(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】断熱容器及び蓋付き容器
(51)【国際特許分類】
A47J 41/02 20060101AFI20230627BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A47J41/02 102D
B65D81/38 E
(21)【出願番号】P 2019075618
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591261602
【氏名又は名称】サーモス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 高広
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 茂
(72)【発明者】
【氏名】伊石 翼
(72)【発明者】
【氏名】馬場 圭太
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-238804(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106136769(CN,A)
【文献】特開昭51-114761(JP,A)
【文献】特開2001-120442(JP,A)
【文献】特開昭61-106121(JP,A)
【文献】特開2019-089570(JP,A)
【文献】特開2019-136447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J41/00-41/02
B65D81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した金属製の外容器及び内容器を有して、前記外容器の内側に前記内容器を収容した状態で互いに接合されると共に、前記外容器と前記内容器との間に真空断熱層が設けられた断熱容器であって、
前記外容器の開口端を上方に向かって延長させたストレート部を含む外側接合端部と、
前記内容器の上端から外向きに折り返しながら、前記内容器の開口端を下方に向かって折り曲げたカーブ部とを含む内側接合端部とを備え、
前記カーブ部は、前記内容器の開口端が前記外側接合端部の内面と前記内側接合端部の外面との間に位置して、前記外側接合端部の内面と前記内側接合端部の外面とは非接触となるように折り曲げられ、
前記ストレート部の内面と前記カーブ部の外面とが突き合わされた状態で、前記外側接合端部と前記内側接合端部との突合部が接合されていることを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
前記内側接合端部は、前記カーブ部の外面の一部を平坦化した平坦部を含み、
前記ストレート部の内面と前記平坦部とが突き合わされた状態で、前記外側接合端部と前記内側接合端部との突合部が接合されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
前記内容器の内面に前記突合部に向かって漸次拡径されたテーパー部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱容器。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の断熱容器と、
前記断熱容器に対して着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えることを特徴とする蓋付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱容器及び蓋付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、一端が開口した金属製の外容器及び内容器を有して、外容器の内側に内容器を収容した状態で互いの開口端同士が接合されると共に、外容器と内容器との間に真空断熱層が設けられた断熱容器がある。このような断熱容器は、保温・保冷機能を有する水筒やマグなどの飲料用容器、保温機能を有するフードコンテナや調理器などに広く利用されている。
【0003】
ところで、上述した断熱容器では、外容器と内容器との互いの開口端同士を突き合わせた状態で、この突き合わせ部分を溶接により接合している(例えば、下記特許文献1,2を参照。)。
【0004】
具体的に、下記特許文献1に記載の断熱容器では、外容器と内容器との上端部において、外容器の内面と内容器の外面とを突き合わせた状態で、互いの開口端同士を溶接(いわゆる拝み溶接)により接合している。
【0005】
一方、下記特許文献2に記載の断熱容器では、内容器の上端部を外側に向かって湾曲させた状態で、外容器の開口端と内容器の開口端とを突き合わせた状態で、互いの開口端同士を溶接により接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-227764号公報
【文献】特開2002-282137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の断熱容器では、上端部が薄いため、直接口をつけて飲料を飲む場合、口当たりが悪くなり、良好な飲み心地が得られなくなる。一方、口当たりが良好な飲み口を得るために、飲み口を形成する中栓部材を断熱容器の上端部に取り付けた場合、部品点数の増加により製造コストの上昇を招くことになる。
【0008】
また、断熱容器の上部開口部を閉塞する蓋体を取り付けた場合、蓋体にパッキンを取り付けて断熱容器の上端部に当接されたパッキンを介して断熱容器と蓋体との間を止水することが行われている。しかしながら、断熱容器の上端部にパッキンを当接させた場合、パッキンを損傷させる可能性があり、このパッキンを交換する頻度が増えるなどの耐久性の問題が発生してしまう。
【0009】
一方、上述した特許文献2に記載の断熱容器では、外容器の開口端と内容器の開口端とを突き合わせる際に、互いの突合せ面積が小さくなることによって、位置ズレが生じ易くなる。また、互いの突合せ面積が小さくなると、レーザー溶接による溶け込み量では接合が不十分となるおそれがある。このため、溶け込み量の大きいプラズマ溶接が用いられるが、溶接ビードが大きくなってしまうため、製造工程の複雑化や、製造コストの上昇を招くことになる。さらに、外容器の開口端と内容器の開口端との突合せ面積を大きくするためには、外容器及び内容器の板厚を厚くせざるを得ず、外容器及び内容器の板厚を薄くして、断熱容器の軽量化を図ることが困難となる。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、外容器と内容器との接合端部を精度良く接合することができ、なお且つ、仕上がりの良い接合端部を得ることを可能とした断熱容器、並びに、そのような断熱容器を備えた蓋付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 一端が開口した金属製の外容器及び内容器を有して、前記外容器の内側に前記内容器を収容した状態で互いに接合されると共に、前記外容器と前記内容器との間に真空断熱層が設けられた断熱容器であって、
前記外容器の開口端を上方に向かって延長させたストレート部を含む外側接合端部と、
前記内容器の上端から外向きに折り返しながら、前記内容器の開口端を下方に向かって折り曲げたカーブ部とを含む内側接合端部とを備え、
前記カーブ部は、前記内容器の開口端が前記外側接合端部の内面と前記内側接合端部の外面との間に位置して、前記外側接合端部の内面と前記内側接合端部の外面とは非接触となるように折り曲げられ、
前記ストレート部の内面と前記カーブ部の外面とが突き合わされた状態で、前記外側接合端部と前記内側接合端部との突合部が接合されていることを特徴とする断熱容器。
〔2〕 前記内側接合端部は、前記カーブ部の外面の一部を平坦化した平坦部を含み、
前記ストレート部の内面と前記平坦部とが突き合わされた状態で、前記外側接合端部と前記内側接合端部との突合部が接合されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の断熱容器。
〔3〕 前記内容器の内面に前記突合部に向かって漸次拡径されたテーパー部が設けられていることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の断熱容器。
〔4〕 前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の断熱容器と、
前記断熱容器に対して着脱自在に取り付けられる蓋体とを備えることを特徴とする蓋付き容器。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、外容器と内容器との接合端部を精度良く接合することができ、なお且つ、仕上がりの良い接合端部を得ることを可能とした断熱容器、並びに、そのような断熱容器を備えた蓋付き容器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓋付き容器の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す蓋付き容器の構成を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す蓋付き容器が備える断熱容器の構成を示す断面図である。
【
図4】
図3中の囲み部分Aに示す断熱容器の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態として、例えば
図1~
図4に示す蓋付き容器100について説明する。なお、
図1は、蓋付き容器100の外観を示す斜視図である。
図2は、蓋付き容器100の構成を示す断面図である。
図3は、蓋付き容器100が備える断熱容器1の構成を示す断面図である。
図4は、
図3中の囲み部分Aに示す断熱容器1の一部を拡大して示す断面図である。
【0015】
本実施形態の蓋付き容器100は、
図1及び
図2に示すように、容器本体となる断熱容器1と、断熱容器1に対して着脱自在に取り付けられる蓋体200とを備えている。蓋付き容器100では、断熱容器1に対して螺合により取り付けられた蓋体200によって、この断熱容器1の上部開口部1aを開閉することが可能となっている。
【0016】
なお、蓋体200については、断熱容器1の上部開口部1aから内側に嵌め込まれた状態で螺合により取り付けられる構成となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものではない。例えば、蓋体200については、断熱容器1の上部開口部1aを覆った状態で断熱容器1の外側に螺合により取り付けられる構成であってもよい。また、蓋体200は、断熱容器1の上部開口部1aを直接開閉する構成に限らず、断熱容器1に取り付けられたキャップ本体に対して蓋体を開閉自在に取り付けた構成であってもよい。さらに、蓋体は、キャップ本体に対して螺合により取り付けられた構成に限らず、キャップ本体に対してヒンジ部を介して回動自在に取り付けられた構成であってもよい。
【0017】
断熱容器1は、
図3に示すように、例えばステンレス等からなる金属製の外容器2及び内容器3を備えている。断熱容器1は、一端(以下、「開口端」という。)2aが開口した外容器2の内側に一端(以下、「開口端」という。)3aが開口した内容器3を収容した状態で、互いに接合されると共に、これら外容器2と内容器3との間に真空断熱層4が設けられた真空断熱構造を有している。
【0018】
真空断熱層4は、例えば、高真空に減圧(真空引き)されたチャンバー内で、外容器2の底面中央部に設けられた脱気孔をろう材により封止することによって形成することができる。
【0019】
断熱容器1では、このような真空断熱構造を有することで、飲料容器として保温や保冷といった機能を持たせることが可能である。また、断熱容器1では、このような真空断熱構造を有することで、内圧(真空圧)と外圧(大気圧)の差により外容器2及び内容器3に対して常に張力が加わった状態となり、これら外容器2及び内容器3の機械的強度が増すことになる。これにより、外容器2及び内容器3の板厚を薄くした場合でも、断熱容器1の剛性を高めることが可能であり、この断熱容器1の軽量化を図ることが可能である。
【0020】
断熱容器1は、略円形状の底面部1bと、底面部1bの外周から略円筒状に起立した胴部1cと、胴部1cの上部側において縮径された略円筒状の口頸部1dとを有している。また、口頸部1dの上端部は、断熱容器1の上部開口部1aとして、円形状に開口している。
【0021】
口頸部1dの内周面には、雌ネジ部5が設けられている。雌ネジ部5は、口頸部1dの上端側から下方に向けて螺旋状に突出したネジ山から構成されている。さらに、雌ネジ部5の下方には、リング状の張出部6が内容器3の内周面から全周に亘って突出して設けられている。
【0022】
蓋体200には、雌ネジ部5と螺合される雄ネジ部201が設けられている。また、蓋体200には、上部開口部1aの内側に嵌め込まれた際に、弾性変形しながら張出部6に全周に亘って密着される止水パッキン300が着脱自在に取り付けられている。
【0023】
なお、本実施形態の断熱容器1は、全体として略円筒状の外観形状を有しているが、断熱容器1の外観形状については、特に限定されるものではなく、サイズやデザイン等に合わせて、適宜変更を加えることが可能である。また、外容器2の外面には、塗装や印刷等が施されていてもよい。
【0024】
ところで、本実施形態の断熱容器1は、
図4に示すように、外容器2と内容器3との突き合わせ部分(以下、「突合部」という。)2b,3bにおいて互いに接合される外側接合端部11及び内側接合端部12を備えている。
【0025】
外側接合端部11は、外容器2の開口端2aを上方に向かって延長させたストレート部13を含む。ストレート部13は、口頸部1dの外面に沿って、断面視で上下方向に直線状に形成されている。また、外側接合端部11において外容器2の開口端2aと突合部2bとが一致している。
【0026】
内側接合端部12は、内容器3の上端から外向きに折り返しながら、内容器3の開口端3aを下方に向かって折り曲げたカーブ部14と、カーブ部14の外面の一部を平坦化した平坦部15と含む。
【0027】
カーブ部14は、内容器3の開口端3aが外側接合端部11(外容器2)の内面と内側接合端部12(内容器3)の外面との間に位置するように折り曲げられている。
【0028】
内側接合端部12では、内容器3の開口端3aが外側接合端部11(外容器2)の内面と接触する位置にあると、外容器2の内側に内容器3を嵌め込む際に、内容器3を外容器2の内側に嵌め込むことができなくなったり、内側接合端部12の形状が変化したりするため、好ましくない。一方、内容器3の開口端3aが内側接合端部12(内容器3)の外面と接触する位置にあると、平坦部15を形成する際に、カーブ部14の形状が変化してしまい、口当たりの良い丸みが得られなくなるため、好ましくない。
【0029】
平坦部15は、カーブ部14の一部をストレート部13と平行となるように平坦化している。内側接合端部12では、このような平坦部15を設けることによって、ストレート部13の内面とカーブ部14の外面との接触面積を拡げることが可能である。
【0030】
本実施形態の断熱容器1では、ストレート部13の内面と、平坦部15を含むカーブ部14の外面とが突き合わされた状態で、外側接合端部11と内側接合端部12との突合部2b,3bが接合されている。外側接合端部11と内側接合端部12との接合には、例えばレーザー溶接などの溶接方法が用いられる。
【0031】
なお、本実施形態の断熱容器1では、その上部開口部1aが内容器3の上端部3cにより構成されている。また、内容器3の上端部3cは、上述したカーブ部14の一部により構成されている。本実施形態では、内容器3の上端部3cが突合部3bよりも上方に位置した構成となっているが、内容器3の上端部3cが突合部3bと一致する構成であってもよい。
【0032】
また、
図4では、外側接合端部11と内側接合端部12との突き合わせ部分(境界)が図示されているが、接合後は、この突き合わせ部分が溶接により溶融することで、外側接合端部11と内側接合端部12との突合部2b,3bに全周に亘って溶接ビードが形成されることになる。また、この溶接ビードについては、溶接加工の後に、研削及び研磨加工を施すことによって、平滑な面に仕上げられる。
【0033】
また、内容器3の内面には、突合部3bに向かって漸次拡径されたテーパー部16が設けられている。テーパー部16は、雌ネジ部5よりも上方から口頸部1dの内面に沿って、断面視で上下方向に直線状に形成されたストレート部17の上端から突合部3bに向かって傾斜して設けられている。これにより、断熱容器1では、口頸部1dに直接口をつけて飲料を飲む場合などに、口当たりを良くし、良好な飲み心地を得ることが可能である。
【0034】
以上のように、本実施形態の断熱容器1では、上述した外側接合端部11と内側接合端部12とを精度良く接合することができ、なお且つ、仕上がりの良い接合端部を得ることが可能である。したがって、この断熱容器1では、口頸部1dに直接口をつけて飲料を飲む場合などに、スムーズな飲料の流動が可能となり、良好な飲み心地を得ることが可能である。
【0035】
また、本実施形態の断熱容器1では、溶接ビードが大きくなることを防ぎつつ、製造工程の簡略化や製造コストの低減などを行うことが可能である。さらに、外容器2及び内容器3の板厚を薄くして、この断熱容器1の軽量化を図ると共に、断熱性能を向上させることも可能である。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明は、断熱容器に対して蓋体が取り付けられた蓋付き容器に必ずしも限定されるものではなく、例えば湯呑みやタンブラーなど、蓋体を備えない断熱容器に対しても本発明を幅広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…断熱容器 2…外容器 3…内容器 4…真空断熱層 11…外側接合端部 12…内側接合端部 13…ストレート部 14…カーブ部 15…平坦部 16…テーパー部 100…蓋付き容器 200…蓋体 300…止水パッキン