(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】レーザービームをガイドする液体噴流を測定するための装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/146 20140101AFI20230627BHJP
G01N 21/47 20060101ALI20230627BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230627BHJP
【FI】
B23K26/146
G01N21/47 B
B23K26/00 M
(21)【出願番号】P 2020545865
(86)(22)【出願日】2018-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2018082044
(87)【国際公開番号】W WO2019101783
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-09-02
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506387498
【氏名又は名称】シノヴァ エスアー
【氏名又は名称原語表記】SYNOVA SA
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディボアン、ジェレミ
(72)【発明者】
【氏名】ヒッペルト、ダーヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ディール、ヘルギ
(72)【発明者】
【氏名】リヘルツハーゲン、ベルナルド
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288472(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010011580(DE,A1)
【文献】国際公開第2017/056257(WO,A1)
【文献】特開2016-128188(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0084091(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/146
G01N 21/47
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材を高光強度
のレーザービーム(101)により機械加工する装置(100)であって、
前記装置(100)は、
加圧液体噴流(102)を放出し、前記レーザービーム(101)を前記加圧液体噴流(102)中に入射ざせて前記加圧液体噴流(102)と結合させ、
前記
加圧液体噴流(102)中の前記レーザービーム(101)が発生する二次放射光(104)を受光して検出する検出ユニット(103)を有し、
前記検出ユニット(103)は、前記二次放射光(104)を検出信号(106)に変換する感知ユニット(105)を含み、
前記装置(100)は前記検出ユニット(103)に前記
加圧液体噴流(102)に沿う単一の位置でまたは複数の異なる位置で、複数の前記検出信号(106)を発生させ
、
前記装置(100)は、さらに、
前記感知ユニット(105)から受信した複数の前記検出信号(106)に基づいて、前記加圧液体噴流(102)の少なくとも一つの流れ特性を決める処理ユニット(300)を有する装置(100)。
【請求項2】
前記検出ユニット(103)はさらに前記受光した二次放射光(104)の少なくとも一部を分離して前記感知ユニットに入射させる波長分離ユニット(303)を含む請求項1に記載する装置(100)。
【請求項3】
前記波長分離ユニット(303)は光学フィルタ、プリズム、誘電体ミラー、回折格子または複数の絞りを有する光学部品構成部を含む請求項2に記載する装置(100)。
【請求項4】
前記検出ユニット(103)は静止しており、その静止位置から前記加圧液体噴流(102)に沿った所定の長さの部分(A)を観測し、前記装置(100)は前記静止位置にある前記検出ユニット(103)に
複数の前
記検出信号(106)を発生させる請求項1乃至3のいずれかに記載する装置(100)。
【請求項5】
前記感知ユニット(105)は電荷結合デバイスまたは空間的に配列された複数のフォトダイオード、複数のサーマルダイオードもしくは複数のアバランシェダイオードである請求項4に記載する装置(100)。
【請求項6】
前記検出ユニット(103)を前記
加圧液体噴流(102)に沿って動かす移動ユニット(201)をさらに有し、
前記検出ユニット(103)は前記感知ユニット(105)に向かって伝播する二次放射光(104)を入光させる観測ユニット(200)を含み、
前記装置(100)は前記検出ユニット(103)に前記
加圧液体噴流(102)に沿った複数の異なる位置で
複数の前
記検出信号(106)を発生させる請求項1乃至3のいずれかに記載する装置(100)。
【請求項7】
前記検出ユニット(103)は前記移動ユニット(201)によって前記
加圧液体噴流(102)に沿って動かされながら連続的にまたは繰り返し二次放射光(104)を検出し、それにより
複数の前
記検出信号(106)を発生する請求項6に記載する装置(100)。
【請求項8】
前記移動ユニット(201)は前記
加圧液体噴流(102)に沿った少なくとも第1基準位置(A
0)と第2基準位置(A
1)の間の所定の距離(A)にわたって前記検出ユニット(103)を動かす請求項6または7に記載する装置(100)。
【請求項9】
前記所定の距離(A)は0~25cmの間、好ましくは0~15cmの間である請求項8に記載する装置(100)。
【請求項10】
前記移動ユニット(201)は前記
加圧液体噴流(102)に沿って2mm未満好ましくは10μm~2mmという変位識別能によりステップ単位で前記検出ユニット(103)を動かす請求項6乃至9のいずれかに記載する装置(100)。
【請求項11】
前記観測ユニット(200)は開口(202)を画定する孔部またはテレセントリックレンズである請求項6乃
至9のいずれかに記載する装置(100)。
【請求項12】
前記観測ユニット(200)は開口(202)を画定する孔部またはテレセントリックレンズである請求項10に記載する装置(100)。
【請求項13】
前記
加圧液体噴流(102)に沿った前記検出ユニット(103)の光部位識別能が前記開口(202)のサイズと前記観測ユニット(200)と前記
加圧液体噴流(102)の間の距離によって定められ、
前記開口(202)のサイズと前記距離が、前記検出ユニット(103)の光部位識別能が前記移動ユニット(201)の変位識別能と同じか、または該変位識別能よりも高くなるように選択される請求
項12に記載される装置(100)。
【請求項14】
前記感知ユニット(105)はフォトダイオード、サーマルダイオードまたはアバランシェダイオードを含む請求項6乃
至13のいずれかに記載する装置(100)。
【請求項15】
前記検出ユニット(103)はさらに液体、湿度、塵さらにレーザービーム機械加工で生じる物が中に入らないように前記観測ユニット(200)を守る保護ユニット(301)をさらに含む請求項6乃
至14のいずれかに記載する装置(100)。
【請求項16】
前記保護ユニット(301)は前記検出ユニット(103)の少なくとも前記観測ユニット(200)の内部を陽圧にするユニットを含む請求
項15に記載する装置(100)。
【請求項17】
前記保護ユニット(301)は前記
加圧液体噴流(102)に向いている前記観測ユニット(200)を覆う透明窓を含む請求
項15また
は16に記載する装置(100)。
【請求項18】
移動可能な機械加工ユニット(503)をさらに有し、該機械加工ユニット(503)は前記加圧液体噴流(102)を放出し、前記レーザービーム(101)を前記加圧液体噴流(102)の中に入射させ、該レーザービーム(101)を前記
加圧液体噴流(102)に結合させ、
前記検出ユニット(103)は静止していて、前記感知ユニット(105)と該感知ユニット(105)に向かって伝播する二次放射光(104)を入光させる観測ユニット(200)とを含み、
前記装置(100)は、前記検出ユニット(103)に前記
加圧液体噴流(102)に沿った複数の異なる位置で
複数の前
記検出信号(106)を発生させるため、前記機械加工ユニット(503)を動かす請求項1乃至3のいずれかに記載する装置(100)。
【請求項19】
前記検出ユニット(103)は前記観測ユニット(200)と前記感知ユニット(105)の間に設けられた光学素子または光学組立部品(302)を少なくとも一つさらに含む請求項6乃
至18のいずれかに記載する装置(100)。
【請求項20】
前記二次放射光(104)は前記
加圧液体噴流(102)中のレーザービーム(101)の非弾性散乱および/または蛍光によって発生する電磁放射光である請求項1また
は19に記載する装置(100)。
【請求項21】
前記二次放射光(104)は前記
加圧液体噴流(102)中で散乱したレーザー光である請求項1また
は20に記載する装置(100)。
【請求項22】
前記処理ユニット(300)は、さらに、前記感知ユニット(105)から受信した
複数の前
記検出信号(106)に基づいて前記
加圧液体噴流(102)の長さを決め
る請求項1乃
至21のいずれかに記載する装置(100)。
【請求項23】
前記処理ユニット(300)は、さらに、前記感知ユニット(105)から受信した
複数の前
記検出信号(106)に基づいて前記
加圧液体噴流
(102)の中に入射して前記
加圧液体噴流(102)と結合するレーザービーム(101)のパワ
ーを決め
る請求項1乃
至22のいずれかに記載する装置(100)。
【請求項24】
被加工材を機械加工する高光強度
のレーザービーム(101)をガイドする加圧液体噴流(102)を測定する方法(700)であって、
前記
加圧液体噴流(102)を放出して(701)前記レーザービーム(101)を前記
加圧液体噴流(102)の中に入射させて前記
加圧液体噴流(102)と結合させるステップと、
検出ユニット(103)が前記
加圧液体噴流(102)中の前記レーザービーム(101)が発生する二次放射光(104)を受光して検出する(702)ステップであって、この二次放射光の検出(702)では感知ユニット(105)が前記二次放射光(104)を検出信号(106)に変換する(702a)ことが含まれるステップ(702)と
、
前記検出ユニット(103)が前記
加圧液体噴流
(102)に沿った単一の位置でまたは複数の異なる位置で、複数の検出信号(106)を発生する(703)ステップ
と、
前記複数の検出信号(106)に基づいて、処理ユニット(300)が前記加圧液体噴流(102)の少なくとも一つの流れ特性を決めるステップと、を含む方法(700)。
【請求項25】
前記
加圧液体噴流(102)に沿った複数の異なる位置で前記複数の検出信号(106)を発生させるため、前記
加圧液体噴流(102)に沿って前記検出ユニット(103)を動かすことをさらに含む請求
項24に記載する方法(700)。
【請求項26】
処理ユニット(300)が第1基準値(601)を定め
るステップと、
前記検出ユニット(103)が前記
加圧液体噴流(102)に沿った第1位置で第1検出信号(106)を発
生させるステップと、
前記処理ユニット(300)が前記第1検出信号(106)を前記第1基準値(601)と比
較するステップと、
もしも前記第1検出信号(106)が前記第1基準値(601)よりも小さいときは、警告を発する、および/または前記方法(700)を中断させる
ステップと、をさらに含む請求
項25に記載する方法(700)。
【請求項27】
前記処理ユニット(300)が第2基準値および/または第3基準値を定め
るステップと、
前記検出ユニット(103)が前記
加圧液体噴流(102)に沿った別の位置で別の検出信号(106)を発
生させるステップと、
前記処理ユニット(300)が、前記別の検出信号(106)を前記第1検出信号(106)と前記第2基準値との第1の積と比較し、および/または前記別の検出信号(106)を前記第1検出信号(106)と前記第3基準値との第2の積と比
較するステップと、
もしも前記別の検出信号(106)が前記第1の積よりも小さいか、または前記第2の積よりも大きい場合、前記第1位置と前記別の位置の間の距離に基づいて前記
加圧液体噴流(102)の長さを決め
るステップと、
もしも前記別の検出信号(106)が前記第1の積と等しいか、前記第1の積よりも大きい場合、および/または前記別の検出信号(106)が前記第2の積と等しいか、前記第2の積よりも小さい場合、前記検出信号
を発生
させるステップと前記比較
するステップを繰り返す
ステップと、をさらに含む請求
項26に記載する方法(700)。
【請求項28】
前記第2基準値が5~95%の間、好ましくは20~80%の間であり、さらに/または前記第3基準値が105~300%の間、好ましくは140~260%の間である請求
項27に記載する方法(700)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は加圧液体噴流の中に入射して同加圧液体噴流と結合する高光強度のレーザービームを用いて被加工材を機械加工するための装置に関する。本願発明の装置は、特に前記レーザービームをガイドする液体噴流を測定するものである。また本願発明は高光強度レーザービームをガイドする液体噴流を測定するものであり、このレーザービームは被加工材を機械加工するのに適している。本願発明は具体的にはレーザー誘起二次発光に基づき前記液体噴流の長さおよび/または流れの特性を測定することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
加圧液体噴流の中に入射して同加圧液体噴流に結合するレーザービームを用いて被加工材を機械加工する従来技術の装置が知られている。前記レーザービームにより被加工材を機械加工するためには、前記液体噴流は通常液体噴流発生ノズルを用いて発生させ、前記レーザービームは前記液体噴流の中に入射して同液体噴流と結合し、同液体噴流中で全反射することによってガイドされて被加工材に当てられる。
【0003】
この従来技術の装置では、前記液体噴流が層流であるのは液体噴流発生ノズルから所定の無条件な長さまでの範囲のみであるという問題が生じる。この所定の長さを超えると、この液体は不安定になり、最後には不連続になって液滴状になる。一旦、前記液体噴流が不安定になると、この液体では被加工材を効率的に機械加工できるようにレーザービームをガイドできない。この液体が散りじりになって液滴状になると、レーザービームが散乱してしまう。
【0004】
本明細書では、「液体噴流」という語は層流の液体噴流を意味していることは注目すべき点である。液体が不安定になった後でも、散りじりになって液滴状になる前はその液体は連続した液体流のままで進行する。さらに、「使用可能な」前記液体噴流の長さは「無条件な」前記液体噴流の長さよりも短くなる。装置から放出された後の自由に流れる液体噴流のみが被加工材の機械加工に使用できるからである。
【0005】
したがって、機械加工工程を効率的にするためには、被加工材に液体噴流の使用可能な部分が当たるように、被加工材が装置に十分近い位置に配置されなければならない。
【0006】
使用可能な液体噴流の長さが極めて短いと、効率的な機械加工ができなくなる恐れがある。さらに、非常に短い液体噴流、または液体噴流が完全に無いことは、装置に重大な問題があること、例えば液体噴流発生ノズルの破損のような問題があることを示している可能性がある。
【0007】
加えて、液体噴流の流れの特性も被加工材の機械加工工程の効率に影響する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した問題に鑑み、使用可能な液体噴流の長さを決めることは、実際に被加工材を機械加工する前に大きく役立つものである。さらに、例えば液体噴流の層流としての性質や液体噴流中の攪乱のような液体噴流の流れの特性を決めることができれば、さらに役立つものである。残念ながら、従来技術の装置は使用可能な液体噴流の長さを測定できるようにはなっていない。外部の測定デバイスを用いることは可能であるが、外部の測定デバイスはこのような特定の測定用に、すなわち極細液体噴流(15~500μm)に入射させて、その極細液体噴流と結合させた高光強度レーザービームの測定用にできていないので、通常効率的ではない。
【0009】
そのため、本願発明は従来装置および液体噴流測定方法を改良することを目標としている。したがって、被加工材を機械加工するに適した高光強度レーザービームをガイドする液体噴流を測定するための装置および方法を提供するのが本願発明の目的である。具体的に、液体噴流の長さを測定しなければならない。さらに、液体噴流の流れの特性を求めなければならない。本願発明のもう一つの目標は、レーザービームによって液体噴流の中に注入されたレーザーパワーを簡単に測定することを可能にすることである。
【0010】
したがって、本願発明は前記した測定を簡単で、精度が高くでしかも非接触で実行するための方法を具体的にめざすものである。特に、複雑な構成の測定装置は必要とするものではいけないし、測定結果の後処理に長時間を要したり、多くの計算資源を必要とするものではいけない。また、すべての測定は装置自体で実行可能であり、装置が小型であることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の目的は、添付した特許請求の範囲の独立請求項中で与えられる方法によって達成される。本願発明の有利な実施の態様は従属請求項により示される。
【0012】
具体的には、本願発明は、レーザー誘起二次放射光、すなわちレーザービームの液体噴流との相互作用によって発生する二次電磁放射光に基づいて、使用可能な液体噴流の長さ、および/または無条件な液体噴流の長さを決定し、さらにオプションになるが液体噴流の流れの特性を検出する方法を提案するものである。
【0013】
本願発明の第1の特徴は、高光強度レーザービームを用いて被加工材を機械加工する装置を与えるものであり、前記装置は加圧液体噴流を放出し、前記レーザービームを前記加圧液体噴流の中に入射させて前記加圧液体噴流と結合させ、前記装置は前記加圧液体噴流中の前記レーザービームが発生する二次放射光を受光して検出する検出ユニットを有し、前記検出ユニットは二次放射光を検出信号に変換する感知ユニットを有し、前記装置は前記加圧液体噴流に沿った単一の位置でまたは複数の位置で前記検出ユニットに複数の検出信号を発生させる。
【0014】
「高光強度」レーザーとは、被加工材を機械加工するのに適したレーザービームであり、加工される被加工材は、例えば金属、セラミックス、ダイアモンド、半導体、合金、超合金または超硬材料を含む材料でできているものでよい。したがって、被加工材を「機械加工する」とは、被加工材を少なくとも切断する、穿孔する、または成形するという意味である。高光強度レーザービームは20~400Wの間またはそれより高いレーザーパワーを有するものでる。レーザービームはパルスレーザービームでもよいし、連続するレーザービームにすることもできる。「加圧液体噴流」の圧力は50~800barであることが好ましい。
【0015】
液体噴流の「長さ」は液体噴流が装置から放出される位置からの使用可能な液体噴流の長さ、または液体噴流が発生する位置からの無条件な液体噴流の長さとしてよい。装置の構成はわかっているので、使用可能な液体噴流の長さがわかれば、無条件な液体噴流の長さが決まるし、その逆も成り立つ。
【0016】
「加圧液体噴流に沿って」は前記加圧液体噴流が進行する方向に沿って、または加圧液体噴流が発生したときに、その加圧液体噴流が進行する方向(すなわち、進行すると見込まれる方向)に沿ってという意味である。前記加圧液体噴流の(見込まれる)進行する方向は前記装置の構成によって、特に前記加圧液体噴流を発生させる部分、例えば液体噴流発生ノズルの構成と向きによって十分に決まっている。発生する加圧液体噴流は十分に加圧されて真っ直ぐに進むので、前記加圧液体噴流が進む方向はその安定な部分の長さを超えて延びていく。したがって、前記加圧液体噴流に沿った1点以上の位置で液体噴流がない場合は、前記加圧液体噴流に沿った別の異なる位置を選ぶことができる。
【0017】
前記検出ユニットが単一の位置から複数の検出信号を発生させるためには、前記装置の前記加圧液体噴流を発生する部品から、例えば液体噴流発生ノズルに対して前記検出ユニットが動かない状態でいればよい。発生した複数の検出信号のそれぞれは、前記加圧液体噴流の所定の位置から受光し、その結果所定の入射角で前記感知ユニットに入射した二次放射光を明確にできる。前記感知ユニットはこの入射角を考慮して前記静止位置からの複数の検出信号を発生することができる。
【0018】
前記加圧液体噴流に沿った複数の異なる位置から複数の検出信号を発生させるため、前記検出ユニットは前記加圧液体噴流に沿って前記装置の前記加圧液体噴流を発生させる部分、例えば加圧液体噴流発生ノズルに対して移動可能にしてよい。
【0019】
検出ユニットが配置されるのは、加圧液体噴流中のレーザービームによって誘起され、同加圧液体噴流から離れていくあらゆる方向に伝播する二次電磁放射光の少なくとも一部を感知ユニットが検出できるような位置が好ましい。レーザー誘起二次放射光の一部は伝播して他の場所に行き、検出ユニットの中には入射しないことは注目すべき点である。
【0020】
前記検出ユニットが受光する二次放射光は、前記加圧液体噴流に沿った所定の位置で層流の液体噴流が存在するか否かについての正確な指標を与える。特に、前記感知ユニットが発生する信号は、液体噴流に沿った所定の位置で層流の液体噴流が存在するか否かに依存する特徴的な性質を示す。事実、好ましいことに二次放射光はこのような液体噴流中のみで発生するが、連続した液体の流れの中でも、また液滴中でも発生しない。したがって、二次放射光を用いて使用可能な液体噴流の長さを正確に決めることができる。加えて、二次放射光によって前記加圧液体噴流の流れの特性を正確に決めることができる。
【0021】
前記加圧液体噴流の長さ、およびオプションで前記加圧液体噴流の流れの特性についての指標を与えることができる二次放射光は、被加工材を機械加工する装置に必然的に用いられる高光強度レーザービームを使用する場合のみ発生することは注目すべき点である。同高光強度レーザービームは被加工材を機械加工する装置で必ず用いられる。例えば、従来技術のレーザーポインターデバイスは加圧液体噴流中でも二次放射光を発生しない。
【0022】
二次放射光を用いて加圧液体噴流を測定するという考えが、特に簡単で精度の高い解決法につながっている。さらに、前記装置のすべての部品を集積化できるのは好都合であり、前記装置は小型にすることができる。前記装置は前記した測定を同装置だけで行うことができ、すなわち外部機器を必要しないで行うことができる。
【0023】
前記装置の一つの好ましい実施の態様では、前記検出ユニットはさらに受光した二次放射光の少なくとも一部を分離して感知ユニットに入射させる波長分離ユニットを含む。
【0024】
このようにして、二次放射光の少なくとも一部であるか、または二次放射光の少なくとも一部を含む対象とする放射光を、不要な放射光と分離できる。この不要な放射光はもしも前記波長分離ユニットがなければ、前記感知ユニットに入射できてしてしまうものである。特に、前記波長分離ユニットは、前記加圧液体噴流から離れる方向に伝播する前記二次放射光を含む放射光を受光するように配置されており、受光した放射光から対象とする前記二次放射光を分離し、この対象とする前記二次放射光を感知ユニットに供給する。波長分離ユニットは、したがって不要な放射光が前記感知ユニットに入射するのを防ぐ。そのような不要な放射光は周囲環境光、レーザー光や対象としないレーザー誘起二次(もしくは任意の高次の)放射光である。前記波長分離ユニットを用いる場合、前記検知信号はより正確に対象とする放射光を反映したものとなり、そのため加圧液体噴流が存在するか否か、またどこに(すなわち、どの位置に)加圧液体噴流が存在するかについてのより一層精度の高い指標となる。
【0025】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記波長分離ユニットは光学フィルタ、プリズム、誘電体ミラー、回折格子または複数の絞りを有する光学部品構成部を含む。
【0026】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記検出ユニットは静止しており、その静止位置から前記加圧液体噴流の全長のうちの所定の長さの部分を観測し、前記装置は前記静止位置にある前記検出ユニットに複数の検出信号を発生させる。
【0027】
この特別な実施の態様によれば、前記装置の前記加圧液体噴流を発生させる部品と前記検出ユニットを互いに相対的に動かすことなく前記加圧液体噴流を測定できる。この態様によれば、前記装置の構成を簡単にできる。前記加圧液体噴流から大きな範囲の入射角で入射してくる放射光を受光できるように前記検出ユニットの開口は大きく、または無制限でもよい。したがって、前記検出ユニットは前記加圧液体噴流の全長の少なくとも所定の長さの部分を、好ましくは理想的な液体噴流の全長(すなわち前記加圧液体噴流の最大可能長さ)を観測できる。
【0028】
前記検出ユニットは例えば複数の異なる位置に、好ましくは前記加圧液体噴流に沿って並んだ複数の異なる位置に配置された複数の感知素子によって、複数の検出信号を発生することができる。これらの複数の検出信号は、前記加圧液体噴流に沿った位置のどこで二次放射光が発生したかについての指標になる。その結果、前記加圧液体噴流の長さを高精度で決めることができる。
【0029】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記検出ユニットは電荷結合デバイスまたは空間的に配列された複数のフォトダイオード、複数のサーマルダイオードもしくは複数のアバランシェダイオード(または任意の適切な光検知器)である。
【0030】
そのようなダイオードを複数個空間的に配置することにより、複数の検出信号を発生させることができる。例えば、ダイオードごとに一つの検出信号が発生するものでよく、この一つの検出信号が前記液体噴流の全長の間で、具体的には前記感知ユニットが観測できる前記液体噴流の全長の間の所定の長さの部分で発生する前記二次放射光についての指標を与えるものでよい。この実施の態様の前記感知ユニットは静止した検知ユニットの場合に有利である。
【0031】
前記装置の別の実施の態様では、前記装置はさらに前記検出ユニットを前記液体噴流に沿って移動させる移動ユニットを有し、前記検出ユニットは前記感知ユニットに向かって伝播させる内部に二次放射光を入光させる観測ユニットを含み、前記装置は前記液体噴流に沿った複数の異なる位置で前記検出ユニットに複数の検出信号を発生させる。
【0032】
この具体的な実施の態様によれば、前記液体噴流を発生させる前記装置の部品と前記検出装置を互いに相対的に検出ユニットを動かしながら、すなわち前記検出ユニットを動かしながら前記液体噴流を測定することが可能になる。注目すべき点は、前記検出ユニットを前記液体噴流に沿って移動させることができるということは、その移動する方向が、前記液体噴流が進行する方向と平行であることを意味しないことである。前記検出ユニットが動く方向は前記液体噴流が放流される方向に対して角度をつけることもできる。前記検出ユニットの移動方向は真っ直ぐである必要はないのである。これは前記液体噴流にいかなる角度の変位があっても簡単に、例えば複数の検出信号を信号処理することによって訂正できるからである。
【0033】
もちろん、前記検出ユニットの進行方向は前記液体噴流の進行方向と平行にすることもできる。再び述べるが、前記したように前記検出ユニットの移動方向は液体噴流の存在に依存するものではなく、存在することが必要なわけでもなく、前記装置の構成によって決まるものである。
【0034】
前記移動ユニットは前記液体噴流に沿った異なる各位置で一つの検出信号を発生させる。しかし、前記液体噴流に沿った一つの同じ位置で複数の検出信号を発生させることも可能である。
【0035】
前記観測ユニットは、前記液体噴流に沿った放射光の感知による部位識別能を向上させるため前記検出ユニットの開口を制限するのが好ましい。このようにすれば検出信号が前記液体噴流に沿った所定の位置での前記液体噴流中で発生する前記二次放射光をより精度よく反映することになる。
【0036】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記検出ユニットは前記移動ユニットによって前記液体噴流に沿って動かされながら、連続的にまたは繰り返し二次放射光を検出し、それにより前記複数の検出信号を発生する。
【0037】
このようにして、前記液体噴流の、すなわち前記液体噴流に沿って前記液体噴流中で発生する前記二次放射光の測定を高精度行うことができる。
【0038】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記移動ユニットは前記液体噴流に沿った少なくとも第1基準位置と第2基準位置の間の所定の距離にわたって前記検出ユニットを動かす。
【0039】
前記所定の距離は被加工材を効率的に機械加工するのに必要な液体噴流の長さと少なくとも同じ長さでなければいけない。前記第1基準位置は前記液体噴流を発生して、さらに/または前記液体噴流を放出する前記装置の部品とできるだけ近いことが好ましい。最も好ましいのは、前記第1基準位置を前記液体噴流が発生する前記装置の部品である液体放出口またはノズルの位置とすることである。
【0040】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記所定の距離は0~25cmの間、好ましくは0~15cmの間である。
【0041】
このような距離にすれば、理想的な液体噴流の長さよりも長い、十分に長い測定範囲での測定が可能になる。
【0042】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記移動ユニットは前記液体噴流に沿って2mm未満好ましくは10μm~2mmという変位識別能によりステップ単位で前記検出ユニットを動かす。
【0043】
このようにすれば、前記液体噴流の、すなわち前記液体噴流に沿って発生する前記二次放射光についての極めて精度が高く、しかも部位識別能が高い測定が可能になる。
【0044】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記観測ユニットは開口を画定する孔部またはテレセントリックレンズである。
【0045】
孔部は、例えば前記液体噴流の進行方向に直角に延設されることが好ましいスロットとして実現される。すなわち、もしも前記液体噴流が鉛直方向に平行に進行する場合は、この孔部は水平方向のスロットになる。(制限された)開口は前記液体噴流の全長の間で発生する二次放射光による測定の部位識別能を向上させる。
【0046】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記液体噴流に沿った前記検出ユニットの光部位識別能が前記開口のサイズと前記観測ユニットと前記液体噴流の間の距離によって定められ、前記開口のサイズと前記距離は前記検出ユニットの光部位識別能が前記移動ユニットの変位識別能と同じか、またはそれよりも高くなるように選択される。
【0047】
そのようにすれば、前記液体噴流の全長の間の測定の精度は前記光部位識別能によって制限されず、同測定を、例えば前記した2mm未満の変位識別能を有する高精度の直線方向移動ユニットを用いて極めて正確に行える。
【0048】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記感知ユニットはフォトダイオード、サーマルダイオードまたはアバランシェダイオード(または他の任意の適した光検出器)を含む。
【0049】
したがって、前記検出ユニットを実現するために、単純でどちらかというと廉価な部品を前記感知ユニットに用いることができる。この実施の態様の前記感知ユニットは移動可能な検知ユニットに有利である。
【0050】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記検出ユニットはさらに液体、湿度、塵さらにレーザービーム機械加工で生じる物が中に入らないように前記観測ユニットを守る保護ユニットを含む。
【0051】
したがって、前記検出ユニットの寿命が増大し、前記検出ユニットは頻繁にきれいにする必要がなく、より信頼できる測定をすることができる。
【0052】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記保護ユニットは前記検出ユニットの少なくとも前記観測ユニットの内部を陽圧にするユニットを含む。
【0053】
内部を陽圧にすることで、不要な機械加工で生じる物および/または液体が前記観測ユニットの中に入るのを防ぐ。万一、不要な物や液体が入ったとしても、このユニットが作り出す陽圧によって前記観測ユニットから放出される。
【0054】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記保護ユニットは前記液体噴流に向いている前記観測ユニットを覆う透明窓を含む。
【0055】
注目すべき点は、この透明窓は少なくとも感知対象の二次放射光を透過させる。この透明窓は入ってくるすべての放射光を透過させなくてもよく、その場合さらに波長分離ユニット(前記したものと同様)として働く。この透明窓はフラップを少なくとも一つ備え、このフラップを開いたり、閉じたりして前記検出ユニットへのアクセスを選択的に可能にするのが好ましい。
【0056】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記装置はさらに移動可能な機械加工ユニットを有し、該機械加工ユニットはレーザービームを前記液体噴流の中に入射させ、該レーザービームを前記液体噴流に結合させ、前記検出ユニットは静止していて、前記感知ユニットと該感知ユニットに向かって伝播する二次放射光を入光させる観測ユニットを含み、前記装置は、前記検出ユニットに前記液体噴流に沿った複数の異なる位置で複数の検出信号を発生させるため、前記機械加工ユニットを動かす。
【0057】
この具体的な実施の態様によれば、前記検出ユニットと液体噴流を発生させる前記装置の部品を互いに相対的に動かしながら、すなわち前記装置の部品、例えば前記液体噴流発生ノズルまたは該ノズルを含む機械加工ユニットを動かしながら前記液体噴流を測定することができる。さもなければ、この実施の態様は前記した移動可能な検出ユニットを有する具体的な実施の態様と同様に働く。もちろん、前記検出ユニットと前記機械加工ユニットの部品の両方を動かすことも可能である。
【0058】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記検出ユニットはさらに前記観測ユニットと前記感知ユニットの間に設けられた光学素子または光学組立部品を少なくとも一つ含む。
【0059】
この素子または組立部品を用いて入光する二次放射光の形を変え、またはその向きを変えることができる。例えば、前記観測ユニットの開口が前記検出ユニットの光部位識別能を上げるために比較的小さければ、前記素子または前記組立部品は入光した放射光を分光して波長分離ユニットまたは前記感知ユニットに入射させることができる。代わりに、前記素子または前記組立部品は入光した放射光を、必要な場合、合焦させることができる。したがって、前記検出ユニットの測定効率および測定性能をさらに上げることができる。
【0060】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、二次放射光は前記液体噴流中のレーザービームの非弾性散乱および/または蛍光によって発生する電磁放射光である。
【0061】
非弾性散乱は前記液体噴流中でのレーザービームの特にラマン散乱であり、前記液体噴流を測定するのに好ましいレーザー誘起二次放射光である。
【0062】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記二次放射光は前記液体噴流中で散乱したレーザー光である。
【0063】
もしも液体噴流が不完全なために液体噴流内部での全反射の条件が満たされない場合、レーザー光の散乱がおこりうる。したがって、内部反射が可能な前記液体噴流の長さの指標がこの二次放射光によって与えられる。
【0064】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記装置は前記感知ユニットから受信した複数の検出信号に基づいて前記液体噴流の長さを決める処理ユニットをさらに有する。
【0065】
この処理ユニットは発生した検出信号を処理することができ、二次放射光が前記液体噴流に沿ったどこで(すなわち、どの(複数の)位置で)発生したかを判断でき、さらに二次放射光の量(すなわち、強度)も判断できるのが好ましい。このような情報から、前記処理ユニットは高精度で液体噴流長さ、具体的には使用可能な液体噴流長さを決めることができる。前記処理ユニットはさらに得られた情報を用いて前記装置の他のデバイスに命令して特有な動作をさせるものでよい。例えば、液体噴流がない場合、前記処理ユニットはレーザービームを発生するレーザーユニットを制御して停止させる。また、もしも、前記液体噴流の長さが十分でない場合、前記加圧液体噴流を発生させるために放出される液体の圧力を調整することができる。さらに、前記処理ユニットは作業者に信号を送ることもできる。
【0066】
前記装置の別の好ましい実施の態様では、前記装置は前記感知ユニットから受信した複数の検出信号に基づいて前記液体噴流の中に入射して前記液体噴流と結合するレーザービームのパワーおよび/または前記液体噴流の少なくとも一つの流れの特性を決める処理ユニットをさらに有する。
【0067】
前記液体噴流に沿った二次放射光の量と分布によって、前記液体噴流の中に入射したレーザービームによって前記液体噴流の中に入射して前記液体噴流と結合したレーザーパワーについての情報が与えられる。通常、レーザービーム発生用のレーザーユニットが供給する公称レーザーパワーのすべてが必ずしも前記液体噴流の中に注入されて前記液体噴流と結合するわけではない。しかし、公称レーザーパワーのうちのどの程度が前記液体噴流中をガイドされて被加工材上に当たるのかを測定することは、効率的な機械加工をするのに役立つ。普通は、このような測定は外部のパワー測定器等を用いて行われる。それと比べれば、二次放射光を測定し、さらに測定した二次放射光から前記液体噴流中のレーザーパワーを判定することはより迅速かつより効率的である。
【0068】
二次放射光はさらに前記液体噴流の流れの特性に依存する特徴的な性質を示すものでよい。例えば、前記液体噴流が攪乱されなければされないほど、二次放射光は前記液体噴流に沿ってより均一に発生する。したがって、二次放射光を検出することは、前記液体噴流の長さの測定に役立つ手段となるだけではなく前記液体噴流内の流れの特性を推定するのに役立つ手段にもなる。
【0069】
本願発明の第2の特徴は、被加工材を機械加工する高光強度レーザービームをガイドする加圧液体噴流を測定する方法を与えるものであり、この方法は前記液体噴流を放出して前記レーザービームを前記液体噴流の中に入射させて前記液体噴流と結合させるステップと、検出ユニットによって前記液体噴流中の前記レーザービームが発生する二次放射光を受光して検出するステップであって、前記二次放射光の検出は感知ユニットによって前記二次放射光を検出信号に変換することを含むステップと、さらに前記検出ユニットが前記前記液体噴流に沿った単一の位置でまたは複数の異なる位置で、複数の検出信号を発生するステップを含む。
この第2の特徴の方法によれば、前記した第1の特徴の装置によって得られるのと同じ好都合な点と効果を得ることができる。
【0070】
注目すべき点は、所定のユニット「によって」行われる方法のステップとは、具体的には該方法のステップをそのユニット「が」行うという意味である。
【0071】
前記方法の好ましい実施の態様では、前記方法が前記液体噴流に沿った複数の異なる位置で複数の検出信号を発生させるため前記液体噴流に沿って前記検出ユニットを動かすことをさらに含む。
【0072】
したがって、この実施の態様には移動可能な検出ユニットを有する前記装置について説明したのと同じ好都合な点がある。前記装置の場合、もちろん前記方法の場合でも、代わりに前記液体噴流を動かすことによって、すなわち前記液体噴流を発生する部品を動かすことによって前記検出ユニットを相対的に動かすことも可能である。
【0073】
前記方法の別の好ましい実施の態様では、前記方法は処理ユニットが第1基準値を定め、前記検出ユニットが前記液体噴流に沿った第1位置で第1検出信号を発生し、前記処理ユニットが前記第1検出信号を前記第1基準値と比較し、もしも前記第1検出信号が前記第1基準値よりも小さいときは、警告を発する、および/または前記方法を中断させることをさらに含む。
【0074】
前記第1位置は基準位置であること、すなわち前記液体噴流が発生する位置までの距離がわかっている位置であることが好ましい。前記第1位置は前記第1基準位置と一致することが好ましい。したがって前記第1基準値は緊急事態の警告または緊急停止として用いられる。前記液体噴流を放流するための放出口または放出ノズルにできるだけ近い位置から得るのが好ましい前記第1検出信号は例えば液体噴流発生ノズルの破損といった、一つ問題および/またはいくつかの問題の指標として使うことができる。このような問題がおきた場合、前記液体噴流は使用可能な長さがまったくないことになる。注目すべき点は、前記液体噴流に沿った複数の異なる位置で複数の検出信号を得る複数の実施の態様の前記装置は、この実施の態様の方法を行うことができることである。
【0075】
前記方法の別の好ましい実施の態様では、前記方法は前記処理ユニットが第2基準値および/または第3基準値を定め、前記検出ユニットが前記液体噴流に沿った別の位置で別の検出信号を発生し、前記処理ユニットが、前記別の検出信号を前記第1検出信号と前記第2基準値との第1の積と比較し、および/または前記別の検出信号を前記第1検出信号と前記第3基準値との第2の積と比較し、もしも前記別の検出信号が前記第1の積よりも小さいか、または前記第2の信号よりも大きい場合、前記第1位置と前記別の位置の間の距離に基づいて前記液体噴流の長さを決め、もしも前記別の検出信号が前記第1の積と等しいか、それよりも大きい場合、および/または前記別の検出信号が前記第2の積と等しいか、それよりも小さい場合、前記検出信号発生のステップと前記比較のステップを繰り返すことをさらに含む。
【0076】
もしも前記別の検出信号が前記第1の積よりも小さいか、または前記第2の積よりも大きいときは、前記液体噴流が、前記液体噴流の始点から、例えば前記液体噴流発生ノズルから前記別の位置までの距離よりも長くなることはない。前記第1の位置は、例えば前記液体噴流の始点までの距離がわかっている前記した第1基準位置と一致する既知の位置であるから、使用可能な液体噴流の長さを決めることができる。この手順によれば、前記第2基準値および/または前記第3基準値を用いることによって、使用可能な液体噴流の長さの正確な長さ測定が具体的に可能になる。この測定および測定結果の処理は簡単にかつ迅速にできる。注目すべき点は、前記液体噴流に沿った複数の異なる位置で複数の検出信号を得る複数の実施の態様の前記装置は、この実施の態様の方法を行うことができることである。
【0077】
前記方法の別の好ましい実施の態様では、前記第2基準値は5~95%の間であり、好ましくは20~80%の間であり、さらに/または前記第3基準値は105~300%の間であり、好ましくは140~260%の間である。
これらの最適化された基準値が確実で精度の高い測定を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
本願発明の前記した特徴および好ましい実施態様は、添付した図面に関連する以下の具体的な実施形態の記載によって説明される。
【
図1】
図1は本願発明の実施形態にかかる装置を示す。
【
図2】
図2は本願発明の実施形態にかかる装置を示す。
【
図3】
図3は本願発明の実施形態にかかる装置を示す。
【
図4】
図4は本願発明の実施形態にかかる装置を示す。
【
図5】
図5は本願発明の実施形態にかかる装置を示す。
【
図6】
図6は本願発明の実施形態にかかる装置を示す。
【
図7】
図7は本願発明の実施形態にかかる方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図1は本願発明の実施形態にかかる装置100を示す。装置100は液体噴流102の中に入射して加圧液体噴流102と結合する高光強度レーザービーム101を用いて被加工材を機械加工する。この目的のために、装置100は液体噴流102を放出し、レーザービーム101を液体噴流102の中に入射させてレーザービーム101を液体噴流102と結合させる。レーザービーム101はパルスレーザーでもよいし、連続レーザーでもよい。機械加工工程の間、被加工材は機械加工面上に配置される。この機械加工面は装置100の一部でもよいし、一部でなくてもよい。いずれの場合でも、機械加工面上にある被加工材を機械加工できるように装置100はできている。そのため装置100は3次元までの機械加工面の動きを制御できる。
【0080】
しかし、本願発明の装置100は特にレーザービーム101をガイドする液体噴流102を測定することができる。したがって、この目的のために必要な部品が
図1中に示されている。特に、装置100は感知ユニット105を含む検出ユニット103を有する。
【0081】
検出ユニット103は液体噴流102中のレーザービーム101から発生する二次放射光104を受光し検出する。レーザービーム101は液体噴流102の液体と相互作用することにより、二次放射光104を誘起する。都合のよいことにこの二次放射光104は層流になっている液体噴流102中でのみ誘起され、不安定な液体流の中や液滴中では誘起されない。すなわち、二次放射光104は液体噴流102の全長にわたって発生する。
図1中で示すように、発生した二次放射光104はあらゆる方向に伝播して液体噴流102から離れていく。したがって、検出ユニット103は液体噴流102中で発生したすべての二次放射光104の少なくとも一部を検出できる。
【0082】
感知ユニット105は二次放射光104を検出信号106に変換する。変換される二次放射光104は検出ユニット103が受光するすべての二次放射光104としてもよいし、受光した二次放射光104の一部としてもよい。検出信号106は電気信号であることが好ましい。例えば感知ユニット105が二次放射光104を受光すると必ず感知ユニット105は複数の検出信号106を発生することができる。レーザービーム101がパルスの場合、このことがおきる。感知ユニット105はこの場合、各々のレーザーパルスによって発生する二次放射光104を少なくとも一つの検出信号106に変換する。しかし、感知ユニット105は所定の時間間隔ごとに複数の検出信号106を発生できるものでもよい。すなわち、レーザービーム101がパルスではなく連続光の場合であっても、感知ユニット105は継続的に二次放射光104を受光し、受光した二次放射光104を複数の検出信号106に変換できる。この場合、複数の検出信号106の各検出信号106は異なる時点におけるものでよい。また、感知ユニット105は、感知ユニット105が有する複数の感知素子を用いて複数の検出信号106を同時に発生させることもできる。この場合、各感知素子が二次放射光104を検出信号106に変換できるものである。
【0083】
装置100は具体的に液体噴流102に沿った単一の位置でまたは複数の異なる位置で検出ユニット103が複数の検出信号106を発生する。すなわち、検出ユニット103は液体噴流102に対して相対的に動くことができるものでよく、感知ユニット105は少なくとも一つの検出信号106を所定の時間間隔ごとに、および/または各ステップの動きの後で発生するものでよい。また、検出ユニット103は液体噴流102に対して静止していて、感知ユニット105が所定の時間間隔ごとに、および/または複数の感知素子により同時に、複数の検出信号106を発生するものでもよい。
【0084】
それぞれの場合において、二次放射光104から得られる複数の検出信号106は使用可能な液体噴流102の長さの指標となり、さらに液体噴流102の流れの特性を与えることができる。
【0085】
図2は本願発明の実施形態にかかる装置100を示し、この装置100は
図1中の装置100を発展させたものである。
図2と
図1中の同一の要素は同じ符号が付され、同様な機能を有する。したがって、
図2の装置100もレーザービーム101をガイドする液体噴流102から来る二次放射光104を受光し、検出する検出ユニット103を有する。特に装置100も受光した二次放射光104を複数の検出信号106に変換する感知ユニット105を有する。
【0086】
図2中の装置100はさらに移動ユニット201を含み、移動ユニット201は検出ユニット103を液体噴流102に沿って動かす。特に、移動ユニット201は検出ユニット103を少なくとも所定の距離A、好ましくは第1基準位置A
0と第2基準位置A
1の間、液体噴流102に沿って動かす。所定の距離Aは0~25cmであることが好ましく、0~15cmであることがさらに好ましい。所定の距離Aは液体噴流102の伝播方向の距離である。液体噴流102が無くても、移動ユニット201が検出ユニット103を所定の距離Aの間動かすことは注目すべき点である。
【0087】
移動ユニット201により決まる移動方向は
図2中に示されており、所定の距離A、すなわち液体噴流102の伝播方向と平行であることが概略的に示されている。しかし、このように方向を平行に合わせることは実際に実施する場合に可能であるが、必要なわけではない。装置100を使用するときの液体噴流102の伝播方向は鉛直方向に平行であり、少なくとも水平に動かすことができる被加工材に向けて液体噴流102が当てられることが多いことは注目すべき点である。しかし、液体噴流102は加圧されるので、鉛直方向に対して所定の角度で進行させることができるし、水平方向に沿ってほとんど曲がらずに進行させることもできる。
【0088】
移動ユニット201は特に液体噴流102に沿って2mm未満の、好ましくは10μmから2mmという変位識別能によりステップ単位で検出ユニット103を動かしてもよい。代わりに、移動ユニット201が液体噴流102に沿って連続的に検出ユニット103を動かすように移動ユニット201に指示してもよい。
【0089】
したがって、
図2の装置100は、感知ユニット105を含む検出ユニット103に液体噴流102に沿った複数の異なる位置で複数の検出信号106を発生させる。検出ユニット103は、移動ユニット201によって液体噴流102に沿って動かされながら、連続的にまたは繰り返し二次放射光104を検出することによって、複数の検出信号106を発生するのが好ましい。感知ユニット105はフォトダイオード、サーマルダイオードもしくはアバランシェダイオードであるか、またはこれらを含むものであることが好ましい。感知ユニット105は電力メータまたはスペクトロメータとすることもできる。
【0090】
移動可能な検出ユニット103にとって有利なことは、検出ユニット103がさらに観測ユニット200を含むことであり、観測ユニット200は液体噴流102から伝播して来る二次放射光104をその中に入光させて感知ユニット105(の方向に)に向かって伝播させる。観測ユニット200はスロットまたは開口202を画定するテレセントリックレンズのような孔部でもよい。開口202は液体噴流102からの二次放射光104が検出ユニット103に入射できる入射角を制限する。したがって、観測ユニット200は液体噴流102に沿った光部位識別能を向上させる。
【0091】
例えば、開口202が液体噴流102に平行なサイズd(直径または孔部を有するスロット)を有するものでよい。検出ユニット103の液体噴流102に平行な方向の光部位識別能は開口202のサイズdと観測ユニット200と液体噴流102の間の距離lによって定まる。202のサイズdと距離lは検出ユニット103の光部位識別能が移動ユニット201の変位識別能と同じか、それよりも高くなるように選択することが好ましい。一例として、サイズdを幅が1~5mm、好ましくは1.5mmで、長さが5から10mmのスロットとしてよい。代わりに、直径が1~5mm、好ましくは1.5mmのサイズとしてもよい。距離lは5~30mm、好ましくは10~15mmとしてよい。
【0092】
図3は
図2に示す装置100を発展させた本願発明の実施形態にかかる装置100を示す。
図3と
図2の中にある同一の要素は同じ符号が付され、同様な機能を有する。特に、
図3の装置100も移動ユニット201を有し、さらに移動可能な検出ユニット103を有する。
図2と比べて、装置100のさらに好都合な部品が
図3中に示されている。これらの追加の部品はオプションではあるが、
図2の装置に個別に、または任意の組み合わせで追加することができる。
【0093】
具体的に、
図3の装置100は波長分離ユニット303をさらに含む。波長分離ユニット303は検出ユニット103が受光して感知ユニット105に入射する二次放射光104の少なくとも一部を分離する。したがって、波長分離ユニット303は液体噴流102と感知ユニット105の間の光路の途中に設けるのが好ましく、そのようにすれば波長分離ユニット303は液体噴流102から離れる方向に進み観測ユニット200を通って伝播する二次放射光104を受光し、二次放射光104の少なくとも一部を含む対象とする放射光を出光して感知ユニット105に入射させる。波長分離ユニット303は一つ以上の光学フィルタからなり、同フィルタにより不要な電磁放射光を除く光学フィルタユニットでよい。すなわち、波長分離ユニット303は所定の(不要な)波長の光が感知ユニット105に入射するのを防ぐ。間違って波長分離ユニット303に入射する電磁放射光であって波長分離ユニット303が無ければ感知ユニット105に入射してしまう電磁放射光はフィルタにより除去される。
【0094】
波長分離ユニット303は例えばレーザー光が感知ユニット105に入射するのを防ぐものでよい。すなわち、波長分離ユニット303はレーザービーム101を発生させるレーザーユニットによって供給される光と同じ波長の光をフィルタによって除去するものでよい。さらに、対象でないレーザー誘起二次放射光もフィルタによって除かれる。使用可能な液体噴流の長さについての指標を原理上与える二次放射光104を発生させる複数の異なるメカニズムがある、しかし、ひとつの所定のメカニズムに起因する二次放射光のみが本願発明の対象となるものである。この場合、波長分離ユニット303は対象外の二次放射光をフィルタにより除く。
【0095】
この本願発明が対象とする二次放射光104は液体噴流102の中でレーザービーム101が非弾性散乱することによって発生する電磁放射光としてよい。すなわち、同二次放射光104はレーザービーム101のラマン散乱によって生じる放射光でよく、この放射光の波長は元のレーザー光の波長よりも通常長くなっている。例えば、元のレーザー光が緑の波長ならば、生じる二次放射光104の波長は赤になる。したがって、この場合波長分離ユニット303は赤の波長の光を感知ユニット105に入射させ、一方、他の波長、具体的に緑の波長の光を遮断する。その結果、発生した二次放射光104のみが感知ユニット105に入射する。また、この場合感知ユニット105は赤い波長を特によく感知できる。一つの実施例では、レーザー光の波長を532nmとし、波長分離ユニット303の通過帯域を600~700nm、好ましくは630~670nmとしてよい。
【0096】
第2に、二次放射光104を液体噴流102中でのレーザービーム101の蛍光としてもよい。したがって、波長分離ユニット303は蛍光の波長の光を感知ユニット105に入射させ、一方、例えば他の波長の光、特にレーザー光、例えば緑の波長の光、またはレーザー光のラマン散乱から発生する二次放射光を遮断する。この場合、感知ユニット105は蛍光の波長の光を特によく感知できる。蛍光の波長は、例えば緑のレーザーの場合は黄色領域、具体的には560nmと640nmの間としてよい。
【0097】
第3に、二次放射光104は液体噴流102中で散乱するレーザー光としてもよい。レーザー光は緑の波長とするのが好ましいので、この場合波長分離ユニット303は緑の波長の光を感知ユニット105に入射させ、一方他の波長領域の光を遮断する。この場合、感知ユニット105は緑の波長を特によく感知できる。例えば、532nmのレーザー光を用いるときは、波長分離ユニット303の通過帯域は500~600nm、好ましくは510~550nmとしてよい。
【0098】
図3の装置100の検出ユニット103は、観測ユニット200を保護する保護ユニット301を有し、保護ユニット301によって液体、湿度、塵および/またはレーザービーム機械加工で生じる物が中に入らないようにする。保護ユニット301は少なくとも検出ユニット103の観測ユニット200の内部を陽圧にするユニットであるか、同ユニットを含むものでよい。保護ユニット301は液体噴流102に向いた観測ユニット200を覆う透明な窓であるか、またはこの透明な窓を含むものでよい。この透明な窓は動くことができる保護ユニットを有するものでよい。
【0099】
図3の装置100の検出ユニット103はさらに観測ユニット200と感知ユニット105の間に配置された少なくとも一つの光学素子または光学組立部品302を備える。この光学素子または光学組立部品302は、レンズ、フィルタ、プリズム、回折格子またはこれらの組み合わせでよく、観測ユニット200によって検出ユニット103の中に入射させられる放射光の形を変え、もしくは同放射光に影響を及ぼす機能、および/または波長分離ユニット303によって分離された放射光の形を変え、もしくは同放射光に影響を及ぼす機能を有する。
【0100】
図3の装置100はさらに処理ユニット300を含む。処理ユニット300は複数の検出信号106を感知ユニット105から受信する。処理ユニット300は検出信号106を処理して感知ユニット105から受信した複数の検出信号106に基づいて無条件な液体噴流102の長さまたは使用可能な液体噴流102の長さを決める。この目的のために、処理ユニット300は装置100を制御することによって本願発明の実施形態にかかる液体噴流102の測定方法を具体的に実行するものでよい。
【0101】
本願発明の実施形態にかかる液体噴流102の測定方法は以下説明する。処理ユニット300はさらに(または、代わりに)感知ユニット105から受信した複数の検出信号106に基づいて液体噴流102の中に入射して液体噴流102と結合するレーザービーム101のパワーおよび/または液体噴流102の少なくとも一つの流れの特性を決めるものでよい。
【0102】
処理ユニット300は、例えばマイクロプロセッサまたはコンピュータで実現され、複数の検出信号106について信号処理を行うものでよい。信号処理は、例えばスケーリング、アベレージング、所定時間内の記録、時間積分、または複数の検出信号106を変換することが含むものでよく、さらに複数の検出信号106、または平均化された信号もしくは積分信号を、一つ以上の基準値と比較することを含むものでよい。
【0103】
処理ユニット300はさらに複数の検出信号106と比較する基準値を設定し、または変更する。処理ユニット300は複数の検出信号106を記録し、記録した複数の検出信号106を予め記憶しておいた基準値と比較するものでよい。処理ユニット300は、代わりにまたは追加して、複数の検出信号106を時間積分して積分信号を作り、作った積分信号中のパターンまたはそのパターンの変化を評価するものでよい。レーザービーム101がパルスレーザービームの場合、複数の検出信号106は感知ユニット105が感知したレーザーパルス誘起二次放射光104から生じるものでよい。
【0104】
具体的に、処理ユニット300は第1基準値を定め、検出ユニット103が液体噴流102に沿った第1位置で発生する第1検出信号106を前記第1基準値と比較するものでよい。もしも第1検出信号106が前記第1基準値未満のときは、処理ユニット300はさらに警告を発する、および/もしくは装置100を停止させることができる、または少なくとも装置100の別のユニットに命令して装置100を停止させることができる。
【0105】
処理ユニット300はさらに第2基準値および/または第3基準値を定め、検出ユニット103が液体噴流102に沿った別な位置で発生する別の検出信号106を第1検出信号106と前記第2基準値との第1積、および/または第1検出信号と前記第3基準値との第2積と比較するものでよい。
【0106】
もしも前記別の検出信号106が前記第1積よりも小さいか、または前記第2積よりも大きいときは、処理ユニット300はさらに前記第1位置と前記別の位置の距離を液体噴流102の長さと決めてよい。もしも前記別の検出信号106が前記第1積以上、または前記第2積以下のときは、処理ユニット300はまた検出ユニット103に命令して複数の検出信号106を取得するステップを繰り返し行わせ、さらに前記した比較するステップを繰り返し行わせてよい。
【0107】
処理ユニット300が前記第2基準値を5~95%、好ましくは20~80%の間に設定し、さらに/または前記第3基準値を105~300%、好ましくは140~260%の間に設定するのが好都合である。
【0108】
図4は
図1に示す装置100を発展させた本願発明の実施形態にかかる装置100を示す。
図4と
図1中の同一の要素は同じ符号が付され、同様な機能を有する。したがって、
図4の装置100は、感知ユニット105を含む検出ユニット103を含む。検出ユニット103はレーザービーム101をガイドする液体噴流102から伝播してくる二次放射光104を受光し、検出し、さらに検出した二次放射光104を複数の106に変換する。
【0109】
図4中に示す装置100は単一の位置にある検出ユニット103に複数の検出信号を発生させる。したがって、検出ユニット103は静止し、装置100は静止位置にある検出ユニット103に複数の検出信号106を発生させるのが好ましい。この場合、
図4中に示すように、装置100は移動ユニット201を含まない。しかし、
図4の装置100が移動ユニット201を含み、したがってさらに移動可能な検出ユニット103を含むことも可能である。ただ、この場合でも装置100は単一の位置(好ましくは所定の位置)で複数の検出信号106を発生する。装置100は検出ユニット103に単一の位置で、複数の検出信号106を発生させ(一つの動作モード)、さらに検出ユニット103に液体噴流102に沿った複数の異なる位置で、複数の検出信号106を発生させ(別の動作モード)てもよい。
【0110】
図4中の検出ユニット103は静止しているので、検出ユニット103はその静止位置から液体噴流102に沿った基準位置B
0とB
1の間の所定の長さ部分Bを観測する。この所定の長さ部分Bは
図2の装置100中の検出ユニット103を移動できる所定の距離Aと同一としてよい。基準位置B
0とB
1はそれぞれA
0とA
1と同じにしてよい。したがって、所定の長さ部分Bは0~25cmであるのが好ましく、さらに0~15cmであるのが好ましい。この目的で、検出ユニット103は液体噴流102に平行な十分に大きな開口(
図2に示す開口202より大きい)を有するものでよく、また無制限の大きさの開口を有するものでもよい。すなわち、検出ユニット103は好ましくは観測ユニット200を含まない。もしも検出ユニット103が観測ユニット200を含む場合、そういう場合もありうるが、検出ユニット103はBを観測するのに十分大きいサイズdの開口202を有する観測ユニット200を含む。
【0111】
図4の装置100の感知ユニット105は、前記複数の検出信号106を発生するため、電荷結合デバイスまたは空間的に並んだ複数のフォトダイオード、複数のサーマルダイオードもしくは複数のアバランシェダイオードであることが好ましい。各ダイオードまたは電荷結合デバイスからなる各感知素子が一つの検知信号106を発生する。これらの検知信号106は所定の長さ部分Bの範囲内の液体噴流102中のどの位置から発生する二次放射光も受光する感知ユニット105から生じるものである。
【0112】
レーザービーム101によって二次放射光104が発生する液体噴流102に沿った各位置から、二次放射光104が特有の距離だけ伝播し、特有の角度で感知ユニット105に入射する。したがって、感知ユニット105が複数のダイオードまたは複数の感知素子を有するときは、感知ユニット105は特徴のあるパターン(すなわち、特徴のある複数の検出信号106同士の関係)を有する複数の検出信号106を発生し、この特徴のあるパターンが使用可能な液体噴流102の長さの指標となる。
【0113】
注目すべき点は、
図4中に示す装置100は
図3中に導入した複数の特徴部分のうちの一つ以上を含むものでもよいことである。すなわち、
図4の装置100は複数の検出信号106を処理する処理ユニット300も含んでもよい。さらに、
図4の装置100は検出ユニット103中に保護ユニット301、波長分離ユニット303および/または光学素子もしくは光学組立部品302を有するものでもよい。
【0114】
図5は本願発明の実施形態にかかる装置100を示し、この装置100は
図1、
図2または
図4に示す装置を発展させたものである。
図1、
図2または
図4中と
図5中にある同一の要素は同じ符号が付され、同様な機能を有する。移動ユニット201はオプションで設けられる。そのため破線で示されている。
【0115】
図5は装置100の機械加工ユニット503中に備えられる光構成部と液体回路部についてより詳細に示す。機械加工ユニット503は具体的にレーザービーム101を液体噴流102中に入射させて液体噴流102と結合させるレンズ504のような光学素子を含むものでよい。レーザービーム101は機械加工ユニット503の外部にあるレーザーユニット505が発生し、機械加工ユニット503の中に入光される。前記光構成部を、ここでは代表的に光学素子504を前記液体回路部および液体噴流102が発生させる機械加工ユニット503の領域と隔離するため、機械加工ユニット503は、さらに光学的に透明な保護窓(図示せず)を含むものでよい。
【0116】
液体噴流102を発生させるため、機械加工ユニット503は液体ノズル開口507を有する液体噴流発生ノズル506を含むものでよい。液体噴流発生ノズル506は機械加工ユニット503の内部に配置されて保護された環境で液体噴流102を発生する。液体ノズル開口507が液体噴流102の幅を画定する。液体ノズル開口507の直径は10~200μmであるのが好ましく、液体噴流102の直径は液体ノズル開口507の直径の0.6~1.0倍であることが好ましい。加圧された液体噴流102の圧力は外部に液体供給源を通して与えられる。この圧力は50~800barであることが好ましい。装置100から液体噴流102を放出するため、機械加工ユニット503は放出口502を有する放出ノズル501を含むのが好ましい。放出口502は液体ノズル開口507よりも拡がっていることが好ましい。
【0117】
図5はさらに液体噴流102の長さLに関連する基準位置A
0/B
0とA
1/B
1の間の決められた距離/長さA/B(
図2と
図4とそれぞれ比較)を図解する。
図5において、第1基準位置A
0/B
0はちょうど機械加工ユニット503の放出ノズル501の位置、すなわち機械加工ユニット503に可能なかぎり近い位置であることが好ましい。
図5中に示される長さLは、放出ノズル501(この部分は第1基準位置A
0/B
0に一致する)と液体噴流102が不安定になり散乱して液滴になる位置の間の液体噴流102の使用可能な長さである。
【0118】
注目すべき点は、液体噴流発生ノズル506と放出ノズル501の間の距離がわかっているので、液体噴流の始点すなわち液体噴流発生ノズル506から始まる液体噴流102の無条件な長さを決定することもできることである。もしも第1基準位置A0/B0が放出ノズル501に一致しない場合、放出ノズル501から第1基準位置A0/B0までの距離がわかっているのが好ましい。第1基準位置A0/B0と第2基準位置A1/B1の間の距離もわかっている。したがって、これらの基準位置A0/B0とA1/B1それぞれまでの液体噴流102の相対的な長さから使用可能な液体噴流102の長さLを求めることができる。
【0119】
図6は本願発明の実施形態にかかる装置100を示し、この装置100は
図3および
図5中に示す装置100を発展させたものである。
図3または
図5中と
図6中で同一な要素は同じ符号が付され、同様な機能を有する。したがって、
図6の装置100も液体噴流102から来る二次放射光104を複数の信号106に変換する検出ユニット103を含む。液体噴流102はレーザービーム101を搬送する。レーザービーム101は代表的にはレーザーユニット505が発生し、機械加工ユニット503の中で液体噴流102の中に入射して液体噴流102と結合する。検出ユニット103は移動ユニット201によって機械加工ユニット503の中で動くことができるものでよい(オプションであり、そのため破線で示されている)。
【0120】
図6中の装置100は処理ユニット300をより詳細に示している。処理ユニット300は複数の検出信号106を検出ユニット103から受信する。
図3に関して既に述べたように、処理ユニット300は、受信した複数の検出信号106と比較するために、第1基準値並びに第2および/または第3基準値を決めるものでよい。この目的のために装置100はユーザーがスクリプトのようなユーザー入力602を与えることができる人―機械インタフェース(HMI)600を含むものでよい。HMI600はユーザー入力602に基づいて、第1基準値、第2基準値および/または第3基準値を、信号601を介して処理ユニット300に伝える。
【0121】
処理ユニット300は、移動ユニット201がある場合、命令信号603を介して移動ユニット201に命令して移動ユニット201が検出ユニット103を液体噴流102に沿って動かすようにする。
【0122】
図7は本願発明の実施形態にかかる方法700を示す。方法700は
図1乃至
図6のいずれかに示す装置100によって実行されるものでよい。方法700は、液体噴流102を放出して、高光強度レーザービーム101を液体噴流102の中に入射させ高光強度レーザービーム101を液体噴流102に結合させるステップ701を含む。このステップは、例えば
図5に示すように機械加工ユニット503およびレーザーユニット505がそれぞれ行うことができる。さらに、方法700は、検出ユニット103が液体噴流102中のレーザービーム101が発生する二次放射光104を受光し検出するステップ702を含む。検出ステップ702は、感知ユニット105が二次放射光104を検出信号106に変換するステップ702aを含む。方法700はさらに、検出ユニット103が液体噴流102に沿った単一の位置でまたは複数の異なる位置で、複数の検出信号106を発生するステップ703を含む。
【0123】
方法700は、液体噴流102に沿った複数の異なる位置で複数の検出信号106を発生させるために、さらに検出ユニット103を液体噴流102に沿って動かすステップを含むものでよい。方法700のこの実施の態様は、移動ユニット201を含む装置100を用いて行うことができる。方法700は、液体噴流102の長さを決めるために、または液体噴流102の流れの特性を決めるために、処理ユニット300が所定のアルゴリズムを複数の検出信号106に適用するステップも含むものでよい。このステップは、例えば処理ユニット300を含む装置100が行うことができる。
【0124】
液体噴流102の長さを決めるアルゴリズムは次のようなステップが実装されるものでよい。すべてのステップは、処理ユニット300が行うものでよい。
【0125】
ステップ1:例えばレーザーユニット505に命令してレーザービーム101を供給させる。
ステップ2:基準位置A0およびA1を定め、さらに例えばデータシートから読み出すことにより、またはHMI600を介して読み取ることにより、第1基準値R0並びに第2基準値R1および/または第3基準値R2を決める。
ステップ3:移動ユニット201を制御して第1基準位置A0に移動させる。
ステップ4:検出ユニット103に命令して、第1検出信号106を測定させて信号S0として記録させる。
ステップ5:検出信号S0を第1基準値R0と比較する。
もしも、S0<R0ならば、警告を発し、さらに/または停止する。
そうでなければ、次に進む。
ステップ6:移動ユニット201を制御して別の位置Anに移動させる。
ステップ7:検出ユニット103に命令して別の検出信号106を測定させ、別の信号Snとして記録させる。
ステップ8:別の信号Snを第1信号S0と第2基準値R1との積と比較し、さらに/または別の信号Snを第1信号S0と第3基準値R2との積と比較する。
もしも、Sn<S0*R1またはSn>S0*R2ならば、Anに基づいて液体噴流102の無条件の長さおよび/または使用可能な長さを決める。
そうでなければ、Anのnを増やす。
もしも、An≧A1ならば、停止する。
そうでなければ、ステップ6に戻る。
【0126】
前記したアルゴリズムによれば、あらゆる位置Anに対する信号Snを取得する。もしも検出ユニット103がサイズdの開口202を有する観測ユニット200を有するものならば、取得した各信号Snは±D/2の部位識別能を有するものであり、ここでD(d、l)は
図2中に示すサイズdと距離lの関数である。
各nについて信号SnがS
0*R
1よりも大きく、かつ/またはSn>S
0*R
2よりも小さいときは、その信号Snは液体噴流が存在することを示すものと考えられ、その信号Snがこの限界値よりも小さい場合は、その信号Snは液体噴流が存在しないことを示すものと考えられる。基準位置A
0およびA
1の液体噴流発生ノズル506のような液体噴流102の始点からの距離は既知なので、液体噴流102の長さはA1とA0の間の差に基づいて決めることができる。
【0127】
液体噴流102を適格であるとするために、すなわち液体噴流102の層流としての性質、すなわち液体噴流102の攪乱特性を判定するために、信号Snをさらに評価してもよい。例えば液体噴流102中で二次放射光104が発生する液体噴流の長さによって、このことは可能になる。さらに、発生する信号Snによって、レーザービーム101となって液体噴流102の中に入射して液体噴流102と結合するレーザー光のレーザーパワーを決めることもできる。検出した二次放射光104の量(強度)に基づいて、このことが可能になる。
【0128】
本願発明を様々な実施形態および実施の態様とともに説明した。しかし、当業者ならば、添付した図面、明細書および独立請求項から他の変更例を考えつくことができる。発明の詳細な説明中だけでなく特許請求の範囲中で、「有する(comprising)」は他の要素やステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を排除するものではない。単一の要素または他のユニットは特許請求の範囲中の複数の物や製品の機能を果たしてもよい。所定の複数の手段が互いに異なる請求項に記載されているからといって、これらの手段の組み合わせを用いて好都合な実施の態様にすることできないということを示すものではない。