(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】オレフィンのオリゴマー化用Ni含有触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/78 20060101AFI20230627BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230627BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20230627BHJP
C07C 2/10 20060101ALI20230627BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
B01J23/78 Z
B01J37/08
C07C11/02
C07C2/10
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019047024
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-03-11
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ナドルニー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン パイツ
(72)【発明者】
【氏名】ギド シュトホニオル
(72)【発明者】
【氏名】ヘレーネ レーカー
(72)【発明者】
【氏名】ヴラディーミル レシェティロフスキ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-505618(JP,A)
【文献】特開平01-272533(JP,A)
【文献】特開昭61-278355(JP,A)
【文献】国際公開第2012/035637(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 11/02
C07C 2/10
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ニッケルと、Al含有かつSi不含のバインダー(Si 0.1質量%未満)と、シリカ-アルミナ担体材料と、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物とを含む、オリゴマー化触媒であって、前記触媒が、15~40質量%、好ましくは15~30質量%のNiO、10~30質量%、好ましくは12~30質量%のAl
2O
3、55~70質量%のSiO
2及び0.01~2.5質量%、好ましくは0.05~2質量%のアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物の組成を有し、かつ前記オリゴマー化触媒が、1:0.1~1:0.001の範囲内のニッケルイオン:アルカリ金属/アルカリ土類金属イオンのモル比を特徴とし、かつ二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムを本質的に含まない、前記オリゴマー化触媒。
【請求項2】
1:2:0.1~1:0.01:0.001の範囲内のニッケルイオン:アルミニウムイオン:アルカリ金属/アルカリ土類金属イオンのモル比を有する、請求項1に記載のオリゴマー化触媒。
【請求項3】
アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物として、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの酸化物又はそれらの混合物が存在する、請求項1又は2に記載のオリゴマー化触媒。
【請求項4】
前記オリゴマー化触媒が、窒素物理吸着によって測定される、150~400m
2/gのBET比表面積を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のオリゴマー化触媒。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のオリゴマー化触媒を製造する方法であって、少なくとも以下の工程:
a
)非晶質シリカ-アルミナ担体材料と、前記Al含有かつSi不含のバインダー(Si 0.1質量%未満)と
、ニッケル源の少なくとも一部と、任意
にアルカリ金属源又はアルカリ土類金属源の少なくとも一部とを混合し、こうして製造された混合物を粒状化する工程;
a1)工程a)において製造された粒状物を、ニッケル源の少なくとも一部及び/又はアルカリ金属源又はアルカリ土類金属源の少なくとも一部で処理する工程、ただし、全部の前記ニッケル源及び/又は前記アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源が、既に工程a)において前記非晶質シリカ-アルミナ担体材料及び前記Al含有かつSi不含のバインダーと混合されていないものとする、
ここで、工程a)又はa1)後の全バッチ(任意に使用される全ての溶剤を含めた全組成)中の前記非晶質シリカ-アルミナ担体材料の割合は20~50質量%であり、前記全バッチ中の前記Al含有かつSi不含のバインダーの割合は5~30質量%であり、前記全バッチ中の未溶解の形態の前記アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源の割合は0.01~2.5質量%であり、かつ前記全バッチ中の該ニッケル源の割合は30~50質量%である;及び
b)前記粒状物を乾燥及び焼成して、前記オリゴマー化触媒を製造する工程
を含む、前記方法。
【請求項6】
Al含有かつSi不含のバインダーとして、工程a)において酸化物系アルミニウム材料、好ましくは酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム又は酸化水酸化アルミニウムを使用する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
非晶質シリカ-アルミナ担体材料として、非晶質アルミノケイ酸塩を使用する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
工程b)における焼成を400℃~800℃の温度で実施する、請求項5から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記オリゴマー化触媒が、15~40質量%、好ましくは15~30質量%のNiO、10~30質量%のAl
2O
3、55~70質量%のSiO
2及び0.01~2.5質量%、好ましくは0.05~2質量%のアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物の最終組成を有する、請求項5から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
C3-~C6-オレフィンをオリゴマー化する方法であって、C3-~C6-オレフィンを含有するオレフィン含有装入混合物を、反応帯域中でオリゴマー化触媒と接触させ、ここで、オリゴマー化触媒として、請求項1から4までのいずれか1項に記載の触媒を使用する、前記オリゴマー化する方法。
【請求項11】
C3-~C5-オレフィンをオリゴマー化し、かつ前記オレフィン含有装入混合物がC3-~C5-オレフィンを含有する、請求項10に記載のオリゴマー化する方法。
【請求項12】
C4-オレフィンをオリゴマー化し、かつ前記オレフィン含有装入混合物がC4-オレフィンを含有する、請求項10に記載のオリゴマー化する方法。
【請求項13】
前記オレフィン含有装入混合物が、分岐状オレフィン2質量%未満を含有する、請求項10から12までのいずれか1項に記載のオリゴマー化する方法。
【請求項14】
前記オリゴマー化を液相中で行う、請求項10から13までのいずれか1項に記載のオリゴマー化する方法。
【請求項15】
前記オリゴマー化を、10~70barの圧力及び50~200℃の温度で実施するが、ただし、前記オリゴマー化を液相中で実施する場合には、パラメーターである圧力及び温度を、その出発物質流が液相中に存在するように選択する、請求項10から14までのいずれか1項に記載のオリゴマー化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量オレフィンをオリゴマー化するためのオリゴマー化触媒、この触媒の使用並びに本発明によるオリゴマー化触媒を使用して低分子量オレフィンをオリゴマー化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オリゴマー化は、不飽和炭化水素のそれら自体との反応であると理解され、ここで、相応してより長鎖の炭化水素、いわゆるオリゴマーが生じる。こうして、例えば、炭素原子3個を有する2個のオレフィンのオリゴマー化により、炭素原子6個を有する1個のオレフィン(ヘキセン)が合成されうる。2個の分子相互のオリゴマー化は、二量化とも呼ばれる。
【0003】
得られるオリゴマーは、例えば、アルデヒド、カルボン酸及びアルコールの製造に使用される中間生成物である。オレフィンのオリゴマー化は、大工業的には、均一相中で溶解された触媒上で又は不均一に固体触媒上で又は二相触媒系を用いてのいずれかで実施される。
【0004】
不均一触媒反応による方法の場合には、酸性オリゴマー化触媒上でのオリゴマー化が久しく知られている。工業的には、例えばゼオライト又は担体上のリン酸が使用される。この場合に、分岐状オレフィンの異性体混合物が得られる。高い二量体選択率を有する、オレフィンの非酸性不均一触媒反応によるオリゴマー化のためには、当該技術においてしばしば、担体材料上のニッケル化合物が使用される。そして、国際公開第95/14647号(WO 95/14647 A1)には、オレフィンオリゴマー化のための、酸化チタン及び/又は酸化ジルコニウム、酸化ケイ素及び任意に酸化アルミニウムの成分からなる担体材料を有するニッケル触媒が記載されている。これらの触媒上で、線状ブテンの混合物は75%未満の選択率でC8-オレフィンにオリゴマー化される。
【0005】
国際公開第95/14647号(WO 95/14647 A1)には、活性成分として、900℃での熱処理による強熱減量を差し引いた後に、NiOとして計算して酸化ニッケル10~70質量%、二酸化チタン及び/又は酸化ジルコニウム5~30質量%、酸化アルミニウム0~20質量%、二酸化ケイ素20~40質量%及びアルカリ金属酸化物0.01~1質量%を含有する、オリゴマー化触媒によってオレフィンをオリゴマー化する方法が記載されている。
【0006】
オレフィン、殊に炭素原子2~8個を有するオレフィンをオリゴマー化するための、ニッケル系不均一系触媒の触媒活性は、ニッケルカチオンと表面アルミニウム原子との間の相互作用に基づくことが推測される。しかしながら、二酸化チタン及び/又は二酸化ジルコニウムの添加は、その全組成が、百分率でより少ないアルミニウムもしくは酸化アルミニウムを含有することをまねき、このことは、触媒として使用される組成物を用いて達成することができる触媒活性及び/又は転化率が低下されることをまねく。同時に、二酸化チタン及び/又は酸化ジルコニウムの添加は、より大量の望ましくないオリゴマー化生成物、殊に高度分岐状オリゴマーが形成されることをまねきうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記の欠点を克服することができ、かつ殊に、より低度の分岐状生成物に対するより高い選択率をもたらす、改良されたオリゴマー化触媒を提供することであり、ここで該触媒の耐用寿命及び機械的性質、例えば強度に不利な作用を及ぼしてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による、請求項1に記載のオリゴマー化触媒が、本発明の課題を達成することが驚くべきことに見出された。二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムを省くことにより、かつ比較的少量のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンを添加することにより、オレフィン、殊に炭素原子3~6個を有するオレフィンのオリゴマー化の際に線状生成物に対する選択率の上昇を、その転化率を著しく低下させることなく示す、オリゴマー化触媒を提供することができることが、驚くべきことに分かった。本発明の意味での少量のアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンは、該アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンのモル割合と比較して、少なくとも10倍の過剰量のニッケルイオン並びに任意にアルミニウムイオンを意味する。
【0010】
それに応じて、本発明の第1の対象は、酸化ニッケルと、Al含有かつSi不含のバインダー(Si <0.1質量%)と、シリカ-アルミナ担体材料と、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物とを含むオリゴマー化触媒であり、ここで、該触媒は、15~40質量%、好ましくは15~30質量%のNiO、10~30質量%、好ましくは12~30質量%のAl2O3、55~70質量%のSiO2及び0.01~2.5質量%、好ましくは0.05~2質量%のアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物の組成を有し、かつ該オリゴマー化触媒は、1:0.1~1:0.001の範囲内のニッケルイオン:アルカリ金属/アルカリ土類金属イオンのモル比を特徴とし、かつ二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムを本質的に含まない。
【0011】
アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物として、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの酸化物又はそれらの混合物、さらに好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムの酸化物又はそれらの混合物、特に好ましくはリチウム、ナトリウムの酸化物又はそれらの混合物が存在する。特に好ましい実施態様において、該アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物は、酸化リチウムである。
【0012】
該バインダーは、本発明により製造される触媒が、必要な機械的強度を有することを確実にする材料である。本発明の意味での“非晶質”は、固体が結晶構造を有していない、すなわち長距離秩序を有していない結果として生じる、固体の性質を意味する。しかし、本発明の意味で、該非晶質シリカ-アルミナ担体材料が、小さな結晶質ドメインを有することは除外すべきではない。したがって、該非晶質シリカ-アルミナ担体材料は、結晶質材料ではない、例えばゼオライト材料ではない。
【0013】
二酸化チタン及び/又は二酸化ジルコニウムを本質的に含まない、という用語は、本発明の意味で、該オリゴマー化触媒が、0.5質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、特に好ましくは0.01質量%未満の二酸化チタン及び/又は二酸化ジルコニウムの含量を有することを意味する。
【0014】
本発明によれば好ましくは、該オリゴマー化触媒は、そのうえ、150~400m2/g、好ましくは190~350m2/g、特に好ましくは220~330m2/gの比表面積(BETにより計算)を有する。該比表面積は、DIN-ISO 9277(発行:2014-01)に従う窒素物理吸着によって測定され、かつ計算される。
【0015】
さらに好ましい実施態様において、該オリゴマー化触媒は、メソ孔及びマクロ孔を有し、すなわち二峰性の細孔径分布を有する。本発明によるオリゴマー化触媒のメソ孔は、5~15nm、好ましくは7~14nm、特に好ましくは9~13nmの平均細孔直径を有する。それに対して、本発明によるオリゴマー化触媒のマクロ孔は、好ましくは1~100μm、特に好ましくは2~50μmの平均細孔直径を有する。本発明によるオリゴマー化触媒の平均細孔容積、すなわち、該メソ孔並びに該マクロ孔の平均細孔容積は、0.5~1.45cm3/g、好ましくは0.7~1.13cm3/gであってよい。該平均細孔直径及び該平均細孔容積は、DIN 66133(発行:1993-06)に従う水銀ポロシメトリーによって測定することができる。
【0016】
本発明によるオリゴマー化触媒は、好ましくは、粒状物として存在する。さらにまた、本発明によるオリゴマー化触媒は、0.1mm~7mm、好ましくは0.5~6mm、特に好ましくは1mm~5mmの平均粒径(d50)を有していてよい。該平均粒径は、画像解析法によって、殊に規格ISO 13322-1(発行:2004-12-01)及びISO 13322-2(発行:2006-11-01)に記載された方法により、求めることができる。該粒径の分析に適した装置は、例えばCamsizer 2006(Retsch Technology)である。
【0017】
該オリゴマー化触媒は、さらに好ましい実施態様において、0.5MPaより大きい、好ましくは0.6MPaより大きい及び特に好ましくは0.8MPaより大きいバルク圧壊強度(Bulk Crush Strength;BCS)を有する。該BCS値は、鉱物質粒状物の機械的強度の尺度である。固体のバルク圧壊強度(BCS)は、固体試料にピストンによって管中で圧力をかける際に、0.5質量%の細粒分(すなわち、0.425mmのメッシュサイズを有するふるいによってふるい分けられた粒子)が形成される圧力[単位:MPa]として定義されるパラメーターであると理解すべきである。このためには、該固体20mlをふるい(メッシュサイズ:0.425mm)で前もってふるいにかけ、円筒形の試料管(内径:27.6mm、壁厚:5mm、高さ:50mm)内へ充填し、かつ鋼球(直径:3.9mm)5mlを該固体の上側へ入れる。続いて、該固体に、異なる(増大する)圧力を3分間かける。続いて、圧力をかけることにより生じた細粒分を、ふるいにかけることによって分離し、それぞれ合計として秤量し、かつそれらの百分率割合を決定する。この方法は、細粒分0.5質量%の量に達するまで、実施される。
【0018】
オリゴマー化触媒は、その最大かさ密度によってもキャラクタリゼーションすることができる。好ましい実施態様において、本発明によるオリゴマー化触媒は、0.1~2g/cm3、好ましくは0.2~1.5g/cm3、特に好ましくは0.3~1.0g/cm3の最大かさ密度を有する。該かさ密度の測定は、メスシリンダーによって行うことができる。該メスシリンダー中へ、特定の体積の調べるべき固体を、例えば適した配量装置、例えばDR100(Retsch)によって、充填し、かつ該メスシリンダーを秤量する。その質量及びその体積から、最大かさ密度を求めることができる。場合により、その残留水分は試料質量から差し引かなければならない。
【0019】
本発明によるオリゴマー化触媒は、次の工程を含む方法により製造される:
a)該非晶質シリカ-アルミナ担体材料と、該Al含有かつSi不含のバインダー(Si <0.1質量%)と、該ニッケル源の少なくとも一部と、任意に該アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源とを混合し;かつこうして製造された混合物を粒状化する工程;
a1)工程a)において製造された粒状物を、ニッケル源の少なくとも一部及び/又はアルカリ金属源又はアルカリ土類金属源で処理する工程、ただし、該ニッケル源の全部及び/又は該アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源が、既に工程a)において該非晶質シリカ-アルミナ担体材料及び該Al含有かつSi不含のバインダーと混合されていないものとする、
ここで、工程a)又はa1)後の全バッチ(任意に使用される全ての溶剤を含めた全組成)中の該非晶質シリカ-アルミナ担体材料の割合は、20~50質量%であり、該全バッチ中の該Al含有かつSi不含のバインダーの割合は5~30質量%であり、該全バッチ中の未溶解の形態の該アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源の割合は0.01~2.5質量%であり、かつ該全バッチ中の該ニッケル源の割合は30~50質量%である;及び
b)該粒状物を乾燥させ、かつ焼成して、該オリゴマー化触媒を製造する工程。
【0020】
好ましい実施態様において、全ての成分(非晶質シリカ-アルミナ担体材料、Al含有かつSi不含のバインダー、ニッケル源及びアルカリ金属源又はアルカリ土類金属源)は、既に工程a)において混合され、かつ粒状化される。工程a1)はその際に省かれる。
【0021】
工程a)において使用されるシリカ-アルミナ担体材料は、好ましくは、非晶質アルミノケイ酸塩である。該非晶質シリカ-アルミナ担体材料は、殊に、ゼオライト材料ではない。好ましい実施態様において、該シリカ-アルミナ担体材料は、10~20質量%、好ましくは12~17質量%のAl2O3及び80~90質量%、好ましくは83~88質量%のSiO2を含む非晶質アルミノケイ酸塩である。さらに好ましくは、該シリカ-アルミナ担体材料として使用される非晶質アルミノケイ酸塩は、レーザー回折、例えばMalvernのMastersizerによって測定される、10~80μm、好ましくは15~75μmの範囲内の粒度(d50)を有していてよい。さらにまた、該シリカ-アルミナ担体材料として使用される非晶質アルミノケイ酸塩は、DIN-ISO 9277(発行:2014-01)に従う窒素物理吸着によって測定して、好ましくは250~380m2/g、特に好ましくは280~360m2/gの比表面積(BETにより計算)を有する。工程a)における全バッチ(任意に使用される全ての溶剤、例えば水を含めた全組成)中の該シリカ-アルミナ担体材料の割合は、20~50質量%、好ましくは25~45質量%である。工程a)において該ニッケル源の全部が該全バッチに添加されない場合には、粒状化を可能にするために、十分な液体量が、溶剤、好ましくは水又はアンモニア性溶液の添加により、工程a)における混合物に添加されるべきである。
【0022】
工程a)において同様に使用されるAl含有かつSi不含のバインダー(Si不含は、該バインダーの全組成中でSi<0.1質量%を意味する)は、酸化物系アルミニウム材料、好ましくは酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は酸化水酸化アルミニウム、特に好ましくはベーマイトである。該Al含有かつSi不含のバインダーは、さらに好ましくは固体の形態ではなく、溶解された形態で、特に好ましくはコロイド溶液として、存在する。該Al含有かつSi不含のバインダー、好ましくは酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は酸化水酸化アルミニウム、特に好ましくはベーマイトが、溶解された形態で、好ましくはコロイド溶液として、存在する溶剤は、好ましい実施態様において、1質量%の硝酸溶液である。該Al含有かつSi不含のバインダーは、該コロイド溶液中で、10~25質量%、好ましくは12~20質量%、特に好ましくは14~18質量%の範囲内の量で存在している。工程a)における全バッチ(任意に使用される全ての溶剤、例えば水を含めた全組成)中の該Al含有かつSi不含のバインダーの割合は、5~30質量%、好ましくは7~25質量%である。
【0023】
工程a)における混合物に又は工程a1)における粒状物に、そのうえ、アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源、好ましくはアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物が添加される。該アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物は、殊に、リチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物又はそれらの混合物、好ましくはリチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物又はそれらの混合物、特に好ましくはリチウム化合物、ナトリウム化合物又はそれらの混合物であってよい。特に好ましい実施態様において、該アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物は、リチウム化合物である。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物として、殊に、前記の化合物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、好ましくは水溶性のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を使用することができる。
【0024】
好ましいアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウムの硝酸塩、炭酸塩又は炭酸水素塩である。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物として、殊に、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム又は炭酸水素リチウムを使用することができる。特に好ましい実施態様において、該アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源、好ましくは該アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物は、水溶液として添加される。さらに好ましい実施態様において、該アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源は、該ニッケル化合物を有する溶液中で工程a)における混合物に及び/又は工程a1)における粒状物に添加される。該製造方法の工程a)又はa1)における全バッチ(任意に使用される全ての溶剤、例えば水を含めた全組成)中の該アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源(未溶解の形態で)の割合は、0.01~2.5質量%、好ましくは0.05~2質量%である。
【0025】
工程a)及び/又はa1)におけるニッケル源として、原則的にあらゆる可溶性ニッケル化合物を使用することができる。それらには、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、酢酸ニッケル(Ni(ac)2)、ニッケルアセチルアセトネート(Ni(acac)2)、硫酸ニッケル(NiSO4)、クエン酸ニッケル又は炭酸ニッケル(NiCO3)が含まれる。好ましいのは、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、硫酸ニッケル(NiSO4)、炭酸ニッケル(NiCO3)である。ニッケル源として、前記のニッケル化合物の溶液、前記のニッケル化合物のペースト又はニッケル溶液とニッケルペーストとの組み合わせを使用することができる。
【0026】
該ニッケル溶液は、好ましくは、水溶液又はアンモニア性溶液である。アンモニア性溶液は、アンモニアを加えた水溶液である。該ニッケルペーストは、好ましくは水を含有し、ここで、本発明によるニッケルペーストは、該ニッケル溶液よりも少ない水を含有する(同じ量のニッケル化合物を前提とする場合)。該アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源が、該ニッケル化合物を有する溶液中で該混合物に添加される場合には、好ましくは、1:0.001~1:0.1のニッケルの、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンに対するモル比に調節されうる。
【0027】
該ニッケルペーストは、原則的に、ニッケル化合物の湿らせた固体であり、該化合物は、不完全に水和されており、かつ形式的に水酸化物系ニッケル化合物も形成し、炭酸ニッケルの場合に、例えばNiCO3・Ni(OH)2、しかしまた非化学量論組成の水酸化炭酸ニッケルである。該ニッケルペーストは、好ましい実施態様において、該ペーストの全質量を基準として、ニッケル30~50質量%、好ましくは35~45質量%を含有する。該ニッケル溶液は、ニッケルを、該溶液の全質量を基準としてそれぞれ、1~20質量%、好ましくは5~15質量%の範囲内の量で含有していてよい。
【0028】
好ましい実施態様において、ニッケル溶液として、アンモニア性Ni(CO3)水溶液、いわゆるNiHAC溶液(該溶液中でニッケルヘキサミンカーボネート錯体([Ni(NH3)6]CO3)が形成される)が使用され、該溶液は1~20質量%、好ましくは5~15質量%の範囲内のニッケル含量を有する。ニッケルペーストとして、炭酸ニッケル及び溶剤としての水からなるペーストが使用され、ここで、該ニッケルは、炭酸塩/水酸化物として存在する(一般組成式NiCO3・Ni(OH)2)が、しかし非化学量論組成の水酸化炭酸ニッケルも形成されうる。該ペーストは、30~50質量%、好ましくは35~45質量%の範囲内のニッケル含量を有していてよい。
【0029】
特に好ましい実施態様において、該オリゴマー化触媒の製造の際に、工程a)及び/又は任意にa1)において、NiHAC溶液並びに炭酸ニッケルペーストが使用される。このことは、該ニッケル源の添加が、専ら前記の工程a)において行われる場合に、該ニッケル源を、ペーストの形態で並びに溶液の形態で添加することができることであると理解すべきである。他方では、このことは、該ニッケル源の添加が、部分的に工程a)において及び部分的に工程a1)において行われる場合に、該ニッケル源が、一方の工程a)又はa1)においてペーストの形態で及び他方の工程a)又はa1)において溶液の形態で添加することができるか、又は双方の工程a)又はa1)において、ペーストの形態で並びに溶液の形態で添加することができることであると理解すべきである。工程a)における混合物についての特に好ましい実施態様において、該混合物に添加される該ニッケル源の少なくとも一部は、ニッケルペーストである。
【0030】
該製造方法の工程a)及び任意にa1)における全バッチ(任意に使用される全ての溶剤、例えば水を含めた全組成)中の該ニッケル源(ペースト及び/又は溶液)の割合は、30~50質量%、好ましくは35~45質量%である。
【0031】
本発明による方法は、殊に、工程a)又はa1)において二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムが該混合物に添加されるのではなく、該オリゴマー化触媒が、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムを添加せずに製造されることを特徴とする。該オリゴマー化触媒の全組成中の二酸化チタン及び/又は二酸化ジルコニウムの考えられる存在は、使用される成分中の不純物もしくは痕跡の存在に由来する。
【0032】
工程a)において、個々の成分、すなわち、該シリカ-アルミナ担体材料、該Al含有かつSi不含のバインダー及び任意に該ニッケル源は互いに、混合容器中で撹拌具を使用して混合され、かつ同時に又は続いて粒状化される。そのためには、例えば、インテンシブミキサーを使用することができる。該混合及び該粒状化は、典型的には周囲圧力で実施することができる。混合及び粒状化を行うことができる温度は、好ましくは10~60℃の範囲内である。方法工程a)、すなわち、該混合及び粒状化の期間は、5分~1時間、好ましくは10~30分である。
【0033】
任意の工程a1)において、該ニッケル源の残りの部分は、好ましくはペースト又は溶液の形態で、工程a)において製造された粒状物に添加され、かつ該粒状物と混合されて、該粒状物をニッケルで処理する。該ニッケル源の少なくとも一部が、工程a1)において添加されるべき場合には、工程a)からの任意に湿った粒状物を、該ニッケル源での処理前に乾燥させることができる。該乾燥温度は、80~250℃、好ましくは100~220℃であってよい。
【0034】
工程a)及び/又は工程a1)から生じる粒状物は、使用される溶剤の少なくとも一部、殊に水を依然として含有していてよい。すなわち、湿った粒状物であってよい。任意に依然として湿った粒状物が、工程b)における焼成にかけられる前に、この湿った粒状物は、好ましくは0.1~1.5mmのメッシュサイズを有するふるいで、ふるいにかけられてよい。該粒状物のふるい分けられた部分(ふるい下)は、該粒状化の工程a)に戻して、返送することができる。
【0035】
工程a)における混合及び粒状化後、任意に工程a1)におけるニッケル源の少なくとも一部での該粒状物の処理(含浸)後及び任意にこの湿った粒状物をふるいにかけた後に、該粒状物を、工程b)においてまず最初に乾燥させることができる。そのためには、公知の装置、例えばベルト乾燥機等を使用することができる。該乾燥温度は、80~250℃の範囲内、好ましくは100~220℃の範囲内であってよい。
【0036】
この任意に乾燥させた粒状物を、該焼成にかける前に、この乾燥させた粒状物を分別して、特定の粒度の粒状物に調節することができる。そのような分別は、例えば、定義されたメッシュサイズを有する少なくとも1つのふるいの使用により、達成することができる。特に好ましい実施態様において、2つのふるいが使用され、ここで、一方のふるいは、0.1~1.5mmのメッシュサイズを有し、かつ他方のふるいは、2.5~7mmのメッシュサイズを有する。その他のフラクション(ふるい上及びふるい下)は、任意に予め粉砕した後に、工程a)に返送することができる。
【0037】
該粒状物の任意の乾燥及び考えられる分別後に、該粒状物の焼成が行われる。その際に、該粒状物は、適した窯中で、好ましくは窒素流、特に好ましくは窒素向流中で、加熱することができる。該窒素流に、該焼成中に空気が添加されてよく、ここで、供給される空気の量は、100~10000体積ppm、好ましくは300~7000体積ppmであってよい。該焼成温度は、400~800℃、好ましくは450~700℃、特に好ましくは500~600℃であってよい。この温度は、数時間、好ましくは5~20時間、特に好ましくは8~15時間にわたって保持することができ、その後、該粒状物は冷却される。該冷却の際に、該窯中へ空気を導通することができるが、しかし導通される空気の量は制御されるべきである。任意に供給される空気の量は、100~10000ppm、好ましくは300~7000ppmである。
【0038】
その後、冷却された粒状物もしくは出来上がったオリゴマー化触媒を、可能な場合にはもう一度分別して、特定の粒度の冷却された粒状物に調節することができる。そのような分別は、例えば、定義されたメッシュサイズを有する少なくとも1つのふるいの使用により、達成することができる。特に好ましい実施態様において、2つのふるいが使用され、ここで、一方のふるいは0.1~1.5mmのメッシュサイズを有し、かつ他方のふるいは2.5~7mmのメッシュサイズを有する。その他のフラクション(ふるい上及びふるい下)は、任意に予め粉砕した後に、工程a)に返送することができる。
【0039】
こうして製造されたオリゴマー化触媒は、最後の方法工程である焼成もしくは冷却後の後接続された分別後に、15~40質量%、好ましくは15~30質量%のNiO、10~30質量%、好ましくは12~30質量%のAl2O3、55~70質量%のSiO2及び0.01~2.5質量%、好ましくは0.05~2質量%のアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物の最終全組成を有する。該記載は、100質量%の全組成を基準としている。
【0040】
該オリゴマー化の際の該オリゴマー化触媒の使用時間が増加するにつれて、その転化率及び/又は選択率が低下するようになりうる。本発明による触媒は、該オリゴマー化反応における使用後に再生することがきる。
【0041】
使用された状態のオリゴマー化触媒の再生は、次の工程を含む:
c)バーンオフ;及び
d)該オリゴマー化触媒の活性な表面構造の修復。
【0042】
該オリゴマー化触媒が、オリゴマー化反応におけるその使用後に有機物質の堆積状態を有することが考えられ、該有機物質は除去しなければならない。該触媒中に堆積された有機化合物の除去は、好ましくは工程c)においてバーンオフ(酸化)により行われ、それにより炭素酸化物及び水が生じる。該バーンオフ工程c)は、窯中で、例えばロータリーキルン又はシャフト窯中で、連続的に又は不連続に実施することができる。そのためには、該オリゴマー化触媒(粒状物の形態で)は該窯に供給され、かつ好ましくは400~600℃、特に好ましくは500~600℃の所定の窯温度で保持される。該バーンオフの際に使用される燃焼用空気は向流で供給され、任意に、付加的にさらなる空気が、適した入口を経て、該粒状物(オリゴマー化触媒)中へ吹き込まれて、迅速なバーンオフを保証する。
【0043】
工程d)、すなわち、該オリゴマー化触媒の活性な表面構造の修復は、工程d1)において、ニッケルでの(付加的な)処理(含浸)を含んでいてよい。ニッケルでの該処理は、該オリゴマー化触媒の製造(工程a1))に類似して行うことができるが、しかしながら任意に、該オリゴマー化触媒の製造の際よりも少ないニッケル濃度のニッケル化合物を有するニッケル溶液を使用することができる点で相違する。ニッケルペーストは通常、該再生に使用されない。その際に、付加的な量のニッケルを、該オリゴマー化触媒上に析出させることが重要である。原則的に、そのためにはあらゆる可溶性ニッケル化合物、例えば硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、酢酸ニッケル(Ni(ac)2)、ニッケルアセチルアセトネート(Ni(acac)2)、硫酸ニッケル(NiSO4)又は炭酸ニッケル(NiCO3)を、水性又はアンモニア性のニッケル溶液の製造に使用することができる。
【0044】
炭酸ニッケル(NiCO3)を濃アンモニア溶液中に、任意に炭酸アンモニウムを添加しながら、溶解させることにより得ることができる、NiHAC溶液の使用が特に有利であると判明している。そのような溶液は、0.5~14質量%、殊に2~10質量%、極めて特に4~8質量%のニッケル含量で、該含浸に使用することができる。
【0045】
ニッケル施与のために、工程c)においてバーンオフされたオリゴマー化触媒は、例えば、0.5~14質量%、殊に2~10質量%、極めて特に4~8質量%のニッケル含量を有するNiHAC溶液で、その細孔が飽和するまで含浸される。該含浸は、当業者によく知られた方法を用いて、例えば液膜がその表面上に永続的に生じるまで噴霧することにより(インシピエントウェットネス)、実施することができる。その溶液吸収が、オリゴマー化触媒1gあたり溶液約0.8~1.2gである場合には、塩基性炭酸塩の形態の付加的なニッケル約0.5~6質量%が析出されることを達成することができる。
【0046】
該オリゴマー化触媒が、工程d1)にかけられる、すなわちニッケルで処理される場合には、該オリゴマー化触媒を、適した乾燥装置、例えば空気流を用いるベルト乾燥機又はさもなければコニカルドライヤー中で、100~250℃、好ましくは120~220℃の温度及び常圧で又はさもなければ真空中で、乾燥させるべきである。
【0047】
工程d)は、任意の工程d1)の後に実施されるかもしれない、少なくとも工程d2)、焼成を含む。該オリゴマー化触媒の焼成は、適した窯、例えばシャフト窯又はロータリーキルン中で、連続的に又は不連続に実施することができる。工程d2)における連続的な焼成の際に、さらに好ましくは、ガスは、向流で該オリゴマー化触媒(粒状物)に導通される。ガスとして、空気、窒素又はそれらの混合物を使用することができる。該ガス流は、粒状物1kg及び1時間あたりガス0.2~4m3であってよく、かつ該ガスの入口温度は、400~800℃、好ましくは450~700℃であってよい。該ガスを通じて導入されるこの熱に加えて、エネルギーは、該窯の壁の積極的加熱により導入することができる。
【0048】
該窯中の焼成温度は、400~800℃、好ましくは450~700℃、特に好ましくは500~600℃であってよい。この温度は、数時間、好ましくは5~60時間、特に好ましくは10~40時間にわたって保持することができ、その後、該粒状物は冷却される。該冷却は、好ましくは窒素流中で行われる。該窒素に、付加的に空気を添加することができ、ここで、該空気量は好ましくは制御されるべきである。該窒素に好ましくは添加される空気の量は、100~10000体積ppm、好ましくは300~7000体積ppmであってよい。
【0049】
本発明によるオリゴマー化触媒もしくは本発明による方法を用いて製造される又は再生される触媒は殊に、C3-~C6-オレフィン、好ましくはC3-~C5-オレフィン、特に好ましくはC4-オレフィン又はそれをベースとするオレフィン含有装入混合物のオリゴマー化に、使用することができる。該オレフィン又はオレフィン含有装入混合物は、出発物質流として使用される。
【0050】
本発明の対象は、C3-~C6-オレフィンをオリゴマー化する方法でもあり、ここで、該C3-~C6-オレフィンを含有するオレフィン含有装入混合物は、少なくとも1つの反応帯域中で、触媒に導通され、ここで、本発明によるオリゴマー化触媒が、該オリゴマー化反応の触媒作用に使用される。1つの反応帯域は、本発明によれば、少なくとも1つの反応器と、形成されるオリゴマーを分離することができる少なくとも1つの蒸留塔とを含む。本発明による方法は、2つ以上の反応帯域でも操作することができる。該オリゴマー化は、好ましくは液相中で行われる。
【0051】
本発明による方法のためのオレフィンとして、C3-~C6-オレフィン、好ましくはC3-~C5-オレフィン、特に好ましくはC4-オレフィン又は類似のアルカンの割合を有していてもよい、それをベースとするオレフィン含有装入混合物が使用される。適したオレフィンは、とりわけ、α-オレフィン、n-オレフィン及びシクロアルケンである。好ましいのは、出発物質として使用されるn-オレフィンである。特に好ましい実施態様において、該オレフィンはn-ブテンである。‘それをベースとするオレフィン含有装入混合物’という用語は、本発明によれば、この用語が、対応するオリゴマー化されうるC3-~C6-オレフィンを、該オリゴマー化を実施することを可能にする量で含有する、あらゆる種類の混合物に関するものであると理解すべきである。好ましくは、該オレフィン含有装入混合物は、さらなる不飽和化合物及びポリ不飽和化合物、例えばジエン又はアセチレン誘導体を事実上含有しない。好ましくは、そのオレフィン割合を基準として5質量%未満、殊に2質量%未満の分岐状オレフィンを含有するオレフィン含有装入混合物が使用される。さらに好ましくは、2質量%未満の分岐状オレフィン、殊にイソオレフィン、例えばイソブテンを含有するオレフィン含有装入混合物が使用される。
【0052】
プロピレン(C3)は、ナフサのクラッキングにより大工業的に製造され、かつ容易に入手可能な基礎化学品である。C5-オレフィンは、製油所又はクラッカーからの石油エーテルフラクション(Leichtbenzinfraktionen)中に含まれている。線状C4-オレフィンを含有する工業用混合物は、製油所からの石油エーテルフラクション、流動接触(FC)クラッカー又はスチームクラッカーからのC4-フラクション、フィッシャー-トロプシュ合成からの混合物、ブタン類の脱水素からの混合物及びメタセシスにより又はその他の工業プロセスから生じた混合物である。例えば、本発明による方法に適した線状ブテンの混合物は、スチームクラッカーのC4-フラクションから取得することができる。その際に、第1工程においてブタジエンが除去される。これは、該ブタジエンの抽出又は抽出蒸留又はその選択的水素化のいずれかにより行われる。双方の場合に、事実上ブタジエン不含のC4-カット、ラフィネートIが得られる。第2工程において、イソブテンは、該C4-流から、例えば、メタノールとの反応によるメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)の製造によって、除去される。その他の可能性は、ラフィネートIからのイソブテンを水と反応させてtert-ブタノールを得ること又は該イソブテンを酸触媒反応によりオリゴマー化してジイソブテンを得ることである。目下イソブテン不含のC4-カット、ラフィネートIIは、所望のように、該線状ブテン及び任意にブタン類を含有する。任意に、さらに該1-ブテンは、蒸留により分離することができる。双方の、ブタ-1-エンを有するフラクション又はブタ-2-エンを有するフラクションは、本発明による方法において使用することができる。
【0053】
さらに好ましい実施態様において、C4-オレフィン含有材料流は、該方法にオレフィン含有装入混合物として供給される。適したオレフィン含有装入混合物は、とりわけ、ラフィネートI(スチームクラッカーからのブタジエン不含のC4-カット)並びにラフィネートII(スチームクラッカーからのブタジエン及びイソブテン不含のC4-カット)である。
【0054】
適したオレフィン含有装入混合物を製造する、さらなる可能性は、ラフィネートI、ラフィネートII又は類似に構成される炭化水素混合物を、反応塔中で水素異性化することにある。その際に、とりわけ、2-ブテン類、少ない割合の1-ブテン及び任意にn-ブタン並びにイソブタン及びイソブテンからなる混合物を取得することができる。
【0055】
該オリゴマー化は、通例、50~200℃、好ましくは60~180℃の範囲内、より好ましくは60~130℃の範囲内の温度で、かつ10~70bar、好ましくは20~55barの圧力で行われる。該オリゴマー化が液相中で行われる場合には、パラメーターである圧力及び温度はこのためには、該出発物質流(使用されるオレフィン又はオレフィン含有装入混合物)が液相で存在するように選択されなければならない。質量基準の空間速度(触媒質量あたり時間あたりの反応物の質量;weight hourly space velocity(WHSV))は、触媒gあたり及び時間あたり反応物1g(=1h-1)~190h-1、好ましくは2h-1~35h-1、特に好ましくは3h-1~25h-1の範囲内にある。
【0056】
一実施態様において、反応した出発物質を基準とした、該オリゴマー化後の二量化度(“該二量化を基準とした百分率による選択率”ともいう)は、少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも80%である。
【0057】
オリゴマー化生成物もしくは生じる二量体の線状性は、ISO指数により記載され、かつ該二量体中のメチル分岐の平均数の値を表す。こうして、(出発物質としてのブテンについて)、例えば、0であるn-オクテン、1であるメチルヘプテン及び2であるジメチルヘキセンが、C8-フラクションのISO指数に寄与する。該ISO指数が低ければ低いほど、それぞれのフラクション中の該分子はますます線状で構成されている。該ISO指数は、次の一般式により算出される:
【数1】
それに応じて、1.0のISO指数を有する二量体混合物は、二量体分子1個あたり平均して正確に1つのメチル分岐を有する。
【0058】
本発明によるオリゴマー化方法からの生成物のISO指数は、好ましくは0.8~1.2、特に好ましくは0.8~1.1である。
【0059】
本発明による方法により製造されるオリゴマーは、とりわけ、アルデヒド、アルコール及びカルボン酸の製造に利用される。こうして、例えば、線状ブテンの二量体は、ヒドロホルミル化によりノナナール混合物を得る。これは、酸化により対応するカルボン酸を、又は水素化によりC9-アルコール混合物を、提供する。該C9-酸混合物は、潤滑剤又は乾燥剤の製造に使用することができる。該C9-アルコール混合物は、可塑剤、殊にジ-ノニル-フタレート又はDINCHを製造するための前駆物質である。
【0060】
さらなる説明なしでも、当業者が、前記の記載を最も広範囲に利用できることを前提としている。したがって、好ましい実施態様及び実施例は、単に説明的な開示として理解すべきであり、決して、いかなる方法でも限定する開示として理解すべきではない。
【0061】
次に、本発明は、実施例に基づいて、より詳細に説明される。本発明の選択的な実施態様は、類似の方法で得ることができる。
【実施例】
【0062】
触媒1aの製造(ナトリウムの添加):
インテンシブミキサーの混合容器中へ、バインダー(ベーマイトと1質量%硝酸溶液とからなる溶液、15~17質量%のアルミニウム含量)と、ニッケル源(ニッケルペースト、湿らせた炭酸ニッケル、40~42質量%のニッケル含量)と、非晶質シリカ-アルミナ(SiO2 77.2質量%、Al2O3 12.2質量%、残部:水、アンモニア、痕跡量のさらなる酸化物、22μmの平均粒度、320m2/gの比表面積)とを入れる。
【0063】
シリカ-アルミナ、バインダー及び固体ニッケル源を、該インテンシブミキサー中で混合する。この混合中に、さらに液状成分として、NiHAC溶液(濃アンモニア性溶液中に溶解した炭酸ニッケル、11~12.5%のニッケル含量)及びアルカリ金属化合物(蒸留水中に溶解した炭酸ナトリウム、ニッケル:ナトリウムの比 約1:0.07)を、漏斗を介してゆっくりと該混合容器中へ添加する。
【0064】
全ての成分を添加した後に、該混合物を、効率的に分配させるために相対的に低い回転数で撹拌する。それに続いて該撹拌機の回転数を高めることにより、その材料の圧縮及び粒状化がゆっくりと始まる。適した粒径(0.1mm~7mm)を有する粒状物が得られると直ちに、該撹拌を停止する。こうして得られた粒状物を、約120℃で乾燥させ、その後、2つのふるいを用いてふるいにかけて、小さすぎるか又は大きすぎる粒子を該粒状物から除去する。
【0065】
続いて、粒状物を窯中で焼成する。該焼成のためには、該粒状物を、500~600℃の温度に加熱し、かつこの温度を約10~12時間保持する。粒状物で充填された窯に、窒素を貫流させ、ここで、少なくとも1:1000の粒状物の体積の、窒素の1時間あたりの体積(標準体積)に対する比が遵守される。該粒状物の室温への冷却中に、空気約1000~10000体積ppmを該窒素流中へ配量する。冷却した粒状物は、出来上がったオリゴマー化触媒に相当する。
【0066】
触媒1bの製造(リチウムの添加):
触媒1bを、触媒1aについて記載された方法に類似して製造したが、その際に、炭酸ナトリウムではなく、触媒1aのために使用された炭酸ナトリウムとほぼ等モル量の炭酸リチウム(蒸留水中に溶解した炭酸リチウム、ニッケル:リチウムの比 約1:0.07)を添加した点で相違する。
【0067】
触媒1cの製造(カリウムの添加):
触媒1cを、触媒1aについて記載された方法に類似して製造したが、その際に、炭酸ナトリウムではなく、触媒1aのために使用された炭酸ナトリウムとほぼ等モル量の炭酸カリウム(蒸留水中に溶解した炭酸カリウム、ニッケル:カリウムの比 約1:0.07)を添加した点で相違する。
【0068】
触媒1dの製造(アルカリ金属又はアルカリ土類金属の添加なし):
触媒1dを、触媒1aについて記載された方法に類似して製造したが、その際に炭酸ナトリウム、すなわちアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加しなかった点で相違する。
【0069】
オリゴマー化における該触媒の使用:
実験系列1(触媒1a及び1dの比較):
実験系列1において、該触媒のそれぞれ約4.5gを、微分-循環型反応器中へ充填し、かつオリゴマー化を、フィード材料1(第1表参照)を使用して、30barの反応圧及び100℃の反応温度で実施した。実験系列1のために、触媒1gあたりブテン7.5g/hの負荷量を使用した。
【0070】
実験系列2(触媒1a、1b及び1c):
該触媒約12gを、6mmの内径を有する金属管内へ充填した。該触媒の前後に、2mmの直径を有するガラスビーズを入れ、これらは予熱段階もしくは冷却段階として利用される。該オリゴマー化を、異なる2つのフィード流2及び3を使用して、30bar及び触媒1gあたりブテン7.5g/hの負荷量で実施し、ここでその反応温度は100℃であった。
【0071】
【0072】
実験系列1及び2におけるそれぞれのフィード流について、温度に応じて達成される転化率及び選択率、並びにその結果として得られるISO指数は、第2、3及び4表に示されている。
【0073】
第2表:実験系列1におけるオリゴマー化の結果:
【表2】
【0074】
第3表:フィード流2を用いる実験系列2におけるオリゴマー化の結果
【表3】
【0075】
第4表:フィード流3を用いる実験系列2におけるオリゴマー化の結果
【表4】
3,4-DMH=3,4-ジメチルヘキセン
3-MH=3-メチルヘプテン
n-O=n-オクテン
【0076】
まとめると、実験系列1における当該結果は、該触媒の製造中のアルカリ金属化合物、例えば炭酸ナトリウムの添加によりその転化率は確かに低下されるが、しかしながら線状オクテン異性体の割合が著しく高められることを示す。各分子は1回しか転化することができないので、高い転化率よりも該線状生成物の形成の方が好ましい。
【0077】
実験系列2の結果は、試験された全てのアルカリ金属化合物が、良好な転化率及び線状オリゴマー化生成物に対する高い選択率(ISO指数<1.1)を示すことを示す。n-オクテンの形成に関して、全ての触媒が匹敵する結果を提供するので、かなり一般的に、多様なアルカリ金属化合物の添加により、触媒に対する改良を、付加的なアルカリ金属化合物なしに達成することができることを想定することができる。
【0078】
本発明の実施態様は次のとおりである:
1. 酸化ニッケルと、Al含有かつSi不含のバインダー(Si 0.1質量%未満)と、シリカ-アルミナ担体材料と、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物とを含む、オリゴマー化触媒であって、前記触媒が、15~40質量%、好ましくは15~30質量%のNiO、10~30質量%、好ましくは12~30質量%のAl2O3、55~70質量%のSiO2及び0.01~2.5質量%、好ましくは0.05~2質量%のアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物の組成を有し、かつ前記オリゴマー化触媒が、1:0.1~1:0.001の範囲内のニッケルイオン:アルカリ金属/アルカリ土類金属イオンのモル比を特徴とし、かつ二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムを本質的に含まない、前記オリゴマー化触媒。
2. 1:2:0.1~1:0.01:0.001の範囲内のニッケルイオン:アルミニウムイオン:アルカリ金属/アルカリ土類金属イオンのモル比を有する、実施態様1に記載のオリゴマー化触媒。
3. アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物として、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの酸化物又はそれらの混合物が存在する、実施態様1又は2に記載のオリゴマー化触媒。
4. 前記オリゴマー化触媒が、窒素物理吸着によって測定される、150~400m2/gのBET比表面積を有する、実施態様1から3までのいずれかに記載のオリゴマー化触媒。
5. 実施態様1から4までのいずれかに記載のオリゴマー化触媒を製造する方法であって、少なくとも以下の工程:
a)前記非晶質シリカ-アルミナ担体材料と、前記Al含有かつSi不含のバインダー(Si 0.1質量%未満)と、前記ニッケル源の少なくとも一部と、任意に前記アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源の少なくとも一部とを混合し、こうして製造された混合物を粒状化する工程;
a1)工程a)において製造された粒状物を、ニッケル源の少なくとも一部及び/又はアルカリ金属源又はアルカリ土類金属源の少なくとも一部で処理する工程、ただし、全部の前記ニッケル源及び/又は前記アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源が、既に工程a)において前記非晶質シリカ-アルミナ担体材料及び前記Al含有かつSi不含のバインダーと混合されていないものとする、
ここで、工程a)又はa1)後の全バッチ(任意に使用される全ての溶剤を含めた全組成)中の前記非晶質シリカ-アルミナ担体材料の割合は20~50質量%であり、前記全バッチ中の前記Al含有かつSi不含のバインダーの割合は5~30質量%であり、前記全バッチ中の未溶解の形態の前記アルカリ金属源又はアルカリ土類金属源の割合は0.01~2.5質量%であり、かつ前記全バッチ中の該ニッケル源の割合は30~50質量%である;及び
b)前記粒状物を乾燥及び焼成して、前記オリゴマー化触媒を製造する工程
を含む、前記方法。
6. Al含有かつSi不含のバインダーとして、工程a)において酸化物系アルミニウム材料、好ましくは酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム又は酸化水酸化アルミニウムを使用する、実施態様5に記載の方法。
7. 非晶質シリカ-アルミナ担体材料として、非晶質アルミノケイ酸塩を使用する、実施態様5又は6に記載の方法。
8. 工程b)における焼成を400℃~800℃の温度で実施する、実施態様5から7までのいずれかに記載の方法。
9. 前記オリゴマー化触媒が、15~40質量%、好ましくは15~30質量%のNiO、10~30質量%のAl2O3、55~70質量%のSiO2及び0.01~2.5質量%、好ましくは0.05~2質量%のアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物の最終組成を有する、実施態様5から8までのいずれかに記載の方法。
10. C3-~C6-オレフィンをオリゴマー化する方法であって、C3-~C6-オレフィンを含有するオレフィン含有装入混合物を、反応帯域中でオリゴマー化触媒と接触させ、ここで、オリゴマー化触媒として、実施態様1から4までのいずれかに記載の触媒を使用する、前記オリゴマー化する方法。
11. C3-~C5-オレフィンをオリゴマー化し、かつ前記オレフィン含有装入混合物がC3-~C5-オレフィンを含有する、実施態様10に記載のオリゴマー化する方法。
12. C4-オレフィンをオリゴマー化し、かつ前記オレフィン含有装入混合物がC4-オレフィンを含有する、実施態様10に記載のオリゴマー化する方法。
13. 前記オレフィン含有装入混合物が、分岐状オレフィン2質量%未満を含有する、実施態様10から12までのいずれかに記載のオリゴマー化する方法。
14. 前記オリゴマー化を液相中で行う、実施態様10から13までのいずれかに記載のオリゴマー化する方法。
15. 前記オリゴマー化を、10~70barの圧力及び50~200℃の温度で実施するが、ただし、前記オリゴマー化を液相中で実施する場合には、パラメーターである圧力及び温度を、その出発物質流が液相で存在するように選択する、実施態様10から14までのいずれかに記載のオリゴマー化する方法。