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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】ロッカアーム
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/18 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
F01L1/18 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019155578
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021032192
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志賀 巧
(72)【発明者】
【氏名】森松 憂奈
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-167236(JP,A)
【文献】特開2002-250343(JP,A)
【文献】実開平02-047417(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00-1/32
F01L 1/36-1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状の軸部と、
前記軸部を回転可能な状態で支持する本体部と、
前記軸部に回転可能な状態で取り付けられるローラとを備えるロッカアームであって、
前記ローラに隣接するように前記軸部に固定され、前記ローラの側面と接触可能であり、前記本体部で支持された前記軸部を回転させるために、前記ローラの回転力を、前記軸部に伝達する伝達板を備えることを特徴とするロッカアーム。
【請求項2】
前記伝達板の外径は、前記ローラの外径よりも小さい請求項1に記載のロッカアーム。
【請求項3】
前記伝達板は、前記ローラの前記側面と対向する箇所に、溝部を有する請求項1又は請求項2に記載のロッカアーム。
【請求項4】
前記伝達板は、前記ローラの前記側面と対向する箇所に、凸部及び凹部のうちの何れか一方を有し、
前記ローラは、前記伝達板と接触した際に、前記凸部及び前記凹部のうちの何れか前記一方と係合する前記凸部及び前記凹部の残りの一方を有する請求項1又は請求項2に記載のロッカアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッカアームに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の動弁装置において、カムシャフト上のカムの回転動力を吸気又は排気バルブに伝達するためのロッカアームが知られている。この種のロッカアームとしては、例えば、特許文献1に示されるように、中央部に回転自在に支持されたローラを備える所謂、ローラロッカアーム(ローラアーム)が利用される。ローラは、ロッカアームの本体部に設けられた軸部に、回転可能な状態で取り付けられている。そのような状態のローラに対して、回転するカムシャフト上のカムが、ころがり接触するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-13041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のロッカアームにおいて、ローラを支持する軸部は、その両端が、本体部に対して、かしめ等により固定されている。そのため、軸部は、本体部に対して回転しないように固定されている。そのような軸部で支えられたローラに対して、カムから力(負荷)が加えられると、ローラを支える軸部に対しても力(負荷)が加えられることになる。軸部は、上記のように回転しないため、軸部には、一定の方向から力(負荷)が加えられる形となる。より具体的には、軸部のうち、ローラを間に置きつつ、カムと対向する箇所において、力(負荷)が集中する形となる。そのような箇所の軸部は、その他の箇所と比べて、摩耗し易いと言える。
【0005】
本発明の目的は、ローラを支持する軸部に、力(負荷)が集中することが抑制されたロッカアームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロッカアームは、長手状の軸部と、前記軸部を回転可能な状態で支持する本体部と、前記軸部に回転可能な状態で取り付けられるローラとを備えるロッカアームであって、前記ローラに隣接するように前記軸部に固定され、前記ローラの側面と接触可能であり、前記ローラの回転力を、前記軸部に伝達する伝達板を備えることを特徴とする。
【0007】
前記ロッカアームにおいて、前記伝達板の外径は、前記ローラの外径よりも小さいことが好ましい。
【0008】
前記ロッカアームにおいて、前記伝達板は、前記ローラの前記側面と対向する箇所に、溝部を有してもよい。
【0009】
前記ロッカアームにおいて、前記伝達板は、前記ローラの前記側面と対向する箇所に、凸部及び凹部のうちの何れか一方を有し、前記ローラは、前記伝達板と接触した際に、前記凸部及び前記凹部のうちの何れか前記一方と係合する前記凸部及び前記凹部の残りの一方を有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ローラを支持する軸部に、力(負荷)が集中することが抑制されたロッカアームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】内燃機関の動弁装置の断面図
図2】実施形態1のロッカアームの正面図
図3】実施形態1のロッカアームの上面図
図4図2のA-A線断面図
図5図3のB-B線断面図
図6】軸部の斜視図
図7】伝達板の斜視図
図8】実施形態2のロッカアームの上面図
図9】実施形態3の伝達板の斜視図
図10】実施形態3のロッカアームの断面図
図11】実施形態4の伝達板の斜視図
図12】実施形態4のローラの外輪の斜視図
図13】実施形態4のロッカアームの断面図
図14】伝達板の凸部と、ローラの外輪の凹部とが、互いに噛み合う形で係合している状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1図7を参照しつつ説明する。図1は、内燃機関1の動弁装置10の断面図である。図1に示されるように、内燃機関1が備えるシリンダヘッド2には、吸気ポート3を開閉する吸気バルブ4と、排気ポート(不図示)を開閉する排気バルブ(不図示)とが設けられている。本実施形態では、吸気バルブ4を開閉する吸気側の動弁装置10について説明する。なお、排気バルブを開閉する排気側の動弁装置の基本的な構成は、吸気側と同様であり、説明を省略する。
【0013】
吸気バルブ4は、円板状の弁部材4aと、この弁部材4aから延びる棒状のバルブステム4bと、円板状のバネ押さえ部4cとを備えている。上述した吸気ポート3は、シリンダヘッド2に設けられている吸気通路8の端部に配されており、このような吸気ポート3の開閉に弁部材4aが利用される。バルブステム4bは、吸気通路8の外壁を貫通する形で設けられている。バルブステム4bの一端は、弁部材4aに固定されており、また、他端はシリンダヘッド2の外側に突出している。
【0014】
突出した前記他端には、バネ押さえ部4cが取り付けられている。バネ押さえ部4cとシリンダヘッド2との間には、バルブスプリング5が圧縮状態で取り付けられている。また、バルブステム4bの前記他端は、後述するように、ロッカアーム6の一端61aに当接されている。
【0015】
カム7は、カムシャフト71の外周面から外側に突出する形でカムシャフトに固定されており、カムシャフト71と一体的に回転する。カムシャフト71は、回転するカム7の動力を、ロッカアーム6を介して吸気バルブ4に伝達する回転軸である。カムシャフト71と、内燃機関1が備えるクランクシャフト(不図示)との間には、クランクシャフトの回転動力を伝達するためのタイミングベルト(不図示)が架けられており、そのタイミングベルトを介してカムシャフト71がクランクシャフトと連動して回転する。
【0016】
カム7は、カムベース面7aと、このカムベース面7aに連続するリフト面7bとで構成される外周面(カム面)を備えている。カムベース面7aは、回転中心からの距離が等しく、同一半径に位置する面であり、リフト面7bは、回転中心から最も離れた頂点7cに向かって回転中心からの距離が漸増する面である。
【0017】
カムシャフト71の上方には、動弁装置10の潤滑に利用されるオイル(潤滑油)を供給するためのシャワーパイプ9が配設されている。シャワーパイプ9は、筒状の部材からなり、その周壁を貫通する形で、オイルを噴射するための噴射孔91が設けられている。本実施形態では、シャワーパイプ9を用いた潤滑方式を例示したが、他の実施形態においては、他の潤滑方式が採用されてもよい。
【0018】
図2は、実施形態1のロッカアーム6の正面図であり、図3は、実施形態1のロッカアーム6の上面図である。ロッカアーム(ローラアーム、ローラロッカアーム)6は、カム7の回転に従って揺動することで、カム7の回転運動を直線往復運動に変換して吸気バルブ4に伝達する。ロッカアーム6は、主として、本体部61、軸部62、ローラ63、及び伝達板64を備えている。
【0019】
本体部61は、全体的には、図2及び図3の左右方向に延びた長手状をなしている。本体部61は、互いに間隔を保ちつつ平行に並ぶ一対の側壁部61cと、図2及び図3の左側に示される、側壁部61cの一方の端部側に配される第1端部61aと、図2及び図3の右側に示される、側壁部61cの他方の端部側に配される第2端部61bとを備えている。本体部61の一対の側壁部61cは、軸部62を回転可能な状態で支持する。なお、一対の側壁部61cのうち、正面側のものを、「側壁部61c1」と表し、背面側のものを、「側壁部61c2」と表す場合がある。
【0020】
第1端部61aは、一対の側壁部61cにおける一方の端部同士を繋ぐ部分であり、バルブステム4bの端部(上記端端)に当接され、バルブステム4bを押圧する部分(押圧部)となっている。第1端部61aは、概ね板状をなしている。
【0021】
第2端部61bは、一対の側壁部61cにおける他方の端部同士を繋ぐ部分であり、後述するラッシュアジャスタ20の端部(先端部分)に当接される部分(受け部)となっている。第2端部61bは、ラッシュアジャスタ20と対向する内面側が半球面状に窪んだ形をなしており、その窪んだ部分がラッシュアジャスタ20の先端部分と接触する。第2端部61bの外面側は、半球状に膨らんだ形をなしている。
【0022】
図4は、図2のA-A線断面図である。軸部62は、本体部61が備える一対の側壁部61cの間に差し渡される形で設けられている。軸部62は、長手状をなした本体部61の中央側に設けられている。軸部62は、全体的には、長手状の円柱部材からなり、伝達板64が固定された状態で、回転可能な状態で、本体部61(側壁部61c)に取り付けられている。軸部62及び伝達板64の詳細は後述する。
【0023】
ローラ63は、カム7のカム面(カムベース面7a及びリフト面7b)に接触するローラ面63a1を含む円環状の外輪63aを備えている。ローラ面63a1は、曲率が一定の円弧面で構成されており、その幅は、カム7のカム面幅よりも大きい。図5は、図3のB-B線断面図である。ローラ63は、軸受(ニードルローラベアリング)63bを介して、軸部62に回転可能な状態で取り付けられている。
【0024】
図1に示されるように、シリンダヘッド2には、上方に開口する形で穿設された凹状の取付室19が設けられている。この取付室19にラッシュアジャスタ20が挿入される形で取り付けられる。ラッシュアジャスタ20は、一端(先端部分)が取付室19から突出する形で取り付けられる。なお、取付室19は、シリンダヘッド2に設けられているオイル供給路(オイルギャラリ)11と繋がっている。
【0025】
ラッシュアジャスタ20は、全体的には概ね円柱のような外観形状を備えている。取付室19から突出するラッシュアジャスタ20の端部は、ロッカアーム6の他端(第2端部61b)と当接して前記他端(第2端部61b)を支える部分となっている。動弁装置10において、カムシャフト71に設けられたカム7の回転に伴ってロッカアーム6がラッシュアジャスタ20の端部を支点としつつ揺動すると、バルブステム4bが往復移動して、吸気バルブ4の開閉動作が行われる。
【0026】
ここで、軸部62及び伝達板64等について詳細に説明する。図6は、軸部62の斜視図である。軸部62は、金属製であり、上述したように長手状をなしている。軸部62は、円柱状の軸本体部62aと、その軸本体部62aの一方の端部に接続し、伝達板64が装着される装着部62bとを備えている。装着部62bは、円柱の周面の一部が切り欠かれたような形を備えており、部分的に、軸本体部62aよりも少し細くされている。このような装着部62bは、互いに平行に配される1組の平坦部62b1と、それらの間に配される1組の周面部62b2とを備えている。なお、軸線方向(長手方向)において、平坦部62b1に隣接する形で、軸本体部62aの端面からなる立壁部62a1が設けられている。立壁部62a1は、平坦部62b1から垂直に立ち上がった形をなしている。
【0027】
正面側に配される軸部62の一方の端部62cは、装着部62bの端部からなる。これに対し、背面側に配される軸部62の他方の端部62dは、軸本体部62aの端部からなる。一方の端部62cは、正面側の側壁部61c1に設けられた貫通孔状の軸受孔61d1に挿入されている。他方の端部62dは、背面側の側壁部61c2に設けられた貫通孔状の軸受孔61d2に挿入されている。このような軸部62は、側壁部61c1と側壁部61c2との間において、回転可能な状態で差し渡されている。
【0028】
図7は、伝達板64の斜視図である。伝達板64は、ローラ63の外輪63aの回転力を、軸部62に伝えるための部材であり、所定の厚みを有する金属製の板材を加工したものからなる。伝達板64は、正面から見た際、ローラ63の外径よりも若干、小さい外径(輪郭)を有する円環状(ワッシャ状)をなしている。つまり、軸部62からの高さは、伝達板64の方がローラ63よりも若干、低くなっている。この伝達板64の中央には、軸部62の装着部62bが挿入される形で取り付けられる貫通孔状の取付孔部64aが設けられている。取付孔部64aの開口縁は、装着部62bの外周面(つまり、1組の平坦部62b1と、1組の周面部62b2とからなる面)の形状に倣った形をなしている。また、伝達板64は、円環状の外周面64bを備えている。
【0029】
伝達板64は、図4等に示されるように、軸部62に対して外嵌されている。伝達板64は、取付孔部64aに、装着部62bが挿入された形で、軸部62に対して取り付けられている。背面側における取付孔部64aの周りの部分は、立壁部62a1に密着している。このような伝達板64は、軸部62の軸線方向に対して、垂直な方向に広がった形となっている。伝達板64と軸部62とは、溶接や焼き嵌め等により固定されている。また、伝達板64は、軸部62の周りを回転しないように、軸部62に取り付けられている。伝達板64は、軸部62と共に回転可能である。
【0030】
図4に示されるように、軸部62の装着部62bに装着された伝達板64は、側壁部61c1と、軸部62に支持されたローラ63との間に配されている。そして、ローラ63は、伝達板64と背面側の側壁部61c2との間に配されている。伝達板64と側壁部61c2との間の長さは、ローラ63の幅よりも若干、長く設定されている。そのため、ローラ63は、軸部62の長手方向(軸線方向)に若干、移動可能であり、ローラ63は、伝達板64に対して密着することができる。
【0031】
次いで、伝達板64の動作等について説明する。内燃機関1が始動すると、カムシャフト71上のカム7が回転しつつ、ロッカアーム6のローラ63を押圧してロッカアーム6を揺動させる。その際、カム7は、軸部62に支持されたローラ63のローラ面63a1に対して、ころがり接触する形となる。そして、ローラ63は、軸部62に支持された状態で、軸部62を中心軸として回転する。
【0032】
軸部62は、上述したように本体部61の側壁部61c1と側壁部61c2との間に、回転可能な状態で差し渡されている。この軸部62は、軸部62の一方の端部62cと、側壁部61c1の軸受孔61d1との間の静止摩擦力、及び他方の端部62dと、側壁部61c2の軸受孔61d2との間の静止摩擦力よりも、軸部62に作用するトルクが上回った場合に回転する。
【0033】
カムシャフト71(カム7)が、高速回転状態の場合、ローラ63の軸受(ニードルローラベアリング)63bから軸部62に加えられる力が、軸部62の各端部62c,62dと各軸受孔61d1,61d2との間の静止摩擦力よりも大きくなる。そのため、軸部62は、本体部61の側壁部61c1と側壁部61c2との間に差し渡された状態で、回転することができる。
【0034】
これに対し、カムシャフト71(カム7)が、低速回転状態の場合、ローラ63の軸受(ニードルローラベアリング)63bから軸部62に加えられる力が、軸部62の各端部62c,62dと各軸受孔61d1,61d2との間の静止摩擦力よりも下回る。そのため、軸部62は、ローラ63の軸受63bから加えられる力のみで回転することは難しい。しかしながら、本実施形態のロッカアーム6は、ローラ63に隣接するように伝達板64が軸部62に固定されているため、その伝達板64により、ローラ63の外輪63aの回転力を、軸部62に伝えることができる(図4参照)。ローラ63は、軸部62上において、その側面(外輪63aの側面)63a2が、伝達板64と接触(密着)することができる。ローラ63がカム7のカムベース面7aと接触した際に、慣性力で回る外輪63aの回転力を、伝達板64を介して軸部62に伝えることができる。そのため、カムシャフト71(カム7)が、低速回転状態の場合であっても、軸部62に作用するトルクが増大するため、軸部62を回転させることができる。
【0035】
なお、本明細書において、ローラ63の回転方向を基準とし、その回転方向から見て、側方に配される面を、「ローラ63の側面」と称する。ローラ63の側面のうち、ロッカアーム6の正面側に配されるものを、「側面63a2」と表し、背面側に配されるものを、「側面63a3」と表す。
【0036】
軸部62上において、ローラ63と伝達板64との間に隙間(スラスト隙間)があり、ローラ63が伝達板64と接触しない箇所にある場合、ローラ63の外輪63aと軸部62との供回りは生じない。ただし、ローラ63は、軸部62上を、長手方向(軸線方向)に自由に移動できるため、実際には、カム7が何度か回転する際に必ず伝達板64とローラ63の外輪63aとが接触し、外輪63aと軸部62との供回りが発生する。
【0037】
以上のように、本実施形態のロッカアーム6は、カムシャフト71(カム7)の低速回転時であっても、軸部62が回転することができ、軸部62の一部に、力(負荷)が集中して加えられることが抑制される。そのため、本実施形態のロッカアーム6は、軸部62の耐摩耗性に優れる。
【0038】
また、本実施形態のロッカアーム6において、伝達板64の外径は、ローラ63の外径よりも小さくなるように設定されている。そのため、カム7の外周面(カム面)と接触することが抑制される。
【0039】
<実施形態2>
次いで、本発明の実施形態2を、図8を参照しつつ説明する。図8は、実施形態2のロッカアーム6Aの上面図である。本実施形態のロッカアーム6Aは、ローラ63Aの両側面に、それぞれ隣り合う形で、伝達板64Aが設けられている。つまり、本実施形態では、1つの軸部に対して、2つの伝達板64Aが設けられている。一方の伝達板64Aは、ローラ63Aと、本体部61の側壁部61c1との間に配され、他方の伝達板64Aは、ローラ63Aと、本体部61の側壁部61c2との間に配される。このように伝達板64Aを軸部に対して2つ設けてもよい。
【0040】
<実施形態3>
次いで、本発明の実施形態3に係るロッカアーム6Bを説明する。図9は、実施形態3の伝達板64Bの斜視図であり、図10は、実施形態3のロッカアーム6Bの断面図である。なお、図10には、軸部62の長手方向(軸線方向)に沿って切断されたロッカアーム6Bの断面が示されている。
【0041】
ここで、先ず、図1を参照しつつ、カム7の状態と、ローラ63の軸部62が受ける抵抗力(反力)との関係を説明する。カム7が、ロッカアーム6のローラ63に接触すると、ロッカアーム6の第1端部61aは、バルブスプリング5からの反力を受け、ロッカアーム6の第2端部61bは、ラッシュアジャスタ20からの反力を受ける。このような反力は、カム7がローラ63と接触する外周面(カム面)の状態によって異なる。
【0042】
具体的には、ローラ63と接触するカム7のカム面が、カムベース面7aの場合、バルブスプリング5からの反力は無く、ラッシュアジャスタ20からの反力は小さい。また、カム7のカム面が、リフト面7bの場合(具体的には、回転中心からカム面までの距離が漸増する面の場合、及び回転中心からカム面までの距離が漸減する面の場合)、バルブスプリング5からの反力は小さく、ラッシュアジャスタ20からの反力は大きい。そして、カム7のカム面が頂点7cとなる場合(所謂、フルリフト時)、バルブスプリング5からの反力は大きく、ラッシュアジャスタ20からの反力も大きい。
【0043】
実施形態3のロッカアーム6Bは、カム7の外周面(カム面)のうち、カムベース面7a(図1参照)が、ローラ63(ローラ面63a1)に接触するタイミングで、軸部62を回転させる構成となっている。カムベース面7aが、ローラ63に接触する場合、上述したように、バルブスプリング5からの反力は無く、ラッシュアジャスタ20からの反力は小さいため、軸部62が回転する際に受ける抵抗力が小さくなる。
【0044】
本実施形態のロッカアーム6Bは、伝達板64Bの構成のみが、実施形態1と異なっている。伝達板64B以外の構成は、実施形態1と同様である。図9に示されるように、伝達板64Bは、実施形態1と同様、円環状(ワッシャ状)をなしており、中央に配される取付孔部64Baと、円環状の外周面64Bbとを備えている。そして、伝達板64Bは、背面側の表面64Bcに設けられた微小な溝部65を備えている。溝部65は、円環状をなした表面64Bcのうち、ローラ63の外輪63aの側面(正面側の側面)と対向する箇所に、複数の円環状の微小溝が同心円状に形成されたものからなる。伝達板64Bは、実施形態1と同様、軸部62と共に回転できるように構成されている。
【0045】
ローラ63の外輪63a及び軸受63bは、回転するカム7のリフト面7b(頂点7cを含む)がローラ面63a1に接触する度に、軸部62上に形成されたスラスト隙間(背面側の側壁部61c2とローラ63との間の隙間、及びローラ63と伝達板64Bとの間の隙間)を動いている。本実施形態のロッカアーム6Bは、このように軸部62上を動くローラ63の外輪63aが、伝達板64Bに接触すると共に、軸部62が回転する際に受ける抵抗力が小さくなる、カムベース面7aがローラ63に接触するタイミングで、軸部62を回転させる。
【0046】
本実施形態の伝達板64Bは、溝部65にオイルを流入させることにより、ローラ63の側面(外輪63aの側面)63a2に接触した際の外輪63aの側面63a2と、伝達板64Bの背面側の表面64Bcとの間の吸着力が向上する。そのため、ローラ63から伝達板64Bを介して軸部62に伝わるトルクが増大し、軸部62を上記タイミングで回転させることができる。
【0047】
内燃機関(エンジン)の稼働時に、高温で低粘度の状態のオイルが、伝達板64Bの溝部65に流入する。オイルが低粘度の状態であると、毛細管現象により、溝部65に対するオイルの流入が促進される。
【0048】
そして、内燃機関(エンジン)の再稼働直後に、ローラ63の外輪63aが、伝達板64Bに接触すると共に、カムベース面7aがローラ63に接触するタイミングで、オイルの状態が低温で高粘度であると、特に、ローラ63の側面(外輪63aの側面)63a2と、伝達板64Bの表面64Bcとの間の吸着力が高くなり、伝達板64Bを介して軸部62に伝わるトルクを増大させることができる。
【0049】
以上のように、本実施形態のロッカアーム6Bは、伝達板64Bに溝部65が設けられており、実施形態1と比べて、軸部62を回転させ易い構成となっている。
【0050】
<実施形態4>
次いで、本発明の実施形態4に係るロッカアーム6Cを説明する。本実施形態のロッカアーム6Cは、伝達板64Cと、ローラ63Cの外輪63Caの構成が、実施形態1と異なっている。それら以外の構成は、実施形態1と同様である。図11は、実施形態4の伝達板64Cの斜視図であり、図12は、実施形態4のローラ63Cの外輪63Caの斜視図であり、図13は、実施形態4のロッカアーム6Cの断面図である。なお、図13には、軸部62の長手方向(軸線方向)に沿って切断されたロッカアーム6Cの断面が示されている。
【0051】
伝達板64Cは、図11に示されるように、実施形態1と同様、円環状(ワッシャ状)をなしており、中央に配される取付孔部64Caと、円環状の外周面64Cbとを備えている。そして、伝達板64Cは、背面側の表面64Ccに設けられた凸部66を備えている。凸部66は、円環状をなした表面64Ccのうち、ローラ63Cの外輪63Caの側面(正面側の側面)63Ca2と対向する箇所に、表面64Ccから半円球状に盛り上がるように形成されている。本実施形態の場合、凸部66は、1個のみ設けられている。伝達板64Cは、実施形態1と同様、軸部62と共に回転できるように構成されている。
【0052】
ローラ63Cの外輪63Caは、図12に示されるように、実施形態1と同様、円環状をなしており、正面側の側面63Ca2に、凸部66と係合させるための4個の凹部67が設けられている。凹部67は、外輪63Caの側面63Ca2に形成された半円球状の窪み(凹み)からまる。凹部67は、円環状の側面63Ca2において、周方向に等間隔に並ぶように配置されている。なお、ローラ63Cのローラ面63Ca1、及び軸受63Cbの各構成は、実施形態1と同様である。
【0053】
本実施形態のロッカアーム6Cは、軸部62上を動くローラ63Cの外輪63Caの凹部67と、伝達板64Cの凸部66とが噛み合う形で係合すると共に、カムベース面7a(図1参照)がローラ63Cのローラ面63Ca1に接触するタイミングで、軸部62を回転させる。伝達板64Cの凸部66と、ローラ63Cの外輪63Caの凹部67とが係合すると、ローラ63Cから伝達板64Cを介して軸部62に伝わるトルクが増大し、軸部62を上記タイミングで回転させることができる。
【0054】
なお、回転するカム7のリフト面7b(頂点7cを含む)が、ローラ面63Ca1に接触している際、外輪63Caは、カム7から大きな力を受けて回転する。しかしながら、このようなカムリフト時に、伝達板64Cを回転させる力は発生しない。何故ならば、カムリフト時には、外輪63Caの凹部67が、伝達板64Cの凸部66に乗り上がることで、互いの係合が解消され、ローラ63Cの外輪63Caが、伝達板64Cから離れるように軸部62上を軸線方向(スラスト方向)に移動するからである。
【0055】
図14は、伝達板64Cの凸部66と、ローラ63Cの外輪63Caの凹部67とが、互いに噛み合う形で係合している状態を示す説明図である。図14に示されるように、凹部67の開口縁部67aは、所謂、「だれ形状」に加工されており、なだらかな曲面状をなしている。そのため、カムリフト時には、外輪63Caの凹部67が、伝達板64Cの凸部66に乗り上がり易く、互いの係合が解消され易い構成となっている。
【0056】
以上のように、本実施形態のロッカアーム6Cは、伝達板64Cに凸部66が設けられると共に、ローラ63Cの外輪63Caに凹部67が設けられており、実施形態1と比べて、軸部62を回転させ易い構成となっている。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
(1)上記実施形態において、軸部62の両端部62c,62dは、各側壁部61c1,61c2の各軸受孔61d1,61d2に挿入される形で取り付けられていたが、他の実施形態においては、例えば、軸部の両端部は、各軸受孔に対して、据え込みかしめにより、回転可能な状態で取り付けられてもよい。
【0059】
(2)上記実施形態において、伝達板64と軸部62とは、溶接や焼き嵌め等により固定(完全固定)されていたが、本発明はこれに限られず、伝達板64が軸部62と共に回転可能であれば、伝達板64と軸部62とを完全に固定しなくても良い。
【0060】
(3)上記実施形態4において、ローラの外輪の凹部は、半円球状の窪み(凹み)をなしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、凸部と係合可能な、溝状(外輪の周方向に沿った溝部)の凹部等であってもよい。
【0061】
(4)上記実施形態4において、ローラの外輪に凹部が設けられ、伝達板に凸部が設けられていたが、本発明はこれに限られず、他の実施形態においては、ローラの外輪に凸部が設けられ、伝達板に凹部が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…内燃機関、2…シリンダヘッド、3…吸気ポート、4…吸気バルブ、5…バルブスプリング、6…ロッカアーム、61…本体部、61a…第1端部、61b…第2端部、61c…側壁部、62…軸部、63…ローラ、63a…外輪、63a1…ローラ面、63b…軸受、64…伝達板、7…カム、71…カムシャフト、8…吸気通路、9…シャワーパイプ、10…動弁装置
図1
図2
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図14