IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

特許7302968多元共重合体、ゴム組成物、架橋ゴム組成物及びゴム製品
<>
  • 特許-多元共重合体、ゴム組成物、架橋ゴム組成物及びゴム製品 図1
  • 特許-多元共重合体、ゴム組成物、架橋ゴム組成物及びゴム製品 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】多元共重合体、ゴム組成物、架橋ゴム組成物及びゴム製品
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/00 20060101AFI20230627BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230627BHJP
   C08F 136/04 20060101ALI20230627BHJP
   C08F 212/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C08F210/00
B60C1/00 Z
C08F136/04
C08F212/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018551625
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2017040811
(87)【国際公開番号】W WO2018092733
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2016226299
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】堀川 泰郎
(72)【発明者】
【氏名】タルディフ オリビエ
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】藤原 浩子
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190073(WO,A1)
【文献】特開2010-270314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する多元共重合体であって、前記共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位以外の単位と結合しているものの割合が、50%以上であり、
前記共役ジエン単位の含有量が、20mol%以下であり、
前記非共役オレフィン単位の含有量が、60mol%以上である、ことを特徴とする、多元共重合体。
【請求項2】
前記共役ジエン単位全体のうち、前記非共役オレフィン単位と結合しているものの割合が、50%以上である、請求項1に記載の多元共重合体。
【請求項3】
前記共役ジエン単位全体のうち、前記非共役オレフィン単位と結合しているものの割合が、70%以上である、請求項1に記載の多元共重合体。
【請求項4】
前記共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位のみと結合しているものの割合が、40%以下である、請求項1又は2に記載の多元共重合体。
【請求項5】
前記共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位のみと結合しているものの割合が、35%以下である、請求項4に記載の多元共重合体。
【請求項6】
前記芳香族ビニル単位の含有量が、15mol%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の多元共重合体。
【請求項7】
前記共役ジエン単位の含有量が、10mol%以下である、請求項1~6のいずれかに記載の多元共重合体。
【請求項8】
前記共役ジエン単位が、1,3-ブタジエン及び/又はイソプレンに由来する単位のみからなる、請求項1~7のいずれかに記載の多元共重合体。
【請求項9】
前記非共役オレフィン単位が、エチレンに由来する単位のみからなる、請求項1~8のいずれかに記載の多元共重合体。
【請求項10】
前記芳香族ビニル単位が、スチレンに由来する単位のみからなる、請求項1~9のいずれかに記載の多元共重合体。
【請求項11】
共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を単量体として用いて得られたものである、請求項1~10のいずれかに記載の多元共重合体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の多元共重合体を含むことを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項13】
請求項12に記載のゴム組成物の架橋物であることを特徴とする、架橋ゴム組成物。
【請求項14】
請求項12に記載のゴム組成物又は請求項13に記載の架橋ゴム組成物を備えることを特徴とする、ゴム製品。
【請求項15】
タイヤである、請求項14に記載のゴム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多元共重合体、ゴム組成物、架橋ゴム組成物及びゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴム製品(タイヤ、コンベアベルト、防振ゴム、免震ゴム等)には、高い靭性、ひいては高い耐久性、及び、耐候性が求められており、かかる要求を満たすために様々なゴム成分が開発されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1は、共役ジエン部分(共役ジエン化合物由来部分)のシス-1,4結合含量が70.5mol%より大きく、非共役オレフィンの含有量が10mol%以上である共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を開示しており、また、この共重合体が、耐亀裂成長性及び耐候性の良好なゴムを製造するのに用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2012/014455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ゴム業界においては、共重合体の諸性能を調整する方法の一つとして、共重合体の合成に用いる単量体の組成比を制御することが知られている。しかしながら、特許文献1に記載の従来の共重合体は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物からなる2種の単量体を用いて得られる二元共重合体であるため、単量体の組成比を制御したとしても、靭性及び耐候性等の性能を向上させるのには限界があった。
【0006】
また、共重合体の合成に用いる単量体の組成比だけでなく、共重合体を構成する各単量体由来の単位の連鎖構造も、靭性及び耐候性等の性能に影響することが一般的に予想される。しかしながら、これらの詳細な関係については、これまで十分な検討がなされていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑み、ゴム組成物や、タイヤ等のゴム製品の靭性及び耐候性を優れたものとすることができる重合体を提供することを目的とする。また、本発明は、靭性及び耐候性に優れた、ゴム組成物及び架橋ゴム組成物、並びにゴム製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有し、前記共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位以外の単位と結合しているものの割合が、50%以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の多元共重合体を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の架橋ゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物の架橋物であることを特徴とする。
【0011】
本発明のゴム製品は、上述した本発明のゴム組成物又は上述した本発明の架橋ゴム組成物を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゴム組成物や、タイヤ等のゴム製品の靭性及び耐候性を優れたものとすることができる重合体を提供することができる。また、本発明によれば、靭性及び耐候性に優れた、ゴム組成物及び架橋ゴム組成物、並びにゴム製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例における共重合体Aの13C-NMRスペクトルチャート(20~48ppmの範囲)を表す図である。
図2】実施例における共重合体aの13C-NMRスペクトルチャート(20~48ppmの範囲)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を、その実施形態に基づき詳細に例示説明する。
【0015】
(多元共重合体)
本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する多元共重合体であって、前記共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位以外の単位と結合しているものの割合が、50%以上であることを特徴とする。
ここで、本明細書において、「共役ジエン単位」とは、共重合体における、共役ジエン化合物に由来する単位に相当する単位を指し、「非共役オレフィン単位」とは、共重合体における、非共役オレフィン化合物に由来する単位に相当する単位を指し、「芳香族ビニル単位」とは、共重合体における、芳香族ビニル化合物に由来する単位に相当する単位を指す。
また、本明細書において、「共役ジエン化合物」とは、共役系のジエン化合物を指し、「非共役オレフィン化合物」とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素-炭素二重結合を1個以上有する非共役系の化合物を指し、「芳香族ビニル化合物」とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物を指し、且つ、共役ジエン化合物には含まれないものとする。
更に、本明細書において、「多元共重合体」とは、3種類以上の単量体単位を含有する共重合体を指し、この多元共重合体は、例えば、3種類以上の単量体を重合することにより得ることができる。
【0016】
本発明の多元共重合体は、これを含むゴム組成物やゴム製品の靭性を優れたものとすることができる。
本発明者らは、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する多元共重合体の分子鎖において、より多くの共役ジエン単位を、非共役オレフィン単位をはじめとする共役ジエン単位以外の単位と結合させることで、共役ジエン単位を偏在させることなく、分子鎖全体に分布させることができ、架橋密度の均一な構造が形成されて、たとえば共役ジエン単位がより少量であっても効果的に(硫黄)架橋やフィラー補強層を形成することができることを見出した。このように、架橋密度の均一な構造が形成されることで、共重合体に負荷される応力を分散させることができ、破断強力や伸びを高めて、靭性の向上が図れるものと考えられる。
【0017】
また、本発明の多元共重合体は、これを含むゴム組成物やゴム製品の耐候性をも優れたものとすることができる。
非共役オレフィン単位をはじめとする共役ジエン単位以外の単位と結合している共役ジエン単位の割合が多いということは、言い換えれば、汎用のジエン系ゴムに見られるような共役ジエン単位同士の連鎖構造が少ない配列であることを意味しており、このような配列は、オゾン等による分子鎖切断の成長を抑制して、耐候性の向上に寄与し、ゴム組成物全体の耐候性を向上させることができるものと考えられる。
【0018】
<共役ジエン単位>
本発明の多元共重合体における共役ジエン単位は、通常、単量体としての共役ジエン化合物に由来する単位であり、かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3-ブタジエン及びイソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
共役ジエン化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0019】
本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位の含有量が2mol%以上25mol%以下であることが好ましい。共役ジエン単位の含有量が2mol%以上であれば、多元共重合体がエラストマーとして均一にふるまうことが可能となり、ゴム製品やゴム組成物に高い靭性をもたらすことができ、一方、25mol%以下であれば、共役ジエン単位の偏在が十分に抑制されて、ゴム製品やゴム組成物の靭性及び耐候性の悪化を抑えることができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位の含有量が3mol%以上であることがより好ましく、5mol以上であることが更に好ましく、また、20mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることが更に好ましい。
【0020】
<非共役オレフィン単位>
また、本発明の多元共重合体における非共役オレフィン単位は、通常、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する単位であり、かかる非共役オレフィン化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、若しくは1-オクテン等のα-オレフィン;ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、若しくはN-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。これらの中でも、エチレンが好ましい。
非共役オレフィン化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0021】
本発明の多元共重合体は、非共役オレフィン単位の含有量が、60mol%以上であることが好ましい。非共役オレフィン単位の含有量が60mol%以上であれば、ゴム製品やゴム組成物の耐候性を十分に高めることができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、非共役オレフィン単位の含有量が70mol%以上であることがより好ましい。
また、本発明の多元共重合体は、特に制限されないが、エラストマー性を付与する(硬くて脆いPE等の樹脂とは異なり、ある程度の伸びや柔軟性を付与する)観点から、非共役オレフィン単位の含有量が95mol%以下であることが好ましく、90mol%以下であることがより好ましい。
【0022】
<芳香族ビニル単位>
更に、本発明の多元共重合体における芳香族ビニル単位は、通常、単量体としての芳香族ビニル化合物に由来する単位であり、かかる芳香族ビニル化合物として、具体的には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
芳香族ビニル化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0023】
本発明の多元共重合体は、芳香族ビニル単位の含有量が、15mol%以下であることが好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が15mol%以下であれば、ゴム製品やゴム組成物の耐候性をより十分に高めることができる。
また、本発明の多元共重合体は、特に制限されないが、エラストマー性を付与する(硬くて脆いPE等の樹脂とは異なり、ある程度の伸びや柔軟性を付与する)観点から、芳香族ビニル単位の含有量が3mol%以上であることが好ましく、5mol%以上であることがより好ましく、9mol%以上であることが更に好ましい。
【0024】
そして、本発明の多元共重合体の単量体単位の種類の数としては、多元共重合体が共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する限り、特に制限はない。また、本発明の多元共重合体は、上述した共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位以外の、任意の単位を含有していてもよい。ただし、靭性及び耐候性をより好ましいものとする観点から、本発明の多元共重合体は、1種の共役ジエン単位、1種の非共役オレフィン単位、及び1種の芳香族ビニル単位を含有する多元共重合体であることが好ましい。そして、本発明の多元共重合体は、1種の共役ジエン単位、1種の非共役オレフィン単位、及び1種の芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることが更に好ましい。
ここで、「1種の共役ジエン単位」には、異なる結合様式の共役ジエン単位が包括されていることとする。
【0025】
<多元共重合体の連鎖構造等>
本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位以外の単位と結合しているものの割合が、50%以上であることを要する。上記割合が50%未満であると、共役ジエン単位の偏在が抑制されず、靭性及び耐候性の十分な向上を図ることができない。また、本発明の多元共重合体は、靭性及び耐候性をより向上させる観点から、共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位以外の単位と結合しているものの割合が、55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0026】
また、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位全体のうち、非共役オレフィン単位と結合しているものの割合が、50%以上であることが好ましい。上記割合が50%以上であることにより、共役ジエン単位の偏在が一層抑制されて、ゴム製品やゴム組成物の靭性及び耐候性をより向上させることができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位全体のうち、非共役オレフィン単位と結合しているものの割合が、55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0027】
更に、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位のみと結合しているものの割合が、40%以下であることが好ましい。上記割合が40%以下であることにより、共役ジエン単位同士の連鎖構造を少なくして、ゴム製品やゴム組成物の耐候性をより向上させることができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位のみと結合しているものの割合が、35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明の多元共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が10,000以上10,000,000以下であることが好ましい。前記多元共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量が10,000以上であることにより、ゴム製品材料としての機械的強度を十分に確保することができ、また、10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量が、100,000以上であることがより好ましく、200,000以上であることが更に好ましく、また、1,000,000以下であることがより好ましく、500,000以下であることが更に好ましい。
なお、上述した重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0029】
本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位が直線的に連鎖した構造(直線構造)であってもよいし、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位の少なくともいずれかが分岐鎖を形成して連鎖した構造(分岐構造)であってもよい。なお、本発明の多元共重合体が分岐構造である場合には、分岐鎖も二元又は多元とすることができる(即ち、分岐鎖が、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位のうちの少なくとも2つを含むことができる)。
【0030】
なお、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する多元共重合体であるか否かの確認は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、1H-NMR、13C-NMR、等の手法を用いることによって行うことができる。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー-屈折率曲線(GPC-RI曲線)及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー-紫外線吸収曲線(GPC-UV曲線)に基づき、共重合体中のベンゼン環等の芳香族環によるUV吸収を確認して、芳香族ビニル化合物由来の骨格の存在を確認することができる。また、1H-NMRスペクトルや13C-NMRスペクトルに基づき、各単量体成分由来の単位の存在を確認することができる。
【0031】
また、多元共重合体における共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位以外の単位と結合しているものの割合、非共役オレフィン単位と結合しているものの割合、共役ジエン単位のみと結合しているものの割合は、後述する実施例に記載の方法により、求めることができる。
【0032】
<多元共重合体の製造>
本発明の多元共重合体の製造方法としては、特に制限されない。そのため、例えば、所定の複数の種類の単量体を共重合させた後、得られた共重合体における一部分を変性する(例えば、炭素-炭素二重結合部分を水添させて、後発的に非共役オレフィン単位を形成する)ことにより、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する本発明の多元共重合体を製造してもよい。
ただし、本発明の多元共重合体は、靭性及び耐候性を所望のものとする観点から、少なくとも共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を単量体として用いて得られたものであることが好ましい。以下に、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を単量体として用いて本発明の多元共重合体を製造する方法の例について、説明する。
【0033】
本発明の多元共重合体は、例えば、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを、下記一般式(a-1):
M-(AQ1)(AQ2)(AQ3) ・・・(a-1)
[式中、Mは、スカンジウム、イットリウム又はランタノイド元素であり;AQ1、AQ2及びAQ3は、同一であっても異なっていてもよい官能基であり;Aは、窒素、酸素又は硫黄であり;但し、少なくとも1つのM-A結合を有する]で表される希土類元素化合物((A)成分)と、
置換又は無置換のシクロペンタジエン、置換又は無置換のインデン、及び置換又は無置換のフルオレンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物((B)成分)とを反応させて得られる反応混合物の存在下で共重合させることにより、製造することができる。
【0034】
-希土類元素化合物((A)成分)-
(A)成分は、下記一般式(a-1):
M-(AQ1)(AQ2)(AQ3) ・・・(a-1)
[式中、Mは、スカンジウム、イットリウム又はランタノイド元素であり;AQ1、AQ2及びAQ3は、同一であっても異なっていてもよい官能基であり;Aは、窒素、酸素又は硫黄であり;但し、少なくとも1つのM-A結合を有する]で表される希土類元素化合物である。ここで、ランタノイド元素とは、具体的には、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムである。(A)成分は、少なくとも1つのM-A結合を有する。また、(A)成分は、反応系における触媒活性を向上させることができ、反応時間を短くし、反応温度を高くすることが可能な成分である。
なお、上記(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
Mとしては、特に、触媒活性及び反応制御性を高める観点から、ガドリニウムが好ましい。
【0036】
Aが窒素である場合、AQ1、AQ2及びAQ3(即ち、NQ1、NQ2及びNQ3)で表される官能基としては、アミド基等が挙げられる。
アミド基としては、例えば、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミド基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6-ジネオベンチルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-ネオベンチルフェニルアミド基、2-イソプロピル-6-ネオベンチルフェニルアミド基、2,4,6-tert-ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基が挙げられ、特に、脂肪族炭化水素に対する溶解性の観点から、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
上記官能基は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
Aが酸素である場合、一般式(a-1)(即ち、M-(OQ1)(OQ2)(OQ3))で表される希土類元素化合物としては、特に制限されないが、例えば、下記式(aI):
(RO)3M (aI)
で表される希土類アルコラート、下記式(aII):
(R-CO23M (aII)
で表される希土類カルボキシレート、が挙げられる。ここで、下記化合物(aI)~(aII)の各式中、Rは、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~10のアルキル基である。
【0038】
Aが硫黄である場合、一般式(a-1)(即ち、M-(SQ1)(SQ2)(SQ3))で表される希土類元素化合物としては、特に制限されないが、例えば、下記式(aIII):
(RS)3M (aIII)
で表される希土類アルキルチオラート、下記式(aIV):
(R-CS23M (aIV)
で表される化合物、が挙げられる。ここで、下記化合物(aIII)~(aIV)の各式中、Rは、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~10のアルキル基である。
【0039】
-シクロペンタジエン骨格を有する化合物((B)成分)-
(B)成分は、シクロペンタジエン骨格を有する化合物、即ち、置換又は無置換のシクロペンタジエン、置換又は無置換のインデン、置換又は無置換のフルオレンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
なお、上記(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
特に、シクロペンタジエン骨格を有する化合物は、置換シクロペンタジエン、置換インデン又は置換フルオレンであることが好ましく、置換インデンがより好ましい。これにより、重合触媒としてのかさ高さが有利に増大するため、反応時間を短くし、反応温度を高くすることができる。また、シクロペンタジエン骨格を有する化合物が具える共役電子を多く具えるため、反応系における触媒活性を更に向上させることができる。
【0041】
置換シクロペンタジエンとしては、例えば、ペンタメチルシクロペンタジエン、テトラメチルシクロペンタジエン、イソプロピルシクロペンタジエン、トリメチルシリル-テトラメチルシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0042】
置換インデンとしては、例えば、2-フェニル-1H-インデン、3-ベンジル-1H-インデン、3-メチル-2-フェニル-1H-インデン、3-ベンジル-2-フェニル-1H-インデン、1-ベンジル-1H-インデン等が挙げられ、特に、分子量分布を小さくする観点から、3-ベンジル-1H-インデン、1-ベンジル-1H-インデンが好ましい。
【0043】
置換フルオレンとしては、例えば、トリメチルシリルフルオレン、イソプロピルフルオレン等があげられる。
【0044】
また、本発明の多元共重合体は、例えば、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを、下記一般式(I):
【化1】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して置換インデニル基を示し、Ra~Rfは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(II):
【化2】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して置換インデニル基を示し、X’は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(III):
【化3】
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR'は、置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基又は置換フルオレニル基を示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示し、[B]-は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体、からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下で共重合させることにより、製造することができる。
【0045】
また、上記の重合触媒組成物は、更に、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。ここで、メタロセン錯体は、一つ又は二つ以上のシクロペンタジエニル又はその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物である。なお、中心金属に結合したシクロペンタジエニル又はその誘導体が一つであるメタロセン錯体は、ハーフメタロセン錯体と称されることがある。
また、重合反応系において、重合触媒組成物に含まれる錯体の濃度は、0.1~0.0001mol/Lの範囲であることが好ましい。
【0046】
一般式(I)及び(II)で表されるメタロセン錯体において、式中のCpRは、置換インデニル基である。
置換インデニル環を基本骨格とするCpRは、C97-xx又はC911-xxで示すことができ、ここで、Xは、置換インデニル基上の置換基の数であり、1~7又は1~11の整数である。Xは、芳香族ビニル化合物の共重合比率を高める観点から、2以上であることが好ましく、また、置換基が置換インデニル基の5員環上に存在することも好ましい。Rは、それぞれ独立して、ヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基は、炭素数が、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましい。上記のヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。中でも、芳香族ビニル化合物の共重合比率を高める観点からは、少なくとも1つのRが、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基であることが好ましい。Xが2以上である、及び/又は、Rが芳香族基等のかさ高い置換基を有することで、CpRが一層かさ高くなり、重合される単量体が、立体障害によって、一般式(I)及び(II)で表されるメタロセン錯体の触媒中心である金属Mに対してNSi(Rabc)Si(Rdef)側又はSiX'3側から接近することになるため、非共役オレフィン化合物や芳香族ビニル化合物のビニル部分が導入され易くなる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSi等が挙げられる。また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有する当該ヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。かかるメタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。また、置換インデニル基として、具体的には、2-フェニルインデニル、2-メチルインデニル、1-メチル-2-フェニルインデニル、1,3-ビス(t-ブチルジメチルシリル)インデニル、1-エチル-2-フェニルインデニル、1-ベンジル-2-フェニルインデニル等の基が挙げられる。
なお、一般式(I)及び(II)における二つのCpRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0047】
一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCpR'は、置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基又は置換フルオレニル基である。これらの中でも、CpR'は、芳香族ビニル化合物の共重合比率を高める観点から、置換インデニル基であることが好ましい。
【0048】
一般式(III)において、置換シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR'は、C55-xxで示すことができる。ここで、Xは、1~4の整数である。Xは、芳香族ビニル化合物の共重合比率を高める観点から、2以上であることが好ましく、また、置換基が置換インデニル基の5員環上に存在することも好ましい。Rは、それぞれ独立して、ヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基は、炭素数が、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましい。上記のヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。中でも、芳香族ビニル化合物の共重合比率を高める観点からは、少なくとも1つのRが、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基であることが好ましい。Xが2以上である、及び/又は、Rが芳香族基等のかさ高い置換基を有することで、非共役オレフィン化合物や芳香族ビニル化合物のビニル部分が導入され易くなる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSi等が挙げられる。また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。かかるメタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
置換シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR'として、具体的には、以下のものが例示される。
【化4】
(式中、R'はメチル基又はエチル基を示し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。)
【0049】
一般式(III)において、置換インデニル環を基本骨格とするCpR'は、一般式(I)のCpRと同様に定義され、好ましい例も同様である。
【0050】
一般式(III)において、置換フルオレニル環を基本骨格とするCpR'は、C139-xx又はC1317-xxで示すことができる。ここで、Xは、1~9又は1~17の整数である。また、Rは、それぞれ独立して、ヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基は、炭素数が、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましい。上記のヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。中でも、芳香族ビニル化合物の共重合比率を高める観点からは、少なくとも1つのRが、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基であることが好ましい。Xが2以上である、及び/又は、Rが芳香族基等のかさ高い置換基を有することで、非共役オレフィン化合物や芳香族ビニル化合物のビニル部分が導入され易くなる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられる。また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。かかるメタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
【0051】
一般式(I)、(II)及び(III)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57~71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0052】
一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[-N(SiR32]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(一般式(I)におけるRa~Rf)は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は水素原子である。また、Ra~Rfのうち少なくとも1つは、水素原子であることが好ましい。Ra~Rfのうち少なくとも1つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になり、また、ケイ素まわりのかさ高さが低くなるため、非共役オレフィン化合物や芳香族ビニル化合物が導入され易くなる。同様の観点から、Ra~Rcのうち少なくとも1つが水素原子であり、Rd~Rfのうち少なくとも1つが水素原子であることが更に好ましい。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0053】
一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、シリル配位子[-SiX’3]を含む。シリル配位子[-SiX’3]に含まれるX'は、下記で説明される一般式(III)のXと同様に定義され、好ましい例も同様である。
【0054】
上述の通り、一般式(III)において、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基及び炭素数1~20の炭化水素基からなる群より選択される基である。
【0055】
一般式(III)において、Xが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。また、Xが表す炭素数1~20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
【0056】
一般式(III)において、Xが表すアルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシド基が挙げられ、これらの中でも、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0057】
一般式(III)において、Xが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn-ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec-ブトキシ基、チオtert-ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルチオフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基等が挙げられ、これらの中でも、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0058】
一般式(III)において、Xが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミド基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6-ジネオペンチルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基等が挙げられ、これらの中でも、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
【0059】
一般式(III)において、Xが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
【0060】
そして、一般式(III)におけるXとしては、ビストリメチルシリルアミド基又は炭素数1~20の炭化水素基が好ましい。
【0061】
一般式(III)において、[B]-で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニルペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0062】
上記一般式(I)及び(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0~3個、好ましくは0~1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0063】
また、上記一般式(I)及び(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0064】
上記一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えば、カリウム塩やリチウム塩)及びビス(トリアルキルシリル)アミドの塩(例えば、カリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間~数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(I)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す(式中、X’’はハライドを示す。)。
【化5】
【0065】
上記一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えば、カリウム塩やリチウム塩)及びシリルの塩(例えば、カリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間~数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(II)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す(式中、X’’はハライドを示す。)。
【化6】
【0066】
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、例えば、次の反応により得ることができる。
【化7】
【0067】
ここで、一般式(IV)で表される化合物において、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR'は、それぞれ独立して置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基又は置換フルオレニル基を示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1~20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示す。また、一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物において、[A]+は、カチオンを示し、[B]-は、非配位性アニオンを示す。
【0068】
[A]+で表されるカチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0069】
上記反応に用いる一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物としては、上記の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物であって、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物は、式(IV)で表されるメタロセン錯体に対して0.1~10倍mol加えることが好ましく、約1倍mol加えることが更に好ましい。なお、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を重合反応に用いる場合、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそのまま重合反応系中に提供してもよいし、上記反応に用いる一般式(IV)で表される化合物と一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物を別個に重合反応系中に提供し、反応系中において一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させてもよい。また、一般式(I)又は(II)で表されるメタロセン錯体と一般式[A]+[B]-で表されるイオン性化合物とを組み合わせて使用することにより、反応系中において一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させることもできる。
【0070】
一般式(I)及び(II)で表されるメタロセン錯体、並びに一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の構造は、X線構造解析により決定することができる。
【0071】
上記の重合触媒組成物に用いることができる助触媒は、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の助触媒として用いられる成分から任意に選択され得る。該助触媒としては、例えば、アルミノキサン、有機アルミニウム化合物、上記のイオン性化合物等が好適に挙げられる。これら助触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO-3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、上記の重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、メタロセン錯体の中心金属Mに対する、アルミノキサンのアルミニウム元素Alの元素比率Al/Mが、10~1000程度、好ましくは100程度となるようにすることが好ましい。
【0073】
一方、上記有機アルミニウム化合物としては、一般式AlRR’R’’(式中、R及びR'はそれぞれ独立して炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子であり、R’’は炭素数1~10の炭化水素基である)で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましい。また、トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。なお、上記の重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、メタロセン錯体に対して1~50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
【0074】
更に、上記の重合触媒組成物においては、一般式(I)及び(II)で表されるメタロセン錯体、並びに一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそれぞれ、適切な助触媒と組み合わせることで、シス-1,4結合含量や得られる重合体の分子量を増大させることができる。
【0075】
また、上述したような、重合触媒組成物の存在下で複数の単量体を共重合させる工程(重合工程)を含む多元共重合体の製造においては、更に、必要に応じ、カップリング工程、洗浄工程、その他の工程を適宜行うことができる。
【0076】
<重合工程>
重合工程としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、ヘキサン(例えば、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン)等が挙げられる。中でも、ヘキサンが好ましい。ヘキサンを溶媒として用いて重合を行うと、環境負荷を低減することができる。
【0077】
重合工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。一段階の重合工程とは、重合させる全ての種類の単量体、すなわち、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、及び芳香族ビニル化合物などを一斉に反応させて重合させる工程である。また、多段階の重合工程とは、1種類又は2種類の単量体の一部又は全部を最初に反応させて重合体を形成し(第1重合段階)、次いで、残る種類の単量体や前記1種類又は2種類の単量体の残部を添加して重合させる一以上の段階(第2重合段階~最終重合段階)を行って重合させる工程である。
【0078】
重合工程では、適切な重合触媒組成物の選択、各単量体の投入順序の制御、各単量体(特に共役ジエン化合物)の投入量や投入の仕方の制御、その他の反応条件の制御などによって、製造される多元共重合体中における、共役ジエン単位全体のうちの共役ジエン単位以外の単位と結合しているものの割合や、各単量体由来の単位の含有量(すなわち、各単量体の共重合比)などを適切に制御することができる。
【0079】
重合工程は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。重合工程の重合温度は、特に限定しないが、例えば、-100~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス-1,4選択性が低下することがある。重合工程の圧力は、非共役オレフィン化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲とすることが好ましい。重合工程の反応時間は、特に限定しないが、例えば、1秒~10日の範囲であり、得られる多元共重合体について所望するミクロ構造、各単量体の種類、投入量及び添加順序、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。また、重合工程では、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0080】
<カップリング工程>
カップリング工程は、重合工程において得られた多元共重合体の高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を変性する反応(カップリング反応)を行う工程である。カップリング工程においては、重合反応が100%に達した際にカップリング反応を行うことが好ましい。
カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ等のスズ含有化合物;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズが、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。
なお、カップリング反応を行うことにより、得られる多元共重合体の重量平均分子量(Mw)を増大させることができる。
【0081】
<洗浄工程>
洗浄工程は、重合工程において得られた多元共重合体を洗浄する工程である。なお、洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられるが、重合触媒としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(たとえば塩酸、硫酸、硝酸)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。これ以上では酸が共重合体中に残存してしまうことで混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼす可能性がある。
この洗浄工程により、共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【0082】
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、少なくとも本発明の多元共重合体をゴム成分として含み、更に必要に応じて、本発明の多元共重合体以外のゴム成分、充填剤、架橋剤、その他の成分を含むことができる。本発明のゴム組成物は、本発明の多元共重合体を含むため、靭性及び耐候性に優れる。
【0083】
ゴム組成物に含まれるゴム成分における上記多元共重合体の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、靭性及び耐候性を十分に優れたものとする観点から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。
【0084】
なお、本発明のゴム組成物は、タイヤに用いることができるほか、タイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト等のベルト、ゴムクローラ、各種ホースなどに用いることができる。
【0085】
上述した、本発明の多元共重合体以外のゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリイソプレン、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-非共役ジエンゴム(EPDM)、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0086】
また、ゴム組成物には、その補強性を向上させること等を目的として、必要に応じて、充填剤を用いることができる。ゴム組成物における充填剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、200質量部以下であることが好ましい。充填剤の配合量が5質量部以上であることにより、充填剤を配合したことによる補強性向上の効果が十分に得られ、また、200質量以下であることにより、低ロス性の大幅な低下を回避しつつ、良好な作業性を保持することができる。同様の観点から、ゴム組成物における充填剤の含有量は、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることが更に好ましく、30質量部以上であることが特に好ましく、また、100質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることが更に好ましく、60質量部以下であることが特に好ましい。
【0087】
なお、充填剤としては、特に制限はなく、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられるが、これらの中でも、シリカを用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
前記ゴム組成物には、必要に応じて、架橋剤を用いることができる。前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム-ニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。なお、タイヤ用ゴム組成物としては、これらの中でも硫黄系架橋剤(加硫剤)がより好ましい。
【0089】
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1質量部であることが好ましく、20質量部以下であることが好ましい。前記架橋剤の含有量が0.1質量部未満であると、架橋がほとんど進行しないおそれがあり、一方、20質量部を超えると、一部の架橋剤により混練り中に架橋が進んでしまう傾向があり、また、架橋物の物性が損なわれるおそれがある。同様の観点から、架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、10質量部以下であることがより好ましい。
【0090】
前記加硫剤を用いる場合には、更に加硫促進剤を併用することもできる。前記加硫促進剤としては、グアジニン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が挙げられる。また、本発明のゴム組成物には、必要に応じて、更に、軟化剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤など公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
【0091】
(架橋ゴム組成物)
また、本発明の架橋ゴム組成物は、本発明のゴム組成物の架橋物である。言い換えると、本発明の架橋ゴム組成物は、本発明のゴム組成物を架橋することにより得られる。本発明の架橋ゴム組成物は、本発明の多元共重合体を含むゴム組成物を用いているため、靭性及び耐候性に優れる。なお、本発明の架橋ゴム組成物は、架橋剤として硫黄系架橋剤(加硫剤)を用いた場合には、加硫ゴム組成物と称することができる。
本発明の架橋ゴム組成物は、タイヤに用いることができるほか、タイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト等のベルト、ゴムクローラ、各種ホースなどに用いることができる。
【0092】
架橋の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、温度120~200℃、加温時間1分間~900分間とすることが好ましい。かかる架橋ゴム組成物は、ゴム成分の単量体の一つとして共役ジエン化合物を用いているため、EPDMのような非共役ジエン化合物を単量体の一つとする重合体を用いた場合に比べ、架橋特性が良好であり、従って機械特性がより高い。
【0093】
(ゴム製品)
本発明のゴム製品は、上述した本発明のゴム組成物又は上述した本発明の架橋ゴム組成物を備える。かかるゴム製品は、本発明の多元共重合体を含むゴム組成物を用いているため、靭性及び耐候性に優れる。
特に、本発明のゴム製品は、好適に、タイヤであってもよい。ここで、タイヤにおける、本発明のゴム組成物又は本発明の架橋ゴム組成物の適用部位としては、特に制限はなく、例えば、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーなどが挙げられる。これらの中でも、本発明のゴム組成物又は本発明の架橋ゴム組成物をトレッドに用いることが、耐久性の観点で有利である。
本発明のタイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に本発明のゴム組成物及び/又はコードからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【実施例
【0094】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0095】
(共重合体の合成)
まず、以下の手順に従い、共重合体A、B、C、E及び共重合体a~dを合成した
【0096】
<合成例1:共重合体A>
十分に乾燥した1500mL耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン200gとトルエン500gとを加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1-ベンジルジメチルシリル-3-メチルインデン[[1-(PhCH2)Me2Si]-3-Me]C960.05mmol、トリス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体Gd[N(SiHMe2230.05mmol、トリエチルアルミニウム0.3mmolを仕込み、トルエン5mLを加えて80℃で6時間反応させた。その後、ジイソブチルアルミニウムハイドライド0.4mmol及びトルエン30mLを加えたのち、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C654]0.055mmolを加えて触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液を、上述の耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温した。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを圧力1MPaで投入するとともに、更に、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン10gを含むトルエン溶液50gを3.5時間かけて投入し、70℃で計4時間、重合反応を行った。
その後、その耐圧ステンレス反応器に、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールを用いて反応生成物を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Aを得た。得られた共重合体Aの収量は193gであった。
【0097】
<合成例2:共重合体B>
十分に乾燥した1500mL耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン60gとトルエン640gとを加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1-ベンジルジメチルシリル-2-メチルインデン[[1-(PhCH2)Me2Si]-2-Me]C960.10mmol、トリス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体Gd[N(SiHMe2230.10mmol、トリメチルアルミニウム0.6mmolを仕込み、トルエン10mLを加えて室温で96時間反応させた。その後、トルエン30mLを加えたのち、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C654]0.11mmolを加えて触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液を、上述の耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温した。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを圧力1.5MPaで投入するとともに、更に、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン20gを含むトルエン溶液100gを3.5時間かけて投入し、70℃で計4時間、重合反応を行った。
その後、その耐圧ステンレス反応器に、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールを用いて反応生成物を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Bを得た。得られた共重合体Bの収量は102gであった。
【0098】
<合成例3:共重合体C>
十分に乾燥した1500mL耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン160gとトルエン540gを加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1-ベンジルジメチルシリル-3-トリメチルシリルインデン[[1-(PhCH2)Me2Si]-3-Me3Si]C960.07mmol、トリス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体Gd[N(SiHMe2230.07mmol、トリメチルアルミニウム0.42mmolを仕込み、トルエン7mLを加えて80℃で6時間反応させた。その後、ジイソブチルアルミニウムハイドライド0.18mmol及びトルエン30mLを加えたのち、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C654]0.077mmolを加えて触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液を、上述の耐圧ステンレス反応器に加え、75℃に加温した。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを圧力0.8MPaで投入するとともに、更に、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン30gを含むトルエン溶液150gを3.5時間かけて投入し、75℃で計4時間、重合反応を行った。
その後、その耐圧ステンレス反応器に、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールを用いて反応生成物を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Cを得た。得られた共重合体Cの収量は121gであった。
【0100】
<合成例5:共重合体E>
十分に乾燥した1500mL耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン60gとシクロヘキサン640gとを加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1-ベンジルジメチルシリル-3-メチルインデン[[1-(PhCH2)Me2Si]-3-Me]C960.05mmol、トリス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体Gd[N(SiHMe2230.05mmol、トリメチルアルミニウム0.3mmolを仕込み、トルエン5mLを加えて80℃で6時間反応させた。その後、ジイソブチルアルミニウムハイドライド0.4mmol及びトルエン30mLを加えたのち、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C654]0.055mmolを加えて触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液を、上述の耐圧ステンレス反応器に加え、75℃に加温した。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを圧力1.2MPaで投入するとともに、更に、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン5gを含むトルエン溶液25gを3.5時間かけて投入し、75℃で計4時間、重合反応を行った。
その後、その耐圧ステンレス反応器に、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールを用いて反応生成物を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Eを得た。得られた共重合体Eの収量は142gであった。
【0101】
<合成例6:共重合体a>
十分に乾燥した1500mL耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン250gとトルエン450gとを加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体[1,3-[(t-Bu)Me2Si]295Gd[N(SiHMe222]0.25mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C654]0.275mmol及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.4mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液を、上述の耐圧ステンレス反応器に加え、80℃に加温した。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを圧力1.3MPaで投入するとともに、更に、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン20gを含むトルエン溶液100gを6時間かけて投入し、80℃で計8時間、重合反応を行った。
その後、その耐圧ステンレス反応器に、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールを用いて反応生成物を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体aを得た。得られた共重合体aの収量は153gであった。
【0102】
<合成例7:共重合体b>
十分に乾燥した1500mL耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン160gとトルエン540gとを加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体[1,3-[(t-Bu)Me2Si]295Gd[N(SiHMe222]0.25mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C654]0.275mmol及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.2mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液を、上述の耐圧ステンレス反応器に加え、80℃に加温した。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを圧力1.5MPaで投入するとともに、更に、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン30gを含むトルエン溶液150gを7.5時間かけて投入し、80℃で計8時間、重合反応を行った。
その後、その耐圧ステンレス反応器に、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールを用いて反応生成物を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体bを得た。得られた共重合体bの収量は88gであった。
【0103】
<合成例8:共重合体c>
十分に乾燥した1500mL耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン180gとトルエン520gとを加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体[1,3-[(t-Bu)Me2Si]295Gd[N(SiHMe222]0.25mmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C654]0.275mmol及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.3mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液を、上述の耐圧ステンレス反応器に加え、80℃に加温した。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを圧力1.5MPaで投入するとともに、更に、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン40gを含むトルエン溶液200gを7.5時間かけて投入し、80℃で計8時間、重合反応を行った。
その後、その耐圧ステンレス反応器に、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールを用いて反応生成物を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体cを得た。得られた共重合体cの収量は130gであった。
【0104】
<合成例9:共重合体d>
十分に乾燥した1500mL耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン200gとトルエン500gを加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体[1,3-[(t-Bu)Me2Si]295Gd[N(SiHMe222]0.25mmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C654]0.275mmol及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.4mmolを仕込み、トルエン40mLを加えて触媒溶液を得た。
得られた触媒溶液を、上述の耐圧ステンレス反応器に加え、80℃に加温した。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを圧力1.5MPaで投入するとともに、更に、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン5gを含むトルエン溶液50gを6時間かけて投入し、80℃で計8時間、重合反応を行った。
その後、その耐圧ステンレス反応器に、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、更に大量のメタノールを用いて反応生成物を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体dを得た。得られた重合体dの収量は124gであった。
【0105】
(共重合体の測定)
上述のようにして合成した共重合体A、B、C、E及び共重合体a~dについて、以下の測定を行った
【0106】
<1,3-ブタジエン単位、エチレン単位及びスチレン単位の含有量の測定>
共重合体中の1,3-ブタジエン単位、エチレン単位及びスチレン単位の含有量(mol%)を、1H-NMRスペクトル(100℃、d-テトラクロロエタン標準:6ppm)における各ピークの積分比より求めた。
具体的には、共重合体中のスチレン由来の芳香族水素(5H:6.4~7.4ppm)と1,4-ブタジエン結合由来のオレフィン水素(2H:5.3~5.5ppm)、それぞれの脂肪族水素(スチレン(3H)+ブタジエン(4H)+エチレン(1H):1.4~2.4ppm)の積分比より求めた。結果を表1に示す。
【0107】
<所定の配列で存在する1,3-ブタジエン単位の割合の測定>
共重合体中の全ての1,3-ブタジエン単位のうち、所定の配列で存在する1,3-ブタジエン単位の割合(%)を、13C-NMRスペクトル(100℃、d-テトラクロロエタン標準:73.8ppm)から求めた。
具体的には、まず、1,3-ブタジエンの共重合により形成された、下記に示すα炭素に帰属される各ピークの積分比を求めた。なお、下記に示すもの以外のブタジエン結合のα炭素は、検出限界以下で判別できないため、ないものとして扱った。
【化8】
【0108】
そして、上述の積分比を用い、以下の計算を行った:
(a)1,3-ブタジエン単位全体のうち、エチレン単位と結合している1,3-ブタジエン単位の割合(%)=エチレン単位と結合しているブタジエンα炭素積分(32.1ppm及び32.2ppmのピークの積分値)/全てのブタジエンα炭素積分(27.3ppm、32.1ppm、32.2ppm、32.4ppm及び39.7ppmのピークの積分値)×100
(b)1,3-ブタジエン単位全体のうち、1,3-ブタジエン単位のみと結合している1,3-ブタジエン単位の割合(%)=ブタジエンと結合しているブタジエンα炭素積分(27.3ppm及び32.4ppmのピークの積分値)/全てのブタジエンα炭素積分(27.3ppm、32.1ppm、32.2ppm、32.4ppm及び39.7ppmのピークの積分値)×100
結果を表1に示す。
なお、言うまでもなく、{100-(上記(b)の割合)}(%)は、1,3-ブタジエン単位全体のうち、1,3-ブタジエン単位以外の単位と結合しているものの割合である。
【0109】
また、参考までに、共重合体Aのブタジエンα炭素部分を示す20~48ppm範囲の13C-NMRスペクトルチャートを図1に示し、共重合体aのブタジエンα炭素部分を示す20~48ppm範囲の13C-NMRスペクトルチャートを図2に示す。
【0110】
<重量平均分子量の測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:東ソー株式会社製HLC-8121GPC/HT,カラム:東ソー株式会社製GMHHR-H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)、トリクロロベンゼン、GPC測定温度:150℃)により、単分散ポリスチレンを基準として、共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
(ゴム組成物及び加硫ゴム組成物の調製)
実施例1~6、8及び比較例1~7について、上述のようにして合成した各共重合体を用い、表2に示す配合処方でゴム組成物を調製するとともに、160℃で30分間加硫し、加硫ゴム組成物を調製した。なお、各例で用いたゴム成分の組成については、後述の表3~6に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
*1 アロマチックオイル:富士興産株式会社製、「アロマックス#3」
*2 シリカ:東ソー・シリカ株式会社製、「ニプシルAQ」
*3 シランカップリング剤:デグサ社製、「Si69」、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
*4 老化防止剤:精工化学株式会社製、「オゾノン6C」、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン
*5 加硫促進剤DPG:大内新興化学工業株式会社製、「ノクセラーD」、ジフェニルグアニジン
*6 加硫促進剤CZ:大内新興化学工業株式会社製、「ノクセラーCZ-G」、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
*7 加硫促進剤DM:大内新興化学工業株式会社製、「ノクセラーDM-P」、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド
【0115】
(加硫ゴム組成物の評価)
調製した実施例1~6、8及び比較例1~7の加硫ゴム組成物について、以下の評価を行った。結果を表3~6に示す。
【0116】
<靭性の評価>
JIS K 6251に準拠して、加硫ゴム組成物の試験片について室温で引っ張り試験を行い、破断までの応力-歪曲線を測定した。得られた応力-歪曲線から、破壊エネルギー(曲線の下の領域の積分値)を算出した。そして、共重合体A~Eと共重合体a~dとにおける各単位の比率及びゴム成分の組成の近似性を踏まえ、実施例1については比較例1の測定値を、実施例2については比較例2の測定値を、実施例3、5については比較例3の測定値を、実施例4については比較例4の測定値を、実施例6については比較例5の測定値を、実施例7については比較例6の測定値を、そして、実施例8については比較例7の測定値を100として、各実施例の加硫ゴム組成物に係る算出値を指数表示した。指数値が大きい程、破壊エネルギーが高く、靱性に優れることを示す。
【0117】
<耐候性の評価>
JIS K 6259に準拠して、加硫ゴム組成物の短冊状試験片に20%動的伸張を与えながら、40℃,オゾン濃度50pphm条件で暴露し、96時間後の試験片の状況(亀裂の有無)を目視で確認した。そして、各例において、「亀裂無し」、「少数の亀裂有り」、「多数の亀裂有り」及び「破断」のどれに該当するかについて判断した。
【0118】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0119】
表3~6より、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する多元共重合体の中でも、共役ジエン単位全体のうち、共役ジエン単位以外の単位と結合しているものの割合が50%以上である多元共重合体は、そうでない多元共重合体に比べて、ゴム組成物の耐候性を同等以上としつつ、靭性を向上させることができていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明によれば、ゴム組成物や、タイヤ等のゴム製品の靭性及び耐候性を優れたものとすることができる重合体を提供することができる。また、本発明によれば、靭性及び耐候性に優れた、ゴム組成物及び架橋ゴム組成物、並びにゴム製品を提供することができる。
図1
図2