(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置
(51)【国際特許分類】
B29C 55/02 20060101AFI20230627BHJP
B29C 55/04 20060101ALI20230627BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B29C55/02
B29C55/04
B29C55/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019007489
(22)【出願日】2019-01-21
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】10 2018 101 455.4
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【氏名又は名称】清水 敬一
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ハイガーモーザー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ハインテル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・バウマイスター
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-254778(JP,A)
【文献】特開2011-95252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/02
B29C 55/04
B29C 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて平行に配置されかつ配置方向に対し直角に移動する2つの第1の案内レール(7a,7b)と、
間隔を空けて平行に配置されかつ配置方向に対し直角に移動する2つの第2の案内レール(9a,9b)とを備え、
複数の第1の案内レール(7a,7b)は、複数の第2の案内レール(9a,9b)に対して直角に配置されかつ4つの全案内レール(7a,7b;9a,9b)は、平面図上矩形、方形、近似矩形又は近似方形に配置され、
2つの第1の案内レール(7a,7b)と2つの第2の案内レール(9a,9b)上に、延伸すべき樹脂フィルム片(41)を挟持して樹脂フィルム片(41)の延伸過程を実施する少なくとも2つの把持装置(19)が配置され、
相対的に接近方向に移動する始動位置(SP)と、相対的に離間方向に移動する終端位置(EP)との間で2つの第1の案内レール(7a,7b)と2つの第2の案内レール(9a,9b)とを移動して、把持装置(19)により把持する樹脂フィルム片(41)を単軸又は二軸延伸する延伸架枠(5)を使用する樹脂フィルム片(41)の単軸又は二軸延伸装置において、
好ましくは上加熱炉(3’a,3’b)の底面(97)に配置される断熱板と、下加熱炉(3”a,3”b)の頂面(99)に配置される断熱板とを有する断熱体(277)により、単一又は複数の加熱炉(3a,3b,3c)の内部の延伸架枠(5)が移動する移動通路(V)の上部と下部が絶縁され、断熱体(277)は、上加熱炉(3’a,3’b)の下側(97)と下加熱炉(3”a,3”b)の上側(99)とを開放する適切な開口を有し、
並びに/又は、
加熱炉装置(3a,3b)の入口側及び/又は出口側の各々に設けられる遮断断熱板は、延伸架枠が進入又は退出する開放位置と、加熱炉内で処理過程を実施する閉鎖位置との間で移動し、遮断断熱板は、好ましくは該当する開口を少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%閉鎖する閉鎖位置に移動し、
並びに/又は、
少なくとも1つの加熱炉(3a,3b)を備え、
a)加熱炉(3a,3b)の上加熱炉(3’a,3’b)に対応する下加熱炉(3”a,3”b)は、受動的な空気供給部(198)を備え、又は
b)加熱炉(3a,3b)の上加熱炉(3’a,3’b)に対応する下加熱炉(3”a,3”b)は、積極的な空気供給部(199)を備え、又は
c)加熱炉(3a,3b)の上加熱炉(3’a,3’b)は、受動的な空気供給部(198)を備え、加熱炉(3a,3b)の対向する下加熱炉(3”a,3”b)は、積極的な空気供給部(199)を備え又はその逆に設けた、
ことを特徴とする樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項2】
少なくとも2つの第1の案内レール(7a,7b)又は少なくとも2つの第2の案内レール(9a,9b)は、始動位置(SP)と終端位置(EP)との間で相対的に離間又は接近して移動し更に同一の方向にも移動して装填位置(BP)に移動する請求項1に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項3】
個別の駆動伝動装置(37,38,39a,39b,40;137,138,139a,139b,140)により、少なくとも2つの案内レール(9a,9b)を相対的に接近及び離間させかつ同一の方向にも駆動できかつ移動できる請求項1又は2に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項4】
2つの案内レール(7a,7b)は、周回する共通の伝動装置(34)に取り付けられ、
一方の案内レール(7a)及び他方の案内レール(7b)は、好ましくは留具(28)を介してそれぞれ上方のベルト部(34b)及び下方のベルト部(34a)に連動可能に取り付けられ、
同時にのみ相対的に接近又は離間して移動する2つの案内レール(7a,7b)は、単一の駆動装置(31)により同時に駆動されかつ移動する請求項3に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項5】
延伸過程を開始する始動位置(SP)は、延伸架枠(5)の中央又は中心(17)の近傍に配置され、延伸過程間に相対的に離間方向に移動する案内レール(7a,7b;9a,9b)を始動位置(SP)から均一な距離離隔する延伸過程、特に二軸対称延伸過程を実施できる請求項1~4の何れか1項に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項6】
装填位置(BP)から延伸過程を実施する前に、装填領域(45)又は装填領域(45)に装着する樹脂フィルム片(41)は、延伸装置の平面図上、始動位置(SP)内の樹脂フィルム片(41)の面に重複せず又は部分的にのみに重複する位置を占めかつ/又は面を覆い、部分的に重複する面は、延伸過程を実施する前の延伸すべき樹脂フィルム片(41)の面の80%より少なく、特に70%、60%、50%、40%、30%、20%より少なく又は10%より少ない請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項7】
複数の把持装置(19)は、複数の案内レール(7a,7b;9a,9b)上で移動可能に支持される支持構造体(49)に保持され、
支持構造体(49)を介して保持される把持装置(19)と支持構造体(49)との間かつ/又は支持構造体(49)上に力量計(51)が設けられ、
力量計(51)は、好ましくは曲がり測定装置、曲がり測定細片、延伸測定細片又は光導波管を有する請求項1~6の何れか1項に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項8】
力量計(51)は、複数の案内レール(7a,7b;9a,9b)の変位平面に対して平行かつ/又は、延伸すべき樹脂フィルム片(41)を挟持する挟持平面(E)に対し平行に配置され又は変位平面及び/又は挟持平面に対して45°より小さい、特に40°、35°、30°、25°、20°、15°、10°より小さく、又は5°より小さい角度変位する請求項7に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項9】
少なくとも複数の案内レール(7a,7b;9a,9b)が装填位置及び/又は取出位置(BP;EP)にあるとき、延伸架枠(5)を位置決めする装填領域及び/又は取出領域(1)と、
装填領域及び/又は取出領域(1)の他に、少なくとも1つの加熱炉装置(3a)とを備え、
加熱炉装置(3a)は、上加熱炉(3’a)と下加熱炉(3”a)とを有し、
上加熱炉(3’a)の下方と下加熱炉(3”a)の上方との間に形成される間隙(93)内を延伸架枠(5)が移動する大きさに間隙(93)が形成される請求項1~8の何れか1項に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項10】
前後に配置される複数の加熱炉(3a,3b)の第1の加熱炉(3a)内で延伸すべき樹脂フィルム片(41)が延伸され、かつ
少なくとも1つの後段の加熱炉(3b)内で、延伸した樹脂フィルム片(41)の後処理を特にアニール領域及び/又は弛緩領域形態で実施でき、
複数の案内レール(7a,7b;9a,9b)間と、対向して配置される隣合う把持装置(19)間の間隔は、アニール領域及び/又は弛緩領域内で少なくとも最大の延伸過程の最後で終端位置(EP)に達したときの間隔より再び僅かに減少される請求項1~9の何れか1項に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項11】
2つ若しくは少なくとも2つの加熱炉(3a,3b)又は3つ若しくは少なくとも3つの加熱炉(3a,3b,3c)を備え、
加熱炉(3a,3b)の上加熱炉(3’a,3’b)と下加熱炉(3”a,3”b)は、延伸架枠(5)の移動通路の上方と下方とにそれぞれ配置された請求項1~10の何れか1項に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項12】
加熱炉(3a,3b,3c)の1つは、300℃±50℃未満、特に40℃、30℃、20℃又は10℃未満の温度に加熱されかつ/又は加熱炉(3a,3b,3c)の少なくとも1つの加熱炉又は他の加熱炉は、400℃±50℃未満、特に40℃、30℃、20℃又は10℃未満の温度に加熱されかつ/又は第3の加熱炉(3c)は、特に第2のアニール相の形成及び/又は温度低下又は温度冷却される請求項1~11の何れか1項に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【請求項13】
延伸過程を開始する始動位置(SP)と、延伸過程実施後の終端位置(EP)の他に、複数の第1の案内レール(7a,7b)、複数の第2の案内レール(9a,9b)及びそれらに取り付けられる複数の把持装置(19)を更に装填位置(BP)に移動する単軸又は二軸延伸装置を構成し、
延伸架枠(5)の少なくとも一方の長手側で延伸架枠側により近い延伸架枠(5)内の非対称位置に装填位置(BP)を配置できる請求項1に記載の樹脂フィルム片の単軸又は二軸延伸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載する樹脂フィルム片、特に平面状又は薄膜状樹脂フィルム片の単軸又二軸延伸装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
この種の複数の延伸装置は、特に小型の樹脂(プラスチック)フィルム試料の延伸に使用される。樹脂フィルム試料は、通常約10cmx10cmの大きさを有する。延伸調整装置とも称するこの種の延伸装置は、特に同時二軸延伸装置形態で、縦延伸装置、横延伸装置及び/又は縦横延伸装置(所謂順次延伸装置)よりも数倍小さい。
【0003】
ところが、本発明の延伸装置は、むしろ、比較的小型の樹脂フィルム片を用いて延伸試験を実施する実験室型の延伸装置又は延伸機械と呼べる。
【0004】
この種の延伸装置では、大きい縦延伸及び/又は横延伸の延伸過程間に、樹脂フィルムは、均等な物理的条件に確実に適合しなければならない。その目的で、互いに90°角度変位して配置される二対の案内レールを備える延伸調節装置内に樹脂フィルムを装着し、互いに一定距離離間して複数の案内レールを配置し、最終的に矩形又は好ましくは方形の架枠を形成し、複数の把持装置は、架枠上に移動可能に配置される。相対的に平行に移動する2つの案内レール上に取り付けられる第1群の把持装置は、例えば、第1の方向[(縦(MD)方向ともいう]の延伸に使用されるのに対し、90°変位して配置される他の2つの案内レール上に位置決めされた複数の把持装置は、第1の方向に対し直角方向〔横(TD)方向ともいう]の移動に用いられる。複数の把持装置を互いに連接する伸縮リンクが延伸過程にあるとき、角度90°変位して配置される対の案内レールは、相対的に離間方向に移動して、複数の把持装置は、同時に徐々に互いに離隔される。
【0005】
複数の延伸架枠は、公知であり、種々の種類の延伸架枠が使用されている。原理的に対称に延伸する延伸架枠又は固定の延伸点を有する延伸架枠が区別される。
【0006】
対称に延伸する延伸架枠では、対の案内レールは、延伸架枠の中心点又は中央点に対してそれぞれ対称にのみ相対的に離間方向又は接近方向に移動する。
【0007】
特に、樹脂フィルム、樹脂板フィルム又は樹脂板の端縁を把持する把持装置を用いる好適な非連続的二軸延伸装置は、例えば、独国実用新案登録出願第1928734号明細書から公知である。公知の延伸装置は、平面図上方形に配置される4本の案内レールを備え、適切な駆動装置により、相対的に接近可能かつ離間可能に対向する一対の案内レールを移動できる。平面図上V字状の異なる角度調節で互いに調節可能な複数のロッドが一対の案内レール上に設けられ、ロッドに把持装置が保持されかつ案内される。
【0008】
延伸装置の中心に配置される延伸すべき樹脂フィルム又は樹脂板を把持装置により端縁に固定することができる。その後、外側にかつ対称に対の複数の案内ロッドを移動すると、例えば、案内ロッド間の樹脂フィルム又は樹脂板は、長手方向と幅方向とに同時に延伸される。これは、延伸架枠の中心から互いに直角な二方向への対称延伸である。
【0009】
例えば、独国特許出願公開第102009003751号明細書は、固定延伸点を備える延伸架枠を開示する。
【0010】
公知の延伸架枠の特殊性は、互いに直角に配置した複数の把持装置により樹脂フィルム片を挟持して延伸するが、2本の案内レールに取り付けられる把持装置を案内レール上で移動できない難点がある。固定される2本の案内レールに対向して配置される2本の可動の案内レール上に把持装置を位置決めして、固定される案内レールに接近する方向に可動の案内レールと把持装置とを移動して、把持装置により極力小さい初期領域と挟持領域とが初期位置又は挟持位置に形成される。例えば、初期大きさ10cmx10cmの延伸すべき樹脂フィルム片を初期位置又は挟持位置にある把持装置により挟持することができる。固定される案内レールから離間する方向にその後、互いに直角に配置される2つの可動案内レールを移動して、二軸延伸が実施される。
【0011】
この延伸装置は、延伸架枠の端縁、即ち角部領域に挟持位置を配置できる利点があるが、この発明の延伸架枠は、従来の縦及び/又は横延伸装置を凌駕する延伸条件、その条件に極力等しく近い又は要求される延伸条件を明らかに克服するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】独国実用新案登録出願第1928734号明細書
【文献】独国特許出願公開第102009003751号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、特に樹脂フィルム、樹脂板、樹脂膜又は例えば樹脂織物等の形態の樹脂フィルム片の公知の解決手段より優る改良された単軸又は二軸延伸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、請求項1に記載する特徴により前記課題を解決する。本発明の好適な実施の形態を下位請求項に記載する。
【0015】
本発明の解決手段は、基本的に公知の対称又は実質的に対称な延伸架枠内で延伸過程が実施される。例えば、複数の案内レールを互いに平行にかつ離間して延伸装置の延伸架枠に配置し、複数の案内レールに複数の把持装置を取り付け、樹脂フィルム片、樹脂薄膜片、樹脂板、樹脂皮膜又は樹脂織物形態の樹脂フィルム片を複数の把持装置に挟持し、延伸装置内の中央の初期位置に樹脂フィルム片を挟持して保持し、複数の把持装置と共に互いに離間方向に複数の案内レールが移動される。互いに離間方向にのみ複数の案内レールを移動すると、一方向の単軸延伸が実施される。互いに直角な二方向に同時に複数の案内レールを互いに離間方向に移動すると、二軸延伸、特に通常同時延伸が実施されるが、二軸延伸でも、支持する複数の把持装置と共に一対の案内レールをまず移動し、その後異なる時間に、90°変位する一対の案内レールに位置決めした複数の把持装置を同様に互いに離間方向に原則的に移動できるので、例えば、まず縦方向に延伸を行い、次に横方向(又は逆方向)に延伸を実施することができる。
【0016】
勿論、優れたこの延伸過程は、延伸架枠の中央に延伸する樹脂フィルム片を装着すべき欠点が有る。
【0017】
そこで、本発明は、特に、複数の把持装置内に延伸すべき樹脂フィルム片を簡単に装着できる可能性があり、しかも縦延伸装置及び/又は横延伸装置内の延伸過程に極めて近い条件で樹脂フィルム片の最適な延伸を実施できる解決手段を提供する。従って、樹脂フィルム片は、例えば、樹脂薄片、樹脂フィルム片、樹脂板、樹脂皮膜又は樹脂織物等の平面状形成物、特に生地又は厚みのない材料の二次元形態の生地及び形成物である。容易な理解のため、下記の実施の形態では、特に樹脂生地又は例えば、樹脂薄片又は樹脂フィルム片のみを説明するが、それらへの限定を意味するものではない。
【0018】
本発明では、相対的に接近方向に移動する複数の案内レールと、相対的に小間隔に位置決めされる複数の把持装置とを有する調節可能な延伸架枠は、延伸架枠内の中心位置ではなく、中心から外れた側方位置に延伸装置を移動して、延伸装置の側方境界に比較的接近する側方位置に樹脂フィルム片の挟持領域を隣接させることができる。次に、延伸装置内の中心又は少なくとも近似的に中心の初期位置に、樹脂フィルム片を挟持する挟持領域を初期位置に移動して、初期位置から本来の延伸過程を開始できる。
【0019】
従って、本発明の解決手段は、前記解決手段の代わりにかつそれを補足して、少なくとも一対の案内レールを相対的に接近方向かつ離間方向に移動して延伸過程を実施できるのみならず、同一方向に同時に又は異なる時間に一方向のみに、まず、延伸装置の端縁に配置される挟持位置に移動し、次に中心の初期位置に移動して、初期位置から延伸過程を実施できる特徴がある。
【0020】
しかも、従来のように90°角度変位して配置される複数の案内レールを相対的に離間方向に移動して延伸過程を実施し又は相対的に接近方向に移動して初期位置に復帰するように駆動することができる。
【0021】
好適な実施の形態では、例えば、伝動ベルト形態の個別の駆動装置をそれぞれ備える2つの電動機により、挟持位置に移動し又は挟持位置から離間する延伸開始初期位置にも移動でき、駆動装置は、互いに平行にかつ側方に間隔を空けて配置される2つの案内レールの各々を駆動して移動させる。例えば、歯車機構又は中間歯車機構形態の適切な伝達機構により駆動を実現し、場合により、単一の電動機で実現できる。
【0022】
90°角度変位して配置される二対の案内レールの各々を互いに離間方向又は接近方向に移動する第2の電動機を設け、滑動式ドアの駆動と同様に、互いに分離して配置される2つのローラ又は方向変換用巻掛輪、巻掛輪に捲回される例えば、伝動チェーン又は伝動ベルト形態の巻掛け伝動装置を駆動装置に設け、例えば、伝動チェーン又は伝動ベルトを使用する伝動装置の上側ベルト部に留具を介して一方の案内レールを接続し、例えば、伝動チェーン又は伝動ベルトを使用する伝動装置の下側ベルト部に他方の案内レールを接続することが好ましい。それにより、周回式駆動装置又は伝動装置と駆動電動機の方向反転により、相対的に接近方向又は離間方向に2つの案内レールを移動することができる。
【0023】
例えば、緊張装置又は緊張具等を備える伝動ベルト又は伝動チェーンと、電動機の正逆転駆動により2つの駆動装置及び/又は伝動装置を適切に全て駆動できることが好ましい。
【0024】
樹脂フィルム片は、延伸架枠に装着される。延伸架枠に樹脂フィルム片を装着する装填位置又は装着位置から単一の加熱炉内に延伸架枠を移動して、加熱炉内で延伸を実施することは、従来と同じであるが、本発明の好適な実施の形態では、延伸架枠の移動通路に複数の加熱炉を相前後して配置することが好ましく、特に、従来とは異なり、複数の加熱炉間に複数の分離装置を設けて、加熱炉間を分離装置で閉鎖することができる。従来でも、一方の加熱炉から次の加熱炉に延伸架枠を移動するとき、隣接して配置される加熱炉は、遮断断熱板により互いに分離される。しかしながら、従来の遮断断熱板では、隣合う加熱炉を完全には閉鎖できず、加熱炉の内側と外側との間に無視できない熱-空気流交換が常に生じた。
【0025】
本発明では、種々の過程を実現する複数の加熱炉を使用することが好ましい。即ち、樹脂フィルム片を加熱する第1の加熱炉を使用し、その後段に配置される第2の加熱炉を第1のアニール領域として使用し、例えば、他の温度条件を備える第2の加熱炉に続く第3の加熱炉を、他のアニール領域又は温度調整領域として機能させることができる。
【0026】
また、加熱炉内への受動的な空気供給のみならず、延伸すべき樹脂フィルム片の移動通路の上方又は下方に積極的な空気供給装置を設けることが好ましい。また、延伸すべき樹脂フィルム片の上方でも下方でも、積極的に空気を供給できる。予め空気流の温度を調節してもよい。
【0027】
更に、例えば、複数の送風機により、加熱炉内に空気を供給する好適な改良を行い、伝動ベルト又はくさび伝動ベルトを介して送風機を駆動せずに、電動機の軸上に直接送風機を取り付けることができ、より静寂に作動する装置の容易な保守が可能となる。
【0028】
また、樹脂フィルム片を延伸する装置全体に、移動する延伸架枠の移動通路の上方、下方及び側方に適切な断熱体を設けて、他の断熱体と共に閉鎖して、絶縁空間を形成することが好ましい。
【0029】
加熱炉内で延伸すべき樹脂フィルム片を赤外線ヒータで加熱(加熱炉内にある延伸すべき樹脂フィルム片のみを加熱する)せず、既に予熱された加熱炉内を移動する延伸すべき樹脂フィルム片を予め加熱した空気により好適に加熱するので、改良された延伸結果が得られる。
【0030】
従来より改良された把持装置を使用して、更なる改良を得ることができる。前記の通り、例えば、延伸過程の間、延伸架枠全体内の中央に配置される把持装置を、案内レールの長手方向に移動しない場合でも、各案内レール上で複数の把持装置を自由に移動できる。測定把持装置として使用する中央の把持装置を、把持装置を支持する案内レールに対し相対的に移動しないことが好ましい。
【0031】
例えば、曲がり測定細片又は延伸測定細片形態の曲がり測定装置又は延伸測定装置を備える保持機構が複数の把持装置に設けられる。曲がり測定装置又は延伸測定装置により樹脂フィルムを延伸する延伸力を測定できる。従って、好適な解決手段では、中央に設けられる測定把持装置を付属の各案内レールに固定せずに付属の各案内レールに接して自由に移動することが好ましく(延伸過程の間、中央の位置から移動しない中央の把持装置に対し、伸縮リンクに連接される両側の把持装置は、案内レール上で対称に延伸される)、曲がり測定細片又は延伸測定細片形態の曲がり測定装置又は延伸測定装置は、延伸すべき樹脂フィルム片の平面に対して好ましくは平行、少なくとも近似的に平行又はその平面内にあることを特徴とする。
【0032】
空気又は窒素の圧力制御により、複数の把持装置を閉鎖しかつ作業シリンダの通気時に、内蔵するばね蓄勢装置により複数の把持装置を開放することが好ましい。
【0033】
把持装置の圧接片及び/又は把持台(把持装置の挟持装置の圧接片が、樹脂フィルム片の端縁を固定して把持する相手側)の本来の把持面は、使用する各樹脂フィルム材料に対して異なることがある。鋸刃状、平坦状又はゴム被覆した種々の把持面が考えられる。その限りでは、把持面の形状に制限はない。
【0034】
樹脂フィルム薄膜片を延伸する延伸装置は、原則的に種々の樹脂材料に適し、同様に種々の調節可能な延伸条件にも適する。延伸装置により、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PEA、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び同種等の樹脂材料を延伸できることが好ましい。理想的に調節可能な各温度領域内で、特に種々の延伸速度と延伸率により延伸を行うことができる。
【0035】
本発明の延伸装置により延伸過程を実施し、その後、例えば実験室内で延伸した樹脂フィルム片の調査を行い、その調査結果を用いて、同一の組成を有する該当する樹脂フィルムを大型の延伸装置による形成法を推定することができる。
【0036】
本発明の延伸装置により、同様に、一連の実験により最適な原材料混合物と、好適な添加物の各割合を検討して試験を行い、改良された特性の最適な製品を形成でき、かつ/又は、特に例えば、後続の調査により、より少ない樹脂フィルム厚で同様に好適な樹脂フィルム特性が明白に得られると、原材料を節約できる。
【0037】
要するに、好適な実施の形態と展開の範囲内で、本発明に使用する延伸架枠の一連の利点を確認できる。独国特許出願公開第102009003751号明細書に記載される延伸点が固定される延伸架枠では、均一な引伸ばし又は延伸は、保証されないが、本発明では、最適な装着と挟持条件の下で非対称に移動する延伸架枠により、均一な延伸を実現できる。延伸架枠の挟持位置と架枠位置に直接連続する単一又は複数の加熱炉を使用するとき、本発明の好適な実施の形態では、樹脂フィルム試料が移動する際に、所望の温度に予め調節することができる。これは、従来の大型の延伸装置上の実際の条件に極めて近い。種々の温度に保持される複数の加熱炉を使用できる他の大きな利点がある。その場合に、遮断器により種々の加熱炉を互いに断熱分離することが好ましい。延伸枠内の樹脂フィルム試料が各加熱炉内に移動する直前に、遮断器が開放しかつ樹脂フィルムが各加熱炉内に到達した直後に、再び遮断器が閉鎖される。各加熱炉を最適な温度に維持することができる。
【0038】
図面について本発明を以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1a】着脱領域の後段に2つの加熱炉を設けた樹脂フィルム片延伸装置の全体を示す斜視図
【
図1b】着脱領域の後段に3つの加熱炉を設けた
図1aの変形例の延伸装置の斜視図
【
図2】案内レールと、案内レール上に移動可能に保持される把持装置とを支持する本発明に使用する延伸架枠の斜視図
【
図3a】伸縮リンクで互いに連接される複数の把持装置を支持する案内レールの部分斜視図
【
図4a】互いに平行に配置されかつ矢印13の双方向に互いに進退自在に移動する2本の案内レールを示す平面図
【
図4b】互いに平行に配置されかつ矢印15の双方向に互いに進退自在に移動する2本の案内レールを示す平面図
【
図4c】2本の案内レールの一方を独立して移動する構造を示す平面図
【
図5a】本発明の延伸装置の延伸架枠を偏心する装填位置に移動した平面図
【
図5b】本発明の延伸装置の延伸架枠を中心の始動位置に移動した平面図
【
図5c】本発明の延伸装置の延伸架枠を延伸位置に移動した平面図
【
図6】把持装置に作用する延伸力を測定する支持測定装置を備える把持装置の斜視図
【
図9】案内レール上で移動可能に伸縮リンクで連接された把持装置の詳細な拡大斜視図
【
図10c】把持装置の挟持装置の他の実施の形態を示す断面図
【
図10d】把持装置の挟持装置の更に別の実施の形態を示す断面図
【
図11a】把持台下部構造体に交換可能に取り付けた第1の係止顎の断面図
【
図11b】第1の係止顎の第2の実施の形態を示す断面図
【
図11c】第1の係止顎の第3の実施の形態を示す断面図
【
図11d】第1の係止顎の第4の実施の形態を示す斜視図
【
図12】2つの加熱炉の上加熱炉と下加熱炉分との間を移動する延伸架枠を示す側面図
【
図13】2つの加熱炉の上加熱炉と下加熱炉との間を移動する延伸架枠の拡大側面図
【
図14】本発明の実施の形態に使用する加熱炉、送風機及び駆動電動機を示す斜視図
【
図14a】処理する樹脂フィルム片に向く加熱炉の底面又は頂面及び空気吸込開口及び未延伸樹脂フィルム片方向の通気開口又は通気領域を示す平面図(延伸加熱炉の場合)
【
図14b】
図14aより通気開口を拡大し、樹脂フィルム片を延伸した後の加熱炉の特に後処理及び/又はアニール領域の平面図
【
図15a】上加熱炉と下加熱炉をそれぞれ備え、受動的通気と積極的通気とを行う前後に配置される2つの加熱炉を示す側面図
【
図16】上加熱炉と下加熱炉の間に複数の断熱体を配置し、複数の断熱体の間に延伸架枠が移動する通路を形成し、各加熱炉の領域を区切る断熱体を挿入する切欠を示す側面図
【
図18】互いに逆方向に配置されて加熱炉内部の送風機を駆動する複数の電動機を備える上加熱炉と下加熱炉の側面図
【発明を実施するための形態】
【0040】
【0041】
少なくとも延伸すべき樹脂フィルム片を
図1aの延伸装置に装填する際に、自由に接近する装填領域及び/又は取出領域(着脱領域)1が延伸装置に設けられる。
【0042】
図示の実施の形態では、延伸装置(延伸設備にも部分的に下記で言及する)は、装填領域及び/又は取出領域1の他に、長手方向に相前後して設けられる少なくとも2つの加熱炉3a,3bを備え、
図1aに示す変形実施の形態では、最後の加熱炉3bの後方に、電気制御箱2が通常設けられる。延伸過程かつ/又は保持過程、収縮過程及び/又は冷却過程又は加熱過程又はアニール過程又は冷却過程の実施に使用する延伸架枠を加熱炉内に搬送しかつ再び加熱炉から移動することができる。
【0043】
2つの加熱炉を備える
図1aに示す実施の形態とは異なり、
図1bに示す変形実施の形態は、連続して配置される3つの加熱炉3a,3b及び3cと、更に連続して配置される電気制御箱2とを備える。
図1a及び
図1bに示す実施の形態では、電気制御箱2は、単に選択的配置に過ぎず、全く異なる位置や状態のでもよく、図示の加熱炉の後段に電気制御箱2を連続して配置する必要は必ずしもない。
図1a又は
図1bに示す実施の形態は、例示に過ぎず、必要に応じて、単一又は例えば3個以上の加熱炉、例えば少なくとも4つ又は少なくとも5つの加熱炉を本発明の延伸装置に設けることができる。
【0044】
図2の斜視図に示す樹脂フィルム片の延伸装置の延伸架枠5は、基本的に特に環状又は閉鎖枠状の架枠5a形態に形成される。
【0045】
図2の斜視図に示すように、延伸架枠5の内部には、二対の案内レール7a,7b及び9a,9bが配置される。
【0046】
側方に離間してかつ平行に配置される2本の第1の案内レール7a,7bは、第1の双方向13に互いに離間し又は接近して移動できる。第1の双方向13は、長手(機械(MD))方向ともいえる。
【0047】
同様に、第2の一対の案内レール9a,9bも、第1の案内レール7a,7bに対して直角に、互いに側方に離間してかつ延伸架枠5の内部に配置される。複数の第1の案内レール7a,7bと同様に、第2の案内レール9a,9bも、延伸架枠5の中心点又は中央点17に対して対称にかつ第2の双方向15に互いに離間又は接近して好適に移動できる。
【0048】
第1の案内レール7a,7bと第2の案内レール9a,9bの各上に配置される複数の把持装置19は、「ニュールンベルグのハサミ(パンダグラフ型マジックハンド、無精鋏)」形態のリンク鎖(リンク伝動チェーン)21により互いに連接され、伸縮自在に結合される。リンク鎖21で構成される伸縮構造は、複数の把持装置19を連結する伸縮リンク機構を構成する。
【0049】
図3aは、第1の案内レール7a,7b又は第2の案内レール9a,9b上に設けられるリンク鎖21の拡大部分斜視図で、
図3bは、
図3aの平面図を示す。
【0050】
リンク鎖(「ニュールンベルグのハサミ」)21は、第1の案内レール7a,7b及び第2の案内レール9a,9bに対し多少でも平行な平面内に配置される複数の交差するリンク又は伸縮レバー23aと23bを備える。互い交差してZ字状(稲妻型、ジグザグ状)に配置される2つの伸縮レバー23aと23bは、リンク鎖21を形成する。Z字状に配置される第1の伸縮レバー23aを有する
図3aの第1の伸縮レバー装置と、第1の伸縮レバー23aに対して変位しかつ逆向きに配置されて、同様に交差してZ字状に配置される伸縮レバー23bを有する第2の伸縮レバー装置とがリンク鎖21に設けられる。互いに連続して平面図上V字状に配置される2つの第1の伸縮レバー23aは、例えば、把持装置19から離間して配置される回転軸又は連接軸24aに軸着され互いに連接される。回転軸又は連接軸24aとは反対側の第1の伸縮レバー23aの端部は、把持装置19近傍の回転軸又は連接軸24bに軸着されて、他の第1の伸縮レバー23aに回転可能に結合されて、ジグザグ状の第1の伸縮レバー装置が構成される。
【0051】
V字状に配置されて連続する2つの伸縮レバー23bは、把持装置19から遠位の回転軸又は連接軸24’a又は連接軸24’bに軸着されて、次の第2の伸縮レバー23bに同様に連接されて、第2の伸縮レバー装置が構成される。
【0052】
第1の伸縮レバー23aと第2の伸縮レバー23bは、互いに交差する各中心の回転点又は回転軸25で軸着されかつ互いに連接され、第1の伸縮レバー装置は、V字状に配置される2つの伸縮レバー23aを有し、第2の伸縮レバー装置は、V字状に配置される2つの伸縮レバー23bを有し、第1の伸縮レバー装置と第2の伸縮レバー装置は、互いにZ字状に配置される。
【0053】
第1の案内レール7a,7bと第2の案内レール9a,9bとの全4つの案内レールにより、
図3aに示すリンク鎖21を構成し、
図3aに示す各案内レールに4つ全符号7a,7b,9a,9bが使用される。
【0054】
4つの案内レール7a,7b又は9a,9b上の各リンク鎖21の対向する終端領域には、ほぼ半分の長さで形成される第1の伸縮レバー23’aと、第2の伸縮レバー23’bとが設けられ、第1の伸縮レバー23’aと第2の伸縮レバー23’bは、遊動片29の案内溝27内に遊嵌される共通の回転軸25’aに協働して軸着される。案内レール7a,7b又は9a,9bの延伸方向に対して直角方向に移動可能に回転軸25’aを遊動片29の案内溝27内で案内することが好ましい。移動可能に案内溝27内に遊嵌される回転軸25’aを
図3bの平面図に示す。ほぼ半分長さの伸縮レバー23’a又は23’bは、リンク鎖21の外端に配置される。
【0055】
図3aに示すリンク鎖21は、平面図上ほぼ重なって互いに垂直方向に僅かに離間して配置されかつ二重に形成される伸縮レバー23aと23bとを含む2つのリンク鎖を備え、延伸架枠5の中心方向に張出す伸縮レバー23bの回転軸24bを対応する案内レール7又は9の上方と下方に配置できる充分な垂直方向の離間間隔を伸縮レバー23aと23bに付与することが好ましい。
【0056】
把持装置19に設けられる回転軸24bは、把持装置19又は把持装置19の本体に固定されるので、
図3bの平面図では、回転軸24bと付属の把持装置19は、リンク鎖21の拡張運動には無関係に、案内レール7a,7b又は9a,9b幅上の同一位置に常に留まり、回転軸24bは、各案内レール7a,7b又は9a,9b上の
図3bに示す破線に沿ってのみ移動又は摺動する。
【0057】
把持装置19から離間して配置される回転軸24a又は24’aに対し直角又は垂直に間座23cが設けられ、伸縮レバー23aの上面と下面及び伸縮レバー23bの上面と下面は、間座23cにより一定間隔離間して維持される。把持装置19近傍で垂直に配置される連接軸24bと24’bは、平面図上各案内レール7a,7b又は9a,9bの領域内に配置されるので、連接軸24bと24’bは、各伸縮レバー装置の上平面と下平面との間に連結されずしかも、上平面と下平面から離間し、平面図上同一形状で個別の回転軸24b又は24’bの間に各案内レール7a,7b又は9a,9bが配置される。
【0058】
前記の通り、把持装置19近傍の連接軸24bと24’bは、対応する各把持装置19の本体に固定される。伸縮レバー23aの上面と下面との間及び伸縮レバー23bの上面と下面との間に配置される間座23cに形成される案内孔に延長片19’が嵌合され、各案内レール7a,7b又は9a,9bの延伸方向に対して直角(垂直)に延長片19’を配置して、把持装置19又は把持装置19の本体を支持する支援支持構造体49に延長片19’を固定することが好ましく、リンク鎖21の伸縮運動により伸縮レバー23aと23bが互いに離間方向又は接近方向に移動するとき、間座23cは、把持装置19の本体又は支援支持構造体49に対し離間方向又は接近方向に延長片19’に沿って移動し、隣合う把持装置19の本体は、案内レール7a,7b又は9a,9bに沿って互いに側方間隔を増大又は減少させつつ離間方向又は接近方向に移動するが、何れの場合でも、把持装置19の本体は、各案内レール7a,7b又は9a,9bの延伸方向に対し、常に垂直方向を維持する。
【0059】
拡張する隣合うリンク鎖21は、案内レール7a,7b又は9a,9bに沿い互いに離間方向に移動して、隣合う2つの把持装置19間の側方間隔が増大するので、図示の実施の形態では、間座23cは、棒状の延長片19’に沿って案内レール方向に滑動し、各把持装置19本体又は把持装置19を支持する支援支持構造体49に対し、把持装置19近傍の連接軸24bは、固定位置で固着されるため、リンク鎖21の中心を軸着する回転軸25(2つの伸縮レバー23a,23bの交差点)は、間座23cの移動距離の半分だけ案内レール7a,7b又は9a,9b方向に移動する。
【0060】
伸縮レバー23aと23bの各上面と下面との間に配置される間座23cは、伸縮レバー23a,23bの案内にも用いられる。
【0061】
図2、
図3a及び
図3bから明らかなように、複数の把持装置19は、リンク鎖21形態の伸縮レバー構造体により互いに連接され、リンク鎖21は、交差部接合片形態で可動の複数の遊動片29間に接続される。第1の案内レール7a又は7bに沿って摺動可能に移動する遊動片29は、第1の案内レール7a又は7bを嵌合する第1の開口を備える。また、遊動片29は、第1の案内レール7a又は7bに垂直に交差する第2の案内レール9a,9bに沿っても摺動可能に移動するため、遊動片29は、第2の案内レール9a,9bを嵌合する第2の開口も備える。
【0062】
遊動片29の摺動可能な構造により、隣合う把持装置19の側方間隔を常に均等に維持しつつ、遊動片29を移動することができる。例えば、双方向13(
図2)の互いに接近方向に2つの第1の案内レール7aと7bの中間間隔を減少しつつ第2の案内レール9a,9bに沿って隣合う2つの把持装置19を互いに接近方向に移動して側方間隔を短縮でき、逆に、例えば、双方向13(
図2)の互いに離間方向に2つの第1の案内レール7aと7bの中間間隔を増大しつつ第1の案内レール7a,7bに沿って隣合う把持装置19を互いに離間方向に移動して側方間隔を増大して、樹脂フィルム片の延伸過程を実施することができる。伸縮リンク構造により互いに連接される隣合う把持装置19間の間隔を徐々に増加しながら、伸縮リンク構造により連接される隣合う遊動片29を第1の案内レール7a,7bに対し垂直に配置される第2の案内レール9a,9bと共に、第1の案内レール7a,7bに沿って移動でき、また、伸縮リンク構造により互いに連接される隣合う把持装置19間の間隔を徐々に増加しながら、伸縮リンク構造により連接される隣合う遊動片29を第1の案内レール7a,7bと共に、第1の案内レール7a,7bに対し垂直に配置される第2の案内レール9a,9bに沿って隣合う遊動片29を移動できる。例えば、この種の伸縮リンク構造を樹脂フィルムの下記単軸延伸に使用することができる。
【0063】
第1の案内レール7aと7bに対して直角に配置される第2の案内レール9a,9bを、同時又は異なる時間に双方向15の互いに離間する方向に移動するとき、第2の案内レール9a,9bを介して第2の案内レール9a,9b上に保持される遊動片/交差結合片29も、同様に連動して、特に2つの案内レール9a,9b間の間隔を増大させつつ、第1の案内レール7a,7b上に取り付けられる複数の把持装置19も徐々に互いに離間して移動することができる(隣合う把持装置19間の間隔も均一に離間する)。一対の案内レールが互いに離間して移動するとき、伸縮リンク構造により、リンク鎖21は、徐々に開放位置に回動され、隣接する対の把持装置19間の各間隔は、常に均等の状態で、全間隔が増大する。
【0064】
2つの第1の案内レール7a,7bに直角に交差して第1の案内レール7a,7bの平面上に配置される第2の案内レール9a,9bは、少なくとも第1の案内レール7a,7bの材料厚みの高さの上又は下となる第2の案内レール9a,9bの平面内に配置される点に注意すべきである。しかし、対の第1の案内レール7a,7b上及び対の第2の案内レール9a,9b上に摺動可能に配置される複数の把持装置19の挟持平面は、通常調整され、全把持装置19は、案内レール7a,7b,9a,9bの高さに無関係に、共通の挟持平面E(
図7)を形成する。従って、複数の把持装置19の挟持平面Eは、同時に複数の把持装置19の移動(走行)平面となり、平面Eは、最終的に全案内レール7a,7bと9a,9bを配置し又は実質的に配置する平面である。
【0065】
図4a~
図4cに示す適切な駆動装置により、2つの第1の案内レール7a,7bと2つの第2の案内レール9a,9bを原則的に移動することができる。
【0066】
図4aは、横(TD)方向に互いに進退自在に対の第1の案内レール7a,7bを移動する移動装置を示す。進退自在に移動する複数の移動装置を
図4aに網掛表示で強調する。
【0067】
例えば、
図4aは、第1の電動機形態の駆動装置31と、駆動装置31により駆動される歯車装置31aと、歯車装置31aにより回転される第1の伝動(動力伝達)装置32と、第1の伝動装置32により駆動される第1の伝動軸33aとを示す。伝動装置34は、第1の伝動軸33aに対して変位して(直角に)配置され、第1の伝動軸33aは、伝動装置34に駆動連結され、伝動装置34は、回転軸を中心にして回転可能に取り付けられる回転輪(ホイール)に捲回される。換言すると、第1の伝動軸33aを伝動装置34に接続する方向変換装置は、直線状に連続する方向変換軸として形成する必要はなく、
図4aに示すように、回転軸を中心に回転する各回転輪33bを回転する案内輪を使用できる。伝動チェーン、伝動ベルト、伝動帯綱、伝動軸等の伝動装置により原則的に伝動装置34自体を形成できる。特殊な使用条件に基づいて、伝動チェーンが優先される。
【0068】
案内レール7a,7bを最大延伸位置に移動するのに充分な空間を形成するため、2つの伝動装置34は、互いに平行にかつ広い間隔を空けて配置される。
【0069】
第1の案内レール7a,7bの一方の案内レール7a及び他方の案内レール7bは、例えば、留具28(
図4a)を介して第2の伝動装置34のベルト下部34a及びベルト上部34bに固定される。駆動装置31により伝動装置32を周方向に駆動すると、駆動装置31(又は後段に接続される歯車機構)の正転又は逆転方向に応じて、2つの第1の案内レール7a,7bは、互いに離間し又は接近する双方向13に延伸架枠5内で移動する。
図4aに示す実施の形態では、例えば、横(TD)方向変位と略称する。また、2つの第2の案内レール9a,9bは、複数の第1の案内レール7a,7bに対し直角に配置される同様の変位装置となる。
【0070】
図4aに示す同一の駆動装置を他の2つの案内レール9a,9bにも設けて、延伸架枠5の中心から外側方向に互いに離間させ又は外側から中心方向に互いに接近させて、各二対の案内レール7a,7bと9a,9bを移動すると、各対の案内レール7a,7bと9a,9bを延伸架枠5の中心から対称の位置に移動し又は変位することができる。
【0071】
2つの案内レール9aと9bを互いに接近し又は離間できるほか、それとは異なり、例えば、2つの他の第2の案内レール9aと9bを両者とも同長手(機械、MD)方向に延伸架枠5の一方側に接近移動する第2と第3の駆動装置を設けて、本発明の明確な利点を実現することができる。
【0072】
2つの他の案内レールの一方、例えば、案内レール9aの駆動変位装置を示す
図4bについて説明する。
【0073】
前記と同様に、案内レール9aの駆動変位装置は、駆動電動機形態の駆動装置37と、駆動装置37の出力段に接続される歯車装置37aから動力を発生する単段又は多段で単一又は複数の伝動装置38とを備え、伝動装置38は、必要に応じて、回転する単一又は複数の中間軸又は中間輪を有する。
【0074】
2つの第1の伝動軸33a,33bに対し直角に、互いに離隔してかつ平行に配置される2つの第2の伝動軸39a,39bは、周回する単伝動装置40に駆動接続される。伝動チェーン、伝動帯綱又は伝動ベルト、伝動軸等を伝動装置40にも設けることが好ましい。
【0075】
周回する伝動チェーンを備える2つの伝動装置40は、例えば、互いに側方に離間して延伸架枠ホイールに隣接して配置され、かつ接続軸39aを介して駆動装置37により駆動される。第2の伝動軸の代わりに、
図4bに示すように、2つの方向変換輪39bのみを設けることもできる。
【0076】
図4bの実施の形態では、駆動装置37は、電動機軸又は出力軸37aを介して後続の伝動装置38及び必要に応じて設けられる中間軸37b(例えば、電動機出力軸37aに平行)を駆動して、例えば、第1の伝動軸39aが回転される。伝動軸39aの対向する2つの端部(始端と終端)に2つの伝動装置40を駆動接続して、各伝動装置40の一端を伝動軸39aに接続し、一端から離隔する他端を周回輪(ホイール)39bにより支持し、周回輪39bの回転により、伝動装置40を周回させることができる。
【0077】
図4bの実施の形態でも、周回する伝動装置40のベルト下部40aとベルト上部40bに2つの第2の案内レール9a,9bの一端と他端を留具42により好適に固定するので、駆動装置37を一方向に回転すると、特に双方向15のうち、中心17方向又は中心17から離間する方向の延伸架枠5の端縁に向かって2つの第2の案内レール9a,9bの一方の案内レール9aを移動できる。この変位方向を、例えば機械(MD)方向変位という。
【0078】
対の第2の案内レール9a,9bを個別に移動する第3の駆動装置を示す
図4cでも、必要な複数部分を同様に網掛表示で強調する。
【0079】
電動機形態の第2の駆動装置137の出力段には、歯車装置137a又は伝動装置138が設けられ、第2の駆動装置137の出力回転方向に応じて、伝動装置138を介して第1の伝動軸139aを一方向又は逆方向に回転することができる。
【0080】
伝動軸139aの両対向端部に駆動接続される周回式の伝動装置140も、同様に伝動チェーン、伝動帯綱、伝動ベルト、伝動軸等を備えることができる。
【0081】
伝動軸139aの対向端部には、駆動輪139bの第2の軸が駆動接続され又は個別に軸承され、駆動輪139bに駆動連結される伝動装置140は、伝動軸139aの回転時に一方向又は逆方向に周回駆動される。
【0082】
案内レール9bは、周回する伝動装置140のベルト上部又はベルト下部に留具142により固定されるので、第3の電動機形態の駆動装置137の駆動時に、駆動装置137の回転方向、伝動軸139aと後続の2つの伝動装置140の回転方向により、双方向15の何れかの延伸架枠5の中心方向又は中心から離間する方向に延伸架枠5内で案内レール9bを移動する。
【0083】
その場合に、
図4cに示すように、案内レール9bは、第3の駆動装置137の作動により案内レール9aから独立して移動することが重要である。換言すると、互いに平行に配置される2つの案内レール9a,9bは、相対的間隔を縮小しながら、互いに接近方向に移動し、また2つの案内レール7a,7bと同様に、2つの案内レール9a,9bは、第2の駆動装置37と第3の駆動装置137の作動により、相対的に離間する方向に移動し変位する。その場合に、例えば、2つの案内レール9a,9bの個別の駆動装置により、平行な2つの案内レール9a,9bを、互いの相対的間隔を維持するのみならず、相対的間隔を減少しつつ、同一方向に移動でき、その点を下記に詳細に説明する。
【0084】
樹脂フィルム片41は、延伸すべき薄膜状、薄皮状、膜組織状、織物状又はその種の樹脂フィルム片(実施の形態では「樹脂フィルム片」と呼ぶが、請求の範囲を実際に「樹脂フィルム片」に限定する意図ではない)であるが、例えば、
図5bの平面図では、相対的移動構造により、第1の案内レール7a,7bと第2の案内レール9a,9bを相対的に接近する方向に移動して、樹脂フィルム片41の装填領域45を最小にする位置又は少なくとも比較的小さい間隔位置に、第1の案内レール7a,7bと第2の案内レール9a,9bを配置して、特に延伸架枠5全体の中心17に樹脂フィルム片41を装着することが好ましい。第1の案内レール7a,7bと第2の案内レール9a,9bとの交差部に移動可能に取り付けられる複数の遊動片(交差結合片)29は、第1の案内レール7a,7bと第2の案内レール9a,9bの移動に連動して、相対的接近位置に移動され、複数の遊動片29間の複数の把持装置19は、リンク鎖21により2つの把持装置19間の側方間隔が極めて小さく又は特に可能最小間隔の初期位置に移動する。特に、隣合う複数の把持装置19は、互いに側方で接触してもよい。
【0085】
駆動装置31,37,137の作動により、第1の案内レール7a,7bと第2の案内レール9a,9bは、何れも始動位置SP(
図5b)から出発して互いに離隔する方向に移動するとき、複数の案内レール7a,7b,9a,9bの各交差部に配置される複数の遊動片29は、外側に移動するので、複数のリンク鎖21により連接されて複数の遊動片29間に配置される複数の把持装置19は、複数のリンク鎖21により互いに離間する
図5cに示す位置に徐々に移動される。本発明の実施の形態では、延伸過程を終了する位置を終端位置EPともいう。例えば、所定の内部応力緩和除去処理を樹脂フィルム(フィルム)に施す後処理(アニール)を更に終端位置EPの後段で実施でき、隣合う把持装置19の各間隔と、各把持装置19に関連する対向する一対の案内レールの各間隔とを更に僅かに増加しても、始動位置SPと終端位置EPとの間で本来の延伸過程が行われる。その限りでは、後処理により達成できる最終的な位置を後処理位置ともいう。勿論単数又は複数の加熱炉を使用する適切な熱処理環境下で本来の延伸過程-これを詳細に後述する-を実施できる。
【0086】
図5b及び
図5cについて説明した例えば、薄膜状、薄皮状、フィルム状、膜組織状、織物状又は同様の扁平な樹脂体の樹脂材料の安定な延伸は、原則的に明らかに好ましいが、少なくとも延伸すべき樹脂フィルム(樹脂材料)片41を延伸架枠5に装着する時点で、正方形で矩形環状に配置される複数の把持装置19間に延伸すべき樹脂フィルム片41を好適に配置した後に、複数の把持装置19を閉鎖して樹脂フィルム片41を把持装置19で把持し保持するため、この方法には延伸架枠5上に操作者が身を乗出さねばならない難点がある。
【0087】
本発明では、特に延伸過程の開始前に、
図5bの好適な始動位置SPから
図5aの平面図に示す装填位置BPに少なくとも第1の案内レール又は第2の案内レールを移動して、装填領域45に保持される延伸架枠5に樹脂フィルム片41が装着される。通常、薄膜状又はフィルム膜状の延伸すべき樹脂フィルム片41は、複数の把持装置19に包囲される装填位置BPの装填領域45内に装着される。その後、延伸すべき樹脂フィルム片41の材料端縁は、複数の把持装置19により堅固に把持(挟持)される(
図5a)。
【0088】
図示の実施の形態では、例えば、駆動装置を構成する個別の2つの電動機37,137により周回式の伝動装置40又は140を個別に駆動して、伝動装置40又は140を介して2つの第2の案内レール9aと9bを個別に移動することが好ましい。
【0089】
例えば、電動機37,137を駆動して、樹脂フィルム片41を縦(機械又はMD)方向に延伸する第2の案内レール9a,9bにより、延伸架枠5を手前に移動して、任意の位置(例えば、装填位置BP)で案内レール9a,9bを停止し、その後、樹脂フィルム片41を容易に装着できる停止位置にある装填領域45の延伸架枠5に延伸すべき樹脂フィルム片41を装填できるので、人間工学的に改良された構造的利点が得られる。前記の通り、個別に制御可能な2つの電動機37,137の駆動により、2つの案内レール9a,9bを共通に調整して単一の方向に移動できる。その場合に、駆動装置(駆動列)37,137を極力等しい機械的構造で設計して、均一に動力を伝達することができる。換言すると、必要な動力又は出力の半分のみで歯車装置37aと137a及び対応する駆動装置37と137を含む駆動列を設計することができる。即ち、一方の各案内レールのみを移動すれば、各駆動装置(駆動列)37,137は、各案内レールを介して延伸すべき樹脂フィルム片に適切な延伸力を付与することができる。駆動装置(駆動列)37,137の伝動装置34に対し直角に配置される2つの案内レール7aと7b(相対的に接近方向に移動し、延伸過程の間は相対的に離間方向にのみ移動する)に対し、2つの案内レールに作用する逆方向の延伸力を発生するより強力な電動機を必要とする従来の駆動装置の駆動列を更に設けることもできる。より強力な電動機の代わりに又は異なる減速比を有する部分的に補完する歯車装置を選択することもできる。個別に移動可能な2つの案内レール9aと9bに対して個別の2つの駆動装置を使用し、例えば、軸受への重量分配を改良して、全体負荷を更に減少する変更を加えることができる。
【0090】
両対の案内レールのうちどの対を一方向に同時に移動するかは原則的に問題ではない。延伸架枠5の端縁に極力隣接する移動位置に複数の把持装置19を位置決めして、樹脂フィルム片41を装填できれば充分であるから、2つの他の案内レール9a,9bを共通の方向に移動する必要はない(移動が可能でも)。
【0091】
従って、
図5aの装填位置BPと、通常延伸過程を開始する
図5bの始動位置(中心位置)SPに示すように、複数の把持装置19が形成する装填領域45(装填位置BPにある装填領域45)は、延伸架枠5の中心17(
図2)からの外側端縁境界の架枠5aに接近(偏位)しており、装填位置BPの装填領域45は、始動位置SPの装填領域45に対し重複せず若しくは僅かしか重複せず又は
図5aの装填位置BPと、
図5bの始動位置SPに示すように、摺動可能な距離だけ互いに間隔を空けた離間位置に分離できる。
【0092】
前記の通り、延伸過程実施前の
図5aの装填位置BPにある装填領域45に装着する樹脂フィルム片41は、
図5bの平面図に示す延伸装置の始動位置SPにある樹脂フィルム片41の面に対して、面が重ならず又は部分的にのみ面が重なる位置にありかつ/又は面を覆い、重なる面は、延伸過程の実施前の延伸すべき樹脂フィルム片41の面積の80%より少なく、特に70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%よりも少ない。
【0093】
装填位置BPにある延伸すべき樹脂フィルム片41を装填位置BPから始動位置SPに移動するとき、装填位置BPと始動位置SPとでの樹脂フィルム片41が互いに重なる(被る、重複する)か、重なればどの程度の範囲で重なるかは、樹脂フィルム試料の大きさ又は表面積に依存する。例えば、2cmx2cm~20cmx20cm範囲の面積で樹脂フィルム片の大きさを変更できる。換言すると、延伸すべき樹脂フィルム片41の使用可能な最小縁間長さは、例えば、2cm、3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、8cm、9cm、10cm、11cm、12cm、13cm、14cm、15cm、16cm、17cm、18cm又は19cmであり、逆に最大縁間長さは、2cm、3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、8cm、9cm、10cm、11cm、12cm、13cm、14cm、15cm、16cm、17cm、18cm又は19cm又は20cmのである。
【0094】
各案内レール7a~9b上に奇数個の把持装置19を摺動可能に配置して、遊動片29とリンク鎖21を介して把持装置19を移動するとき、各案内レール上の中央に配置される把持装置19,19aは、各案内レールの長手方向には原則的に殆ど移動しない状態に保持される(
図3a、
図3b及び
図5c)。これは、中心点/中心17に対して対をなして配列される各把持装置19は、延伸過程の間、各案内レール上で対称にかつ互いに離間方向に移動するので、中央の各把持装置19aは、案内レール上で中心17方向に大部分その位置を維持するためである。
【0095】
奇数個の把持装置19を使用する前記実施の形態とは異なり、各案内レール上で偶数個の把持装置19を原則的に使用することもできる。遊動片29とリンク鎖21を介して各把持装置19が互いに離間方向に移動するとき、中央の2つの把持装置19も案内レールに沿って所定の距離移動する。案内レール毎に5個から7個の把持装置19を使用することが理想的であるが、これとは異なる数の把持装置19も使用できる。更に少数の把持装置19も使用できるが、案内レール毎に5個~10個の把持装置19を使用することが好ましい。
【0096】
前記のように、例えば、5個又は7個の把持装置19を各案内レール上に設けて、軸当たり、案内レール毎に2000Nの最大機械負荷を生ずることが好ましい。例えば、把持装置19当たり(5個の把持装置19の使用時)400N又は把持装置当たり285N(7個の把持装置19の使用時)の負荷が案内レールに吸収される。その場合に、例えば、最大延伸比1:10.4で、例えば、1~500mm/秒間の延伸速度を無段階に調節できる。また、最大延伸比又は延伸速度の値を適切に変更することもできる。
【0097】
力量計(ダイナモメータ)51を設けた支援支持構造体49を備える把持装置19の構造を
図6の斜視図及び
図7の側面図に示す。力量計51を備える把持装置19と、力量計51の無い把持装置19とを案内レール上に設けられるから、力量計51は、絶対的に必要ではない。
【0098】
把持装置19自体又は把持装置のみを通常有する把持装置19は、第1の係止顎53と、第1の係止顎53の上方に配置される第2の係止顎54とを有し、下方に配置される第1の係止顎53の接触面は、上方を向き、第2の係止顎54の接触面は、下方を向く。把持装置19の挟持装置55の下部に上方の第2の係止顎54が交換可能に取り付けられ、第1の係止顎53に対し接近可能に第2の係止顎54を移動(かつ/又は揺動)して、延伸すべき樹脂フィルム片の該当する端縁を把持位置に固定し挟持することが好ましい。
【0099】
図6、
図7及び
図8の拡大断面図に示すように、ばね(引張ばね)弾力装置57により開放位置への弾性力が各把持装置19の挟持装置55に付与されるので、延伸すべき樹脂フィルム片の端縁への把持力が除去されると、挟持装置55は、ばね弾力装置57の弾性力により把持位置から解放位置に移動して、樹脂フィルム片の把持から解放される。
【0100】
把持装置19の加圧室(ピストン室)59に圧力媒体(加圧空気)を供給すると、加圧室59内の圧力媒体の圧力により、加圧室59内の作動子(ピストン)と把持装置19の挟持装置55は、ばね弾力装置57の弾力に抗して、上方の解放位置から下方の把持位置に下降して、第1の係止顎53と第2の係止顎54との間に延伸すべき樹脂フィルム片の端縁を挟持して、把持過程を実施する。加圧室59から加圧空気が通気されて再び圧力が除去されると、ばね弾力装置57の引張力により挟持装置55が再び解放位置に上昇する。加圧室59に圧力を供給する圧力媒体導管に連絡する導管接続端60を
図8に示す。加圧用の圧力導管63又は圧縮空気導管又は窒素導管は、全把持装置本体の例えば、
図8に示す導管接続端60に接続される。
図6、
図7及び
図8には図示しない圧力導管63を例えば
図3bに示す。
【0101】
図6と
図7は、把持装置19の挟持装置55と第1の係止顎53とを有する把持装置19の支援支持構造体49にリンク鎖(伸縮リンク)21を取付けて、リンク鎖21により支援支持構造体49を案内する構造を示す。
【0102】
支援支持構造体49は、力量計51を収容する接続片を介して把持装置19(第1の係止顎53、挟持装置55及び挟持装置55に固定される第2の係止顎54を備える)に固定される。曲がり測定片(曲げ測定タブ)BMS、延伸測定片(延伸測定タブ)又は例えば、光導波路LWLを力量計51に設け又はそれらで力量計51構成できる。所定の測定片(測定タブ)に対する制限はない。換言すると、適切な全測定計器を使用できる。曲がり測定片、延伸測定片又は光導波路形態の力量計51は、特に、延伸すべき樹脂フィルム片平面E(
図7)に対して平行又は90°より小さい角度で配置することが好ましく、配置角度は、特に80°、75°、70°、65°、60°、55°、50°、45°、40°、35°、30°、25°、20°15°、10°よりも小さく、かつ5°よりも小さく、延伸すべき樹脂フィルム片の平面Eに対し多少でも平行又は実質的に平行に方向付けして、比較的正確な測定値が得られる方向が好ましい。
図8に示す把持装置19の支援支持構造体49の下部は、間隙を介して台下部構造体53”から分離され、高測定精度が得られる力量計51のみを介して支援支持構造体49全体が支持される。
【0103】
リンク鎖21に連接される支援支持構造体49の側端部と、特に案内レール7a,7b又は9a,9bに位置決めされる把持装置19と、案内レール7a,7b又は9a,9bの一部とを
図9の斜視図に補足して示す。
【0104】
中央の把持装置19aの領域内にのみ力量計51を設け又は形成することが好ましく、案内レール7a,7b又は9a,9bに沿って中心から側方に変位する把持装置19には、追加の力量計を必要としないので、中心を除く他の把持装置19とその支援支持構造体49の構造とは異なる好適な構造を備える中心に配置される把持装置19aとその支援支持構造体49を
図9に示す。
【0105】
複数の位置及び/又は他の位置又は他の把持装置に代替的又は補足的に、前記実施の形態とは異なる形態と形式の力量計51を設けてもよい。例えば、延伸装置全体、唯一の把持装置又は2つの把持装置のみに適切な力量計を設けることも想定できる。
【0106】
挟持装置55の第2の係止顎(圧接片)54の底面に形成される圧接面及び把持面と、第1の係止顎(把持台)53の載置面を異なる形態で形成して、挟持装置55の圧接片と把持台との間の挟持作用を改良できることも付言する。例えば、垂直に移動可能な
図8及び
図9に示す挟持装置55の下端に第2の係止顎54を交換可能に取り付けることができる。挟持装置55の下端と第2の係止顎54との間に着脱自在な嵌合結合構造及び/又は緊締結合構造を設けて、第2の係止顎54を挟持装置55の下端に取り付けることが好ましい。
図7及び
図8に示す実施の形態では、第2の係止顎54にほぞ溝81(
図10)を形成し、ほぞ溝81の対向両側面に長手方向のあり溝83を更に形成して、挟持装置55の下端に形成したあり形突起を第2の係止顎54のあり溝83内に嵌合することができる。
【0107】
挟持装置55下方の第1の係止顎53に対して進退自在に移動する第2の係止顎54の形成法の数例を簡単に説明する。
【0108】
図10a~
図10dは、第2の係止顎54の底面に形成される把持面又は接触面71の数例の断面を示す。使用する材料にもよるが、例えば、単一又は複数の平滑面、少なくとも僅かな凹凸面、粗面化された把持面73又は下方に突出する多数の締付歯又は締付突起75(
図10b)を有する本来の把持面又は接触面71(接触面71は、第1の係止顎53と協働して、平面状樹脂フィルムの端縁を確実に挟持する)を形成(
図10a)できる。互いに離隔しかつ平行に形成され又は例えば、V字状断面を有する交差溝77も把持面又は接触面71に形成(
図10c)できる。好適に締め付ける樹脂フィルム片の端縁に平行に係止する多数の線状把持突起79を互いに平行に形成できる(
図10d)。
【0109】
図10a~
図10dの断面図に例示するあり溝83を側部に形成したほぞ溝81に相補的形状のあり形突起を挟持装置55の下端に形成して、挟持装置55のあり形突起をあり溝83に嵌合して、挟持装置55に第2の係止顎54を交換可能に取り付けることができる。
図8に示す把持装置19の加圧室(ピストン室)59に圧力媒体(加圧空気)を供給すると、把持装置19内の空間内に配置されるばね弾力装置57の弾力に抗して、加圧室59内のピストンと円筒状に形成される挟持装置55は、自由な移動距離に沿って移動する。従って、挟持装置55を有する把持装置19は、ピストン(円柱)状の作動子を備え、作動子の下端に第2の係止顎54を交換可能に取り付けることができる。特に嵌合構造又は他の幾何学的構造・装置を適用して、把持装置19への接触片の取付けも勿論可能である。各使用目的に応じて、把持装置19に複数の接触片を容易に交換可能に取り付けることが好ましい。
【0110】
特に、延伸すべき樹脂材料の厚さ及び/又は材料組成に対応する最適な種々の把持面73を異なる形態で形成できる。延伸すべき樹脂材料を把持台上に最適に固定する把持装置19の種々の接触片65を選択できることが好ましい。把持装置19の種々の接触片例を図示する形態は、延伸すべき材料の種類又は性質、例えば、薄膜状、薄皮状、フィルム状、膜組織状、それらの近似形状の樹脂材料又は例えば、織物材料により選択される。
【0111】
下方の第1の係止顎53の上向面85には、例えば、多数の上出歯又は突起89(
図11a)又は例えば、V字断面の多数の平行溝又は窪み191(
図11b)を形成する把持面87が適切に設けられる。締付ける樹脂フィルム片の把持端縁に平行に上向面85又は把持面87を形成し又は角度90°変位できることが好ましい。V字状の平行溝又は窪み191に格子状凹凸を形成することも企図できる。V字状の平行溝又は窪み191を
図11bに示す。
図11cは、樹脂フィルムの端縁に平行な面に形成した多数の把持溝179を示す。
【0112】
図11dは、ゴム被覆した把持面87又は把持頂面85を設けた変形例を示す。
【0113】
図示の実施の形態の変形例は、単なる例示に過ぎない。種々の異なる樹脂材料と樹脂厚みを適用でき、それらの変形例は、任意数存在する。
【0114】
交換可能な把持台53’形態の複数の第1の係止顎53を形成することが好ましい。延伸すべき樹脂フィルム片を最適に把持し、特に樹脂フィルム片に良好に係合する把持台53’を把持台下部構造体53”に交換可能に取付ける利点がある。この利点は、特に
図9から明らかであり、
図11a~
図11dは、交換可能な把持台(係止顎取付台)53’形態の下方の第1の係止顎53を例示し、
図9に示す係止顎下部構造体53”上に第1の係止顎53を装着し又は取り付けることができる。
【0115】
延伸架枠5の基本的構造と基本的作用を複数の図面について既に説明した。
【0116】
装填領域又は取出領域1(
図1)内ではなく、延伸すべき樹脂フィルム片を通常適切な温度に加熱する第1の加熱炉3a内で、相対的に接近方向に複数の把持装置19を移動した
図5bの位置(始動位置SP)から、より大きい間隔又最大間隔に相対的に離間方向の
図5cの終端位置EPに複数の把持装置19を移動して、樹脂フィルム片の好適な対称延伸過程を好適に実施できる。例えば、室温等の冷間でも延伸すべき材料を延伸できる。
【0117】
図12は、特に良好な延伸結果を得る加熱炉構造又は加熱炉装置を示す。
図12は、延伸架枠5の上方に配置する上加熱炉3’aと延伸架枠5の下方に配置する下加熱炉3’’aとを備える第1の加熱炉装置3aと、延伸架枠5の上方に配置する上加熱炉3’bと延伸架枠5の下方に配置する下加熱炉3’’bとを備える第2の加熱炉装置3bとを示す。
【0118】
図3bに示すように、延伸架枠5は、案内レール7a,7b,9a,9bと、案内レール7a,7b,9a,9b上に取り付けられる複数の把持装置19と、各把持装置19の導管接続端60に接続される圧力導管63とを備え、
図12に示すように、上加熱炉3’a,3’bと下加熱炉3’’a,3’’bとの間を延伸架枠5が移動するのに充分な垂直間隙93が上加熱炉3’aの底面97と下加熱炉3’’aの頂面99との間に形成される。
【0119】
図12は、加熱炉装置3a,3b外部の始動位置SP(又は装填/取出し位置)にある延伸架枠5を示す。また、
図12は、ある程度垂直方向に重なって配置される加熱炉装置3a,3bの上加熱炉3’a,3’bと下加熱炉3’’a,3’’bとを示す。
【0120】
加熱炉装置3a,3bにより、延伸すべき樹脂フィルム片を適切な温度に通常調節することができる。赤外線放射(加熱炉内に進入した後に初めて延伸すべき樹脂フィルム片を適切に加熱する赤外線放射を意味する。)ではなく、延伸すべき樹脂フィルム片を装着した延伸架枠5の導入前に適切な温度に加熱した加熱空気の供給により温度調節を行うことが好ましい。
【0121】
図13は、第1の加熱炉装置3aの上加熱炉3’aと下加熱炉3”aとの間に、延伸すべき樹脂フィルム片41を保持する
図12の延伸架枠5を移動したに状態を示す。この状態を経て始動位置SPから終端位置EPへの延伸過程が通常実施される。
【0122】
図14は、加熱炉装置の少なくとも一方の加熱炉側(例えば、加熱炉3’a又は3’b内)で、電動機軸に直結し又は直接取付ける送風機軸を有する外部電動機173により好適に直接駆動して加熱炉空間内部に配置できる送風機又は送風輪195を示す。このような直接駆動式の送風機又は送風輪195を設けることが好ましい。
図14は、加熱炉の適切な側壁に装着する前の取外された送風機を直接駆動する電動機自体を示す。開口175から外部空気が加熱炉内に供給される。上加熱炉3’a,3’bのみならず、代替的又は補足的に使用する下加熱炉3”a,3”bでも同様の外部空気供給構造を採用できる。
【0123】
別法として、直接駆動式の積極的な空気供給装置ほど有効でないが、受動的な空気供給装置を設けることもでき、加熱炉に送風する積極的又は受動的な空気供給装置を開口175に取り付けることができる。循環空気通路内で循環する付加的な空気を原則的に加熱炉に供給しなければならない。
【0124】
図14の説明を補足する
図14a及び
図14bは、例えば、第1の加熱炉装置3aの上加熱炉3’aの底面(又は第1の加熱炉装置3aの下加熱炉3”aの頂面)の平面図と、例えば、アニール領域で使用できる第2又は第3の加熱炉、例えば、第2の加熱炉装置3bの上加熱炉3’bの同様の底面又は下加熱炉3’’bの頂面の平面図とをそれぞれ示す。
【0125】
延伸過程に使用する
図14aに示す加熱炉は、底蓋303の中央に形成される通気開口301を備え、通気開口301の下方に配置される延伸架枠5内に装着される延伸すべき樹脂フィルム片41に向かって空気を通気開口301から集中的に噴出し、通気開口301の開口形状、寸法及び配置は、延伸すべき樹脂フィルム片の形状と位置に適合する。換言すると、通気開口301の平面形状は、非延伸樹脂フィルム片の平面形状に少なくとも近似的に等しい。
【0126】
通気開口301から樹脂フィルム片に向かって噴出する加熱空気は、加熱炉の外側に形成される複数の吸引開口305から加熱炉の内部空間内に吸引され、図示の実施の形態では、吸引開口305は、各角部領域から傾斜端まで幅が漸減しつつ延伸する所定長さの4辺を有する正方形の吸引開口305’として形成される。正方形の吸引開口305’の各辺の長さは、延伸架枠5の半分の長さよりも短く、各接続部307は、ほぼ正方形に形成される吸引辺開口305”の各対向端部を分離する。吸引辺開口305”の形状により、充分な断面開口による対称吸引性能が得られ、吸引辺開口305”を通じて外部から吸引される空気は、加熱炉の内部空間全体を通過して更に加熱され、その後、通気開口301から樹脂フィルム片方向に噴出される。例えば、アニール領域で使用できる加熱炉の変形例を
図14bに示す。
【0127】
図14bに示す通気開口301の寸法は、延伸する樹脂フィルム片の寸法と、縦横の延伸量に適合して、
図14aの通気開口301より数倍大きいことが好ましい。
図14bの変形例でも、正方形に形成される吸引辺開口305”を備える正方形の吸引開口305が外側に設けられる。
【0128】
本実施の形態でも、延伸する樹脂フィルム片方向に加熱空気を噴出して、所期の樹脂材料処理に適合して、加熱炉内の温度を調節することができる。
【0129】
図15aと
図15bは、連続する2つの加熱炉装置3aと3bの側面図と斜視図を示し、加熱炉装置3aと3bは、延伸架枠5の移動通路Vの上方に配置される上加熱炉3’a,3’bと、延伸架枠5の移動通路Vの下方に配置されて、受動的な各空気供給管198(及び好適な送風機195)を接続する下加熱炉3’’a,3’’bと備える。手動又は自動(自動制御)により、空気供給管198(付加的な煙突を空気供給管に設けることもある)を通じて付加的に積極的に上加熱炉3’aと3’bを冷却でき、上加熱炉3’aと3’bの例えば
図14に示す上側の開口175から空気を吸引して、この冷却を行うことが好ましい。例えば、複数の空気管と複数の空気管装置199aを備える積極的な空気供給管199により、移動通路Vの下方に配置される下加熱炉3”aと3”bに空気を供給でき、例えば、空気管装置199aに制御弁199b及び/又は送風機199cを設け、例えば、電動機199dで駆動される送風機199cにより吸引開口199f(吸引筒199f)から空気を吸引して、管装置を通じて所与の加熱炉の内部空間に空気を供給することができる。
【0130】
図15aと
図15bに示す実施の形態は、通常冷媒空気を把持装置19に案内して把持装置19を冷却する漏斗状(他形状でもよい)の通気装置199eを備える。
【0131】
前記実施の形態とは異なり、例えば、上加熱炉3’a又は3’bに接続される空気供給管198に手動で又は自動的に調節できる煙突(
図15a)を付加的に設け、受動的な空気供給装置により付加的な空気を下加熱炉3”aと3”bに代替的に供給して、積極的に冷却を行うことができる。
【0132】
図16と
図17は、連続的に配置される複数の加熱炉装置の上加熱炉と下加熱炉との間に上下一対の好適な断熱板277a形態の断熱体277を配置し、上下一対の好適な断熱板277a間に形成した延伸架枠5の移動通路を示す。両加熱炉装置間又は通常隣接する2つの加熱炉装置間に、隙間又は例えば、遮断室183形態の分離室を付加的に形成し、各遮断室183の間隙内に付加的な断熱板183’を装着して、各加熱炉内への導入開口及び各加熱炉からの導出開口を遮断することができる(
図16)。特に、断熱板277a形態の断熱体277の各断熱板の上方又は下方に加熱炉を配置する箇所に適切な切欠を形成して、把持装置と案内レール及び特に延伸すべき材料片を切欠を通じて各加熱炉内に露出させて最適に加熱することができる。
【0133】
また、延伸用の加熱空気領域を他の機械から分離する複数の断熱体277により、上加熱炉と下加熱炉との間に空間を形成できる。
【0134】
図17は、上加熱炉と下加熱炉とを除去した断熱板277aを有する断熱体277単独の斜視図を示す。断熱体277は、例えば、上加熱炉3’a又は3’bに向く各断熱板277’の中央開口279aと、下断熱板277”に向いかつ下断熱板277”により下加熱炉3”a,3”b等を位置決めする類似の下開口又は下切欠279bとを有する。
【0135】
図18は、上加熱炉3’aと下加熱炉3”aを取付けた断熱体277の
図16と
図17に対応する正面図を示す。
【0136】
加熱炉及び延伸加熱炉として用いられる第1の加熱炉3aにより延伸過程前及び/又は延伸過程間に延伸すべき樹脂フィルム片を最適な温度に保持することが好ましい。
【0137】
延伸過程実施後に、延伸架枠5を移動する後段の別の加熱炉は、複数の把持装置19を再び少なくとも最小寸法で接近方向に移動して、所定の内部応力に樹脂フィルム片を弛緩させる例えば、アニール加熱炉とも称する複数の後処理加熱炉として用いられる。
【0138】
前記説明とは異なり、異なる構造と組合せ構造を有する他目的の加熱炉を使用することもできる。例えば、後処理加熱炉として用いられる他の延伸加熱炉及びアニール相に適する第3の加熱炉を使用することができる。また、例えば、機械縦延伸(MD延伸)用の第1の加熱炉、それに続く横延伸(TD延伸)用の第2の加熱炉を使用し、例えば、アニール相用の第3の加熱炉を使用することもできる。
【0139】
更に、例えば、所定の温度に樹脂フィルムを冷却する冷却領域かつ/又は他のアニール領域として機能する他の加熱炉3c又は他の加熱炉装置3cを第2の加熱炉の後段に付加的な延伸領域として設けることができる(
図1b加熱炉3a,3b及び3c)。その場合の各加熱炉を異なる温度で作動できる。例えば、上加熱炉内を下加熱炉内とは異なる温度レベルに設定できる。その意味では、温度範囲に限定されない。
【0140】
各加熱炉又は各加熱炉領域の隣接する加熱炉への通過開口を遮断断熱板によりほぼ完全に閉鎖することができる。換言すると、延伸すべき樹脂フィルム片を保持する延伸架枠5全体が上加熱炉と下加熱炉との間を移動する際に、移動通路Vに平行な加熱炉の側部は、断熱体又は断熱板により密閉され、詳細には、加熱炉内に延伸架枠5を導入する移動通路V前段の開口領域かつ/又は延伸架枠5を加熱炉から導出する移動通路V後段の開口領域を、遮断断熱板により可能な限り実質的に又はほぼ完全に閉鎖して、効率的熱処理を実施できる。換言すると、加熱炉間の閉鎖位置にある対応する遮断断熱板は、延伸架枠5が進入し退出する加熱炉の開口を、少なくとも90%まで、特に少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%閉鎖することが好ましい。
【0141】
加熱炉は、所定の温度に管理可能に形成される。即ち、各加熱炉3a,3b,3cは、300℃±50℃未満、特に40℃、30℃、20℃又は10℃未満の温度に加熱炉温度を保持し、少なくとも1つの加熱炉及び/又は1つの他の加熱炉は、400℃±50℃未満、特に40℃、30℃、20℃又は10℃未満の温度に加熱されかつ/又は第3の加熱炉3cは、特に第2のアニール相及び/又は温度低下又は温度冷却目的で形成される。
【0142】
例えば、電気ヒータにより循環空気駆動で複数の加熱炉を加熱できる。例えば、手動調節可能な風量調整器により、風量を再調整して、より正確な温度に調節できる。単一の加熱炉、特に最後の加熱炉の冷却が必要なとき、積極的な空気を延伸室内に供給する送風機を搭載して、積極的に冷却することが好ましい。
【0143】
最後に、本発明では、延伸架枠5を使用する樹脂フィルム片の延伸法の作業手順を簡単に説明する。延伸過程は、下記の通りである:
1.装着位置に延伸架枠を配置する
2.延伸架枠の把持台に樹脂フィルム片を配置する
3.把持装置により樹脂フィルム片を延伸架枠に挟持する
4.予め温度を調節した延伸加熱炉内に延伸架枠を移動して、例えば、熱拡散器により樹脂フィルム片を所望の温度に加熱できる(試料出力量)
5.両側の遊動片の中心から外側にかつ対称に把持装置を移動する(機械長手方向と機械横方向にそれぞれ分割される;例えば、種々の樹脂フィルム片(延伸試料)に対し異なる方向に把持装置を移動できる。即ち、相対的に離間方向にかつ対称に複数の各把持装置を移動して対称に又は必要なら二段階で順次、樹脂フィルム片を延伸することが好ましい)
6.延伸すべき樹脂フィルム片の材質に応じて、樹脂フィルム片を支持する延伸架枠を他のアニール路内に移動し、異なる温度又は等しい温度で樹脂フィルム片を更に保持し、延伸し又は弛緩できる
7.延伸架枠を移動して加熱炉から排出する
8.把持装置を開放する
9.延伸した樹脂材料を延伸架枠から取出す
10.案内レールと支持する把持装置を始動位置に移動する(装着位置)
【符号の説明】
【0144】
(5)・・延伸架枠、 (7a,7b)・・第1の案内レール、 (9a,9b)・・第2の案内レール、 (19)・・把持装置、 (41)・・樹脂フィルム片、 (BP)・・装填位置、 (EP)・・終端位置、 (SP)・・始動位置、