ナトリウムには、無水塩と三水塩が存在する。無水塩は無色の結晶性粉末であり、水に易溶であり、その水溶液は、塩基性では光にあてない限り安定である。本発明においては、亜塩素酸塩として亜塩素酸ナトリウムを使用することが好ましい。
【0042】
「その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)」は、「その水溶液が酸性を示す物質」を必須成分として含み、本発明の効果を損ねない限り、他の任意成分を含有していてもよい。酸性化剤(II)は、水溶液等の水性液体や、粉末等の固体の形態等、様々な形態をとり得る。酸性化剤(II)は、漂白剤前駆体(I)の水性液体のpH(25℃)を酸性とするために使用される。
【0043】
酸性化剤(II)に含有される「その水溶液が酸性を示す物質」は、無機酸又はその塩でも、有機酸又はその塩でもよく、特に限定されない。「その水溶液が酸性を示す物質」の例としては、ギ酸、酢酸、アスコルビン酸、リン酸類、クエン酸、硫酸及び塩酸、並びにそれらの塩類、例えばアルカリ金属塩が挙げられる。反応性の観点からすれば、これらの中で、リン酸、クエン酸及び硫酸からなる群から選択される少なくとも一種を使用することが好ましい。安全性の観点からすれば、リン酸及びクエン酸が好ましい。また、酸性化剤(II)として固体のものを用いる場合には、クエン酸及び縮合リン酸類、並びにそれらの塩類が好ましい。
【0044】
酸性化剤(II)において、「その水溶液が酸性を示す物質」が結晶や粉末形態の場合には、そのまま使用される場合と、水溶液等の水性液体として使用される場合がある。
【0045】
「防水性の外部部材」は、本発明の歯の漂白用デバイスを、構造物としてその形状を特定する役目を果たしている。その一例は、本発明のデバイスの外周部を構成する、シートからなる中空部材である。そのようなシートからなる外部部材は、少なくともその内側は防水性材料製(例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、及びポリテトラフルオロエチレン等の防水性ポリマー製)である。「防水性の外部部材」として、ポリエチレン製シートやアルミ蒸着シートのような防湿性も兼ね備えたものが好ましい。
【0046】
また、「防水性の外部部材」の他の例は、後で図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明のデバイスの構成要素同士をそれらの外周部で接着している接着剤層である。「接着剤層」は、非水溶性である。「接着剤層」は、例えば、接着剤硬化物の層や接着剤が乾燥してなる層である。接着剤層を形成するために使用される接着剤は、一剤型でも二剤型でもよく、また、その例としては、アクリル系接着剤、塩化ビニル系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0047】
「透湿・防水性部材」は、水の分子は通過できないが、水蒸気や気体の二酸化塩素は通過することのできる大きさの孔を有する。その例は、高密度ポリエチレンの不織布、ポリエチレン系多孔質フィルム、ポリウレタン系多孔質フィルム、及びポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルムである。
【0048】
「二酸化塩素トラップ部材」は、後記する水性液体(e)を保持することができる。二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)中に、気体の二酸化塩素が吸収されて溶解すると、水性液体(f)が得られる。二酸化塩素トラップ部材の例として、ろ紙、スポンジ、微細なブラシ、織布、及び不織布が挙げられる。また、その材料の例としては、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、レーヨン、低密度ポリエチレン、及びエチレン酢酸ビニル共重合体が挙げられる。本発明のデバイスにおいて、二酸化塩素トラップ部材は一つのみとは限らず、同じ材質又は異なる材質の二つ以上の二酸化塩素トラップ部材が存在していてもよい。また、「二酸化塩素トラップ層」は、漂白に使用されない気体の二酸化塩素、換言すれば、水性液体(e)に保持されない気体の二酸化塩素を捕捉するための層(例えば、活性炭布や活性炭シート等の活性炭を含む層)である。
【0049】
二酸化塩素トラップ部材の外表面を覆う「ポリマー製フィルム又はシート」は、本発明のデバイスの保存時には、二酸化塩素トラップ部材の外表面を覆っており、その使用に際して剥離される。本発明の歯の漂白用デバイスが外袋に封入されている場合には、「ポリマー製フィルム又はシート」はなくてもよい。このようなフィルム又はシートの原料ポリマーの例は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマー及びポリエチレンテレフタラートである。
【0050】
「層(a)」、「層(b)」及び「層(c)」は、例えば、固体の漂白剤前駆体(I)のみで構成された層であるか、または、固体の漂白剤前駆体(I)とそれを保持している保持部材を含む層である。「層(a)」、「層(b)」及び「層(d)」は、例えば、固体の酸性化剤(II)のみで構成された層であるか、または、固体の酸性化剤(II)とそれを保持している保持部材を含む層である。
【0051】
層(a)及び/又は層(b)を構成し得る「保持部材」は、そのものの有する小さな空隙等に、固体や水性液体を保持できる材料製のもの、例えば、スポンジ、ろ紙、織布である。外部部材が本発明のデバイスの他の構成要素とは独立に存在する場合、換言すると、外部部材によって本発明のデバイスの外形形状が保持される態様である場合には、保持部材は透水性、吸水性又は水溶性材料製であり、本発明のデバイスの構成要素すべてが、その使用時にも維持されていなければならない場合には、保持部材は透水性又は吸水性材料製である。
【0052】
層(a)と層(b)との間に配され得る「隔壁」は、本発明のデバイスの保存時に、亜塩素酸塩とその水溶液が酸性を示す物質とが、互いに接触するのを防ぐ役割を果たす。隔壁は、外部部材が本発明のデバイスの他の構成要素とは独立に存在する場合、換言すると、外部部材によって本発明のデバイスの外形形状が保持される態様である場合には、透水性、吸水性又は水溶性材料製である。また、外部部材が接着剤硬化物の層である場合のように、本発明のデバイスの構成要素すべてが、その使用時にも維持されていなければならない場合には、隔壁は透水性又は吸水性材料製である。
【0053】
透水性材料製の隔壁の具体例は、メッシュ、織布、不織布及び多数の孔を有するプラスチック製の板である。吸水性材料製の隔壁の具体例は、スポンジ及びろ紙である。水溶性材料製の隔壁の具体例は、水溶性ポリマー製のシートである。隔壁の孔は、固体の漂白剤前駆体(I)及び固体の酸性化剤(II)が隔壁を通過しない大きさである。
【0054】
「水性液体(a)」は、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない。水性液体(a)は、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を溶解、分散させるために使用される。水性液体(a)の例は、水、緩衝液、生理食塩水、エタノール水及び水性懸濁液である。水性液体(a)は、水性液体(a)に漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を溶解、分散させて得られる水性液体が、酸性のpH(25℃)を示すことが出来るものでなければならない。
【0055】
「酸性化剤(II)の水性液体(b)」は、酸性化剤(II)を含む、水溶液、生理食塩水溶液、緩衝剤水溶液及び水性懸濁液等である。
【0056】
「漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)」は、漂白剤前駆体(I)を含む、水溶液、生理食塩水溶液、緩衝剤水溶液及び水性懸濁液等である。水性液体(c)のpH(25℃)は、保存時における亜塩素酸塩の安定化の観点から9乃至14であり、11乃至13であることが好ましい。
【0057】
水性液体(d)は、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む、酸性の水性液体である。亜塩素酸塩は、酸の存在により、漂白剤である二酸化塩素を生成する。二酸化塩素生成反応を効率的に進行させるために、水性液体(d)のpH(25℃)は、1乃至5であることが好ましく、1乃至3であることがさらに好ましい。
【0058】
「二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)」は、気体の二酸化塩素を吸収、溶解させるために使用される。水性液体(e)は、水、緩衝液、生理食塩水、エタノール水、水-アセトン等であり、あるいは、唾液であってもよい。水性液体(e)は、二酸化塩素トラップ部材に保持される。
【0059】
水性液体(e)は、水性ゲルであってもよい。「水性ゲル」は、ゲル化剤を使用して調製され得る。ゲル化剤の例としては、例えば、食品添加物として使用されている増粘多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロース(cmc)、cmcのナトリウム塩、cmcのカルシウム塩、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、ローカストビーンガム、カードラン、寒天、グルコマンナン、アルギン酸等が挙げられる。
【0060】
「水性液体(f)」は、水性液体(e)に気体の二酸化塩素が吸収、溶解されて調製される液体である。そのpH(25℃)は5.0乃至7.0であることが好ましく、5.5乃至7.0であることがさらに好ましい。
【0061】
水性液体(a)乃至(f)は、任意成分、例えば、プラチナ・ナノコロイド、二酸化チタン、塩化白金酸、酸化コバルト等を含有するものであってもよい。
【0062】
「層(a)、層(c)又は層(d)の封止材」は、本発明のデバイスに水性液体を供給した後に、デバイスから水性液体が漏れ出ないように、層(a)、層(c)又は層(d)の外表面上に配されるものである。特に、層(a)、層(c)又は層(d)が保持部材を有さない場合に有用である。封止材の具体例は、蓋、シール、特に再貼着可能なシールである。蓋は、それを一旦取り外して層(a)、層(c)又は層(d)に水性液体を供給した後、再度閉めることにより、水性液体の漏れを防止する。再貼着可能なシールは、その一部を剥がして層(a)、層(c)又は層(d)に水性液体を供給した後、再度貼着して、水性液体の漏れを防止する。
【0063】
「液体供給用部材」とは、本発明のデバイスの使用時に、そのデバイスに応じた水性液体を供給するための、前記した水性液体(a)乃至(c)のいずれかを内包している部材である。
【実施例】
【0064】
次に、図面を参照して、本発明の歯の漂白用デバイスの好ましい実施態様を、順に説明する。
【0065】
[歯の漂白用デバイス(1)]
(
図1に記載されたデバイス)
図1は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)の一例を示す。
図1(1)及び(2)は、封止材である蓋Cを取り外した状態を示し、
図1(3)及び(4)は、蓋Cをしている状態を示す。
【0066】
歯の漂白用デバイス1では、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の層11と、透水性、吸水性又は水溶性の隔壁21と、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の層13と、透湿・防水性部材50とがこの順で重ねられており、これらの外周部には防水性の外部部材33が存在する。
図1における層11が、歯の漂白用デバイス(1)における層(a)であり、層13が、歯の漂白用デバイス(1)における層(b)である。蓋Cは、漂白剤前駆体(I)がデバイス1から出ないための封止材であり、例えばゴム製の封止部材17と、蓋材本体19とから成る。
【0067】
この例では、層11は漂白剤前駆体(I)のみからなり、層13は酸性化剤(II)のみからなる。隔壁21が存在するために、このデバイス1の保存時において、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)とは非接触状態にある。外部部材33は、中空の防水性部材であり、使用時に水性液体がデバイス1から漏れ出ないようにする役割を果たす。また、蓋Cは、使用時に、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を溶解してなる水性液体(d)が、デバイス1から漏れ出ないようにする役割も果たす。
【0068】
蓋Cは、デバイス1に水性液体(a)を添加する際に取り外され、その後再び取り付けられる。蓋Cの代わりに、封止材として層11の外表面を被覆し、その外周部が外部部材33に接着されているシールを使用してもよい。
【0069】
歯の漂白用デバイス1の製造方法の一例は、次のとおりである。先ず、透湿・防水性部材50の外周に、外部部材33となる防水性ポリマーシートを、透湿・防水性部材50の上に空間が形成されるように巻き付ける。次いで、透湿・防水性部材50の上に酸性化剤(II)を充填し、その上に隔壁21(例えば、ろ紙)を載せる。隔壁21の上に漂白剤前駆体(I)を充填する。蓋Cを締める。
【0070】
(
図2に記載されたデバイス)
図2は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)の他の一例を示す。歯の漂白用デバイス2では、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)がスポンジ等の保持部材に保持されてなる層15と、透水性、吸水性又は水溶性の隔壁21と、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)がスポンジ等の保持部材に保持されてなる層16と、透湿・防水性部材50と、二酸化塩素トラップ部材42とがこの順で重ねられており、これらの外周部には外部部材33が存在する。また、二酸化塩素トラップ部材42の外表面は、ポリマー製フィルム90で覆われている。
図2における層15が、歯の漂白用デバイス(1)における層(a)であり、層16が、歯の漂白用デバイス(1)における層(b)である。
【0071】
この例では、隔壁21が存在するために、このデバイスの保存時において、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)とは非接触状態にある。例えば、層15を構成する保持部材が上方にのみ漂白剤前駆体(I)を保持しており、層16を構成する保持部材が下方にのみ酸性化剤(II)を保持している態様であれば、隔壁21はなくてもよい。
【0072】
二酸化塩素トラップ部材42は、透湿・防水性部材50の気体(湿分)透過性の孔を閉鎖しないように、例えば点接着で、透湿・防水性部材50に接着されているか、又は、透湿・防水性部材50に接着されていない。透湿・防水性部材50の孔の全てが塞がれてしまうと、水蒸気や二酸化塩素ガスが通過できなくなってしまうからである。
【0073】
二酸化塩素トラップ部材42の外表面を被覆しているポリマー製フィルム90は、歯の漂白用デバイス2の使用時(例えば、デバイス2を歯に押し当てる直前)に剥離される。
【0074】
外部部材33は、中空の防水性部材であり、使用時に水性液体がデバイス2から漏れ出ないようにする役割を果たす。
【0075】
歯の漂白用デバイス2の製造方法の一例は、次のとおりである。先ず、スポンジに漂白剤前駆体(I)の水溶液を吸収させ、次いで乾燥させることにより、固体の漂白剤前駆体(I)を保持したスポンジxを調製する。別のスポンジに酸性化剤(II)の水溶液を吸収させ、次いで乾燥させることにより、固体の酸性化剤(II)を保持したスポンジyを調製する。
【0076】
スポンジx(層15)の上に隔壁21、例えばろ紙を載せ、その上にスポンジy(層16)を載せ、その上に透湿・防水性部材50を載せ、さらにその上に二酸化塩素トラップ部材42を載せる。これらの外周に、外部部材33となる防水性ポリマーシートを巻き付ける。二酸化塩素トラップ部材42の外表面上に、使用時に剥離できる強度でポリマー製フィルム90を貼付する。
【0077】
(
図3に記載されたデバイス)
図3は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)のさらに他の一例を示す。歯の漂白用デバイス3は、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)がスポンジ等の保持部材に保持されてなる層15と、透水性、吸水性又は水溶性の隔壁21と、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)がスポンジ等の保持部材に保持されてなる層16と、透湿・防水性部材50とがこの順で重ねられている。これらの外周部には外部部材33が存在する。外部部材33は、透湿・防水性部材50の下方に空間39ができるように延伸されている。この空間39を閉鎖するように、二酸化塩素トラップ部材42が配置されている、即ち、透湿・防水性部材50の、層16に対向しない面から所定距離離れて空間39を介して存在している。二酸化塩素トラップ部材42の外表面は、ポリマー製フィルム90で覆われている。
【0078】
この例は、透湿・防水性部材50と二酸化塩素トラップ部材42とが接触していない点を除き、
図2に記載したデバイス2と同様である。デバイス3には空間39が存在するために、デバイス2と比べて、気体の二酸化塩素の、二酸化塩素トラップ部材42に保持された水性液体(e)への吸収、溶解が、より穏やかに進行する。
【0079】
歯の漂白用デバイス3の製造方法の一例は、次のとおりである。先ず、スポンジに漂白剤前駆体(I)の水溶液を吸収させ、次いで乾燥させることにより、固体の漂白剤前駆体(I)を保持したスポンジxを調製する。別のスポンジに酸性化剤(II)の水溶液を吸収させ、次いで乾燥させることにより、固体の酸性化剤(II)を保持したスポンジyを調製する。
【0080】
スポンジx(層15)の上に、隔壁21、例えばろ紙を載せ、その上にスポンジy(層16)を載せ、その上に透湿・防水性部材50を載せる。これらの外周に、外部部材33となる防水性ポリマーシートを、透湿・防水性部材50の上に空間39が形成されるように巻き付ける。空間39を閉鎖するように、二酸化塩素トラップ部材42を外部部材33に貼付する。二酸化塩素トラップ部材42の外表面上に、使用時に剥離できる強度でポリマー製フィルム90を貼付する。
【0081】
(
図4に記載されたデバイス)
図4は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)のさらに他の一例を示す。歯の漂白用デバイス4は、
図2に記載のデバイス2の構成要素からポリマー製フィルム90を除去し、代わりに、層15の外表面上であって外周部には二酸化塩素トラップ層45を、二酸化塩素トラップ部材42の外表面上であって外周部には二酸化塩素トラップ層46を加えたものである。二酸化塩素トラップ層45,46の一方のみが存在する態様も、本発明のデバイスに包含される。二酸化塩素トラップ層45,46は、過剰な気体の二酸化塩素を捕捉する役割を果たす。二酸化塩素トラップ層45は、
図2に記載されたデバイス2や
図3に記載されたデバイス3の層15の外表面上に形成することもできる。
【0082】
歯の漂白用デバイス4は、デバイス2の製造方法において、外部部材33となる防水性ポリマーシートを巻き付ける工程まで行った後、層15の外表面上であって外周部に、例えば活性炭布(二酸化塩素トラップ層45に相当する)を貼付し、二酸化塩素トラップ部材42の外表面上であって外周部にも、例えば活性炭布(二酸化塩素トラップ層46に相当する)を貼付することによって製造することが出来る。
【0083】
(
図5に記載されたデバイス)
図5は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)のさらに他の例を示す。歯の漂白用デバイス5は、デバイス2から二酸化塩素トラップ部材42とポリマー製フィルム90を省略し、外周部には、デバイス2における外部部材(防水性ポリマーシート)33の代わりに、層15、隔壁21、層16及び透湿・防水性部材50を接着している接着剤硬化物35が存在する例である。
【0084】
歯の漂白用デバイス5の製造方法の一例は、次のとおりである。デバイス2の製造方法に記載した方法で、スポンジx及びスポンジyを調製する。スポンジx(層15)の外周部上に接着剤を塗布し、隔壁21を載せ、隔壁21の外周部上に接着剤を塗布し、スポンジy(層16)を載せ、スポンジy(層16)の外周部上に接着剤を塗布し、透湿・防水性部材50を載せる。接着剤が硬化するのを待つ。
【0085】
(
図6に記載されたデバイス)
図6は、本発明の歯の漂白用デバイス(1)のさらに他の例を示す。歯の漂白用デバイス6は、デバイス5の構成要素と、透湿・防水性部材50の外周を覆う、活性炭布のような二酸化塩素トラップ層47からなる。
【0086】
歯の漂白用デバイス6は、デバイス5を製造した後、透湿・防水性部材50の外周を、例えば活性炭布で覆って二酸化塩素トラップ層47とすることによって製造される。
【0087】
[歯の漂白用デバイス(1)の使用時の状態]
歯の漂白用デバイス(1)には、その使用時に、水等の、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかに反応する物質を含まない水性液体(a)を供給する必要がある。使用者が、例えば水道水をスポイト等で、層(a)、即ち、
図1乃至
図6における層11又は15に供給すればよい。水の量は、デバイスから溢れない量、又は、層(a)中に存在する保持部材に保持され得る量である。また、使用時には、デバイス(1)の層(a)の側に蓋Cをして、供給された水性液体(a)がこぼれないようにすることも好ましい。
【0088】
一例として、歯の漂白用デバイス1の使用時の状態を説明する。デバイス1の層11に例えば水が供給されると、デバイス1中において、次のような現象が生じる。層11では、流入した水に固体の漂白剤前駆体(I)が溶解し、漂白剤前駆体(I)の水溶液が調製される。漂白剤前駆体(I)の水溶液は、隔壁21を経由して層13に流入する。この際、隔壁が水溶性である場合には、隔壁をも溶解する。層13では、流入した水溶液に固体の酸性化剤(II)が溶解し、これにより、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)が生成される。この酸性の水性液体(d)は、デバイス1中において、透湿・防水性部材50の上に保持される。この酸性の水性液体(d)中で、二酸化塩素が生成される。生成した二酸化塩素は、酸性の水性液体(d)中の二酸化塩素濃度が高くなるにしたがって気体として放出され、気体状態で透湿・防水性部材50を透過又は通過し、デバイス1の外へ出ていく。
【0089】
他の例として、歯の漂白用デバイス2の使用時の状態を説明する。先ず、ポリマー製フィルム90が剥離される。次いで、二酸化塩素トラップ部材42に水性液体(e)が供給される。その後、デバイス2の層15に例えば水が供給されると、デバイス2中において、次のような現象が生じる。層15では、流入した水に固体の漂白剤前駆体(I)が溶解し、漂白剤前駆体(I)の水溶液が調製される。漂白剤前駆体(I)の水溶液は、隔壁21を経由して層16に流入する。この際、隔壁が水溶性である場合には、隔壁をも溶解する。層16では、流入した水溶液に固体の酸性化剤(II)が溶解し、これにより、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)含む酸性の水性液体(d)が生成される。この酸性の水性液体(d)は、デバイス2中において、透湿・防水性部材50の上に保持される。この酸性の水性液体(d)中で、二酸化塩素が生成される。生成した二酸化塩素は、酸性の水性液体(d)中の二酸化塩素濃度が高くなるにしたがって気体として放出され、気体状態で透湿・防水性部材50を透過又は通過し、二酸化塩素トラップ部材42に保持された水性液体(e)に吸収、溶解され、その結果、二酸化塩素を含む水性液体(f)が調製される。なお、水性液体(e)が唾液である場合には、水性液体(e)は、歯の漂白用デバイスを歯に押し当てた後、二酸化塩素トラップ部材42に吸収、保持される。
【0090】
歯の漂白用デバイス3の使用時の状態は、原則としてデバイス2の使用時と同様である。しかし、空間39が存在するために、透湿・防水性部材50を透過又は通過した気体の二酸化塩素は、デバイス2を使用する場合と比べて緩慢に、二酸化塩素トラップ部材42に保持された水性液体(e)に吸収、溶解される。
【0091】
[歯の漂白用キット(1)]
本発明の歯の漂白用キット(1)は、上記の歯の漂白用デバイス(1)と、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかに反応する物質を含まない水性液体(a)をその内部に収容している液体供給用部材(a)とを含む。
【0092】
図7に、液体供給用部材の一例を示す。液体供給用部材60は、柔軟なプラスチック製の収容部61と収容部61の材質よりは硬質のプラスチック製の被覆部62,63とを有する。収容部61は、所定量の水性液体(a)、例えば水Wを収容しており、被覆部62,63は、接続部分65で結合されて、収容部61の開口部64を覆っている。
【0093】
液体供給用部材60の使用例を、
図2(2)を参照して説明する。使用者は、歯の漂白用デバイス2の上方(即ち、層15の上方)において、液体供給用部材60の被覆部62,63を、二本の指で矢印Gで示すように収容部61に向かって押す。これにより、被覆部62,63の接続部分65が破断して、収容部61内の所定量の水性液体(a)、例えば水Wが、開口部64から出てくる。この水Wは、歯の漂白用デバイス2の層15に供給される。
【0094】
図8は、液体供給用部材の他の一例のパウチである。柔軟なプラスチック製のパウチ70には、水性液体(a)、例えば水Wが収容されており、その下面中央には、このパウチ70に小さな圧力がかかると破れる裂け目部分76が形成されている。
【0095】
液体供給用部材として、
図8に示すパウチ70を使用する場合について、
図2(2)を参照して説明する。パウチ70を、その裂け目部分76が存在する面を下面として、歯の漂白用デバイス2の上(即ち、層15の上)に載せる。パウチ70を指で上から押して、裂け目部分76を破く。このようにして、パウチ70内の水Wを、歯の漂白用デバイス2の層15に供給する。
【0096】
[歯の漂白用デバイス(2)]
(
図9に記載されたデバイス)
図9は、本発明の歯の漂白用デバイス(2)の一例を示す。歯の漂白用デバイス7は、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)がスポンジ等の保持部材に保持されてなる層15と、透湿・防水性部材50とがこの順で重ねられている。これらの外周部には外部部材33が存在する。
図9における層15が、本発明の歯の漂白用デバイス(2)の層(c)である。
【0097】
固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)がスポンジ等の保持部材に保持されてなる層15の代わりに、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の層、即ち、保持部材を有さない層を採用してもよい。層(c)が保持部材を有さない層である場合には、封止材、即ち、
図1(3)及び(4)に示したような蓋C、又は、漂白剤前駆体(I)の層(c)の外表面を被覆し、その外周部が外部部材33に接着されているシートを使用することが好ましい。
【0098】
歯の漂白用デバイス7の製造方法の一例は、次のとおりである。先ず、スポンジに漂白剤前駆体(I)の水溶液を吸収させ、次いで乾燥させることにより、固体の漂白剤前駆体(I)を保持したスポンジxを調製する。スポンジx(層15)の上に透湿・防水性部材50を載せる。これらの外周に、外部部材33となる防水性ポリマーシートを巻き付ける。
【0099】
層15が保持部材を有さない層である場合には、透湿・防水性部材50の外周に、外部部材33となる防水性ポリマーシートを、透湿・防水性部材50の上に空間が形成されるように巻き付け、次いで、その空間に、即ち、透湿・防水性部材50の上に、漂白剤前駆体(I)を充填する。
【0100】
(
図10に記載されたデバイス)
図10は、本発明の歯の漂白用デバイス(2)の他の一例を示す。歯の漂白用デバイス8は、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)がスポンジ等の保持部材に保持されてなる層15と、透湿・防水性部材50と、二酸化塩素トラップ部材42がこの順で重ねられている。これらの外周部には外部部材33が存在する。また、二酸化塩素トラップ部材42の外表面は、ポリマー製フィルム90で覆われている。
【0101】
二酸化塩素トラップ部材42は、透湿・防水性部材50の気体(湿分)透過性の孔を閉鎖しないように、例えば点接着で、透湿・防水性部材50に接着されているか、又は、透湿・防水性部材50に接着されていない。透湿・防水性部材50の孔の全てが塞がれてしまうと、水蒸気や二酸化塩素ガスが通過できなくなってしまうからである。
【0102】
二酸化塩素トラップ部材42の外表面を被覆しているポリマー製フィルム90は、歯の漂白用デバイス8の使用時(例えば、デバイス8を歯に押し当てる直前)に剥離される。
【0103】
外部部材33は、中空の防水性部材であり、使用時にデバイス8に供給された水性液体(b)がデバイス8から漏れ出ないようにする役割を果たす。
【0104】
この例においても、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)がスポンジ等の保持部材に保持されてなる層15の代わりに、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の層、即ち、保持部材を有さない層を採用してもよい。
【0105】
歯の漂白用デバイス8の製造方法の一例は、次のとおりである。先ず、スポンジに漂白剤前駆体(I)の水溶液を吸収させ、次いで乾燥させることにより、固体の漂白剤前駆体(I)を保持したスポンジxを調製する。スポンジx(層15)の上に透湿・防水性部材50を載せ、その上に、二酸化塩素トラップ部材42を載せる。これらの外周に、外部部材33となる防水性ポリマーシートを巻き付ける。二酸化塩素トラップ部材42の外表面上に、使用時に剥離できる強度でポリマー製フィルム90を貼付する。
【0106】
(
図11に記載されたデバイス)
図11は、本発明の歯の漂白用デバイス(2)のさらに他の一例を示す。歯の漂白用デバイス9では、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)がスポンジ等の保持部材に保持されてなる層15と透湿・防水性部材50とがこの順で重ねられている。これらの外周部には外部部材33が存在するが、外部部材33は、透湿・防水性部材50の下方に空間39ができるように延伸されている。この空間39を閉鎖するように、二酸化塩素トラップ部材42が配置されている、即ち、透湿・防水性部材50の、層15に対向しない面から所定距離離れて空間39を介して存在している。この例において、二酸化塩素トラップ部材42の表面がポリマー製フィルム90で覆われているものも、本発明の歯の漂白用デバイス(2)に包含される。また、この例においても、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)がスポンジ等の保持部材に保持されてなる層15の代わりに、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の層、即ち、保持部材を有さない層を採用してもよい。
【0107】
デバイス9には空間39が存在するために、デバイス8と比べて、気体の二酸化塩素の、二酸化塩素トラップ部材42に保持された水性液体(e)への吸収、溶解が、より穏やかに進行する。
【0108】
歯の漂白用デバイス9の製造方法の一例は、次のとおりである。先ず、スポンジに漂白剤前駆体(I)の水溶液を吸収させ、次いで乾燥させることにより、固体の漂白剤前駆体(I)を保持したスポンジxを調製する。スポンジx(層15)の上に透湿・防水性部材50を載せる。これらの外周に、外部部材33となる防水性ポリマーシートを、透湿・防水性部材50の上に空間が形成されるように巻き付ける。閉鎖空間39が形成されるように、二酸化塩素トラップ部材42の外周を外部部材33に貼付する。
【0109】
(
図12に記載されたデバイス)
図12は、本発明の歯の漂白用デバイス(2)のさらに他の一例を示す。歯の漂白用デバイス10は、外周部に、
図9に記載したデバイス7における外部部材(防水性ポリマーシート)33の代わりに、層15及び透湿・防水性部材50を接着している接着剤硬化物35が存在する例である。
【0110】
歯の漂白用デバイス10の製造方法の一例は、次のとおりである。デバイス7の製造方法に記載した方法で、スポンジxを調製する。スポンジx(層15)の外周部上に接着剤を塗布し、透湿・防水性部材50を載せる。接着剤が硬化して接着剤硬化物35が形成されるのを待つ。
【0111】
上記の歯の漂白用デバイス(2)において、さらに、歯の漂白用デバイス(1)で説明した二酸化塩素トラップ層45,46又は47を有するものも、本発明の歯の漂白用デバイス(2)に包含される。
【0112】
[歯の漂白用デバイス(2)の使用時の状態]
歯の漂白用デバイス(2)には、その使用時に、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)を供給する必要がある。使用者が、例えば
図7又は
図8に記載した形状の液体供給用部材を使用して、水性液体(b)を層(c)に供給すればよい。水の量は、デバイス(2)から溢れない量、又は、層(c)に含まれる保持部材に保持され得る量である。また、使用時には、供給された水性液体(b)がこぼれないように、デバイス(2)の層(c)の側に蓋(図示せず)をし、又は、層(c)の外表面上を封止材で被覆することも好ましい。
【0113】
一例として、歯の漂白用デバイス7の使用時の状態を説明する。デバイス7の層15にその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)が供給されると、デバイス7中において、次のような現象が生じる。層15では、流入した水性液体(b)に固体の漂白剤前駆体(I)が溶解し、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)が生成される。この酸性の水性液体(d)は、デバイス7中において、透湿・防水性部材50の上に、換言すると、層15中に保持される。この酸性の水性液体(d)中で、気体の二酸化塩素が生成される。生成した二酸化塩素は、酸性の水性液体(d)中での濃度が高まるにしたがって気体として放出され、気体状態で透湿・防水性部材50を透過又は通過し、デバイス7の外へ出ていく。
【0114】
他の例として、歯の漂白用デバイス8の使用時の状態を説明する。先ず、ポリマー製フィルム90を剥離する。次いで、二酸化塩素トラップ部材42に水性液体(e)を供給する。その後、デバイス8の層15にその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(b)が供給されると、デバイス8中において、次のような現象が生じる。層15では、流入した水性液体(b)に固体の漂白剤前駆体(I)が溶解し、漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)が生成される。この酸性の水性液体(d)は、デバイス8中において、透湿・防水性部材50の上に、換言すると層15中に保持される。この酸性の水性液体(d)中で、気体の二酸化塩素が生成される。生成した二酸化塩素は、酸性の水性液体(d)中の二酸化塩素濃度が高くなるにしたがって気体として放出され、気体状態で透湿・防水性部材50を透過又は通過し、二酸化塩素トラップ部材42に保持された水性液体(e)に吸収、溶解され、その結果、二酸化塩素を含む水性液体(f)が調製される。なお、水性液体(e)が唾液である場合には、水性液体(e)は、歯の漂白用デバイスを歯に押し当てた後、二酸化塩素トラップ部材42に吸収、保持される。
【0115】
歯の漂白用デバイス9の使用時の状態は、原則としてデバイス8の使用時と同様である。しかし、空間39が存在するために、透湿・防水性部材50を透過又は通過した気体の二酸化塩素は、デバイス8を使用する場合と比べて緩慢に、二酸化塩素トラップ部材42に保持された水性液体(e)に吸収、溶解される。
【0116】
[歯の漂白用キット(2)]
本発明の歯の漂白用キット(2)は、上記の歯の漂白用デバイス(2)と、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)をその内部に収容している液体供給用部材(b)とを備える。液体供給用部材(b)は、その形状や材質は前記した液体供給用部材(a)と同様であるが、その内部に収容されている水性液体の内容が異なる。
【0117】
[歯の漂白用デバイス(3)]
歯の漂白用デバイス(3)は、形状は歯の漂白用デバイス(2)と同様であるが、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の代わりに、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を使用している。即ち、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む層が、層(d)である。また、その使用時の状態は、歯の漂白用デバイス(2)の使用時の状態と比べると、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)とが入れ替わっている。
【0118】
[歯の漂白用キット(3)]
本発明の歯の漂白用キット(3)は、上記の歯の漂白用デバイス(3)と、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)であって、pH(25℃)が9乃至14のものをその内部に収容している液体供給用部材(c)とを備える。液体供給用部材(c)は、その形状や材質は前記した液体供給用部材(a)と同様であるが、その内部に収容されている水性液体の内容が異なる。
【0119】
さらに、本発明の美容用の歯の漂白方法を説明する。
【0120】
[本発明の歯の漂白用デバイス(1)を使用する方法]
本発明の美容用の歯の漂白方法(1)は、次の五工程を含む:
本発明の歯の漂白用デバイス(1)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程1-1、
デバイスの層(a)に、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(a)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程1-2、
工程1-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程1-3、
デバイスの透湿・防水性部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程1-4、及び
デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程1-5。
【0121】
工程1-1は、歯に水性ゲルを塗布する工程である。水性ゲルは、水性液体(e)の一種であり、したがって、二酸化塩素と反応する物質を含まない。水性ゲルは、気体の二酸化塩素の捕捉剤としての役割を果たす。即ち、後工程において、この水性ゲルに漂白剤である二酸化塩素が吸収され、溶解する。
【0122】
工程1-2は、デバイス(1)の層(a)に、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(a)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程である。水性液体(a)は、デバイス中の漂白剤前駆体(I)及び酸性化剤(II)を溶解し、その結果として、酸性の水性液体(d)が調製される。酸性の水性液体(d)のpH(25℃)は、1乃至4であることが好ましく、1乃至2であることがさらに好ましい。この酸性の水性液体(d)中において、気体の二酸化塩素が発生する。この工程を30乃至60℃に加温して実施すると、気体の二酸化塩素がより効率的に発生する。
【0123】
工程1-3は、工程1-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程である。発生した気体の二酸化塩素は、デバイス中の透湿・防水性部材の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、デバイスから出ていく。
【0124】
工程1-4は、デバイスの透湿・防水性部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程である。この工程において、工程1-3でデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素は、歯に塗布された水性ゲルに接触する。
【0125】
工程1-5は、デバイス外に出て歯に塗布された水性ゲルに接触した気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程である。
【0126】
工程1-3乃至1-5により、気体の二酸化塩素を歯に塗布された水性ゲル中に導く。工程1-5を経た水性ゲルは、二酸化塩素を含有しているので、その水性ゲルが塗布されている歯が漂白される。工程1-1は、工程1-2又は1-3の後に行ってもよい。歯の漂白時間は、10秒乃至60分間程度であり、通常は30秒乃至30分間である。また、漂白時間の終了後には、歯及び口中を漱ぐ。この記載は、以下の歯の漂白方法においても当てはまる。
【0127】
本発明の美容用の歯の漂白方法(2)は、次の五工程を含む:
本発明の歯の漂白用デバイス(1)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、デバイスの透湿・防水性部材の外表面上に塗布する工程2-1、
デバイスの層(a)に、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(a)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程2-2、
工程2-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程2-3、
デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材の外表面上に保持されている水性ゲルに吸収、溶解させる工程2-4、及び
二酸化塩素を溶解した水性ゲルを、漂白すべき歯に押し当てる工程2-5。
【0128】
工程2-1は、デバイスの透湿・防水性部材の外表面上に水性ゲルを塗布する工程である。水性ゲルは、水性液体(e)の一種であり、したがって、二酸化塩素と反応する物質を含まない。水性ゲルは、気体の二酸化塩素の捕捉剤としての役割を果たす。即ち、後工程において、この水性ゲルに漂白剤である気体の二酸化塩素が吸収され、溶解する。
【0129】
工程2-2は工程1-2と同じであり、工程2-3は工程1-3と同じである。
【0130】
工程2-4は、デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材の外表面上に塗布され、結果として保持されている水性ゲルに吸収、溶解させる工程である。デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素は、水性ゲルに接触し、吸収、溶解される。気体の二酸化塩素を吸収、溶解した水性ゲルは、漂白作用を示す。
【0131】
工程2-5は、二酸化塩素を溶解した水性ゲルを、漂白すべき歯に押し当てる工程である。この工程により、歯の漂白が進行する。工程2-1は、工程2-2又は2-3の後に行ってもよい。
【0132】
本発明の美容用の歯の漂白方法(3)は、次の五工程を含む:
本発明の歯の漂白用デバイス(1)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程3-1、
漂白用デバイスの層(a)に、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(a)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程3-2、
工程3-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材及び二酸化塩素トラップ部材を通過させてデバイス外に導く工程3-3、
デバイスの二酸化塩素トラップ部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程3-4、及び
デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程3-5。
【0133】
工程3-1は工程1-1と同じであり、工程3-2は工程1-2と同じである。
【0134】
工程3-3は、前の工程で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素をデバイス外に導く点では、工程1-3と同じである。漂白方法(1)では、気体の二酸化塩素は透湿・防水性部材を通過してデバイス外に導かれるが、漂白方法(3)では、気体の二酸化塩素は、透湿・防水性部材を通過し次いで二酸化塩素トラップ部材を通過してデバイス外に導かれる点が相違する。
【0135】
工程3-4は、デバイスの二酸化塩素トラップ部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程である。この工程において、工程3-3でデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素は、歯に塗布された水性ゲルに接触する。
【0136】
工程3-5は、デバイス外に出て歯に塗布された水性ゲルに接触した気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程である。
【0137】
工程3-3乃至3-5により、気体の二酸化塩素を歯に塗布された水性ゲル中に導く。工程3-5を経た水性ゲルは、二酸化塩素を含有しているので、その水性ゲルが塗布されている歯が漂白される。工程3-1は、工程3-2又は3-3の後に行ってもよい。
【0138】
本発明の美容用の歯の漂白方法(4)は、次の五工程を含む:
歯の漂白用デバイス(1)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
デバイスの二酸化塩素トラップ部材に、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)を保持させる工程4-1、
デバイスの層(a)に、亜塩素酸塩、その水溶液が酸性を示す物質及び二酸化塩素のいずれかと反応する物質を含まない水性液体(a)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程4-2、
工程4-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させて二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に導く工程4-3、
水性液体(e)に気体の二酸化塩素を吸収、溶解させ、二酸化塩素を含む水性液体(f)を得る工程4-4、及び
水性液体(f)を保持した二酸化塩素トラップ部材を、漂白すべき歯に押し当てる工程4-5。
【0139】
工程4-1は、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)を、デバイスの二酸化塩素トラップ部材に保持させる工程である。気体の二酸化塩素を捕捉するために使用される水性液体(e)の例は、水、緩衝剤水溶液、生理食塩水、水性懸濁液、水性ゲル、水-アセトンであり、あるいは、水性液体(e)は唾液であってもよい。
【0140】
工程4-2は、工程1-2及び工程2-2と同じである。
【0141】
工程4-3は、工程4-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させて二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に導く工程である。発生した気体の二酸化塩素は、デバイス中の透湿・防水性部材の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、二酸化塩素トラップ部材及びそれに保持された水性液体(e)に到達する。
【0142】
工程4-4は、水性液体(e)に気体の二酸化塩素を吸収、溶解させ、二酸化塩素を含む水性液体(f)を得る工程である。気体の二酸化塩素が二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に到達すると、その水性液体(e)中における二酸化塩素濃度が飽和となるまでは、二酸化塩素は水性液体(e)に吸収され、溶解する。なお、二酸化塩素の20℃における水への溶解度は、0.8g/100mLである。
【0143】
工程4-5は、二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(f)であって、工程4-2乃至4-4によって産生された二酸化塩素を含むものを歯に接触させる工程である。この工程では、水性液体(f)中の二酸化塩素により、歯の漂白が行われる。この方法(4)において、工程4-1は、最初に行ってもよいし、工程4-2の後に行ってもよい。
【0144】
[本発明の歯の漂白用デバイス(2)を使用する方法]
本発明の美容用の歯の漂白方法(5)は、次の五工程を含む:
歯の漂白用デバイス(2)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程5-1、
デバイスの層(c)に、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程5-2、
工程5-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程5-3、
デバイスの透湿・防水性部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程5-4、及び
デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程5-5。
【0145】
工程5-1は、歯に水性ゲルを塗布する工程である。水性ゲルは、水性液体(e)の一種であり、したがって、二酸化塩素と反応する物質を含まない。水性ゲルは、気体の二酸化塩素の捕捉剤としての役割を果たす。即ち、後工程において、この水性ゲルに漂白剤である二酸化塩素が吸収され、溶解する。
【0146】
工程5-2は、デバイスの層(c)に、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程である。水性液体(b)は、デバイスの層(c)に存在する漂白剤前駆体(I)を溶解し、その結果、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)が調製される。酸性の水性液体(d)のpH(25℃)は、1乃至5であることが好ましく、1乃至3であることがさらに好ましい。この酸性の水性液体(d)中において、気体の二酸化塩素が発生する。この工程を30乃至60℃に加温して実施すると、気体の二酸化塩素がより効率的に発生する。
【0147】
工程5-3は、工程5-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程である。発生した気体の二酸化塩素は、デバイス中の透湿・防水性部材の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、デバイスから出ていく。
【0148】
工程5-4は、デバイスの透湿・防水性部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程である。この工程において、工程5-3でデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素は、歯に塗布された水性ゲルに接触する。
【0149】
工程5-5は、デバイス外に出て、歯に塗布された水性ゲルに接触した気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程である。
【0150】
工程5-3乃至5-5により、気体の二酸化塩素を歯に塗布された水性ゲル中に導く。工程5-5を経た水性ゲルは、二酸化塩素を含有しているので、その水性ゲルが塗布されている歯が漂白される。工程5-1は、工程5-2又は5-3の後に行ってもよい。
【0151】
本発明の美容用の歯の漂白方法(6)は、次の五工程を含む:
歯の漂白用デバイス(2)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、デバイスの透湿・防水性部材の外表面上に塗布する工程6-1、
デバイスの層(c)に、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程6-2、
工程6-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程6-3、
デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材の外表面上に保持されている水性ゲルに吸収、溶解させる工程6-4、及び
二酸化塩素を溶解した水性ゲルを、漂白すべき歯に押し当てる工程6-5。
【0152】
工程6-1は、デバイスの透湿・防水性部材の外表面上に水性ゲルを塗布する工程である。水性ゲルは、水性液体(e)の一種であり、したがって、二酸化塩素と反応する物質を含まない。水性ゲルは、気体の二酸化塩素の捕捉剤としての役割を果たす。即ち、後工程において、この水性ゲルに漂白剤である気体の二酸化塩素が吸収され、溶解する。
【0153】
工程6-2は工程5-2と同じであり、工程6-3は工程5-3と同じである。
【0154】
工程6-4は、デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材の外表面上に塗布され、結果として保持されている水性ゲルに吸収、溶解させる工程である。デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素は、水性ゲルに接触し、吸収、溶解される。気体の二酸化塩素を吸収、溶解した水性ゲルは、漂白作用を示す。
【0155】
工程6-5は、二酸化塩素を溶解した水性ゲルを、漂白すべき歯に押し当てる工程である。この工程により、歯の漂白が進行する。工程6-1は、工程6-2又は6-3の後に行ってもよい。
【0156】
本発明の美容用の歯の漂白方法(7)は、次の五工程を含む:
歯の漂白用デバイス(2)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程7-1、
デバイスの層(c)に、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程7-2、
工程7-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材及び二酸化塩素トラップ部材を通過させてデバイス外に導く工程7-3、
デバイスの二酸化塩素トラップ部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程7-4、及び
デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程7-5。
【0157】
工程7-1は工程5-1と同じであり、工程7-2は工程5-2と同じである。
【0158】
工程7-3は、前の工程で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素をデバイス外に導く点では、工程5-3と同じである。漂白方法(5)では、気体の二酸化塩素は透湿・防水性部材を通過してデバイス外に導かれるが、漂白方法(7)では、気体の二酸化塩素は、透湿・防水性部材を通過し次いで二酸化塩素トラップ部材を通過してデバイス外に導かれる点が相違する。
【0159】
工程7-4は、デバイスの二酸化塩素トラップ部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程である。この工程において、工程7-3でデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素は、歯に塗布された水性ゲルに接触する。
【0160】
工程7-5は、デバイス外に出て歯に塗布された水性ゲルに接触した気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程である。
【0161】
工程7-3乃至7-5により、気体の二酸化塩素を歯に塗布された水性ゲル中に導く。工程7-5を経た水性ゲルは、二酸化塩素を含有しているので、その水性ゲルが塗布されている歯が漂白される。工程7-1は、工程7-2又は7-3の後に行ってもよい。
【0162】
本発明の美容用の歯の漂白方法(8)は、次の五工程を含む:
歯の漂白用デバイス(2)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
デバイスの二酸化塩素トラップ部材に、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)を保持させる工程8-1、
デバイスの層(c)に、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水性液体(b)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程8-2、
工程8-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させて二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に導く工程8-3、
水性液体(e)に気体の二酸化塩素を吸収、溶解させ、二酸化塩素を含む水性液体(f)を得る工程8-4、及び
水性液体(f)を保持した二酸化塩素トラップ部材を、漂白すべき歯に押し当てる工程8-5。
【0163】
工程8-1は、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)を、デバイスの二酸化塩素トラップ部材に保持させる工程である。気体の二酸化塩素を捕捉するために使用される水性液体(e)の例は、水、緩衝剤水溶液、生理食塩水、水性懸濁液、水性ゲル、水-アセトンであり、あるいは、水性液体(e)は唾液であってもよい。
【0164】
工程8-2は工程6-2と同じである。
【0165】
工程8-3は、工程8-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させて二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に導く工程である。発生した気体の二酸化塩素は、デバイス中の透湿・防水性部材の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、二酸化塩素トラップ部材及びそれに保持された水性液体(e)に到達する。
【0166】
工程8-4は、水性液体(e)に気体の二酸化塩素を吸収、溶解させ、二酸化塩素を含む水性液体(f)を得る工程である。気体の二酸化塩素が二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に到達すると、その水性液体(e)中における二酸化塩素濃度が飽和となるまでは、二酸化塩素は水性液体(e)に吸収され、溶解する。なお、二酸化塩素の20℃における水への溶解度は、0.8g/100mLである。
【0167】
工程8-5は、二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(f)であって、工程8-2乃至8-4によって産生された二酸化塩素を含むものを歯に接触させる工程である。この工程では、水性液体(f)中の二酸化塩素により、歯の漂白が行われる。この方法(8)において、工程8-1は、最初に行ってもよいし、工程8-2の後に行ってもよい。
【0168】
[本発明の歯の漂白用デバイス(3)を使用する方法]
本発明の美容用の歯の漂白方法(9)は、次の五工程を含む:
歯の漂白用デバイス(3)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程9-1、
デバイスの層(d)に、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものを添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程9-2、
工程9-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程9-3、
デバイスの透湿・防水性部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程9-4、及び
デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程9-5。
【0169】
工程9-1は、歯に水性ゲルを塗布する工程である。水性ゲルは、水性液体(e)の一種であり、したがって、二酸化塩素と反応する物質を含まない。水性ゲルは、気体の二酸化塩素の捕捉剤としての役割を果たす。即ち、後工程において、この水性ゲルに漂白剤である二酸化塩素が吸収され、溶解する。
【0170】
工程9-2は、デバイスの層(d)に、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)を添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程である。水性液体(c)は、デバイス中の層(d)に存在する酸性化剤(II)を溶解し、その結果、酸性の水性液体(d)が調製される。酸性の水性液体(d)のpH(25℃)は、1乃至5であることが好ましく、1乃至3であることがさらに好ましい。この酸性の水性液体(d)中において、気体の二酸化塩素が発生する。この工程を30乃至60℃に加温して実施すると、気体の二酸化塩素がより効率的に発生する。
【0171】
工程9-3は、工程9-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程である。発生した気体の二酸化塩素は、デバイス中の透湿・防水性部材の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、デバイスから出ていく。
【0172】
工程9-4は、デバイスの透湿・防水性部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程である。この工程において、工程9-3でデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素は、歯に塗布された水性ゲルに接触する。
【0173】
工程9-5は、デバイス外に出て歯に塗布された水性ゲルに接触した気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程である。
【0174】
工程9-3乃至9-5により、気体の二酸化塩素を歯に塗布された水性ゲル中に導く。工程9-5を経た水性ゲルは、二酸化塩素を含有しているので、その水性ゲルが塗布されている歯が漂白される。工程9-1は、工程9-2又は9-3の後に行ってもよい。
【0175】
本発明の美容用の歯の漂白方法(10)は、次の五工程を含む:
歯の漂白用デバイス(3)であって二酸化塩素トラップ部材を備えない漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、デバイスの透湿・防水性部材の外表面上に塗布する工程10-1、
デバイスの層(d)に、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものを添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程10-2、
工程10-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させてデバイス外に導く工程10-3、
デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材の外表面上に保持されている水性ゲルに吸収、溶解させる工程10-4、及び
二酸化塩素を溶解した水性ゲルを、漂白すべき歯に押し当てる工程10-5。
【0176】
工程10-1は、デバイスの透湿・防水性部材の外表面上に水性ゲルを塗布する工程である。水性ゲルは、水性液体(e)の一種であり、したがって、二酸化塩素と反応する物質を含まない。水性ゲルは、気体の二酸化塩素の捕捉剤としての役割を果たす。即ち、後工程において、この水性ゲルに漂白剤である気体の二酸化塩素が吸収され、溶解する。
【0177】
工程10-2は工程9-2と同じであり、工程10-3は工程9-3と同じである。
【0178】
工程10-4は、デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材の外表面上に塗布され、結果として保持されている水性ゲルに吸収、溶解させる工程である。デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素は、水性ゲルに接触し、吸収、溶解される。気体の二酸化塩素を吸収、溶解した水性ゲルは、漂白作用を示す。
【0179】
工程10-5は、二酸化塩素を溶解した水性ゲルを、漂白すべき歯に押し当てる工程である。この工程により、歯の漂白が進行する。工程10-1は、工程10-2又は10-3の後に行ってもよい。
【0180】
本発明の美容用の歯の漂白方法(11)は、次の五工程を含む:
歯の漂白用デバイス(3)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
二酸化塩素と反応する物質を含まない水性ゲルを、漂白すべき歯に塗布する工程11-1、
デバイスの層(d)に、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものを添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程11-2、
工程11-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材及び二酸化塩素トラップ部材を通過させてデバイス外に導く工程11-3、
デバイスの二酸化塩素トラップ部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程11-4、及び
デバイス外に出てきた気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程11-5。
【0181】
工程11-1は工程9-1と同じであり、工程11-2は工程9-2と同じである。
【0182】
工程11-3は、前の工程で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素をデバイス外に導く点では、工程9-3と同じである。漂白方法(9)では、気体の二酸化塩素は透湿・防水性部材を通過してデバイス外に導かれるが、漂白方法(11)では、気体の二酸化塩素は、透湿・防水性部材を通過し次いで二酸化塩素トラップ部材を通過してデバイス外に導かれる点が相違する。
【0183】
工程11-4は、デバイスの二酸化塩素トラップ部材の外表面を、歯に塗布された水性ゲルに押し当てる工程である。この工程において、工程11-3でデバイス外に出てきた気体の二酸化塩素は、歯に塗布された水性ゲルに接触する。
【0184】
工程11-5は、デバイス外に出て歯に塗布された水性ゲルに接触した気体の二酸化塩素を、水性ゲルに吸収、溶解させる工程である。
【0185】
工程11-3乃至11-5により、気体の二酸化塩素を歯に塗布された水性ゲル中に導く。工程11-5を経た水性ゲルは、二酸化塩素を含有しているので、その水性ゲルが塗布されている歯が漂白される。工程11-1は、工程11-2又は11-3の後に行ってもよい。
【0186】
本発明の美容用の歯の漂白方法(12)は、次の五工程を含む:
歯の漂白用デバイス(3)であって二酸化塩素トラップ部材を備える漂白用デバイスを使用する歯の漂白方法であって、
デバイスの二酸化塩素トラップ部材に、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)を保持させる工程12-1、
デバイスの層(d)に、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)の水性液体(c)であってそのpH(25℃)が9乃至14であるものを添加し、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を含む酸性の水性液体(d)を調製する工程12-2、
工程12-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させて二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に導く工程12-3、
水性液体(e)に気体の二酸化塩素を吸収、溶解させ、二酸化塩素を含む水性液体(f)を得る工程12-4、及び
水性液体(f)を保持した二酸化塩素トラップ部材を、漂白すべき歯に押し当てる工程12-5。
【0187】
工程12-1は、二酸化塩素と反応する物質を含まない水性液体(e)を、デバイスの二酸化塩素トラップ部材に保持させる工程である。気体の二酸化塩素を捕捉するために使用される水性液体(e)の例は、水、緩衝剤水溶液、生理食塩水、水性懸濁液、水性ゲル、水-アセトンであり、あるいは、水性液体(e)は唾液であってもよい。
【0188】
工程12-2は工程9-2と同じである。
【0189】
工程12-3は、工程12-2で調製された酸性の水性液体(d)から発生した気体の二酸化塩素を、透湿・防水性部材を通過させて二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に導く工程である。発生した気体の二酸化塩素は、デバイス中の透湿・防水性部材の孔又は空隙中を、例えば自動的又は能動的に移動し、二酸化塩素トラップ部材及びそれに保持された水性液体(e)に到達する。
【0190】
工程12-4は、水性液体(e)に気体の二酸化塩素を吸収、溶解させ、二酸化塩素を含む水性液体(f)を得る工程である。気体の二酸化塩素が二酸化塩素トラップ部材に保持された水性液体(e)に到達すると、その水性液体(e)中における二酸化塩素濃度が飽和となるまでは、二酸化塩素は水性液体(e)に吸収され、溶解する。なお、二酸化塩素の20℃における水への溶解度は、0.8g/100mLである。
【0191】
工程12-5は、工程12-2乃至12-4によって産生された二酸化塩素を含む水性液体(f)を保持した二酸化塩素トラップ部材を、歯に接触させる工程である。この工程では、水性液体(f)中の二酸化塩素により、歯の漂白が行われる。この方法(12)において、工程12-1は、最初に行ってもよいし、工程12-2の後に行ってもよい。
【0192】
以下に、本発明によって漂白作用が示されることを、実験例によって示す。
【0193】
(実験例1)褐色鶏卵の殻の漂白
疎水性の多孔質ポリウレタンフィルム(透湿・防水性部材に相当する)に、孔の全てを塞いでしまわないように親水性のポリエステル織布(二酸化塩素トラップ部材に相当する)が貼付されてなるヤマホン製の透湿防水布を用い、歯の漂白実験を行った。
【0194】
(1)気体の二酸化塩素発生用水溶液の調製
30w/v%亜塩素酸ナトリウム水溶液50μLに、水207.6μL、プラチナ・ナノコロイド溶液(プラチナ含有率:0.02重量%)2.4μL及び3M硫酸40μLをこの順に添加した。硫酸添加後、40℃にて5分間加温した。なお、得られた水溶液は、気体の二酸化塩素が発生しやすいように、過剰量の酸を含有させたもの(亜塩素酸ナトリウム濃度:5w/v%、pH2以下)である。
【0195】
(2)漂白操作
透湿防水布のポリエステル織布の一部に20μLの水(水性液体(e)に相当する)を染み込ませ、透湿防水布のその濡れた部分を、ポリエステル織布が鶏卵表面に向き合うように褐色鶏卵表面に貼りつけた。水を染み込ませた裏側、即ち、透湿防水布のポリウレタンフィルムの上に、(1)で調製した気体の二酸化塩素発生用水溶液(水性液体(d)に相当する)50μLをのせた。その水溶液の上から食品用ラップフィルムを被せ、その水溶液をラップフィルムと透湿防水布とで挟み込んだ。このようにして、発生した気体の二酸化塩素の外気への放散を簡易的に抑制した。この状態を5分間維持し、その後、ラップフィルムと透湿防水布とを除去し、褐色鶏卵を水で軽く洗った。
【0196】
漂白終了時、透湿防水布のポリエステル織布に染み込ませた水は黄色味を帯びており、また、その水をpH試験紙に染み込ませると、pHは5乃至6であった。これらのことから、気体の二酸化塩素のみが透湿防水布のポリウレタンフィルムを透過したことが示唆された。
【0197】
(3)色素偏差ΔE*
abの算出
漂白処理前及び漂白処理後に、褐色鶏卵の殻の色を、オリンパス株式会社製のクリスタルアイを使用して測色した。具体的には、漂白処理前の褐色鶏卵の殻の色と、漂白処理後のろ紙が貼付されていた個所の色について、白黒の傾向の差ΔL*、赤緑の傾向の差Δa*、黄青の傾向の差Δb*をそれぞれ求め、これらの値から、以下の式にしたがって色素偏差ΔE*
abを算出した。結果を表1に示す。
【0198】
【0199】
【0200】
表1に示すように、漂白前後での色素偏差ΔE*
abが5.69であり、このことから、褐色鶏卵の殻が著しく漂白されたことが分かる。なお、漂白がなされなかった場合には、ΔL*、Δa*及びΔb*のいずれも、約0となる。この結果から、気体の二酸化塩素を、透湿防水布のポリウレタンフィルムを透過させ、ポリエステル織布に保持された水に溶解させて得られる水溶液により、二酸化塩素による漂白効果が得られることが確認できた。
【0201】
(実験例2)気体の二酸化塩素の生成に対する塩の影響
亜塩素酸塩を含む酸性の水性液体から、より多くの気体の二酸化塩素を生成させたい。そこで、酸性の水性液体に無機塩化物を添加することによって、気体の二酸化塩素生成量が多くなるか否かを検討した。なお、この実験では塩化ナトリウム及び塩化リチウムを使用した。
【0202】
(1)実験に使用するデバイスの製造
1.5mL容のマイクロチューブを、その蓋部分から1cm下の部分で切断し、切断面をやすりでこすって平らにした。その切断面に、透湿防水布(ヤマホン社製;多孔質ポリウレタンフィルムとポリエステル織布からなるもの)のポリウレタンフィルムの面を、非水溶性の接着剤を用いて隙間のないように接着した。次に、透湿防水布のポリエステル織布の面に、マイクロチューブの切断面に合わせて接着剤を塗布し、ろ紙を張り付けた。接着剤が乾燥した後、透湿防水布及びろ紙をマイクロチューブの切断面の形状及び大きさに合わせて切り取った。このようにして製造したデバイスの概要(断面図)を、
図13(1)に示す。同図中、符号88は透湿防水布、符号81は多孔質ポリウレタンフィルム、符号82はポリエステル織布、符号83はろ紙である。
【0203】
(2)亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の水性液体の調製及び(1)で製造したデバイスへの採取
表2に示す、亜塩素酸ナトリウムを含む液体2-1乃至2-4を調製した。これらの亜塩素酸ナトリウムを含む水性液体130μLに対し、85%w/vリン酸を20μL加えた。その結果、得られた酸性の水性液体中の亜塩素酸ナトリウム濃度は3重量%、プラチナ・ナノコロイド原液濃度は0.8重量%(プラチナ濃度は、0.00016重量%)となった。リン酸を加えた後、各々の酸性の水性液体を卓上撹拌機で5秒間撹拌し、10秒後に、その中の50μLを、(1)で製造したデバイス内に入れ、蓋を閉めた。蓋を閉めた状態の断面図を、
図13(2)に示す。同図中、符号81乃至83及び88は上記のとおりであり、符号80は亜塩素酸ナトリウムを含有する酸性の水性液体である。
【0204】
(3)気体の二酸化塩素の生成量を測定する装置及び測定
内容積20.8Lの発泡スチロール箱の内部に、(2)で調製した、亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の水性液体を収納した容器を入れ、発泡スチロールの蓋を閉じた。発泡スチロールの蓋には、直径5mmほどの小さな孔が開いており、その孔には、シリコーン・チューブが挿入されていた。そのチューブの外側末端には、60cc容のシリンジが接続されていた。蓋を閉じて5分間経過した後、シリンジを20回ピストンすることで、箱内部の空気を撹拌させた。シリコーン・チューブを抜き取り、代わりに、孔に気体の二酸化塩素の検知管(ガステック社製No.23M;検知範囲:0.5乃至12ppm)を挿し込み、内部の気体を吸引して、気体の二酸化塩素の濃度を求めた。この二酸化塩素は、
図13(2)に示す容器内で生成され、透湿防水布及びろ紙を通って容器外へ出てきたものである。
結果を表2に示す。
【0205】
【0206】
表2の結果から明らかなように、亜塩素酸ナトリウムを含有する酸性の水性液体に無機塩化物を添加することによって、気体の二酸化塩素生成量が明らかに増えることが分かった。また、気体の二酸化塩素生成量は、無機塩化物の含有量の上昇に伴って増加することが分かった。
【0207】
(実験例3)二酸化塩素トラップ剤としてのアセトンの使用
本件発明では、発生させた気体の二酸化塩素を、二酸化塩素トラップ部材に保持された液体に吸収、溶解させることによって捕捉する。そこで、二酸化塩素トラップ部材に保持させる液体として、水及び水/アセトンを選択し、いずれが気体の二酸化塩素をより多く捕捉するかを検討した。
【0208】
(1)実験に使用するデバイスの製造
実験例2の(1)と同様である。但し、二酸化塩素トラップ部材であるろ紙に、表3に示す液体40μLを染み込ませたものも用意した。
【0209】
(2)亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の水性液体の調製及び(1)で製造したデバイスへの採取
実験例2の(2)の実験例No.2-3(NaClを4M濃度で含有するもの)と同様の液体を使用し、それを(1)に記載したデバイスに収容した。
【0210】
(3)気体の二酸化塩素生成量を測定する装置及び測定
実験例2の(3)と同様の装置を用い、同様の方法で、発泡スチロール箱の内部の気体中の気体の二酸化塩素濃度を測定した。ろ紙に何も染みこませていない場合(実験例2の実験例No.2-3)の発泡スチロール箱内の気体の二酸化塩素濃度(3.4ppm)を100%として、ろ紙に液体を染み込ませた例における気体の二酸化塩素濃度の減少率を算出した。
結果を表3に示す。
【0211】
【0212】
表3の結果から明らかなように、二酸化塩素トラップ部材であるろ紙に、二酸化塩素トラップ剤としての水を染み込ませただけでも、発泡スチロール箱の内部への気体の二酸化塩素の放散量が約59%減った(即ち、気体の二酸化塩素がろ紙に染み込ませた水に捕捉された)ことが確認できた。また、ろ紙に水/アセトンを含ませると、発泡スチロール箱の内部への気体の二酸化塩素の放散量がさらに減少した。これらの結果から、トラップ剤が水であっても、気体の二酸化塩素は効率的にトラップされ、トラップ剤を水/アセトンとすれば、気体の二酸化塩素のトラップ量はさらに増えると考えられた。
なお、気体の二酸化塩素を吸収した液体(ろ紙に染み込ませた液体)のpHは、いずれも中性(pH=6程度)であった。
【0213】
(実験例4)放散される気体の二酸化塩素の濃度の低減
実験例2の(1)において製造したデバイスに活性炭シートを巻き付け、気体の二酸化塩素放散量に対する活性炭シートの影響を検討した。
【0214】
(1)実験に使用するデバイスの製造
実験例2の(1)と同様のデバイスを製造した。別途、活性炭シート(フタムラ化学製、KFF-002)を1cm×5cmに切り取り、この短辺をその長さが1/2となるように折り畳み、接着剤で接着し、0.5cm×5cmの活性炭シートとした。この活性炭シートを、別途製造した前記デバイスの、透湿防水布及びろ紙の部分の外周部に一周巻き付け、これも接着剤で接着した。この状態の断面図を、
図14(1)に示す。同図中、符号80乃至83及び88は上記のとおりであり、符号84は活性炭シートである。また、この実験の際、ろ紙83には水40μLを染み込ませた。
【0215】
(2)亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の水性液体の調製及び(1)で製造したデバイスへの採取
実験例2の(2)の実験例No.2-3(NaClを4M濃度で含有するもの)と同様の液体を使用し、それを(1)に記載したデバイスに収容した。
【0216】
(3)気体の二酸化塩素生成量を測定する装置及び測定
実験例2の(3)と同様の装置を用い、同様の方法で、発泡スチロール箱の内部の気体中の気体の二酸化塩素濃度を測定した。但し、ガス検知管は、ガステック社製No.23L(検知範囲:0.05乃至1.2ppm)を使用した。
【0217】
測定された気体の二酸化塩素濃度は0.45ppmであり、ろ紙に何も染みこませていない場合(実験例2の実験例No.2-3)の気体の二酸化塩素濃度(3.4ppm)に対し、86.8%の減少率であった。
【0218】
(実験例5)褐色鶏卵の殻の漂白
実験例4同様の活性炭シートを使用したデバイスで、褐色鶏卵の殻の漂白を行った。
【0219】
(1)実験に使用するデバイスの製造
実験例4の(1)と同様の方法で、活性炭シートを使用してなるデバイスを製造した。但し、使用した活性炭シートの大きさは、表4に記載のとおりとした。また、実験例No.5-1では、活性炭シートは、実験例4と同様に折り畳んで使用したが、実験例No.5-2及び5-3については、折り畳むことなく使用した。
【0220】
この実験では、褐色鶏卵の殻にデバイスを押し付けた。その際のデバイスの形状の断面図を、
図14(2)に示す。同図中の符号の意味は、
図14(1)における符号の意味と同様である。
【0221】
カルボキシビニルポリマー(岩瀬コスファ社製、カーボポール940)0.25gに水約9gを加え、次いでpH調整のために5N水酸化ナトリウム20μLを加え(pH=7)、最後に再度水を加えて全量を10gとした。このようにして、中性の水性ゲルを調製した。この水性ゲル約40mgを、二酸化塩素トラップ剤として、実験に使用するデバイスのろ紙に塗り付けた。
【0222】
(2)亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の水性液体の調製及び(1)で製造したデバイスへの採取
実験例2の(2)の実験例No.2-3(NaClを4M濃度で含有するもの)の液体を使用し、それを(1)に記載したデバイスに収容した。
【0223】
(3)褐色鶏卵の殻の漂白、並びに二酸化塩素ガス生成量を測定する装置及び測定
褐色鶏卵の殻については、漂白する部分を、オリンパス株式会社製のクリスタルアイを使用して測色し、漂白前の色とした。
【0224】
卵の殻の漂白処理がなされる部分に、(1)で製造し、(2)に記載した亜塩素酸ナトリウムを含む酸性の水性液体が添加されたデバイスを、ゲルを塗った面が卵の殻に接するように鶏卵に載せた。この状態を5分間維持した後、褐色鶏卵の殻からデバイスを外し、ゲルを洗い流し、被漂白部分をクリスタルアイで測色し、漂白後の色とした。漂白前後の値から、白黒の傾向の差ΔL*、赤緑の傾向の差Δa*、黄青の傾向の差Δb*をそれぞれ求め、これらの値から、前記した式1にしたがって、色素偏差ΔE*abを算出した。結果を表4に示す。
【0225】
【0226】
表4の結果から、この実験において使用した大きさにおいては、活性炭シートの大きさに関わらず、いずれの実験例においても漂白が進行したことが確認できた。
【符号の説明】
【0227】
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10 歯の漂白用デバイス
11,13,15,16 層
21 隔壁
33 外部部材
35 接着剤硬化物
39 空間
42 二酸化塩素トラップ部材
45,46,47 二酸化塩素トラップ層
50 透湿・防水性部材
60 液体供給用部材
70 パウチ
90 ポリマー製フィルム
C 蓋
W 水