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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20230627BHJP
   F02M 61/10 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
F02M55/02 310B
F02M55/02 310A
F02M61/10 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020009151
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116710
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】本田 篤史
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-011526(JP,A)
【文献】特開2000-274331(JP,A)
【文献】特開2000-303936(JP,A)
【文献】特開2005-226489(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015226515(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料が噴射される噴孔(13)、および、前記噴孔の周囲に形成された弁座(14)を有するノズル(10)と、
前記噴孔への燃料が流通する燃料流路(100)を有するハウジング(20)と、
一端が前記弁座から離間または前記弁座に当接することで前記噴孔を開閉可能なニードル(30)と、
前記弁座に対し燃料流れの上流側に設けられ、前記ハウジングに対し少なくとも一部が相対移動可能な可動部(73、77、83)、および、燃料が流通可能なよう形成され前記ハウジングに対し前記可動部が相対移動すると最小流路面積が変化する絞り流路(700、701、702、711、712、713、800、801、802)を有する絞り部(70、80)と、を備え、
前記ニードルが前記弁座から離間する開弁時における前記絞り流路の最小流路面積は、前記ニードルが前記弁座に当接する閉弁時における前記絞り流路の最小流路面積より大きく、
開弁時における前記絞り流路の最小流路面積は、前記ニードルが前記弁座から最も離間する開弁時における前記弁座と前記ニードルとの間の最小流路面積より大きく、
開弁時における前記絞り流路の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制され、
前記ニードルは、前記絞り部に対し相対移動可能なよう前記絞り部とは別体に形成され、前記弁座と前記絞り部との間に設けられている燃料噴射弁。
【請求項2】
前記絞り流路の最小流路面積は、前記ニードルの開閉弁による差圧により前記可動部の少なくとも一部が前記ハウジングに対し相対移動することで、増減する請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記可動部の前記ハウジングに対する相対移動可能な距離の最大値は、前記ニードルの前記弁座から移動可能な距離の最大値より小さい請求項1または2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
閉弁時における前記絞り流路の最小流路面積は、前記ニードルが前記弁座から最も離間する開弁時における前記弁座と前記ニードルとの間の最小流路面積より小さい請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料が流通する燃料流路に生じる圧力脈動の低減を図った燃料噴射弁が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の燃料噴射弁では、絞り流路としてのオリフィスが形成されたオリフィス部材を燃料流路に設けている。これにより、ニードルが弁座に当接する閉弁時に生じた圧力脈動は、オリフィスを通過し、低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102015226515号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の燃料噴射弁では、ニードルが弁座から離間する開弁時、燃料は、オリフィスで絞られて噴孔側へ流れる。これにより、開弁時の燃料の圧力が低下し、燃料の噴射量が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、開弁時の燃料の圧力の低下を抑制しつつ、閉弁後の圧力脈動を低減可能な燃料噴射弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料噴射弁は、ノズル(10)とハウジング(20)とニードル(30)と絞り部(70、80)とを備えている。ノズルは、燃料が噴射される噴孔(13)、および、噴孔の周囲に形成された弁座(14)を有する。ハウジングは、噴孔への燃料が流通する燃料流路(100)を有する。ニードルは、一端が弁座から離間または弁座に当接することで噴孔を開閉可能である。絞り部は、弁座に対し燃料流れの上流側に設けられている。絞り部は、可動部(73、77、83)、絞り流路(700、701、702、711、712、713、800、801、802)を有する。可動部は、ハウジングに対し少なくとも一部が相対移動可能である。絞り流路は、燃料が流通可能なよう形成され、ハウジングに対し可動部が相対移動すると最小流路面積が変化する。
【0008】
ニードルが弁座から離間する開弁時における絞り流路の最小流路面積は、ニードルが弁座に当接する閉弁時における絞り流路の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路の最小流路面積は、ニードルが弁座から最も離間する開弁時における弁座とニードルとの間の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制される。ニードルは、絞り部に対し相対移動可能なよう絞り部とは別体に形成され、弁座と絞り部との間に設けられている。
【0009】
本発明では、ニードルが弁座から離間する開弁時、燃料は、絞り流路を通過し、噴孔側へ流れる。ここで、ニードルが弁座から離間する開弁時における絞り流路の最小流路面積は、ニードルが弁座に当接する閉弁時における絞り流路の最小流路面積より大きい。また、開弁時における絞り流路の最小流路面積は、ニードルが弁座から最も離間する開弁時における弁座とニードルとの間の最小流路面積より大きい。そのため、絞り流路に対し噴孔とは反対側の燃料は、絞り流路で絞られることなく、噴孔側へ流れる。これにより、開弁時の燃料の圧力の低下を抑制し、燃料の噴射量を確保できる。
【0010】
一方、ニードルが弁座に当接する閉弁時に生じた圧力脈動は、燃料流路を弁座側から絞り部側へ伝わり、絞り流路を通過する。ここで、開弁時における絞り流路の最小流路面積は、閉弁時における絞り流路の最小流路面積より大きい。つまり、閉弁時における絞り流路の最小流路面積は、開弁時における絞り流路の最小流路面積より小さい。そのため、閉弁時に生じた圧力脈動は、絞り流路を通過するとき、減衰する。これにより、閉弁後の圧力脈動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態による燃料噴射弁を示す断面図。
図2】第1実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図3】第1実施形態による燃料噴射弁の絞り部の作動を説明するための図。
図4】開弁状態から閉弁状態に移行するときの、絞り流路の最小流路面積、および、燃料噴射弁からの燃料の噴射率の変化を示す図。
図5】閉弁時における絞り流路の最小流路面積と、閉弁に伴い燃料流路に生じる圧力脈動の脈動率と、の関係を示す図。
図6】絞り部のスプリングのバネ力と、閉弁に伴い燃料流路に生じる圧力脈動の振幅と、の関係を示す図。
図7】開弁時における絞り流路の最小流路面積と、燃料噴射弁の内圧と燃料噴射弁への燃料の供給圧力との比と、の関係を示す図。
図8】燃料噴射弁に供給する燃料の圧力の最小値と、絞り部による圧力脈動の減衰効果との関係を示す図。
図9】第2実施形態による燃料噴射弁を示す断面図。
図10】第2実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図11】第3実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図12】第3実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図13】第4実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図14】第4実施形態による燃料噴射弁の絞り部の可動部を示す断面図。
図15】第4実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図16】第5実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図17】第6実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図18】第7実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図19】第8実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図20】第9実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図21】第10実施形態による燃料噴射弁の絞り部を示す断面図。
図22】第11実施形態による燃料噴射弁の一部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、複数の実施形態による燃料噴射弁を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
【0013】
第1実施形態による燃料噴射弁を図1に示す。燃料噴射弁1は、例えば、図示しない車両に搭載された内燃機関としてのガソリンエンジン(以下、単に「エンジン」という)に適用される。燃料噴射弁1は、燃料としてのガソリンを噴射しエンジンに供給する。
【0014】
燃料噴射弁1は、ノズル10、ハウジング20、ニードル30、可動コア40、コイル55、隙間形成部材61、スプリング63、スプリング65、絞り部70等を備えている。
【0015】
ノズル10は、例えば金属により有底筒状に形成されている。ノズル10は、噴孔13、弁座14を有している。噴孔13は、ノズル10の底部を内側から外側へ貫くよう複数形成されている。弁座14は、ノズル10の底部の内側において噴孔13の周囲に環状に形成されている。
【0016】
ハウジング20は、第1筒部材21、第2筒部材22、第3筒部材23を有している。第1筒部材21、第2筒部材22および第3筒部材23は、いずれも略円筒状に形成されている。第1筒部材21、第2筒部材22および第3筒部材23は、第1筒部材21、第2筒部材22、第3筒部材23の順に同軸となるよう配置され、互いに接続している。
【0017】
第1筒部材21および第3筒部材23は、例えば磁性材料により形成されている。第2筒部材22は、例えば非磁性材料により形成されている。第2筒部材22は、磁気絞り部として機能する。
【0018】
第1筒部材21は、第2筒部材22とは反対側の端部の内壁がノズル10の筒部の外壁に嵌合するよう設けられている。
【0019】
ハウジング20の内側には、燃料流路100が形成されている。燃料流路100は、噴孔13に接続している。第3筒部材23の第2筒部材22とは反対側には、図示しない配管が接続される。これにより、燃料流路100には、燃料供給源(燃料ポンプ)からの燃料が配管を経由して流入する。燃料流路100は、燃料を噴孔13に導く。
【0020】
ニードル30は、例えば非磁性の金属により棒状に形成されている。ニードル30は、燃料流路100内をハウジング20の軸方向へ往復移動可能なようハウジング20内に収容されている。ニードル30には、鍔部34が形成されている。鍔部34は、ニードル30のノズル10とは反対側の端部から径方向外側へ延びるよう略円筒状に形成されている。
【0021】
ニードル30には、軸方向流路301、径方向流路302が形成されている。軸方向流路301は、ニードル30のノズル10とは反対側の端面から軸方向に延びるようにして形成されている。径方向流路302は、ニードル30の径方向に延びて軸方向流路301とニードル30の外壁とを接続するよう形成されている。これにより、ニードル30に対しノズル10とは反対側の燃料は、軸方向流路301および径方向流路302を経由してニードル30の外壁と第1筒部材21の内壁との間へ流通可能である。
【0022】
ニードル30は、ノズル10側の端部が弁座14から離間(離座)または弁座14に当接(着座)し、噴孔13を開閉する。以下、適宜、ニードル30が弁座14から離間する方向を開弁方向といい、ニードル30が弁座14に当接する方向を閉弁方向という。
【0023】
可動コア40は、内側コア41、外側コア42を有している。内側コア41は、例えば非磁性材料により筒状に形成されている。外側コア42は、例えば磁性材料により筒状に形成されている。内側コア41は、鍔部34に対しノズル10側においてニードル30に対し軸方向に相対移動可能なようニードル30の径方向外側に設けられている。内側コア41は、鍔部34により、ニードル30に対し開弁方向の相対移動が規制される。外側コア42は、鍔部34に対しノズル10側においてニードル30および内側コア41に対し軸方向に相対移動可能なようニードル30および内側コア41の径方向外側に設けられている。外側コア42は、内側コア41により、ニードル30および内側コア41に対し開弁方向の相対移動が規制される。
【0024】
第3筒部材23は、固定コア部50、インレット部24を有している。固定コア部50は、第3筒部材23の第2筒部材22側に形成されている。インレット部24は、第3筒部材23の第2筒部材22とは反対側において固定コア部50に接続するよう形成されている。固定コア部50のノズル10側の端面は、外側コア42のノズル10とは反対側の端面に当接可能である。
【0025】
隙間形成部材61は、例えば非磁性の金属により有底筒状に形成されている。隙間形成部材61は、筒部の内周壁が鍔部34の外周壁と摺動可能、かつ、底部が鍔部34に当接可能なよう設けられている。隙間形成部材61の底部が鍔部34に当接し、隙間形成部材61の筒部が内側コア41のノズル10とは反対側の端面に当接しているとき、鍔部34のノズル10側の端面と内側コア41のノズル10とは反対側の端面との間に隙間が形成される。隙間形成部材61には、底部を貫く穴部が形成されている。ここで、当該穴部の内径は、軸方向流路301の内径より大きい。
【0026】
固定コア部50のノズル10側の端部の内側には、スリーブ51が設けられている。スリーブ51は、例えば非磁性の金属により円筒状に形成されている。ここで、スリーブ51の内周壁は、鍔部34の外周壁と摺動可能である。また、スリーブ51のノズル10側の端面は、内側コア41のノズル10とは反対側の端面に当接可能である。
【0027】
固定コア部50の内側には、円筒状のアジャスティングパイプ62が圧入されている。スプリング63は、例えばコイルスプリングであり、固定コア部50の内側のアジャスティングパイプ62と隙間形成部材61との間に設けられている。スプリング63の一端は、アジャスティングパイプ62に当接している。スプリング63の他端は、隙間形成部材61の底部に当接している。スプリング63は、隙間形成部材61、ニードル30、可動コア40をノズル10側、すなわち、閉弁方向に付勢可能である。スプリング63の付勢力は、固定コア部50に対するアジャスティングパイプ62の位置により調整される。
【0028】
コイル55は、略円筒状に形成され、ハウジング20のうち特に第2筒部材22および第3筒部材23の径方向外側を囲むようにして設けられている。また、コイル55の径方向外側には、コイル55を覆うようにして筒状のホルダ26が設けられている。ホルダ26は、例えば磁性材料により形成されている。ホルダ26は、一端の内壁が第1筒部材21の外壁に接続し、他端の内壁が第3筒部材23の外壁に磁気的に接続している。
【0029】
コイル55は、電力が供給(通電)されると磁力を生じる。コイル55に磁力が生じると、磁気絞り部としての第2筒部材22を避けて、外側コア42、第1筒部材21、ホルダ26、第3筒部材23の固定コア部50に磁気回路が形成される。これにより、固定コア部50と外側コア42との間に磁気吸引力が発生し、外側コア42は、内側コア41とともに固定コア部50側に吸引される。このとき、内側コア41は、鍔部34と内側コア41との間の隙間において加速しながら開弁方向へ移動し、鍔部34に衝突する。これにより、ニードル30が開弁方向に移動し、ニードル30の端部が弁座14から離間し、開弁する。その結果、噴孔13が開放され、噴孔13から燃料が噴射される。このように、コイル55は、通電されると、外側コア42を固定コア部50側に吸引しニードル30を弁座14とは反対側、すなわち開弁方向に移動させることが可能である。
【0030】
なお、外側コア42が磁気吸引力により固定コア部50側(開弁方向)に吸引されると、ニードル30の鍔部34は、スリーブ51の内側を軸方向に移動する。このとき、鍔部34の外周壁と隙間形成部材61の筒部の内周壁とが摺動し、隙間形成部材61の筒部の外周壁とスリーブ51の内周壁とが摺動する。そのため、ニードル30は、鍔部34側の端部の軸方向の往復移動がスリーブ51により案内される。
【0031】
また、外側コア42は、磁気吸引力により固定コア部50側(開弁方向)に吸引されると、固定コア部50側の端面が固定コア部50のノズル10側の端面に衝突する。これにより、外側コア42は、開弁方向への移動が規制される。
【0032】
外側コア42が固定コア部50側に吸引されている状態でコイル55への通電を停止すると、ニードル30および可動コア40は、スプリング63の付勢力により、弁座14側へ付勢される。これにより、ニードル30が閉弁方向に移動し、ニードル30の端部が弁座14に当接し、閉弁する。その結果、噴孔13が閉塞される。
【0033】
ニードル30には、ばね座64が固定されている。ばね座64は、可動コア40に対しノズル10側において、ニードル30の径方向外側に位置するようニードル30の外周壁に固定されている。
【0034】
スプリング65は、例えばコイルスプリングであり、一端が外側コア42のノズル10側の面に当接し、他端がばね座64に当接した状態で設けられている。スプリング65は、外側コア42を固定コア部50側、すなわち、開弁方向に付勢可能である。スプリング65の付勢力は、スプリング63の付勢力よりも小さい。そのため、コイル55に通電されていないとき、ニードル30は、スプリング63により弁座14に押し付けられ、内側コア41は、隙間形成部材61の筒部に押し付けられる。このとき、鍔部34のノズル10側の端面と内側コア41のノズル10とは反対側の端面との間に隙間が形成される。
【0035】
図1に示すように、第3筒部材23の径方向外側は、樹脂からなるモールド部56によりモールドされている。
【0036】
第3筒部材23の第2筒部材22とは反対側の端部、すなわち、インレット部24から流入した燃料は、第3筒部材23およびアジャスティングパイプ62の内側、隙間形成部材61の穴部、軸方向流路301、径方向流路302、ニードル30とハウジング20の内壁との間、ニードル30とノズル10の内壁との間、すなわち、燃料流路100を流通し、噴孔13に導かれる。
【0037】
本実施形態の燃料噴射弁1の使用時に想定される燃料流路100内の燃料の圧力の最小値は、例えば60MPa以下である。
【0038】
次に、絞り部70について、詳細に説明する。絞り部70は、インレット部24の内側に設けられている。図2に示すように、絞り部70は、絞り筒部71、シート部72、可動部73、ばね座部74、規制部75、スプリング76、絞り流路701、絞り流路702等を有している。
【0039】
絞り筒部71は、例えば金属により略円筒状に形成されている。シート部72は、例えば金属により筒状に形成されている。シート部72は、絞り筒部71の端部と接続するよう絞り筒部71と一体に形成されている。シート部72の絞り筒部71側の内周壁には、シート721が形成されている。シート721は、絞り筒部71側から絞り筒部71とは反対側へ向かうに従いシート部72の軸に近付くようテーパ状に形成されている。
【0040】
可動部73は、例えば金属により形成されている。可動部73は、可動筒部731、可動底部732、ガイド部733を有している。可動筒部731は、略円筒状に形成されている。ここで、可動筒部731の外径は、絞り筒部71の内径より小さい。可動底部732は、可動筒部731の端部を塞ぐよう可動筒部731と一体に形成されている。可動底部732の内壁および外壁は、可動筒部731とは反対側へ突出する曲面状に形成されている。より詳細には、可動底部732の外壁は、SR形状となるよう形成されている。
【0041】
ガイド部733は、可動筒部731の外周壁から径方向外側へ突出するとともに可動筒部731の軸方向へ延びるよう形成されている。ガイド部733は、可動筒部731の周方向に等間隔で4つ形成されている。
【0042】
可動部73は、可動底部732の外壁の外縁部がシート721に当接可能なよう絞り筒部71およびシート部72の内側に設けられている。可動部73は、絞り筒部71およびシート部72の内側において軸方向に往復移動可能である。ガイド部733は、絞り筒部71の内周壁と摺動可能である。
【0043】
ばね座部74は、例えば金属により略円筒状に形成されている。ばね座部74の外径は、絞り筒部71の内径と同じかやや大きい。規制部75は、例えば金属により略円筒状に形成されている。規制部75は、ばね座部74の一方の端面の外縁部から軸方向に延びるようばね座部74と一体に形成されている。規制部75の内径は、ばね座部74の内径より大きい。規制部75の外径は、ばね座部74の外径と同じである。
【0044】
ばね座部74および規制部75は、外周壁が絞り筒部71の内周壁に嵌合するよう絞り筒部71の内側に圧入されている。ばね座部74および規制部75は、絞り筒部71に対し相対移動不能に設けられている。
【0045】
可動部73は、ガイド部733が規制部75のばね座部74とは反対側の端部に当接可能である。そのため、可動部73は、シート721と規制部75との間で軸方向に往復移動可能である。可動部73は、可動底部732がシート721に当接したとき、シート部72側への軸方向の移動が規制される。一方、可動部73は、ガイド部733が規制部75に当接したとき、規制部75側への軸方向の移動が規制される。すなわち、規制部75は、可動部73の規制部75側への軸方向の移動を規制する。
【0046】
スプリング76は、例えばコイルスプリングであり、規制部75の内側においてばね座部74と可動部73との間に設けられている。スプリング76の一端は、ばね座部74の規制部75側の面に当接している。スプリング76の他端は、可動部73の可動筒部731の可動底部732とは反対側の端面に当接している。スプリング76は、可動部73をシート721側に付勢可能である。これにより、可動底部732の外壁は、シート721に押し付けられる。スプリング76の付勢力は、絞り筒部71に対するばね座部74の位置により調整される。
【0047】
絞り部70は、絞り筒部71およびシート部72の外周壁がインレット部24の内周壁に嵌合するようインレット部24の内側に設けられている。ここで、絞り筒部71およびシート部72は、インレット部24に圧入されている。
【0048】
絞り流路701は、可動底部732の中央を板厚方向に貫くよう形成されている。これにより、燃料は、絞り流路701を流通可能である。
【0049】
絞り流路702は、可動部73の可動底部732とシート721との間に環状に形成されている。可動部73の可動底部732がシート721から離間しているとき、燃料は、絞り流路702を流通可能である。絞り流路702の最小流路面積は、可動部73がシート721に当接しているとき、0である(図3の(B)参照)。そのため、このとき、燃料は、絞り流路702を流通できない。一方、絞り流路702の最小流路面積は、可動部73がシート721から離間し、ガイド部733が規制部75に当接しているとき、最大となる(図3の(A)参照)。ここで、絞り流路701と絞り流路702とを合わせて絞り流路700と総称する。
【0050】
次に、燃料噴射弁1および絞り部70の作動について説明する。コイル55には、図示しない電子制御ユニット(以下、「ECU」という)が接続される。ECUは、演算部としてのCPU、記憶部としてのROM、RAM、入出力部としてのI/O等を有する小型のコンピュータである。ECUは、車両の各部に設けられた各種センサからの情報等に基づき、車両に搭載されたエンジン、機器および装置等の作動を制御し、車両の走行等を制御する。
【0051】
ECUは、コイル55への通電を制御することで、燃料噴射弁1およびエンジンの作動を制御し、車両を制御する。ECUにより、コイル55に通電されると、固定コア部50と外側コア42との間に磁気吸引力が生じ、可動コア40および隙間形成部材61がスプリング63の付勢力に抗して開弁方向に移動する。内側コア41が鍔部34に衝突すると、ニードル30は、開弁方向に移動し、弁座14から離間し、開弁する。これにより、燃料流路100内の燃料は、噴孔13を経由して燃料噴射弁1の外部であるエンジンの燃焼室に噴射される。
【0052】
ニードル30が弁座14から離間し開弁すると、燃料流路100のうち絞り部70の可動部73に対し弁座14側の燃料の圧力は、可動部73に対し弁座14とは反対側の燃料の圧力より低くなる。これにより、可動部73に対し弁座14側と、弁座14とは反対側との間で差圧が生じる。そのため、可動部73は、シート721から離間し、スプリング76の付勢力に抗し弁座14側へ移動する(図3の(A)参照)。
【0053】
これにより、可動部73とシート721との間の絞り流路702の最小流路面積が増大し、可動部73に対し弁座14とは反対側の燃料は、絞り流路701および絞り流路702を経由して弁座14側へ流れる。
【0054】
ここで、可動部73は、ガイド部733が規制部75に当接することで、弁座14側への移動が規制される。そのため、開弁時における絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制される。このときの絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積の最大値は、比較的大きい。そのため、燃料が絞り流路700で絞られるのが抑制され、配管側から弁座14側へ流れる燃料の流量を十分確保できる。
【0055】
ECUにより、コイル55への通電が停止すると、固定コア部50と外側コア42との間の磁気吸引力が消失し、外側コア42は、スプリング63の付勢力により、固定コア部50から離間し、弁座14側へ移動する。これにより、隙間形成部材61の底部により鍔部34が弁座14側へ押され、ニードル30は、弁座14側へ移動する。ニードル30が弁座14に当接し閉弁すると、燃料流路100の弁座14近傍に圧力波が生じる。弁座14近傍で生じた圧力波は、燃料流路100を絞り部70側へ向かって伝播する。
【0056】
ニードル30が弁座14に当接し閉弁すると、燃料流路100のうち絞り部70の可動部73に対し弁座14側の燃料の圧力は、可動部73に対し弁座14とは反対側の燃料の圧力と同等になる。そのため、可動部73は、スプリング76の付勢力により、弁座14とは反対側へ移動し、シート721に当接する(図3の(B)参照)。
【0057】
これにより、可動部73とシート721との間の絞り流路702の最小流路面積が0となる。そのため、閉弁時に弁座14近傍で生じた圧力波は、絞り流路701のみを通過して配管側へ伝播する。圧力波は、絞り流路701を通過すると、減衰する。
【0058】
ここで、閉弁時における絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積は、開弁時における絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積より小さい。
【0059】
ニードル30の開弁状態から閉弁状態に移行するときの、絞り流路700の最小流路面積、および、燃料噴射弁1からの燃料の噴射率の変化を図4に示す。
【0060】
時刻t0において、可動部73は、シート721から離間し、ガイド部733が規制部75に当接している(図3の(A)参照)。時刻t0~t1にかけて、絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積は、比較的大きく、一定である。そのため、このときの燃料の噴射率も、比較的大きく、一定である。
【0061】
時刻t1においてコイル55への通電が停止すると、時刻t1以降、ニードル30が弁座14側に移動し、時刻t2でニードル30が弁座14に当接し閉弁する。燃料の噴射率は、時刻t1以降、低下し、時刻t2で0になる。
【0062】
時刻t2でニードル30が弁座14に当接し閉弁すると、燃料流路100のうち絞り部70の可動部73に対し弁座14側の燃料の圧力と、可動部73に対し弁座14とは反対側の燃料の圧力とが同等になる。これにより、可動部73がシート721に当接し、絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積は、絞り流路701の最小流路面積となるまで低下する。
【0063】
時刻t2以降、燃料の噴射率は0であり、絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積は、絞り流路701の最小流路面積となり一定である。
【0064】
所定の期間内にニードル30が複数回閉弁すると、燃料流路100の弁座14近傍には、閉弁に伴う圧力波が複数回生じる。これにより、燃料流路100には、複数回の閉弁に伴う圧力脈動が生じる。
【0065】
本実施形態では、上述のように、絞り流路701を通過した圧力波を減衰させることができる。そのため、燃料流路100に生じた圧力脈動を絞り部70により低減することができる。
【0066】
ところで、本実施形態では、エンジンの燃焼室内のウェットを低減しPNを低減することを主な目的として、ECUは、エンジンの1回の燃焼サイクルにおいて複数回に分けて燃料を噴射、所謂多段噴射するよう燃料噴射弁1を制御することが可能である。そのため、燃料流路100の弁座14近傍には、閉弁に伴う圧力波が短時間の間に複数回生じる。これにより、燃料流路100には、短時間の間に圧力脈動が生じる。
【0067】
本実施形態では、上述のように、絞り流路701を通過した圧力波を減衰させることができる。そのため、多段噴射時において燃料流路100に生じた圧力脈動を絞り部70により低減することができる。
【0068】
なお、多段噴射時において燃料流路100に生じた圧力脈動が低減されない燃料噴射弁の場合、噴射1回目以降の噴射量が、圧力脈動の影響を受けて変動するおそれがある。
【0069】
以下、本実施形態の構成について、さらに説明する。
【0070】
<1>絞り部70は、弁座14に対し燃料流れの上流側に設けられている。絞り部70は、可動部73、絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)を有する。可動部73は、ハウジング20に対し相対移動可能である。絞り流路700は、燃料が流通可能なよう形成され、ハウジング20に対し可動部73が相対移動すると最小流路面積が変化する。
【0071】
ニードル30が弁座14から離間する開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14に当接する閉弁時における絞り流路700の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路700の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制される。ニードル30は、絞り部70に対し相対移動可能なよう絞り部70とは別体に形成され、弁座14と絞り部70との間に設けられている。
【0072】
<2>絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30の開閉弁による差圧により可動部73がハウジング20に対し相対移動することで、増減する。
【0073】
<3>可動部73のハウジング20に対する相対移動可能な距離の最大値(図3に示すd1)は、ニードル30の弁座14から移動可能な距離の最大値より小さい。
【0074】
<4>閉弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時、すなわち、ニードル30のフルリフト時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より小さい。
【0075】
ここで、ニードル30の閉弁時における絞り流路700(絞り流路701)の最小流路面積(mm2)と、閉弁に伴い燃料流路100に生じる圧力脈動の脈動率(%)と、の関係を図5に示す。ここで、脈動率(%)とは、燃料流路100に絞り部70を設けた場合における燃料流路100の圧力変動と、燃料流路100に絞り部70を設けない場合における燃料流路100の圧力変動との比に100を乗じた値である。
【0076】
図5に示すように、閉弁時における絞り流路700の最小流路面積が所定値A(mm2)より小さい場合、脈動率を小さくできることがわかる。ここで、所定値Aは、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積(最大値:A)に相当する。そこで、本実施形態では、図5に示す関係に基づき、上述のように、閉弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積(最大値:A)より小さく設定している。そのため、本実施形態では、脈動率を小さくし、圧力脈動を低減することができる。
【0077】
絞り部70は、ハウジング20内、すなわち、燃料噴射弁1の内部に設けられている。そのため、絞り部70を備えた燃料噴射弁1の小型化を図ることができる。
【0078】
スプリング76のバネ力(N)と、閉弁に伴い燃料流路100に生じる圧力脈動の振幅(MPa)と、の関係を図6に示す。図6に示すように、スプリング76のバネ力が7Nより小さい場合、圧力脈動の振幅を小さく抑えることができることがわかる。本実施形態では、図6に示す関係に基づき、スプリング76のバネ力を7Nより小さくなるよう設定している。そのため、閉弁に伴い燃料流路100に生じる圧力脈動の振幅を小さく抑えることができる。
【0079】
絞り部70は、ニードル30および可動コア40に対し燃料流れの上流側に配置されている。そのため、ニードル30および可動コア40の軸方向の往復移動に伴い生じる脈動についても、絞り部70で低減させることができる。
【0080】
ニードル30の開弁時における絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積(mm2)と、燃料噴射弁1の内圧と燃料噴射弁1への燃料の供給圧力との比(×100%)と、の関係を図7に示す。図7に示すように、ニードル30の開弁時における絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積が上記所定値Aより大きい場合、内圧と供給圧力との比を高くできることがわかる。そこで、本実施形態では、図7に示す関係に基づき、ニードル30の開弁時における絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積を、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積(最大値:A)より大きくなるよう設定している。
【0081】
これにより、ニードル30のフルリフト時、燃料は絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)で絞られることなく、内圧と供給圧力との比を高くでき、燃料の噴射圧を高くできる。また、このように設定することにより、ニードル30のフルリフト時の燃料の流量の低下を抑制できる。
【0082】
本実施形態では、絞り流路701の内径は、加工公差を考慮し、例えば0.3±0.1mmに設定されている。そのため、閉弁時における絞り流路700の最小流路面積は、直径0.3±0.1mmの円の面積相当となる。また、本実施形態では、開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、直径0.8±0.1mmの円の面積相当となるよう設定されている。そのため、開弁時の燃料の圧力の低下を効果的に抑制しつつ、閉弁後の圧力脈動を効果的に低減可能である。
【0083】
燃料噴射弁1に供給する燃料の圧力(燃圧)の最小値、すなわち、最小使用圧力(MPa)と、絞り部70による圧力脈動の減衰効果(%)との関係を図8に示す。図8に示すように、最小使用圧力が60MPa以下の場合、絞り部70による圧力脈動の減衰効果が高くなることがわかる。本実施形態では、図8に示す関係に基づき、最小使用圧力は、60MPa以下に設定している。つまり、本実施形態は、最小使用圧力が60MPa以下のときに、圧力脈動の減衰効果が高い。
【0084】
本実施形態では、ハウジング20に対する可動部73の可動範囲(図3に示すd1)は、絞り筒部71への規制部75の圧入量により設定されている。そのため、可動部73の可動範囲を調整することで、絞り流路702の最小流路面積の最大値を容易に調整することができる。
【0085】
本実施形態では、シート部72および絞り筒部71は、ばね座部74および規制部75よりも硬度が高い材料により形成されている。そのため、シート721の摩耗を抑制できるとともに、ばね座部74および規制部75を絞り筒部71に容易に圧入できる。
【0086】
本実施形態では、可動部73の可動底部732の外壁の面粗度は、シート721の面粗度より小さい。そのため、ロバスト性を向上できる。
【0087】
本実施形態では、可動部73の可動底部732の外壁は、SR形状となるよう形成されている。そのため、可動底部732とシート721との間に生じるリンキング力を増大でき、シート721に対する可動部73のバウンスを抑制できる。
【0088】
本実施形態では、絞り流路701は、可動部73に形成されている。つまり、可動部73は、絞り流路701を形成している。絞り流路702は、可動部73と、他部材であるシート部72との間に形成されている。つまり、可動部73とシート部72とは、絞り流路702を形成している。
【0089】
以上説明したように、<1>本実施形態では、絞り部70は、弁座14に対し燃料流れの上流側に設けられている。絞り部70は、可動部73、絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)を有する。可動部73は、ハウジング20に対し相対移動可能である。絞り流路700は、燃料が流通可能なよう形成され、ハウジング20に対し可動部73が相対移動すると最小流路面積が変化する。
【0090】
ニードル30が弁座14から離間する開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14に当接する閉弁時における絞り流路700の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路700の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制される。ニードル30は、絞り部70に対し相対移動可能なよう絞り部70とは別体に形成され、弁座14と絞り部70との間に設けられている。
【0091】
本実施形態では、ニードル30が弁座14から離間する開弁時、燃料は、絞り流路700を通過し、噴孔13側へ流れる。ここで、ニードル30が弁座14から離間する開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14に当接する閉弁時における絞り流路700の最小流路面積より大きい。また、開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より大きい。そのため、絞り流路700に対し噴孔13とは反対側の燃料は、絞り流路700で絞られることなく、噴孔13側へ流れる。これにより、開弁時の燃料の圧力の低下を抑制し、燃料の噴射量を確保できる。
【0092】
一方、ニードル30が弁座14に当接する閉弁時に生じた圧力脈動は、燃料流路100を弁座14側から絞り部70側へ伝わり、絞り流路700を通過する。ここで、開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、閉弁時における絞り流路700の最小流路面積より大きい。つまり、閉弁時における絞り流路700の最小流路面積は、開弁時における絞り流路700の最小流路面積より小さい。そのため、閉弁時に生じた圧力脈動は、絞り流路700を通過するとき、減衰する。これにより、閉弁後の圧力脈動を低減できる。
【0093】
また、ニードル30は、絞り部70に対し相対移動可能なよう絞り部70とは別体に形成され、弁座14と絞り部70との間に設けられている。そのため、ニードル30が燃料流路100内で軸方向に往復移動するとき、絞り部70は、ニードル30と一体に移動することはない。これにより、絞り部70が、ニードル30の開閉弁時の流体抵抗となることはなく、ニードル30の開閉弁の速度の低下を抑制できる。
【0094】
また、<2>本実施形態では、絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30の開閉弁による差圧により可動部73がハウジング20に対し相対移動することで、増減する。そのため、ニードル30の開閉弁のタイミングと絞り流路700の最小流路面積の変化のタイミングとを連動させることができる。
【0095】
また、<3>本実施形態では、可動部73のハウジング20に対する相対移動可能な距離の最大値は、ニードル30の弁座14から移動可能な距離の最大値より小さい。そのため、絞り部70における最小流路面積の切り替え時間を短くすることができる。これにより、絞り部70の応答性を向上させることができる。
【0096】
また、<4>本実施形態では、閉弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より小さい。そのため、本実施形態では、脈動率を小さくし、圧力脈動を低減することができる。
【0097】
(第2実施形態)
第2実施形態による燃料噴射弁を図9に示す。第2実施形態は、絞り部70の構成等が第1実施形態と異なる。
【0098】
本実施形態では、インレット部24の内側にフィルタ27が設けられている。フィルタ27は、燃料流路100を流れる燃料中の異物を捕集可能である。
【0099】
図10に示すように、絞り部70は、第1実施形態で示したばね座部74、規制部75、スプリング76を有していない。シート721は、シート部72の絞り筒部71とは反対側の端面に形成されている。シート721は、絞り筒部71側から絞り筒部71とは反対側へ向かうに従いシート部72の軸から離れるようテーパ状に形成されている。
【0100】
本実施形態では、第1実施形態で示したアジャスティングパイプ62を備えていない。絞り筒部71およびシート部72は、シート721が弁座14側を向くよう固定コア部50の内側に圧入されている。
【0101】
可動部73は、可動底部732がシート721に当接可能なよう固定コア部50の内側においてシート721に対し弁座14側に設けられている。スプリング63は、隙間形成部材61とは反対側の端部が可動部73の弁座14側の面に当接するよう設けられている。これにより、スプリング63は、隙間形成部材61およびニードル30を閉弁方向へ付勢するとともに、可動部73をシート721側へ付勢している。
【0102】
本実施形態では、規制部75は、固定コア部50の内周壁から径方向内側へ突出するよう略円筒状に形成されている。可動部73のガイド部733は、固定コア部50の内周壁と摺動可能である。可動部73のガイド部733は、規制部75の弁座14とは反対側の面に当接可能である。ガイド部733が規制部75に当接すると、可動部73は、弁座14側への移動が規制される。
【0103】
絞り流路702は、可動底部732の外壁とシート721との間に環状に形成されている。
【0104】
ニードル30が弁座14から離間し開弁すると、燃料流路100のうち絞り部70の可動部73に対し弁座14側の燃料の圧力は、可動部73に対し弁座14とは反対側の燃料の圧力より低くなる。これにより、可動部73に対し弁座14側と、弁座14とは反対側との間で差圧が生じる。そのため、可動部73は、シート721から離間し、スプリング63の付勢力に抗し弁座14側へ移動する。
【0105】
これにより、可動部73とシート721との間の絞り流路702の最小流路面積が増大し、可動部73に対し弁座14とは反対側の燃料は、絞り流路701および絞り流路702を経由して弁座14側へ流れる。
【0106】
ここで、可動部73は、ガイド部733が規制部75に当接することで、弁座14側への移動が規制される。そのため、開弁時における絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制される。
【0107】
ニードル30が弁座14に当接し閉弁すると、燃料流路100のうち絞り部70の可動部73に対し弁座14側の燃料の圧力は、可動部73に対し弁座14とは反対側の燃料の圧力と同等になる。そのため、可動部73は、スプリング63の付勢力により、弁座14とは反対側へ移動し、シート721に当接する。
【0108】
これにより、可動部73とシート721との間の絞り流路702の最小流路面積が0となる。そのため、閉弁時に弁座14近傍で生じた圧力波は、絞り流路701のみを通過して配管側へ伝播する。圧力波は、絞り流路701を通過すると、減衰する。
【0109】
<1>絞り部70は、弁座14に対し燃料流れの上流側に設けられている。絞り部70は、可動部73、絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)を有する。可動部73は、ハウジング20に対し相対移動可能である。絞り流路700は、燃料が流通可能なよう形成され、ハウジング20に対し可動部73が相対移動すると最小流路面積が変化する。
【0110】
ニードル30が弁座14から離間する開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14に当接する閉弁時における絞り流路700の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路700の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制される。ニードル30は、弁座14と絞り部70との間に設けられている。
【0111】
<2>絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30の開閉弁による差圧により可動部73がハウジング20に対し相対移動することで、増減する。
【0112】
<3>可動部73のハウジング20に対する相対移動可能な距離の最大値は、ニードル30の弁座14から移動可能な距離の最大値より小さい。
【0113】
<4>閉弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時、すなわち、ニードル30のフルリフト時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より小さい。
【0114】
以上説明したように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様、開弁時の燃料の圧力の低下を抑制しつつ、閉弁後の圧力脈動を低減できる。
【0115】
(第3実施形態)
第3実施形態による燃料噴射弁の一部を図11に示す。第3実施形態は、絞り部70の構成等が第1実施形態と異なる。
【0116】
本実施形態では、絞り部70は、第1実施形態で示した可動部73、ばね座部74、規制部75、スプリング76に代えて、可動部77を有している。また、絞り部70は、第1実施形態で示した絞り流路701、絞り流路702に代えて、絞り流路711、絞り流路712、絞り流路713を有している。
【0117】
可動部77は、例えば金属により形成されている。可動部77は、固定筒部771、弾性変形部772、可動筒部773、可動底部774を有している。
【0118】
固定筒部771は、略円筒状に形成されている。弾性変形部772は、蛇腹状に形成されている。弾性変形部772は、一端が固定筒部771の端部に接続するよう固定筒部771と一体に形成されている。弾性変形部772は、軸方向に弾性変形することで伸縮可能である。
【0119】
可動筒部773は、略円筒状に形成されている。可動筒部773は、一端が弾性変形部772の固定筒部771とは反対側の端部に接続するよう弾性変形部772と一体に形成されている。
【0120】
可動底部774は、可動筒部773の弾性変形部772とは反対側の端部を塞ぐよう可動筒部773と一体に形成されている。可動底部774の内壁および外壁は、可動筒部773とは反対側へ突出する曲面状に形成されている。より詳細には、可動底部774の外壁は、SR形状となるよう形成されている。
【0121】
可動部77は、可動底部774の外壁がシート721に当接するよう絞り筒部71の内側に設けられている。ここで、固定筒部771は、絞り筒部71の内側に圧入されている。弾性変形部772は、可動筒部773および可動底部774をシート721側へ付勢している。これにより、可動底部774の外壁は、シート721に押し付けられる(図11参照)。
【0122】
可動底部774および可動筒部773は、弾性変形部772の付勢力に抗して固定筒部771側へ移動可能である。ここで、弾性変形部772は、軸方向に最も圧縮された状態で、可動底部774および可動筒部773の固定筒部771側への移動を規制する(図12参照)。このとき、弾性変形部772は、「規制部」に対応する。
【0123】
可動底部774および可動筒部773が、ハウジング20に対し固定筒部771側へ相対移動すると、可動底部774は、シート721から離間する。
【0124】
絞り流路711は、可動底部774の中央を板厚方向に貫くよう形成されている。これにより、燃料は、絞り流路711を流通可能である。
【0125】
絞り流路712は、可動筒部773を径方向に貫くよう形成されている。これにより、燃料は、絞り流路712を流通可能である。絞り流路712は、可動筒部773の周方向に等間隔で2つ形成されている。
【0126】
絞り流路713は、可動部77の可動底部774とシート721との間に環状に形成されている。可動部77の可動底部774がシート721から離間しているとき、燃料は、絞り流路713を流通可能である。絞り流路713の最小流路面積は、可動底部774がシート721に当接しているとき、0である(図11参照)。そのため、このとき、燃料は、絞り流路713を流通できない。一方、絞り流路713の最小流路面積は、可動底部774がシート721から離間し、固定筒部771側への移動が弾性変形部772により規制されているとき、最大となる(図12参照)。ここで、絞り流路711と絞り流路712と絞り流路713とを合わせて絞り流路700と総称する。
【0127】
次に、絞り部70の作動について説明する。
【0128】
ニードル30が弁座14から離間し開弁すると、燃料流路100のうち絞り部70の可動部77の可動底部774に対し弁座14側の燃料の圧力は、可動底部774に対し弁座14とは反対側の燃料の圧力より低くなる。これにより、可動底部774に対し弁座14側と、弁座14とは反対側との間で差圧が生じる。そのため、可動底部774は、シート721から離間し、弾性変形部772の付勢力に抗し弁座14側へ移動する(図12参照)。
【0129】
これにより、可動底部774とシート721との間の絞り流路713の最小流路面積が増大し、可動底部774に対し弁座14とは反対側の燃料は、絞り流路711、絞り流路713および絞り流路712を経由して弁座14側へ流れる。
【0130】
ここで、可動底部774および可動筒部773は、弾性変形部772が軸方向に最も圧縮された状態になることで、弁座14側への移動が規制される(図12参照)。そのため、開弁時における絞り流路700(絞り流路711、絞り流路712、絞り流路713)の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制される。このときの絞り流路700(絞り流路711、絞り流路712、絞り流路713)の最小流路面積の最大値は、比較的大きい。そのため、燃料が絞り流路700で絞られるのが抑制され、配管側から弁座14側へ流れる燃料の流量を十分確保できる。
【0131】
ニードル30が弁座14に当接し閉弁すると、燃料流路100のうち絞り部70の可動底部774に対し弁座14側の燃料の圧力は、可動底部774に対し弁座14とは反対側の燃料の圧力と同等になる。そのため、可動底部774は、弾性変形部772の付勢力により、弁座14とは反対側へ移動し、シート721に当接する(図11参照)。
【0132】
これにより、可動底部774とシート721との間の絞り流路713の最小流路面積が0となる。そのため、閉弁時に弁座14近傍で生じた圧力波は、絞り流路711のみを通過して配管側へ伝播する。圧力波は、絞り流路711を通過すると、減衰する。
【0133】
ここで、閉弁時における絞り流路700(絞り流路711、絞り流路712、絞り流路713)の最小流路面積は、開弁時における絞り流路700(絞り流路711、絞り流路712、絞り流路713)の最小流路面積より小さい。
【0134】
<1>絞り部70は、弁座14に対し燃料流れの上流側に設けられている。絞り部70は、可動部77、絞り流路700(絞り流路711、絞り流路712、絞り流路713)を有する。可動部77の可動底部774は、ハウジング20に対し相対移動可能である。絞り流路700は、燃料が流通可能なよう形成され、ハウジング20に対し可動底部774が相対移動すると最小流路面積が変化する。
【0135】
ニードル30が弁座14から離間する開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14に当接する閉弁時における絞り流路700の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路700の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制される。ニードル30は、弁座14と絞り部70との間に設けられている。
【0136】
<2>絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30の開閉弁による差圧により可動部77の可動底部774がハウジング20に対し相対移動することで、増減する。
【0137】
<3>可動底部774のハウジング20に対する相対移動可能な距離の最大値は、ニードル30の弁座14から移動可能な距離の最大値より小さい。
【0138】
<4>閉弁時における絞り流路700の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時、すなわち、ニードル30のフルリフト時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より小さい。
【0139】
以上説明したように、第3実施形態においても、第1実施形態と同様、開弁時の燃料の圧力の低下を抑制しつつ、閉弁後の圧力脈動を低減できる。
【0140】
(第4実施形態)
第4実施形態による燃料噴射弁の一部を図13に示す。第4実施形態は、絞り部の構成等が第1実施形態と異なる。
【0141】
本実施形態は、第1実施形態で示した絞り部70に代えて、絞り部80を備えている。絞り部80は、インレット部24の内側に設けられている。絞り部80は、絞り筒部81、規制部82、可動部83、下保持部86、上保持部87、絞り流路801、絞り流路802を有している。
【0142】
絞り筒部81は、例えば金属により略円筒状に形成されている。規制部82は、例えば金属により略円環の板状に形成されている。規制部82は、外周壁が絞り筒部81の一端の内周壁に接続するよう絞り筒部81と一体に形成されている。
【0143】
可動部83は、例えば金属により円板状に形成されている。図14に示すように、可動部83には、切断部831が形成されている。可動部83は、切断部831により、可動片支持体84と可動片85とに分けられる。
【0144】
可動片支持体84は、環状部841、突出部842、延伸部843、中央部844を有している。環状部841は、円環状に形成されている。突出部842は、環状部841の内縁部から径方向内側へ突出するよう環状部841と一体に円弧状に形成されている。突出部842は、環状部841の周方向に等間隔で4つ形成されている。延伸部843は、突出部842の中央から径方向内側へ直線状に延びるよう突出部842と一体に形成されている。延伸部843は、4つの突出部842に対応し、環状部841の周方向に等間隔で4つ形成されている。中央部844は、外縁部が延伸部843の突出部842とは反対側の端部に接続するよう延伸部843と一体に形成されている。
【0145】
可動片85は、可動片腕部851、可動片本体852を有している。可動片腕部851は、2つの突出部842の間を環状部841から径方向内側へ直線状に延びるよう環状部841と一体に形成されている。可動片本体852は、2つの突出部842と2つの延伸部843と中央部844との間において、可動片腕部851の環状部841とは反対側の端部に接続するよう可動片腕部851と一体に形成されている。可動片本体852は、円弧状に形成されている。可動片腕部851および可動片本体852は、環状部841の周方向に等間隔で4つ形成されている。可動片85は、環状部841側の端部から中央部844側の端部にかけて滑らかに湾曲するよう変形可能である(図15参照)。
【0146】
下保持部86は、例えば金属により略円環の板状に形成されている。下保持部86は、一方の端面が規制部75の端面の外縁部に接し、外周壁が絞り筒部81の内周壁に接するよう絞り筒部81の内側に設けられている。
【0147】
上保持部87は、例えば金属により略円環の板状に形成されている。上保持部87の外径は、下保持部86の外径と略同じである。上保持部87の内径は、規制部82の内径より大きく、下保持部86の内径より小さい。
【0148】
可動部83は、環状部841の一方の面が下保持部86の規制部82とは反対側の端面に接し、外縁部が絞り筒部81の内周壁に接するよう絞り筒部81の内側に設けられている。
【0149】
上保持部87は、一方の端面が可動部83の規制部82とは反対側の面に接し、外周壁が絞り筒部81の内周壁に接するよう絞り筒部81の内側に設けられている。これにより、可動部83は、環状部841が下保持部86と上保持部87により挟まれ、絞り筒部81の内側で保持されている。
【0150】
可動部83の可動片85は、環状部841側の端部から中央部844側の端部にかけて、規制部82側へ滑らかに湾曲するよう弾性変形可能である(図15参照)。可動片85が規制部82の内縁部に当接したとき、規制部82側への変形が規制される。すなわち、規制部82は、ハウジング20に対する可動部83の可動片85の相対移動を規制可能である。
【0151】
絞り部80は、絞り筒部81の外周壁がインレット部24の内周壁に嵌合するようインレット部24の内側に設けられている。ここで、絞り筒部81は、インレット部24に圧入されている。
【0152】
絞り流路801は、可動部83の中央部844の中央を板厚方向に貫くよう形成されている。これにより、燃料は、絞り流路801を流通可能である。
【0153】
絞り流路802は、切断部831、すなわち、可動片支持体84の突出部842、延伸部843および中央部844と可動片85の可動片腕部851および可動片本体852との間に形成されている。可動片85が規制部82側へ湾曲しているとき、燃料は、絞り流路802を流通可能である。絞り流路802の最小流路面積は、可動片85が規制部82側へ湾曲しておらず、可動片支持体84と同一平面上にあるとき、0である(図13参照)。そのため、このとき、燃料は、絞り流路802を流通できない。一方、絞り流路802の最小流路面積は、可動片85が規制部82側へ湾曲し、変形が規制部82により規制されているとき、最大となる(図15参照)。ここで、絞り流路801と絞り流路802とを合わせて絞り流路800と総称する。
【0154】
次に、絞り部80の作動について説明する。
【0155】
ニードル30が弁座14から離間し開弁すると、燃料流路100のうち絞り部80の可動部83に対し弁座14側の燃料の圧力は、可動部83に対し弁座14とは反対側の燃料の圧力より低くなる。これにより、可動部83に対し弁座14側と、弁座14とは反対側との間で差圧が生じる。そのため、可動部83の可動片85は、環状部841側の端部から中央部844側の端部にかけて、規制部82側へ滑らかに湾曲する(図15参照)。
【0156】
これにより、可動片支持体84と可動片85との間の絞り流路802の最小流路面積が増大し、可動部83に対し弁座14とは反対側の燃料は、絞り流路801、絞り流路802を経由して弁座14側へ流れる。
【0157】
ここで、可動片85は、規制部82の内縁部に当接すると、規制部82側への変形が規制される(図15参照)。そのため、開弁時における絞り流路800(絞り流路801、絞り流路802)の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制される。このときの絞り流路800(絞り流路801、絞り流路802)の最小流路面積の最大値は、比較的大きい。そのため、燃料が絞り流路800で絞られるのが抑制され、配管側から弁座14側へ流れる燃料の流量を十分確保できる。
【0158】
ニードル30が弁座14に当接し閉弁すると、燃料流路100のうち絞り部80の可動部83に対し弁座14側の燃料の圧力は、可動部83に対し弁座14とは反対側の燃料の圧力と同等になる。そのため、可動片85は、中央部844側の端部が上保持部87側へ移動し、可動片支持体84と同一平面上に位置するよう変形する(図13参照)。
【0159】
これにより、可動片支持体84と可動片85との間の絞り流路802の最小流路面積が0となる。そのため、閉弁時に弁座14近傍で生じた圧力波は、絞り流路801のみを通過して配管側へ伝播する。圧力波は、絞り流路801を通過すると、減衰する。
【0160】
ここで、閉弁時における絞り流路800(絞り流路801、絞り流路802)の最小流路面積は、開弁時における絞り流路800(絞り流路801、絞り流路802)の最小流路面積より小さい。
【0161】
<1>絞り部80は、弁座14に対し燃料流れの上流側に設けられている。絞り部80は、可動部83、絞り流路800(絞り流路801、絞り流路802)を有する。可動部83の可動片85は、ハウジング20に対し相対移動可能である。絞り流路800は、燃料が流通可能なよう形成され、ハウジング20に対し可動片85が相対移動すると最小流路面積が変化する。
【0162】
ニードル30が弁座14から離間する開弁時における絞り流路800の最小流路面積は、ニードル30が弁座14に当接する閉弁時における絞り流路800の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路800の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より大きい。開弁時における絞り流路800の最小流路面積の最大値は、一定となるよう規制される。ニードル30は、弁座14と絞り部80との間に設けられている。
【0163】
<2>絞り流路800の最小流路面積は、ニードル30の開閉弁による差圧により可動部83の可動片85がハウジング20に対し相対移動することで、増減する。
【0164】
<3>可動片85のハウジング20に対する相対移動可能な距離の最大値は、ニードル30の弁座14から移動可能な距離の最大値より小さい。
【0165】
<4>閉弁時における絞り流路800の最小流路面積は、ニードル30が弁座14から最も離間する開弁時、すなわち、ニードル30のフルリフト時における弁座14とニードル30との間の最小流路面積より小さい。
【0166】
本実施形態では、ハウジング20に対する可動片85の可動範囲は、可動部83の板厚、および、規制部82の内径の大きさにより設定されている。そのため、可動片85の可動範囲を調整することで、絞り流路802の最小流路面積の最大値を容易に調整することができる。
【0167】
以上説明したように、第4実施形態においても、第1実施形態と同様、開弁時の燃料の圧力の低下を抑制しつつ、閉弁後の圧力脈動を低減できる。
【0168】
(第5実施形態)
第5実施形態による燃料噴射弁の一部を図16に示す。第5実施形態は、絞り部70の構成等が第1実施形態と異なる。
【0169】
本実施形態では、絞り部70は、フィルタ90をさらに有している。フィルタ90は、フィルタ部91、フランジ部92を有している。
【0170】
フィルタ部91は、メッシュ状の部材により有底筒状に形成されている。フランジ部92は、フィルタ部91の開口側の端部から径方向外側へ延びるよう環状に形成されている。
【0171】
フィルタ90は、フランジ部92のフィルタ部91とは反対側の端面が、ばね座部74の規制部75とは反対側の端面に固定されるようにしてばね座部74と一体に設けられている。フィルタ90は、フィルタ部91を通過する燃料中の異物を捕集可能である。
【0172】
なお、フィルタ部91の流路面積は、絞り流路700(絞り流路701、絞り流路702)の最小流路面積の最大値より大きい。
【0173】
第5実施形態においても、第1実施形態と同様、開弁時の燃料の圧力の低下を抑制しつつ、閉弁後の圧力脈動を低減できる。
【0174】
(第6実施形態)
第6実施形態による燃料噴射弁の一部を図17に示す。第6実施形態は、絞り部70の構成等が第3実施形態と異なる。
【0175】
本実施形態では、絞り部70は、フィルタ90をさらに有している。フィルタ90の構成は、第5実施形態と実質的に同様のため、説明を省略する。
【0176】
フィルタ90は、フランジ部92のフィルタ部91側の端面の外縁部が、絞り筒部71のシート部72とは反対側の端面に固定されるようにして絞り筒部71と一体に設けられている。ここで、フィルタ部91は、絞り筒部71および可動部77の内側に位置している。フィルタ90は、フィルタ部91を通過する燃料中の異物を捕集可能である。
【0177】
なお、フィルタ部91の流路面積は、絞り流路700(絞り流路711、絞り流路712、絞り流路713)の最小流路面積の最大値より大きい。
【0178】
第6実施形態においても、第3実施形態と同様、開弁時の燃料の圧力の低下を抑制しつつ、閉弁後の圧力脈動を低減できる。
【0179】
(第7実施形態)
第7実施形態による燃料噴射弁の一部を図18に示す。第7実施形態は、絞り部80の構成等が第4実施形態と異なる。
【0180】
本実施形態では、絞り部80は、フィルタ90をさらに有している。フィルタ90の構成は、第5実施形態と実質的に同様のため、説明を省略する。
【0181】
フィルタ90は、フランジ部92のフィルタ部91とは反対側の端面が、規制部82の可動部83とは反対側の端面に固定されるようにして規制部82と一体に設けられている。フィルタ90は、フィルタ部91を通過する燃料中の異物を捕集可能である。
【0182】
なお、フィルタ部91の流路面積は、絞り流路800(絞り流路801、絞り流路802)の最小流路面積の最大値より大きい。
【0183】
第7実施形態においても、第4実施形態と同様、開弁時の燃料の圧力の低下を抑制しつつ、閉弁後の圧力脈動を低減できる。
【0184】
(第8実施形態)
第8実施形態による燃料噴射弁の一部を図19に示す。第8実施形態は、フィルタ90の配置が第5実施形態と異なる。
【0185】
本実施形態では、フィルタ90は、フランジ部92のフィルタ部91とは反対側の端面が、シート部72の絞り筒部71とは反対側の端面に固定されるようにしてシート部72と一体に設けられている。
【0186】
なお、フィルタ90は、インレット部24の内側に位置している。
【0187】
(第9実施形態)
第9実施形態による燃料噴射弁の一部を図20に示す。第9実施形態は、フィルタ90の配置が第6実施形態と異なる。
【0188】
本実施形態では、フィルタ90は、フランジ部92のフィルタ部91とは反対側の端面が、シート部72の絞り筒部71とは反対側の端面に固定されるようにしてシート部72と一体に設けられている。
【0189】
なお、フィルタ90は、インレット部24の内側に位置している。
【0190】
(第10実施形態)
第10実施形態による燃料噴射弁の一部を図21に示す。第10実施形態は、フィルタ90の配置が第7実施形態と異なる。
【0191】
本実施形態では、フィルタ90は、フランジ部92のフィルタ部91とは反対側の端面が、上保持部87の可動部83とは反対側の端面に固定されるようにして上保持部87と一体に設けられている。
【0192】
なお、フィルタ90は、インレット部24の内側に位置している。
【0193】
(第11実施形態)
第11実施形態による燃料噴射弁の一部を図22に示す。第11実施形態は、可動コアの構成等が第1実施形態と異なる。
【0194】
本実施形態では、可動コア40は、第1実施形態で示した内側コア41を有しておらず、外側コア42のみ有している。外側コア42は、鍔部34に対しノズル10側においてニードル30に対し軸方向に相対移動可能なようニードル30の径方向外側に設けられている。外側コア42の内周壁は、ニードル30の外周壁と摺動可能である。外側コア42は、鍔部34により、ニードル30に対し開弁方向の相対移動が規制される。可動コア40には、外側コア42のノズル10側の面と固定コア部50側の面とを連通する連通孔401が形成されている。
【0195】
本実施形態では、第1実施形態で示したばね座64は、設けられていない。スプリング65は、一端が外側コア42のノズル10側の面に当接し、他端が第1筒部材21の内壁に当接した状態で設けられている。スプリング65は、外側コア42を固定コア部50側、すなわち、開弁方向に付勢可能である。
【0196】
外側コア42の固定コア部50側の面がスリーブ51のノズル10側の端面に当接しているとき、外側コア42の固定コア部50側の面と固定コア部50のノズル10側の端面との間には、略円環状のギャップg1が形成される(図22参照)。
【0197】
本実施形態は、第1実施形態で示した隙間形成部材61を備えていない。スプリング63のアジャスティングパイプ62とは反対側の端部は、ニードル30の鍔部34に当接している。スプリング63は、ニードル30、可動コア40をノズル10側、すなわち、閉弁方向に付勢可能である。
【0198】
スプリング65の付勢力は、スプリング63の付勢力よりも小さい。そのため、コイル55に通電されていないとき、ニードル30は、スプリング63により弁座14に押し付けられ、外側コア42は、スプリング65により鍔部34に押し付けられる。
【0199】
本実施形態では、ニードル30にストッパ66が設けられている。ストッパ66は、例えば非磁性材料により環状に形成されている。ストッパ66は、外側コア42に対しノズル10側において、内周壁がニードル30の外周壁に嵌合するよう圧入されている。ここで、外側コア42は、鍔部34とストッパ66との間において、ニードル30に対し軸方向に相対移動可能である。ストッパ66は、外側コア42のノズル10側の面に当接することで、ニードル30に対する外側コア42の閉弁方向の移動を規制可能である。
【0200】
鍔部34の外周壁は、スリーブ51のノズル10側の端部の内周壁と摺動可能である。そのため、ニードル30は、鍔部34側の端部の軸方向の往復移動がスリーブ51により案内される。
【0201】
ここで、外側コア42の外周壁と第1筒部材21の内周壁および第2筒部材22の内周壁との間には、略円筒状のギャップg2が形成されている。
【0202】
本実施形態では、ハウジング20は、アッパハウジング28、磁性材リング29を有している。第3筒部材23のノズル10側の端部、すなわち、固定コア部50の外周壁は、略円筒面状に形成されている。ホルダ26の内周壁には、段差面261が形成されている。段差面261は、インレット部24側からノズル10側へ向かうに従いホルダ26の軸に近付くようテーパ状に形成されている。
【0203】
アッパハウジング28は、例えば磁性材料により略円環状に形成されている。アッパハウジング28は、段差面261に対しインレット部24側において、外周壁がホルダ26の内周壁に嵌合するよう圧入されている。ここで、アッパハウジング28は、ノズル10側の面の外縁部が段差面261に当接することで、ノズル10側への移動が規制されている。
【0204】
アッパハウジング28の内径は、固定コア部50の外径より大きい。そのため、アッパハウジング28の内周壁と固定コア部50の外周壁との間には、略円筒状のギャップg3が形成される。
【0205】
磁性材リング29は、例えば磁性材料により略円環状に形成されている。磁性材リング29は、アッパハウジング28に対しインレット部24側において、内周壁が固定コア部50の外周壁に嵌合するよう圧入されている。ここで、磁性材リング29は、ノズル10側の面がアッパハウジング28のインレット部24側の面に当接するするよう設けられている。
【0206】
コイル55に通電されると、固定コア部50、磁性材リング29、アッパハウジング28、ホルダ26、第1筒部材21、外側コア42に磁気回路が形成される。これにより、固定コア部50と外側コア42との間に磁気吸引力が発生し、外側コア42は、ニードル30とともに固定コア部50側、すなわち、開弁方向に吸引される。
【0207】
開弁方向に吸引された外側コア42は、固定コア部50側の面がスリーブ51のノズル10側の端面に当接する。これにより、外側コア42の開弁方向の移動が規制される。コイル55への通電が停止すると、ニードル30および外側コア42は、スプリング63の付勢力により閉弁方向に付勢される。ニードル30が弁座14に当接し閉弁すると、外側コア42は、ニードル30に対し閉弁方向に相対移動し、ストッパ66に当接する。これにより、外側コア42の閉弁方向の移動が規制される。
【0208】
上述のように、本実施形態では、固定コア部50の外周壁は、略円筒面状に形成されている。そのため、固定コア部50の径方向外側に環状の突出部が形成された第1実施形態と比べ、固定コア部50の母材の外径を小さくすることができる。
【0209】
ここで、アッパハウジング28は、外周壁がホルダ26に圧入されているものの、内周壁は固定コア部50の外周壁に圧入されておらず、アッパハウジング28と固定コア部50との間には、ギャップg3が形成されている。そのため、仮に磁性材リング29を設けない場合、ギャップg3による磁気抵抗の増大により、磁束が減少し、開弁に必要なエネルギーが増大するおそれがある。
【0210】
そこで、本実施形態では、固定コア部50の外周壁に圧入され、軸方向においてアッパハウジング28のインレット部24側の面に当接する磁性材リング29を設けることにより、通過するギャップの少ない磁気回路Cm1を形成することができる(図22参照)。これにより、固定コア部50の母材の外径を小さくしつつ、開弁に必要なエネルギーの増大を抑制することができる。
【0211】
なお、磁性材リング29は、モールド部56の射出成型時の成型圧によって、アッパハウジング28に押し付けられている。これにより、アッパハウジング28と磁性材リング29とを密着させることができる。また、モールド部56の射出成型時、溶融した樹脂は、アッパハウジング28に形成された切欠き部(図示せず)を経由して磁性材リング29側からコイル55側へ流れる。ギャップg3には、モールド部56を形成する樹脂が存在し得る。
【0212】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、可動部のハウジングに対する相対移動可能な距離の最大値が、ニードルの弁座から移動可能な距離の最大値より小さい例を示した。これに対し、他の実施形態では、可動部のハウジングに対する相対移動可能な距離の最大値は、ニードルの弁座から移動可能な距離の最大値以上であってもよい。
【0213】
また、上述の実施形態では、閉弁時における絞り流路の最小流路面積が、ニードルが弁座から最も離間する開弁時における弁座とニードルとの間の最小流路面積より小さい例を示した。これに対し、他の実施形態では、閉弁時における絞り流路の最小流路面積は、ニードルが弁座から最も離間する開弁時における弁座とニードルとの間の最小流路面積以上であってもよい。
【0214】
また、他の実施形態では、絞り部は、燃料噴射弁の内部に限らず、例えば燃料噴射弁に燃料を供給する配管等に設けられていてもよい。
【0215】
また、第1実施形態では、スプリング76のバネ力を7Nより小さくなるよう設定する例を示した。これに対し、他の実施形態では、スプリング76のバネ力を7N以上に設定してもよい。
【0216】
また、第1実施形態では、シート部72および絞り筒部71は、ばね座部74および規制部75よりも硬度が高い材料により形成される例を示した。これに対し、他の実施形態では、シート部72および絞り筒部71は、ばね座部74および規制部75よりも硬度が低い材料により形成されていてもよい。
【0217】
また、第1実施形態では、可動部73の可動底部732の外壁の面粗度は、シート721の面粗度より小さい例を示した。これに対し、他の実施形態では、可動部73の可動底部732の外壁の面粗度は、シート721の面粗度以上であってもよい。
【0218】
また、第1実施形態では、可動部73の可動底部732の外壁は、SR形状となるよう形成される例を示した。これに対し、他の実施形態では、可動部73の可動底部732の外壁は、例えばテーパ状等、SR形状以外の形状に形成されていてもよい。
【0219】
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0220】
1 燃料噴射弁、10 ノズル、13 噴孔、14 弁座、20 ハウジング、30 ニードル、70、80 絞り部、73、77、83 可動部、100 燃料流路、700、701、702、711、712、713、800、801、802 絞り流路
図1
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