(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】脊椎手術用鋭匙
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3211 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
A61B17/3211
(21)【出願番号】P 2019110113
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】505273648
【氏名又は名称】中村 周
(72)【発明者】
【氏名】中村 周
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5423842(US,A)
【文献】実開平4-67414(JP,U)
【文献】登録実用新案第3081578(JP,U)
【文献】特開2013-220178(JP,A)
【文献】特開2014-113442(JP,A)
【文献】米国特許第5026386(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102018550(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0143206(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎手術で使用する
,匙口方向に刃先が向いた鋭刃を匙口辺縁に有する鋭匙において,
シャフトに対する匙部の屈曲方向が匙口方向と垂直近くの方向である屈曲鋭匙であり,
匙口辺縁の鋭刃が手元側だけであることを特徴とする器具.
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
当発明は、脊椎手術において使用する手術器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊柱管狭窄症に対する手術において
図1で示すように背側Dからのアプローチで骨Bの裏面つまり腹側Vに固着している黄色靭帯Lを剥がして摘出する操作が必要であるが,その黄色靭帯Lの周囲には神経Nも存在するため,神経Nを損傷しないように操作する必要もある.この操作に従来から屈曲鋭匙2がよく用いられている.
図2で示すように鋭匙とは持ち手や柄を含むシャフト12があり,その先に匙部11があり,匙部11の辺縁は鋭刃となっている.鋭刃13は匙部11辺縁のほぼ全周性にある(
図5左図,
図6左図).
図2,
図3はシャフト12と匙部11とが真っ直ぐな直鋭匙1である.従来より匙部21とシャフト22との間が屈曲した屈曲鋭匙2(
図1,
図4右図)は既に存在するが,みな屈曲方向が匙口方向Mである.匙口方向とは匙口凹面が向いている方向,つまり匙形の辺縁輪を包含する平面を想定するとその平面の垂線方向である.
【0003】
脊柱管狭窄症に対する手術で屈曲鋭匙2を用いる際の手技は,
図1のように背側Dから挿入した屈曲鋭匙2の匙部を骨Bの裏面に付着する黄色靭帯Lの腹側Vに挿入し,手前(背側D)に引いて鋭刃と骨Bとの間で黄色靭帯Lをはさんでから骨Bの裏面に沿って引いてきて黄色靭帯Lを剥離して引きずり出して摘出する.
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の方法では
図7左図(背側から見た模式図)のように,一回の操作での黄色靭帯Lの切除範囲が鋭匙の幅だけとなり,小範囲なので体軸方向に広範囲にある黄色靭帯Lの切除に非効率的である.また黄色靭帯Lが厚い場合には鋭匙の鋭刃と骨Bとの間で黄色靭帯Lを噛み切ることができず,黄色靭帯Lを摘出できないことがある.
【0006】
そこで脊椎手術において鋭匙の効率性と有効性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための当発明の脊椎手術用の屈曲鋭匙3について,直鋭匙1を原型として方向を定義しそれとの差異で表現する.直鋭匙の匙口凹面が向いている方向(前述詳記)を匙口方向Mとし(
図2,
図4左図),シャフト12の長軸において匙部11側を先端側Tとし,その逆側を手元側Nとする(
図2).シャフト32に対する匙部31の屈曲方向が従来の屈曲鋭匙2(
図4右図)のような匙口方向Mではなく匙口方向とは垂直方向に近く(
図5右図),匙口辺縁の鋭刃33が従来のような全周性(
図6左図)ではなく手元側Nだけである(
図6右図).
【0008】
使用手技は,当発明の屈曲鋭匙3を背側から挿入し,匙部31を骨Bの裏面に付着する黄色靭帯Lの腹側に挿入し,黄色靭帯Lを骨面との間ではさんでから,従来のように手前に引く(
図7左図)のではなく体軸方向Aに動かして,黄色靭帯Lを鋭刃33により骨面から剥がしながら進める(
図7中央図と右図).
【発明の効果】
【0009】
上記手技により一回の操作で広範囲の黄色靭帯を剥がして摘出することが可能となる.黄色靭帯Lが骨Bからの剥離が起きるとその剥離した黄色靭帯Lは匙部31凹面で受けられて押し出されるが,黄色靭帯Lが一塊となって押し出されていくため,鋭刃と骨との接触部位での剥離よりも広範囲に剥離作用が及ぶことになる.
【0010】
この時,匙部の先端側周囲に神経Nが存在するが(
図1)神経Nに対面する匙部31の先端側の面は鈍形状であり神経を損傷しない.
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】既存の直鋭匙の全体側面(わずかに斜位)図.
【
図3】既存の直鋭匙の先端図(上図が側面(わずかに斜位)図,下図が正面図).
【
図4】既存の直鋭匙(左図)と既存の屈曲鋭匙(右図)の先端側面(わずかに斜位)図.
【
図5】既存の直鋭匙(左図)と当発明の鋭匙(右図)の先端正面図.
【
図6】既存の直鋭匙(左図)と当発明の鋭匙(右図)の匙部断面図.
【
図7】既存の屈曲鋭匙(左図)と当発明の鋭匙(中央図と右図)の使用手技比較模式図.
【発明を実施するための形態】
【0012】
当発明の鋭匙3の実施形態を
図5,6,9を用いて説明する。
図5右図のようにシャフト32に対する匙部31の屈曲方向が匙口方向Mとは垂直方向に近い.
図6右図のように匙口辺縁の鋭刃33が手元側Nだけである.全体としては
図9のようになる.
【0013】
匙部正面形状は
図8のように楕円31や長円41,角丸長方形51などが考えられる.