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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電機子コア及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
H02K1/18 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019106347
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020202618
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000191858
【氏名又は名称】ヤマハモーターエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 和紀
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-323429(JP,A)
【文献】特開2003-264947(JP,A)
【文献】特開2011-244671(JP,A)
【文献】実公昭33-005708(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層される複数の第1鋼板で構成される円筒状のベース部、及び、
前記第1方向に積層される複数の第2鋼板で構成されて前記円筒状のベース部の周方向に並んで位置する複数のティース部、
を備える電機子コアであって、
前記ベース部は、該ベース部の内周面又は外周面に前記複数のティース部が嵌入可能となるような凹部を形成するように、前記円筒状のベース部の径方向での幅が相対的に広い第1部分と、前記径方向での幅が相対的に狭い第2部分を有し、
前記複数のティース部のうちの少なくとも1つのティース部の前記第2部分に対向する面には、前記第1方向に延在して前記径方向に有限の深さを有するスリットが形成され、
前記ベース部の複数の鋼板はベースカシメ部で固定され、
前記ベースカシメ部及び前記スリットは、一の直線上に位置し、
前記複数のティース部の各々は第3部分と第4部分を有し、
前記第3部分は、前記第1方向と前記径方向に垂直な第2方向での幅が相対的に広く、
前記第4部分は、前記第2方向での幅が相対的に狭く、
前記第3部分は前記凹部に嵌入され、
前記複数のティース部の各々の第3部分は、前記第1方向における端部の前記第2方向での幅が、前記端部以外の部分の前記第2方向での幅よりも狭い部分を有する、電機子コア。
【請求項2】
第1方向に積層される複数の第1鋼板で構成される円筒状のベース部、及び、
前記第1方向に積層される複数の第2鋼板で構成されて前記円筒状のベース部の周方向に並んで位置する複数のティース部、
を備える電機子コアであって、
前記ベース部は、該ベース部の内周面又は外周面に前記複数のティース部が嵌入可能となるような凹部を形成するように、前記円筒状のベース部の径方向での幅が相対的に広い第1部分と、前記径方向での幅が相対的に狭い第2部分を有し、
前記複数のティース部のうちの少なくとも1つのティース部の前記第2部分に対向する面には、前記第1方向に延在して前記径方向に有限の深さを有するスリットが形成され、
前記ベース部の複数の鋼板はベースカシメ部で固定され、
前記ベースカシメ部及び前記スリットは、一の直線上に位置し、
前記複数のティース部の各々は第3部分と第4部分を有し、
前記第3部分は、前記第1方向と前記径方向に垂直な第2方向での幅が相対的に広く、
前記第4部分は、前記第2方向での幅が相対的に狭く、
前記第3部分は前記凹部に嵌入され、
前記ベース部の前記凹部は、前記第1方向における端部の前記第2方向での幅が、前記端部以外の部分の前記第2方向での幅よりも広い部分を有する、電機子コア。
【請求項3】
第1方向に積層される複数の第1鋼板で構成される円筒状のベース部、及び、
前記第1方向に積層される複数の第2鋼板で構成されて前記円筒状のベース部の周方向に並んで位置する複数のティース部、
を備える電機子コアであって、
前記ベース部は、該ベース部の内周面又は外周面に前記複数のティース部が嵌入可能となるような凹部を形成するように、前記円筒状のベース部の径方向での幅が相対的に広い第1部分と、前記径方向での幅が相対的に狭い第2部分を有し、
前記複数のティース部のうちの少なくとも1つのティース部の前記第2部分に対向する面には、前記第1方向に延在して前記径方向に有限の深さを有するスリットが形成され、
前記複数のティース部の複数の鋼板はティースカシメ部で固定され、
前記ティースカシメ部及び前記スリットは、一の直線上に位置し、
前記複数のティース部の各々は第3部分と第4部分を有し、
前記第3部分は、前記第1方向と前記径方向に垂直な第2方向での幅が相対的に広く、
前記第4部分は、前記第2方向での幅が相対的に狭く、
前記第3部分は前記凹部に嵌入され、
前記複数のティース部の各々の第3部分は、前記第1方向における端部の前記第2方向での幅が、前記端部以外の部分の前記第2方向での幅よりも狭い部分を有する、電機子コア。
【請求項4】
第1方向に積層される複数の第1鋼板で構成される円筒状のベース部、及び、
前記第1方向に積層される複数の第2鋼板で構成されて前記円筒状のベース部の周方向に並んで位置する複数のティース部、
を備える電機子コアであって、
前記ベース部は、該ベース部の内周面又は外周面に前記複数のティース部が嵌入可能となるような凹部を形成するように、前記円筒状のベース部の径方向での幅が相対的に広い第1部分と、前記径方向での幅が相対的に狭い第2部分を有し、
前記複数のティース部のうちの少なくとも1つのティース部の前記第2部分に対向する面には、前記第1方向に延在して前記径方向に有限の深さを有するスリットが形成され、
前記複数のティース部の複数の鋼板はティースカシメ部で固定され、
前記ティースカシメ部及び前記スリットは、一の直線上に位置し、
前記複数のティース部の各々は第3部分と第4部分を有し、
前記第3部分は、前記第1方向と前記径方向に垂直な第2方向での幅が相対的に広く、
前記第4部分は、前記第2方向での幅が相対的に狭く、
前記第3部分は前記凹部に嵌入され、
前記ベース部の凹部は、前記第1方向における端部の前記第2方向での幅が、前記端部以外の部分の前記第2方向での幅よりも広い部分を有する、電機子コア。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電機子コアであって、前記スリットは、前記径方向から見て前記第2部分に対向する面の略中央に設けられる、電機子コア。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の電機子コアであって、前記ベースカシメ部は前記第2部分上に存在する、電機子コア。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電機子コアであって、前記円筒状のベース部の前記第2部分の前記径方向での幅と前記複数のティース部の各々の前記第4部分の端部から前記スリットまでの幅の和は、前記円筒状のベース部の前記第1部分の前記径方向での幅よりも広い、電機子コア。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電機子コアであって、前記スリットの前記第2方向での幅は前記複数のティース部の各々の第4部分の前記第2方向での幅の5%以下である、電機子コア。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電機子コアを有するモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電機子コア及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術に係る分割コア型のステータスコアでは、組立の際ティースをベースに圧入するときにベース部の位置に対してティースの位置が決まらない問題があった。
【0003】
ベース部の位置に対するティースの位置を決めるため、特許文献1は、隙間嵌めを利用した誘い込み構造が設けられたティースとベースを開示している。しかし隙間嵌めを利用した誘い込み構造は、ティースをベースに圧入する際に大きな圧入力を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2932883号公報
【文献】特開2000-341889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような圧入力を低減させるため、特許文献2は、スリットが設けられたティース部を開示している。しかしティースに設けられたスリットは、ステータスコアの磁気回路(磁束の流れ)を阻害する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本願の電機子コアは、第1方向に積層される複数の第1鋼板で構成される円筒状のベース部、及び、前記第1方向に積層される複数の第2鋼板で構成されて前記円筒状のベース部の周方向に並んで位置する複数のティース部、を備える。当該電機子コアでは、前記ベース部は、該ベース部の内周面又は外周面に前記複数のティース部が嵌入可能となるような凹部を形成するように、前記円筒状のベース部の径方向での幅が相対的に広い第1部分と、前記径方向での幅が相対的に狭い第2部分を有し、前記複数のティース部のうちの少なくとも1つのティース部の前記第2部分に対向する面には、前記第1方向に延在して前記径方向に有限の深さを有するスリットが形成され、前記ベース部の複数の鋼板はベースカシメ部で固定され、前記ベースカシメ部及び前記スリットは、一の直線上に位置する。またさらに本願の電機子コアは、磁気回路(磁束の流れ)に影響を及ぼす前記ベースカシメ部及び前記スリットが一の直線上に位置する構成をとる。その結果前記ティース部を前記凹部へ圧入する際に必要な力が低下し、かつ、前記磁気回路は前記ベースカシメ部及び前記スリットによる影響を受けにくくなる。
【0007】
(2) 本願の電機子コアは、第1方向に積層される複数の第1鋼板で構成される円筒状のベース部、及び、前記第1方向に積層される複数の第2鋼板で構成されて前記円筒状のベース部の周方向に並んで位置する複数のティース部、を備える。当該電機子コアでは、前記ベース部は、該ベース部の内周面又は外周面に前記複数のティース部が嵌入可能となるような凹部を形成するように、前記円筒状のベース部の径方向での幅が相対的に広い第1部分と、前記径方向での幅が相対的に狭い第2部分を有し、前記複数のティース部のうちの少なくとも1つのティース部の前記第2部分に対向する面には、前記第1方向に延在して前記径方向に有限の深さを有するスリットが形成され、前記複数のティース部の複数の鋼板はティースカシメ部で固定され、前記ティースカシメ部及び前記スリットは、一の直線上に位置する。本願の電機子コアは、磁気回路(磁束の流れ)に影響を及ぼす前記ベースカシメ部及び前記スリットが一の直線上に位置する構成をとる。その結果前記ティース部を前記凹部へ圧入する際に必要な力が低下し、かつ、前記磁気回路は前記ベースカシメ部及び前記スリットによる影響を受けにくくなる。
【0008】
(3) (1)又は(2)に記載の電機子コアにおいて、前記スリットは、前記径方向から見て前記第2部分に対向する面の略中央に設けられる。その結果、前記磁気回路(磁束の流れ)は前記スリットによる影響をより受けにくくなる。
【0009】
(4) (1)又は(2)に記載の電機子コアにおいて、前記ベースカシメ部は前記第2部分上に存在する。その結果、前記磁気回路は前記ベースカシメ部による影響を受けにくくなる。
【0010】
(5) (1)又は(2)に記載の電機子コアにおいて、前記複数のティース部の各々は第3部分と第4部分を有する。前記第3部分は、前記第1方向と前記径方向に垂直な第2方向での幅が相対的に広く、前記第4部分は、前記第2方向での幅が相対的に狭く、前記第3部分は前記凹部に嵌入される。
【0011】
(6) (5)に記載の電機子コアにおいて、前記複数のティース部の各々の第3部分は、前記第1方向における端部の前記第2方向での幅が、前記端部以外の部分の前記第2方向での幅よりも狭い部分を有する。その結果、電機子コアの組立が容易になる。
【0012】
(7) (5)に記載の電機子コアにおいて、前記ベース部の凹部は、前記第1方向における端部の前記第2方向での幅が、前記端部以外の部分の前記第2方向での幅よりも長い部分を有する。その結果、電機子コアの組立が容易になる。
【0013】
(8) (5)に記載の電機子コアにおいて、前記円筒状のベース部の前記第2部分の前記径方向での幅と前記複数のティース部の各々の前記第4部分の端部から前記スリットまでの幅の和は、前記円筒状のベース部の前記第1部分の前記径方向での幅よりも広い。その結果、電機子コアの磁気回路が前記ベースカシメ部と、前記スリットと、前記ティースカシメ部から受ける影響はより小さくなり得る。
【0014】
(9) (5)に記載の電機子コアにおいて、前記スリットの前記第2方向での幅は前記複数のティース部の各々の第4部分の前記第2方向での幅の5%以下である。その結果、前記磁気回路は前記スリットによる影響をより受けにくくなる。
【0015】
(10) 本願のモータは、(1)又は(2)に記載の電機子コアを有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願の実施形態による電機子コアの概略的断面図を示している。
図2】本願の実施形態による電機子コアの拡大断面図を示している。
図3】本願の実施形態による電機子コアの分解斜視図を示している。
図4】本願の実施形態による電機子コアの分解斜視図を示している。
図5】本願の実施形態による電機子コアの概略的断面図を示している。
図6】本願の実施形態による電機子コアの分解斜視図を示している。
図7】本願の実施形態によるティース部の斜視図を示している。
図8】本願の実施形態による電機子コアの磁気回路を示している。
図9】本願の実施形態による電機子コアの磁気回路の拡大断面図を示している。
図10】本願の実施形態による電機子コアの変形例を示している。
図11】本願の実施形態による電機子コアの変形例を示している。
図12】本願の実施形態による電機子コアの変形例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以降、本願の実施形態による電機子コアについて添付図面を参照しながら説明する。本願の実施形態による電機子コアを備えるモータは、好適には動力用モータに用いられるが、他の用途に用いられてもよい。
【0018】
図1は、本願の実施形態による電機子コアの概略的断面図を示している。図2は、本願の実施形態による電機子コアの拡大断面図を示している。図3は、本願の実施形態による電機子コアの分解斜視図を示している。図4は、本願の実施形態による電機子コアの分解斜視図を示している。図5は、本願の実施形態による電機子コアの概略的断面図を示している。図6は、本願の実施形態による電機子コアの分解斜視図を示している。図7は、本願の実施形態によるティース部の斜視図を示している。
【0019】
[第1の実施形態]
図1乃至図7は、本願の実施形態による電機子コア1を概略的に表している。電機子コア1は、円筒形状のベース部10及び複数のティース部20を有する。円筒形状のベース部10は、ティース部20が嵌入可能となるような凹部14を形成するように、ベース部10の径方向において相対的に広い複数の肉厚部11及び前記径方向において相対的に狭い複数の肉薄部12を備える。すなわち径方向において、肉厚部11は肉薄部12よりも厚い。複数の肉厚部11及び複数の肉薄部12は、隣接する肉厚部11の間に凹部14を形成するように円筒形状のベース部10の周方向に交互に配置される。図1乃至図4に示された実施形態では、凹部14は該円筒形状のベース部10の内周面に設けられているが、図5,6に示されているように、凹部14はベース部10の外周面に設けられてもよい。
【0020】
図3及び図4参照すると、円筒形状のベース部10は、該円筒の軸方向に沿って積層される複数の鋼板で構成される。積層された複数の鋼板は、ベースカシメ部13によって固定される。図示された実施形態では、ベースカシメ部13の形状は円型だが、他の形状であってもよい。ベースカシメ部13は肉薄部12上に設けられる。複数のティース部20は、円筒形状のベース部10の軸方向に沿って積層される複数の鋼板で構成される(図3,4参照)。積層される複数の鋼板はティースカシメ部23によって固定される。図示された実施形態では、ティースカシメ部23の形状は円型だが、他の形状であってもよい。複数のティース部20を構成する鋼板の組成は、ベース部10を構成する鋼板の組成と同一であってよいし、又は異なってもよい。図示された実施形態では、ベース部10の鋼板もティース部20の鋼板もカシメによって固定されているが、ベース部10の鋼板又はティース部20の鋼板のいずれか一方のみがカシメによって固定されてもよい。本願では、カシメとは、複数の金属板をつなぎ合わせるのに、前記複数の金属板の塑性変形を利用する技法という意味で用いられている。カシメ部とは、カシメに寄与する部分を意味する。
【0021】
図2を参照すると、複数のティース部20の各々は、幅広部21と幅狭部22を有する。幅広部21のベース部10の周方向での長さ(幅)は、幅狭部22の幅よりも広い。複数のティース部20のうちの少なくとも1つのティース部がベース部10と接する面25にはスリット24が形成される。スリット24は、円筒形状のベース部10の径方向では複数のティース部20の各々を貫通せず、軸方向に延在する。
【0022】
図示された実施形態では、スリット24は、ベース部10の径方向から見て前記ベース部10と接する面25の略中央に設けられている。しかしスリット24は面25上の中心から外れた位置に設けられてもよい。スリット24がティース部20設けられることによって、ティース部20の剛性は低下する。すなわちティース部20の幅は、円筒形状のベース部10の周方向に変化することが容易になる。その結果ティース部20をベース部10の凹部14に圧入する際に必要となる力を小さくすることができる。
【0023】
図5及び図6を参照すると、ベース部10は、複数の肉薄部11と複数の肉厚部12を有する。1つの肉薄部11は隣接する肉厚部12の間に設けられている。それによりベース部10の外周面に凹部14が形成される。凹部14に複数のティース部20の各々が嵌入されることによって、ベース部10の外周面に複数のティース部20が配置される。
【0024】
図7を参照すると、複数のティース部20の各々の幅広部21の軸方向端部に誘い込み部26を有する。誘い込み部26の円筒形状のベース部10の周方向での幅d4は、幅広部21の他の部分の幅d5よりも狭い。本実施形態の誘い込み部26は、幅d4が狭くなっているため、凹部14へ隙間嵌めされる。そのため、複数のティース部20の各々は、対応する凹部14へ容易に位置合わせされ得る。一旦複数のティース部20の各々がそれに対応する凹部14に対して位置合わせされると、複数のティース部20の各々の幅広部21の幅d5は、凹部14の幅以上なので、複数のティース部20の各々に応力を印加することによって、複数のティース部20の幅広部21は圧入され得る。。よってすべてのティース部20は、直立状態の姿勢を保ちながら同時にベース部10の凹部14に圧入することが可能となる。また上記圧入の際、誘い込み部26によって、作業者による手動のティース部20の位置合わせが不要であるため、作業者の組立の作業性が向上する。また誘い込み部26は、図示された実施形態では、誘い込み部26はティース部に設けられているが、円筒形状のベース部10の凹部14内に誘い込み部が設けられてもよい。具体的には円筒形状のベース部10の凹部14の軸方向端部の幅は、ティース部20は凹部14への嵌入が容易になるように他の部分よりも広くてよい。本実施形態では、幅広部21は軸方向端部に誘い込み部26を有し、幅広部21のうち幅d5を有する部分のみが圧入されているが、幅広部21のすべてが圧入されてもよい。
【0025】
図1に示されているように、絶縁部33は複数のティース部20を覆う。絶縁部33に覆われているティース部20にはコイル31が巻き付けられている。絶縁部33は、ティース部20とコイル31とを絶縁する。コイル31は、電流を流すことができるように電気回路(不図示)に接続されている。絶縁部33に覆われてコイル31が巻き付けられた複数のティース部20の各々の間には、隙間32が設けられている。
【0026】
図1に示されているように、ロータ30は、磁石34有する。ロータ30は磁性体で構成される。ロータ30内には、1つの中心空孔36と複数の周辺空孔37が設けられる。中心空孔36はロータ30の略中心に設けられ、複数の周辺空孔37は中心空孔36を取り囲むように設けられる。中心空孔36にはシャフト(不図示)が挿入される。ロータ30はシャフトを回転軸として回転する。
【0027】
図8は、本願の実施形態による電機子コアの磁束の流れを示している。図9は、本願の実施形態による電機子コアの磁束の流れの拡大平面図を示している。図8,9に示されているように、磁束は、ベース部10の肉厚部11から周方向に肉薄部12を通り、肉薄部12で流れの方向を径方向に変化させて複数のティース部20を流れている。平面視で、磁束が複数のティース部20の各々を流れるとき、磁束は、ティース部20の周方向での中心を通る直線Lの右側(周方向での一方側)と直線Lの左側(周方向での他方側)とを流れる。
【0028】
図8及び図9では、周方向で連続する3つのティース部20には符号20a、20b、20cがそれぞれ付されている。同様に3つのティース部20a、20b、20cに巻かれているコイル31には符号31a、31b、31cがそれぞれ付されている。図8のコイル31aとコイル31bに電流が流れると、ティース部20aとティース部20bが励磁される。励磁したティース部20aとティース部20bには磁極が発生する。図示された実施形態では、ティース部20aにはN極の磁極が発生し、ティース部20bにはS極の磁極が発生する。また、ロータ30内の励磁したティース部20a,20bに最も近い磁石34a,34bの磁極はそれぞれS極及びN極である。そのため励磁したティース部20aは磁石34aから引力を受け、ティース部20bは磁石34aから斥力を受け、かつティース部20bは磁石34bから引力を受ける。その結果ロータ30は軸36を中心として回転する。その後励磁されるティース部20を周期的に変化させることによって、ロータ30は連続的に回転する。その結果、モータのトルクが得られる。
【0029】
図2、9に示されているように、ベースカシメ部13と、ティースカシメ部23と、スリット24は一の直線L上に位置する。その結果、磁束の流れはスリット電機子コア1の磁束が直線L上を避けるように流れるので、磁束の流れを阻害する恐れのあるベースカシメ部13と、スリット24と、ティースカシメ部23から磁束が受ける影響は小さくなり得る。図示された実施形態では、ベースカシメ部13と、ティースカシメ部23と、スリット24は一の直線L上に位置するが、ベースカシメ部13とスリット24が一の直線L上に位置してティースカシメ部23が直線Lから外れてもよい。あるいは、ティースカシメ部23とスリット24が一の直線L上に位置してベースカシメ部13が直線Lから外れてもよい。ここで「ベースカシメ部13と、ティースカシメ部23と、スリット24は一の直線L上に位置する」とは、ベースカシメ部13と、ティースカシメ部23と、スリット24の周方向での中心が一の直線L上に位置することだけではなく、ベースカシメ部13と、ティースカシメ部23と、スリット24のそれぞれの中心以外の任意の部分が一の直線L上に位置することをも含む。
【0030】
図2に示されているように、円筒形状のベース部10の肉薄部12の径方向での幅d2と、ティース部20の第4部分22の周方向での端部からスリット24までの幅d3との和は、円筒形状のベース部10の肉厚部11の径方向での幅d1よりも大きくてよい。その結果、磁束はベース部10の肉厚部11から肉薄部12を通って肉薄部12で流れの方向を変化させて複数のティース部20を流れるので、電機子コア1中における磁束が流れる十分な断面積が確保される。そのため、電機子コア1中での磁束の流れは、スリット24が設けられていない電機子コアでの磁束の流れと実質的に同程度となる。すなわちスリット24からから受ける磁束への影響はより小さくなり得る。
【0031】
またスリット24の幅は、ティース部20の第4部分22の周方向での幅の5%以下であってよい。その結果、スリット24による電機子コア1を備えるモータのトルクの減少率は効果的に抑制され得る。
【0032】
[第2の実施形態]
図10は、本願の実施形態による電機子コアの変形例を示している。本実施形態では、ベースカシメ部53が図2の実施形態のベースカシメ部13と異なる。より詳細には、ベースカシメ部53は、ベース部10の肉厚部11上に設けられている。ベースカシメ部53が肉厚部11上に設けられることで、ベースカシメ部53の設置位置の自由度が増大する。その結果、電機子コアの製造が容易になり得る。
【0033】
[第3の実施形態]
図11は、本願の実施形態による電機子コアの変形例を示している。本実施形態では、スリット44の形状が図2の実施形態のスリット24と異なる。より詳細には、スリット44の幅は、径方向外側へ向かって広がっている。スリット24の幅が径方向外側へ向かって広がることで、ティース部20の剛性が有効に低下し、その結果ティースの圧入時に必要な力が小さくなり得る。
【0034】
[第4の実施形態]
図12は、本願の実施形態による電機子コアの変形例を示している。本実施形態では、スリット44の形状が図2の実施形態のスリット24と異なる。より詳細には、スリット44の幅は、径方向外側へ向かって狭まっている。スリット24の幅が径方向外側へ向かって狭まることで、磁束の流れが周方向から径方向に変化するところでの磁路が広がることで、スリット54からから受ける磁束への影響はより小さくなり得る。
【0035】
[まとめ]
(1)以上説明したように、本願の電機子コアは、円筒の軸方向に積層される複数の第1鋼板で構成される円筒状のベース部10、及び、前記軸方向に積層される複数の第2鋼板で構成されて前記円筒状のベース部10の周方向に並んで位置する複数のティース部20、を備える。当該電機子コアでは、前記ベース部10は、該ベース部10の内周面又は外周面に前記複数のティース部20が嵌入可能となるような凹部14を形成するように、前記円筒状のベース部10の径方向での幅が相対的に広い肉厚部11と、前記径方向での幅が相対的に狭い肉薄部12を有し、前記複数のティース部20のうちの少なくとも1つのティース部20の前記肉薄部12に対向する面25には、前記軸方向に延在して前記径方向に有限の深さを有するスリット24が形成され、前記ベース部10の複数の鋼板はベースカシメ部13で固定され、前記ベースカシメ部13及び前記スリット24は、一の直線L上に位置する。その結果前記ティース部20を前記凹部14へ圧入する際に必要な力が低下し、かつ、前記磁気回路は前記ベースカシメ13部及び前記スリット24による影響を受けにくくなる。
【0036】
(2) 本願の電機子コアは、円筒の軸方向に積層される複数の第1鋼板で構成される円筒状のベース部10、及び、前記軸方向に積層される複数の第2鋼板で構成されて前記円筒状のベース部10の周方向に並んで位置する複数のティース部、を備える。当該電機子コアでは、前記ベース部10は、該ベース部10の内周面又は外周面に前記複数のティース部20が嵌入可能となるような凹部14を形成するように、前記円筒状のベース部10の径方向での幅が相対的に広い肉厚部11と、前記径方向での幅が相対的に狭い肉薄部12を有し、前記複数のティース部20のうちの少なくとも1つのティース部の前記肉薄部12に対向する面には、前記軸方向に延在して前記径方向に有限の深さを有するスリット24が形成され、前記複数のティース部20の複数の鋼板はティースカシメ部23で固定され、前記ティースカシメ部23及び前記スリット24は、一の直線L上に位置する。その結果前記ティース部20を前記凹部14へ圧入する際に必要な力が低下し、かつ、前記磁気回路は前記ティースカシメ23部及び前記スリット24による影響を受けにくくなる。
【0037】
(3) 前記スリット24は、前記径方向から見て前記肉薄部12に対向する面25の略中央に設けられる。その結果、前記磁気回路(磁束の流れ)は前記スリット24による影響をより受けにくくなる。
【0038】
(4) 前記ベースカシメ部13は前記肉薄部12上に存在する。その結果、前記磁気回路は前記ベースカシメ部13による影響を受けにくくなる。
【0039】
(5) 前記複数のティース部20の各々は幅広部21と幅狭部22を有する。前記幅広部21は、前記軸方向と前記径方向に垂直な周方向での幅が相対的に広く、前記幅狭部22は、前記周方向での幅が相対的に狭く、前記幅広部21は前記凹部14に嵌入される。
【0040】
(6)前記複数のティース部20の各々の幅広部21は、前記軸方向における端部の前記周方向での幅d4が前記端部以外の部分の前記周方向での幅d5よりも狭い誘い込み部26を有する。その結果、電機子コア1の組立が容易になる。
【0041】
(7)前記ベース部の凹部14は、前記軸方向における端部の前記周方向での幅が前記端部以外の部分の前記周方向での幅よりも広い部分を有する。その結果、電機子コア1の組立が容易になる。
【0042】
(8) 前記円筒状のベース部10の前記肉薄部12の幅d2と前記複数のティース部20の各々の前記幅狭部22の周方向端部から前記スリット24までの幅d3の和は、前記円筒状のベース部10の前記肉厚部11の前記径方向での幅d1よりも広い。その結果、電機子コアの磁気回路が前記ベースカシメ部と、前記スリットと、前記ティースカシメ部から受ける影響はより小さくなり得る。
【0043】
(9) 前記スリット24の幅は前記複数のティース部20の各々の幅狭部22の前記周方向での幅の5%以下である。その結果、前記磁気回路は前記スリットによる影響をより受けにくくなる。
【0044】
(10) 本願のモータは、前記電機子コア1を有してよい。
【符号の説明】
【0045】
1 電機子コア、10 ベース部、11 肉厚部(第1部分)、12 肉薄部(第2部分)、13 ベースカシメ部、14 凹部、20 ティース部、21 幅広部(第3部分)、22 幅狭部(第4部分)、23 ティースカシメ部、24 スリット、25 面、26 誘い込み部、30 ロータ、31 コイル、32 隙間、33 絶縁部、34 磁石、36 中心空孔、37 周辺空孔、41 幅広部、42 幅狭部、43 ティースカシメ部、44 スリット、51 幅広部、52 幅狭部、53 ティースカシメ部、54 スリット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12