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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】中和処理器
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/66 20230101AFI20230627BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20230627BHJP
   F24H 9/00 20220101ALI20230627BHJP
【FI】
C02F1/66 510L
C02F1/66 521B
C02F1/66 521C
C02F1/66 521D
C02F1/00 U
C02F1/66 540G
F24H9/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019078474
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020175324
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 克郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】麻田 典良
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弥沙妃
(72)【発明者】
【氏名】勝浦 信夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 礼治
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187607(JP,A)
【文献】特開2018-187610(JP,A)
【文献】特開2018-187608(JP,A)
【文献】特開2016-203030(JP,A)
【文献】特開2003-320380(JP,A)
【文献】特開2013-166125(JP,A)
【文献】特開2003-320381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/66
C02F 1/00
F24H 1/06 - 1/16
F24H 9/00
F23L 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理液の導入口と、
前記未処理液を中和処理して処理済液とする処理槽と、
前記処理済液の排出口と、を備え、
前記処理槽が、前記処理槽の内面及び/又は前記処理槽の底面から延出した隔壁により、前記未処理液を滞留可能に構成された滞留部空間と、該滞留部空間以外の非滞留部空間と、を有し、
前記非滞留部空間に、粒状抗菌防カビ剤が収容され、
前記滞留部空間に、中和剤が収容されたものであり、
前記滞留部空間に、前記粒状抗菌防カビ剤がさらに収容され、
前記非滞留部空間の単位体積当たりに収容された前記粒状抗菌防カビ剤の量が、前記滞留部空間の単位体積当たりに収容された前記粒状抗菌防カビ剤の量よりも多いことを特徴とする、
中和処理器。
【請求項2】
前記非滞留部空間に、前記中和剤がさらに収容されたものであることを特徴とする、
請求項に記載の中和処理器。
【請求項3】
前記滞留部空間に収容された前記中和剤の鉛直方向上方の前記非滞留部空間の少なくとも一部に、前記粒状抗菌防カビ剤が収容されたものであることを特徴とする、
請求項1又は2のいずれか一項に記載の中和処理器。
【請求項4】
前記粒状抗菌防カビ剤は、樹脂と、有機系の徐放性の抗菌防カビ成分と、を含む粒子であり、
前記抗菌防カビ成分の含有量が、前記粒状抗菌防カビ剤の総量に対して、0.1~30質量%であることを特徴とする、
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の中和処理器。
【請求項5】
前記粒状抗菌防カビ剤の平均粒子径が、前記中和剤の平均粒子径に対して、0.10~1倍であることを特徴とする、
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の中和処理器。
【請求項6】
前記非滞留部空間の体積が、前記滞留部空間の体積に対して、1.5倍以上であることを特徴とする、
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の中和処理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中和処理器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、潜熱回収型給湯装置などの潜熱回収型熱交換器は、窒素酸化物(NOx)、又は硫黄酸化物(SOx)を含む燃料ガスの燃焼によって生じる酸性液(ドレン水)を中和処理するための中和処理器を備えている。
【0003】
中和処理器は、通常、未処理液(例えば、酸性液)の導入口と、この導入口から流入した未処理液を中和するための中和剤が収容された処理槽と、この処理槽から流出する処理済液を外部に排出する排出口を備えた容器から構成されている。このような中和処理器には、処理槽に収容される中和剤を無駄なく使い切るようにして中和剤の消費効率を高め、また、処理器全体を小型化することが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、粒状中和剤を、バインダを介して一体に結合して中和剤モジュールとすることにより、中和処理器への収納性を向上させ、中和処理器の小型化と組み立て効率を向上することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-087157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、特許文献1には、バインダ中に抗菌・防カビ剤を分散することが開示されている。これにより、特許文献1の中和剤モジュールでは、中和処理器に抗菌防カビ用のイオン発生器などの追加機構を設けることなく、中和処理器内における菌やカビの発生を防止又は抑制することが可能となる。そして、菌やカビに汚染された処理済液の排出を防止できると共に、中和処理器内におけるバイオフィルムやゲル状粘性物の生成を防止でき、中和処理器の詰まりも防止することができる。
【0007】
このような抗菌防カビ剤による効果は、中和処理器の装置寿命と同程度持続することが望ましい。しかしながら、抗菌・防カビ剤が未処理液に常時接触した状態であると、未処理液中に抗菌・防カビ剤が常時流出するため、抗菌防カビ効果の寿命が短命化するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、抗菌防カビ効果をより長期間発揮することが可能な中和処理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、粒状抗菌防カビ剤が未処理液に対して徐々に投入されるように粒状抗菌防カビ剤の収容位置を工夫することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の中和処理器は、未処理液の導入口と、未処理液を中和処理して処理済液とする処理槽と、処理済液の排出口と、を備え、処理槽の非滞留部空間に、粒状抗菌防カビ剤が収容され、滞留部空間に、中和剤が収容されたものである。ここで、「滞留部空間」とは、処理槽の内面及び/又は処理槽の底面から延出した隔壁により、未処理液を滞留可能に構成された空間をいう。また、「非滞留部空間」とは、処理槽内の滞留部空間以外の空間をいう。
【0011】
本構成のように非滞留部空間に粒状抗菌防カビ剤を収容することにより、抗菌防カビ剤の全量あるいは大部分が未処理液に常時接触することを回避することができる。これにより、抗菌防カビ剤の有効成分が必要以上に未処理液に流出し、早期に抗菌防カビ効果が失われることを回避することができる。
【0012】
また、本構成の中和処理器では、非滞留部空間に収容された粒状抗菌防カビ剤の少なくとも一部が滞留部空間に収容された中和剤により下支えされた状態となる。これにより、滞留部空間に収容された中和剤が未処理液と反応することにより徐々に消費されることに伴い、非滞留部空間に収容された粒状抗菌防カビ剤を未処理液に対して徐々に自動投入することが可能となる。そのため、抗菌防カビ効果を長期間にわたり維持することが可能となる。さらに、抗菌・防カビ用のイオン発生器等を備える場合と比較して、抗菌・防カビ機能を有する中和処理器を小型かつ低コストに実現することができる。
【0013】
また、本発明においては、滞留部空間に、粒状抗菌防カビ剤がさらに収容され、非滞留部空間の単位体積当たりに収容された粒状抗菌防カビ剤の量が、滞留部空間の単位体積当たりに収容された粒状抗菌防カビ剤の量よりも多いことが好ましい。
【0014】
滞留部空間に予め粒状抗菌防カビ剤が収容されることにより、中和剤の消費に関わらず、菌やカビに汚染された処理済液の排出を防止できると共に、中和処理器内におけるバイオフィルムやゲル状粘性物の生成を防止でき、中和処理器の詰まりも防止することができる。さらに、非滞留部空間の単位体積当たりに収容された粒状抗菌防カビ剤の量を、滞留部空間の単位体積当たりに収容された粒状抗菌防カビ剤の量よりも多くすることにより、上記粒状抗菌防カビ剤の自動投入による抗菌防カビ効果をより長期間にわたり維持することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明においては、非滞留部空間にも中和剤が収容されることが好ましい。この際、非滞留部空間における粒状抗菌防カビ剤と中和剤は、均一に混在していることが好ましい。
【0016】
非滞留部空間に中和剤を収容することにより、中和剤についても未処理液に対して徐々に自動投入することが可能となる。さらに、粒状抗菌防カビ剤と中和剤が均一に混在されている場合、滞留部空間に収容された中和剤が消費されると、粒状抗菌防カビ剤と中和剤が混在された状態で未処理液に自動投入される。これにより、消費された中和剤と同体積の粒状抗菌防カビ剤が未処理液に自動投入されることを回避することができる。つまり、粒状抗菌防カビ剤のみが未処理液に自動投入される場合に比べて、自動投入される粒状抗菌防カビ剤の量をより少量に、適切な範囲で調整することが可能となり、抗菌防カビ効果をより長期間にわたり維持することが可能となる。
【0017】
また、本発明においては、滞留部空間に収容された中和剤の鉛直方向上方の非滞留部空間の少なくとも一部に、粒状抗菌防カビ剤を収容することが好ましい。
【0018】
滞留部空間に収容された中和剤の鉛直方向上方の非滞留部空間の少なくとも一部に、粒状抗菌防カビ剤が収容されることにより、滞留部空間の中和剤が消費された場合には、足場を失った粒状抗菌防カビ剤が重力に従って崩落することが可能となる。そのため、中和処理器を静置した状態においても、消費された中和剤を補填するように、未処理液に対して粒状抗菌防カビ剤を自動投入させることが可能となる。
【0019】
また、本発明においては、粒状抗菌防カビ剤は、樹脂と、有機系の徐放性の抗菌防カビ成分と、を含む粒子であり、抗菌防カビ成分の含有量が、粒状抗菌防カビ剤の総量に対して、0.1~30質量%であることが好ましい。
【0020】
無機系成分、有機系成分、及び天然有機系成分のうち、菌とカビの両方に効果がある有機系抗菌防カビ成分を用いることが好ましい。また、徐放性の抗菌防カビ成分を用いることにより、抗菌防カビ効果をより長期間にわたり維持することが可能となる。
【0021】
さらに本発明においては、粒状抗菌防カビ剤の平均粒子径が、中和剤の平均粒子径に対して、0.10~1倍であることが好ましい。
【0022】
中和剤に対して粒状抗菌防カビ剤が一定以上の大きさを有することにより、中和剤の隙間を粒状抗菌防カビ剤が落下していくことを抑制することができる。これにより、中和剤の消費とは関係なく粒状抗菌防カビ剤が未処理液中に落下し、意図せず抗菌防カビ効果が短命化することを回避することができる。また、粒状抗菌防カビ剤が所定の大きさを有することにより、粒状抗菌防カビ剤の比表面積を調整することができ、徐放性を所望の範囲に調整することも可能となる。
【0023】
また、本発明においては、非滞留部空間の体積が、滞留部空間の体積に対して、1.5倍以上であることが好ましい。
【0024】
これにより、非滞留部空間に収容される粒状抗菌防カビ剤の量を増やすことができるため、抗菌防カビ効果をより長期間にわたり維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、抗菌防カビ効果をより長期間発揮することが可能な中和処理器を提供することができる。これにより、例えば滞留部空間で滞留する未処理液又は処理済液で繁殖し得る菌やカビの繁殖が抑制され、中和処理器内におけるバイオフィルム及び/又はゲル状粘性物の生成を抑制でき、また目詰まりの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態による中和処理器の概略構成を示す模式図である。
図2】第2実施形態による中和処理器の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0028】
〔中和処理器〕
本実施形態の中和処理器は、未処理液の導入口と、未処理液を中和処理して処理済液とする処理槽と、処理済液の排出口と、を有し、処理槽内の非滞留部空間に粒状抗菌防カビ剤が収容され、滞留部空間に中和剤が収容されたものである。以下、具体的な装置構成について、図1乃至図2を参照してさらに説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による中和処理器の概略構成を示す模式図である。中和処理器10は、未処理液Aの導入口1と、未処理液Aを中和処理して処理済液Bとする処理槽2と、処理済液Bの排出口3と、を有する。図1に示す例では、隔壁6により、排出口3の設置位置が処理槽2の底面よりも高く構成されている。
【0030】
滞留部空間2bは未処理液Aが重力に従い処理槽内のより低い位置に移動した時に溜まることが可能な空間であり、その滞留部空間2bよりも上の未処理液Aが滞留しない空間は非滞留部空間2aとなる。このとき、滞留部空間2bと非滞留部空間2aとは、少なくとも一部の水平方向の界面2cで接することとなる。
【0031】
そして、図1に示すように、本構成の中和処理器では、非滞留部空間2aに収容された粒状抗菌防カビ剤4の少なくとも一部が滞留部空間2bに収容された中和剤5により下支えされた状態となる。滞留部空間2bに収容された中和剤5の鉛直方向上方の非滞留部空間2aの少なくとも一部に収容された粒状抗菌防カビ剤4は、中和剤5が中和処理により消費されたときには、その消費された体積の分だけ、底面に向かって全体的に沈み込み抗菌防カビを発揮する。
【0032】
このように構成された中和処理器10においては、例えば、まず、未処理液Aが中和処理器10の蓋部7に設けられた導入口1より処理槽2内へ流入し、処理槽の内面及び処理槽の底面から延出した隔壁6によって構成された滞留部空間2bに溜まる。そして、処理槽2内の滞留部空間2bに収容された中和剤5に接触する。未処理液Aは、重力に従い処理槽2を鉛直方向下方に流れ、滞留部空間2bが満たされるまで中和処理器10内で滞留する。そして、滞留した未処理液Aが滞留部空間2bで滞留可能な一定量を超えると隔壁6を超えて、排出口3から処理済液Bが流出する。未処理液Aは、中和剤5に接触する過程及び滞留部空間2bに滞留する過程において中和処理され処理済液Bとなる。
【0033】
非滞留部空間2aの体積は、滞留部空間2bの体積に対して、好ましくは1.5倍以上であり、より好ましくは2倍以上である。また、非滞留部空間2aの体積の上限は、特に制限されないが、滞留部空間2bの体積に対して、好ましくは5倍以下であり、より好ましくは4倍以下である。非滞留部空間2aの体積が滞留部空間2bの体積に対して1.5倍以上であることにより、非滞留部空間2aに収容される粒状抗菌防カビ剤4の量を増やすことができるため、抗菌防カビ効果をより長期間にわたり維持することが可能となる。また、非滞留部空間2aがより多くの空間を有することにより、未処理液Aが多量に流入した場合や、一部につまりが生じた場合に生じるオーバーフローが生じ難くなる。さらに、非滞留部空間2aの体積が滞留部空間2bの体積に対して5倍以下であることにより、未処理液Aの滞留時間が長期化し中和反応を適切に進行させることができる。これにより、未中和の状態で処理液が排出されることを回避することができる。
【0034】
なお、滞留部空間2bには、粒状抗菌防カビ剤4がさらに収容されていてもよい。この場合、非滞留部空間2aの単位体積当たりに収容された粒状抗菌防カビ剤4の量が、滞留部空間2bの単位体積当たりに収容された粒状抗菌防カビ剤4の量よりも多いことが好ましい。より具体的には、非滞留部空間2aの単位体積当たりに収容された粒状抗菌防カビ剤4の量は、滞留部空間2bの単位体積当たりに収容された粒状抗菌防カビ剤4の量に対して、好ましくは1.5~20倍であり、より好ましくは3~20倍であり、さらに好ましくは5~20倍である。これにより、未処理液に接しない粒状抗菌防カビ剤4をより多量に確保することが可能となり、上記粒状抗菌防カビ剤の自動投入による抗菌防カビ効果をより長期間にわたり維持することが可能となる。
【0035】
また、非滞留部空間2aには、中和剤5がさらに収容されていてもよい。この際、非滞留部空間2aにおける粒状抗菌防カビ剤4と中和剤5は、均一に混在していることが好ましい。これにより、局在化した粒状抗菌防カビ剤4がまとまって未処理液に自動投入されることを回避することができ、抗菌防カビ効果をより長期間にわたり維持することが可能となる。
【0036】
なお、中和剤5としては、特に制限されないが、例えば、炭酸カルシウム、消石灰、苛性ソーダ、ソーダ灰、生石灰、石灰石、苔土石灰、及び酸化マグネシウムが挙げられる。これらの粒状中和剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、通常、炭酸カルシウムを用いることが多く、炭酸カルシウムは、例えば、白色石灰石(例えば、寒水石)の砕石の形態で用いてもよい。
【0037】
中和剤5の平均粒子径は、好ましくは2~18mmであり、より好ましくは6~15mmであり、さらに好ましくは7~12mmである。中和剤5の平均粒子径が小さいほど、個々の粒子の比表面積がより増加し、単位体積当たりの中和剤粒子の充填性がより増大するため、中和性能がより向上する傾向にある。また、中和剤5の平均粒子径が大きいほど、中和剤5間の間隙が大きくなり、未処理液の通水性がより向上する傾向にある。
【0038】
これらの中和剤5は、所定の粒径ごとに分級されている市販品を利用できる。中和剤5は、1つの級に分類された中和剤のみで構成してもよいが、異なる級に分類された2種類以上の中和剤を使用してもよい。2種類以上の中和剤5を用いることにより、大きな粒状中和剤5の間隙に小さな粒状中和剤5を充填することが可能となり、粒状中和剤全体の嵩密度及び総表面積を大きくすることができ、未処理液Aの中和処理速度及び粒状中和剤5全体の中和効率を向上させることができる。また、2種類以上の中和剤5を用いることにより、中和剤5の隙間に、粒状抗菌防カビ剤4が未処理液中に落下し、意図せず抗菌防カビ効果が短命化することを回避することができる。なお、本明細書にいう「級」とは、例えば、篩により分級されたときのオンメッシュのクラス(分級クラス)をいう。
【0039】
中和剤5は、少なくとも一部が、粒状の中和剤がバインダを介して一体化されてなるものであってもよい。この場合、バインダとしては、粒状中和剤同士を結合可能であれば、特に限定されず、例えば、石膏、セメント、弱アルカリセメント、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)などの無機系バインダ、でんぷんのり、ふのり、膠などの天然有機系バインダ、合成有機系バインダが挙げられる。合成有機系バインダとしては、特に制限されないが、例えば、ビニルエステル系樹脂(例えば、ポリ酢酸ビニルなど)、ビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂など)、ハロゲン化ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニルなど)、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、)、セルロース系樹脂、変性シリコーン系樹脂、上記樹脂を構成するモノマーの共重合体(例えば、ポリエチレン酢酸ビニル)などの熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらのバインダは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バインダは、耐水性及び耐酸性の観点から選ぶことができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、中和剤の全て又は一部が一体化されていないことが好ましく、特に、非滞留部空間2aにおける中和剤5の全て又は一部が一体化されていないことが好ましい。非滞留部空間2aにおける中和剤5が一体化されていると、中和剤5と混在する粒状抗菌防カビ剤4が滞留部空間2bに投入されにくくなる。これに対して、非滞留部空間2aにおける中和剤5が一体化されていないことにより、非滞留部空間2aに収容された粒状抗菌防カビ剤4が滞留部空間2bにおける中和剤5の消費に伴って、滞留部空間2bに自動投入されやすい傾向にある。
【0041】
粒状抗菌防カビ剤4に含まれる抗菌防カビ成分としては、特に制限されないが、例えば、銀、銅、亜鉛などの金属、金属担持ゼオライト、光触媒活性を有する金属、金属酸化物や金属化合物などの無機系化合物、ヒノキチオール系化合物、キトサン系化合物、カラシ抽出系化合物、ユーカリ系化合物などの天然有機系化合物、有機系化合物、有機複合剤などが挙げられる。抗菌防カビ成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、菌及びカビの双方に有効に作用する観点から、有機系化合物が好ましい。
【0042】
このような合成有機系化合物としては、特に制限されないが、例えば、含窒素複素環系化合物、アルデヒド系化合物、フェノール系化合物、ビグアナイド系化合物、ニトリル系化合物、ハロゲン系化合物、アニリド系化合物、ジスルフィド系化合物、チオカーバメート系化合物、有機ケイ素四級アンモニウム塩系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、アミノ酸系化合物、有機金属系化合物、アルコール系化合物、カルボン酸系化合物、エステル系化合物、チアゾリン系化合物、カチオン性ポリマーが挙げられる。これらの合成有機系化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
粒状抗菌防カビ剤4は、中和処理器10の使用期間全般にわたり効果を奏することが好ましいため、徐放性を有するものが好ましい。このような徐放性を有する粒状抗菌防カビ剤4としては、樹脂と、有機系の徐放性の抗菌防カビ成分と、を含む粒子が挙げられる。
【0044】
ここで、粒状抗菌防カビ剤4を構成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ビニルエステル系樹脂(例えば、ポリ酢酸ビニルなど)、ビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂など)、ハロゲン化ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニルなど)、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、)、セルロース系樹脂、変性シリコーン系樹脂、上記樹脂を構成するモノマーの共重合体(例えば、ポリエチレン酢酸ビニル)などの熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0045】
このなかでも、ポリオレフィン系樹脂やハロゲン化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂、及びエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましく、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、及びエポキシ系樹脂がより好ましい。このような樹脂を用いることにより、粒状抗菌防カビ剤4の成形性に優れる傾向にある。
【0046】
粒状抗菌防カビ剤4における抗菌防カビ成分の含有量は、粒状抗菌防カビ剤の総量に対して、好ましくは0.1~30質量%であり、より好ましくは1~25質量%であり、さらに好ましくは5~20質量%である。抗菌防カビ成分の含有量が多いほど、抗菌防カビ効果がより長期間維持される傾向にある。また、抗菌防カビ成分の含有量が少ないほど、相対的に樹脂量が多くなり、粒状抗菌防カビ剤4の成形性がより向上する傾向にある。
【0047】
粒状抗菌防カビ剤4の平均粒子径は、好ましくは1~7mmであり、より好ましくは2~6mmであり、さらに好ましくは3~5mmである。また、粒状抗菌防カビ剤4の平均粒子径は、中和剤5の平均粒子径に対して、好ましくは0.10~1倍であり、より好ましくは0.3~0.7倍であり、さらに好ましくは0.4~0.6倍である。粒状抗菌防カビ剤4の平均粒子径が小さいほど、比表面積が増大し、抗菌防カビ効果がより向上する傾向にある。また、粒状抗菌防カビ剤4の平均粒子径が大きいほど、中和剤の隙間に、粒状抗菌防カビ剤が未処理液中に落下し、意図せず抗菌防カビ効果が短命化することを回避することができる。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態の中和処理器は、複数の隔壁6a,6b,6c,6dを有することにより、複数の独立した滞留部空間2bを有するものである。図2は、本発明の第2実施形態による中和処理器の概略構成を示す模式図である。第2実施形態の中和処理器10は、処理槽2内に複数の隔壁6a,6b,6c,6dを有する。図2に示す例では、隔壁6b,6dが処理槽内の底面から上方に延出しており、2つの独立した滞留部空間2bを構成している。そして、隔壁6a,6cが処理槽内の上面から下方に延出しており、より複雑な流路を形成している。
【0049】
このように構成された中和処理器10においては、例えば、まず、未処理液Aが中和処理器10の蓋部7に設けられた導入口1より処理槽2内へ流入し、処理槽の内面及び処理槽の底面から延出した隔壁6bによって構成された第1の滞留部空間2bに溜まる。そして、処理槽2内の第1の滞留部空間2bに収容された中和剤5に接触する。未処理液Aは、重力に従い処理槽2を鉛直方向下方に流れ、第1の滞留部空間2bが満たされるまで中和処理器10内で滞留する。
【0050】
そして、滞留した未処理液Aが第1の滞留部空間2bで滞留可能な一定量を超えると隔壁6bを超えて、第2の滞留部空間2bに溜まる。第2の滞留部空間2bは、処理槽の内面及び処理槽の底面から延出した隔壁6b及び6dによって構成されており、また、隔壁6cにより、部分的に区切られている。隔壁6cにより、第2の滞留部空間2bを通過する未処理液Aは、より長い経路を経て排出口3へと、到達する。そして、滞留した未処理液Aが第2の滞留部空間2bで滞留可能な一定量を超えると隔壁6dを超えて、排出口3から処理済液Bが流出する。未処理液Aは、中和剤5に接触する過程及び滞留部空間2bに滞留する過程において中和処理され処理済液Bとなる。
【0051】
このように、複数の隔壁により構成される中和処理器10においては、隔壁の高さに応じて、滞留部空間2bと非滞留部空間2aは隔壁により区切られたより複雑な形状を有する可能性がある。このような場合であっても、非滞留部空間2aに粒状抗菌防カビ剤が収容され、滞留部空間2bに中和剤5が収容されることにより、滞留部空間2bに収容された中和剤5の鉛直方向上方の非滞留部空間2aの少なくとも一部に収容された粒状抗菌防カビ剤4は、中和剤5が中和処理により消費されたときには、その消費された体積の分だけ、底面に向かって全体的に沈み込み抗菌防カビを発揮することができる。
【0052】
なお、図2のように、独立した非滞留部空間2aが複数存在する場合、その一部の非滞留部空間2aに粒状抗菌防カビ剤が収容されていてもよいし、すべての非滞留部空間2aに粒状抗菌防カビ剤が収容されていてもよい。一部の非滞留部空間2aに粒状抗菌防カビ剤が収容されるようにする場合には、上流側の非滞留部空間2aに粒状抗菌防カビ剤が収容されることが好ましい。これにより上流側の滞留部空間2bで粒状抗菌防カビ剤が未処理液に接することが可能となり、上流側で徐放された抗菌防カビ成分が下流側の滞留部空間2bにも効果を発揮することができる。
【0053】
なお、上述したとおり、本発明は、上記の実施の形態、及び、既に述べた変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な変形が可能である。すなわち、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、滞留部空間と非滞留部空間の構成は上記実施形態に限られず、より複雑な形状であってもよい。また、蓋部7は、開閉自在に閉塞するように構成されていてもよいし、オーバーフローを検知するためのセンサが設けられていてもよい。また、中和処理器の底部には、オーバーフローセンサによる異常信号を検知して開閉する緊急排出管が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、潜熱回収型給湯装置などの潜熱回収型熱交換器に適用され、潜熱回収型熱交換器に生じる未処理液を中和処理して外部に排出する中和処理器として産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0055】
1…導入口、2…処理槽、2a…非滞留部空間、2b…滞留部空間、2c…界面、3…排出口、4…粒状抗菌防カビ剤、5…中和剤、6,6a,6b,6c,6d…隔壁、7…蓋部、10…中和処理器
図1
図2