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特許7302992プロペラノイズを低減させるためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】プロペラノイズを低減させるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/08 20230101AFI20230627BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230627BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20230627BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20230627BHJP
   B64U 20/20 20230101ALI20230627BHJP
   B64U 50/23 20230101ALI20230627BHJP
   G10K 11/178 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
B64C27/08
B64C39/02
B64D27/24
B64U10/13
B64U20/20
B64U50/23
G10K11/178 100
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019049368
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2019214354
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】15/928,372
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500461860
【氏名又は名称】オーロラ フライト サイエンシズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン, アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン, ライリー シー.
(72)【発明者】
【氏名】ウレック, ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ケアニー-フィッシャー, マーティン
(72)【発明者】
【氏名】パデュアーノ, ジェームズ ディー.
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0174317(US,A1)
【文献】米国特許第09422055(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 27/24
B64U 10/13
B64U 20/20
B64U 50/23
G10K 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低減されたノイズシグネチャを有する航空輸送体であって、
機体(102)、
第1のプロペラ(2、132)を駆動するように構成された第1の電気モータであって、前記第1のプロペラ(2、132)が前記機体(102)に揚力を提供するように方向付けられている、第1の電気モータ、及び
第2のプロペラ(2、132)を駆動するように構成された第2の電気モータであって、前記第2のプロペラ(2、132)が前記機体(102)に揚力を提供するように方向付けられている、第2の電気モータを備え、
前記第1のプロペラ(2、132)が第1のプロペラ(2、132)設計を採用し、前記第2のプロペラ(2、132)の幾何学的形状が前記第1のプロペラ(2、132)の幾何学的形状とは異なる第2のプロペラ(2、132)設計を採用し、
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、所定の分当たりの回転数「RPM」で駆動されたときに、等しい量の推力を供給するように構成されている、航空輸送体。
【請求項2】
前記第1のプロペラ(2、132)設計と前記第2のプロペラ(2、132)設計が、異なるプロペラ(2、132)ブレード(504)の総数を採用している、請求項1に記載の航空輸送体。
【請求項3】
前記航空輸送体が、前記航空輸送体の所望のノイズシグネチャを実現するために前記所定のRPMを動的に調整するように構成されている、請求項1又は2に記載の航空輸送体。
【請求項4】
前記第1のプロペラ(2、132)設計が偶数のブレード(504)から成り、前記第2のプロペラ(2、132)設計が奇数のブレード(504)から成る、請求項2に記載の航空輸送体。
【請求項5】
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、ホバリング飛行モード中に同じRPMで駆動されるように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の航空輸送体。
【請求項6】
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、ホバリング飛行モード中に異なるRPMで駆動されるように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の航空輸送体。
【請求項7】
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、単一の平面内に配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の航空輸送体。
【請求項8】
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、各々、固定された回転軸を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の航空輸送体。
【請求項9】
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、各々、旋回する回転軸を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の航空輸送体。
【請求項10】
航空輸送体内のノイズシグネチャを低減させるための方法であって、
第1のプロペラ(2、132)形状を有する第1のプロペラ(2、132)を所定の分当たりの回転数「RPM」で駆動するように構成された第1の電気モータを駆動すること、
第2のプロペラ(2、132)形状を有する第2のプロペラ(2、132)を前記所定の分当たりの回転数RPMで駆動するように構成された第2の電気モータを駆動することであって、前記第2のプロペラ(2、132)形状が、前記第1のプロペラ(2、132)形状とは異なり、前記所定のRPMで駆動されたときに前記第1のプロペラ(2、132)形状と等しい量の推力を供給するように構成されている、第2の電気モータを駆動すること、
プロセッサを介して、前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)のうちの少なくとも一方のRPMを動的にモニタリングし、前記所定のRPMからの逸脱を特定すること、及び
前記所定のRPMからの逸脱のイベントにおいて前記第1のプロペラ(2、132)又は前記第2のプロペラ(2、132)の前記RPMを調整して、前記ノイズシグネチャを調整することを含む、方法。
【請求項11】
前記プロセッサが、比例・積分・微分「PID」コントローラにRPMフィードバックを提供するために前記RPMを動的にモニタし、前記RPMフィードバックが、前記PIDコントローラによって使用されて、前記第1の電気モータ又は前記第2の電気モータに対する電力コマンドを調整する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセッサが、比例・積分・微分「PID」コントローラにノイズフィードバックを提供するように構成されたマイクロフォン(810)を介して、アクティブノイズ制御を動的に実施する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記PIDコントローラが、前記ノイズフィードバックを使用して、アクティブノイズ制御トランスデューサーに対する電力コマンドを調整する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機内の音響放射を制御するためのシステム及び方法に関し、より具体的には、回転翼航空機内のプロペラノイズを低減させるためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には複数のローター/プロペラによって駆動される完全電気及びハイブリッド電気式航空輸送体は、過去十年にわたり人気が高まってきた。しかし、そのような航空輸送体は、ノイズを生成する傾向がある。そのノイズの主たる源は、ローター自身である。
【0003】
プロペラノイズを低減させるための多くの既存の戦略が存在する。それらの大半は、ローターブレードの設計それ自体に対処するものである。ローターから生じるノイズは、大まかには主たる2つの種類のノイズに分けることができる。すなわち、広帯域ノイズと周期性ノイズである。広帯域ノイズは、渦ノイズと乱流誘起ノイズとを含み、一方で、周期性ノイズは、回転ノイズと相互作用/歪効果とを含む。トーンノイズは、主として、プロペラブレードの総数と、(所与の作動点に対して)プロペラブレードが回転しているときの分当たりの回転数(RPM)と、の関数として決定される。複数のローターを同じ作動点で作動していると、ノイズの認知に対する多数の悪影響が生じる。1つは、より高い音圧レベル(SPL)を生成するノイズシグネチャの累積的干渉が、トーンノイズ成分内でピークに達するということである。
【0004】
前述のことに鑑みて、航空輸送体によって放出される音響放射を緩和するシステム及び方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本開示の対象は、航空輸送体によって放出される音響放射を制御するためのシステム及び方法であり、より具体的には、ローター航空機によって放出される音響放射を緩和するための受動的システム及び方法である。
【0006】
幾つかの態様が、独立請求項内で規定される。態様の任意選択的な特徴が、従属請求項内で規定される。
【0007】
第1の態様によれば、低減されたノイズシグネチャを有する航空輸送体は、機体、第1のプロペラを駆動するように構成された第1の電気モータであって、第1のプロペラが機体に揚力を提供するように方向付けられている、第1の電気モータ、及び第2のプロペラを駆動するように構成された第2の電気モータであって、第2のプロペラが機体に揚力を提供するように方向付けられている、第2の電気モータを備え、第1のプロペラが第1のプロペラ設計を採用し、第2のプロペラが第1のプロペラ設計とは異なる第2のプロペラ設計を採用し、第1のプロペラと第2のプロペラが、所定の分当たりの回転数(RPM)で駆動されたときに、等しい量の推力を供給するように構成されている。
【0008】
特定の態様では、第1のプロペラ設計と第2のプロペラ設計が、異なるプロペラブレードの総数を採用する。
【0009】
特定の態様では、航空輸送体が、航空輸送体の所望のノイズシグネチャを実現するために所定のRPMを動的に調整するように構成されている。
【0010】
特定の態様では、第1のプロペラ設計が偶数のブレードから成り、第2のプロペラ設計が奇数のブレードから成る。
【0011】
特定の態様では、第1のプロペラと第2のプロペラが、ホバリング飛行モード中に同じRPMで駆動されるように構成されている。
【0012】
特定の態様では、第1のプロペラと第2のプロペラが、ホバリング飛行モード中に異なるRPMで駆動されるように構成されている。
【0013】
特定の態様では、第1のプロペラと第2のプロペラが、単一の平面内に配置されている。
【0014】
特定の態様では、第1のプロペラと第2のプロペラが、各々、固定された回転軸を有する。
【0015】
特定の態様では、第1のプロペラと第2のプロペラが、各々、旋回する回転軸を有する。
【0016】
第2の態様によれば、低減されたノイズシグネチャを有する航空輸送体が、機体、並びに、1以上のモータと動作可能に連結された複数のプロペラであって、第1、第2、第3、及び第4のプロペラを備えた複数のプロペラを備え、第1、第2、第3、及び第4のプロペラの各々が、単一の平面内に配置され、機体に対して下向きに推力を向けるように方向付けられており、複数のプロペラのうちの少なくとも2つが、異なる幾何学的形状を採用する。
【0017】
特定の態様では、複数のプロペラの各々が、固定された回転軸を有する。
【0018】
特定の態様では、第1のプロペラ設計と第2のプロペラ設計が、異なる長さを有するブレードを採用する。
【0019】
特定の態様では、第1のプロペラ設計が2つのブレードから成り、第2のプロペラ設計が3つのブレードから成る。
【0020】
特定の態様では、第1のプロペラ設計と第2のプロペラ設計が、異なる形状を有するブレードを採用する。
【0021】
特定の態様では、第1のプロペラと第2のプロペラが、ホバリング飛行モード中に調和したRPMで駆動されるように構成されている。
【0022】
特定の態様では、第1のプロペラと第2のプロペラが、ホバリング飛行モード中に異なる速度で駆動されるように構成されている。
【0023】
第3の態様によれば、航空輸送体内のノイズシグネチャを低減させるための方法が、第1のプロペラ形状を有する第1のプロペラを所定の分当たりの回転数(RPM)で駆動するように構成された第1の電気モータを駆動すること、第2のプロペラ形状を有する第2のプロペラを所定のRPMで駆動するように構成された第2の電気モータを駆動することであって、第2のプロペラ形状が、第1のプロペラ形状とは異なり、所定のRPMで駆動されたときに第1のプロペラ形状と等しい量の推力を供給するように構成されている、第2の電気モータを駆動すること、プロセッサを介して、第1のプロペラと第2のプロペラのRPMを動的にモニタリングし、所定のRPMからの逸脱を特定すること、及び、所定のRPMからの逸脱のイベントにおいて第1のプロペラ又は第2のプロペラのRPMを調整して、ノイズシグネチャを調整することを含む。
【0024】
特定の態様では、プロセッサが、比例・積分・微分(PID)コントローラにRPMフィードバックを提供するように構成されたRPMセンサを介して、第1のプロペラと第2のプロペラのRPMを動的にモニタする。その場合、RPMフィードバックは、PIDコントローラによって使用されて、第1の電気モータ又は第2の電気モータに対する電力コマンドを調整する。
【0025】
特定の態様では、該方法が、プロセッサを介して、アクティブノイズ制御を動的に実施するステップを更に含む。
【0026】
特定の態様では、プロセッサが、比例・積分・微分(PID)コントローラにノイズフィードバックを提供するように構成されたマイクロフォンを介して、アクティブノイズ制御を動的に実施する。
【0027】
特定の態様では、PIDコントローラが、ノイズフィードバックを使用して、アクティブノイズ制御トランスデューサーに対する電力コマンドを調整する。
【0028】
本発明の一実施形態は、低減されたノイズシグネチャを有する航空輸送体を含み、該航空輸送体は、機体、第1のプロペラを駆動するように構成された第1の電気モータであって、第1のプロペラが機体に揚力を提供するように方向付けられている、第1の電気モータ、及び第2のプロペラを駆動するように構成された第2の電気モータであって、第2のプロペラが機体に揚力を提供するように方向付けられている、第2の電気モータを含み、第1のプロペラが第1のプロペラ設計を採用し、第2のプロペラが第1のプロペラ設計とは異なる第2のプロペラ設計を採用し、第1のプロペラと第2のプロペラが、所定の分当たりの回転数(RPM)で駆動されたときに、等しい量の推力を供給するように構成されている。第1のプロペラ設計と第2のプロペラ設計は、異なるプロペラブレードの総数を採用し得る。航空輸送体は、航空輸送体の所望のノイズシグネチャを実現するために所定のRPMを動的に調整するように構成され得る。第1のプロペラ設計は偶数のブレードから成り、第2のプロペラ設計は奇数のブレードから成り得る。第1のプロペラと第2のプロペラは、ホバリング飛行モード中に同じRPMで駆動されるように構成され得る。 第1のプロペラと第2のプロペラは、ホバリング飛行モード中に異なるRPMで駆動されるように構成され得る。第1のプロペラと第2のプロペラは、単一の平面内に配置され得る。第1のプロペラと第2のプロペラは、各々、固定された回転軸を含み得る。第1のプロペラと第2のプロペラは、各々、旋回する回転軸を有し得る。
【0029】
本発明の別の一実施形態は、低減されたノイズシグネチャを有する航空輸送体を含み、該航空輸送体は、機体、並びに、1以上のモータと動作可能に連結された複数のプロペラであって、第1、第2、第3、及び第4のプロペラを備えた複数のプロペラを備え、第1、第2、第3、及び第4のプロペラの各々が、単一の平面内に配置され、機体に対して下向きに推力を向けるように方向付けられており、複数のプロペラのうちの少なくとも2つが、異なる幾何学的形状を採用する。 複数のプロペラの各々は、固定された回転軸を有し得る。第1のプロペラ設計と第2のプロペラ設計は、異なる長さを有するブレードを採用し得る。第1のプロペラ設計は2つのブレードから成り、第2のプロペラ設計は3つのブレードから成り得る。これは、性能を高め、ノイズを低減させることとなる。第1のプロペラ設計と第2のプロペラ設計は、異なる形状を有するブレードを採用し得る。第1のプロペラと第2のプロペラは、ホバリング飛行モード中に調和したRPMで駆動されるように構成され得る。第1のプロペラと第2のプロペラは、ホバリング飛行モード中に異なる速度で駆動されるように構成され得る。
【0030】
本発明の別の一実施形態は、航空輸送体内のノイズシグネチャを低減させるための方法を含み、該方法は、第1のプロペラ形状を有する第1のプロペラを所定の分当たりの回転数(RPM)で駆動するように構成された第1の電気モータを駆動すること、第2のプロペラ形状を有する第2のプロペラを所定のRPMで駆動するように構成された第2の電気モータを駆動することであって、第2のプロペラ形状が、第1のプロペラ形状とは異なり、所定のRPMで駆動されたときに第1のプロペラ形状と等しい量の推力を供給するように構成されている、第2の電気モータを駆動すること、プロセッサを介して、第1のプロペラと第2のプロペラのうちの少なくとも一方のRPMを動的にモニタリングし、所定のRPMからの逸脱を特定すること、及び、所定のRPMからの逸脱のイベントにおいて第1のプロペラ又は第2のプロペラのRPMを調整して、ノイズシグネチャを調整することを含む。プロセッサは、比例・積分・微分(PID)コントローラにRPMフィードバックを提供するためにRPMを動的にモニタし得る。その場合、RPMフィードバックは、PIDコントローラによって使用されて、第1の電気モータ又は第2の電気モータに対する電力コマンドを調整する。該プロセッサは、比例・積分・微分(PID)コントローラにノイズフィードバックを提供するように構成されたマイクロフォンを介して、アクティブノイズ制御を動的に実施し得る。PIDコントローラは、ノイズフィードバックを使用して、アクティブノイズ制御トランスデューサーに対する電力コマンドを調整し得る。
【0031】
本発明のこれらの及び他の利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって確実に理解されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1a】例示的なマルチローター垂直離着陸(VTOL)無人航空輸送体(UAV)を示す。
図1b図1aのVTOL UAVに対する例示的な航空機制御システムのブロック図を示す。
図2】クワッドコプターVTOL UAVの4つの同一なプロペラを選択的に駆動したときのパワースペクトル密度への影響を示す。
図3図3a及び図3bは、例示的なVTOLクワッドコプターUAVを示す。
図4a】例示的な2つのブレードを有するプロペラを示す。
図4b】例示的な2つのブレードを有するプロペラを示す。
図4c】例示的な2つのブレードを有するプロペラを示す。
図4d】例示的な2つのブレードを有するプロペラを示す。
図5a】例示的な3つのブレードを有するプロペラを示す。
図5b】例示的な3つのブレードを有するプロペラを示す。
図5c】例示的な3つのブレードを有するプロペラを示す。
図5d】例示的な3つのブレードを有するプロペラを示す。
図6】例示的な単一のブレードを有するプロペラを示す。
図7a】推力に対する2つのブレードを有するプロペラと3つのブレードを有するプロペラの性能の同等性のチャートを示す。
図7b】電力に対する2つのブレードを有するプロペラと3つのブレードを有するプロペラの性能の同等性のチャートを示す。
図8a】RPMフィードバックを提供するためのフィードバック制御図を示す。
図8b】RPMフィードバックを提供し、アクティブノイズ制御を実施するための、フィードバック制御図を示す。
図9図9aは、第2の例示的なVTOLクワッドコプターUAVを示し、図9bは、例示的なVTOLヘキサコプターUAVを示す。
図10図10a及び図10bは、傾斜翼機能を有する例示的なVTOL航空機を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の好適な実施形態が、添付の図面を参照しながら以下で説明されることとなる。図面における構成要素は必ずしも正確な縮尺で描かれておらず、むしろ、本発明の原理を明確に示すことに重点が置かれている。例えば、要素のサイズは、説明の明快さ及び利便性のために強調され得る。更に、可能な場合には、一実施形態の同じ又は類似の部品に言及するのに、図面全体を通して同じ参照番号を使用する。既知の機能や構造は、不必要な詳細によって本発明を不明確にし得るため、以下の記載では詳細には説明しない。明細書中の如何なる言葉も、実施形態の実施に必須である請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。以下の記載では、「第1の」「第2の」「頂部」「底部」「側部」「前」「後」などといった用語は、利便性のための用語であって、限定する用語と解釈すべきではない。本願に関しては、以下の用語及び定義が適用される。
【0034】
「約」及び「近似的に」という用語は、値(又は値の範囲)を修正又は説明するために使用されるときに、その値又は値の範囲に適切に近いことを意味する。したがって、本明細書で説明される実施形態は、挙げられた値及び値の範囲にのみ限定されるのではなく、むしろ適切に働き得る偏差を含むべきである。本書で使用する場合、水平及び垂直という用語は、航空機が地上にあるときといったように、地面に対する角度または面を表すために使用される。
【0035】
「航空輸送体」及び「航空機」という用語は、限定しないが、固定翼機、無人航空輸送体、可変翼機、及び垂直離着陸機(VTOL)を含む、飛行可能な機械を意味する。VTOL航空機は、固定翼航空機(例えば、ハリアージェット)、回転翼航空機機(例えば、ヘリコプター)、傾斜ローター/傾斜翼航空機、マルチローター航空機などを含み得る。
【0036】
本明細書で使用される際に、「及び/又は」は、「及び/又は」によって接合されるリスト内の項目の任意の1以上を意味する。一実施例として、「x及び/又はy」は、3つの要素の組{(x)、(y)、(x、y)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えると、「x及び/又はy」は、「xとyのうちの一方又は両方」を意味する。別の一実施例として、「x、y、及び/又はz」は、7つの要素の組{(x)、(y)、(z)、(x、y)、(x、z)、(y、z)、(x、y、z)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えると、「x、y、及び/又はy」は、「x、y、及びzのうちの1以上」を意味する。
【0037】
「伝達する」及び「通信する」という用語は、データを発信元から送付先へ送信若しくは他の方法で伝えることと、データを送付先へ伝えるために、通信媒体、システム、チャネル、ネットワーク、装置、回線、ケーブル、ファイバー、回路、及び/又はリンクに送達することとの、両方を意味する。
【0038】
「回路」及び「電気回路」という用語は、物理的電子部品(すなわち、ハードウェア)、並びに、ハードウェアを構成し、ハードウェアによって実行され、且つ/又はさもなければハードウェアに関連し得る、任意のソフトウェア及び/又はファームウェア(「コード」)を指す。本書で使用する場合、具体的なプロセッサ及びメモリは、第1のセットの1つ以上の命令行を実行するときには第1の「回路」を備えていてよく、第2のセットの1つ以上の命令行を実行するときには第2の「回路」を備えていてよい。
【0039】
「例示的な」及び「実施例」という用語は、非限定的な実施例、例、又は実例として機能することを意味する。本明細書で使用される際に、「例えば(e.g.)」及び「例えば(for example)」という用語は、1以上の非限定的な実施例、事例、又は例示のリストを強調している。本明細書で使用される際に、(例えば、オペレータが構成可能な設定、工場での調整などによって)機能の実行が不可能であるか又は可能でないか否かに関わりなく、回路が機能を実行するために必要なハードウェア及び(もし必要ならば)コードを備えるときはいつでも、回路は、機能を実行するために「動作可能」である。
【0040】
「プロセッサ」という用語は、ハードウェアに実装されていてもソフトウェアに明白に具現化されていても又はそれらの両方でも、それがプログラム可能であってもそうではなくても、プロセッサデバイス、装置、プログラム、回路、構成要素、システム、及びサブシステムを意味する。本明細書で使用される際に、「プロセッサ」という用語は、1以上のコンピュータデバイス、配線回路、信号修正デバイス及びシステム、システムを制御するためのデバイス及び機械、中央処理装置、プログラマブルデバイス及びシステム、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途向け集積回路、チップ上のシステム、離散した要素及び/又は回路を備えたシステム、状態機械、仮想機械、データプロセッサ、処理設備、並びにそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されるものではない。例えば、プロセッサは、任意の種類の汎用マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ、デジタル信号処理(DSP)プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)であり得る。プロセッサは、メモリデバイスに接続され又はメモリデバイスと統合され得る。
【0041】
「メモリデバイス」という用語は、プロセッサによって使用されるために情報を記憶するコンピュータハードウェア又は回路を意味する。メモリデバイスは、例えば、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、キャッシュメモリ、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CDROM)、電気光学メモリ、磁気光学メモリ、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、コンピュータ可読媒体などの、任意の適切な種類のコンピュータメモリ又は任意の他の種類の電子記憶媒体であり得る。
【0042】
設計要素のうちの幾つかが、航空輸送体の推進システム内のノイズに影響を与え得る。それらの要素には、(1以上の)ローター、モータ選択/作動点、輸送体(機体)構造、及び任意のアクティブノイズキャンセリングシステムが含まれる。クワッドコプターなどのマルチローターVTOL UAV(別称、回転翼航空機)は、今日の社会にかなり普及してきており、それらの最も大きい欠点の1つは、ノイズ、特にローターから生成されるノイズである。ローターのノイズシグネチャは、幾つかの設計要因と結び付いている。それらの要因には、プロペラブレードの総数、RPM、プロペラの直径、及びプロペラの形状(例えば、プロペラのブレード/翼型の形状)が含まれる。各ローターが個々にノイズを放射するだけではなく、ローター間の相互作用及びローターと輸送体との間の相互作用もまた、複数のローターが輸送体上に位置決めされたときにノイズを生成する。トーンノイズに関して、最も大きな成分は、ブレードの総数とRPMに結び付いたブレード通過周波数(BPF)によって駆動される。複数のローターを有する輸送体は、ノイズの単純な重ね合わせと更に相互作用効果との両方を通じて、このサウンドスケープを複雑にする。例えば、複数のローターが同じ作動点で作動するときに、それらのノイズシグネチャは、累積的に相互作用して、トーンノイズの音圧レベル(SPL)を増加させる。ノイズシグネチャを低減させるために、本開示の主題は、次のコンセプトを導入する。すなわち、とりわけ、ブレードの形状、数、及びそれらの作動条件を変更することによって、同じ輸送体上に異なるローターの幾何学的形状を提供し、それによって、(例えば、大きな振幅の離散したトーンを有するよりもむしろ)スペクトル全体にわたりノイズを拡散させることである。更により具体的には、本開示は、単一の輸送体に対して複数のローターの設計を使用して、より多くのスペクトルにわたりエネルギーを拡散させることを説明する。というのも、各ローターのノイズ特性は異なり、特に、トーンノイズは、より低いピークのSPL及び低減された認知される不快さをもたらすからである。
【0043】
図1aは、例示的なマルチローター航空輸送体100、具体的には、VTOLクワッドコプターUAVを示している。航空輸送体100は、概して、機体102(例えば、胴体又は他の構造体)、機体102から径方向に延在する複数のローターブーム104(例えば、4つの長手ブーム)、着陸装置110(例えば、スキッド又は車輪がついた着陸装置)、及び複数のプロパルサー108(例えば、ローターブーム104毎に1つ)を備える。
【0044】
機体102は、複数のローターブーム104の遠位端が機体102から径方向に延在するように、複数のローターブーム104の各々の近位端に連結され得る。機体102及び複数のローターブーム104は、(示されているように)単一のユニットとして製作され得るか、又は互いに連結される別個の構成要素として製作され得る。複数のローターブーム104の各々の遠位端は、プロパルサー108に連結され、プロパルサー108の各々は、プロペラ132に連結され且つプロペラ132を駆動/回転させるように構成されたリフトモータ114として示されている。前記複数のプロパルサー108の各々は、ローターブーム104の遠位端に置かれており、推力をZ軸に沿って(機体102に対して)下方に向けるように方向付けられている。複数のプロパルサー108の各々の回転軸134は、プロペラ132から下方へ推力を向けるために、Z軸に固定され且つZ軸と実質的に平行になっていてよい。
【0045】
図示されているように、プロペラ132の各々は、概して、同じ平面(示されているようにXY平面)内で常駐/回転し、互い(そしてZ軸)に平行な回転軸134を有する。図示されているように、上から見ると、複数のローターブーム104は、実質的に同じ長さであり、航空輸送体100は、X軸及びY軸に沿って実質的に対称である。したがって、そのような配置では、各プロパルサー108と航空輸送体100の重心(COG)との間の距離は、実質的に同じである。
【0046】
航空輸送体100の重心は、既知の技術を使用して(例えば、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアを使用して又は既知の数学の方程式を使用して)決定され得る。当業者によって理解され得るように、重心という用語は、概して、航空輸送体100が吊り下げられるならば、全ての位置においてバランスがとられ得る位置(ポイント)、すなわち、航空輸送体100の全ての方向における仮想バランス位置(ポイント)を指す。図示されている実施例では、XY平面内の航空輸送体100に対するCOGが、XY平面内の機体102のCOGと一致するが、Z軸においては異なっていてよい。
【0047】
リフトモータ114は、電子速度コントローラ(ESC)106によって制御される電気モータであり得る。その目的のために、ESC106は、例えば、リフトモータ114に隣接し且つローターブーム104の遠位端に統合された(又はさもなければ連結された)ものとしても提供され得る。航空輸送体100は、4つのプロパルサー108を有するものとして示されているが、当業者は、更なる又はより少ないプロパルサー108が採用されて、例えば、推力要件に応じて所望の機能を実現し得ることを理解するだろう。したがって、航空輸送体100は、実際には任意の数のプロパルサー108を採用することができる。例えば、航空輸送体100は、トライコプター(3つのローターを有する航空輸送体)、クワッドコプター(4つのローターを有する航空輸送体)、ヘキサコプター(6つのローターを有する航空輸送体)、及びオクトコプター(8つのローターを有する航空輸送体)などの、3つ以上のプロパルサー108を採用する航空輸送体であり得る。
【0048】
全てのローターが中央ハブから放射する従来の構成に加えて、中央本体の両側に2つの列のローターを有するeVTOL(電気垂直離着陸)航空機の構成などの、本開示から利益を受けることができる他のマルチコプターの構成が存在する。他の態様では、航空機が、図10a及び図10bを参照して説明されることとなるように、傾斜翼機能を採用し得る、翼に沿って位置決めされたプロパルサーを有する分散型電気推進システムを採用することができる。
【0049】
リフトモータ114は、各ローターブーム104の遠位端に示されているが、代わりに、複数のリフトモータ114(または単数のリフトモータ114)が機体102に位置決めされ、リフトモータ114と1以上のプロペラ132との間のギアボックス及び/又はドライブシャフトを介して、1以上のプロペラ132を駆動(回転)するように構成されていてもよい。更に、各ローターブーム104は単一のプロパルサー108のみを有するものとして図示されているが、各ローターブーム104の遠位端に、複数のプロパルサー108が設けられていてもよい。例えば、各ローターブーム104の遠位端にクロスメンバー(図示せず)が位置決めされ、プロパルサー108を互いから離間させるように(例えば、ローターブーム104の長さ方向に対して垂直に)配列するか、又は他の態様でプロペラ132間の干渉を防止するように(例えば、互い違いの構成/一部が重なった構成で)配列してよい。航空輸送体100の構成要素は、金属、複合材料、又はこれらの組み合わせから製作されていてよい。図1aは、クワッドコプターとして構成されたマルチローターVTOLを示しているが、本開示の主題は、分散型電気推進輸送体を有するものなど、固定翼を含む他の形態の航空機に適用され得る。
【0050】
図1bは、航空輸送体100用の例示的な航空機制御システムのブロック図を示している。航空機制御システムは、航空輸送体100の様々な航空機構成要素及び機能を制御するように構成されている。図示されているように、航空輸送体100は、少なくとも1つのメモリデバイス118、飛行コントローラ120、無線送受信機122、及び航法システム124に通信可能に連結された1以上の航空機プロセッサ116を含む。航空機プロセッサ116は、メモリデバイス118(例えば、ハードドライブ、フラッシュメモリなど)に記憶された指示命令(例えば、ソフトウェア)及び1以上のデータベースに少なくとも部分的に基づいて、1以上の動作を実行するように構成され得る。
【0051】
航空機制御システムは、航空輸送体100と遠隔デバイス130(例えば、スマートフォン、タブレット、及びラップトップコンピュータなどの、遠隔制御装置若しくは携帯用電子機器)又は他のコントローラ(例えば、基地局)との間でデータを通信するための、アンテナ112に接続された無線送受信器122などの、他の所望の設備を更に含んでいてよい。例えば、航空輸送体100は、ネットワーク128を経由して遠隔デバイス130とデータ(処理済みデータ、未処理データなど)を通信してよい。特定の態様では、無線送受信器122が、ブルートゥース(例えば、2.4から2.485GHzまでの工業、科学、及び医療(ISM)帯域の短波長超高周波数(UHF)電波)、近距離無線通信(NFC)、Wi-Fi(例えば、米国電気電子学会(IEEE)802.11標準)などの、1以上の無線標準を使用して通信するように構成され得る。遠隔デバイス130は、航空輸送体100並びに諜報、監視、及び調査(ISR)ペイロード126を含むその(1以上の)ペイロードのモニタリング及び/又は制御を容易にし得る。
【0052】
航空機プロセッサ116は、オペレータ、自動操縦、航法システム124、又は他の高レベルシステムからの、無線送受信機122を介したコマンドに応答して、様々なアクチュエータ(例えば、任意の操縦翼面の動作を制御するためのアクチュエータ)及び/又は(例えば、ESC106を介して)リフトモータ114の動作を制御するため、飛行コントローラ120と動作可能に接続され得る。特定の態様では、航空機プロセッサ116及び飛行コントローラ120が、単一の構成要素又は回路の中へ統合され得る。動作中、飛行コントローラ120は、航空機輸送体100のロール、ピッチ、又はヨーを制御するESC106を介して、飛行の様々な段階(例えば、離陸、巡航、着陸)の間に、各ローターブーム104上のプロペラ132/リフトモータ114の各々からの推力を、動的に(すなわち、リアルタイムで又はほぼリアルタイムで)且つ独立して調整し得る。言い換えれば、飛行コントローラ120は、リフトモータ114の各々が所望の上昇推力を生成するように(又は所望のノイズレベルを実現するように)、所与のローターブーム104上のリフトモータ114の各々を、独立して制御することができる。例えば、飛行コントローラ120は、プロペラ132のRPMを変更し、及び/又は、望まれる場合にプロペラブレードのピッチを変更することができる。具体的には、ESC106を介して電源(例えば、バッテリパック又はバッテリバンク)から各電気モータに供給される電力を調整することによって、リフトモータ114が制御され得る。
【0053】
航空機プロセッサ116は、慣性航法装置(INS)124b及び/又は慣性計測装置(IMU)124cに通信可能に接続された全地球測位システム(GPS)124aを含み得る、航法システム124に動作可能に接続されていてよい。慣性航法装置(INS)124b及び/又は慣性計測装置(IMU)124cは、1以上のジャイロスコープ及び加速度計を含み得る。GPS124aによって、INSの解をリセットするのに使うことができるか、又はカルマンフィルタといった数学的アルゴリズムを使ってINSの解とブレンドすることができる、完全に偏流(drift)のない、位置の値が与えられる。航法システム124は、とりわけ、航空機プロセッサ116に慣性安定化データを通信し得る。
【0054】
データを収集し且つ/又はエリアをモニタするために、航空輸送体100には、例えば、1以上のカメラ126a(例えば、光検出測距(LIDAR)デバイスを含む、画像及び/動画を記録又はキャプチャするための光学機器)、音響デバイス126b(例えば、マイクロフォン、反響定位センサなど)、及びISR機能を促進しISRデータ(例えば、写真、ビデオ、音響、センサ測定値など)を提供するための他のセンサ126cを備えた、ISRペイロード126が更に装備され得る。ISRペイロード126は、ISRペイロード126と航空機プロセッサ116との間のISRデータの通信を促進するため、航空機プロセッサ116に動作可能に接続されている。ISRデータは、航空輸送体100を航行するために、航空機プロセッサ116への入力として使用され得る。ISRペイロード126は、例えば、下方の及び/又は地上の物体をモニタするために、ISRペイロード126がより容易に下方へ方向付けられることを可能にするように、ジンバルシステムを介して機体102(又はローターブーム104などの別の1つの構造的構成要素)の1以上の側面と回転可能且つ旋回可能に連結され得る。データは、航空輸送体100から無線送受信器122を介してネットワーク128経由で遠隔デバイス130へ動的若しくは周期的に通信され得るか、又は後のアクセス若しくは処理のためにメモリデバイス118に記憶され得る。
【0055】
図2は、図1の航空輸送体100(例えば、クワッドコプターVTOL UAV)の4つの同一なプロペラを選択的に駆動したときのパワースペクトル密度への影響を示しているチャートである。具体的には、実線が、全ての(すなわち、4つの)同一なプロペラを調和して駆動/回転させることによるパワースペクトル密度への影響を表し、一方で、一点鎖線と破線は、それぞれ、プロペラの1つ及び2つのみを回転させたときのパワースペクトル密度への影響を表している。チャートは、1から2へ、2から4へ増加させたときに、同一のプロペラのBPFに対応するピークにおいて累積的な増加が存在することを示している。それは、より高い高調波で実質的に明らかになる。
【0056】
プロペラのノイズシグネチャの累積的な干渉は、異なる設計点(例えば、ブレードの総数、RPMなど)で作動する異なるプロペラ132を採用することによって、緩和され(又は更に避けられ)得る。実際、プロペラの幾何学的形状のばらつきは、低減された組み合わされたBPF及びSPLを実現するために使用され得る。したがって、本開示の一態様では、航空輸送体100が、輸送体の全体的なノイズシグネチャを低減させるために、異なるプロペラ設計のプロペラ132を採用し得る。例えば、プロペラ132は、同じRPMで同じ量の推力を生成する異なるプロペラブレードの総数を用いて設計され得る。それによって、一定のRPMでの作動を可能にし、制御問題を単純化する。しかし、(先端速度を低減させるために)RPM、直径、又はそれらの組み合わせなどの、プロペラ設計の他の態様も、変更されてよい。用途に応じて、物理的制約を原因としてプロペラ直径を変更することは実際的ではないだろう。更に、作動RPMは、モータの選択によって決定され得る。というのも、モータの効率は所与のRPMでピークに達し、したがって、モータのピークから外れたところでの作動は、航空機の性能を低減させ得るからである。最後に、RPMのばらつきは、しばしば、輸送体のコントローラが、モータの制御を提供することによってそのようなばらつきに対処することを要求する。そのようなモータの制御は、重要な技術的問題ではないが、望ましくないだろう。異なる作動点で作動している異なるプロペラを有することは、スペクトルをぼかすように作用する。更に、各プロペラ設計に対するBPFは、異なり、したがって、ピークは互いに位相外で生じ、より低いピークのSPLをもたらし得る。
【0057】
図3a及び図3bは、一態様による、例示的なVTOLクワッドコプター300a、300bの上面図を示している。図示されているように、推進及び上昇のために使用されるプロペラ132は、異なるブレードの総数、ホバリング飛行モード中の異なるRPM、異なる直径、又はそれらの任意の組み合わせを有するように設計され得る。プロペラは、ローターブーム104を介して機体102に取り付けられ得る。プロペラは、図3aで示されているように異なる幾何学的形状の全部で4つのプロペラ、又は図3bで示されているように異なる幾何学的形状の2つの組のプロペラを有する。図1の航空輸送体100に関して上述されたように、プロペラ132は、概して、同じ平面(示されているようにXY平面)内で常駐/回転し、互い(そしてZ軸)に平行な固定された回転軸134を有する。すなわち、プロペラ132は、Z軸に沿って(機体102に対して)推力を下方に向けるように方向付けられている。図3aで示されているように、VTOLクワッドコプター300aは、偶数及び奇数の両方のプロペラブレードの総数を有する4つのプロペラ132の一組を採用し得るが、図3bのVTOLクワッドコプター300bで示されているように、プロペラ132が、偶数だけ(又は奇数だけ)のプロペラブレードの総数を採用することも考慮される。
【0058】
従来通りに一組の同一なプロペラを採用する既存の回転翼航空機とは対照的に、図示されているVTOLクワッドコプター300a、300bは、異なる(非同一な)プロペラの組を使用する。更に、各々は4つのプロペラ132を備えるが、VTOLクワッドコプター300aは、4つの異なるプロペラ設計を使用し、VTOLクワッドコプター300bは、2つの異なるプロペラ(2つのプロペラを含む2つの組)設計を使用する。より具体的には、第1のVTOLクワッドコプター300aは、6つのブレードを有するプロペラ132a、8つのブレードを有するプロペラ132b、2つのブレードを有するプロペラ132c、及び3つのブレードを有するプロペラ132dを備えるが、一方で、第2のVTOLクワッドコプター300bは、6つのブレードを有するプロペラ132aが2つと、8つのブレードを有するプロペラ132bが2つと、の組を使用する。図示されているように、対称な回転翼航空機として配置されたときに、XY平面内で各プロパルサー108の(Z軸周りの)回転軸134と航空輸送体100の重心(COG)との間の距離は、実質的に同じである。
【0059】
特定の態様では、飛行コントローラ120が、異なるプロペラ設計に対応するように(例えば、ソフトウェアの更新を介して)修正され得る。例えば、飛行コントローラ120は、クワッドコプターをトリミングするために1以上のソフトウェア方法を実施し、それによって、プロペラ132の差異にも関わらずバランスされたリフトプロファイルを生成することができる。これは、(対気速度、重量、及び他の飛行条件に応じて、命令されたプロペラのRPMを変更する)参照テーブルと、所望のトリム条件からの逸脱を測定し、それらの逸脱をRPMコマンドにフィードバックする、フィードバック制御と、の組み合わせによって達成され得る。フィードバックは、プロペラ132の各々によって提供される単位RPM当たりの推力の差を考慮に入れることができる。これらの方法は、フライトエンベロープ(例えば、安定状態のホバリング飛行又は直線飛行)にわたり一貫したロバストなトリムを保証するのに役立つ。信頼可能な不安定な進入性能、外乱除去、及び1つのトリム条件(対気速度、クライム速度など)から別のトリム条件への移行を保証するためにも、特別な気遣いが必要とされ得る。別の一態様では、フィードフォーワードミキシング用語が、飛行制御法則から来る輸送体のモーメントコマンドに適用され得る。これらのミキシング用語は、RPMに依存するRPM当たりの推力の差異を近似的に構成するのに役立つ。その後、フィードバックが使用されて、実現された実際の速度及び加速度をコマンド値と比較し、システムがよりロバストであることを保証し、ミキシング値の不正確さに対処するのに役立つ。したがって、フィードフォーワード及び/又はフィードバックは、所望の性能を実現するために採用され得る。
【0060】
図8a及び図8bは、2つの例示的なフィードバック制御図を示している。具体的には、図8aが、RPMフィードバックを各ローターに提供するように構成されたフィードバック制御図800aを示し、一方で、図8bは、更に、アクティブノイズ制御を実施するように構成されたフィードバック制御図800bを示している。図8a及び図8bのフィードバック制御は、(例えば、ISRペイロード126の)1以上のセンサからの入力に基づいて、航空機プロセッサ116を介して実施され得る。
【0061】
図8aを参照すると、RPMコマンドは、電力コマンドを生成する、比例・積分・微分(PID)コントローラ802(例えば、RPM PIDコントローラ)の中へ入力され得る。電力コマンドは、ローターシステム804に(例えば、(1以上の)リフトモータ114又は推進システムの別の電気モータ/アクチュエータに)通信されて、プロペラ132を駆動する(すなわち、回転させる)。RPMセンサ806は、ローターシステム804と動作可能に接続され、(1以上の)プロペラ132及び/又は(1以上の)リフトモータ114の回転をモニタして、(例えば、動的に、リアルタイムで又はほぼリアルタイムで)RPMを決定することができる。測定された(又は計算された)RPMは、RPMフィードバックの形態でPIDコントローラ802にフィードバックされ得る。その後、PIDコントローラ802は、RPMフィードバックに応じて電力コマンドを調整し得る。
【0062】
したがって、特定の態様では、航空輸送体100が、航空輸送体のノイズシグネチャを低減させるための方法を採用し得る。例えば、該方法は、第1のプロペラ形状を有する第1のプロペラ132を所定のRPMで駆動するように構成された第1の電気モータ(例えば、第1のリフトモータ114)を駆動すること、及び第2のプロペラ形状を有する第2のプロペラを所定のRPMで駆動するように構成された第2の電気モータ(例えば、第2のリフトモータ114)を駆動することであって、第2のプロペラ形状が、第1のプロペラ形状とは異なり、所定のRPMで駆動されたときに第1のプロペラ形状と等しい量の推力を供給するように構成されている、第2の電気モータを駆動することを含み得る。航空輸送体100は、プロセッサ116を介して、第1のプロペラと第2のプロペラの(例えば、実際の又は予測された)RPMを動的にモニタして、所定のRPMからの逸脱を特定し得る。所定のRPMからの逸脱(すなわち、測定された/予測されたRPMが、所定のRPMに基づいて所定のRPMから逸脱する、例えば、x%の逸脱)のイベントでは、プロセッサ116が、第1のプロペラ又は第2のプロペラのRPMを調整して、(場合によっては)所定のRPMに調和させ、それによって、ノイズシグネチャを調整する。
【0063】
図8bのフィードバック制御図800bは、フィードバック制御図800bが、アクティブノイズ制御を更に実施することを除いて、概ね、RPMフィードバックに関する図8aのフィードバック制御図800aと同じである。より具体的には、フィードバック制御図800aが、RPMフィードバックを促進するために単一のPIDコントローラ802(PIDコントローラ802aとして図8bで示されている、RPM PIDコントローラ)を採用している一方で、フィードバック制御図800bは、ノイズフィードバックを提供するために第2のPIDコントローラ802b(例えば、ノイズPIDコントローラ)を備える。動作中、RPMコマンドは、PIDコントローラ802aの中へ入力され得る。PIDコントローラ802aは、電力コマンドを生成し、電力コマンドは、プロペラ132を駆動するためにローターシステム804に通信される。ノイズセンサ(例えば、マイクロフォン810)は、(1以上の)プロペラ132及び/又は(1以上の)リフトモータ114によって生成された任意のノイズをモニタするために、ローターセンサ804(又はその構成要素)の近傍に位置決めされ、ノイズフィードバックを生成するように構成され得る。マイクロフォン810は、ISRペイロード126のスタンドアローン又は部分であってよい。ノイズフィードバックは、第2のPIDコントローラ802bに通信され得る。第2のPIDコントローラ802bは、電力コマンドを生成して、アクティブノイズ制御トランスデューサー808を制御し、それによって、ローターシステム804からのノイズを調整する。マイクロフォン810は、ノイズのモニタを継続し、ノイズフィードバックを第2のPIDコントローラ802bに提供し得る。第2のPIDコントローラ802bは、ノイズフィードバックに応じて、アクティブノイズ制御トランスデューサー808に対する電力コマンドを調整する。したがって、特定の態様では、航空輸送体100が、プロセッサ116を介して、更に、アクティブノイズ制御を動的に実施し得る。例えば、航空機プロセッサ116は、マイクロフォン810を介して、アクティブノイズ制御を動的に実施し得る。マイクロフォン810は、ノイズフィードバックをPIDコントローラ802bに提供するように構成されている。ノイズフィードバックは、PIDコントローラ802bによって使用されて、アクティブノイズ制御トランスデューサー808に対する電力コマンドを調整する。
【0064】
飛行コントローラ120を単純化するために、4つの異なるプロペラ(例えば、プロペラ132aから132d)は、異なるプロペラ設計(例えば、プロペラブレードの総数)を採用しているにも関わらず、所与のRPMにおいて推力及び電力の性能を調和させるように構成され(サイズ決定され且つ形作られ)得る。例えば、プロペラは、たとえ各プロペラ132上に異なる数のブレードを有するとしても、リフトモータ114が各プロパルサー108に対して同じ推力及びトルクを経験するように、設計され得る。そのような配置は、より従来型の飛行コントローラが、異なるブレードの幾何学的形状を伴って働くことを可能にし、同じモータが各プロペラに対して使用され得ることを保証し得る。
【0065】
図4aから図4dは、例示的な2つのブレードを有するプロペラ132cを示しており、一方で、図5aから図5dは、例示的な同等の3つのブレードを有するプロペラ132dを示している。2つのブレードを有するプロペラ132cは、3つのブレードを有するプロペラ132dと同等であると考えられる。というのも、2つのブレードを有するプロペラ132cは、異なるブレードの総数及び形状を採用しているにも関わらず、同じRPMで駆動されたときに等しい(実質的に同じ)推力及び電力を生成するからである。図示されているように、図5aの3つのブレードを有するプロペラ132dは、2つのプロペラブレード(プロペラブレードの総数が2つ)から3つのプロペラブレード(プロペラブレードの総数が3つ)へプロペラブレードの数を増加させることによって、図4aで示されている2つのブレードを有するプロペラ132c設計から修正された。具体的には、2つのブレードを有するプロペラ132cは、中央ハブ402に連結され、互いに対して180度だけ周方向にずらされた、2つのプロペラブレード404を備える。一方、3つのブレードを有するプロペラ132dは、中央ハブ502に連結され、互いに対して120度だけ周方向にずらされた、3つのプロペラブレード504を備える。プロペラブレードの総数が2つ及び3つのものが図示されているが、他のブレードの総数も考慮される。その場合、周方向のずれは、概して、360度をブレードの総数で割ることによって決定される。
【0066】
図4bから図4dと図5bから図5dとの比較で最も良く示されているように、3つのブレードを有するプロペラ132dは、2つのブレードを有するプロペラ132cの推力及び電力曲線に調和するように再設計され、3つのブレードを有するプロペラ132dの幾何学的形状に変化をもたらした。例えば、図5bと図4bとの比較で最も良く示されているように、3つのブレードを有するプロペラ132dの翼長506に沿ったコード長は、2つのブレードを有するプロペラ132cの翼長406に沿ったコード長と比べて低減されている。当該技術分野において知られているように、コードラインは、プロペラブレードの翼型の前縁と後縁をつなぐラインを指す。コードラインの長さ(すなわち、コード長)は、ブレードの半径/長さの関数として変化する。すなわち、コード長は、プロペラブレードのブレード長さに沿ったその位置に応じて変化する。例えば、コードラインのコード長は、ブレードの先端の近くで最も短い。
【0067】
2つのブレードを有するプロペラ132cと3つのブレードを有するプロペラ132dの性能の同等性を検証するために、推力及び電力が速度(RPM)の関数として決定された。その結果は、図7a及び図7bのチャート700a、700bで示されている。具体的には、ブレードの数/プロペラブレードの総数にも関わらず、重なり合ったグラフの跡は、プロペラの性能が所与の速度(すなわち、同じRPM)において実質的に同じであることを示している。異なるブレードの総数で同等な(調和した)プロペラを設計することは、飛行コントローラの複雑さを低減させる。
【0068】
上述の実施例は、4つのプロペラ132を有するクワッドコプターを説明したが、本開示の対象は、各設計のプロペラが偶数である航空機に限定されるものと見るべきではない。したがって、輸送体の構成に応じて、設計者は、第1の設計を有する1つのプロペラを、プロペラが同じ速度で作動する第2の異なる(しかし同等な)設計を有するプロペラと交換することができる。代替的に、輸送体のプロペラは、異なる作動点で作動することができる。更に、本開示の主題は、VTOL航空機に限定されるものではなく、したがって、非VTOL航空機、例えば、分散型電気推進固定翼航空機に適用され得る。例示的な電気/ハイブリッド電気推進固定翼航空機は、2017年1月11日に出願された「Hybrid Propulsion Vertical Take-Off and Landing Aircraft.」という名称のFrancesco Gianniniらによって共同所有された米国特許出願第15/403,818号によってより詳細に説明されている。ノイズを低減させることに加えて、本開示の主題の技術は、輸送体のノイズシグネチャをマスキングし、それによって、敵のシステムによる検出を困難にさせるためにも役立ち得る。
【0069】
本開示の主題は、主としてプロペラ全体に適用されるものとして説明されてきたが、このコンセプトは、個別のブレードに関して単一のプロペラに適用することもできる。例えば、シグネチャを調整するために、個別のブレードの直径、形状、及び/又は間隔が変更され得る。特定の態様では、異なる直径を有するブレードを採用することが有利であり得る。というのも、それらの先端の渦が互いに干渉しないからであり、そのことは、輸送体のシグネチャを変更し得る。更に、間隔を変更することは、ブレード通過に対応するスペクトル上のピークを変更するのに役立ち得る。それはもはや、ブレードの数の定数倍ではないだろう。更に、プロペラのばらつきによってもたらされる慣性における差を低減させるために、ブレードの1以上に重量を追加することも有利であり得る。これらの慣性のばらつきは、トリム、ヨーコマンド、及び他のモーメントコマンドに上手く従わない可能性がある。しかし、それを緩和する戦略として慣性を追加することが採用され得る。この一実施例は、単一のブレードを有するプロペラである。例示的な単一のブレードのプロペラ132eが、図6で示されており、それによって、単一のブレード604の重量は、単一のブレードのプロペラ132eをバランスさせるために、重量606を使用して中央ハブ602の反対側にそれに対するカウンター手段が設けられる。そのことは、空気力学的に効率的であり得る。
【0070】
最後に、慣性におけるブレードとブレードのばらつき、作動点、及びブレードの組にわたる単位RPM当たりの推力は、飛行特性を最適化するために使用され得る更なる自由度を提供し得る。例えば、(マイクロフォン又は他の手段を使用して)音響シグネチャを測定することによって、オペレータは、ノイズシグネチャを更に低減させるために、リアルタイムでか又はオフライン較正プロセスとして、RPM又は荷重のばらつきを調整することができる。フライトエンベロープ全体にわたりこの調整を実行することが可能である。音響シグネチャを調整するための例示的なシステム及び方法が、2017年5月8日に出願された「Systems and Methods for Acoustic Radiation Control.」という名称のMartin Kearney-Fischerらによって共同所有された米国特許出願第15/588,977号によってより詳細に説明されている。別の一実施例では、低ノイズ、一貫したトリム、及び優れた進入性能を実現する、ブレードとRPMの最適な組み合わせを決定するために、実験的な調整が様々なブレード構成に対して実行され得る。
【0071】
例えば、図9a及び図9bを参照すると、機体102とローターブーム104のサイズ及び形状が調整され得る。該当する場合には、航空輸送体の非対称性が、利点として使用され得る。何故ならば、長手軸において必要とされる性能特性が、側方(すなわち、横手軸)において必要とされるものとは異なるからである。その目的で、プロペラブレードの設計、ブームの長さ、及びRPMが、性能、関心がある感知場、及びノイズを低減させるために作動点において差を生成するという目的に沿った他のパラメータに対して最適化され得る。図9aで示されているように、航空機は、6つのブレードを有するプロペラ132aの一組(前方の組)と8つのブレードを有するプロペラ132bの一組(後方の組)を採用し得る。一方で、図9bの航空機は、とりわけ、更なるヨー制御を提供するために、前方の組と後方の組との間に、3つのブレードを有するプロペラ132dの一組を更に備える。したがって、航空輸送体は、横手軸における単純な飛行制御を可能にするために側方に対称であり得るが、長手軸において異なる前方及び後方プロペラ132、RPM、ローターブーム104の長さなどが装備され得る。実際、プロペラ132は、特定の前方飛行速度に対して最適化され得る。そのようにして、高速性能、進入性能、及びノイズの全てが、共に最適化され得る。
【0072】
非対称性は、ローターの種類と同様に、ローターの位置にまで拡張され得る。例えば、ローターブーム104の長さ及びZ軸における地上高さ(ローター平面)は、他のパラメータ最適化と共に目標の音響効果を実現するために変更され得る。実際、図9aの航空機は、104の2つの組を採用し、その場合、ローターブーム104aの第1の組は、ローターブーム104bの第2の組よりも短い。図9bは、132d(及び任意の関連するリフトモータ114)を支持するために、ローターブーム104cの第3の組を導入する。しかし、両方の航空機は、それらの対称軸を横断して対称なままであることに留意されたい。ローターの高さ寸法において、ブームの上方へのローターの上昇は、より低い「ブレードスラップ」(例えば、各ローターブレードがブームの上を通過する際に誘起される圧力のスパイク)をもたらし得る。その場合、ローターの後流におけるブームの影響は、ブームの上方のローターの高さを変更することによって変動し得る。ノイズを低減させるための相殺的干渉は、様々なやり方、例えば、ローターの高さを正確にK+1/2音響波長にすることで実現され得る。ここで、Kは任意の整数である。本明細書で開示される様々な技術は、N個のプロペラ/ローターに適用され得る。したがって、それらの技術は、通常、マルチローター航空輸送体に結合される4つのプロペラ/ローターに限定されるものではない。
【0073】
前述されたことは、主として固定された回転軸を有するプロペラを有するマルチローターVTOL航空機との関連で説明されてきたが、本開示は、プロパルサーの1以上が、プロパルサー108からの推力ベクトルを向け直す旋回する回転軸を有する、航空機にも適用され得る。
【0074】
例えば、図10a及び図10bは、傾斜翼機能を有する例示的なVTOL航空機1000を示している。図示されているように、主翼1004及びカナード翼1006は、胴体1002の各側に位置決めされている。複数のプロパルサー108は、主翼1004とカナード翼1006の各々の長さに沿って分散されている。2つの主翼1004は、主翼の組を画定し、2つのカナード翼1006は、カナード翼の組を画定し、それらは、傾斜翼機能を提供するために、VTOL航空機1000の機体に(例えば、胴体1002の上側に)旋回可能に取り付けられている。例えば、胴体1002は、VTOL動作に対する垂直翼構成と前方/翼の本来の動作に対する水平翼構成との間で、(飛行コントローラ120などの飛行コントローラからの信号に応答して)主翼1004及びカナード翼1006を選択的に旋回させる、複数のアクチュエータ制御された旋回コネクタを備え得る。理解され得るように、各プロパルサー132の回転軸134は、プロパルサー108が旋回する際に、主翼1004/カナード翼1006と共に旋回する。
【0075】
VTOL航空機1000は、複数の独立して制御可能な交流(AC)モータ駆動ダクトファンを使用して推進力を生成するという点においてハイブリッド推進式航空機であり得る。ファンは、1以上のタービン駆動式発電機からAC電力を受け取る。したがって、分散型電気推進システムは、概して、エンジン、ギアボックス、1以上の主たる発電機1012、及び複数のダクトファンを備える。前記複数のダクトファンの各々は、電動モータによって駆動される。複数のダクトファンは、主翼1004に位置決めされた複数の主たるダクトファン1008、及びカナード翼1006に位置決めされた複数のカナードダクトファン1010を含み得る。例示的なVTOL航空機1000は、2017年1月11日に出願された「Hybrid Propulsion Vertical Take-Off and Landing Aircraft.」という名称のFrancesco Gianniniらによって共同所有された米国特許公開第2017/0203839号によってより詳細に説明されている。更に、2015年2月10日に公開された「Modular Miniature Unmanned Aircraft With Vectored-Thrust Control,」という名称のAdam Woodworthらによって共同所有された米国特許公開第8,951,086号は、航空機のピッチ、ロール、及びヨーの各々に対する推力ベクトルを直接的に制御することによって航空機に対して側方及び長手方向の制御を提供するように構成された推力ベクトリングモジュールを有する航空機を開示している。
【0076】
部品、特徴などの特定の配置を参照しながら、様々な実施形態が説明されてきたが、これらは、全ての可能な配置又は特徴を網羅することを意図するものではなく、実際、多くの他の実施形態、修正例、及び変形例が、当業者に究明可能であろう。したがって、本発明は、特に上述されていなくとも実施可能であることが理解されるべきである。上記で引用された特許及び特許文献は、全体として参照により本願に援用される。
【0077】
本開示は、以下の条項で説明される主題を含む
条項1
低減されたノイズシグネチャを有する航空輸送体であって、
機体(102)、
第1のプロペラ((2、132))を駆動するように構成された第1の電気モータであって、前記第1のプロペラ(2、132)が前記機体(102)に揚力を提供するように方向付けられている、第1の電気モータ、及び
第2のプロペラ((2、132))を駆動するように構成された第2の電気モータであって、前記第2のプロペラ(2、132)が前記機体(102)に揚力を提供するように方向付けられている、第2の電気モータを備え、
前記第1のプロペラ(2、132)が第1のプロペラ(2、132)設計を採用し、前記第2のプロペラ(2、132)が前記第1のプロペラ(2、132)設計とは異なる第2のプロペラ(2、132)設計を採用し、
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、所定の分当たりの回転数(RPM)で駆動されたときに、等しい量の推力を供給するように構成されている、航空輸送体。
条項2
前記第1のプロペラ(2、132)設計と前記第2のプロペラ(2、132)設計が、異なるプロペラ(2、132)ブレード(504)の総数を採用している、条項1に記載の航空輸送体。
条項3
前記航空輸送体が、前記航空輸送体の所望のノイズシグネチャを実現するために前記所定のRPMを動的に調整するように構成されている、条項1又は2に記載の航空輸送体。
条項4
前記第1のプロペラ(2、132)設計が偶数のブレード(504)から成り、前記第2のプロペラ(2、132)設計が奇数のブレード(504)から成る、条項2に記載の航空輸送体。
条項5
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、ホバリング飛行モード中に同じRPMで駆動されるように構成されている、条項1から4のいずれか一項に記載の航空輸送体。
条項6
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、ホバリング飛行モード中に異なるRPMで駆動されるように構成されている、条項1から5のいずれか一項に記載の航空輸送体。
条項7
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、単一の平面内に配置されている、条項1から6のいずれか一項に記載の航空輸送体。
条項8
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、各々、固定された回転軸を有する、条項1から7のいずれか一項に記載の航空輸送体。
条項9
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、各々、旋回する回転軸を有する、条項1から8のいずれか一項に記載の航空輸送体。
条項10
低減されたノイズシグネチャを有する航空輸送体であって、
機体(102)、並びに
1以上のモータと動作可能に連結された複数のプロペラ(2、132)であって、第1、第2、第3、及び第4のプロペラ(2、132)を備えた複数のプロペラ(2、132)を備え、前記第1、第2、第3、及び第4のプロペラ(2、132)の各々が、単一の平面内に配置され、前記機体(102)に対して下向きに推力を向けるように方向付けられており、前記複数のプロペラ(2、132)のうちの少なくとも2つが、異なる幾何学的形状を採用している、航空輸送体。
条項11
前記複数のプロペラ(2、132)の各々が、固定された回転軸を有する、条項10に記載の航空輸送体。
条項12
前記第1のプロペラ(2、132)設計と前記第2のプロペラ(2、132)設計が、異なる長さを有するブレード(504)を採用している、条項10又は11に記載の航空輸送体。
条項13
前記第1のプロペラ(2、132)設計が2つのブレード(504)から成り、前記第2のプロペラ(2、132)設計が3つブレード(504)から成る、条項12に記載の航空輸送体。
条項14
前記第1のプロペラ(2、132)設計と前記第2のプロペラ(2、132)設計が、異なる形状を有するブレード(504)を採用している、条項12に記載の航空輸送体。
条項15
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、ホバリング飛行モード中に調和したRPMで駆動されるように構成されている、条項10から14のいずれか一項に記載の航空輸送体。
条項16
前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)が、ホバリング飛行モード中に異なる速度で駆動されるように構成されている、条項10から15のいずれか一項に記載の航空輸送体。
条項17
航空輸送体内のノイズシグネチャを低減させるための方法であって、
第1のプロペラ(2、132)形状を有する第1のプロペラ(2、132)を所定の分当たりの回転数(RPM)で駆動するように構成された第1の電気モータを駆動すること、
第2のプロペラ(2、132)形状を有する第2のプロペラ(2、132)を前記所定のRPMで駆動するように構成された第2の電気モータを駆動することであって、前記第2のプロペラ(2、132)形状が、前記第1のプロペラ(2、132)形状とは異なり、前記所定のRPMで駆動されたときに前記第1のプロペラ(2、132)形状と等しい量の推力を供給するように構成されている、第2の電気モータを駆動すること、
プロセッサを介して、前記第1のプロペラ(2、132)と前記第2のプロペラ(2、132)のうちの少なくとも一方のRPMを動的にモニタリングし、前記所定のRPMからの逸脱を特定すること、及び
前記所定のRPMからの逸脱のイベントにおいて前記第1のプロペラ(2、132)又は前記第2のプロペラ(2、132)の前記RPMを調整して、前記ノイズシグネチャを調整することを含む、方法。
条項18
前記プロセッサが、比例・積分・微分(PID)コントローラにRPMフィードバックを提供するために前記RPMを動的にモニタし、前記RPMフィードバックが、前記PIDコントローラによって使用されて、前記第1の電気モータ又は前記第2の電気モータに対する電力コマンドを調整する、条項17に記載の方法。
条項19
前記プロセッサが、比例・積分・微分(PID)コントローラにノイズフィードバックを提供するように構成されたマイクロフォンを介して、アクティブノイズ制御を動的に実施する、条項17又は18に記載の方法。
条項20
前記PIDコントローラが、前記ノイズフィードバックを使用して、アクティブノイズ制御トランスデューサーに対する電力コマンドを調整する、条項19に記載の方法。
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10