(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】水噴射式織機における緯入れ装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/32 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
D03D47/32
(21)【出願番号】P 2019139347
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野原 直人
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-127233(JP,A)
【文献】特開2011-026729(JP,A)
【文献】特表2009-538994(JP,A)
【文献】米国特許第04813460(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯入ノズルと、該緯入ノズルを織機フレームに対し支持する支持機構であって前記緯入ノズルが緯入れ方向に位置調整可能となるように構成された支持機構と、前記緯入ノズルに対応して設けられて一端で対応する前記緯入ノズルに接続された供給管と、前記供給管の他端が接続される中継部材であって前記織機フレームに取り付けられて前記供給管の前記他端を支持する中継部材とを備え、ポンプからの圧力水が前記中継部材及び前記供給管を介して前記緯入ノズルに供給される水噴射式織機における緯入れ装置において、
前記中継部材を前記織機フレームに取り付けるための取付機構であって前記中継部材を緯入れ方向に位置調整可能とする取付機構を備える
ことを特徴とする水噴射式織機における緯入れ装置。
【請求項2】
前記中継部材は、選択された前記緯入ノズルに接続された前記供給管へ前記圧力水を供給するために流路を切り替える切替バルブである
ことを特徴とする請求項1に記載の水噴射式織機における緯入れ装置。
【請求項3】
前記ポンプに設けられた第1の接続部に接続された接続管が前記切替バルブに設けられた第2の接続部に接続されることで前記切替バルブと前記ポンプとが接続されると共に、前記支持機構が前記緯入ノズルを2位置で位置調整可能とするように構成されており、
前記取付機構は、前記緯入ノズルの各位置に応じた2位置である第1の位置及び第2の位置に前記切替バルブを配置できるように構成されていると共に、前記切替バルブが前記第1の位置に位置するときの前記第2の接続部の位置と前記第2の位置に位置するときの前記第2の接続部の位置との中間の位置が緯入れ方向に関し前記第1の接続部の位置に一致するように前記織機フレームに取り付けられており、
前記接続管は、前記第1の接続部に接続されると共に上下方向に延在する流入部と、前記第2の接続部に接続されると共に上下方向に延在する流出部と、前記流入部と前記流出部とを接続すると共に少なくとも水平方向に延在する中間部とから成るクランク形状に形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の水噴射式織機における緯入れ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緯入ノズルと、該緯入ノズルを織機フレームに対し支持する支持機構であって前記緯入ノズルが緯入れ方向に位置調整可能となるように構成された支持機構と、前記緯入ノズルに対応して設けられて一端で対応する前記緯入ノズルに接続された供給管と、前記供給管の他端が接続される中継部材であって前記織機フレームに取り付けられて前記供給管の前記他端を支持する中継部材とを備え、ポンプからの圧力水が前記中継部材及び前記供給管を介して前記緯入ノズルに供給される水噴射式織機における緯入れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水噴射式織機における緯入れ装置においては、例えば特許文献1に開示されているように、緯入ノズルは、織機フレームに対しブラケット等で取り付けられるかたちで設けられている。その上で、緯入れにあたっては、織機フレームに取り付けられると共に給水管によって緯入ノズルと接続されたポンプから、緯入ノズルに対し圧力水が供給される。なお、特許文献1には開示されていないが、緯入れ装置が複数の緯入ノズルを備える場合には、例えば特許文献2に開示されているように、ポンプと緯入ノズルとを接続する給水管の管路中に、選択された緯入ノズルに圧力水が供給されるように流路を切り替える切替バルブが設けられる。
【0003】
また、一般的な水噴射式織機においては、緯入ノズルは、織機フレームに対する内側(織機フレームの幅方向における経糸列側)に位置するように設けられている。一方で、ポンプは、織機フレームの外側の面に固定されるかたちで設けられており、それに伴い、切替バルブも、織機フレームに対する外側に位置するように設けられている。すなわち、緯入ノズルと切替バルブとは、前記幅方向に関し、織機フレームを挟んで両側に位置するように設けられている。したがって、前記した給水管のうちの切替バルブと緯入ノズルとを接続する部分(供給管)は、少なくとも前記幅方向に延在するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-100258号公報
【文献】特開2003-313753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水噴射式織機においては、緯入れされた緯糸が筬打ち動作によって織前側へ運ばれるのに伴い、緯糸のうちの緯入ノズルと織端(経糸列)との間の部分(緯糸部分)は、その経路長が変化(増加)するのに伴ってその張力が上昇する。そのため、その緯糸部分が給糸カッタによって切断されるのに伴い、その緯糸部分のうちの緯入ノズルに連なる部分(緯糸端部)が収縮し、その緯糸端部が緯入ノズル側へ反発する所謂スプリングバックが発生する。そして、緯入れされる緯糸が伸縮性の大きい種類のものである場合には、スプリングバックの発生に伴い、緯糸端部が緯入ノズルから抜ける所謂ノズル抜けが発生する場合がある。
【0006】
なお、従来の水噴射式織機においては、緯入ノズルを織機フレームに対し支持する支持機構を、前記幅方向(緯入れ方向)において緯入ノズルの位置が調整できるように構成したものがある。そして、そのような支持機構の構成によれば、緯入れ方向における緯入ノズルと織端との間の距離を変更することが可能となる。そこで、前記のようなノズル抜けが発生する場合には、緯入ノズルの位置を織端から離間する方向に変更することで、前記のような筬打ちに伴う経路長の変化が小さくなって張力上昇が緩和され、ノズル抜けの発生の防止を図ることができる。
【0007】
一方で、前記のように緯入ノズルの位置を変更すると、それに伴い、緯入れ方向における緯入ノズルと切替バルブとの間の距離が変化する。但し、その緯入ノズルと切替バルブとを接続する供給管は、織機の振動によってその管路内の水中に多くの気泡が発生することに起因する噴射力の低下を抑制するために、一般的には、ポリエチレン、ゴム等の可撓性材料と比べて織機の振動の影響を受けにくい銅、スレンレス等の金属性材料で形成される。そのため、前記のように緯入ノズルの位置を変更した場合、その位置変更に合わせ、供給管を緯入ノズルと切替バルブとの間の前記距離に応じた管路長を有するものに交換する必要がある。
【0008】
しかし、その交換作業は、緯入れ方向において織機フレームに跨がるように存在する供給管にアプローチし、緯入ノズル及び切替バルブに対する接続部分をそれぞれから取り外し、そして取り付けるといった作業を行わなければならず、非常に煩雑なものである。しかも、その作業は、全ての緯入ノズルに対し行わなければならず、作業者にとって非常に負担となる。
【0009】
以上のような実情を鑑み、本発明は、前記のように緯入ノズルの位置を緯入れ方向に調整できる水噴射式織機における緯入れ装置において、緯入ノズルと切替バルブとを接続する供給管の交換が不要な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記のように緯入ノズルが支持機構によって緯入れ方向に位置調整可能に織機フレームに対し支持されると共にポンプからの圧力水が中継部材及び供給管を介してその緯入ノズルに供給される水噴射式織機における緯入れ装置を前提とする。
【0011】
そして、本発明による緯入れ装置は、前記中継部材を前記織機フレームに取り付けるための取付機構が前記中継部材を緯入れ方向に位置調整可能とするように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、そのような本発明による緯入れ装置において、前記中継部材は、選択された前記緯入ノズルに接続された前記供給管へ前記圧力水を供給するために流路を切り替える切替バルブであっても良い。
【0013】
なお、その緯入れ装置では、前記ポンプに設けられた接続部(第1の接続部)に接続された接続管を前記切替バルブに設けられた接続部(第2の接続部)に接続することで、前記切替バルブと前記ポンプとが接続されている。
【0014】
また、前記支持機構が予め定められた2位置のいずれかに緯入ノズルを配置できるように構成されている場合、前記取付機構は、前記緯入ノズルの各位置に応じた2位置である第1の位置及び第2の位置に前記切替バルブを配置できるように構成されたものとなる。その場合において、前記取付機構を、前記切替バルブが前記第1の位置に位置するときの前記第2の接続部の位置と前記第2の位置に位置するときの前記第2の接続部の位置との中間の位置が、緯入れ方向に関し前記第1の接続部の位置に一致するように、前記織機フレームに取り付けられたものとする。その上で、前記接続管を、前記第1の接続部に接続されると共に上下方向に延在する流入部と、前記第2の接続部に接続されると共に上下方向に延在する流出部と、前記流入部と前記流出部とを接続すると共に少なくとも水平方向に延在する中間部とから成るクランク形状に形成されたものとしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明による緯入れ装置によれば、緯入れ方向に緯入ノズルの位置が変更された場合において、その位置変更に合わせ、中継部材を緯入ノズルの移動量に応じた分だけ移動させ、緯入れ方向における緯入ノズルと切替バルブとの距離が変わらないようにすることができる。それにより、その緯入ノズルと切替バルブとを接続する供給管を交換する必要がなくなり、それに伴い、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0016】
また、本発明による緯入れ装置において、中継部材が切替バルブである場合に、接続管が前記のように形成されたものとすることにより、切替バルブの位置変更に合わせ、流入部の軸心又は流出部の軸心を中心に接続管を180°回転させることで、その位置変更に対応することができる。それにより、供給管だけではなく、接続管も交換不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明が前提とする水噴射式織機における緯入れ装置の一例を示す概略斜視図。
【
図2】本発明の一実施例における取付機構を示す上面図。
【
図3】本発明の一実施例において切替バルブが第1の位置に配置された状態を示す側面図。
【
図4】本発明の一実施例において切替バルブが第2の位置に配置された状態を示す側面図。
【
図5】板状の部材で成るガイド部を含む取付機構の変形例を示す側面図。
【
図6】中継部材として支持部材を備える緯入れ装置の変形例において支持部材が第1の位置に配置された状態を示す側面図。
【
図7】中継部材として支持部材を備える緯入れ装置の変形例において支持部材が第2の位置に配置された状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、
図1~4に基づき、本発明による水噴射式織機における緯入れ装置の一実施例を説明する。
【0019】
図1は、水噴射式織機1における緯入れ装置3であって、給糸側の織機フレーム2に取り付けられた緯入れ装置3を示す。なお、本実施例の緯入れ装置3は、図示のように2つの緯入ノズル4、4を備えた2色対応の緯入れ装置である。そして、緯入れ装置3は、ポンプ5から吐出される圧力水が選択された緯入ノズル4へ供給されるように流路を切り替える切替バルブ6を備えている。
【0020】
また、ポンプ5は、織機フレーム2の幅方向における外側の面2aに対し取り付けられている。さらに、切替バルブ6も、ポンプ5の上方に位置する配置で、織機フレーム2の外側の面2aに対し取り付けられている。その上で、ポンプ5に設けられた接続部(第1の接続部)5aに接続された接続管7が、切替バルブ6に設けられた接続部(第2の接続部)6dに接続されることによって、ポンプ5と切替バルブ6とが接続されている。
【0021】
なお、切替バルブ6は、内部に弁体(図示略)が収容される円筒状のケース6aを主体とすると共に、弁体を回転駆動するアクチュエータ6cがケース6aに取り付けられた構成となっている。なお、アクチュエータ6cは、ケース6aに対しその軸線方向における両端部のうちの一方に固定されるかたちで備えられている。その上で、ケース6aは、その他端部において、半径方向に膨出するように形成されたフランジ部6a1を有している。そして、切替バルブ6は、そのケース6aにおけるフランジ部6a1において、織機フレーム2に対し取り付けられている。
【0022】
各緯入ノズル4は、前記幅方向に関し織機フレーム2の内側に位置する配置で、織機フレーム2に対し取り付けられた支持機構9によって支持されている。また、その支持機構9は、緯入ノズル4、4が前記幅方向(=緯入れ方向)に位置調整可能となるように構成されている。具体的には、支持機構9は、緯入ノズル4を緯入れ方向に位置調整可能とするためのノズル位置調整部10と、ノズル位置調整部10に対し緯入ノズル4を取り付けるためのノズル取付部11とで構成されている。
【0023】
それらのうち、ノズル取付部11は、緯入ノズル4が取り付けられるノズルホルダ12と、ノズルホルダ12を支持するノズルブラケット13とで構成されている。なお、ノズルホルダ12及びノズルブラケット13は、各緯入ノズル4に対応して設けられている。また、各ノズルブラケット13は、板状の部材であり、そのノズルホルダ12が取り付けられる端部とは反対側の端部において、ノズル位置調整部10に対し取り付けられている。
【0024】
ノズル位置調整部10は、各ノズルブラケット13を支持する支持ブラケット14と、支持ブラケット14を織機フレーム2に対し取り付けられた状態とする取付ブラケット15とで構成されている。また、支持ブラケット14は、ノズルブラケット13、13が一端面に取り付けられる板状の部分であって板厚方向に見て矩形状に形成された部分14aと、部分14aにおける前記一端面とは反対側の端面から突出するように形成されたブロック状の部分であって、取付ブラケット15に取り付けられる部分14bとを有し、それらが一体的に形成された構成となっている。
【0025】
また、取付ブラケット15は、全体として略直方体状に形成されており、その上面に支持ブラケット14(部分14b)が載置されるかたちで取り付けられるように構成されている。具体的には、取付ブラケット15は、その上面から突出するように形成された凸部であって上面の短辺方向に間隔をおいて長辺方向に亘って延在するように形成された2つの凸部15a、15aを有している。一方、支持ブラケット14は、部分14bの下面に開口すると共に部分14aの長辺方向に亘って延在するように形成された単一の凹部14cを有している。
【0026】
その上で、支持ブラケット14には、凹部14cを上下方向(部分14aの端面と平行な方向)に貫通する貫通孔(図示略)が、部分14aの長辺方向に間隔をおいて2つ形成されている。一方、取付ブラケット15には、その上面のうちの各凸部15aの部分に開口するネジ孔15a1が、凸部15aの長手方向において支持ブラケット14における貫通孔と同じ間隔で、各凸部15aに2つずつ形成されている。
【0027】
そして、支持ブラケット14における凹部14cを取付ブラケット15における2つの凸部15a、15aの一方に嵌め合わせると共に、支持ブラケット14における2つの貫通孔のそれぞれに挿通されたネジ部材16、16を取付ブラケット15におけるネジ孔15a1、15a1に螺挿することで、支持ブラケット14が取付ブラケット15に取り付けられた状態となる。
【0028】
また、取付ブラケット15は、その下面の中間部から突出するように形成された板状の部分15bであって、板厚方向がその下面(上面)の短辺方向に一致するように形成された部分15bを有している。なお、その部分15bは、取付ブラケット15の下面の長辺方向(=凸部15aの長手方向)に亘って延在するように形成されている。また、その部分15bには、板厚方向に貫通するように形成された貫通孔(図示略)が、凸部15aの長手方向に間隔をおいて、2つ形成されている。
【0029】
その上で、取付ブラケット15は、その部分15bの一端面を織機フレーム2の内側の面2bに当接させると共にその下面を織機フレーム2の上面2cに当接させた状態で、織機フレーム2に取り付けられている。なお、その取り付けは、取付ブラケット15における部分15bに形成された2つの貫通孔に挿通したネジ部材18を織機フレーム2に螺挿するかたちで行われる。そして、取付ブラケット15がそのように取り付けられる結果として、取付ブラケット15における2つの凸部15a、15aは、その長手方向を織機1の前後方向に一致させると共に、織機フレーム2の前記幅方向と一致する緯入れ方向に間隔をおいて設けられた状態となる。
【0030】
したがって、その取付ブラケット15と支持ブラケット14とから成るノズル位置調整部10においては、支持ブラケット14における凹部14cが嵌め合わされる取付ブラケット15における凸部15aを切り替えることで、支持ブラケット14の位置が緯入れ方向に変更される。そして、そのように支持ブラケット14が2つの凸部15a、15aの位置で変更可能となっているノズル位置調整部10を備える支持機構9によれば、その支持ブラケット14に対しノズル取付部11を介して緯入ノズル4、4が取り付けられていることから、緯入ノズル4、4は、緯入れ方向における2位置間でその位置を変更できるようなかたちで、位置調整可能となっている。
【0031】
その上で、各緯入ノズル4と切替バルブ6とは、各緯入ノズル4に対応して設けられた供給管8を介して接続されている。具体的には、各緯入ノズル4には、管継手17が取り付けられている。一方で、切替バルブ6は、ポンプ5から吐出されて接続管7を介して流入する圧力水を流出させる2つの流出口6b、6bを有している。そして、各供給管8は、その一端で対応する緯入ノズル4に取り付けられた管継手17に接続されると共に、その他端で切替バルブ6における対応する流出口6bに接続されている。したがって、各供給管8は、前記のように各緯入ノズル4が織機フレーム2の内側に配置されていると共に切替バルブ6が織機フレーム2の外側に配置されていることから、少なくとも緯入れ方向に延在するように設けられている。
【0032】
また、各供給管8は、その一端において、前記のように支持機構9によって織機フレーム2に支持された緯入ノズル4に接続されており、その他端において、前記のように織機フレーム2に取り付けられる切替バルブ6に接続されている。それにより、各供給管8は、その一端を緯入ノズル4によって支持され、他端を切替バルブ6に支持されて設けられた状態となっている。したがって、本実施例では、その各供給管8の他端を支持する切替バルブ6が、本発明で言う「中継部材」に相当する。
【0033】
以上のように構成された水噴射式織機1における緯入れ装置3において、切替バルブ6は、取付機構20を介して織機フレーム2に取り付けられている。すなわち、緯入れ装置3は、切替バルブ6を織機フレーム2に取り付けるための取付機構20を備えている。そして、その取付機構20は、切替バルブ6が緯入れ方向に位置調整可能となるように構成されている。その取付機構20の構成について、詳しくは、以下の通りである。
【0034】
図2~
図4に示すように、取付機構20は、織機フレーム2に取り付けられると共に切替バルブ6におけるフランジ部6a1が取り付けられるベース部21と、切替バルブ6を緯入れ方向において案内するためのガイド部22とを含む。
【0035】
ベース部21は、切替バルブ6におけるフランジ部6a1の直径と略同じ直径の円盤状の部材で構成されている。そして、そのベース部21は、板厚方向に貫通するように形成された貫通孔(第1の貫通孔)であって、ベース部21の中心に対し対称的な位置に形成された2つの第1の貫通孔21a、21aを有している。なお、この2つの第1の貫通孔21a、21aは、後述するガイド部22を挿通するためのものである。
【0036】
また、ベース部21は、取付ネジ24によって織機フレーム2に取り付けられる。そのために、ベース部21には、その取付ネジ24を挿通するための貫通孔(第2の貫通孔)であって、板厚方向に貫通するように形成された2つの第2の貫通孔21b、21bも形成されている。なお、その2つの第2の貫通孔21b、21bは、ベース部21の中心に対し対称的な位置で、例えば第1の貫通孔21a、21aの位置に対し位相を90°ずらした位置に形成されている。但し、各第2の貫通孔21bは、ベース部21の板厚方向に関し、略中間部よりも一方の側が他方の側よりも径の大きい段付きの孔として形成されており、大径の部分が取付ネジ24の頭部を収容可能であると共に、段部に取付ネジ24の頭部が当接するように形成されている。
【0037】
また、ベース部21は、各第2の貫通孔21bの小径の部分が開口する端面におけるその開口する部分の周囲が板厚方向に突出するように形成されている。したがって、第2の貫通孔21bにおける小径の部分を織機フレーム2側としてベース部21を織機フレーム2に当接させると、その突出する部分以外の、第1の貫通孔21aが形成された部分を含む部分は、ベース部21の板厚方向に関し、織機フレーム2から離間した状態となる。
【0038】
その上で、ベース部21は、前記のように第2の貫通孔21bにおける小径の部分を織機フレーム2側として織機フレーム2に当接させた状態で、各第2の貫通孔21bに挿通した取付ネジ24を織機フレーム2に螺挿することによって織機フレーム2に取り付けられる。なお、そのようにベース部21が取り付けられた状態において、2つの第1の貫通孔21a、21aは、上下方向に関し、その高さ位置が一致した状態となっている。言い換えれば、織機フレーム2側の取付ネジ24が螺挿される雌ネジ孔は、ベース部21がそのような向きに取り付けられた状態となるように形成されている。
【0039】
また、ガイド部22は、本実施例では、2つの案内ネジ23、23で構成されている。そして、各案内ネジ23は、ベース部21における第1の貫通孔21aに対し前記した突出する部分が設けられた側から挿通されることで、ベース部21に対し挿着された状態とされる。したがって、両案内ネジ23、23は、前記のようにベース部21が織機フレーム2に取り付けられることで、緯入れ方向と平行な方向に延在した状態となる。
【0040】
その上で、切替バルブ6は、その案内ネジ23、23によりベース部21に対し取り付けられる。そのために、切替バルブ6は、そのケース6aにおけるフランジ部6a1を板厚方向に貫通するように形成された貫通孔(案内孔)であって、2つの案内ネジ23、23をそれぞれ挿通できるように形成された2つの案内孔6a2、6a2を有している。
【0041】
そして、切替バルブ6をベース部21に取り付けるにあたっては、先ずは、切替バルブ6をフランジ部6a1がベース部21と対向する状態とした上で、前記のようにベース部21に対し挿着された案内ネジ23、23がそのフランジ部6a1における案内孔6a2、6a2に挿通された状態とされる。その上で、各案内ネジ23にナット25を螺合させて締め付けることにより、切替バルブ6がベース部21に対し取り付けられた(固定された)状態となる。
【0042】
なお、切替バルブ6において、フランジ部6a1に形成される2つの案内孔6a2、6a2は、前記のように織機フレーム2に取り付けられたベース部21に対し切替バルブ6を取り付けた状態で、その切替バルブ6における流出口6b、6bが上方を向くように形成されている。すなわち、その2つの案内孔6a2、6a2は、切替バルブ6を流出口6bが鉛直上方を向くようにした状態で、水平方向に並ぶように形成されている。
【0043】
因みに、前記したベース部21に対する各案内ネジ23の挿着は、ベース部21を織機フレーム2に取り付けるに先立って行われる。そして、2つの案内ネジ23、23が挿着された状態のベース部21が織機フレーム2に対し取り付けられた後、ベース部21に対する切替バルブ6の取り付けが行われる。
【0044】
また、取付機構20は、必要に応じて用いられるスペーサ26(
図4)であって、ベース部21と切替バルブ6(フランジ部6a1)との間に配置されるスペーサ26(構成の詳細は後述)を含んでいる。
【0045】
以上で説明した取付機構20の構成によれば、切替バルブ6は、ガイド部22における2つの案内ネジ23、23により、上下方向においてその位置が支持された状態となる。また、切替バルブ6をベース部21に対し固定しているナット25を緩めることで、切替バルブ6は、案内ネジ23、23に案内されるかたちで、案内ネジ23の軸線方向へ移動可能となる。そして、切替バルブ6をベース部21から離間させた上で、フランジ部6a1とベース部21との間にスペーサ26を配置し、その状態でナット25を再び締め付けることで、切替バルブ6は、緯入れ方向と平行な案内ネジ23の軸線方向において、ベース部21からスペーサ26の厚み分だけ離間した位置に配置された状態となる。すなわち、前記のようなスペーサ26を含む取付機構20は、切替バルブ6を緯入れ方向における2位置(第1の位置、第2の位置)に配置可能(位置調整可能)な構成であると言える。
【0046】
なお、切替バルブ6の位置は、後述のように緯入ノズル4、4が緯入れ方向において位置を変更されるのに合わせて変更される。したがって、切替バルブ6が配置される前記第1、第2の位置は、前記した緯入ノズル4、4の2位置に応じた位置となる。そこで、前記のようにベース部21と切替バルブ6との間に配置されるスペーサ26は、その厚さ寸法が前記した緯入ノズル4、4の2位置の間の距離(2つの凸部15a、15aの間隔)と略一致する大きさとなっている。
【0047】
そのスペーサ26について、具体的には、スペーサ26は、略直方体状に形成された部材であり、その存在範囲内に案内ネジ23の一部が位置することを許容する貫通孔であって、2つの案内ネジ23、23のそれぞれに対応させて形成された2つの貫通孔を有している。なお、その貫通孔は、厚さ方向に貫通すると共に、その厚さ方向における両端面の長辺方向に並ぶかたちで形成されている。但し、その貫通孔は、前記厚さ方向と平行な周面のうちの前記長辺方向と平行な面の一方を上面とすると共に他方を下面とすると、前記の両端面に加え、下面にも開口する溝状に形成されている。
【0048】
そして、そのようなスペーサ26の構成によれば、前記のようにベース部21と切替バルブ6との間にスペーサ26を配置するにあたり、案内ネジ23、23の先端側から(軸線方向)ではなく、案内ネジ23の軸線方向と直交する方向で、両案内ネジ23、23の一部がスペーサ26の存在範囲内に位置する(スペーサ26内を通過する)状態とすることができる。それにより、そのスペーサ26の配置を、切替バルブ6及びナット25、25を案内ネジ23、23から取り外すこと無く行うことができる。
【0049】
また、切替バルブ6及びポンプ5の配置について、緯入れ方向に関し、前記第1の位置に切替バルブ6が配置された状態での切替バルブ6における第2の接続部6dの位置と、前記第2の位置に切替バルブ6が配置された状態での第2の接続部6dの位置との中間の位置が、ポンプ5における第1の接続部5aの位置と略一致するように、切替バルブ6及びポンプ5の配置が設定されている。また、織機1の前後方向に関しては、ポンプ5における第1の接続部5aの位置と切替バルブ6における第2の接続部6dの位置とが略一致するように両者の配置が設定されている。
【0050】
その上で、切替バルブ6とポンプ5とを接続する接続管7は、位置が固定されているポンプ5における第1の接続部5aと前記のように前記第1の位置及び前記第2の位置に位置が変更される切替バルブ6における第2の接続部6dとの接続を可能とすべく、図示のようなクランク形状に形成されている。
【0051】
具体的には、その接続管7は、第1の接続部5aに接続されると共に上下方向に延在する流入部7aと、第2の接続部6dに接続されると共に上下方向に延在する流出部7bと、流入部7aと流出部7bとを接続する中間部7cとで構成されている。なお、その接続管7において、流入部7aの長さ寸法と流出部7bの長さ寸法との合計は、第1の接続部5aと第2の接続部6dとの間隔よりも小さくなっている。したがって、中間部7cは、前記のように配置される切替バルブ6とポンプ5とを接続する状態において、上下方向及び水平方向(緯入れ方向)に対し角度を成して延在している。すなわち、その中間部7cは、緯入れ方向に延在すると共に上下方向にも延在している。
【0052】
そして、以上で説明した緯入れ装置3を備えた水噴射式織機1において、緯入ノズル4、4が緯入れ方向に位置を変更される場合、その位置の変更に合わせて切替バルブ6も緯入れ方向に位置が変更される。なお、その切替バルブ6の位置の変更は、以下のようにして行われる。
【0053】
図3に示す状態では、緯入ノズル4、4を支持している支持機構9において、支持ブラケット14が、取付ブラケット15における2つの凸部15a、15aのうちの織端側の凸部15aに凹部14cを嵌め合わせるかたちで、取付ブラケット15に対し固定されている。また、切替バルブ6は、そのフランジ部6a1をベース部21に当接させた前記第1の位置において、ベース部21に対し固定されている。
【0054】
その状態から緯入ノズル4、4の位置を緯入れ方向において変更する場合、先ずは、接続管7をポンプ5における第1の接続部5aから取り外した状態とする。また、取付機構20において、各ナット25を緩め、切替バルブ6におけるフランジ部6a1がベース部21に対しスペーサ26の厚みよりも離間した位置まで移動できるような状態とする。
【0055】
次いで、支持機構9において、支持ブラケット14が取付ブラケット15に固定された状態を解消し、支持ブラケット14をその凹部14cが取付ブラケット15におけるもう一方の凸部(切替バルブ6側の凸部)15aに嵌め合わされた状態とする。また、そのように凹部14cが嵌め合わされる凸部15aを切り替える過程において、支持ブラケット14を移動させるのに合わせ、その支持ブラケット14に対し取り付けられた緯入ノズル4、4と供給管8、8を介して接続された切替バルブ6も、その接続状態を維持したまま移動させる。
【0056】
その上で、支持機構9において、前記のように支持ブラケット14における凹部14cを切替バルブ6側の凸部15aに嵌め合わせた状態で、再び支持ブラケット14を取付ブラケット15に固定された状態とする。それにより、緯入ノズル4、4は、
図4に示すように配置された状態(位置が変更された状態)となる。また、その状態では、切替バルブ6は、ベース部21からスペーサ26の厚み分だけ離間した前記第2の位置で、案内ネジ23、23に支持された状態となっている。そして、その切替バルブ6とベース部21との間にスペーサ26を配置した上で、各ナット25を締め付けることにより、切替バルブ6がベース部21に対し固定された状態となる。
【0057】
さらに、その状態において、接続管7を、流出部7bの軸心周りに180°回転させる。それにより、平面視において流入部7aの位置がポンプ5における第1の接続部5aの位置に一致した状態となるため、その状態において再び接続管7を第1の接続部5aに接続する。以上の操作により、切替バルブ6は、
図4に示すように前記第2の位置に配置された状態(位置が変更された状態)となる。
【0058】
また、再び緯入ノズル4、4の位置を
図3に示す位置に変更する(戻す)場合には、以上で説明したのと同様の操作により、支持機構9において支持ブラケット14の凹部14cが織端側の凸部15aに嵌め合わされた状態にされると共に、取付機構20においては、スペーサ26が取り外され、前記第1の位置で切替バルブ6がベース部21に対し固定された状態とされる。
【0059】
そして、以上のように構成された緯入れ装置3によれば、切替バルブ6を織機フレーム2に取り付けるための取付機構20が、その切替バルブ6を緯入れ方向に位置調整可能に構成されている。しかも、その取付機構20は、前記のようなスペーサ26を備えることにより、緯入ノズル4、4の2位置のいずれかに応じた第1の位置又は第2の位置に切替バルブ6を設置できるように構成されている。それにより、緯入ノズル4、4の位置が前述のように変更されたとしても、それに合わせて切替バルブ6の位置を第1の位置と第2の位置との間で変更することで、その変更の前後において緯入ノズル4、4と切替バルブ6との緯入れ方向における間隔は略同じとなる。したがって、その緯入れ装置3によれば、緯入ノズル4、4の位置を変更する必要が生じた場合であっても、緯入ノズル4、4と切替バルブ6とを接続する供給管8、8を交換する必要がなく、その交換作業が不要となる。
【0060】
また、本実施例の緯入れ装置3によれば、接続管7が前記のようなクランク形状に形成されているので、切替バルブ6の位置の変更に合わせ、その接続管7を回転させるだけでその接続管7によってポンプ5と切替バルブ6との接続状態を実現することができる。それにより、供給管8だけではなく、接続管7の交換(交換作業)も不要となる。
【0061】
なお、本発明は、以上で説明した実施例に限定されるものではなく、以下(1)~(4)のように変形させた態様(変形例)でも実施することができる。
【0062】
(1)前記実施例では、取付機構20におけるガイド部22は、案内ネジ23、23によって構成されている。その上で、緯入れ方向におけるベース部21から離間した第2の位置でのベース部21に対する切替バルブ6の位置の固定が、案内ネジ23、23に螺合されたナット25、25と、切替バルブ6とベース部21との間に配置されたスペーサ26とで行われている。すなわち、取付機構20は、切替バルブ6の位置を第2の位置に固定するための手段として、位置を定めるための構成としてのスペーサ26とその位置で固定するためのナット(固定用ナット)25とを備えている。しかし、本発明による取付機構において、ガイド部が前記のように案内ネジで構成される場合には、第2の位置を定めるための構成は、前記実施例のスペーサに代えて、ナット(位置決め用ナット)とすることも可能である。
【0063】
具体的には、位置決め用ナットを、各案内ネジ23に螺合させると共に切替バルブとベース部との間に位置するように設ける。その上で、切替バルブの位置を固定するにあたっては、両位置決め用ナットに切替バルブ(フランジ部)を当接させた状態で各固定用ナットを締め付け、両ナットでフランジ部を挟み込むことでその固定が行われる。なお、その構成の場合、第1の位置及び第2の位置は、前記実施例とは異なり、前記実施例の位置に対し位置決め用ナットの厚み(高さ)分だけベース部から離間した位置となる。そして、切替バルブが第1の位置で固定される場合には、位置決め用ナットは、ベース部に当接した状態とされる。また、切替バルブを第2の位置で固定する場合には、位置決め用ナットは、切替バルブをその位置決め用ナットに当接させることで予め定められた第2の位置に配置された状態となるような位置に配置される。
【0064】
また、前記実施例では、ガイド部22は、前記のように案内ネジ23、23によって構成されており、切替バルブ6を支持すると共に緯入れ方向における切替バルブ6の移動を案内する構成(案内手段)として機能するのに加え、切替バルブ6の位置を固定するための構成(固定手段)としても機能している。しかし、本発明による取付機構において、ガイド部は、少なくとも前記案内手段として機能するものであれば良く、ガイド部とは別の固定手段を備えるようにその取付機構が構成されていても良い。
【0065】
例えば、ガイド部を構成する2つの部材を丸棒状の部材(ガイド棒)とし、各ガイド棒が、前記実施例の案内ネジと同様に、ベース部に対しその板厚方向に延在するように設けられたものとする。なお、そのガイド棒は、ベース部とは別部材として形成されてベース部に取り付けられるものであっても良いし、ベース部と一体的に形成されたものであっても良い。そして、切替バルブのフランジ部における各案内孔に各ガイド棒が挿通された状態とすることで、その両ガイド棒が前記案内手段として機能する。その上で、前記固定手段としては、切替バルブにおけるフランジ部において各案内孔の内周面からフランジ部の外周面に向けて貫通する雌ネジ孔を形成し、その雌ネジ孔に螺挿された止めねじをガイド棒に押し当てる構成を採用すれば良い。
【0066】
なお、そのようにガイド部を構成する部材が前記案内手段としてのみ機能する棒材である場合には、その棒材は、前記のような丸棒に限らず、断面が多角形状に形成されたものであっても良い。そして、フランジ部における案内孔は、その棒材の断面形状に応じた形状とされる。また、そのガイド部を構成する棒材の数は、前記のように2つに限らず、3つ以上であっても良い。
【0067】
なお、以上の説明から理解されるように、取付機構は、そのガイド部が切替バルブを支持すると共にその切替バルブの緯入れ方向への移動を案内可能とするように構成されたものであれば良い。そこで、取付機構を、そのガイド部が、以上で説明した構成に代えて、切替バルブを載置状態で設置できると共に緯入れ方向に延在するように設けられた板状の部材によって形成された構成とすることも可能である。そして、そのようなものとしては、例えば、
図5に示すような構成が考えられる。
【0068】
その
図5に示す例では、取付機構27におけるガイド部28は、板材をL字形に屈曲させた部材として形成されている。但し、そのガイド部28において、屈曲部を挟んで直交する2つの部分の間には、その内側に補強用のリブ29が設けられている。そして、ガイド部28は、その屈曲部よりも一端側の部分における外側の面が上方を向くような向きで、その他端側の部分において織機フレーム2に対し固定されている。
【0069】
その上で、切替バルブ6は、そのガイド部28上に設置される。そのために、取付機構27は、切替バルブ6が固定されると共にガイド部28上に載置される載置部30を備えている。その載置部30は、ガイド部28と同様にL字形に屈曲した板状の部材である。そして、その載置部30に対する切替バルブ6の固定は、載置部30における屈曲部よりも一端側の部分の内側の面に対し切替バルブ6のフランジ部6a1を当接させた状態で行われている。その上で、その載置部30は、その一端側の部分における外側の面を織機フレーム2の外側の面2aに対向させる向きで、その他端側の部分においてガイド部28上に載置されている。
【0070】
そして、載置部30は、ガイド部28の前記一端側の部分に形成された貫通孔28aと載置部30の前記他端側の部分に形成された貫通孔30aに挿通されるネジ部材31、及びそのネジ部材31に螺合されるナット32により、締め付け固定されるかたちでガイド部28に対し取り付けられている。なお、ガイド部28及び載置部30における各貫通孔28a、30aは、載置部30がガイド部28に取り付けられた状態で織機の前後方向に並ぶように、それぞれ2つずつ形成されている。また、ガイド部28及び載置部30における各貫通孔28a、30aのうち一方は、その取り付け状態で緯入れ方向に延在する長孔として形成されている。したがって、ガイド部28に対する載置部30の取り付け位置が緯入れ方向に変更可能となっており、それにより、切替バルブ6は、緯入れ方向にその位置を変更可能となっている。
【0071】
また、前記のように切替バルブ6がガイド部28上に設置される状態では、切替バルブ6とポンプ5とを接続する接続管7は、載置部30及びガイド部28の存在範囲内を通過することになる。そこで、ガイド部28及び載置部30には、その接続管7の通過を許容する貫通孔28b、30bが形成されている。
【0072】
(2)中継部材について、前記実施例では、切替バルブ6が中継部材に相当し、その切替バルブ6を織機フレーム2に対し取り付けるための取付機構20が、切替バルブ6を緯入れ方向に位置調整可能に構成されている。しかし、本発明においては、中継部材は、前記実施例のように切替バルブに限らない。すなわち、水噴射式織機の構成によっては、切替バルブと緯入ノズルとの間に供給管を支持する支持部材が設けられている場合があり、その場合には、その支持部材を本発明で言う中継部材としても良い。
【0073】
より詳しくは、水噴射式織機において、フレームの構造や配置される装置(部品)等によっては、ポンプが、前記実施例の位置よりも下方に配置される場合がある。その場合において、ポンプと切替バルブとの接続構成を前記実施例と同様のものにする場合には、切替バルブも、前記実施例の位置より下方に配置されることとなる。その場合、圧力水を供給するために切替バルブと緯入ノズルとを接続する配管の経路が長くなり、その配管が織機の振動の影響を受け易くなる。そこで、そのような構成の場合には、切替バルブと緯入ノズルとの間でその配管を支持する支持部材であって、織機フレームに取り付けられた支持部材が設けられる。
【0074】
なお、そのように配管が支持部材で支持される構成とする場合において、緯入ノズルに接続される供給管を切替バルブまで延びるように構成してその中間の部分が支持部材で支持されるようにすることも考えられるが、一般的には、その供給管を支持部材までの長さの管とし、その一端が支持部材によって支持されるような構成が採用される。その場合、その支持部材と切替バルブとが供給管とは別の管(連結管)で接続される。そして、そのような構成において、支持部材を織機フレームに対し支持する取付機構を支持部材が緯入れ方向に位置調整可能となるような構成とすることで、その支持部材が中継部材に相当することとなる。そのような構成としては、例えば、
図6、7に示す構成が考えられる。なお、
図6、7の例について、図示は省略するが、緯入ノズルの数及びその支持機構の構成は、前記実施例と同じとする。
【0075】
図6、7に示す例では、切替バルブ6は、ブラケット33を介して織機フレーム2に対し取り付けられている。また、他端で緯入ノズルに接続された供給管35は、その一端が前記した中継部材としての支持部材36に接続されている。その支持部材36は、ブロック状に形成された部材であり、その厚さ方向に貫通すると共に各供給管35に対応して形成された2つの貫通孔36aであってその一端側に管継手を介して対応する供給管35が接続される貫通孔36aを有している。その上で、その支持部材36は、取付機構37によって織機フレーム2に対し取り付けられている。
【0076】
その取付機構37は、支持部材36を織機フレーム2に対し取り付けるためのネジ部材39と、支持部材36の緯入れ方向における位置を定めるためのスペーサ40とで構成されている。なお、支持部材36には、ネジ部材39が挿通される挿通孔36bであって厚さ方向に貫通するように形成された挿通孔36bが、前記した2つの貫通孔36aに対し同じ並び方向であって異なる位置において、2つ形成されている。また、スペーサ40は、前記実施例で説明したスペーサ26と同様の構成であって同じ厚さ寸法に形成されているものとする。その上で、支持部材36とスペーサ40とは、支持部材36の挿通孔36b及びスペーサ40に挿通されたネジ部材39が織機フレーム2に螺挿されることで、共締めされるかたちで織機フレーム2に対し固定される。したがって、各ネジ部材39は、そのような固定を可能とする長さ寸法を有している。
【0077】
そして、その取付機構37によれば、
図6に示すように支持部材36がスペーサ40と織機フレーム2との間に配置された状態で両者が固定されることで、支持部材36が前記実施例の第1の位置に相当する位置に配置され、また、
図7に示すようにスペーサ40が支持部材36と織機フレーム2との間に配置された状態で両者が固定されることで、支持部材36が前記実施例の第2の位置に相当する位置に配置される。すなわち、取付機構37は、ネジ部材39上でのスペーサ40の位置を変更することで支持部材36の位置が緯入れ方向に変更(調整)されるように構成されている。
【0078】
なお、ネジ部材39に対するスペーサ40の取り外し及び取り付けは前記実施例の案内ネジ23に対するスペーサ26の取り外し及び取り付けと同様に行われる。そして、その際の支持部材36の変位は、ネジ部材39が挿通孔36bに挿通されたまま、ネジ部材39によって案内されるかたちで行われる。したがって、そのネジ部材39は、前記実施例の案内ネジ23と同様に機能する。
【0079】
また、その支持部材36の変位に伴い、支持部材36における各貫通孔36aの他端側であって、切替バルブ6と支持部材36とを接続する連結管34が接続される他端側の位置も緯入れ方向に変位する。そこで、図示の例では、支持部材36の位置に応じて連結管34と支持部材36との接続にアダプタ41が用いられている。
【0080】
具体的には、
図6に示すように支持部材36がスペーサ40に対し織機フレーム2側に配置される場合には、連結管34は、アダプタ41を介して管継手により支持部材36に接続される。一方、
図7に示すように支持部材36と織機フレーム2との間にスペーサ40が配置される場合には、そのアダプタ41を外し、連結管34は管継手のみで支持部材36に接続される。なお、そのアダプタ41は、その軸線方向の寸法がスペーサ40の厚さ寸法と同じに形成されている。そして、その構成によれば、緯入ノズルの位置に伴って支持部材36の前記他端側の位置が変わっても、同じ連結管34で切替バルブ6と支持部材36とを連結することができ、連結管34の交換も不要となる。
【0081】
因みに、図示の例では前記のようにアダプタ41を用いることで連結管34を交換不要な構成としているが、それに代えて、可撓性を有する管を連結管として採用する構成としても良い。その場合でも、連結管の交換は不要となる。さらには、支持部材36の位置が前記のように変更される構成において、切替バルブ6を織機フレーム2に取り付ける構成を前記実施例の取付機構20と同様のものとし、支持部材36の位置の変更に合わせて切替バルブ6の位置も変更されるようにしても良い。但し、本例のように支持部材を中継部材とする場合において、その連結管を交換しないことは本発明においては必須ではなく、支持部材の位置の変更に伴い、連結管をその各位置に応じた長さの管に変更するようにしても良い。
【0082】
また、支持部材36を織機フレーム2に対し取り付けるための取付機構は、前記実施例における取付機構20と同様の、織機フレーム2に取り付けられるベース部及びベース部に挿通される案内ネジ(ガイド部)を用いて構成されるものであっても良い。また、その場合において、スペーサを用いるのに代えて、前記した変形例(1)と同様に、位置決め用ナットを用いて支持部材の緯入れ方向における位置を固定するようにしても良い。さらには、前記のように、その案内ネジに代えて棒材で支持部材の緯入れ方向における変位を案内するようにその取付機構を構成しても良い。
【0083】
(3)緯入ノズルを支持する支持機構について、以上で説明した例では、支持機構は、緯入ノズルの位置を2位置間で変更できるように構成されている。しかし、本発明が前提とする緯入れ装置における支持機構は、そのように構成されたものに限らず、緯入ノズルの位置を3以上の位置(3以上の特定の位置又は任意の位置)に調整できるように構成されたものであっても良い。
【0084】
その支持機構について、例えば、前記実施例と同様に支持ブラケットの凹部が嵌め合わされる取付ブラケットにおける凸部が、その取付ブラケットにおいて3以上形成されているように、支持機構を構成する。そして、支持機構をそのように構成することで、緯入ノズルの位置が3以上の特定の位置に変更可能となる。また、取付ブラケットに前記した凸部を設けずに、例えば、支持ブラケットを取付ブラケットに取り付けるためのネジ部材が挿通される支持ブラケットにおける各貫通孔を支持ブラケットにおける板状の部分の板厚方向に延在する長孔とすれば、緯入ノズルの位置を任意の位置に調整可能となる。
【0085】
なお、支持機構がそのように構成されている場合の取付機構について、緯入ノズルの位置が3以上の特定の位置に変更可能であって、取付機構が前記実施例等と同様にスペーサを用いて中継部材の位置決めを行うように構成されている場合には、中継部材の各位置に応じた厚みのスペーサを複数用意することで、取付機構は、その緯入ノズルの位置の変更に対応可能となる。また、前記した位置決め用ナットを用いた取付機構によれば、緯入ノズルの位置が3以上の特定の位置や任意の位置に調整可能に支持機構が構成されているいずれの場合においても、取付機構は、その緯入ノズルの位置の変更(調整)に対応することができる。
【0086】
但し、緯入ノズルの位置が3以上の位置に調整可能であると共に切替バルブを中継部材とする場合において、前記実施例等と同じ接続管を用いる場合には、以上で説明した取付機構の構成のままでは対応することができない。何故なら、その接続管は流入部の軸心周りに回転されて流出部の位置が緯入れ方向に変更されることで切替バルブの位置の変更に対応するものであるため、緯入れ方向に関し最も織機フレーム側の位置と最も織機フレームから離間した位置との間の切替バルブの配置に対応させるように接続管を回転させると、その流出部は織機の前後方向にも変位した状態となるからである。そこで、そのような場合には、切替バルブの位置を緯入れ方向及び織機の前後方向に調整できるように取付機構を構成する必要がある。
【0087】
そのような取付機構の構成として、その取付機構が前記実施例等と同様に案内ネジや棒材でガイド部が構成されたものである場合には、例えば、そのガイド部が挿通される切替バルブのフランジ部における各案内孔を、切替バルブの流出口が鉛直上方を向いた状態で水平方向に延在する長孔とする構成が考えられる。また、取付機構が
図5に示す例のように切替バルブを設置するかたちで支持するようにガイド部が構成されたものである場合には、例えば、ガイド部及び載置部のうち一方に形成される各長孔を、接続管が流入部の軸心周りに回転するのに伴って流出部の軸心が描く軌跡に沿って切替バルブを変位させることができるような曲率で湾曲する孔とする構成が考えられる。
【0088】
但し、切替バルブが中継部材に相当する場合におけるポンプと切替バルブとを接続する接続管について、本発明においては、その接続管の構成については何ら限定されないことから、その接続管は、前記実施例等のようなクランク形状に形成された管に限らず、可撓性を有する管であっても良い。そして、接続管がそのような可撓性を有する管であれば、前記のように切替バルブの位置を織機の前後方向にも調整できるように取付機構を構成することなく、しかも、同じ接続管で緯入ノズルの3以上の位置の変更に合わせた切替バルブの位置の変更に対応できる。さらには、本発明においては、切替バルブの位置の変更に合わせ、接続管をその位置に応じた形状の管に交換するようにしても良い。
【0089】
(4)本発明が前提とする緯入れ装置について、本発明は、前記実施例で説明した緯入れ装置に限らず、公知の他の緯入れ装置にも適用可能である。例えば、公知の緯入れ装置としては、前記実施例と同様に2つの緯入ノズルを備える場合でも、各緯入ノズルに対応させた2つのポンプを備え、それぞれのポンプと緯入ノズルとを接続する管路中に切替バルブを備えるように構成されたものがある。その構成の場合、緯入れ装置は、複数の独立した切替バルブを備えている。同様に、緯入れ装置が3以上の緯入ノズルを備える場合でも、複数の切替バルブが備えられる。それらの場合には、その複数の切替バルブのそれぞれが本発明で言う中継部材となり、その切替バルブを織機フレームに取り付けるための取付機構がその切替バルブを緯入れ方向に位置調整可能に構成される。
【0090】
なお、前記のようにそれぞれ独立して設けられる複数の切替バルブはそれぞれが単一の弁体を備えるように構成されるが、公知の切替バルブとしては、複数の弁体が共通の(単一の)バルブケース内に設けられ、単一の構成で複数の切替バルブと同様に機能する、すなわち、複数の切替バルブをユニット化したように構成されたものがある。そして、切替バルブがそのような構成のものである場合には、その切替バルブが本発明で言う中継部材となり、その切替バルブを織機フレームに取り付けるための取付機構がその切替バルブを緯入れ方向に位置調整可能に構成される。
【0091】
また、本発明が適用される緯入れ装置は、以上のように複数の緯入ノズルを備えるものには限らず、緯入ノズルが1つであっても、その緯入ノズルとポンプとを接続する管路中に、例えば緯入ノズル側と排出側とで流路を切り替える切替バルブが備えられる場合があり、そのような緯入れ装置にも本発明は適用可能である。
【0092】
また、本発明は、以上で説明した実施例及び変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 水噴射式織機
2 織機フレーム
2a 外側の面
3 緯入れ装置
4 緯入ノズル
5 ポンプ
5a ポンプの接続部(第1の接続部)
6 切替バルブ
6a ケース
6a1 フランジ部
6a2 案内孔
6b 流出口
6c アクチュエータ
6d 切替バルブの接続部(第2の接続部)
7 接続管
7a 流入部
7b 流出部
7c 中間部
8、35 供給管
9 支持機構
10 ノズル位置調整部
11 ノズル取付部
12 ノズルホルダ
13 ノズルブラケット
14 支持ブラケット
14a ノズルブラケットが取り付けられる部分
14b 取付ブラケットに取り付けられる部分
14c 凹部
15 取付ブラケット
15a 凸部
15a1 ネジ孔
16、18、31、39 ネジ部材
17 管継手
20、27、37 取付機構
21 ベース部
21a 第1の貫通孔
21b 第2の貫通孔
22 ガイド部
23 案内ネジ
24 取付ネジ
25、32 ナット
26、40 スペーサ
28 ガイド部
28a 貫通孔
28b 貫通孔
29 リブ
30 載置部
30a 貫通孔(長孔)
30b 貫通孔
33 ブラケット
34 連結管
36 支持部材
36a 貫通孔
36b 挿通孔
41 アダプタ