(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 3/08 20060101AFI20230627BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20230627BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H03H3/08
H01L23/00 C
H03H9/25 A
(21)【出願番号】P 2021134452
(22)【出願日】2021-08-19
【審査請求日】2023-05-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】中村 博文
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】門川 裕
(72)【発明者】
【氏名】金原 兼央
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-9580(JP,A)
【文献】特開2014-155132(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158050(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ基板に、弾性波デバイスと半導体デバイスを実装する工程と、
前記弾性波デバイスと前記半導体デバイスを単一材料の樹脂で覆う工程と、
前記パッケージ基板と前記弾性波デバイスの間に空隙を残しつつ前記樹脂のうち前記弾性波デバイスを覆う部分である第1樹脂を硬化させる工程と、
前記第1樹脂を硬化させた後に、前記樹脂のうち前記半導体デバイスを覆う部分である第2樹脂を一時的に軟化させて、前記第2樹脂で前記パッケージ基板と前記半導体デバイスの間の空間の少なくとも一部を充填する工程と、
前記第2樹脂を熱硬化させる工程と、を備えたモジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第1樹脂は、UV露光または電子線照射によって硬化させた請求項1に記載のモジュールの製造方法。
【請求項3】
前記UV露光または前記電子線照射は、マスクによって前記第2樹脂には及ばない請求項2に記載のモジュールの製造方法。
【請求項4】
前記弾性波デバイスは機能素子を有し、前記機能素子が前記空隙に露出した請求項1から3のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法。
【請求項5】
前記弾性波デバイスの上に形成された前記第1樹脂の少なくとも一部を除去する工程を備えた請求項1から4のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法。
【請求項6】
前記半導体デバイスの上に形成された前記第2樹脂の少なくとも一部を除去する工程を備えた請求項1から5のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法。
【請求項7】
前記半導体デバイスはパワーアンプとスイッチを備え、前記パワーアンプの上に形成された前記第2樹脂の少なくとも一部を除去し、前記スイッチの上に形成された前記第2樹脂は除去しない工程を備えた、請求項1から5のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法。
【請求項8】
前記第2樹脂を熱硬化させる温度は、前記第2樹脂を軟化させる温度より高い請求項1から7のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂を覆う金属層を形成する工程を備えた請求項1から7のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法。
【請求項10】
前記金属層はめっき法で形成する請求項9に記載のモジュールの製造方法。
【請求項11】
前記金属層は、前記樹脂の開口に充填されることで、前記パッケージ基板の導体パターンに接した請求項9又は10に記載のモジュールの製造方法。
【請求項12】
前記金属層の上に絶縁層を形成する工程を備え、前記絶縁層の上面は略平坦である請求項9から11のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法。
【請求項13】
前記弾性波デバイスと前記半導体デバイスを前記樹脂で覆う前に、前記パッケージ基板と前記半導体デバイスの間の空間にアンダーフィル樹脂を提供する工程を備えた請求項1から12のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法。
【請求項14】
前記弾性波デバイスと前記半導体デバイスを前記樹脂で覆う工程と、前記第1樹脂を硬化させる工程と、前記第2樹脂を軟化させる工程は、真空空間で行う、請求項1から12のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法。
【請求項15】
前記パッケージ基板のうち、前記半導体デバイスの直下の部分には、貫通孔が形成された請求項1から12のいずれか1項に記載のモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波デバイスを備えるモジュールの製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、弾性波デバイス等の電子デバイスのパッケージング方法として、回路基板上にチップをフェースダウン実装し、チップの周りを封止部材で覆う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、Surface Acoustic Wave(SAW)フィルタ、パワーアンプ及びスイッチ等の部品を基板に搭載してなるPower Amplifier Module integrated Duplexer(PAMiD)モジュールでは、ベアチップを実装してモジュールを作製する事が小型化、薄型化には適している。しかし、SAWフィルタチップ下を空洞状態にしつつ、その他のチップの下にアンダーフィル樹脂を入れる必要がある。そのため、すべてのチップをベアチップで実装する場合は、別々の樹脂封止方法を採用しなければならなかった。すなわち、SAWフィルタチップを封止する樹脂と、その他のチップを封止する樹脂を別々に形成しなければならず、低コスト化に不向きであった。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、低コスト化に好適なモジュールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかるモジュールの製造方法は、
パッケージ基板に、弾性波デバイスと半導体デバイスを実装する工程と、
前記弾性波デバイスと前記半導体デバイスを単一材料の樹脂で覆う工程と、
前記パッケージ基板と前記弾性波デバイスの間に空隙を残しつつ前記樹脂のうち前記弾性波デバイスを覆う部分である第1樹脂を硬化させる工程と、
前記第1樹脂を硬化させた後に、前記樹脂のうち前記半導体デバイスを覆う部分である第2樹脂を一時的に軟化させて、前記第2樹脂で前記パッケージ基板と前記半導体デバイスの間の空間の少なくとも一部を充填する工程と、
前記第2樹脂を熱硬化させる工程と、を備える。
【0007】
前記第1樹脂は、UV露光または電子線照射によって硬化させたことが、本開示の一形態とされる。
【0008】
前記UV露光または前記電子線照射は、マスクによって前記第2樹脂には及ばないことが、本開示の一形態とされる。
【0009】
前記弾性波デバイスは機能素子を有し、前記機能素子が前記空隙に露出したことが、本開示の一形態とされる。
【0010】
前記弾性波デバイスの上に形成された前記第1樹脂の少なくとも一部を除去する工程を備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0011】
前記半導体デバイスの上に形成された前記第2樹脂の少なくとも一部を除去する工程を備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0012】
前記半導体デバイスはパワーアンプとスイッチを備え、前記パワーアンプの上に形成された前記第2樹脂の少なくとも一部を除去し、前記スイッチの上に形成された前記第2樹脂は除去しない工程を備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0013】
前記第2樹脂を熱硬化させる温度は、前記第2樹脂を軟化させる温度より高いことが、本開示の一形態とされる。
【0014】
前記樹脂を覆う金属層を形成する工程を備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0015】
前記金属層はめっき法で形成することが、本開示の一形態とされる。
【0016】
前記金属層は、前記樹脂の開口に充填されることで、前記パッケージ基板の導体パターンに接したことが、本開示の一形態とされる。
【0017】
前記金属層の上に絶縁層を形成する工程を備え、前記絶縁層の上面は略平坦であることが、本開示の一形態とされる。
【0018】
前記弾性波デバイスと前記半導体デバイスを前記樹脂で覆う前に、前記パッケージ基板と前記半導体デバイスの間の空間にアンダーフィル樹脂を提供する工程を備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0019】
前記弾性波デバイスと前記半導体デバイスを前記樹脂で覆う工程と、前記第1樹脂を硬化させる工程と、前記第2樹脂を軟化させる工程は、真空空間で行うことが、本開示の一形態とされる。
前記パッケージ基板のうち、前記半導体デバイスの直下の部分には、貫通孔が形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、低コスト化に好適なモジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】樹脂の一部をUV露光で硬化させることを示す図である。
【
図6】デバイスと基板の間に樹脂を流動させることを示す図である。
【
図7】
図7AはUV照射後に加熱された樹脂の写真であり、
図7BはUV照射なしで加熱された樹脂の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態について添付の図面を参照して説明する。なお、各図中、同一または対応する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0023】
実施の形態.
図1は実施の形態に係るモジュール10の断面図である。このモジュール10は、パッケージ基板12を備えている。一例によれば、パッケージ基板12はPrinted Circuit board(PCB)基板、又はHigh Temperature Co-fired Ceramics(HTCC)基板である。別の例によれば、パッケージ基板12は、複数の誘電体層からなる低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)多層基板である。別の例によれば、基材と、当該基材を貫通する配線電極が設けられた任意の基板をパッケージ基板とすることができる。
図1の例では、パッケージ基板12は、基材と、上部電極と、ビア配線などによって上部電極と電気的に接続された下部電極とを備えている。パッケージ基板12の内部にコンデンサ又はインダクタ等の受動素子を形成してもよい。
【0024】
弾性波デバイス14、半導体デバイス20、受動素子30、半導体デバイス40は、それぞれバンプ15、21、31、41によってパッケージ基板12に実装されている。バンプ15はパッケージ基板12と弾性波デバイス14を電気的に接続する。バンプ21はパッケージ基板12と半導体デバイス20を電気的に接続する。バンプ31はパッケージ基板12と受動素子30を電気的に接続する。バンプ41はパッケージ基板12と半導体デバイス40を電気的に接続する。バンプ15、21、31、41は例えば金バンプである。別の例によれば、バンプ31を半田に置き換えることができる。一例によれば、これらのバンプの高さは10μmから50μmである。
【0025】
一例によれば、弾性波デバイス14は、弾性表面波フィルタ、音響薄膜共振器からなるフィルタ、デュプレクサ、またはデュアルフィルタのいずれか1つを含む。別の例によれば、弾性波デバイスとして別の構成を採用し得る。弾性波デバイス14は、機能素子を有する第1主面をパッケージ基板12に対向させつつパッケージ基板12に実装されている。
図1の例では、弾性波デバイスは、第1主面に、機能素子としてIDT(Interdigital Transducer)14aと一対の反射器とを備える。当該第1主面には、銀、アルミニウム、銅、チタン、パラジウムなどの適宜の金属又は合金により配線パターンが形成され得る。IDT14aと一対の反射器とは、弾性表面波を励振し得るように設けられる。別の例によれば、第1主面に形成される機能素子は受信フィルタと送信フィルタである。受信フィルタは、所望の周波数帯域の電気信号が通過し得るように形成される。例えば、受信フィルタは、複数の直列共振器と複数の並列共振器からなるラダー型フィルタである。送信フィルタは、所望の周波数帯域の電気信号が通過し得るように形成される。例えば、送信フィルタは、複数の直列共振器と複数の並列共振器からなるラダー型フィルタである。
【0026】
弾性波デバイス14は、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムまたは水晶などの圧電単結晶で形成された基板を有する。別の例によれば、弾性波デバイス14は、圧電セラミックスで形成された基板を有する。別の例によれば、弾性波デバイス14は、圧電基板と支持基板とが接合された基板を有する。例えば、支持基板は、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスで形成された基板である。
【0027】
弾性波デバイス14は樹脂17で覆われている。しかし、弾性波デバイス14の第1主面は樹脂17で覆われていない。弾性波デバイス14とパッケージ基板12の間には空隙16がある。弾性波デバイス14は、第1主面と反対側の面である第2主面を有している。一例によれば、その第2主面の少なくとも一部は、樹脂17で覆われていない。この第2主面には金属層18が接している。金属層18は、第2主面に設けられた第1金属18aと、樹脂17に接した第2金属18bと、パッケージ基板12に接した第3金属18cを備えている。
【0028】
一例によれば、半導体デバイス20は、パワーアンプ、ローノイズアンプ、またはスイッチのいずれか1つを含む。
図1の例では、半導体デバイス20はパワーアンプである。半導体デバイス20は樹脂22、23で覆われている。樹脂22はパッケージ基板12と半導体デバイス20の間に充填された樹脂である。この樹脂22はアンダーフィル樹脂として提供されている。樹脂23は半導体デバイス20の側面と、上面の一部を覆う樹脂である。半導体デバイス20は、パッケージ基板12と対向する面である対向面と、当該対向面と反対側の面である非対向面を有している。一例によれば、非対向面の少なくとも一部は、樹脂で覆われていない。この非対向面には金属層28が接している。金属層28は、非対向面に設けられた第1金属28aと、樹脂17に接した第2金属18bと、パッケージ基板12に接した第3金属18cを備えている。
【0029】
一例によれば、受動素子30はキャパシタである。受動素子30は樹脂32、33で覆われている。樹脂32は、パッケージ基板12と受動素子30の間に充填された樹脂である。したがって、樹脂32はアンダーフィル樹脂として提供されている。樹脂33は受動素子30の側面と上面を覆う樹脂である。樹脂33の上には金属層38が形成されている。金属層38は、パッケージ基板12に接する第1部分38aを有している。
【0030】
一例によれば、半導体デバイス40は、パワーアンプ、ローノイズアンプ、またはスイッチのいずれか1つを含む。
図1の例では、半導体デバイス40はスイッチである。半導体デバイス40は樹脂42、43で覆われている。樹脂42はパッケージ基板12と半導体デバイス40の間に充填された樹脂である。樹脂42はアンダーフィル樹脂として提供されている。樹脂43は半導体デバイス20の側面と上面を覆う樹脂である。樹脂43の上には金属層48が形成されている。
【0031】
樹脂17は、パッケージ基板12と弾性波デバイス14の機能素子の間に空隙16を残しつつ弾性波デバイス14を覆う。樹脂22、23はパッケージ基板12と半導体デバイス20の間を充填しつつ半導体デバイス20を覆う。樹脂32、33はパッケージ基板12と受動素子30の間を充填しつつ受動素子30を覆う。樹脂42、43はパッケージ基板12と半導体デバイス40の間を充填しつつ半導体デバイス40を覆う。
【0032】
樹脂17、22、23、32、33、42、43は、全体を同じ材料の樹脂とすることができる。言いかえれば、樹脂17、22、23、32、33、42、43は、同一プロセスで提供されたことで硬化前も硬化後も共通の組成(分子構造)を有する。一例によれば、樹脂17、22、23、32、33、42、43は光硬化性及び熱硬化性を有する。一例によれば、樹脂の熱硬化性とは、常温より高温である第1温度で一時的に軟化し、第1温度を継続すること又は第1温度より高温の第2温度とすることで硬化するものである。樹脂材料として様々な材料が考えられるが、例を挙げると以下のものがある。
・エポキシ樹脂ベースの日本化薬製のKPM500ドライフィルム
・エポキシ樹脂ベースの太陽インキ製のPSR-800 AUS410,PSR-800 AUS SR1
・ポリイミド樹脂ベースの東レ製のLPA-22
【0033】
図1の例では、弾性波デバイス14を覆う樹脂17は光硬化及び熱硬化しており、それ以外の樹脂は熱硬化している。例えば、パッケージ基板12と半導体デバイス20、40の間に充填された樹脂22、42は熱硬化している。
【0034】
上述のとおり、モジュール10の樹脂17、22、23、32、33、42、43は全体が同じ材料である。言いかえれば、樹脂17、22、23、32、33、42、43は単一材料(一種類の材料)の樹脂である。よって、複数の組成が異なる樹脂を利用する場合と比べて、材料費を低減でき、プロセスステップ数も少なくすることができる。そのため、モジュール10は低コスト化に好適である。さらに、パッケージ基板12と弾性波デバイス14の間は空隙16となっており、その他のチップ下にはアンダーフィル樹脂として樹脂22、32、42が提供されているので、モジュール10をPAMIDモジュールとして提供し得る。金属層18を弾性波デバイス14の第2主面と接触させることは放熱性の向上に貢献する。金属層28を半導体デバイス20の非対向面に接触させることも放熱性の向上に貢献する。しかしながら、弾性波デバイス14の第2主面の全体に樹脂を形成しその樹脂の上に金属層を形成し、半導体デバイス20の非対向面の全体に樹脂を形成しその樹脂の上に金属層を形成してもよい。金属層18、28、38、48は電磁波シールド層としても機能し得る。
【0035】
図1の例では、第3金属18c、第3金属28c、第1部分38aがパッケージ基板12に接している。第3金属18c、第3金属28c、第1部分38aは、パッケージ基板12の直上の樹脂の開口に形成されることで、パッケージ基板12と接している。第3金属18c、第3金属28c、第1部分38aの少なくとも1つと、パッケージ基板12の導体パターンを接触させることができる。当該導体パターンを弾性波デバイス14のグランド電位と同電位とすれば、金属層18、28、38、48もグランド電位とすることができる。接地された金属層18、28、38、48は電磁波シールド層として機能する。
【0036】
図2は、モジュールの製造方法を示すフローチャートである。このフローチャートを参照しつつ、
図1のモジュールの製造方法を説明する。ステップSaとステップSbは、パッケージ基板12に複数のチップを実装する工程である。ステップSaでは、まず、ステップS1にてパッケージ基板12の予め定められた位置にクリームはんだを塗布する。そして、そのクリームはんだの上にチップを搭載する。次いで、ステップS2にて半田リフロー処理し、ステップS3にて洗浄処理することで、チップがパッケージ基板12に接合される。
【0037】
ステップSbでは、まず、ステップS4にてパッケージ基板12をプラズマ洗浄処理する。そして、ステップS5にてパッケージ基板12の予め定められた位置に設けられた導電性接着剤にチップのバンプを接着する。ステップSbは、一例によれば、Au-Au接合(GGI接合)工程である。
【0038】
ステップSaは半田を用いてパッケージ基板にチップを実装するのに対し、ステップSbでは導電性接着剤を用いてパッケージ基板にチップを実装する。一例によれば、弾性波デバイス14はステップSbにてパッケージ基板12に実装され、半導体デバイス20、受動素子30及び半導体デバイス40はステップSaにてパッケージ基板12に実装される。別の例によれば、弾性波デバイス14はステップSaにてパッケージ基板12に実装され、半導体デバイス20、受動素子30及び半導体デバイス40はステップSbにてパッケージ基板12に実装される。さらに別の例によれば、パッケージ基板12に実装すべきすべてのチップをステップSaかステップSbの一方で実装し、ステップSaかステップSbの他方は省略してもよい。
図3には、ステップSaとステップSbによって、パッケージ基板12に実装された弾性波デバイス14、半導体デバイス20、40及び受動素子30が図示されている。一例によれば、
図3のパッケージ基板12は、単位配線基板が2次元方向にアレイ配置された基板である。この場合、パッケージ基板12には複数の単位配線基板が配置されているということができる。
【0039】
次いでステップScに処理を進める。ステップScは樹脂を形成する工程である。まず、ステップS6にて実装された複数のデバイスチップにまたがるように樹脂シートをのせる。樹脂シートは例えば液状のエポキシ樹脂をシート化したものである。別の例によれば、樹脂シートは、エポキシ樹脂とは異なるポリイミドなどの合成樹脂とすることができる。樹脂シートの上面にポリエチレンテレフタレート(PET)を材料とする保護フィルムを設けたり、樹脂シートの下面にポリエステルを材料とするベースフィルムを設けたりすることができる。複数のデバイスチップの上に樹脂シートをのせることで、樹脂シートが複数のデバイスチップに仮固定される。
【0040】
次いでステップS7では、真空ラミネートによって、樹脂をチップ間に提供する。例えば、真空下で樹脂シートにパッケージ基板12方向への圧力をかけながら、樹脂をチップ間の領域に提供していく。圧縮空気で膨らませたシリコンゴムで樹脂シートにパッケージ基板12方向への圧力をかけたり、ラバープレートで樹脂シートにパッケージ基板12方向への圧力をかけたりすることができる。
図4は、真空ラミネート後の樹脂の形状例を示す図である。
図4では、樹脂50は、チップ上の部分50aと、チップ間に提供された部分50bとを有している。
【0041】
真空ラミネートに代えて、別の方法でチップ間に樹脂を提供してもよい。例えば、熱ローララミネート法と呼ばれる方法を採用してもよい。熱ローララミネート法では、少なくとも樹脂シートの軟化温度まで加熱した上ローラと下ローラの間にワークを通すことで、樹脂シートが、複数のデバイスチップの上面に提供されるとともに、複数のデバイスチップの側面とパッケージ基板12の上面に充填される。
【0042】
こうして、弾性波デバイス14と半導体デバイス20、40と受動素子30は、単一材料(一種類の材料)の樹脂50で覆われる。前述のとおり、樹脂50は、光硬化性及び熱硬化性を有する。
【0043】
次いで、ステップS8では、樹脂のうち弾性波デバイス14を覆う部分を硬化させる。
図5は、樹脂の一部を硬化させることを示す図である。樹脂50は、弾性波デバイス14を覆う第1樹脂17´を有する。ステップS8では、この第1樹脂17´にUV照射する。一例によれば、このUV照射では、第1樹脂17´の直上だけが開口したマスク56を用いる。UV照射装置58から照射されるUV光をマスク56を介して樹脂50に提供することで、樹脂50のうち、第1樹脂17´にUV照射し、他の部分(以後、第2樹脂ということがある)にはUV照射しない。これにより、樹脂50のうち第1樹脂17´だけが選択露光される。この選択露光によって、第1樹脂17´は、パッケージ基板12と弾性波デバイス14の間に空隙16を残しつつ硬化する。
【0044】
第1樹脂17´を硬化させる方法はUV露光に限定されない。第1樹脂17´は熱硬化以外の周知の様々な方法で硬化させることができる。例えば、電子線を第1樹脂17´に照射することで、第1樹脂17´を硬化させてもよい。一例によれば、前述のマスク56を用いて第1樹脂17´に電子線照射することができる。別の例によれば、電子線源から放出される電子線を、パッケージ基板を保持するステージを動かしながら走査することで、マスクなしで、第1樹脂17´に電子線照射できる。別の例によれば、電子線走査とマスクを併用してもよい。
【0045】
第1樹脂17´が硬化し、
図1の樹脂17と同じ形状を維持することで、弾性波デバイス14の機能素子が空隙16に露出した状態が維持される。一例によれば、この空隙16は密閉空間である。
【0046】
次いで、ステップS9へ処理を進める。ステップS9では、半導体デバイス等のアンダーフィルを提供し、その後第2樹脂を熱硬化させる。具体的には、ステップS8において硬化させなかった第2樹脂を一時的に軟化させて、第2樹脂でパッケージ基板12と半導体デバイスの間の空間の少なくとも一部を充填する。樹脂50を加熱することで軟化させ、例えば半導体デバイス20、40及び受動素子30と、パッケージ基板12の間の空間へ流動させる。
図6には、第2樹脂51を軟化させることで、アンダーフィルとして機能する樹脂22、32、42が形成されたことが図示されている。
【0047】
このようにアンダーフィルが提供されてから、第2樹脂51を熱硬化させる。熱硬化の方法は樹脂の材料に依存する。例えばある樹脂では、第2樹脂を軟化させる温度である第1温度を一定時間継続することで、第2樹脂が硬化する。別の樹脂では、第1温度より高温の第2温度とすることで第2樹脂が硬化する。このような第2樹脂の軟化と硬化のための熱処理に伴い、第1樹脂17´の硬化も促進される。すなわち、第1樹脂17´は、前述の露光処理で形状が実質的に固定される程度に硬化され、その後の第2樹脂の熱処理で完全に硬化する。言いかえると、熱処理によって第1樹脂17´は熱硬化する。樹脂がIDT14aを覆うことが無いように、熱処理による第1樹脂17´の流動化は回避又は抑制される。
【0048】
このような樹脂の軟化と硬化のプロセスは、加熱された上金型と下金型を有するプレス機によって、樹脂シートをパッケージ基板12の方向に押圧することで進行される。例えば、樹脂シートを一旦軟化温度まで加熱昇温させてアンダーフィルを形成した後に、硬化温度まで加熱昇温させて形状を固定する。
【0049】
光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂を用いることで、上述のプロセスが可能となる。
図7は、UV照射の有無によって、加熱時の樹脂の流動性を制御できることを示す実験結果である。この実験では、スライドガラス基板上に、厚み20μm程度のスペーサを介して、5mm角で150μm程度の厚みのカバーガラスを設けた。カバーガラスはスペーサよりも大面積である。そして、カバーガラスの上にドライフィルム樹脂を60℃程度のラミネーション温度でかぶせた。この構成を有するサンプルを2つ用意し、一方の樹脂にUV照射し、他方の樹脂にUV照射しなかった。その後、これらの2つのサンプルを180℃で1分間加熱した。
図7AはUV照射されたサンプルにおいて、樹脂の流動が抑制されたことを示す写真である。色の濃い部分が樹脂である。この
図7Aから、略正方形のカバーガラスの直下に、当該正方形の枠の近傍に少しだけ樹脂が流動したものの、樹脂の流動が概ね抑制できたことが分かる。他方、
図7BはUV照射されなかったサンプルにおいて、樹脂が流動したことを示す写真である。色の濃い部分が樹脂である。この
図7Bから、略正方形のカバーガラスの直下に、多くの樹脂が流動したことが分かる。
【0050】
ところで、樹脂を熱硬化させる際に、チップとパッケージ基板12の間の空間に空気があると、当該空間をアンダーフィルで充填することが阻害され得る。そこで、弾性波デバイス14と半導体デバイス20、40を含むチップを樹脂で覆う前に、パッケージ基板12と半導体デバイス20、40の間の空間にアンダーフィル樹脂を提供してもよい。例えば、熱硬化性を有するアンダーフィル樹脂を、パッケージ基板12と半導体デバイス20の間と、パッケージ基板12と受動素子30の間と、パッケージ基板12と半導体デバイス40の間に提供しておけば、その後に、アンダーフィル樹脂と第2樹脂を同時に軟化させることができる。これらによって、パッケージ基板12とチップの間の空間を樹脂で充填することができる。
【0051】
別の例によれば、弾性波デバイス14と半導体デバイスを樹脂で覆う工程と、第1樹脂17´を硬化させる工程と、第2樹脂51を軟化させる工程は、真空空間で行う。そうすると、チップとパッケージ基板12の間の空間に空気が無い状態でアンダーフィルを提供できるので、アンダーフィルの充填を確実にすることができる。
【0052】
さらに別の例によれば、アンダーフィルを設けるべきチップの直下において、パッケージ基板12の貫通孔を提供することができる。例えば、パッケージ基板12のうち、半導体デバイスの直下の部分に貫通孔を形成する。
図8は、パッケージ基板12に形成された貫通孔12hを示す図である。樹脂を流動させてアンダーフィルを形成する際に、パッケージ基板12とチップの間の空気が、貫通孔12hを通じてパッケージ基板12の下方へ抜けることで、アンダーフィルの充填を確実にすることができる。
【0053】
上述した、アンダーフィル樹脂の提供、真空の活用、および貫通孔の形成は、組み合わせることができる。例えば、アンダーフィル樹脂と第2樹脂を流動させる際に、パッケージ基板12とチップの間の空気を、パッケージ基板12の貫通孔から排出することができる。アンダーフィル樹脂の提供、真空の活用、および貫通孔の形成は、アンダーフィルを完全に行うために補足的に提供され得る。したがって、これらの方法は省略することができる。
【0054】
次いで、ステップS10に処理を進める。ステップS10では、樹脂の一部を除去する。
図9は、樹脂の除去の例を示す図である。この例では、弾性波デバイス14の上に形成された樹脂の少なくとも一部を除去することで開口h2を形成し、半導体デバイス20の上に形成された樹脂の少なくとも一部を除去することで開口h4を形成する。さらに、パッケージ基板12を露出させる開口h1、h3、h5を形成する。この例では、パワーアンプである半導体デバイス20の上に形成された樹脂の少なくとも一部を除去し、スイッチである半導体デバイス40の上に形成された樹脂は除去しない。一例によれば、樹脂の除去はレーザ光を用いて行う。
【0055】
次いで、ステップSdに処理を進める。ステップSdは金属層を形成する工程である。例えば、ステップS11で、パッケージ基板12の裏面にテープを貼付け、ステップS12で無電解めっき反応を起こさせるための触媒処理を施す。そして、ステップS13でテープを張替え、ステップS14で前処理を施し、ステップS15で例えば無電解Niめっきを形成する。こうして、めっき法によって、樹脂を覆う金属層が形成される。具体的には、
図1の金属層18、28、38、48が形成される。一例によれば、金属層は、樹脂の開口に充填されることで、パッケージ基板12の導体パターンに接する。金属層18、28、38、48は、無電解Niめっき以外の方法で形成してもよい。一例によれば、金属層を形成するために、無電解Cuめっきと、無電解Niめっきをこの順に施す。別の例によれば、金属層を形成するために、銀コートと無電解Niめっきをこの順に施す。さらに別の例によれば、金属層を形成するためにTi形成、Cuスパッタ、電解Niめっきをこの順に施す。これらの変形例は、金属層を無電解Niめっきで形成した場合と比べて、樹脂と金属層の密着性を高め得るものである。
【0056】
次いで、ステップSeに処理を進める。ステップSeはいわゆる後工程である。例えば、ステップS16でパッケージ基板12をダイシングする。これにより製品が個片化される。次いで、ステップS17で外観検査し、ステップS18で製品の電気的特性を検査する。問題がなければステップS19で製品を梱包する。こうして、
図1に示すモジュール10の製造が終了する。
【0057】
一例によれば、
図1の構成の上面に絶縁層を形成することができる。
図10は、そのような絶縁層60を示す図である。この例では、金属層18、28、38、48の上に絶縁層60を形成する工程が付加される。一例によれば、絶縁層60の上面は略平坦である。
【0058】
少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面が説明されたが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本開示の範囲内にあることが意図される。
【0059】
理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。
【0060】
特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。
【0061】
本開示で使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。
【0062】
「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。
【0063】
前後左右、頂底上下、横縦、表裏への言及は、いずれも、記載の便宜を意図する。当該言及は、本開示の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は、例示にすぎない。
【符号の説明】
【0064】
10 モジュール、 12 パッケージ基板、 14 弾性波デバイス、 16 空隙、 17 樹脂、 18 金属層、 20 半導体デバイス、 22,23 樹脂、 28 金属層、 30 受動素子、 32,33 樹脂、 38 金属層、 40 半導体デバイス、 42,43 樹脂、 48 金属層