(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】スパークエロージョンによる加工中の電極ワイヤの断線を防止するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B23H 7/02 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
B23H7/02 R
B23H7/02 S
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019134286
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-04-06
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515295681
【氏名又は名称】テルモコンパクト
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】リー ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス ジェラール
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-007530(JP,A)
【文献】特開昭51-057093(JP,A)
【文献】特開平04-035811(JP,A)
【文献】特許第4850318(JP,B1)
【文献】特開2002-187022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極ワイヤ(4)を用いた放電加工により部品(8)を加工するための加工方法であって、
前記電極ワイヤ(4)は、誘電性液体の流れが移動するスパークゾーン(5)において、緊張状態にされ、且つ被加工部品(8)に近接して長手方向
(9)に並進す
るように駆動され、
前記被加工部品(8)と前記電極ワイヤ(4)との間に接続される電源(10)を使用して、前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)と間の前記スパークゾーン(5)にスパークを生じさせる電気パルス(UA-IE)を発生させ、
前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)に存在する気泡の量を評価し、
該評価した気泡の量を適切な範囲の値に維持又は戻すように、前記評価した気泡の量に応じて、少なくとも1つの加工パラメータを修正
し、
前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)に存在する前記気泡の量は、2つの連続するスパーク電流(IE)のパルスの間の時間間隔(Te)の間に前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の静電容量を測定することにより評価される、
加工方法。
【請求項2】
前記評価した気泡の量が増大すると、スパーク電流(IE)のピーク振幅(I
0)が減少し、前記評価した気泡の量が減少すると、前記スパーク電流(IE)の前記ピーク振幅(I
0)が増大する、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記評価した気泡の量は、少なくとも1つの予め設定された閾値量と比較され、
前記評価した気泡の量が前記少なくとも1つの予め設定された閾値量に達するか又はその閾値量を超えると、
前記スパーク電流のピーク振幅(I
0)は、予め設定された滞留時間に亘って減少する、請求項1又は2に記載の加工方法。
【請求項4】
前記評価した気泡の量が増大すると、連続する前記電気パルス(UA-IE)同士の間の休止時間(Tp)が増大し、前記評価した気泡の量が減少すると、連続する前記電気パルス(UA-IE)同士の間の前記休止時間(Tp)が減少する、請求項1に記載の加工方法。
【請求項5】
前記評価した気泡の量は、少なくとも1つの予め設定された閾値量と比較され、
前記評価した気泡の量が前記少なくとも1つの予め設定された閾値量に達するか又はその閾値量を超えると、連続する前記電気パルス(UA-IE)同士の間の休止時間(Tp)は、予め設定された滞留時間に亘って増大する、請求項1又は4に記載の加工方法。
【請求項6】
前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記
静電容量の前記値が、開始電圧パルス(UA)によってスパークが生じる前に、該開始電圧パルス(UA)の印加中に前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の電圧(U)の上昇速度の測定から推定される、請求項
1に記載の加工方法。
【請求項7】
前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)に存在する前記気泡の量は、2つの連続する電気パルス(UA-IE)の間の休止時間(Tp)中に、前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間に高周波電流を注入することにより、且つ前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の
前記静電容量の値をその高周
波電流から推定するために、この高周波での電気回路のインピーダンスを測定することにより
、評価される、請求項
1に記載の加工方法。
【請求項8】
電極ワイヤを用いた放電加工により部品を加工するための加工装置であって、
スパークゾーン(5)において、電極ワイヤ(4)を緊張状態に保持し、被加工部品(8)に近接して長手方向
(9)に並
進するように前記電極ワイヤ(4)を駆動するための手段(2、3、20、30、60)と、
誘電性液体の流れを前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)に流すための手段と、
前記被加工部品(8)と前記電極ワイヤ(4)との間に電気的に接続され、且つ電気パルス(UA、IE)を発生させることができ、前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)にスパークを生じさせることができる電源(10)と、
前記電源(10)を制御する制御手段(40)、前記誘電性液体の流れを生じさせるための手段(50)、並びに前記電気パルス(UA、IE)の特性、前記誘電性液体の流れの特性、及び他の加工パラメータを設定することにより加工パラメータを設定又は変更するための他の手段と、
前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)に存在する気泡の量を評価し、且つ該評価した気泡の量を表す信号(73)を前記制御手段(40)に送るための測定手段(70)と、
前記制御手段(40)において、前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)に存在する前記評価した気泡の量を表す前記信号(73)に応じて、前記信号(73)の値を適切な範囲の信号値に維持又は戻すように、少なくとも1つの前記加工パラメータを修正するための適合手段(41)と、を含
み、
前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)に存在する前記気泡の量を評価するための前記手段(70)は、前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)によって形成される電気回路の静電容量を測定するための手段を含む、
加工装置。
【請求項9】
前記適合手段(41)は、
前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)に存在する前記気泡の量を表す前記信号(73)を少なくとも1つの予め設定された信号閾値と比較するための比較器と、
前記スパークゾーン(5)に存在する前記気泡の量を表す前記信号(73)が少なくとも1つの前記信号閾値に達するか又はその信号閾値を超えると、スパーク電流(IE)のピーク振幅(I
0)を減少させるように、前記電源(10)を制御するための記録された制御プログラムと、を含む、請求項
8に記載の加工装置。
【請求項10】
前記適合手段(41)は、
前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)に存在する前記気泡の量を表す前記信号(73)を少なくとも1つの予め設定された信号閾値と比較するための比較器と、
前記スパークゾーン(5)に存在する前記気泡の量を表す信号(73)が少なくとも1つの前記信号閾値に達するか又はその信号閾値を超えると、連続する前記電気パルス同士の間の休止時間(Tp)を増大させるように、前記電源(10)を制御するための記録された制御プログラムと、を含む、請求項
8に記載の加工装置。
【請求項11】
前記静電容量を測定するための前記手段は、前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の開始電圧(U)の上昇速度の測定を行う、請求項
8に記載の加工装置。
【請求項12】
前記静電容量を測定するための前記手段は、
前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間に高周波電流を注入することができる高周波発生器と、
前記高周波発生器が前記高周波電流を注入する前記電気回路の複素インピーダンスを測定するための手段と、
該測定された複素インピーダンスから、前記電極ワイヤ(4)と前記被加工部品(8)との間の前記スパークゾーン(5)によって形成される前記電気回路の
前記静電容量の値を抽出するための計算手段と、を含む、請求項
8に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工機において、電極ワイヤを使用して、電極ワイヤと導電性材料との間の誘電媒体中にスパーク(spark)を使用するエロージョン(erosion)によって導電性材料を切断するワイヤ放電加工(EDM:electrical discharge machining)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の放電加工は、被加工部品と導電性電極ワイヤとの間のスパークゾーンにスパークを発生させることによって、導電性材料でできた部品から材料を除去することを可能にする。ガイドによって保持されている電極ワイヤは、部品の近くでワイヤの長さ方向に連続的に送られ、そしてそのワイヤは、ワイヤのガイドの横方向への並進又は部品の並進のいずれかによって部品に向けて徐々に横方向に移動する。
【0003】
放電加工機では、電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンは、適切な誘電性流体に浸される。電源が、スパークゾーンから離れて配置された電気接点によって、被加工部品と電極ワイヤとの間に接続される。電源は、適切な電気パルスの送達を介して、部品及び電極ワイヤを徐々に侵食するスパークを発生させるのを可能にする。スパークによって電極ワイヤから及び部品から引き離された粒子が誘電性流体中に分散し、その流体からそれら粒子が除去される。電極ワイヤの長手方向の送り量(run-off)は、スパークゾーンにおいてその電極に加えられる機械的張力に(断線させることなく)耐えるのに通常十分なワイヤ直径を恒久的に保つのを可能にする。横方向のワイヤと部品との相対移動により、部品を切断することができ、或いは適切な場合にはその部品表面を処理することができる。
【0004】
放電加工機では、電子制御手段が、電極ワイヤの性質、被加工部品の性質及び寸法、並びに加工後に求められる特性に応じて、ユーザが選択する加工パラメータを設定又は変更するために、この加工機の構成ユニットを制御する。加工パラメータは、一般に、電気パルスの周波数、2つの連続する電気パルスの間の休止時間の持続時間、開始電圧、スパーク電流のエネルギー、スパーク電流のピーク振幅、スパーク電流の持続時間、誘電性液体の流れの特性、電極ワイヤの長手方向の送り速度、及び電極ワイヤに対する被加工部品の相対移動の速度を含む。
【0005】
正確な加工を得るために、そして特に小さい半径の切断を生じさせるために、それらワイヤがスパークゾーンにおいて緊張状態に保持され且つ振動の振幅を制限するのを可能にする最大の機械強度を有する小径のワイヤを使用することが必要である。
【0006】
最新の殆どのEDM放電加工機は、一般に直径0.25mm、最大強度400~1000N/mm2の金属ワイヤを使用するように設計されている。
【0007】
EDMは比較的遅い加工であるので、同時に加工速度、特に粗加工の速度を最大化する必要がある。
【0008】
この加工速度は、電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンにおいて放出されるスパークエネルギーに直接的に依存し、従ってワイヤがスパークゾーンに伝導することができる電気エネルギーに依存することが現在認められている。しかしながら、スパークゾーンにおける侵食性放電及びワイヤを流れる電流によって発生するジュール熱は、ワイヤを加熱すると同時にそのワイヤの機械的な最大強度を低下させる傾向がある。
【0009】
こうして、EDM用ワイヤの限界の1つは、発熱と機械的張力との複合効果の下でそれらワイヤが断線することである。これは、ユーザに自分の放電加工機の加工電力を制限することを要求し、これは同時に加工速度を制限する。
【0010】
こうして、ワイヤ放電加工における頻発する問題は、電極ワイヤの早過ぎる断線である。完全に排除することは明らかに不可能な現象であるので、放電加工機では、その断線後に電極ワイヤを自動的に再び送給する(rethreaded)のを可能にする手段が設けられている。しかしながら、電極ワイヤが断線した後の、ワイヤを再び送給するのに必要とされる時間の間に、加工プロセスは必然的に中断され、これは部品を加工する全体の速度を実質的に低下させる。
【0011】
放電加工中の電極ワイヤの早過ぎる断線の頻度を減らすための様々な方法の試みが既に求められている。
【0012】
例えば、電極ワイヤの機械的強度は、鋼等の高い機械的強度の構成金属を適切に選択することによって高められてきた。
【0013】
他の例によれば、金属コアと連続的な亜鉛コーティングとを含むEDMワイヤを使用することが提案されており、コーティングの効果は、亜鉛の気化中に亜鉛によって消費される熱エネルギーによって金属コアの加熱を制限することである。このように、電極ワイヤの機械的強度を減少させることによってこの加熱による断線を防止することを期待して、加工スパーク及びジュール熱による電極ワイヤの不可避的な加熱の影響を減少させることが試みられてきた。
【0014】
別の例によれば、特許文献1は、EDMワイヤ及びその製造方法について記載しており、ワイヤは、銅又は銅-亜鉛合金から製造することができるコアを有しており、且つ異なる銅-亜鉛合金でできた及び酸化亜鉛から作製されたフィルムで覆われるコーティングを有する。この文献は、銅-亜鉛合金でできたコーティングが多孔質構造を有し、ワイヤが、誘電性加工液として働く水との接触面積を増大させる粗い表面を有し、これによりワイヤの冷却が増大し、より高い電流を通すことが可能になると述べている。
【0015】
特許文献2には、第1の銅含有金属でできたコアと、このコア上に形成された合金層と、この合金層上に形成され且つ第1の金属よりも低い気化温度を有する第2の金属でできた表面層とを含むEDMワイヤ及びその製造方法も記載されている。この文献2は、ワイヤをより良く冷却するために、ワイヤと加工用誘電性液体との間の接触面積を増大させる開放孔を含む多孔質層をワイヤの表面上に得ることが有利であることを教示している。
【0016】
別の例によれば、高い電気伝導率の電極ワイヤが、こうして電極ワイヤの機械的強度を低下させることによってこの不可避的な加熱によって断線が生じするのを防止することを目的として、そのワイヤを流れる電流によって引き起こされるワイヤの加熱を減少させるために使用される。
【0017】
別の例によれば、電極ワイヤを通って流れる平均電流が、そのワイヤを通って流れる電流による電極ワイヤの不可避の加熱を限定するように制限される。
【0018】
別の例によれば、電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンにおいて、短絡の頻度をより少なくすることによって電極ワイヤの断線のリスクを減少させることを期待して、誘電媒体の絶縁破壊の開始の原因となる加工デブリの除去を促すことによって、不可避的にランダムに発生する急速スパーク開始又は短絡の頻度を減少させることが試みられてきた。例えば、特許文献3では、γ相黄銅でできた周辺層を製造するために亜鉛コーティングされたα相黄銅を焼鈍し、次に最終直径を達成するためにこうして得られた中間製品を延伸することが提案されている。延伸により、破砕状態の(fractured)γ相黄銅表面層が生じる。結果として生じるEDMワイヤの表面は不規則であり、この文献3は、この破砕状態が加工デブリの除去を促すことを教示している。
【0019】
特許文献4は、ワイヤが加工液に侵入するときに、電極ワイヤの断線の原因の1つが、電極ワイヤ自体によってスパークゾーンに運ばれる気泡の存在に少なくとも部分的に起因し得ることを教示する。記載された解決策は、ワイヤがスパークゾーンに入る前にワイヤを機械的に洗浄することにより、電極ワイヤによって同伴される気泡の量を減らすことである。
【0020】
残念なことに、長年に亘って開発されてきたこれらの多くの試みにもかかわらず、電極ワイヤのランダムな断線が依然として放電加工中に非常に頻繁に観察されるので、現時点でこれらの既知の方法のいずれも満足な結果を達成していない。さらに、電極ワイヤを通って流れる平均電流の制限、又は鋼コア電極ワイヤの使用は、EDM速度の不可避的な低下を引き起こし、これは実際にはこれらの方法の利点を大きく低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】中国特許出願公開第633739号明細書
【文献】欧州特許第0930131号
【文献】米国特許第5,945,010号
【文献】仏国特許出願公開第2527960号明細書
【発明の概要】
【0022】
従って、可能であれば加工速度を低下させることなく、放電加工中の電極ワイヤのランダムな断線の頻度を低減させることに依然として大きな関心が寄せられている。
【0023】
こうして、本発明によって対処される1つの問題は、全体的な加工速度を実質的に低下させることなく、放電加工中の電極ワイヤの断線を効果的に防止することである。
【0024】
本発明は以下の知見から得られたものである。
本発明者らは、放電加工中に、スパーク領域自体の、誘電性液体の内部に気泡が形成されることを観察した。これらの気泡はスパークゾーンの上に集まり得る。殆どの場合に、従来の加工条件下では、これらの気泡は、特に上方に逃げることによって又は加工デブリを除去する誘電液体の流れの中で、スパークゾーンから徐々に除去される。
【0025】
特許文献4に教示されるように、電極ワイヤを誘電性液体に浸入させる前にこの電極ワイヤを清掃しても、スパークゾーン自体における気泡の形成を妨げることはできない。これは、この文献で提案される解決策が電極ワイヤの断線のリスクを十分に減少させることができないことから確からしい。
【0026】
これらの観察に基づいて、本発明の背後にある考え方は、特定の加工条件下で、気泡が多量に形成され且つスパークゾーンのその有効長のうちの少なくとも1つのセグメントの周りの電極ワイヤの表面上に凝集した場合に、電極ワイヤのランダムな断線が本質的にスパークゾーンにおける気泡の形成によることである。電極ワイヤの表面上の気泡は、それら気泡が電極ワイヤのある長さに亘って大量に凝集すると、ワイヤの局所的に激しい加熱を生じさせ断線しやすい。
【0027】
1つの説明は、凝集した気泡が電極ワイヤを誘電性液体から断熱し、こうしてそのワイヤを局所的に冷却するのが妨げられることであると思われる。別の説明は、凝集した気泡が気泡によって占められている領域内でスパークの開始を促し、こうして電極ワイヤの局所的な加熱を増大させることであると思われる。これら2つの現象は結合するかもしれない。
【0028】
こうして、放電加工中に電極ワイヤの断線を回避するために、もっとも全体の加工速度を実質的に低下させることなく、電極ワイヤを用いて放電加工により部品を加工するための加工方法を提案する。この方法は、
電極ワイヤは、誘電性液体の流れが移動するスパークゾーンにおいて、緊張状態にされ、且つ被加工部品に近接して長手方向に並進するように駆動され、
被加工部品と電極ワイヤとの間に接続された電源を使用して、電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンにスパークを生じさせる電気パルスを発生させ、
電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンに存在する気泡の量を評価し、
評価した気泡の量を適切な範囲の値に維持又は戻すように、評価した気泡の量に応じて、少なくとも1つの加工パラメータを修正する。
【0029】
解決策の説明において上述した加工パラメータは、従来技術に関して本明細書の冒頭に列挙したような放電加工機の従来の加工パラメータから選択される。
【0030】
気泡の量を許容閾値未満に保つという事実によって、放電加工中の電極ワイヤの断線のリスクを非常に実質的に低減させることが可能になることが観察されている。
【0031】
第1の実施形態によれば、電極ワイヤの断線のリスクを減少させるために作用する加工パラメータは、スパーク電流のピーク振幅である。この場合に、評価した気泡の量が増大すると、スパーク電流のピーク振幅は減少し、予め設定された滞留時間(dwell time)の後に、好ましくは評価した気泡の量が減少すると、スパーク電流のピーク振幅は増大する。
【0032】
この第1の実施形態では、評価した気泡の量が上限閾値を超えて増大したときにスパーク電流のピーク振幅を有利に減少させることができ、そして好ましくは評価した気泡の量が下限閾値を下回って減少したときにスパーク電流のピーク振幅を再び増大させることができる。
【0033】
実際には、そのような第1の実施形態のより単純なバージョンでは、
評価した気泡の量は、少なくとも1つの予め設定された閾値量と比較され、
評価した気泡の量が少なくとも1つの予め設定された閾値量に達するか又はその閾値量を超えると、スパーク電流のピーク振幅は予め設定された滞留時間に亘って減少する。
【0034】
第2の実施形態によれば、電極ワイヤの断線のリスクを減少させるように作用する加工パラメータは、連続する電気パルス同士の間の休止時間である。この場合に、評価した気泡の量が増大すると連続する電気パルス同士の間の休止時間は増大し、そして予め設定された滞留時間後に、好ましくは評価した気泡の量が減少すると、連続する電気パルス同士の間の休止時間は減少する。
【0035】
この第2の実施形態では、評価した気泡の量が上限閾値を超えて増大したときに、連続する電気パルス同士の間の休止時間を有利に増大させることができ、そして好ましくは評価した気泡の量が下限閾値を下回って減少したときに、連続する電気パルス同士の間の休止時間を再び減少させることができる。
【0036】
実際には、より単純な第2の実施形態では、
評価した気泡の量は、少なくとも1つの予め設定された閾値量と比較され、
評価した気泡の量が少なくとも1つの予め設定された閾値量に達するか又はその閾値量を超えると、連続する電気パルス同士の間の休止時間が予め設定された滞留時間に亘って増大する。
【0037】
これらの実施形態のいずれにおいても、電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンに存在する気泡の量は、2つの連続するスパーク電流のパルスの間の時間間隔の間に電極ワイヤと被加工部品との間の電気インピーダンスを間接的に測定することによって有利に評価することができる。
【0038】
実際には、電極ワイヤと被加工部品との間の電気インピーダンスの容量性素子の値は、2つの連続するスパーク電流のパルスの間の時間間隔の間に測定される。こうして、侵食性スパークの摂動(perturbation)が回避され、従って加工の有効性が維持される。
【0039】
第1の可能性によれば、電極ワイヤと被加工部品との間の電気インピーダンスの容量性素子の値は、開始電圧パルスによってスパークが生じる前に、開始電圧パルスの印加中に電極ワイヤと被加工部品との間の電圧の上昇速度の測定から推定される。
【0040】
第2の可能性によれば、電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンに存在する気泡の量は、2つの連続する電気パルスの間の休止時間中に、電極ワイヤと被加工部品との間に高周波電流を注入することにより、及び電極ワイヤと被加工部品との間の電気インピーダンスの容量性素子の値からその高周波電流から推定するために、この高周波での電気回路のインピーダンスを測定することにより、間接的に評価される。
【0041】
同じ目的で、別の態様によれば、本発明は、電極ワイヤを使用する放電加工によって部品を加工するための装置を提案する。この装置は、
スパークゾーンにおいて、電極ワイヤを緊張状態に保持し、被加工部品に近接して長手方向に電極ワイヤを並進するように駆動するための手段と、
誘電性液体の流れを電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンに流すための手段と、
被加工部品と電極ワイヤとの間に接続され、且つ電気パルスを発生させることができ、電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンにスパークを生じさせることができる電源と、
電源を制御する制御手段、誘電液体の流れを生じさせるための手段、並びに電気パルスの特性、誘電液体の流れの特性、及び他の加工パラメータを設定することにより加工パラメータを設定又は変更するための他の手段と、
電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンに存在する気泡の量を評価し、且つ評価した気泡の量を表す信号を制御手段に送るための測定手段と、
制御手段において、電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンに存在する評価した気泡の量を表す信号に応じて、信号の値を適切な範囲の信号値に戻すように、少なくとも1つの加工パラメータを修正するための適合手段と、を含む、
加工装置。
【0042】
第1の実施形態によれば、適合手段は、
電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンに存在する気泡の量を表す信号を少なくとも1つの予め設定された信号閾値と比較するための比較器と、
スパークゾーンに存在する気泡の量を表す信号が少なくとも1つの信号閾値に達するか又はその信号閾値を超えると、スパーク電流のピーク振幅を減少させるように、電源を制御するための記録された制御プログラムと、を含み得る。
【0043】
第2の実施形態によれば、適合手段は、
電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンに存在する気泡の量を表す信号を少なくとも1つの予め設定された信号閾値と比較するための比較器と、
スパークゾーンに存在する気泡の量を表す信号が少なくとも1つの信号閾値に達するか又はその信号閾値を超えると、連続する電気パルス同士の間の休止時間を増大させるように、電源を制御するための記録された制御プログラムと、を含み得る。
【0044】
電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンに存在する気泡の量を評価するための手段は、電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンによって形成される電気回路のインピーダンスの容量成分を測定するための手段を有利に含み得る。
【0045】
第1の可能性によれば、容量性インピーダンス成分を測定するための手段は、電極ワイヤと被加工部品との間の開始電圧の上昇速度の測定を行う。
【0046】
第2の可能性によれば、容量性インピーダンス成分を測定するための手段は、
電極ワイヤと被加工部品との間に高周波電流を注入することができる高周波発生器と、
高周波発生器が高周波電流を注入する電気回路の複素インピーダンスを測定するための手段と、
測定された複素インピーダンスから、電極ワイヤと被加工部品との間のスパークゾーンによって形成された電気回路の容量性インピーダンス成分の値を抽出するための計算手段と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明による装置を組み込んだワイヤ電極放電加工機の概略図である。
【
図2】電極ワイヤを用いた加工中の被加工部品を拡大して示す概略斜視図である。
【
図5】気泡が存在しないスパークゾーンを示す概略的な正面断面図である。
【
図6】気泡の存在下でのスパークゾーンを示す概略的な正面断面図である。
【
図7】侵食性スパーク工程中の電極ワイヤと被加工部品との間の電圧の波形を示す概略図である。
【
図8】侵食性スパーク工程中に電極ワイヤ、誘電体、及び被加工部品を通って流れる電流の波形を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照しながら行われる以下の特定の実施形態の説明から明らかになるであろう。
【0049】
図1~
図6を最初に検討する。これらの図は、電極ワイヤ4を用いたスパークエロージョンによって加工を行うことを可能にしながら、被加工部品8を放電加工する速度を実質的に低下させることなく、電極ワイヤ4の早過ぎる断線のリスクを減少させる、本発明による方法及び装置を示す。
【0050】
図1に示されるような放電加工機は、本質的に、脱イオン水等の誘電体の流れを含む加工チャンバ1と、チャンバ1の内部で電極ワイヤ4を保持し且つその電極ワイヤ4を緊張状態に保持するプーリ2、3及びワイヤガイド20、30等の手段と、部品ホルダ6及びスパークゾーン5において電極ワイヤ4に対して部品ホルダ6を移動させるための手段7と、を含む。部品ホルダ6によって保持される被加工部品8はスパークゾーン5に配置される。ワイヤガイド20、30は、被加工部品8の両側に配置され、電極ワイヤ4を正確に案内する。そうするために、それらワイヤガイドは被加工部品8の近くに位置付けされ、それらワイヤガイドの直径は、電極ワイヤ4より僅かに大きく、例えば250μmの電極ワイヤ4に対して254μmの直径である。電極ワイヤ4は、被加工部品8に面するスパークゾーン5において矢印9によって示されるように長手方向に送給される。一方では電源18が、配線18と、電極ワイヤ4がプーリ2とワイヤガイド20との間のチャンバ1の誘電体を通過する間に電極ワイヤ4に接触する少なくとも1つの接点18aとを介して電極ワイヤ4に電気的に接続され、他方では配線19を介して被加工部品8に電気的に接続され、スパークゾーン5において、被加工部品8と電極ワイヤ4との間にスパーク又はアークを発生させるのに適した電気エネルギーを生成する。
【0051】
次に
図7及び
図8を検討する。これらの図はそれぞれ、時間tの関数として、EDM電気パルス中の電圧Uの波形及び電流Iの波形を示す。電気パルスは、最初に、時間t
0とt
2との間に開始電圧パルスUAを含み、次に時間t
2とt
3との間にスパーク電流パルスIEを含む。
【0052】
図7において、電源10は、開始電圧パルスUAを発生させ、その立ち上り(rising front)FMは初期時間t
0から設定終了時間t
1まで延びる。スパークゾーン5における電極ワイヤ4と被加工部品8との間の最大開始電圧U
0の設定は、瞬間的ではないが、その最大開始電圧は電気容量の特性を本質的に有するスパークゾーン5によって形成される電気回路の両端子間の電圧の設定の問題であるので、指数関数的な立ち上りFMを介して起こる。スパークがない場合に、スパークゾーン5に存在する誘電性液体は、電極ワイヤ4及び被加工部品8である金属要素を絶縁し、それら金属要素は一緒になって容量素子を形成する。
【0053】
時間t1から時間t2まで、電源10は、誘電体が絶縁破壊するのを待つ間に、電圧U0を維持する。
【0054】
時間t2において誘電体の絶縁破壊が起こり、電極ワイヤ4と被加工部品8との間の電圧Uは急激に低下し、時間t3まで低いままである。
【0055】
電源10によって供給される電流Iの波形を示す
図8において、電流Iは時間t
0とt
1との間で低いままであり、時間t
1と時間t
2との間で殆どゼロのままである。絶縁破壊が発生する時間t
2の後に、電源10は、ピークの大きさ又は振幅I
0を有する電流パルスの形態のスパーク電流IEを発生させ、これは時間t
3で終了する。EDMスパークを供給し維持するのはこの電流パルス、すなわちスパーク電流IEである。
【0056】
時間t3の後に、電源10は休止時間Tpを待ち、そしてサイクルは新しい電圧パルスで再開する。
【0057】
侵食性スパークがスパーク電流IEの各パルスで生成されることが理解されよう。
図8は、2つの連続するスパークの間、すなわち2つの連続するスパーク電流IEのパルスの間の時間間隔Teを示す。
【0058】
電源10は、特にスパーク電流IEのピークの大きさ又は振幅I0、時間t2と時間t3との間のスパーク電流IEのパルス幅(pulse duration)、及び2つ連続する電気パルスUA-IEの間の休止時間Tpを変更することによって、加工能力に作用し得る。
【0059】
もう一度
図1を検討する。放電加工機は、適切な加工パラメータに応じて放電加工機の様々なユニットを制御するための制御手段40を含む。ユーザは、特に、被加工部品8の性質及び形状、電極ワイヤ4の構成、並びに実施される加工の種類(粗加工、仕上げ)に応じて、特定の加工パラメータを選択することができる。
【0060】
こうして、制御手段40は、特に、電源10によってスパークゾーン5に生成される電気エネルギーの値、波形、及び他のパラメータを適合することによって電源10を制御する。
【0061】
制御手段40はまた、放電加工機の他のユニット、特に、誘電性液体の流れをスパークゾーン5に流すための手段50、電極ワイヤ4を駆動して矢印9で示されるように長手方向に並進させ、且つスパークゾーン5においてその電極ワイヤ4の送り速度を適合させるための電気モータ等の駆動手段60、及び所望の加工ステップに応じて電極ワイヤ4に対して被加工部品8の移動を確実にする移動手段7を制御する。
【0062】
図示の実施形態では、放電加工機は、測定手段70をさらに含み、その入出力線71は、被加工部品8及び電極ワイヤ4にそれぞれ電気的に接続されており、電極ワイヤ4と被加工部品8との間のスパークゾーン5に存在する気泡の量を評価することができる。測定手段70は、評価した気泡の量を表す信号73を伝送路72を介して制御手段40に送る。
【0063】
第1の実施形態によれば、測定手段70は、入出力線71を介して電極ワイヤ4と被加工部品8との間に高周波電流を注入することができる高周波発生器70aと、この高周波で、入出力線71の両端子間の電気回路の複素電気インピーダンスの容量性素子を測定し、そこから評価した気泡の量を表す信号73を推定するための測定手段70bとを含むことができる。
【0064】
実際には、2つの連続する電気パルスの間の従来の休止時間Tp(約0.5ms)より短い測定時間で約5~100pFの静電容量を迅速に測定することができる容量計を形成する任意の回路がおそらく使用される。この休止時間Tpの間に、容量測定を乱さないようにするために、電源10の出力インピーダンスは開回路タイプの非常に高い出力インピーダンスでなければならない。
【0065】
あるいはまた、第2の実施形態によれば、測定手段70は、入出力線71を介して、開始電圧パルスUAの間に電極ワイヤ4と被加工部品8との間に存在する電圧の波形を受け取ることができ、且つ評価した気泡の量を表す信号73をこの波形から推定するために、この波形から、電源10によって開始電圧パルスUAが印加されている間に、電極ワイヤ4と被加工部品8との間の開始電圧Uの上昇速度を測定することによって、電極ワイヤ4と被加工部品8との間に存在する電気的インピーダンスの容量性素子の値を推定する。
【0066】
制御手段40において、適合手段41は、評価した気泡の量を表す信号73の値を適切な範囲の信号値に維持又は戻すように、評価した気泡の量を表す信号73に応じて加工パラメータを修正するようにプログラムされる。
【0067】
信号値の適切な範囲の限界は、特に、被加工部品8の性質及び形状、電極ワイヤ4の構成、及び実施される加工の種類に依存する。従って、これらの限界は、満足する加工速度及び潜在的な電極ワイヤの断線の頻度の実質的な減少が観察されるであろう日常的な加工試験を介して、ユーザによって決定しなければならない。
【0068】
実際には、上限によってのみ規定される信号値の範囲が選択されることがあり、適合手段41は、予め設定された待ち時間の間にスパークエネルギーを減少させて、気泡を十分に除去し、次に予め設定された待機時間の終わりに、スパークエネルギーを以前のレベルまで戻すようにプログラムされる。
【0069】
もっとも、上限及び下限によって規定される信号値の範囲によって、EDM速度を最適化するのが可能になるだろう。
【0070】
制御手段40及び適合手段41は、適切なプログラムに関連するマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラの形態を取り得る。実際には、放電加工機の従来の制御装置は、それ自体で、上述した機能を実行し、それに応じて本発明の方法に従って放電加工機の構成ユニットを制御するようにプログラムすることができる。
【0071】
図2に見られるように、矢印11で示されるように被加工部品を横方向に動かすことにより、スパークエロージョンによって電極ワイヤ4を導電性である被加工部品8の大部分に徐々に切り込み、スロット12を生成する。図示の例では、切込みは直線状のスロット12であり、これは被加工部品8の全高さHを占める。被加工部品8の非線形運動11によって、切込みは非線形でとなり得る。
【0072】
被加工部品8の動きは、スパークによって生じる侵食に過剰にならないように従わなければならない。速度が遅過ぎると加工速度を低下させる。速度が速過ぎると、電極ワイヤ4と被加工部品8とが接触し、この短絡の結果として加工機が停止する。
【0073】
図3及び
図4は、スロット12内のスパークゾーン5をより詳細に示している。被加工部品8の移動速度を適合することによって、電極ワイヤ4の外面とスロット12の内面との間の間隔Gが略一定に保たれる。こうして、スパークゾーン5は、スロット12の半円筒形の背面と、スロット12の半円筒形の背面に向けて向き合せされた電極ワイヤ4の半分の表面によって形成された半円筒との間に位置する。スロット12の幅Lは、間隔Gを2倍だけ増大した電極ワイヤの直径Dに等しい。
【0074】
図5及び
図6は、スロット12の中央平面に沿った断面において、電極ワイヤ4と被加工部品8との間のスパークゾーン5を示す。
図5では、スパークゾーン5は、電極ワイヤ4の周囲に気泡が蓄積していない「通常」状態で示されている。対照的に、
図6では、スパークゾーン5は、電極ワイヤ4の周囲に気泡が蓄積した「断線のリスクがある」状態で示されている。気泡100によって占められる長さのセグメントにおいて、電極ワイヤ4は、残りのスパークゾーンを満たす誘電性液体から断熱されていることが理解されよう。結果として、電極ワイヤの長さのそのセグメントの温度は急速に上昇し、気泡100によって占められている長さのそのセグメントにおいて電極ワイヤ4の断線のリスクの増大を引き起こす。
【0075】
本発明は、スパークゾーン5に異常に多量の気泡が存在することを検出し、且つこの気泡の量が許容レベルに戻るまで加工パラメータをそれに応じて瞬間的に適合させることによって、大量の気泡100が電極ワイヤ4上に集まるような外観を防止することを目的とする。電極ワイヤ4の断線のリスクが非常に顕著に減少する。
【0076】
シミュレーションにより、電極ワイヤ4の直径Dが250μmであり、被加工部品の高さHが0.1mであり、及び従来の間隔Gの値が40μmである場合に、液体の水の誘電率が約81であるので、誘電性液体が脱イオン水であるとき、スパークゾーン5に存在する電気インピーダンスの容量性素子の値は約800pFであることが示された。
【0077】
対照的に、同じシミュレーションは、気泡100が全てのスパークゾーン5を占めると仮定すると、気泡の誘電率が約1であるので、スパークゾーン5に存在する電気インピーダンスの容量性素子の値は約10pFとなることを示している。
【0078】
スパークゾーン5の一部のみを占める気泡の存在は、容量素子の中間値をもたらし、その値は、使用される誘電性液体が脱イオン水である場合に、10pF~800pFの間に含まれることになる。
【0079】
従って、スパークゾーン5に存在する容量性電気インピーダンス素子の値を測定することによって、スパークゾーン5に存在する気泡の量を評価することが可能であることが分かるであろう。この値が減少するとき、これは気泡の存在の増大を示し、従って
図6に示される気泡100等の絶縁性気泡の存在のリスクの増大を示す。
【0080】
気泡の量を評価するためにこの方法を使用するとき、油性誘電体は2.2に近い、すなわち気泡を形成するガスの誘電率により近い値を有するので、油性誘電体よりも脱イオン水を使用することがより有利であり、この油性誘電体の使用は静電容量の測定による検出の感度を低下させることに留意されたい。
【0081】
電極ワイヤ4と被加工部品8との間に存在する複素電気インピーダンスの容量性素子は、好ましくは放電加工を乱すことなく測定しなければならない。実際には、高周波が測定手段によって注入される第1の実施形態では、休止時間Tpの間に測定ステップを実施しなければならない。開始電圧の上昇速度が測定される第2の実施形態では、測定ステップは、時間t0とt1との間の時間間隔の間に、すなわちこのパルスの値及び波形を変更すること無く、開始電圧パルスの立ち上りFMの間に実施される。
【0082】
本発明は、明示的に説明した実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって包含されるその様々な変形形態及び一般化を含む。