(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】HAPLN1を含む軟骨関連疾患、あるいはその症状の予防用、改善用または治療用の組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20230627BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230627BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230627BHJP
A23K 20/147 20160101ALI20230627BHJP
A61L 27/36 20060101ALN20230627BHJP
A61K 31/728 20060101ALN20230627BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20230627BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
A61P19/00
A61P43/00 111
A23K20/147
A61L27/36 312
A61L27/36 410
A61K31/728
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2021549676
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2019002418
(87)【国際公開番号】W WO2020175721
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】519321708
【氏名又は名称】ハプルサイエンス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】テ・キョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ミン・ジャン
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-527834(JP,A)
【文献】特表2016-531147(JP,A)
【文献】特許第7078712(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/17
A61P 19/00
A61P 43/00
A23L 33/10
A23K 20/147
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HAPLN1蛋白質を有効成分として含む、軟骨再生用動物用飼料組成物。
【請求項2】
HAPLN1蛋白質を有効成分として含む、骨関節炎の予防用または治療用の薬学組成物。
【請求項3】
HAPLN1蛋白質を有効成分として含む、成長板軟骨増殖用または骨長成長促進用の薬学組成物。
【請求項4】
HAPLN1蛋白質を有効成分として含む、骨長成長障害治療用または予防用の薬学組成物。
【請求項5】
前記骨長成長障害が、低身長症、小人症、矮小症または性早熟症であることを特徴とする請求項4に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸及びプロテオグリカン連結蛋白質1(HAPLN1:hyaluronan and proteoglycan link protein 1)を有効成分として含む、軟骨関連疾患、あるいはその症状の予防用、改善用または治療用の組成物に係り、具体的には、HAPLN1を有効成分として含む、軟骨再生用組成物、あるいは骨関節炎の予防用、改善用または治療用の組成物に係り、さらに、成長板軟骨(growth plate cartilage)増殖用または骨長成長促進用の組成物、あるいは低身長症(short stature)の予防用、改善用または治療用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨関節炎は、患者において、関節痛症、関節膨潤、関節剛性、及び減少された運動範囲を刺激し、関節軟骨(articular cartilage)及び主要骨の破壊を引き起こす、変性関節疾患である。10名の成人のうち、少なくとも1名において、骨関節炎が発病すると知られており(Lawrence, Felson et al. 2008)、関節運動と係わる痛症に起因し、患者の生き方の質は、顕著に低くなる。骨関節炎は、以前には、老化の一般的結果であると見られていたが、現在においては、関節完全性、遺伝的素因、局所炎症、機械的力、並びに細胞的及び生化学的なプロセスを含む多数因子の複雑な相互作用から生じると知られている。その病原的な特徴としては、下部軟骨下骨の肥大、骨空隙(骨突起)形成、及び関節をフルに充填する関節軟骨の細胞外基質(ECM:extracellular matrix)の退行を含む。
【0003】
膝関節において、軟骨の厚みは、約2mmであり、外傷や疾病などにより、面積が1~4mm2ほど損傷された場合には、自然治癒による再生が可能であるが、20mm2程損傷された場合には、自力による再生は困難であり、一般的に、大きい苦痛を伴う。さらに、腫瘍、懐死のようなさまざまな原因により、関節軟骨を完全に失った場合には、関節機能を復元させるために、例えば、人工関節を当該個所に埋め込むというような措置が行われている。しかし、人工関節は、あくまでも関節機能と類似して人工的に構成されたものであり、生体においては、異物であるために、生体適合性維持が困難である。また、人工関節は、生体内における厳格な環境下において、複雑な動作が要求されるために、20年以上維持させることは困難であり、その素材として、利用されている樹脂や金属などの劣化や、摩耗粉の発生などにより、機能低下が苦痛を引き起こす場合もあり、耐久性においても、十分であるとは言えない。従って、人工関節治療を代替するものとして、関節軟骨自体を再生する技術が要望されている。
【0004】
また、最近の研究発表によれば、関節表面を穿孔し、骨形成因子(BMP:bone morphogentic protein)が含有されたコラーゲンを、所望部位に配置することにより、関節軟骨の再生が報告されている。しかし、再生された関節軟骨は、隣接する既存の関節軟骨と連続して形成されず、完全な再生とは言えないのである。また、コラーゲンは、BSE(bovine spongiform encephalopathy)、いわゆる、狂牛病のような問題から、生体適用を回避する傾向もある。従って、生体適用が認められる材料のみを利用し、軟骨を再生させる新規組成物の開発が必要である。
【0005】
一方、身長成長は、骨長が増大しなければならず、そのような骨長成長は、軟骨内骨化過程(endochondral ossification)が関与する。軟骨内骨化は、軟骨が形成され、その中央に骨化中心が出現し、骨を形成することであり、骨端板で起こり、骨長成長と係わる。今のところ、身長成長を促進させることができる薬物として、成長ホルモン注射を主に使用している。
【0006】
しかしながら、成長ホルモンが、直接成長板の軟骨細胞増殖を促進することはするが、効果は、大きくはない。成長ホルモンが肝臓に作用すれば分泌されるIGF-1(insulin-like growth factor 1)が軟骨細胞を増殖させる主要因子である。従って、成長ホルモン投与時、血中IGF-1濃度が高くなるならば、正常に作用すると判断し、成長ホルモンやIGF-1が軟骨細胞に作用すれば、成長因子が分泌され、成長板が増殖することになる。また、成長ホルモン注射は、ホルモン分泌が正常になされている小児には適さず、使用時、むしろ甲状腺機能不全や脳下垂体機能亢進症のような副作用を起こし、また高価であるという問題点を有する。それにより、成長板軟骨増殖を促進させ、身長成長を誘導することができる物質の開発が至急である。
【0007】
関節軟骨及び成長板軟骨は、軟骨形態において、ガラス質軟骨(hyaline cartilage)に該当する。そのような軟骨組織の細胞外基質(ECM)は、コラーゲンタイプII(typeII collagen)、アグリカン(aggrecan)、ヒアルロン酸(hyaluronan)、HAPLN1(hyaluronan and proteoglycan link protein1)などが主な成分として、凝集体(aggregate)構造を有する。ここで、ヒアルロン酸鎖に多数のアグリカンが結合するが、HAPLN1は、この両者結合をさらに強く結束させ、凝集体を物理的及び化学的に安定化させる役割を行うと知られている。しかしながら、HAPLN1が軟骨関連疾患またはその症状を、治療、予防または改善する効果を有するということについては、全く知られているところがない。
【0008】
なお、軟骨関連疾患またはその症状に係わる研究として、米国特許公開公報第2016/0220699号においては、1以上の治療用ポリヌクレオチドをコーディングする発現ベクターを、個体の関節に伝達する段階を含む、軟骨細胞または軟骨型細胞を生成する方法を開示している。また、国際特許公開公報第2017/123951号においては、退行性ディスク疾患患者に、髄核(nucleus pulposus)に由来する成分を提供する段階を含む、軟骨細胞またはその類似細胞を生成する方法を開示している。しかしながら、前記文献には、HAPLN1を利用した軟骨関連疾患またはその症状の予防、改善、または治療については、具体的に言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許公開公報第2016/0220699号(2016.8.4.公開)
【文献】国際特許公開公報第2017/123951号(2017.7.20.公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、HAPLN1を利用し、軟骨関連疾患またはその症状の予防用、改善用または治療用の組成物を提供することを目的とする。
【0011】
具体的には、本発明は、軟骨再生用組成物、または骨関節炎の予防用、改善用または治療用の組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、成長板軟骨増殖用または骨長成長促進用の組成物、または低身長症(short stature)の予防用、改善用または治療用の組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、ヒアルロン酸及びプロテオグリカン連結蛋白質1(HAPLN1:hyaluronan and proteoglycan link protein 1)を有効成分として含む、軟骨再生用薬学組成物、軟骨再生用食品組成物、または軟骨再生用動物用飼料組成物を提供する。
【0013】
本発明は、HAPLN1を有効成分として含む、骨関節炎の予防用、改善用、または治療用の薬学組成物、食品組成物または動物用飼料組成物を提供する。
【0014】
本発明は、HAPLN1を有効成分として含む、成長板軟骨増殖用または骨長成長促進用の薬学組成物を提供する。また、本発明は、HAPLN1を有効成分として含む、成長板軟骨増殖用及び骨長成長促進用の食品組成物を提供する。また、本発明は、HAPLN1を有効成分として含む、成長板軟骨増殖用及び骨長成長促進用の動物用飼料組成物を提供する。
【0015】
本発明は、HAPLN1を有効成分として含む、骨長成長障害治療用または予防用の薬学組成物を提供する。本発明の骨長成長障害は、低身長症(short stature)、小人症、矮小症または性早熟症でもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、HAPLN1蛋白質は、軟骨形成促進能及び関節軟骨再生能を有し、軟骨細胞のTGF-β受容体Iの発現レベルを上昇させ、軟骨形成能保有細胞を増加させ、軟骨組織の再生を誘導することができる。従って、本発明のHAPLN1蛋白質は、TGF-βの信号伝逹を調節する物質として、軟骨再生用薬学組成物、軟骨再生用食品組成物または軟骨再生用動物用飼料組成物として有用にも活用される。
【0017】
また、本発明によれば、HAPLN1タンパク質を使用することにより、骨関節炎を予防、改善、または治療することができる有用な組成物を提供することができる。
【0018】
また、HAPLN1タンパク質は、成長板軟骨を増殖させ、骨長成長を促進することにより、既存のホルモン剤に比べ、副作用が少なく、すぐれた効果を有する、身長成長治療剤及び補助剤としても提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】Expi
TM 293細胞を、タンパク質発現システムとして利用して得られた組み換えヒトHAPLN1タンパク質に係わるSDS-PAGE分析結果を示す。
【
図2】老化マウスの退化された成長板につき、HAPLN1タンパク質の反復腹腔投与による軟骨形成能を確認したものであり、(A)は、組織内プロテオグリカンを、サフラニンO/ファーストグリーンFCF(Safranin O/Fast Green FCF)染色法で確認したものであり、(B)は、軟骨形成能を保有した軟骨細胞の存在を、免疫組織化学法(immunohistochemistry)で確認したものである。
【
図3】マウスの損傷された膝関節組織に対し、関節腔内に投与されたHAPLN1蛋白質の軟骨再生能、を免疫蛍光染色法(immunofluorescence)で確認したものである。
【
図4】ヒト関節軟骨細胞に対するHAPLN1蛋白質の軟骨形成促進能を確認したものであり、(A)は、軟骨特異遺伝子SOX9、軟骨基質構成物であるアグリカン及びコラーゲンタイプIIの遺伝子発現量を、重合酵素連鎖反応(PCR:polymerase chain reaction)を介して確認したものであり、(B)は、細胞外基質に蓄積されたプロテオグリカンを、サフラニンO/ファーストグリーンFCF染色法で確認したものである。
【
図5】マウス関節軟骨細胞に対するHAPLN1蛋白質のTGF-β信号伝逹調節能を確認したものであり、(A)は、HAPLN1蛋白質のTGF-β受容体I調節能を、ウェスタンブロット(western blot)で確認したものであり、(B)及び(C)は、HAPLN1蛋白質のTGF-β受容体I安定化、を重合酵素連鎖反応及びウェスタンブロットで確認したものであり、
図4(D)は、HAPLN1蛋白質による細胞表面TGF-β受容体I提示能向上を、ウェスタンブロットで確認したものである。
【
図6】HAPLN1タンパク質の骨関節炎改善能を分析するために使用された6個のマウス実験群を要約した模式図を示す。
【
図7】骨関節炎誘発マウスにおいて、HAPLN1タンパク質の関節軟骨組織形態改善能を確認したものであり、(A)は、各マウス実験群における関節軟骨組織形態をサフラニンO/ファーストグリーンFCF(Safranin O/Fast Green FCF)染色法で確認したものであり、(B)は、HAPLN1タンパク質の骨関節炎改善能を、骨関節炎組織病理学的評価法(OARSI score)を介して定量化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の発明者らは、老化マウス及び関節軟骨損傷マウスにおいて、ヒアルロン酸及びプロテオグリカン連結蛋白質1(HAPLN1:hyaluronan and proteoglycan link protein 1)蛋白質によるすぐれた軟骨形成促進能及び軟骨再生能を確認した。また、HAPLN1タンパク質が、軟骨細胞のTGF-β受容体Iタンパク質を選択的に安定して増加させることを確認しながら、本発明完成に至った。
【0021】
本発明は、HAPLN1タンパク質を有効成分として含む軟骨再生用薬学組成物を提供する。望ましくは、前記HAPLN1タンパク質は、軟骨形成を促進させ、関節軟骨を保護することができる。さらに望ましくは、前記HAPLN1タンパク質は、TGF-β受容体Iタンパク質を選択的に安定して増加させ、軟骨形成能保有細胞を増加させ、軟骨組織の再生を誘導することができる。
【0022】
一実施様態において、本発明は、有効量のHAPLN1タンパク質を、軟骨再生を必要とする対象体(subject)に投与することを含む、前記対象体において、軟骨を再生する方法を提供する。本願で使用された用語「対象体」とは、ヒト及び非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳類及び非哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、羊、犬、牛、馬などを含む。
【0023】
他の実施様態において、本発明は、軟骨再生のためのHAPLN1タンパク質の用途を提供する。
【0024】
本発明は、またHAPLN1タンパク質を有効成分として含む、軟骨再生用食品または動物用飼料組成物を提供する。
【0025】
本発明は、HAPLN1タンパク質を有効成分として含む、骨関節炎の予防用、改善用または治療用の薬学組成物を提供する。
【0026】
本願で使用された用語「骨関節炎」とは、一般的に退行性関節炎と呼ばれる疾患であり、骨の関節面を覆い包んでいる関節軟骨が摩耗され、軟骨下の骨が露出され、関節周辺の滑液膜に炎症が生じ、痛症と変形とが生じる疾患であり、当業界で一般的に理解して通用される意味に解釈される。外形的には、骨端部分に骨増殖体(osteophyte)と呼ばれる骨が育つことにんり、節が飛び出し、関節変形が起こってしまう。現在、骨関節炎を完全に治療する治療法はなく、薬物療法としては、鎮痛剤を使用し、単に痛症を緩和させるか、あるいは炎症緩和のために、非ステロイド系(NSAID)消炎剤を使用したりする。
【0027】
本発明のHAPLN1タンパク質を使用する場合、骨関節炎が発病した関節軟骨組織を改善させ、正常軟骨と類似した形態を有するようになる。さらには、HAPLN1タンパク質を使用するとき、関節面の損傷程度を低減させ、纎維化(fibrosis)及び骨増殖体(osteophyte)の数も減少させることにより、骨関節炎の進行が、予防、抑制または改善されうる。
【0028】
一実施様態において、本発明は、有効量のHAPLN1タンパク質を、骨関節炎の予防、改善または治療を必要とする対象体に投与することを含む、前記対象体において、骨関節炎を予防、改善または治療する方法を提供する。
【0029】
他の実施様態において、本発明は、骨関節炎の予防、改善または治療のためのHAPLN1タンパク質の用途を提供する。
【0030】
本発明は、またHAPLN1タンパク質を有効成分として含む、骨関節炎の予防用または改善用の食品または動物用飼料組成物を提供する。
【0031】
本発明は、HAPLN1タンパク質を有効成分として含む、成長板軟骨増殖用または骨長成長促進用の薬学組成物を提供する。
【0032】
本発明のHAPLN1タンパク質は、成長板内軟骨形成を促進させ、成長板活性を増進させ、成長板を強化する。それにより、HAPLN1タンパク質は、骨長成長障害の治療または予防のためにも使用される。このとき、前記骨長成長障害は、低身長症(short stature)、小人症、矮小症または性早熟症を非制限的に含む。
【0033】
一実施様態において、本発明は、有効量のHAPLN1タンパク質を、成長板軟骨増殖または骨長成長促進を必要とする対象体に投与することを含む、前記対象体において、成長板軟骨を増殖させたり、骨長成長を促進させたりする方法を提供する。本発明は、また有効量のHAPLN1タンパク質を、骨長成長障害の治療または予防を必要とする対象体に投与することを含む、前記対象体において、骨長成長障害を治療または予防する方法を提供する。
【0034】
さらなる一実施様態において、本発明は、成長板軟骨増殖または骨長成長促進のためのHAPLN1タンパク質の用途を提供する。本発明は、また骨長成長障害の治療または予防のためのHAPLN1タンパク質の用途を提供する。
【0035】
本発明は、またHAPLN1タンパク質を有効成分として含む、成長板軟骨増殖用及び骨長成長促進用の食品または動物用飼料組成物を提供する。
【0036】
本発明は、軟骨細胞にHAPLN1を処理し、軟骨組織を再生させる方法を提供する。具体的には、軟骨細胞を対象体から分離する段階と、HAPLN1を軟骨細胞に処理する段階と、を含む、HAPLN1を利用し、試験管内で(in vitro)軟骨組織を再生させる方法を提供する。
【0037】
本発明の組成物が薬学組成物である場合、投与のために、前述の有効成分以外に、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含んでもよい。
【0038】
本発明の組成物が食品組成物である場合、さまざまな栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤のような風味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含んでもよい。
【0039】
以下においては、実施例を介し、本発明についてさらに詳細に説明する。それら実施例は、ただ、本発明についてさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨により、本発明の範囲が、それら実施例によって制限されるものではないということは、当業界において当業者であるならば、自明であろう。
【実施例】
【0040】
製造例:HAPLN1タンパク質の製造
タンパク質精製を容易にするために10個のヒスチジンが結合される組み換えヒト型HAPLN1遺伝子を合成した後、プラスミドpcDNA3.4-TOPOに挿入させ、タンパク質発現システムを利用し、Expi
TM 293細胞に形質感染させた。培養3日後、細胞培養液を採取し、タンパク質を精製するために、キレートカラムであるHisTrapカラムに通過させた後、0.5M NaCl含むイミダゾールPBS緩衝溶液を利用し、20mMないし500mMのイミダゾール塩度勾配に溶出させて精製した。その後、結合されているヒスチジンを除去するために、TEV proteaseを処理した後、添加されたTEV proteaseは、さらにDynaBeadsを利用して除去した。生成されたHAPLN1タンパク質を、SDS-PAGEにローディングさせ、精製されたタンパク質を確認した(
図1)。その後、精製度を確認し、純度98%以上のタンパク質を得て、それを、in vitro細胞実験またはin vivo効能試験に使用した。
【0041】
実施例1:生体内(in vivo)退化された軟骨組織におけるHAPLN1蛋白質による軟骨再生能の分析
1-1.HAPLN1蛋白質の反復腹腔投与による退化された成長板内軟骨の形成促進
6週齢の雄C57BL/6マウスを若い(young)群に、20ヵ月齢のC57BL/6マウスを老化(old)群に分類し、老化群には、HAPLN1蛋白質を、リン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)に希釈し、0.1mg/kgの用量で、2週間毎日腹腔投与する一方、対照群は、PBSを同等な方法で腹腔投与した。
【0042】
各群マウスの大腿骨及び膝関節の部位を取り、中性緩衝10%ホルマリン(NBF:neutral buffered 10% formalin)で48時間固定させ、連続して10%エチレンジアミン四酢酸(EDTA:ethylenediaminetetraacetic acid)溶液で、7日間脱灰過程を遂行した。次に、各検体をパラフィン(paraffin)に包埋(embedding)し、パラフィンブロックを製造し、sagittal方向に5μm厚の組織切片スライドを製造した。組織学的評価のために、各組織切片スライドの軟骨組織は、サフラニンO/ファーストグリーンFCF(SO/FG)染色法を遂行して視覚化した。染色が完了した組織切片の観察は、Ni-U(Nikon)顕微鏡及びDS-Ri1(Nikon)デジタルカメラを利用して撮影し、その結果を、
図2(A)に示した(縮尺バー=1mm)。
【0043】
図2(A)から分かるように、若い対照群(young control)と比較したとき、老化対照群(old control)の成長板は退化し、軟骨組織跡だけ確認することができる一方、HAPLN1蛋白質を反復的に腹腔投与され老化群(old HAPLN1)においては、退化した成長板に軟骨が形成されたことを確認することができた(矢印先)。
【0044】
1-2.HAPLN1蛋白質の反復腹腔投与による軟骨形成能保有軟骨細胞の形成及び増加
前記実施例1-1から、HAPLN1蛋白質の反復腹腔投与によって誘導された軟骨形成部位に、軟骨形成能を保有した細胞の存在いかんを確認するために、当該部位に対し、軟骨特異転写因子(cartilage-specific transcription factor)であるSOX9を、免疫組織化学法(IHC:immunohistochemistry)を利用して染色した。染色が完了した組織切片の観察は、Ni-U(Nikon)顕微鏡及びDS-Ri1(Nikon)デジタルカメラを利用して撮影し、その結果を
図2(B)に示した(縮尺バー=1mm)。
【0045】
図2(B)から分かるように、若い対照群(young control)においては、SOX9を発現する細胞を、軟骨組織内に全般的に保有している一方、老化対照群(old control)においては、SOX9を発現する細胞を全く発見することができなかった。しかし、HAPLN1蛋白質を反復的に腹腔投与された老化群(old HAPLN1)の軟骨形成刺激部位において、SOX9を発現する細胞が多数発見されることを確認することができた(矢印)。
【0046】
従って、HAPLN1タンパク質は、成長板軟骨を増殖または再生させ、成長板強化及び骨長成長を促進させるということが分かる。
【0047】
実施例2:生体内(in vivo)損傷された軟骨組織におけるHAPLN1蛋白質による軟骨の再生能分析
7週齢の雄C57BL/6マウスを、次のように3個群に分配した。正常対照群(Sham control群)は、DMM(destabilization of medial meniscus)施術に係わる模擬施術群(sham operation)であり、施術後4週の間、既存の条件で飼育した。ビークル処置群(DMM control群)は、DMM施術後8週の間、既存の条件で飼育しながら、最後の4週の間は、週1回PBSを関節腔内投与した。HAPLN1処置群(DMM HAPLN1群)は、DMM施術後8週の間、既存の条件で飼育しながら、最後の4週の間は、週1回HAPLN1蛋白質を、PBSに1μg/mL濃度に希釈して関節腔内投与した。
【0048】
飼育終了時、施術及び処置が適用された膝組織を摘出し、NBFで48時間固定させ、連続して10% EDTA溶液で7日間脱灰過程を遂行した。次に、各検体をパラフィンに包埋してパラフィンブロックを製造し、sagittal方向に5μm厚の組織切片スライドを製造した。免疫蛍光染色法(IF:immunofluorescence)を利用し、コラーゲンタイプII(Col2:type II collagen)を緑色蛍光に染色し、細胞核は、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を使用して青色蛍光に染色した。染色が完了した組織切片の観察は、Ni-U(Nikon)顕微鏡及びDS-Ri1(Nikon)デジタルカメラを利用して撮影し、その結果を
図3に示した(縮尺バー=200μm)。
【0049】
図3から分かるように、正常対照群(Sham control群)で発見されるコラーゲンタイプII発現細胞の数が、ビークル処置群(DMM control群)で大きく減少している一方、HAPLN1処置群(DMM HAPLN1群)において、コラーゲンタイプII発現細胞の数が大きく増加するということを確認することができた(矢印の先)。
【0050】
従って、HAPLN1タンパク質は、軟骨再生にすぐれた効果を有するということが分かる。
【0051】
実施例3:HAPLN1蛋白質の試験管内軟骨の形成促進能の分析
3-1.HAPLN1蛋白質によるヒト関節軟骨細胞の軟骨形成能の上昇
ヒト関節軟骨細胞(HAC:human articular chondrocyte)は、10%牛胎児血清(FBS、Gibco)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、1%非必須アミノ酸(NEAA:non-essentialaminoacid、Gibco)が含まれたDulbecco’s modified Eagle medium/F12 1:1混合(DMEM/F12、Gibco)培地内で、37℃、5%CO2の条件で培養された。
【0052】
HACの軟骨型性能を試すためのモデルとして、アルギン酸塩ビード(alginate bead)内に細胞を包埋する三次元培養システムを利用した。1.25%アルギン酸塩(alginate)溶液に、HACを均一に混合し、ビード当たり30,000個の細胞が含まれるようにした。それらは、前記成長培地に、50μg/mL L-アスコルビン酸2-リン酸(L-ascorbic acid 2-phosphate)、1% ITS(insulin-transferrin-selenium、Gibco)及び10ng/mL TGF-β1を添加して培養し、HAPLN1処理群は、50ng/mL HAPLN1を追加して添加した。培養は、37℃、5% CO2条件で、7日ないし28日間持続させた。
【0053】
培養終了時、アルギン酸塩ビードに包埋されたHACを回収するために、55mM EDTA用液にアルギン酸塩を溶解させた後、500xgで3分間、遠心分離(centrifugation)した。遠心分離後に得られた細胞でもって、RNA抽出及び重合酵素連鎖反応(PCR)を行い、遺伝子発現様相を比較分析し、その具体的な過程は、次の通りである。
【0054】
TRIzol(Thermo Scientific)溶液を利用し、製造社の指示事項により、RNAを抽出した。得られたRNA0.1μgから、oligo-dT20プライマー(primer)と、SuperScript III First-Strand Synthesis Supermix(Invitrogen)を利用し、first-strand cDNAを合成した。得られたcDNAは、iQ SYBR Green Supermix(Bio-rad)を利用し、各関心遺伝子に係わる200nMプライマーと共にPCRを進めた。反応条件としては、最初5分間95℃を維持させた後、95℃で10秒、62℃で15秒、72℃で20秒の3段階過程を45回反復た。増幅信号は、CFX Connect(Bio-rad)でリアルタイム測定され、関心遺伝子の発現量は、それぞれのGAPDH発現量に対する相対値として算出される。その結果を
図3(A)にしめし、PCRに使用された各ヒト遺伝子に係わるプライマー配列は、次の通りである。
【0055】
【0056】
図4(A)から分かるように、HAPLN1蛋白質は、HACをして、SOX9遺伝子発現を増加させると共に、アグリカン(ACAN:aggrecan)及びコラーゲンタイプII(COL2A1)の遺伝子発現を増加大させるということを確認することができた。
【0057】
3-2.HAPLN1蛋白質によるヒト関節軟骨細胞の細胞外基質内のプロテオグリカンの蓄積増加
前記実施例3-1から、HAPLN1添加による軟骨基質の細胞外蓄積を評価するために、培養28日目のアルギン酸塩ビードを、NBFで15分間固定し、OCT compound(Sakura)内で液体窒素によって凍結させた。そこから、厚み5μmの凍結切片を得て、アセトン(acetone)固定後、サフラニンO/ファーストグリーンFCF染色で視覚化した。染色された組織切片の観察は、Ni-U(Nikon)顕微鏡及びDS-Ri1(Nikon)デジタルカメラを利用して撮影し、その結果を
図4(B)に示した(縮尺バー=250μm)。
【0058】
図4(B)から分かるように、HAPLN1蛋白質が含まれた培地で培養されたHACのアルギン酸塩ビードにおいては、その対照群に比べ、サフラニンOによって染色されたプロテオグリカンの蓄積が大きく増加したということを確認することができた。
【0059】
実施例4:HAPLN1蛋白質によるTGF-β信号伝逹調節能の分析
4-1.HAPLN1蛋白質によるマウス関節軟骨細胞のTGF-β受容体I(TβR1)の蛋白質量の増加
5日齢のICRマウスの両足関節軟骨から、未成熟マウス関節軟骨細胞(iMAC:immature murine articular chondrocyte)を分離した。得られたiMACは、10% FBS(Gibco)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、1% NEAA(Gibco)が含まれたDMEM/F12(Gibco)培地内で、37℃、5% CO2条件で培養された。
【0060】
プレート底に高密度に培養されたiMACに、100ng/mL HAPLN1を3時間ないし72時間処理した後で細胞を収集し、RIPA(radioimmunoprecipitation assay)緩衝液内で蛋白質を抽出した。その後、ウェスタンブロット(western blot)を行い、TGF-β受容体I(TβR1)、ALK1(activin receptor-like kinase 1)、TGF-β受容体II(TβR2)及びGapdhの蛋白質発現レベルを確認し、その結果を
図5(A)に示した。
【0061】
図5(A)から分かるように、HAPLN1蛋白質により、iMACのTGF-β受容体I(TβR1)の蛋白質発現レベルが上昇することを確認することができた。一方、ALK1(activin receptor-like kinase 1)及びTGF-β受容体II(TβR2)の発現レベルは、変動がないということを確認することができた。
【0062】
4-2.HAPLN1蛋白質によるマウス関節軟骨細胞のTGF-β受容体I(TβR1)の安定性の上昇
前記実施例4-1で示されたHAPLN1蛋白質によるTGF-β受容体I(TβR1)蛋白質レベル上昇が、安定性上昇による結果であるということを検証するために、同一実験条件下で、24時間及び72時間培養した細胞から、蛋白質レベルを比較した3種遺伝子の発現様相を比較分析すると共に、蛋白質生合成(de novo synthesis)を制限した環境において、HAPLN1によるTGF-β受容体I(TβR1)蛋白質レベル上昇を検証した。
【0063】
そのためのRNA抽出及びPCR過程は、次の通りである。
【0064】
TRIzol(Thermo Scientific)溶液を利用し、製造社の指示事項により、RNAを抽出した。得られたRNA 0.1μgから、oligo-dT20プライマーとSuperScript III First-Strand Synthesis Supermix(Invitrogen)とを利用し、first-strand cDNAを合成した。得られたcDNAは、iQ SYBR Green Supermix(Bio-rad)を利用し、各関心遺伝子に係わる200nMプライマーと共にPCRを進めた。反応条件としては、最初5分間95℃を維持させた後、95℃ 10秒、61℃ 15秒、72℃ 20秒の3段階過程を45回反復た。増幅信号は、CFX Connect(Bio-rad)でリアルタイム測定され、関心遺伝子の発現量は、それぞれのGapdh発現量に係わる相対値として算出された。その結果を、
図4(B)に示し、PCRに使用された各マウス遺伝子に係わるプライマー配列は、次の通りである。
【0065】
【0066】
また、プレート底に高密度に培養されたiMACに、10μM、シクロヘキシミド(CHX)を処理して露出させる間、シクロヘキシミド(CHX)を処理する0.5時間前(pre)あるいは0.5時間後(post)、から200ng/mL HAPLN1を処理した。シクロヘキシミド(CHX)処理24時間後、PBSでプレートを、細胞が付着した状態で洗浄し、細胞を収集し、RIPA緩衝液内で蛋白質を抽出した。抽出された溶解物(cell lysate)にウェスタンブロットを行い、TGF-β受容体I(TβR1)、ALK1(activin receptor-like kinase 1)、TGF-β受容体II(TβR2)及びGapdhの蛋白質発現レベルを確認し、その結果を
図5(C)に示した。
【0067】
図5(B)と
図5(C)とから分かるように、HAPLN1蛋白質により、iMACのTGF-β受容体I(TβR1)、ALK1(activin receptor-like kinase 1)、TGF-β受容体II(TβR2)のうちいずれも、その遺伝子発現が誘導あるいは抑制されないということを確認することができた。一方、HAPLN1蛋白質により、TGF-β受容体I(TβR1)は、蛋白質発現レベルが変動していないALK1(activin receptor-like kinase 1)及びTGF-β受容体II(TβR2)とは異なり、その発現レベルが上昇するということを確認することができた。それは、HAPLN1蛋白質がTGF-β受容体I(TβR1)遺伝子に対する転写を誘導せず、その蛋白質の半減期を増大させたものであるということを示し、それは、iMACが保有したTGF-β受容体I(TβR1)蛋白質の安定性ガ上昇したということを示すのである。
【0068】
4-3.HAPLN1蛋白質によるマウス関節軟骨細胞のTGF-β受容体I(TβR1)の細胞表面への提示量の増加
プレート底に高密度に培養されたiMACに、10μMシクロヘキシミド(CHX)を処理して露出させる間、シクロヘキシミド(CHX)を処理する0.5時間前(pre)あるいは0.5時間後(post)から、200ng/mL HAPLN1を処理した。シクロヘキシミド(CHX)処理24時間後、PBSでプレートを、細胞が付着した状態で洗浄し、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin(Thermo Scientific)を2時間反応させ、細胞表面蛋白質をビオチン(biotin)標識した。0.1M グリシン溶液で反応を終結させた後で細胞を収集し、NP-40 lysis buffer(Bioworld)内で蛋白質を抽出した。抽出された溶解物において、ビオチン(biotin)抗体と磁性ビード(magnetic bead)とを利用した免疫沈降法を介して、ビオチン(biotin)が標識された細胞表面蛋白質だけ選択的に抽出し、そのように得られた分画物にウェスタンブロットを行い、TGF-β受容体I(TβR1)、ALK1(activin receptor-like kinase 1)、TGF-β受容体II(TβR2)及びGapdhの蛋白質発現レベルを確認し、その結果を
図5(D)に示した。
【0069】
図5(D)から分かるように、HAPLN1蛋白質により、iMACの細胞表面に提示されているTGF-β受容体I(TβR1)蛋白質の発現レベルが上昇していることを確認することができると共に、ALK1(activin receptor-like kinase 1)及びTGF-β受容体II(TβR2)の発現、は変動がないということを確認することができた。
【0070】
従って、HAPLN1タンパク質は、TGF-β受容体I(TβR1)タンパク質を選択的に安定して増加させるということが分かる。
【0071】
実施例5:生体内(in vivo)投与されたHAPLN1タンパク質による骨関節炎改善能分析
5-1.骨関節炎誘発マウスにおけるHAPLN1タンパク質の関節軟骨組織形態改善能評価
HAPLN1タンパク質の骨関節炎改善能を分析するために、マウス膝関節内内側半月硬骨靭帯(medial meniscotibial ligament)を切断し、骨関節炎を誘発する疾病モデルとして、DMM(destabilization of medial meniscus)施術骨関節炎モデルを使用した。
【0072】
7週齢雄C57BL/6マウスを、6個の実験群に分配し、次のように処置した。
【0073】
-非施術正常群(NC-4W:no surgery control)は、6匹を割り当て(n=6)、いかなる施術も行っていないまま4週間飼育した。
-模擬施術正常群(SC-4W:sham operation control)は、6匹を割り当て(n=6)、模擬施術を実施した後、4週間飼育した。
-軽度骨関節炎群(DC-4W:DMM 4-week control)は、6匹を割り当て(n=6)、DMM施術後、4週間飼育した。
-中等度骨関節炎群(DC-8W:DMM8-week control)は、9匹を割り当て(n=9)、DMM施術後、4週間飼育し、その後、4週間、リン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)を、週1回関節腔内(intra-articular)注射(5μL)した。
【0074】
-低用量HAPLN1投与群(DL-8W:DMM low dose HAPLN1)は、9匹を割り当て(n=9)、DMM施術後、4週間飼育し、その後、4週間、PBSに希薄させたHAPLN1タンパク質0.1μg/mLを、週1回関節腔内(intra-articular)注射(5μL)した。
【0075】
-高用量HAPLN1投与群(DH-8W:DMM high dose HAPLN1)は、9匹を割り当て(n=9)、DMM施術後、4週間飼育し、その後、4週間、PBSに希薄したHAPLN1タンパク質1.0μg/mLを、週1回関節腔内(intra-articular)注射(5μL)した。
【0076】
前述の実験群を要約すれば、表3及び
図6の通りである。
【0077】
【0078】
飼育終了時、施術及び処置が適用された膝組織を摘出し、中性緩衝10%ホルマリン(NBF:neutral buffered 10% formalin)で、48時間間固定(fixation)させ、次に、10%エチレンジアミン四酢酸(EDTA:ethylenediaminetetraacetic acid)溶液で、7日間脱灰(decalcification)過程を遂行した。次に、各検体を、パラフィン(paraffin)に包埋し、パラフィンブロックを製造し、5μm厚のsagittal切片スライドを製造した。
【0079】
関節軟骨組織の形態学的評価のために、各組織切片スライドの軟骨組織をサフラニンO/ファーストグリーンFCF(SO/FG:safranin O/fast green FCF)染色法を介して視覚化させた。染色が完了した組織切片の観察は、Ni-U(Nikon)顕微鏡及びDS-Ri1(Nikon)デジタルカメラを利用して撮影し、その結果を
図7(A)に示した。
【0080】
図7(A)から分かるように、非施術正常群(NC-4W)と模擬施術正常群(SC-4W)は、関節軟骨が完全な状態であるということを確認することができ、それに比べ、軽度骨関節炎群(DC-4W)及び中等度骨関節炎群(DC-8W)に行くほど関節面に消失が生じているということを確認することができた。一方、低用量HAPLN1投与群(DL-8W)と高用量HAPLN1投与群(DH-8W)とにおいては、正常対照群の関節軟骨形態と類似して示され、高用量HAPLN1投与群(DH-8W)は、正常対照群とほぼ同一であるということを確認することができた。
【0081】
5-2.HAPLN1タンパク質の骨関節炎改善能に対する定量的評価
HAPLN1タンパク質の骨関節炎改善能を数値化させるために、前述の実施例5-1から得た組織染色スライドを、国際骨関節炎学会(OARSI:Osteoarthritis Research Society International)で提供する骨関節炎組織病理学的評価法(OARSI score)で評価した。該評価法は、関節面の損傷程度、纎維化(fibrosis)及び骨増殖体(osteophyte)のいかんを数値化させるる方法であり、点数が高いほど、骨関節炎の病理進行が進んでいると判断する。
【0082】
図7(B)から分かるように、非施術正常群(NC-4W)と模擬施術正常群(SC-4W)は、骨関節炎の兆候が見えておらず、それに比べ、軽度骨関節炎群(DC-4W)から中等度骨関節炎群(DC-8W)に移るほど、骨関節炎が、施術後の飼育期間に比例して進んでいることを確認することができた。
【0083】
一方、低用量HAPLN1投与群(DL-8W)と高用量HAPLN1投与群(DH-8W)とにおいては、それらに対する陰性対照群である中等度骨関節炎群(DC-8W)に比べ、骨関節炎進行が抑制されているか、あるいは骨関節炎が改善されていることを確認することができた。また、そのような進行抑制能及び改善能は、中等度骨関節炎群(DC-8W)の状態を、軽度骨関節炎群(DC-4W)と同等なレベルに戻したことを確認することができた。
【0084】
従って、HAPLN1タンパク質が、骨関節炎を予防、改善または治療するのに効果があるということが分かる。