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特許7303036導電性ペースト及びTOPCon型太陽電池の製造方法
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  • 特許-導電性ペースト及びTOPCon型太陽電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】導電性ペースト及びTOPCon型太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20230627BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20230627BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01L31/04 264
H01L21/288 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019115175
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021002460
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 直哉
(72)【発明者】
【氏名】ダムリン マルワン
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/115076(WO,A1)
【文献】特開2013-143499(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107221579(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109346536(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0133545(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01L 31/0224
H01L 21/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TOPCon型太陽電池用裏面電極に用いられる導電性ペーストであって、
アルミニウム-シリコン合金粒子と、有機ビヒクルと、ガラス粉末とを含有し、
前記アルミニウム-シリコン合金粒子中のシリコン濃度が25重量%以上40重量%以下である、TOPCon型太陽電池用裏面電極用導電性ペースト。
【請求項2】
アルミニウム-シリコン合金粒子の体積平均粒子径は1~10μmである、請求項1に記載のTOPCon型太陽電池用裏面電極用導電性ペースト。
【請求項3】
TOPCon型太陽電池の製造方法であって、
シリコン基板の受光面とは反対側の面にアルミニウム-シリコン合金粒子を含有する導電性ペーストを塗工する工程1と、
前記シリコン基板の受光面に銀ペースト組成物を塗工する工程2と、
前記工程1及び工程2の後、前記シリコン基板を700℃以上の焼成温度で焼成する工程3と、
を備え、
前記アルミニウム-シリコン合金粒子中のシリコン濃度が25重量%以上40重量%以下である、TOPCon型太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記工程3における焼成温度が900℃以下である、請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト及びTOPCon型太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、結晶系太陽電池セルの変換効率(発電効率)、信頼性等を向上させることを目的として、種々の研究開発が行われている。中でも、近年において有力な方法とされているのが、TOPCon型太陽電池である。
【0003】
TOPCon型太陽電池は、裏面電極及びn型シリコン基板を備え、これらの間に、極めて薄い酸化物層と高濃度にドープされた微結晶のnシリコン層とが積層して設けられた構造を有する。斯かる構造を有することにより、TOPCon型太陽電池では、酸化物層によるトンネル効果が生じ、これにより、n-シリコン層とn-シリコン層との界面でのキャリアロスが抑制される。例えば、非特許文献1には、シリコン基板とのコンタクト抵抗を十分に小さくするため、裏面電極に銀電極を蒸着によって形成することが提案されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Glunz, S. W., Feldmann, F., Richter, A., Bivour, M., Reichel, C., Steinkemper, H., & Hermle, M. (2015, September). The irresistible charm of a simple current flow pattern-25% with a solar cell featuring a full-area back contact. In Proceedings of the 31st European Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibition (pp. 259-263).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に開示の方法のように、銀蒸着によって電極を形成する方法では、製造工程が煩雑になりやすく、各種太陽電池の分野において求められているコストダウン等の要望には応えにくい。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、TOPCon型太陽電池を簡便な方法で製造することができ、しかも、変換効率にも優れるTOPCon型太陽電池を構築することを可能とする導電性ペースト及びTOPCon型太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
TOPCon型太陽電池の製造にかかるコストを抑えると共に変換効率を向上させるには、銀蒸着(又は銀ペースト)の代わりに、アルミニウムを裏面電極に適用することが考えられるところである。しかしながら、本発明者らがアルミニウムの適用を検討したところ、電極の製造工程における焼成時にアルミニウムが微結晶n-シリコン層と溶融して、アルミニウム-シリコン合金が形成されることを突き止めた。この結果、単にアルミニウムから形成された電極ではキャリアの損失を引き起こし、これによりTOPCon型太陽電池セルの変換効率の大幅な低下を招くことになる。
【0008】
このような知見の下、本発明者らは、前述の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定量のシリコンを含有するアルミニウム-シリコン合金粒子を使用することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
TOPCon型太陽電池裏面電極に用いられる導電性ペーストであって、
アルミニウム-シリコン合金粒子と、有機ビヒクルと、ガラス粉末とを含有し、
前記アルミニウム-シリコン合金粒子中のシリコン濃度が25重量%以上40重量%以下である、導電性ペースト。
項2
アルミニウム-シリコン合金粒子の体積平均粒子径は1~10μmである、項1に記載の導電性ペースト。
項3
TOPCon型太陽電池の製造方法であって、
シリコン基板の受光面とは反対側の面にアルミニウム-シリコン合金粒子を含有する導電性ペーストを塗工する工程1と、
前記シリコン基板の受光面に銀ペースト組成物を塗工する工程2と、
前記工程1及び工程2の後、前記シリコン基板を700℃以上の焼成温度で焼成する工程3と、
を備え、
前記アルミニウム-シリコン合金粒子中のシリコン濃度が25重量%以上40重量%以下である、TOPCon型太陽電池の製造方法。
項4
前記工程3における焼成温度が900℃以下である、項3に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性ペーストによれば、TOPCon型太陽電池を簡便な方法で製造することができ、しかも、変換効率にも優れるTOPCon型太陽電池を構築することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の導電性ペーストを用いて製造されるTOPCon型太陽電池の一例を示し、その概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0013】
1.TOPCon型太陽電池
図1は、TOPCon型太陽電池の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、TOPCon型太陽電池Aは、裏面電極10と、n型シリコン基板11と、極めて薄い酸化物層12と、高濃度にドーパントがドープされた微結晶のnシリコン層13とを備える。TOPCon型太陽電池Aにおいて、裏面電極10と、n型シリコン基板11との間に、酸化物層12と、nシリコン層13が介在し、酸化物層12がn型シリコン基板11側に、裏面電極10側にnシリコン層13が配置する。この構造を有することにより、TOPCon型太陽電池Aは、酸化物層12によってトンネル効果が生じ、n-シリコン層(n型シリコン基板11)とn-シリコン層(nシリコン層13)との界面でのキャリアロスが抑制できる。
【0014】
酸化物層12としては、例えば、酸化ケイ素が適用される。酸化物層12の厚さは限定されず、例えば、1~10nmとすることができ、3~8nmとすることが好ましい。酸化物層12の厚さが1~10nmであることで、前述のトンネル効果が起こりやすく、キャリアが太陽電池の裏面側へ移動しやすくなるので、変換効率のさらなる増大がもたらされる。また、酸化物層12の厚さが1~10nmであることで、n-シリコン層とn-シリコン層との界面でのキャリアロスも抑制されやすいので、変換効率の低減も起こりにくい。
【0015】
n型シリコン基板11としては、例えば、半導体用途や太陽電池用途で使われるシリコン基板を広く適用することができる。
【0016】
TOPCon型太陽電池Aにおいて、n-シリコン層(nシリコン層13)と裏面電極10との間には、パッシベーション膜を導入することもできる。パッシベーション膜は、公知の太陽電池と同様、開口部を有することもできる。n型シリコン基板11の裏面電極10と逆側の面にはフィンガー電極14が形成される。フィンガー電極14は、例えば、銀で形成される。
【0017】
裏面電極10は、本発明の導電性ペーストによって形成する。これにより、TOPCon型太陽電池Aにおいて、電極材料のマイグレーションが生じることがなく、短絡のおそれが低減され、結果として、変換効率の増大をもたらす。また、導電性ペーストを使用することで、スクリーン印刷法によって裏面電極10を形成できるので、簡便に裏面電極10を製造することができる。以下、導電性ペーストについて詳述する。
【0018】
2.導電性ペースト
本発明のTOPCon型太陽電池裏面電極に用いられる導電性ペーストは、アルミニウム-シリコン合金粒子と、有機ビヒクルと、ガラス粉末とを含有する。特に、導電性ペーストにおいて、前記アルミニウム-シリコン合金粒子中のシリコン濃度が25重量%以上40重量%以下である。
【0019】
導電性ペーストにおいて、アルミニウム-シリコン合金粒子は、導電性をもたらす役割を果たし得る成分である。すなわち、TOPCon型太陽電池の裏面電極においては導電物質としての役割を果たし得る。
【0020】
アルミニウム-シリコン合金粒子において、シリコン濃度が25重量%以上40重量%以下であることで、裏面電極を形成する際の焼成工程において、導電性ペーストが微結晶のn-シリコン層と溶融しにくくなり、これにより、導電性ペーストとn-シリコン層とがアルミニウム-シリコン合金を形成しにくくなる。この結果、導電性ペーストを用いて形成された裏面電極を備えるTOPCon型太陽電池は、キャリアの損失に起因するセルの変換効率低下が抑制される。シリコン濃度が25重量%を下回るとp層が形成されるので変換効率の低下が引き起こされ、シリコン濃度が40重量%を超えると抵抗が高くなりすぎ、また、アルミニウム-シリコン合金粒子の製造も難しくなる。
【0021】
アルミニウム-シリコン合金粒子中のシリコンの濃度は、30重量%以上であることがより好ましい。また、アルミニウム-シリコン合金粒子中のシリコンの濃度は、35重量%以下であることがより好ましい。
【0022】
ここで、アルミニウム-シリコン合金粒子中のシリコン濃度とは、詳しくは、アルミニウム-シリコン合金粒子の全重量中におけるシリコン元素の重量割合を意味する。アルミニウム-シリコン合金粒子におけるシリコンの含有量は、ICP発光分光分析法(分析)によって定量することができる。なお、アルミニウム-シリコン合金粒子が市販品である場合は、例えば、アルミニウム-シリコン合金粒子のカタログ値又は保証値として記載のシリコン濃度をアルミニウム-シリコン合金粒子におけるシリコン濃度とすることもできる。
【0023】
アルミニウム-シリコン合金粒子の大きさは特に限定されない。例えば、アルミニウム-シリコン合金粒子の体積平均粒子径D50を1~10μmとすることができる。本明細書において、アルミニウム-シリコン合金粒子の体積平均粒子径D50は、レーザー回折法により測定される値をいう。アルミニウム-シリコン合金粒子の体積平均粒子径D50は、3~9μmであることが好ましく、5~8μmであることがさらに好ましい。
【0024】
アルミニウム-シリコン合金粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、楕円状、鱗片状、不定形状等の種々の形状とすることができる。基板との密着性が高まりやすいという観点から、アルミニウム-シリコン合金粒子の形状は球状であることが好ましい。
【0025】
アルミニウム-シリコン合金粒子の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。具体的には、アトマイズ法によって、アルミニウム-シリコン合金粒子を得ることができる。アトマイズ法の条件は特に限定されず、公知のアトマイズ法の条件と同様とすることができる。
【0026】
導電性ペーストにおいて、アルミニウム-シリコン合金粒子の含有量も特に限定されず、本発明の効果が発揮される限り、適宜の含有量とすることができる。例えば、導電性ペーストにおけるアルミニウム-シリコン合金粒子の含有割合は、変換効率が高まりやすいという観点から、50重量%以上とすることができ、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましく、75重量%以上であることが特に好ましい。また、導電性ペーストにおけるアルミニウム-シリコン合金粒子の含有割合は、変換効率が高まりやすいという観点から、90重量%以下とすることができ、85重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがさらに好ましく、78重量%以下であることが特に好ましい。
【0027】
導電性ペーストにおいて、有機ビヒクルの種類は特に限定されず、例えば、太陽電池の裏面電極を形成するために用いられる公知の有機ビヒクルを広く適用することができる。有機ビヒクルとして、溶剤に樹脂が溶解した材料を挙げることができる。あるいは、有機ビヒクルは、溶剤を含まず、樹脂そのものを使用してもよい。
【0028】
溶剤の種類は限定的ではなく、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。有機ビヒクルに含まれる溶剤は1種又は2種以上とすることができる。
【0029】
樹脂としては、例えば、公知の各種樹脂を挙げることができ、具体的には、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニールブチラール、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート化合物、シアネート化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ4フッ化エチレン、シリコン樹脂等を挙げることができる。有機ビヒクルに含まれる樹脂は1種又は2種以上とすることができる。
【0030】
有機ビヒクルは必要に応じて各種添加剤を含むこともできる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、腐食抑制剤、消泡剤、増粘剤、タックファイヤー、カップリング剤、静電付与剤、重合禁止剤、チキソトロピー剤、沈降防止剤等を挙げることができる。具体的には、ポリエチレングリコールエステル化合物、ポリエチレングリコールエーテル化合物、ポリオキシエチレンソルビタンエステル化合物、ソルビタンアルキルエステル化合物、脂肪族多価カルボン酸化合物、燐酸エステル化合物、ポリエステル酸のアマイドアミン塩、酸化ポリエチレン系化合物、脂肪酸アマイドワックス等を挙げることができる。
【0031】
有機ビヒクルに含まれる樹脂、溶剤及び添加剤の割合は任意に調整することができ、例えば、公知の有機ビヒクルと同様の成分比とすることができる。
【0032】
導電性ペーストにおいて、有機ビヒクルの含有量は特に限定されない。例えば、良好な印刷性を有するという観点から、前記アルミニウムーシリコン合金粒子100重量部に対して、有機ビヒクルが10質量部以上500質量部以下であることが好ましく、20質量部以上45質量部以下であることが特に好ましい。
【0033】
導電性ペーストにおいて、ガラス粉末の種類は特に限定されず、例えば、太陽電池の裏面電極を形成するために用いられる公知のガラス粉末を広く適用することができる。ガラス粉末は、例えば、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、バナジウム(V)、ホウ素(B)、シリコン(Si)、スズ(Sn)、リン(P)、および、亜鉛(Zn)からなる群より選ばれた1種、または2種以上を含有することができる。また、鉛を含むガラス粉末、または、ビスマス系、バナジウム系、スズーリン系、ホウケイ酸亜鉛系、アルカリホウケイ酸系などの無鉛のガラス粉末を用いることができる。特に人体への影響を考慮すると、ガラス粉末は、無鉛のガラス粉末であることが望ましい。また、ガラス粉末の軟化点は650℃以下であることも好ましい。ガラス粉末を構成するガラス粒子の体積平均粒子径D50は、例えば、1~3μmとすることができる。
【0034】
導電性ペーストにおいて、ガラス粉末の含有量は特に限定されない。例えば、基板に対する密着性と形成される電極の電気抵抗のバランスが優れやすいという観点から、前記アルミニウムーシリコン合金粒子100質量部に対して、ガラス粉末を0.5質量部以上40質量部以下とすることができ、4質量部以上15質量部以下とすることがより好ましい。
【0035】
導電性ペーストは、アルミニウム-シリコン合金粒子、有機ビヒクル及びガラス粉末以外のその他成分を含むことができる。導電性ペーストがその他成分を含む場合、その含有割合は導電性ペーストの全重量に対して5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは、0.1重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以下とすることができる。導電性ペーストは、アルミニウム-シリコン合金粒子、有機ビヒクル及びガラス粉末のみで構成されていてもよい。
【0036】
導電性ペーストの調製方法は特に限定されず、例えば、所定量のアルミニウム-シリコン合金粒子、有機ビヒクル及びガラス粉末を混合することで導電性ペーストを得ることができる。混合手段も特に限定されず、例えば、公知の混合機を使用することができる。
【0037】
導電性ペーストは、前述のアルミニウム-シリコン合金粒子を必須成分とすることで、例えば、スクリーン印刷等の方法で、太陽電池用裏面電極を形成することができるので、銀ペーストを用いた場合に比べて簡便な方法で太陽電池用裏面電極を製造できる。しかも、本発明の導電性ペーストを用いて太陽電池用裏面電極を形成することで、TOPCon型太陽電池に優れた変換効率をもたらすことができる。また、導電性ペーストによって形成される太陽電池用裏面電極は、シリコン基板と良好なオーミックコンタクトを形成することができ、TOPCon型太陽電池セルの変換効率の損失を抑制しやすい。
【0038】
3.TOPCon型太陽電池の製造方法
本発明のTOPCon型太陽電池の製造方法(以下、「本発明の製造方法」という)は特に限定されない。例えば、本発明の製造方法は、下記の工程1~工程3を供えることができる。
工程1:シリコン基板の受光面とは反対側の面にアルミニウム-シリコン合金粒子を含有する導電性ペーストを塗工する工程。
工程2:前記シリコン基板の受光面に銀ペースト組成物を塗工する工程。
工程3:前記工程1及び工程2の後、前記シリコン基板を700℃以上の焼成温度で焼成する工程。
【0039】
特に、本発明の製造方法において、工程1で使用するアルミニウム-シリコン合金粒子中のシリコン濃度は25重量%以上40重量%以下である。
【0040】
工程1で使用するシリコン基板は、例えば、太陽電池に適用できる公知のシリコン基板を広く採用することができる。例えば、シリコン基板は純度99%以上のシリコン基板とすることができる。シリコン基板は、不純物又は添加物としてシリコン以外の元素が含まれていてもよい。
【0041】
工程1で使用するシリコン基板は、例えば、インゴットからスライスされて、所望の形状に形成され得る。シリコン基板の厚みは特に制限されず、目的の用途に応じて所望の厚みに形成することができる。例えばシリコン基板の厚みは150μm以上、550μm以下とすることができ、特に150μm以上、250μm以下であることが好ましい。シリコン基板はp型半導体、n型半導体及び真性半導体のいずれで形成されていてもよい。
【0042】
工程1で使用するアルミニウム-シリコン合金粒子を含有する導電性ペーストは、前述の本発明の導電性ペーストである。従って、導電性ペーストに含まれるアルミニウム-シリコン合金粒子は、シリコン濃度が25重量%以上40重量%以下である。
【0043】
工程1において、シリコン基板に導電性ペーストを塗工する方法は特に限定されない。塗工方法としては、例えば、スクリーン印刷、スピンコート法等を用いることができ、その他の方法を採用することもできる。より簡便に太陽電池を製造することができるという点でスクリーン印刷法が好ましい。導電性ペーストは、所望の形状に印刷することができる。
【0044】
シリコン基板への導電性ペーストの塗布量は特に限定されず、例えば、0.5g/pc以上、1.0g/pc以下とすることができる。
【0045】
以上の工程1により、シリコン基板の受光面とは反対側の面に導電性ペーストの塗膜が形成される。
【0046】
工程2では、例えば、工程1にて導電性ペーストの塗膜を形成したシリコン基板の受光面側に対して銀ペースト組成物を塗工することができる。つまり、工程2は、工程1の後に行うことができる。もちろん、工程2は工程1の前に実施することもできる。
【0047】
工程2で使用する銀ペースト組成物は、太陽電池セルの銀電極を形成できる限りはその種類は限定されず、公知の銀ペースト組成物を広く使用することができる。銀ペースト組成物の塗布方法及び塗布条件も限定されず、公知の方法及び条件を採用することができる。
【0048】
以上の工程2により、シリコン基板の受光面に銀ペーストの塗膜が形成される。
【0049】
工程3では、工程1及び工程2により導電性ペースト及び銀ペーストの塗膜が形成されたシリコン基板の焼成を行う。これにより、導電性ペースト及び銀ペーストの塗膜が焼成され、それぞれ裏面電極と銀電極とが形成される。
【0050】
工程3において、焼成温度は700℃以上とする。これにより、シリコン基板に電極が形成されやすく、また、導電性ペーストとn-シリコン層とがアルミニウム-シリコン合金を形成しにくくなる。焼成温度の上限は、例えば、導電性ペーストに含まれるアルミニウム-シリコン合金粒子の融点より低いことが好ましく、この場合、導電性ペーストとn-シリコン層とがアルミニウム-シリコン合金をさらに形成しにくくなる。この観点から、焼成温度は900℃以下であることが好ましく、850℃以下であることがより好ましく、800℃以下であることが特に好ましい。
【0051】
焼成時間は、焼成温度に応じて適宜決めることができる。例えば、1分以上300分以下とすることができ、1分以上5分以下であることが好ましい。工程3における焼成は、空気雰囲気、窒素雰囲気のいずれで行ってもよい。焼成方法も特に限定されず、例えば、公知の加熱炉を用いて焼成処理を行うことが得きる。
【0052】
本発明の製造方法は、工程1~3以外の工程をさらに備えることもできる。
【0053】
本発明の製造方法で得られるTOPCon型太陽電池は、裏面電極が本発明の導電性ペーストで形成されることから、TOPCon型太陽電池を簡便な方法で製造することができる。しかも、本発明の製造方法で得られるTOPCon型太陽電池は、変換効率にも優れる。
【実施例
【0054】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
ガスアトマイズ法により、アルミニウム-シリコン合金粒子を製造した。このアルミニウム-シリコン合金粒子は、シリコン濃度が30重量%、体積平均粒子径D50が6.0μmとなるように製造した。得られたアルミニウム-シリコン合金粒子100質量部及びビスマス系ガラス粉末5質量部を、分散装置(ディスパー)を用いて、エチルセルロースがブチルジグリコールに溶解した10質量%濃度の樹脂液(有機ビヒクル)30質量部に分散させ、導電性ペーストを得た。
【0056】
(実施例2)
シリコン濃度が40重量%となるようにアルミニウム-シリコン合金粒子を製造したこと以外は実施例1と同様の方法で導電性ペーストを得た。
【0057】
(実施例3)
シリコン濃度が25重量%となるようにアルミニウム-シリコン合金粒子を製造したこと以外は実施例1と同様の方法で導電性ペーストを得た。
【0058】
(比較例1)
シリコン濃度が20重量%となるようにアルミニウム-シリコン合金粒子を製造したこと以外は実施例1と同様の方法で導電性ペーストを得た。
【0059】
(試験方法)
n型のシリコン基板の受光面とは反対側の面に、内側から順に厚さ5nmの酸化物(酸化ケイ素)層及び微結晶のn-シリコン層が積層され、受光面および反対側の面(n-シリコン層の面)の両方にパッシベーション膜が形成された太陽電池ウェハを準備した。裏面側のパッシベーション膜は、予めレーザー等を用いて開口部を設けておいた。この太陽電池ウェハの受光面と反対側の面(パッシベーション膜)に、実施例及び比較例で調製した導電性ペーストを0.7-0.8g/pcになるようにスクリーン印刷し、次いで、受光面側に公知のAgペーストを塗布した。その後、太陽電池ウェハを800℃に設定した赤外ベルト炉に設置し、この温度で焼成することで電極(裏面電極及び銀電極)形成を行った。これにより、TOPCon型太陽電池を製作した。製作したTOPCon型太陽電池は、ワコム電創のソーラーシュミレータ「WXS-156S-10」、及び、I-V測定装置「IV15040-10」を用いたI-V測定により、短絡電流(ISC)及び開放端電圧(VOC)を測定し、また、曲線因子(FF)及び変換効率Effを算出した。曲線因子(FF)は、市販のソーラーシミュレータを用いて行った。
【0060】
表1には、各実施例及び比較例で得た導電性ペーストを用いて作製したTOPCon型太陽電池の評価結果を示している。
【0061】
【表1】
【0062】
表1から、Si濃度が25~40重量%であるアルミニウム-シリコン合金粒子を含む導電性ペースト(実施例1~3)を用いた場合は、TOPCon型太陽電池は優れた変換効率を示した。それに比べ、アルミニウム-シリコン合金粒子のSi濃度が25~40重量%から外れる導電性ペースト(比較例1)を用いた場合は、TOPCon型太陽電池の変換効率は低かった。Si濃度が25~40重量%であるアルミニウム-シリコン合金粒子を含む導電性ペーストを使用した場合、焼成(工程3)の際にシリコンウェハとアルミニウム-シリコン合金粒子とが溶融することなく裏面電極が形成されたことで、TOPCon型太陽電池は優れた変換効率をもたらされたと推察される。
【符号の説明】
【0063】
A:TOPCon型太陽電池
10:裏面電極10
11:n型シリコン基板11
12:酸化物層
13:nシリコン層
14:フィンガー電極
図1