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  • 特許-合成樹脂製容器蓋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
B65D41/34 116
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018203523
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020070031
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中村 真
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182802(JP,A)
【文献】特開2013-126881(JP,A)
【文献】特開2018-150056(JP,A)
【文献】特開2016-016900(JP,A)
【文献】中国実用新案第203780992(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリットと該スリット間に存在する複数個の橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、該スカート壁は該破断ラインよりも上方の主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には半径方向内方に突出し且つ周方向に延在する複数個の係止突条から構成された係止手段が配設されている合成樹脂製容器蓋において、
該タンパーエビデント裾部の内周面には、上下方向に見て該係止突条の上面から上方に向かって内径が漸次増大する嵌合面を有する嵌合部が、該係止突条の各々に対して周方向に間隔をおいて複数個配設されていて、該嵌合部は少なくとも該係止突条の周方向両端部の各々に対応して配設されている、ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋。
【請求項2】
該係止突条の各々は該タンパーエビデント裾部の内周面から半径方向内方に延出する上面、下方に向かって漸次内径が増大する下面、及び該上面と該下面との境界に位置する内面を有し、該係止突条の周方向両端部においては該上面の半径方向内方への延出長さが周方向両端に向かって漸次低減され及び/又は該下面の下端が周方向両端に向かって漸次上方に変位しており、
該係止突条の該周方向両端部の各々に対応して周方向幅が比較的大きい1個の該嵌合部が配設され、該係止突条の周方向中央部に対応して周方向幅が比較的小さい少なくとも1個の該嵌合部が配設されている、請求項1記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項3】
該嵌合部の該嵌合面は、JIS B0601で定義されている算術平均粗さ(Ra)で2乃至20μmの粗面である、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スカート壁におけるタンパーエビデント裾部の内周面には、周方向に延在する複数個の係止突条から構成された係止手段が形成されていると共に、上下方向に見て係止突条の上面から上方に向かって内径が漸次増大する嵌合面を有する嵌合部が形成されている形態の合成樹脂製容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、ガラス、合成樹脂或いは金属薄板から形成され、円筒形状である口頸部の外周面には雄螺条とこの雄螺条の下方に位置する係止あご部が配設されている容器のための容器蓋として、円形天面壁とこの天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、スカート壁には周方向に間隔おいて周方向に延びるスリットとかかるスリット間に存在する橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、スカート壁は破断ラインよりも上方の主部と破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されている合成樹脂製容器蓋が広く実用に供されている。スカート壁の主部の内周面には雌螺条が形成され、タンパーエビデント裾部の内周面には係止手段が形成されている。係止手段は、半径方向内方に突出し且つ周方向に延在する複数個の係止突条から構成されている。
【0003】
内容物が充填された容器の口頸部を密封する際には、口頸部に容器蓋を被嵌せしめて閉回転方向に回転せしめ、口頸部の雄螺条に容器蓋の雌螺条を螺合せしめる。かくして口頸部に容器蓋を所要とおりに装着すると、容器蓋の係止手段は口頸部の係止あご部を弾性的に乗り越えてその下方に位置する。口頸部を開封して容器の内容物を消費する際には、容器蓋を開方向に回転せしめる。かくすると、雄螺条と雌螺条との螺合解除に応じて口頸部に対して容器蓋が上昇せしめられる。容器蓋が幾分上昇せしめられると、容器蓋の係止手段が口頸部の係止あご部に係止せしめられ、これによってタンパーエビデント裾部の上昇が阻止される。容器蓋の開方向への回転を続けると、スカート壁に形成されている周方向破断ラインが破断され、スカート壁のタンパーエビデント裾部が主部から分離される(或いは、タンパーエビデント裾部に軸線方向破断ラインが形成されている場合には、軸線方向破断ラインが破断されてタンパーエビデント裾部が無端環状から有端帯状に展開され、タンパーエビデント裾部は主部から完全に分離されることなく周方向の一部において主部に接続され続ける)。容器蓋の開方向への回転を続けると、タンパーエビデント裾部を残留せしめて容器蓋が(或いはタンパーエビデント裾部を含む容器蓋の全体が)口頸部から離脱され、口頸部が開封される。
【0004】
下記特許文献1には、破断ラインが破断されることなく容器蓋の全体が容器の口頸部から離脱されてしまう所謂すっぽ抜けを回避するために、タンパーエビデント裾部の内周面に、係止突条の上面から上方に向かって半径方向内径が漸次増大し且つ周方向に連続して存在する環状嵌合面を有する嵌合部を形成することが開示されている。かような嵌合部が形成されている容器蓋においては、係止突条が口頸部の係止あご部の下面に係止する際には、嵌合部の嵌合面が係止あご部の外周面に密接せしめられて、タンパーエビデント裾部が弾性的に変形乃至変位することが防止され、かくしてすっぽ抜けが防止される。しかしながら、上記のとおりの嵌合面を有する嵌合部を形成すると、容器の口頸部から容器蓋を離脱せしめる際の、容器蓋回転開始時の必要トルク(一般に「ファーストトルク」と称されている)と破断ラインを破断する時の必要トルク(一般に「セカンドトルク」と称されている)との間における必要トルクが充分に小さい値にならず、消費者に不快な違和感、即ち容器蓋の回転に対して抵抗する所謂引きずり感を与えることが判明している。
【0005】
下記特許文献2には、上記ファーストトルクと上記セカンドトルクとの間の必要トルクを低減せしめるために、嵌合部の嵌合面を粗面にすることが提案されている。また、下記特許文献3には、容器に内容物を充填する際に口頸部に付着した内容物を洗浄するために口頸部に噴射された洗浄液を流下せしめるために、係止手段を構成する複数個の係止突条間においては嵌合部を省略して排液路を規定することが開示されている。係止突条間において嵌合部を省略すると、これに起因して係止あご部と嵌合面との接触面積が低減され、上記ファーストトルクと上記セカンドトルクとの間の必要トルクが幾分低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-126881号公報
【文献】特開2016-155589号公報
【文献】特開2016-16900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、上記特許文献2及び3に開示されている容器蓋によれば、上記特許文献1に開示されている容器蓋に比べて、上記ファーストトルクと上記セカンドトルクとの間の必要トルクが幾分か低減されるが、本発明者等の経験によれば、上記ファーストトルクと上記セカンドトルクとの間の必要トルクの低減は未だ充分ではなく、消費者に不快な違和感、即ち容器蓋の回転に対して抵抗する所謂引きずり感を与えることが充分確実に回避されない。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その第一の技術的課題は、上記ファーストトルクと上記セカンドトルクとの間の必要トルクが充分に低減される、新規且つ改良された合成樹脂製容器蓋を提供することである。
【0009】
本発明の第二の技術的課題は、上記第一の技術的課題の達成に加えて、係止突条の存在に起因してタンパーエビデント裾部の内周面にはアンダーカットが形成されており、これによって成形された容器蓋を成形型から取り出す際には所謂無理抜きを生じ、係止突条の周方向両端部には比較的大きな力がかかるにも拘らず、係止突条の周方向両端部の変形が抑制される、新規且つ改良された合成樹脂製容器蓋を提供することである。
【0010】
本発明の第三の技術的課題は、上記第一及び第二の技術的課題の達成に加えて、係止手段を構成する複数個の係止突条の各々が、タンパーエビデント裾部の内周面から半径方向内方に延出する上面、下方に向かって漸次内径が増大する下面、及び該上面と該下面との境界に位置する内面を有し、係止突条の周方向両端部においては上面の半径方向内方への延出長さが周方向両端に向かって漸次低減され及び/又は下面の下端が周方向両端に向かって漸次上方に変位しており、従って係止突条の両端部は中心部に比べて剛性が低い場合でも、成形された容器蓋を成形型から取り出す際に係止突条の両端部が変形されてしまうことが確実に回避される、新規且つ改良された合成樹脂製容器蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意検討の結果、嵌合面を有する嵌合部を周方向に間隔をおいて複数個形成し、かかる嵌合部の周方向配列を適宜に設定することによって、上記第一の技術的課題を達成し、そしてまた上記第一の技術的課題と共に上記第二及び第三の技術的課題を達成することができることを見出した。
【0012】
本発明によれば、上記第一の技術的課題を達成する合成樹脂製容器蓋として、
円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリットと該スリット間に存在する複数個の橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、該スカート壁は該破断ラインよりも上方の主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には半径方向内方に突出し且つ周方向に延在する複数個の係止突条から構成された係止手段が配設されている合成樹脂製容器蓋において、
該タンパーエビデント裾部の内周面には、上下方向に見て該係止突条の上面から上方に向かって内径が漸次増大する嵌合面を有する嵌合部が、該係止突条の各々に対して周方向に間隔をおいて複数個配設されていて、該嵌合部は少なくとも該係止突条の周方向両端部の各々に対応して配設されている、ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋が提供される
【0013】
記本発明の第二の技術的課題は、該嵌合部は該係止突条の周方向両端部の各々に対応して配設されている、形態にせしめることによって達成される。
【0014】
上記本発明の第三の技術的課題は、該係止突条の各々は該タンパーエビデント裾部の内周面から半径方向内方に延出する上面、下方に向かって漸次内径が増大する下面、及び該上面と該下面との境界に位置する内面を有し、該係止突条の周方向両端部においては該上面の半径方向内方への延出長さが周方向両端に向かって漸次低減され及び/又は該下面の下端が周方向両端に向かって漸次上方に変位しており、
該係止突条の該周方向両端部の各々に対応して周方向幅が比較的大きい1個の該嵌合部が配設され、該係止突条の周方向中央部に対応して周方向幅が比較的小さい少なくとも1個の該嵌合部が配設されている、形態にせしめることによって達成される。
【0015】
該嵌合部の該嵌合面は、JIS B0601で定義されている算術平均粗さ(Ra)で2乃至20μmの粗面であるのが好都合である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の合成樹脂製容器蓋においては、周方向に連続して延在する嵌合部ではなくて周方向に間隔をおいて複数個の嵌合部が適宜に配列されている故に、口頸部の係止あご部の外周面と嵌合部の嵌合面との接触面積が大幅に低減され、これに起因して上記ファーストトルクと上記セカンドトルクとの間の必要トルクが充分に低減される。
【0017】
該嵌合部は該係止突条の周方向両端部の各々に対応して配設されている形態の場合、周方向両端部に配設された嵌合部の存在に起因して係止突条が補強されるため、成形された容器蓋を成形型から取り出す際に係止手段の無理抜きが生じても、係止突条の両端部の変形が抑制される。
【0018】
該係止突条の各々は該タンパーエビデント裾部の内周面から半径方向内方に延出する上面、下方に向かって漸次内径が増大する下面、及び該上面と該下面との境界に位置する内面を有し、該係止突条の周方向両端部においては該上面の半径方向内方への延出長さが周方向両端に向かって漸次低減され及び/又は該下面の下端が周方向両端に向かって漸次上方に変位している形態の場合、係止突条の両端部は剛性が低減されるが、該係止突条の該周方向両端部の各々に対応して周方向幅が比較的大きい1個の該嵌合部が配設されていると、成形された容器蓋を成形型から取り出す際における係止手段の両端部の無理抜きが、周方向幅が比較的大きい嵌合部の存在によって緩和され、成形された容器蓋を成形型から取り出す際に係止突条の両端部が変形されてしまうことが確実に回避される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の好適実施形態を、一部を断面で示す正面図。
図2図1に示す容器蓋及びこれが装着された容器の口頸部の一部を拡大して示す図。
図3図1に示す容器蓋のタンパーエビデント裾部を展開して示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の好適実施形態について、更に詳述する。
【0021】
図1を参照して説明すると、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形又は圧縮成形することができる容器蓋2は、円形天面壁4とこの天面壁4の周縁から垂下する円筒形スカート壁6とを具備する。天面壁4の内面外周縁部には、下方に垂下する比較的長い筒状の内側シール片8及び下方に垂下する比較的短い筒状の外側シール片10が形成されている。
【0022】
スカート壁6には周方向に延びる破断ライン12が形成されており、スカート壁6は破断ライン12より上方の主部14と破断ライン12より下方のタンパーエビデント裾部16とに区画されている。破断ライン12は周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリット(切り溝)18とスリット18間に存在する複数個の橋絡部20とから構成されており、タンパーエビデント裾部16は複数個の橋絡部20を介して主部14に接続されている。
【0023】
スカート壁6の主部14の外周面には、周方向に見て交互に存在する凹凸形状から構成された滑り止めローレット22が形成されている。スカート壁6の主部14の内周面には雌螺条24が形成されている。雌螺条24には周方向に間隔をおいて複数個の螺条高さ低減部26が設けられている。
【0024】
タンパーエビデント裾部16の内周面には係止手段27が配設されている。図示の実施形態においては、係止手段27は、半径方向内方に突出し且つ周方向に延在する複数個(図示の実施形態においては5個)の係止突条28から構成されている。図1と共に図2を参照して説明すると、係止突条28の各々の主部(両端部を除く部分)の縦断面形状は略直角三角形状であり、係止突条28の各々はタンパーエビデント裾部16の内周面から半径方向内方に延出する上面30、下方に向かって漸次内径が増大する下面32、及び上面30と下面32との境界に位置する内面34を有している。係止突条28の周方向両端部においては上面30の半径方向内方への延出長さが周方向両端に向かって漸次低減され及び/又は下面32の下端が周方向両端に向かって漸次上方に変位しているのが好ましい。図示の実施形態においては、係止突条28の周方向両端部における上面30の半径方向内方への延出長さは(必ずしも明確に図示はされていないが)周方向両端に向かって漸次低減されていると共に、下面32の下端は周方向両端に向かって漸次上方に変位せしめられている。
【0025】
タンパーエビデント裾部16の内周面には、径方向内方に突出した環状突条36も形成されている。環状突条36は、図2を参照することによって明確に理解されるとおり、上下方向に見て係止突条28の上面30に接続される部位に設けられている。図1と共に図3を参照して説明を続けると、本発明の容器蓋にあっては、タンパーエビデント裾部16の内周面に、上下方向に見て係止突条28の上面30から上方に向かって内径が漸次増大する嵌合面38を有する嵌合部40が、係止突条28の各々に対して周方向に間隔をおいて複数個配設されていることが重要である。図示の実施形態においては、係止突条28の周方向両端部の各々に対応して周方向幅が比較的大きい1個の嵌合部40aが配設され、係止突条28の周方向中央部に対応して周方向幅が比較的小さい複数個(図示の実施形態においては3個)の嵌合部40bが配設されている。一つの係止突条28について着目すると、これの上面30に形成された複数個の嵌合部40の夫々の周方向間隔は何れも等しい。そして、嵌合部40の嵌合面38は何れも係止突条28の上面から上方に向かって延びている。ここで、図3に示すとおり、周方向幅が比較的大きい嵌合部40aの周方向幅をd1、周方向幅が比較的小さい嵌合部40bの周方向幅をd2、一の係止突条28の上面30に形成された複数個の嵌合部40の周方向間隔をd3、周方向に隣接して配設された2つの係止突条28において周方向に隣接する嵌合部40aの周方向間隔をd4とすると、d1=3d2、d3=2d2、d4=d2となるように設定されている。嵌合面38の縦断面形状はいずれも弧状であって、嵌合面38と環状突条36の内面とは実質上面一にせしめられている。所望ならば、嵌合面38の縦断面形状は直線状であってよく、また、環状突条36の内面は嵌合面38よりも半径方向外側に位置していてもよい。図示の実施形態においては更に、嵌合面38は、JIS B0601で定義されている算術平均粗さ(Ra)で2乃至20μmの粗面となっている。
【0026】
図示の実施形態のように、係止突条28の各々がタンパーエビデント裾部16の内周面から半径方向内方に延出する上面30、下方に向かって漸次内径が増大する下面32、及び上面30と下面32との境界に位置する内面34を有し、係止突条28の周方向両端部においては上面30の半径方向内方への延出長さが周方向両端に向かって漸次低減され及び/又は下面32の下端が周方向両端に向かって漸次上方に変位している形態の場合、係止突条28の両端部の剛性は低減されるが、係止突条28の周方向両端部の各々に対応して周方向幅が比較的大きい1個の嵌合部40aが配設されていると、成形された容器蓋2を成形型から取り出す際における係止手段27(係止突条28)の両端部の無理抜きが、周方向幅が比較的大きい嵌合部40aの存在によって緩和され、成形された容器蓋を成形型から取り出す際に係止突条28の両端部が変形されてしまうことが確実に回避される。
【0027】
図1には容器蓋2と共に容器の口頸部42も図示されている。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂、ガラス或いは金属薄板から形成することができる容器の口頸部42は全体として円筒形状であり、口頸部42の外周面には雄螺条44と雄螺条44の下方に位置する係止あご部46が形成されている。係止あご部46は下方に向かって外径が漸次増大する弧状の上面、円筒形状の外周面及び実質上水平に延在する下面を有する。口頸部42の外周面には、更に、係止あご部46の下方に位置するサポートリング48(かかるサポートリング48は当業者には周知の如く容器の搬送に利用される)も配設されている。
【0028】
容器内に内容物を充填した後においては、通常、容器の口頸部42に容器蓋2を装着するのに先立って、口頸部42の外周面に上水でよい洗浄液を噴射して口頸部42の外周面に付着した内容物を洗浄する。しかる後に、口頸部42に容器蓋2を被嵌して容器蓋2を閉回転方向、図1において上方から見て時計方向、に回転せしめ、容器蓋2の雌螺条24を口頸部42の雄螺条44に螺合せしめる。図1に示す状態まで雌螺条24を雄螺条44に螺合せしめると、容器蓋2の内側シール片8が口頸部42内に侵入して口頸部42の内周面に密接され、外側シール片10が口頸部42の外周面に密接乃至近接せしめられ、かくして口頸部42が密封される。タンパーエビデント裾部16の内周面に配設されている係止突条28は口頸部42の係止あご部46を弾性的に(即ちタンパーエビデント裾部16の弾性変形乃至変位によって)乗り越えて係止あご部46の下方に位置する。かかる状態にあっては、図1と共に図2を参照することによって理解されるとおり、タンパーエビデント裾部16の内周面における係止突条28よりも上方の領域は、口頸部42の係止あご部46の外周面下端部に接触乃至密接せしめられる。そして、口頸部42に容器蓋2を所要とおりに装着した後には、容器蓋2に上水でよい洗浄液を噴射し、次いで洗浄液の噴射に続いて空気でよい乾燥気体を容器蓋に噴射して洗浄水を除去する。容器の口頸部42に噴射され口頸部42に残留していた洗浄液は周方向に間隔をおいて配設された係止突条28の間から流出する。
【0029】
内容物を消費するために口頸部42を開封する際には、容器蓋2を開方向、即ち図1において上方から見て反時計方向、に回転せしめる。かくすると、雄螺条44と雌螺条24の螺合が漸次解除され、主部14と共にタンパーエビデント裾部16は上記回転と共に口頸部42に対して上昇せしめられる。このとき、図2を参照することによって理解されるとおり、タンパーエビデント裾部16に設けられた嵌合部40の内面、つまり、係止突条28の上面から上方に向かって内径が漸次増大する嵌合面38が口頸部42の係止あご部46の外周面下端部に密接せしめられることで摩擦による抵抗トルクを生じることとなるが、本発明の容器蓋にあっては、嵌合部40が周方向に連続して延在するのではなく、周方向に間隔をおいて複数個適宜配列されている故に、口頸部42の係止あご部46の外周面と嵌合部40の嵌合面38との接触面積が大幅に低減され、これに起因して上記ファーストトルクと上記セカンドトルクとの間の必要トルクは充分に低減される。容器蓋2が所定程度口頸部42に対して上昇せしめられると、係止突条28が係止あご部46に係止せしめられ、タンパーエビデント裾部16の軸線方向上方への移動は阻止される。これにより、破断ライン12の橋絡部20に応力が生成されることで橋絡部20が破断され、タンパーエビデント裾部16はスカート壁6の主部14から切り離される。破断ライン12が破断される際には、タンパーエビデント裾部16に設けられた嵌合部40の内面、つまり、係止突条28の上面から上方に向かって内径が漸次増大する嵌合面38が口頸部42の係止あご部46の外周面下端部に密接せしめられる故に、タンパーエビデント裾部16の弾性的な変形乃至変位が抑制され、破断ライン12が破断されることなく係止突条28が係止あご部46を乗り越えて上昇してしまうことが充分確実に回避される。破断ライン12が破断された後においては、タンパーエビデント裾部16を口頸部42に残留せしめて、容器蓋2の天面壁4及びスカート壁6の主部14は回転と共に軸線方向上方に自由に移動せしめられて口頸部42から離脱され、かくして口頸部42が開封される。所望ならば、タンパーエビデント裾部16に軸線方向破断ラインを形成し、容器の口頸部42を開封する際には上記軸線方向破断ラインが破断され、一方周方向に延在する破断ライン12はその一部が破断されることなく維持され、タンパーエビデント裾部16が無端環状から有端環状に展開され、タンパーエビデント裾部16と共に容器蓋2の全体が口頸部42から離脱されるようになすこともできる。
【0030】
図1に示す合成樹脂製容器蓋にあっては、嵌合部40の周方向両側面は径方向に直線状に延びており、嵌合面38と嵌合部40の周方向両側面とは垂直に接続されているが、嵌合面38と嵌合部40の周方向両側面とを曲線的に接続してもよい。嵌合面38と嵌合部40の周方向両側面とを曲線的に接続することで、容器蓋2が開方向に回転せしめられ、嵌合面38が口頸部42の係止あご部46の外周面下端部に密接せしめられてこれに対して周方向に移動する際の両者間の摩擦抵抗が軽減される。上記摩擦抵抗は、嵌合面38に穴部を適宜形成することでより一層軽減される。また、複数個配設された嵌合部40の夫々の上端部は、上下方向に見て必ずしも周方向に整合している必要はない。更にまた、周方向に隣接する嵌合部40の間には、内径が嵌合部40よりも大きい補強部を適宜設けてもよい
【符号の説明】
【0031】
:容器蓋
4:天面壁
6:スカート壁
12:破断ライン
14:主部
16:タンパーエビデント裾部
18:スリット
20:橋絡部
24:雌螺条
27:係止手段
28:係止突条
38:嵌合面
40:嵌合部
図1
図2
図3